霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 玉乱(たまらん)〔七八八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第2篇 千差万別 よみ(新仮名遣い):せんさばんべつ
章:第6章 玉乱 よみ(新仮名遣い):たまらん 通し章番号:788
口述日:1922(大正11)年07月24日(旧06月01日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
玉照彦と玉照姫は、唯一本物だった紫の玉を持ってこさせた。高姫は、紛失しては大変だから自分が保管する、と言い出したため、国依別と言い争いになる。
玉照姫は、国依別に自宅待機を命じる。高姫は、言依別が出奔し、杢助が総務を辞職した今、自分が教主にならねばならぬ、と一人悦に入っている。
玉治別は波留彦、秋彦と共に高姫をたしなめ、またもや言い争いになる。玉照姫は、言依別は神界の経綸によって高砂島に渡ったことを明かし、杢助に筑紫島への出張を命じた。そして東助を総務兼教主代理とすることを発表し、高姫と黒姫は特別に相談役に任じた。
また、玉照姫は、もし高姫が紛失した四個の麻邇の玉を持ち帰ったら、高姫を教主とし、高山彦と黒姫を左守・右守の役とすることを約束した。
それを聞いて高姫は、集まった一堂の信者たちから玉の情報を集めようとしたり、すでに玉が見つかったかのごとく威張り散らしたりした。それでまたしても、玉治別・波留彦と言い争いになる。
すると突然、高山彦が高姫・黒姫に暇乞いを告げた。竜宮の一つ島へ帰って、宰相に戻り、活躍するつもりだと言う。高山彦が去ろうとすると、その袖に黒姫がすがりつき、当たり構わず泣いて引き止めた。
玉治別は高山彦の出立を促して、黒姫の帯を掴んだ。黒姫は金切り声を放って一場の愁嘆場を演じた。黒姫は玉治別を振りほどいて群集をかき分け、高山彦を追いかける。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-10-26 18:19:48 文字数:5093 OBC :rm2706
愛善世界社版:119頁 八幡書店版:第5輯 286頁 修補版: 校定版:125頁 普及版:54頁 初版: ページ備考:
001 玉照姫(たまてるひめ)、002玉照彦(たまてるひこ)は口(くち)を揃(そろ)へて、
003玉照姫、玉照彦『英子姫(ひでこひめ)殿(どの)、004紫(むらさき)の玉(たま)を我(わが)前(まへ)に持来(もちきた)られよ』
005と宣示(せんじ)された。006英子姫(ひでこひめ)は「ハイ」と答(こた)へて紫(むらさき)の玉(たま)を柳筥(やなぎばこ)に納(をさ)めた儘(まま)、007恭(うやうや)しく捧持(ほうぢ)して二神司(にしん)の前(まへ)に奉(たてまつ)らむとする時(とき)しも、008高姫(たかひめ)は、
009高姫(たかひめ)『一寸(ちよつと)待(ま)つて下(くだ)さい。010又(また)紛失(ふんしつ)すると大変(たいへん)だから、011此(この)玉(たま)は日(ひ)の出神(でのかみ)が保管(ほくわん)致(いた)しておきます』
012国依別(くによりわけ)『コリヤ高(たか)、013又(また)腹(はら)の中(なか)へ呑(の)んで了(しま)ふ積(つも)りだらう。014何程(なにほど)日(ひ)の出神(でのかみ)が偉(えら)くとも、015玉照彦(たまてるひこ)、016玉照姫(たまてるひめ)の御(ご)命令(めいれい)を反(そむ)く訳(わけ)には行(ゆ)くまい。017……サア英子姫(ひでこひめ)さま、018お二方(ふたかた)の御(ご)命令(めいれい)です、019躊躇(ちうちよ)逡巡(しゆんじゆん)するに及(およ)びませぬ。020早(はや)く献上(けんじやう)なさいませ』
021高姫(たかひめ)『エー又(また)しても又(また)しても、022邪魔(じやま)計(ばか)り致(いた)す男(をとこ)だ。023今日(こんにち)只今(ただいま)限(かぎ)り、024国依別(くによりわけ)を除名(ぢよめい)する』
025国依別(くによりわけ)『エー又(また)しても又(また)しても、026玉(たま)を呑(の)まうと致(いた)す偽日(にせひ)の出神(でのかみ)、027今日(こんにち)只今(ただいま)より、028国治立(くにはるたちの)命(みこと)、029国依別(くによりわけ)の口(くち)を通(とほ)し、030高姫(たかひめ)を除名(ぢよめい)する。031ウンウンウン』
032高姫(たかひめ)『ヘン、033おいて貰(もら)ひませうかい。034何程(なにほど)国依別(くによりわけ)でも、035国治立(くにはるたちの)命(みこと)様(さま)のお懸(かか)りなさる筈(はず)がありますかい。036サア一(いち)時(じ)も早(はや)く国処立(くにとこた)ち退(の)きの命(みこと)となつて帰(かへ)つて貰(もら)ひませう』
037 玉照姫(たまてるひめ)、038高座(かうざ)より声(こゑ)しとやかに、
039玉照姫(たまてるひめ)『高姫(たかひめ)、040国依別(くによりわけ)両人共(りやうにんども)、041お控(ひか)へめされ』
042国依別(くによりわけ)『ハハー』
043と畏縮(ゐしゆく)して其(その)場(ば)に平伏(へいふく)する。044高姫(たかひめ)、
045高姫(たかひめ)『エーエ、046日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)さへあれば良(い)いのに、047無用(むよう)の長物(ちやうぶつ)……でもない。048何(なん)と言(い)うても二(ふた)つの頭(かしら)が並(なら)んで居(ゐ)るのだから、049行(や)りにくいワイ。050両頭(りやうとう)蛇尾(だび)と云(い)つて、051善悪(ぜんあく)両頭(りやうとう)使(つか)ひの高姫(たかひめ)も芝居(しばゐ)が巧(うま)く打(う)てませぬワイ』
052と小声(こごゑ)で呟(つぶや)いて居(ゐ)る。
053国依別(くによりわけ)『高姫(たかひめ)さま、054玉照姫(たまてるひめ)様(さま)の御(ご)命令(めいれい)もだし難(がた)く、055貴女(あなた)の除名(ぢよめい)を、056国依別(くによりわけ)茲(ここ)に取消(とりけ)し致(いた)します』
057 高姫(たかひめ)は舌(した)をニヨツと噛(か)み出(だ)し、058あげ面(づら)し乍(なが)ら、059二三遍(にさんぺん)しやくつて見(み)せ、060右(みぎ)の肩(かた)を無恰好(ぶかつかう)に突起(とつき)させ、
061高姫(たかひめ)『ヘン、062……能(よ)う仰有(おつしや)いますワイ。063日(ひ)の出神(でのかみ)が更(あらた)めて国依別(くによりわけ)を外国行(ぐわいこくゆき)と定(さだ)めるから、064喜(よろこ)んでお受(う)けをなさるがよからう』
065国依別(くによりわけ)『お前(まへ)さまに命令(めいれい)して貰(もら)はなくとも、066言依別(ことよりわけの)神(かみ)様(さま)、067杢助(もくすけ)様(さま)、068国依別(くによりわけ)は三(さん)人(にん)世(よ)の元(もと)となつて、069チヤンと外国(ぐわいこく)で仕組(しぐみ)がしてあるのだ。070七(なな)つの玉(たま)もお先(さき)に海外(かいぐわい)の或(ある)地点(ちてん)に隠(かく)してあるのだから、071要(い)らぬ御(お)世話(せわ)で御座(ござ)います』
072高姫(たかひめ)『そんなら国依別(くによりわけ)、073お前(まへ)は早(はや)くから三(さん)人(にん)腹(はら)を合(あは)せて企(たく)んで居(を)つたのだな』
074国依別(くによりわけ)『どうでも宜(よろ)しいワイ。075虚実(きよじつ)の程(ほど)は世界(せかい)の見(み)えすく日(ひ)の出神(でのかみ)様(さま)が御存(ごぞん)じの筈(はず)だ』
076玉照姫(たまてるひめ)『国依別(くによりわけ)、077改(あらた)めて申(まを)し渡(わた)すべき事(こと)あれば、078暫(しばら)く汝(なんぢ)が館(やかた)に立帰(たちかへ)り、079命(めい)を待(ま)たれよ』
080国依別(くによりわけ)『ハハー、081承知(しようち)致(いた)しました』
082と丁寧(ていねい)に挨拶(あいさつ)をなし、083終(をは)つて、
084国依別(くによりわけ)『ヤア、085テールス姫(ひめ)、086玉能姫(たまのひめ)、087玉治別(たまはるわけ)、088久助(きうすけ)、089お民(たみ)さま、090竜宮(りうぐう)の女王(ぢよわう)黄竜姫(わうりようひめ)、091蜈蚣姫(むかでひめ)其(その)他(た)一統(いつとう)の方々(かたがた)、092高姫(たかひめ)、093黒姫(くろひめ)に対(たい)して、094充分(じゆうぶん)の防戦(ばうせん)をなされませや。095此(この)国依別(くによりわけ)が此(この)場(ば)を立去(たちさ)るや否(いな)や、096そろそろと又(また)吹(ふ)き出(だ)しますからなア』
097玉治別(たまはるわけ)『ヤア有難(ありがた)う、098あとは我(わが)輩(はい)が引受(ひきう)ける、099安心(あんしん)して帰(かへ)つて呉(く)れ。100さうして言依別(ことよりわけ)様(さま)に宜(よろ)しく申上(まをしあ)げて呉(く)れ。101……オツト失敗(しま)つた、102言依別(ことよりわけ)様(さま)は最早(もはや)どつかへ御(お)不在(るす)になつた筈(はず)だなア』
103高姫(たかひめ)『今(いま)の両人(りやうにん)が話振(はなしぶり)を聞(き)けば、104玉治別(たまはるわけ)も同類(どうるゐ)と見(み)える。105お前(まへ)もトツトとここを退場(たいぢやう)なされ。106日(ひ)の出神(でのかみ)が命令(めいれい)する』
107玉治別(たまはるわけ)『高姫(たかひめ)さま、108大(おほ)きに憚(はばか)りさんで御座(ござ)います。109済(す)みませぬが、110私(わたし)の進退(しんたい)は私(わたし)の自由(じいう)ですから、111余(あま)り御(ご)親切(しんせつ)に構(かま)うて下(くだ)さいますな』
112 高姫(たかひめ)、113杢助(もくすけ)の方(はう)にギヨロリと目(め)を転(てん)じ、
114高姫(たかひめ)『お前(まへ)さまは総務(そうむ)を辞職(じしよく)した以上(いじやう)は、115そんな高(たか)い所(ところ)に何時(いつ)迄(まで)も頑張(ぐわんば)つて居(を)る権利(けんり)はありますまい。116トツトと御(お)下(さが)りめされ。117サア是(これ)からは、118言依別(ことよりわけ)は逐電(ちくでん)致(いた)すなり、119杢助(もくすけ)は辞職(じしよく)をするなり、120ヤツパリ此(この)八尋殿(やひろどの)は高姫(たかひめ)が教主(けうしゆ)となつて行(や)らねばならぬかなア。121時節(じせつ)は待(ま)たねばならぬものだ』
122玉治別(たまはるわけ)『コレハしたり、123高姫(たかひめ)さま、124誰(たれ)の命令(めいれい)を受(う)けて貴女(あなた)は教主(けうしゆ)になるのですか。125誰(たれ)もあなたを教主(けうしゆ)として尊敬(そんけい)し、126且(か)つ服従(ふくじゆう)する者(もの)はありますまいぞ』
127高姫(たかひめ)『コレコレ田吾(たご)さま、128お黙(だま)りなされ。129天地(てんち)開闢(かいびやく)の初(はじめ)から系統(ひつぽう)の身魂(みたま)、130日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が教主(けうしゆ)になるのは、131きまり切(き)つた神界(しんかい)の御(ご)経綸(けいりん)だ。132それだから日(ひ)の出神(でのかみ)の守護(しゆご)に致(いた)すぞよと、133お筆先(ふでさき)にチヤンと書(か)いてあるのだ。134……今(いま)までは悪(あく)の身魂(みたま)に結構(けつこう)な高天原(たかあまはら)をワヤにしられて居(ゐ)たが、135世(よ)は持切(もちきり)には致(いた)させぬぞよ。136天晴(あつぱ)れ誠(まこと)の生神(いきがみ)が表(おもて)に現(あら)はれて日(ひ)の出(で)の守護(しゆご)となつたら、137今迄(いままで)上(うへ)へあがりて偉相(えらさう)に申(まを)して居(を)りた御(おん)方(かた)アフンとする事(こと)が出来(でき)るぞよ。138ビツクリ致(いた)して逆(さか)トンボリを打(う)たねばならぬぞよ。139それを見(み)るのが神(かみ)は辛(つら)いから、140耳(みみ)がたこになる程(ほど)知(し)らしたが、141チツとも聞入(ききい)れないから是非(ぜひ)なき事(こと)と諦(あきら)めて下(くだ)されよ。142決(けつ)して神(かみ)を恨(うら)めて下(くだ)さるなよ。143我(わが)身(み)の心(こころ)を恨(うら)めるより仕様(しやう)がないぞよ。144……と現(あら)はれて居(を)りませうがな。145誰(たれ)が何(なん)と云(い)つても三五教(あななひけう)は日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が表(おもて)に立(た)たねば、146神界(しんかい)の仕組(しぐみ)は成就(じやうじゆ)致(いた)しませぬぞエ。147誠(まこと)の者(もの)が三(さん)人(にん)あれば立派(りつぱ)に立替(たてかへ)が成就(じやうじゆ)すると仰有(おつしや)るのだから、148イヤな御(お)方(かた)は退(の)いて下(くだ)されよ。149誠(まこと)一(ひと)つの生粋(きつすゐ)の水晶玉(すいしやうだま)の大和(やまと)魂(だましひ)の根本(こつぽん)の、150地(ぢ)になる日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の生宮(いきみや)と、151高山彦(たかやまひこ)と三(さん)人(にん)さへあれば、152立派(りつぱ)に神業(しんげふ)は成就(じやうじゆ)致(いた)しますワイな。153グツグツ申(まを)すと帳(ちやう)を切(き)るぞえ』
154玉治別(たまはるわけ)『アハヽヽヽ、155よう慢心(まんしん)したものだなア。156……コレコレ波留彦(はるひこ)さま、157秋彦(あきひこ)さま、158お前(まへ)と私(わたし)と三(さん)人(にん)世(よ)の元(もと)となつて、159高姫軍(たかひめぐん)に向(むか)つて一(ひと)つ戦闘(せんとう)を開始(かいし)したらどうだ』
160波留彦(はるひこ)『それは至極(しごく)面白(おもしろ)い事(こと)でせう。161……なア、162秋彦(あきひこ)さま』
163高姫(たかひめ)『コレコレ滝(たき)、164鹿(しか)、165田吾作(たごさく)、166お前(まへ)達(たち)は何程(なにほど)三角(さんかく)同盟(どうめい)を作(つく)つても駄目(だめ)だよ。167モウ今日(けふ)から宣伝使(せんでんし)なんか、168性(しやう)に合(あ)はないことをスツパリ思(おも)ひ切(き)つて、169紫姫(むらさきひめ)さまの門掃(かどは)きになつたり、170宇都山(うづやま)郷(がう)に往(い)つて芋(いも)の赤子(あかご)を育(そだ)てたり、171ジヤンナの郷(さと)へ帰(かへ)つて土人(どじん)にオーレンス、172サーチライスと持(も)てはやされる方(はう)が御(お)互(たがひ)に得策(とく)だ。173(高姫(たかひめ)は逆上(ぎやくじやう)の余(あま)り滝(たき)と友(とも)と同(おなじ)うして喋(しやべ)つてゐる)いよいよ日(ひ)の出神(でのかみ)が教主(けうしゆ)となつた以上(いじやう)は何事(なにごと)も立替(たてかへ)だ。174今(いま)更(あらた)めて教主(けうしゆ)より除名(ぢよめい)するツ』
175 玉照姫(たまてるひめ)高座(かうざ)より、
176玉照姫(たまてるひめ)『三五教(あななひけう)の教主(けうしゆ)は言依別(ことよりわけの)命(みこと)、177神界(しんかい)の御(ご)経綸(けいりん)に依(よ)りて高砂島(たかさごじま)へ御(お)渡(わた)り遊(あそ)ばした。178又(また)杢助(もくすけ)は神界(しんかい)の都合(つがふ)に依(よ)り筑紫(つくし)の島(しま)へ出張(しゆつちやう)を命(めい)ずる。179淡路(あはぢ)の島(しま)の人子(ひとご)の司(つかさ)東助(とうすけ)を以(も)つて三五教(あななひけう)の総務(そうむ)に任(にん)じ、180且(か)つ臨時(りんじ)教主(けうしゆ)代理(だいり)を命(めい)ずる。181高姫(たかひめ)、182黒姫(くろひめ)は特(とく)に抜擢(ばつてき)して相談役(さうだんやく)に致(いた)す。183玉治別(たまはるわけ)、184秋彦(あきひこ)、185友彦(ともひこ)、186蜈蚣姫(むかでひめ)、187黄竜姫(わうりようひめ)、188玉能姫(たまのひめ)は以前(いぜん)の儘(まま)現職(げんしよく)に止(とど)まるべし』
189と宣示(せんじ)し玉(たま)うた。
190高姫(たかひめ)『玉照姫(たまてるひめ)さまもチツと聞(きこ)えませぬワイ。191玉照彦(たまてるひこ)様(さま)は何(なん)とも仰有(おつしや)らぬに、192女(をんな)のかしましい差(さ)し出口(でぐち)。193何程(なにほど)結構(けつこう)な身魂(みたま)でも、194此(この)三五教(あななひけう)は艮(うしとら)の金神(こんじん)、195坤(ひつじさる)の金神(こんじん)、196金勝要(きんかつかねの)神(かみ)、197竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)、198日(ひ)の出神(でのかみ)の生魂(いきだま)で開(ひら)いて行(ゆ)かねばならぬお道(みち)、199お玉(たま)の腹(はら)から生(うま)れて出(で)た変則(へんそく)的(てき)十八(じふはち)ケ月(げつ)の胎生(たいせい)……言(い)はば天下(てんか)無類(むるゐ)の畸形児(きけいじ)ぢやないか。200何(なん)と仰有(おつしや)つても今度(こんど)計(ばか)りは命令(めいれい)を聞(き)きませぬぞ』
201玉照姫(たまてるひめ)『汝(なんぢ)高姫(たかひめ)、202四個(よんこ)の麻邇(まに)の玉(たま)の所在(ありか)を尋(たづ)ね、203それを持帰(もちかへ)りなば、204始(はじ)めて汝(なんぢ)を教主(けうしゆ)に任(にん)じ、205高山彦(たかやまひこ)、206黒姫(くろひめ)を左守(さもり)、207右守(うもり)の神(かみ)に任(にん)ずべし。208誠(まこと)日(ひ)の出神(でのかみ)又(また)玉依姫(たまよりひめ)の身魂(みたま)なれば、209其(その)玉(たま)の所在(ありか)をつきとめ我(わが)前(まへ)に奉(たてまつ)れ』
210高姫(たかひめ)『其(その)お言葉(ことば)に間違(まちが)ひはありますまいな。211宜(よろ)しい。212言依別(ことよりわけ)と杢助(もくすけ)の両人(りやうにん)、213腹(はら)を合(あは)せて隠(かく)しよつたに、214間違(まちが)ひない。215証拠(しようこ)は……これ……此(この)教主(けうしゆ)の書置(かきお)き、216立派(りつぱ)に手(て)に入(い)れてお目(め)にかけます。217其(その)代(かは)りにこれを持帰(もちかへ)つたが最後(さいご)御(お)約束(やくそく)通(どほ)り此(この)高姫(たかひめ)が教主(けうしゆ)ですから、218満場(まんぢやう)の皆様(みなさま)もよつく聞(き)いておいて下(くだ)されや。219日(ひ)の出神(でのかみ)の神力(しんりき)をこれから現(あら)はしてお目(め)にかける。220其(その)時(とき)には玉能姫(たまのひめ)、221蜈蚣姫(むかでひめ)、222黄竜姫(わうりようひめ)、223玉治別(たまはるわけ)、224友彦(ともひこ)、225テールス姫(ひめ)、226久助(きうすけ)、227お民(たみ)、228佐田彦(さだひこ)、229波留彦(はるひこ)……其(その)他(た)の連中(れんちう)は残(のこ)らず馘首(かくしゆ)するから覚悟(かくご)なさいませ、230とはいふものの、231玉(たま)の所在(ありか)を知(し)つてる者(もの)があれば、232そつと此(この)高姫(たかひめ)に云(い)つて来(こ)い……でもよい。233兎(と)に角(かく)以心(いしん)伝心(でんしん)無声(むせい)霊話(れいわ)でもよいから……』
234 玉治別(たまはるわけ)、235両手(りやうて)を拡(ひろ)げ、236体(からだ)を前後(まへうし)ろにブカブカさせ乍(なが)ら、
237玉治別(たまはるわけ)『アツハツハヽ、238アツハツハヽヽ』
239と壇上(だんじやう)で妙(めう)な身振(みぶり)をして笑(わら)ひ出(だ)した。
240高姫(たかひめ)『オイ田吾(たご)さま、241そろそろ守護神(しゆごじん)が現(あら)はれかけたぢやないか。242其(その)態(ざま)は何(なん)ぢやいな。243コレコレ皆(みな)さま、244御覧(ごらん)の通(とほ)り、245日(ひ)の出神(でのかみ)が表(おもて)になると、246皆(みんな)の身魂(みたま)が現(あら)はれて恥(はづか)しい事(こと)が出来(でき)ますぞえ。247今(いま)の所(ところ)は言依別(ことよりわけ)や東助(とうすけ)さまが表面(へうめん)主権(しゆけん)を握(にぎ)つて居(ゐ)る様(やう)だが、248実際(じつさい)の所(ところ)は床(とこ)の間(ま)の置物(おきもの)だ。249実地(じつち)誠(まこと)の権利(けんり)は日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)にあるのだから、250取違(とりちがひ)をなされますなや。251日(ひ)の出神(でのかみ)も中々(なかなか)大抵(たいてい)ぢやない。252遥々(はるばる)と高砂島(たかさごじま)や筑紫(つくし)の島(しま)まで行(い)くのは並(なみ)や大抵(たいてい)ぢや御座(ござ)らぬ。253魚心(うをごころ)あれば水心(みづごころ)だ。254出世(しゆつせ)をしたい人(ひと)は誰(たれ)に拘(かか)はらず、255我(わ)れ一(いち)とお働(はたら)きなされ。256お働(はたら)き次第(しだい)で日(ひ)の出神(でのかみ)が御(ご)出世(しゆつせ)をさして上(あ)げますぞえ』
257 波留彦(はるひこ)一同(いちどう)を見(み)まはし乍(なが)ら、
258波留彦(はるひこ)『皆(みな)さま、259今(いま)高姫(たかひめ)の仰有(おつしや)つた通(とほ)り、260手柄(てがら)のしたい人(ひと)はお手(て)を上(あ)げて下(くだ)さい……一(いち)、261二(に)、262三(さん)……ヤア唯(ただ)の一人(ひとり)も手(て)を上(あ)げる人(ひと)がありませぬなア』
263玉治別(たまはるわけ)『それで当然(あたりまへ)だよ。264地位(ちゐ)も財産(ざいさん)も名誉(めいよ)も捨(す)てて、265一心(いつしん)に神界(しんかい)の為(ため)に尽(つく)さうと云(い)ふ誠(まこと)の人(ひと)計(ばか)りだから、266そんな人欲(にんよく)に捉(とら)はれて、267三五教(あななひけう)へ入信(はい)つた者(もの)は一人(ひとり)もありませぬワイ。268人欲(にんよく)の雲(くも)に包(つつ)まれてるのは高姫(たかひめ)さまに黒姫(くろひめ)さま、269高山彦(たかやまひこ)位(くらゐ)なものだなア』
270 一同(いちどう)手(て)を拍(う)つて「賛成(さんせい)々々(さんせい)」と呼(よ)ぶ。
271高姫(たかひめ)『口(くち)と心(こころ)とサツパリ裏表(うらおもて)の体主(たいしゆ)霊従(れいじう)計(ばか)りがよつて来(き)て、272すました顔(かほ)して御座(ござ)るのが見(み)えすいて可笑(をか)しう御座(ござ)いますワイの、273オツホヽヽヽ』
274高山彦(たかやまひこ)『高姫(たかひめ)さま、275私(わたし)は今日(こんにち)限(かぎ)りお暇(ひま)を頂(いただ)きまして、276竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)へ帰(かへ)り、277元(もと)のブランヂーとなつて活動(くわつどう)致(いた)します。278仮令(たとへ)貴女(あなた)が目的(もくてき)を達(たつ)して教主(けうしゆ)になられても、279私(わたし)はあなたの麾下(きか)につくのは真平(まつぴら)御免(ごめん)ですよ。280……黒姫(くろひめ)もこれから充分(じゆうぶん)竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)さまを発揮(はつき)して、281日(ひ)の出神(でのかみ)さまと御(ご)一緒(いつしよ)に御(ご)活動(くわつどう)なされませ。282左様(さやう)なら……』
283と云(い)ひすて、284玉照彦(たまてるひこ)、285玉照姫(たまてるひめ)の方(かた)に向(むか)つて丁寧(ていねい)に辞儀(じぎ)をなし、
286高山彦(たかやまひこ)『英子姫(ひでこひめ)、287五十子(いそこ)姫(ひめ)、288梅子姫(うめこひめ)、289初稚姫(はつわかひめ)、290其(その)外(ほか)御(ご)一同(いちどう)様(さま)、291御(ご)機嫌(きげん)よく御(ご)神業(しんげふ)に御(ご)奉仕(ほうし)遊(あそ)ばされん事(こと)を高山彦(たかやまひこ)祈(いの)り上(あ)げ奉(たてまつ)ります。292御(ご)一同(いちどう)の方々(かたがた)、293此(この)高山彦(たかやまひこ)は今日(こんにち)限(かぎ)り高姫(たかひめ)様(さま)と関係(くわんけい)を解(と)き、294皆様(みなさま)の前(まへ)にて公然(こうぜん)黒姫(くろひめ)に暇(いとま)を使(つか)はします。295どうぞ其(その)お心組(つもり)で高山彦(たかやまひこ)を可愛(かあい)がつて下(くだ)さいませ』
296玉治別(たまはるわけ)『それでこそ高山彦(たかやまひこ)さまぢや。297感心(かんしん)々々(かんしん)』
298 一同(いちどう)は「万歳(ばんざい)」と手(て)をあげて歓呼(くわんこ)する。299高山彦(たかやまひこ)は、
300高山彦(たかやまひこ)『皆(みな)さま、301左様(さやう)ならば之(これ)より一(ひと)つ島(じま)へ参(まゐ)ります。302高姫(たかひめ)殿(どの)、303黒姫(くろひめ)殿(どの)、304さらば……』
305と立出(たちい)でんとする。306黒姫(くろひめ)は周章(あわて)て裾(すそ)をひき止(と)め、
307黒姫(くろひめ)『マアマア待(ま)つて下(くだ)さんせいな。308最前(さいぜん)からのあなたの御(お)言葉(ことば)、309残(のこ)らず承知(しようち)いたしました。310……とは云(い)ふものの情(なさけ)なや、311過(す)ぎし逢(あ)う夜(よ)の睦言(むつごと)を、312身(み)にしみじみと片時(かたとき)も、313思(おも)ひ忘(わす)るるひまもなう、314年月(としつき)重(かさ)ぬる其(その)内(うち)に、315うつり易(やす)いは殿御(とのご)の心(こころ)と秋(あき)の空(そら)、316もしや見捨(みすて)はなさらぬかと、317ホンにあらゆる天地(てんち)の神(かみ)さまや、318竜宮(りうぐう)さまに願(ぐわん)かけて、319案(あん)じ暮(くら)した甲斐(かひ)もなう、320今日(けふ)突然(とつぜん)離別(りべつ)とは、321余(あんま)りムゴイ御(おん)仕打(しうち)、322これが如何(どう)して泣(な)かずに居(ゐ)られませうか、323オンオン』
324とあたりを構(かま)はず、325皺(しわ)くちや顔(がほ)に涙(なみだ)を夕立(ゆふだち)の如(ごと)くたらして泣沈(なきしづ)む。
326玉治別(たまはるわけ)『悔(くや)んで帰(かへ)らぬ互(たがひ)の縁(えん)、327中(なか)をへだつる玉治川(たまはるがは)。328……サアサア高山彦(たかやまひこ)さま、329思(おも)ひ切(き)りが大切(たいせつ)だ。330グヅグヅして居(ゐ)ると、331又(また)もやシヤツつかれますよ。332あとは此(この)玉治別(たまはるわけ)が、333全責任(ぜんせきにん)を負(お)うて引受(ひきう)けますから、334一切(いつさい)構(かま)はず勝手(かつて)にお越(こ)し遊(あそ)ばせ』
335高山彦(たかやまひこ)『何分(なにぶん)宜(よろ)しく御(お)頼(たの)み申(まを)す』
336と立出(たちい)でんとする。
337黒姫(くろひめ)『高山(たかやま)さまも聞(きこ)えませぬ。338お前(まへ)と二人(ふたり)の其(その)仲(なか)は、339昨日(きのふ)や今日(けふ)の事(こと)ではありますまい。340私(わたし)をふりすてて帰(い)のうとは、341余(あんま)り聞(きこ)えぬ胴欲(どうよく)ぢや。342厭(いや)なら嫌(いや)で、343無理(むり)に添(そ)はうとは言(い)ひませぬ。344生田(いくた)の川(かは)の大水(おほみづ)を渡(わた)つた時(とき)の私(わたし)の正体(しやうたい)[※第19巻第3章で黒姫は蛇体に還元して、水が氾濫した川を渡っているが、生田川ではなく白瀬川と呼ばれている。(どちらも由良川の別名と思われる)]、345よもや忘(わす)れては居(を)りますまいな』
346高山彦(たかやまひこ)『一度(いちど)還元(くわんげん)した以上(いじやう)は再(ふたた)び還元(くわんげん)出来(でき)ぬ大蛇(をろち)の身魂(みたま)、347もう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。348日高川(ひだかがは)を蛇体(じやたい)になつて渡(わた)つた清姫(きよひめ)[※平安時代の安珍・清姫伝説で、道成寺に逃げた安珍を追い駆け、清姫は蛇体に変じて日高川を渡ったことを指す。]の様(やう)に太平洋(たいへいやう)を横切(よこぎ)つて、349高山彦(たかやまひこ)の色男(いろをとこ)を尋(たづ)ねて来(き)なさい。350地恩(ちおん)の郷(さと)の大釣鐘(おほつりがね)を千代(ちよ)の住家(すみか)として、351高山彦(たかやまひこ)は安逸(あんいつ)に余生(よせい)を送(おく)る考(かんが)へだ。352さうすれば極安珍(ごくあんちん)なものだ。353何程(なにほど)お前(まへ)が地団駄(ぢだんだ)ふんで道成寺(だうじやうじ)かうせうじなどといつて、354藻掻(もが)いた所(ところ)でモウ駄目(だめ)だよ。355アハヽヽヽ』
356と大(おほ)きく肩(かた)をゆすり乍(なが)ら悠々(いういう)として出(い)でて行(ゆ)く。357黒姫(くろひめ)は夜叉(やしや)の如(ごと)く、358あと追(お)つかけんと、359婆(ば)さまに似合(にあ)はず捩鉢巻(ねぢはちまき)をし、360裾(すそ)を太腿(ふともも)の上(うへ)あたりまで引(ひき)あげて、361大股(おほまた)にドンドンとかけ出(だ)しかけた。362玉治別(たまはるわけ)は追(お)ひすがつて黒姫(くろひめ)の後(うしろ)よりムンヅと許(ばか)り帯(おび)をひつつかんで力(ちから)に任(まか)せ、363グツと引戻(ひきもど)す。364黒姫(くろひめ)は金切声(かなきりごゑ)を出(だ)して、
365黒姫(くろひめ)『千危(せんき)一機(いつき)の此(この)場合(ばあひ)、366どこの何方(どなた)か知(し)らねども、367必(かなら)ずとめて下(くだ)さるな。368妾(わたし)にとつて一生(いつしやう)の一大事(いちだいじ)、369アヽ残念(ざんねん)や口惜(くちを)しや、370そこ放(はな)しや』
371と振向(ふりむ)く途端(とたん)に見合(みあは)す顔(かほ)と顔(かほ)、
372黒姫(くろひめ)『ヤアお前(まへ)は意地(いぢ)くね悪(わる)い田吾作(たごさく)殿(どの)、373ここは願(ねがひ)ぢや、374放(はな)しておくれ』
375玉治別(たまはるわけ)『意地(いぢ)くね悪(わる)い田吾作(たごさく)だから放(はな)さないのだよ。376雪隠(せんち)の水(みづ)つき婆(ばば)うきぢやと人(ひと)が笑(わら)ひますよ。377まあチツと気(き)をおちつけなされ。378高山(たかやま)さま計(ばか)りが男(をとこ)ぢやありますまい。379男旱魃(をとこひでり)もない世(よ)の中(なか)に、380コラ又(また)きつう惚(ほれ)たものだなア』
381 黒姫(くろひめ)は、
382黒姫(くろひめ)『エー放(ほ)つといて』
383と力(ちから)限(かぎ)りふり放(はな)し、384群衆(ぐんしう)の中(なか)を無理(むり)に押分(おしわ)け人(ひと)を押倒(おしたふ)し、385ふみにじり乍(なが)ら、386尻(しり)まで出(だ)して一生(いつしやう)懸命(けんめい)高山彦(たかやまひこ)の後(あと)を追(お)つかけ走(はし)り行(ゆ)く。
387(大正一一・七・二四 旧六・一 松村真澄録)
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