霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 琉球(りうきう)の神(かみ)〔七九八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第5篇 清泉霊沼 よみ(新仮名遣い):せいせんれいしょう
章:第16章 琉球の神 よみ(新仮名遣い):りゅうきゅうのかみ 通し章番号:798
口述日:1922(大正11)年07月27日(旧06月04日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高姫が去った後、言依別命一行が木の洞穴に戻ってきた。言依別命は無事に琉球の玉を手に入れたことを伝えた。清彦らは、教主に挨拶をなした後、この場所に至った経緯を報告した。清彦と照彦は、父である常楠と思わぬところで出会うことになり、挨拶を交わした。
清彦と照彦は、高姫が言依別命を追ってここまでやってきたことを話した。言依別命は、自分が琉と球の玉を持って高砂島へ渡れば、形骸に囚われた高姫が玉を狙って罪を作ることになる、と心配した。
言依別命は、玉の精霊を自分と国依別に移して、玉は若彦に命じて玉能姫の館に持ち帰るように命じた。言依別命は、この神業が成就したら若彦は玉能姫の夫として共に棲んでもよいことを示唆した。言依別命は常楠翁に対して、琉球島の王となるように命じ、清彦・照彦と共に島を守るように命じた。
言依別命は島人二人を伴って高砂島へ出立した。清彦と照彦は、清子姫と照子姫の姿がいつの間にか消えていることに気付き、落胆した。しかし、自分たちには紀の国に残してきた妻子があったことを思い出し、天則違反をせずに済んだことを感謝した。
しかしながら後に、二人の妻子は夫を捨ててどこかに姿を消してしまったことが判明した。また常楠翁は後に、ハーリス山奥深くに進み入って生き神となり、今に至るまで琉球島を守護することとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-11-05 19:33:27 文字数:2932 OBC :rm2716
愛善世界社版:255頁 八幡書店版:第5輯 334頁 修補版: 校定版:263頁 普及版:112頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)一行(いつかう)が立去(たちさ)つた後(あと)の洞穴(どうけつ)は、002水入(みづい)らずの男女(だんぢよ)四(よ)名(めい)、003互(たがひ)に秘密(ひみつ)を半(なかば)打明(うちあ)けて一種(いつしゆ)異様(いやう)の気分(きぶん)に打(う)たれてゐる。
004 斯(かか)る処(ところ)へ言依別(ことよりわけの)命(みこと)は、005国依別(くによりわけ)、006若彦(わかひこ)、007常楠(つねくす)、008チヤール、009ベース其(その)他(た)の土人(どじん)を引伴(ひきつ)れ、010此(この)洞穴(どうけつ)指(さ)して一先(ひとま)づ帰(かへ)り来(きた)り、011入口(いりぐち)より中(なか)を覗(のぞ)けば灯火(あかり)がついて居(ゐ)る。012さうして奥(おく)の方(はう)に何(なに)か人影(ひとかげ)が見(み)えてゐる。013国依別(くによりわけ)は一同(いちどう)に向(むか)ひ、
014国依別(くによりわけ)『ヤア皆(みな)さま、015御(ご)苦労(くらう)で御座(ござ)いました。016誰(たれ)か気(き)の利(き)いた土人(どじん)と見(み)えるが、017灯火(あかり)をつけて待(ま)つてゐる様(やう)です』
018と云(い)ひ乍(なが)ら一足先(ひとあしさき)に入(はい)つた。019清彦(きよひこ)は此(この)姿(すがた)を見(み)て、
020清彦(きよひこ)『ヤア』
021とばかりに驚(おどろ)き、022側(そば)に駆寄(かけよ)つて、
023清彦(きよひこ)『これはこれは国依別(くによりわけ)様(さま)で厶(ござ)いますか。024ヤア言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)様(さま)、025大勢(おほぜい)の方々(かたがた)、026よくマア御(お)いで下(くだ)さいました。027御(ご)承知(しようち)の通(とほ)りの荒屋(あばらや)、028苺(いちご)が沢山(たくさん)に御座(ござ)いますれば、029悠乎(ゆつくり)と御(お)召(あが)り遊(あそ)ばして御(お)話(はなし)を願(ねが)ひます』
030国依別(くによりわけ)『ヤアお前(まへ)は清彦(きよひこ)ぢやないか。031何時(いつ)の間(ま)にやら我輩(わがはい)の邸宅(ていたく)を横領(わうりやう)して、032主人(しゆじん)気取(きど)りになつて了(しま)つたのだな……教主(けうしゆ)様(さま)、033其(その)他(た)御(ご)一同(いちどう)様(さま)、034清彦(きよひこ)が御(お)留守宅(るすたく)へやつて来(き)て居(を)ります』
035清彦(きよひこ)『どうぞ奥(おく)へ御(お)通(とほ)り下(くだ)さいませ』
036国依別(くによりわけ)『主客(しゆきやく)顛倒(てんたう)とは此(この)事(こと)だ。037ヤア奥(おく)には照彦(てるひこ)其(その)他(た)二人(ふたり)の頗(すこぶ)る美人(びじん)が居(ゐ)るではないか。038中々(なかなか)抜目(ぬけめ)の無(な)い男(をとこ)だね』
039言依別(ことよりわけ)『アヽ若彦(わかひこ)さま、040常楠(つねくす)さま、041サア奥(おく)へ御(お)進(すす)み下(くだ)さい』
042 常楠(つねくす)と若彦(わかひこ)は琉(りう)、043球(きう)の玉(たま)を奉(ほう)じ、044洞穴内(どうけつない)の最(もつと)も高(たか)き処(ところ)に安置(あんち)し、045拍手(かしはで)を打(う)ち一生(いつしやう)懸命(けんめい)に何事(なにごと)か小声(こごゑ)に唱(とな)へてゐる。
046 清彦(きよひこ)、047照彦(てるひこ)、048清子姫(きよこひめ)、049照子姫(てるこひめ)は両手(りやうて)をつき、
050四人『是(これ)は是(これ)は教主(けうしゆ)様(さま)、051不思議(ふしぎ)な所(ところ)で御(お)目(め)にかかりました。052先(ま)づ先(ま)づ御(ご)無事(ぶじ)で御(お)目出度(めでた)う厶(ござ)います』
053言依別(ことよりわけ)『ヤア有難(ありがた)う。054御(お)神徳(かげ)を以(もつ)て竜(たつ)の腮(あぎと)の琉(りう)、055球(きう)の宝玉(ほうぎよく)はうまく手(て)に入(い)りました。056就(つい)ては貴女(あなた)方(がた)どうして又(また)斯様(かやう)な処(ところ)へ来(き)たのですか』
057清子姫(きよこひめ)『ハイ、058妾(わたし)は比沼(ひぬ)の真奈井(まなゐ)の宝座(ほうざ)に於(おい)て、059照子姫(てるこひめ)様(さま)と禊(みそぎ)を修(しう)して居(を)りました。060処(ところ)が瑞(みづ)の宝座(ほうざ)は俄(にはか)に鳴動(めいどう)を始(はじ)め、061四辺(あたり)に芳香(はうかう)薫(くん)じ、062微妙(びめう)の音楽(おんがく)聞(きこ)え来(きた)ると思(おも)ふ間(ま)もなく、063忽然(こつぜん)として現(あら)はれ玉(たま)ひし豊国姫(とよくにひめ)の御(ご)神姿(しんし)、064言葉(ことば)静(しづ)かに宣(の)らせ玉(たま)ふやう………この宝座(ほうざ)は、065妾(わらは)寸時(しばらく)神界(しんかい)の都合(つがふ)によつて或(ある)地点(ちてん)に立向(たちむか)ひ、066神霊(しんれい)不在(ふざい)となれば、067汝(なんぢ)等(ら)二人(ふたり)は一刻(いつこく)も早(はや)く此(この)場(ば)を立去(たちさ)り、068由良(ゆら)の港(みなと)の秋山彦(あきやまひこ)が館(やかた)に、069竜宮(りうぐう)の麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)集(あつ)まり玉(たま)へば之(これ)を奉迎(ほうげい)せよ……神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)、070国武彦(くにたけひこの)命(みこと)も御(お)でましになつてゐる……との事(こと)に、071旅装(りよさう)を整(ととの)へ由良港(ゆらみなと)へ参(まゐ)りしも後(あと)の祭(まつり)となり、072其(その)儘(まま)聖地(せいち)に上(のぼ)り、073玉照彦(たまてるひこ)、074玉照姫(たまてるひめ)様(さま)の神勅(しんちよく)や、075貴方(あなた)様(さま)の御(ご)教示(けうじ)を拝(はい)して高熊山(たかくまやま)に登(のぼ)り、076三(さん)週間(しうかん)の行(ぎやう)を為(な)し、077いろいろの神界(しんかい)の御(ご)経綸(けいりん)を承(うけたま)はつて、078漸(やうや)くここに参(まゐ)つたもので厶(ござ)います。079ところが途中(とちう)に於(おい)て船(ふね)を暗礁(あんせう)に乗(の)り上(あ)げ、080生命(いのち)危(あやふ)い所(ところ)を御(ご)両人(りやうにん)様(さま)に助(たす)けられ、081結構(けつこう)なる御(ご)神徳(しんとく)をうけましたもので厶(ござ)います』
082言依別(ことよりわけ)『それは皆(みな)さま、083結構(けつこう)で御座(ござ)いました。084吾々(われわれ)とても琉(りう)、085球(きう)の宝玉(ほうぎよく)を斯(かく)の如(ごと)く無事(ぶじ)に拝領(はいりやう)し来(きた)れば、086これよりは益々(ますます)神徳(しんとく)著(いちじる)く、087御(ご)神業(しんげふ)も完全(くわんぜん)に成就(じやうじゆ)する事(こと)と悦(よろこ)んで居(を)ります』
088国依別(くによりわけ)『モシモシ常楠(つねくす)さま、089貴方(あなた)の血縁(けつえん)の両人(りやうにん)が此処(ここ)に御(お)越(こ)しになつてゐるといふのも、090不思議(ふしぎ)の経綸(けいりん)ぢやありませぬか。091照彦(てるひこ)に清彦(きよひこ)、092照子姫(てるこひめ)に清子姫(きよこひめ)、093これ又(また)一(ひと)つの不思議(ふしぎ)、094…常楠(つねくす)に常彦(つねひこ)、095…これも亦(また)不思議(ふしぎ)。096畏(おそ)れ多(おほ)い事(こと)だが言依別(ことよりわけ)様(さま)に国依別(くによりわけ)、097若彦(わかひこ)さまにチヤール、098ベース、099名(な)までよく情意(じやうい)投合(とうがふ)してゐる様(やう)ですなア。100アハヽヽヽ』
101常楠(つねくす)『お前(まへ)は清彦(きよひこ)、102照彦(てるひこ)の両人(りやうにん)、103ようマアこんな処(ところ)まで探(たづ)ねて来(き)てくれた。104親(おや)なればこそ、105子(こ)なればこそだ』
106 清彦(きよひこ)、107照彦(てるひこ)両人(りやうにん)は一度(いちど)に、
108両人(りやうにん)『吾々(われわれ)は斯様(かやう)なところでお父(とう)さまに御(お)目(め)に掛(かか)らうなどとは、109夢(ゆめ)にも思(おも)つてゐませんでした。110教主(けうしゆ)様(さま)の後(あと)をつけ狙(ねら)つて高姫(たかひめ)一行(いつかう)が参(まゐ)つたと聞(き)き、111心(こころ)も心(こころ)ならず、112御(お)後(あと)を慕(した)つて御用(ごよう)の末端(はしくれ)にもと思(おも)ひ、113出(で)て参(まゐ)りました。114併(しか)し乍(なが)ら最早(もはや)教主(けうしゆ)様(さま)は此(この)島(しま)を既(すで)に既(すで)に御用(ごよう)了(をは)り、115御(ご)出立(しゆつたつ)の跡(あと)ならんと落胆(らくたん)致(いた)して居(を)りましたが、116併(しか)しここで御(お)目(め)に掛(かか)りましたのは何(なに)より有難(ありがた)い事(こと)で御座(ござ)います』
117言依別(ことよりわけ)『あゝさうであつたか。118それは大(おほ)いに心配(しんぱい)を掛(か)けたなア。119併(しか)し高姫(たかひめ)さまは執拗(しつえう)にも斯様(かやう)なところまで、120吾々(われわれ)の後(あと)を追(お)つて来(き)たのかなア』
121清彦(きよひこ)『高姫(たかひめ)さまは仮令(たとへ)高砂島(たかさごじま)の果(はて)までも貴方(あなた)の御(お)後(あと)を尋(たづ)ね廻(まは)り、122七(なな)つの宝玉(ほうぎよく)の所在(ありか)を探(さが)して教主(けうしゆ)様(さま)を改心(かいしん)させなならぬと言(い)つて、123今(いま)の今(いま)とてこの洞穴(どうけつ)に御(お)越(こ)しに相成(あひな)り、124常彦(つねひこ)、125春彦(はるひこ)と共(とも)に、126大変(たいへん)に我々(われわれ)両人(りやうにん)に毒吐(どくつ)いた揚句(あげく)、127一刻(いつこく)も猶予(いうよ)ならぬ。128言依別(ことよりわけ)の後(あと)を追(お)つてやらうと云(い)つて、129慌(あわただ)しくここを立去(たちさ)られた所(ところ)で御座(ござ)います。130モウ今頃(いまごろ)は何処(どこ)かの浜辺(はまべ)から、131船(ふね)に乗(の)つて漕(こ)ぎ出(だ)してゐる位(くらゐ)でせう』
132言依別(ことよりわけ)『何処(どこ)までも玉(たま)にかけたら執念深(しふねんぶか)い高姫(たかひめ)だなア。133アヽ仕方(しかた)が無(な)い』
134と双手(もろで)を組(く)んで思案(しあん)に暮(く)れる。
135言依別(ことよりわけ)『さうすれば高姫(たかひめ)さまは、136又(また)我々(われわれ)の渡(わた)る高砂島(たかさごじま)へも行(ゆ)くに違(ちが)ひ無(な)い。137琉(りう)、138球(きう)の宝玉(ほうぎよく)を持(も)つて参(まゐ)れば、139又(また)しても罪(つみ)を作(つく)らす様(やう)なものだ。140是(これ)から国依別(くによりわけ)と両人(りやうにん)が玉(たま)の精霊(せいれい)を我(わ)が身魂(みたま)に移(うつ)し、141形骸(けいがい)丈(だけ)は……若彦(わかひこ)さま、142御(ご)苦労(くらう)だが二(ふた)つとも貴方(あなた)が守護(しゆご)して、143再度山(ふたたびやま)の麓(ふもと)なる玉能姫(たまのひめ)の館(やかた)へ持帰(もちかへ)り、144夫婦(ふうふ)揃(そろ)うて此(この)玉(たま)を保管(ほくわん)をし乍(なが)ら、145神界(しんかい)の御用(ごよう)をして下(くだ)さい。146貴方(あなた)も此(この)御(ご)神業(しんげふ)が成就(じやうじゆ)した上(うへ)は、147玉能姫(たまのひめ)の夫(をつと)として同棲(どうせい)されても差支(さしつかへ)は有(あ)りますまい』
148 若彦(わかひこ)はハツと驚(おどろ)き、149有難涙(ありがたなみだ)に暮(く)れ乍(なが)ら、
150若彦(わかひこ)『情(なさけ)の籠(こも)つた教主(けうしゆ)の御(お)言葉(ことば)、151有難(ありがた)く存(ぞん)じます。152左様(さやう)なれば此(この)玉(たま)を保護(ほご)致(いた)し、153生田(いくた)の森(もり)の神館(かむやかた)へ持帰(もちかへ)り、154貴方(あなた)の聖地(せいち)へ御(お)帰(かへ)り遊(あそ)ばす迄(まで)大切(たいせつ)に守護(しゆご)致(いた)します』
155言依別(ことよりわけ)『早速(さつそく)の御(ご)承知(しようち)、156一(いち)日(にち)も早(はや)く御(お)帰(かへ)り下(くだ)さい。157……又(また)常楠翁(つねくすをう)は此(この)琉球島(りうきうじま)の土人(どじん)の神(かみ)となり、158王(わう)となつて永遠(ゑいゑん)に此処(ここ)に鎮(しづ)まり神業(しんげふ)に尽(つく)して貰(もら)ひたい。159……清彦(きよひこ)、160照彦(てるひこ)は常楠(つねくす)と共(とも)に本島(ほんたう)を守護(しゆご)致(いた)し、161余力(よりよく)あれば台湾島(たいわんたう)へも渡(わた)つて三五教(あななひけう)を広(ひろ)め、162国魂神(くにたまがみ)となつて土民(どみん)を永遠(ゑいゑん)に守(まも)つて下(くだ)さい。163言依別(ことよりわけ)はこれより国依別(くによりわけ)と共(とも)に、164高砂島(たかさごじま)へ渡(わた)り、165夫(それ)より常世国(とこよのくに)を廻(めぐ)つて波斯(フサ)の国(くに)、166産土(うぶすな)山脈(さんみやく)の斎苑(いそ)の館(やかた)に立向(たちむか)ふ考(かんが)へだ。167随分(ずゐぶん)神(かみ)様(さま)の御恵(みめぐみ)を頂(いただ)いて壮健(さうけん)無事(ぶじ)に御(ご)神業(しんげふ)に参加(さんか)されよ』
168と宣示(せんじ)する。169一同(いちどう)はハツとばかりに有難涙(ありがたなみだ)を出(いだ)し、170頭(かしら)を地(ち)につけて涕泣(ていきふ)稍(やや)久(ひさ)しうしてゐる。
171 ここに言依別(ことよりわけ)は琉(りう)の珠(たま)の精霊(せいれい)を腹(はら)に吸(す)ひ玉(たま)ひ、172国依別(くによりわけ)は球(きう)の珠(たま)の精霊(せいれい)を吸(す)ひ、173終(をは)つて二個(にこ)の玉手箱(たまてばこ)を若彦(わかひこ)に渡(わた)した。174若彦(わかひこ)は押頂(おしいただ)いて、175直(ただち)にチヤール、176ベースの二人(ふたり)に船(ふね)を操(あやつ)らせ宝玉(ほうぎよく)を保護(ほご)し、177荒浪(あらなみ)をわけて、178再(ふたた)び自転倒(おのころ)島(じま)の生田(いくた)の森(もり)に引(ひ)き返(かへ)す事(こと)となつた。
179 これより若彦(わかひこ)、180玉能姫(たまのひめ)は生田(いくた)の森(もり)に於(おい)て夫婦(ふうふ)の息(いき)を合(あは)せ、181神界(しんかい)の為(ため)に大功(たいこう)を顕(あら)はしたのである。
182 言依別(ことよりわけの)命(みこと)は国依別(くによりわけ)を伴(ともな)ひ、183琉球(りうきう)全体(ぜんたい)の守護権(しゆごけん)を、184常楠(つねくす)、185清彦(きよひこ)、186照彦(てるひこ)に一任(いちにん)し、187悠々(いういう)として土人(どじん)二(に)名(めい)を引伴(ひきつ)れ、188船(ふね)を操(あやつ)らせ乍(なが)ら、189万里(ばんり)の波濤(はたう)を蹶(け)つて高砂島(たかさごじま)に向(むか)つて出発(しゆつぱつ)された。190又(また)清子姫(きよこひめ)、191照子姫(てるこひめ)は言依別(ことよりわけ)の後(あと)を追(お)ひ暗夜(やみよ)に紛(まぎ)れて船(ふね)に乗(の)り、192高砂島(たかさごじま)へ進(すす)む事(こと)となつた。
193 清彦(きよひこ)、194照彦(てるひこ)はこの二人(ふたり)の美女(びぢよ)が何時(いつ)の間(ま)にか、195此(この)島(しま)より消(き)え去(さ)りしに一(いち)時(じ)は落胆(らくたん)したが、196よく顧(かへり)みれば、197自分(じぶん)には紀(き)の国(くに)に妻子(さいし)ある事(こと)を思(おも)ひ出(だ)し、198天則(てんそく)違反(ゐはん)の行動(かうどう)となるに思(おも)ひ当(あた)り、199この恋(こひ)を断念(だんねん)する事(こと)となつた。200然(しか)るに清彦(きよひこ)、201照彦(てるひこ)二人(ふたり)の妻子(さいし)は、202夫(をつと)を捨(す)てて何処(いづく)へか姿(すがた)を隠(かく)したる事(こと)後(のち)に至(いた)つて判然(はんぜん)し、203常楠(つねくす)の命(めい)に依(よ)つて貴人(きじん)の娘(むすめ)を妻(つま)となし、204清彦(きよひこ)は琉球(りうきう)の北(きた)の島(しま)を、205照彦(てるひこ)は南(みなみ)の島(しま)を管掌(くわんしやう)し、206永遠(ゑいゑん)にその子孫(しそん)を伝(つた)へたのである。
207 又(また)常楠(つねくす)はハーリス山(ざん)の山(やま)深(ふか)く進(すす)み入(い)つて生神(いきがみ)となり、208俗界(ぞくかい)より姿(すがた)を隠(かく)して了(しま)つた。209今(いま)に到(いた)る迄(まで)不老(ふらう)不死(ふし)の仙術(せんじゆつ)を体得(たいとく)し、210琉球島(りうきうじま)の守護神(しゆごじん)となつてゐる。211あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
212(大正一一・七・二七 旧六・四 外山豊二録)
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