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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第27巻(寅の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 聖地の秋
第1章 高姫館
第2章 清潔法
第3章 魚水心
第2篇 千差万別
第4章 教主殿
第5章 玉調べ
第6章 玉乱
第7章 猫の恋
第3篇 神仙霊境
第8章 琉と球
第9章 女神託宣
第10章 太平柿
第11章 茶目式
第4篇 竜神昇天
第12章 湖上の怪物
第13章 竜の解脱
第14章 草枕
第15章 情意投合
第5篇 清泉霊沼
第16章 琉球の神
第17章 沼の女神
第18章 神格化
余白歌
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霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第27巻(寅の巻)
> 第1篇 聖地の秋 > 第2章 清潔法
<<< 高姫館
(B)
(N)
魚水心 >>>
第二章
清潔法
(
せいけつはふ
)
〔七八四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻
篇:
第1篇 聖地の秋
よみ(新仮名遣い):
せいちのあき
章:
第2章 清潔法
よみ(新仮名遣い):
せいけつほう
通し章番号:
784
口述日:
1922(大正11)年07月22日(旧閏05月28日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年6月20日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫館の前をとおりかかった友彦は、奥の間から人の話し声が聞こえてくるのに立ち止まり、久しぶりに館に戻ってきた主の様子を窺おうと、門の戸を叩いた。
門番の安公は、意地の悪い友彦を中に入らすわけにはいかないと押し留める。友彦はむきになって入ろうと門を押し始める。安彦は、今中に入って高姫と波風立てられてはこちらが迷惑するのでやめてくれ、と懇願する。
友彦は、それなら今日は帰ってやるが、明日は秘密の話があると高姫に伝えるようにと安公に申し渡した。
安彦は、友彦が来たと高姫に知られたら、四足御魂が来たから邸内をすっかり掃除して清めろ、と言われるのが落ちだと独り言を言っていた。それを通りかかった高姫が聞きつけ、友彦が来たなら掃除をしておけ、と安彦に言いつけた。
安彦は月明かりに庭に水を撒きながら、明日も友彦がやってきたらまた掃除を言いつけられて、こちらの体がもたない、と泣き言を言っている。そして、高姫のような人使いの荒い者には仕えていられない、と国依別を頼って館を逃げ出してしまった。
勝公は高姫たちのお膳を据えていたが、高姫から、安公のように逃げ出さないようにしてくれ、と言われて、しまった、安公に先を越されたと漏らす。
高姫は、逃げるつもりだったのかと勝公に問いただした。勝公は、逃げたいのはやまやまだが、高姫の留守居役をしていたので、誰も使ってくれないので仕方なくここに居るだけだ、と高姫に本心を明かす。
高姫はそれを聞いて怒るが、勝公がいなくなると飯の支度をする者がいなくなると困るから、仕方なく置いてやろうという。一方勝公も、早く逃げ出したいとこぼしながら納戸の方に姿を隠した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-10-21 18:19:02
OBC :
rm2702
愛善世界社版:
44頁
八幡書店版:
第5輯 258頁
修補版:
校定版:
45頁
普及版:
19頁
初版:
ページ備考:
001
西
(
にし
)
に
円山
(
まるやま
)
東
(
ひがし
)
に
小雲
(
こくも
)
002
山
(
やま
)
と
川
(
かは
)
とに
挟
(
はさ
)
まれし
003
並木
(
なみき
)
の
松
(
まつ
)
の
片傍
(
かたほと
)
り
004
桧
(
ひのき
)
、
松
(
まつ
)
、
杉
(
すぎ
)
、
柏木
(
かしはぎ
)
の
005
丈余
(
ぢやうよ
)
にあまる
大木
(
たいぼく
)
は
006
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
立
(
た
)
ち
並
(
なら
)
ぶ
007
それの
木蔭
(
こかげ
)
に
瀟洒
(
せうしや
)
たる
008
丸木柱
(
まるきばしら
)
に
笹
(
ささ
)
の
屋根
(
やね
)
009
青
(
あを
)
、
白
(
しろ
)
、
赤
(
あか
)
の
庭石
(
にはいし
)
も
010
どことは
無
(
な
)
しに
配置
(
はいち
)
よく
011
敷
(
し
)
き
並
(
なら
)
べたる
庭
(
には
)
の
奥
(
おく
)
012
幽
(
かす
)
かに
聞
(
きこ
)
ゆる
話声
(
はなしごゑ
)
013
聞
(
き
)
くともなしに
友彦
(
ともひこ
)
は
014
思
(
おも
)
はず
門
(
もん
)
をかい
潜
(
くぐ
)
り
015
何
(
なに
)
かの
綱
(
つな
)
に
曳
(
ひ
)
かれしごと
016
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
門
(
かど
)
の
口
(
くち
)
017
此処
(
ここ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
御館
(
おんやかた
)
018
奥
(
おく
)
には
幽
(
かす
)
かな
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
019
何処
(
どこ
)
の
客
(
きやく
)
かは
知
(
し
)
らねども
020
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
戸
(
と
)
を
叩
(
たた
)
き
021
主人
(
あるじ
)
の
様子
(
やうす
)
を
窺
(
うかが
)
はん
022
さうぢやさうぢやと
独言
(
ひとりごと
)
023
忽
(
たちま
)
ち
表戸
(
おもてど
)
打
(
う
)
ち
叩
(
たた
)
き
024
『
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
友彦
(
ともひこ
)
が
025
久方振
(
ひさかたぶり
)
にお
館
(
やかた
)
へ
026
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
ませる
高姫
(
たかひめ
)
に
027
敬意
(
けいい
)
を
表
(
へう
)
して
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
028
申
(
まを
)
さんものと
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
029
取
(
と
)
らずに
尋
(
たづ
)
ね
来
(
き
)
ましたぞ
030
お
構
(
かま
)
ひなくば
表戸
(
おもてど
)
を
031
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けさせ
給
(
たま
)
へかし』
032
呼
(
よ
)
べば
中
(
なか
)
より
安公
(
やすこう
)
が
033
『
折角
(
せつかく
)
乍
(
なが
)
ら
友彦
(
ともひこ
)
よ
034
お
前
(
まへ
)
は
意地久根
(
いぢくね
)
悪
(
わる
)
い
故
(
ゆゑ
)
035
高姫
(
たかひめ
)
さまの
気
(
き
)
に
合
(
あ
)
はぬ
036
今
(
いま
)
も
今
(
いま
)
とて
国
(
くに
)
さまや
037
秋彦
(
あきひこ
)
さまがやつて
来
(
き
)
て
038
何
(
なん
)
ぢや
彼
(
か
)
んぢやと
駄句
(
だく
)
りつつ
039
形勢
(
けいせい
)
不穏
(
ふおん
)
と
見済
(
みす
)
まして
040
尻
(
しり
)
を
紮
(
から
)
げて
去
(
い
)
にました
041
お
前
(
まへ
)
も
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
なら
042
些
(
ちつ
)
とは
考
(
かんが
)
へなされませ
043
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
に
高姫
(
たかひめ
)
や
044
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
が
045
夏彦
(
なつひこ
)
、
常彦
(
つねひこ
)
前
(
まへ
)
に
置
(
お
)
き
046
秘密
(
ひみつ
)
の
話
(
はなし
)
をして
御座
(
ござ
)
る
047
秘密
(
ひみつ
)
は
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
秘密
(
ひみつ
)
ぢやと
048
高姫
(
たかひめ
)
さまの
常套語
(
じやうたうご
)
049
今日
(
けふ
)
は
風向
(
かぜむき
)
悪
(
わる
)
い
故
(
ゆゑ
)
050
去
(
い
)
んだがお
前
(
まへ
)
の
得
(
とく
)
だらう
051
男
(
をとこ
)
を
下
(
さ
)
げて
帰
(
かへ
)
るより
052
貞操
(
ていさう
)
深
(
ふか
)
きテールスの
053
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
と
親密
(
しんみつ
)
に
054
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
を
055
調
(
しらべ
)
悟
(
さと
)
つた
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
056
喧嘩
(
けんくわ
)
の
材料
(
ざいれう
)
を
蓄
(
たくは
)
へて
057
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
出直
(
でなほ
)
し
堂々
(
だうだう
)
と
058
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢうらい
)
するがよい
059
七尺
(
しちしやく
)
男
(
をとこ
)
が
高姫
(
たかひめ
)
や
060
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
凹
(
へこ
)
まされ
061
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
くのも
見
(
み
)
ともない
062
お
前
(
まへ
)
は
私
(
わし
)
の
好
(
す
)
きな
人
(
ひと
)
063
お
鼻
(
はな
)
の
赤
(
あか
)
い
愛嬌者
(
あいけうもの
)
064
木花姫
(
このはなひめ
)
の
再来
(
さいらい
)
と
065
勝公
(
かつこう
)
さまが
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
た
066
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
蓮花
(
はちすばな
)
067
此処
(
ここ
)
は
聖地
(
せいち
)
の
蓮華台
(
れんげだい
)
068
それの
麓
(
ふもと
)
の
神館
(
かむやかた
)
069
嘘
(
うそ
)
か
誠
(
まこと
)
か
知
(
し
)
らねども
070
系統
(
ひつぽう
)
の
身魂
(
みたま
)
に
憑
(
かか
)
られし
071
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
御座
(
ござ
)
るぞや
072
竜宮海
(
りうぐうかい
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
も
073
黒姫
(
くろひめ
)
さまを
機関
(
きくわん
)
とし
074
天狗
(
てんぐ
)
の
身魂
(
みたま
)
も
引
(
ひ
)
き
添
(
そ
)
うて
075
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
連
(
づ
)
れ
076
三
(
さん
)
人
(
にん
)
世
(
よ
)
の
元
(
もと
)
結構
(
けつこう
)
と
077
済
(
す
)
ました
顔
(
かほ
)
で
御座
(
ござ
)
るのに
078
赤鼻
(
あかはな
)
天狗
(
てんぐ
)
がやつて
来
(
き
)
て
079
鼻
(
はな
)
と
鼻
(
はな
)
とが
衝突
(
しようとつ
)
し
080
又
(
また
)
もや
悶着
(
もんちやく
)
起
(
おこ
)
りなば
081
安公
(
やすこう
)
さまも
勝公
(
かつこう
)
も
082
何
(
ど
)
うして
傍
(
そば
)
に
居
(
を
)
られよか
083
地震
(
ぢしん
)
雷
(
かみなり
)
火
(
ひ
)
の
雨
(
あめ
)
も
084
さまで
恐
(
おそ
)
れぬ
豪傑
(
がうけつ
)
の
085
安公
(
やすこう
)
さまも
高姫
(
たかひめ
)
の
086
その
鼻息
(
はないき
)
にや
耐
(
たま
)
らない
087
男
(
をとこ
)
一匹
(
いつぴき
)
助
(
たす
)
けると
088
思
(
おも
)
うて
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さんせ
089
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
性念場
(
しやうねんば
)
090
秘密話
(
ひみつばなし
)
の
最中
(
さいちう
)
に
091
お
前
(
まへ
)
が
来
(
き
)
たと
聞
(
き
)
いたなら
092
忽
(
たちま
)
ち
起
(
おこ
)
る
暴風雨
(
ばうふうう
)
093
柱
(
はしら
)
は
倒
(
たふ
)
れ
屋根
(
やね
)
剥
(
めく
)
れ
094
険難
(
けんのん
)
至極
(
しごく
)
の
修羅
(
しゆら
)
場裏
(
ぢやうり
)
095
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
096
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましまして
097
白
(
しろ
)
い
玉
(
たま
)
をば
預
(
あづ
)
かつた
098
ジヤンナの
郷
(
さと
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
099
此処
(
ここ
)
では
詮
(
つま
)
らぬ
宣伝使
(
せんでんし
)
100
神
(
かみ
)
の
上
(
うへ
)
には
上
(
うへ
)
がある
101
口
(
くち
)
が
悪
(
わる
)
いと
腹
(
はら
)
立
(
た
)
てて
102
怒
(
おこ
)
つて
呉
(
く
)
れなよ
高姫
(
たかひめ
)
が
103
今日
(
けふ
)
も
今日
(
けふ
)
とて
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
た
104
俺
(
おれ
)
が
云
(
い
)
うので
無
(
な
)
い
程
(
ほど
)
に
105
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
106
御霊
(
みたま
)
が
憑
(
うつ
)
つて
説
(
と
)
き
明
(
あか
)
す
107
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
中
(
うち
)
にも
高姫
(
たかひめ
)
の
108
お
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
れば
大変
(
たいへん
)
だ
109
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
は
目
(
ま
)
のあたり
110
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
れ』と
促
(
うなが
)
せば
111
友彦
(
ともひこ
)
フフンと
鼻
(
はな
)
で
息
(
いき
)
112
『
魂
(
たま
)
ぬけ
婆
(
ば
)
さまの
高姫
(
たかひめ
)
が
113
四股
(
しこ
)
の
雄健
(
をたけ
)
び
踏
(
ふ
)
み
健
(
たけ
)
び
114
何程
(
なにほど
)
勢
(
いきほひ
)
強
(
つよ
)
くとも
115
バラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
と
116
世
(
よ
)
に
謳
(
うた
)
はれた
俺
(
おれ
)
だもの
117
高姫
(
たかひめ
)
位
(
くらゐ
)
が
何
(
なに
)
怖
(
こは
)
い
118
女
(
をんな
)
の
一人
(
ひとり
)
や
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
が
119
怖
(
こは
)
くて
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
られよか
120
腰抜
(
こしぬ
)
け
野郎
(
やらう
)
』と
云
(
い
)
ひながら
121
力
(
ちから
)
の
限
(
かぎ
)
り
表戸
(
おもてど
)
を
122
押
(
お
)
し
分
(
わ
)
け
入
(
い
)
らんとする
所
(
ところ
)
123
『
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
124
友彦
(
ともひこ
)
如
(
ごと
)
きに
這入
(
はい
)
られて
125
何
(
ど
)
うして
門番
(
もんばん
)
勤
(
つと
)
まろか
126
後
(
あと
)
でゴテゴテ
高姫
(
たかひめ
)
の
127
お
小言
(
こごと
)
聞
(
き
)
くのが
耐
(
たま
)
らない
128
友彦
(
ともひこ
)
お
前
(
まへ
)
は
夫
(
それ
)
程
(
ほど
)
に
129
物
(
もの
)
の
道理
(
だうり
)
が
分
(
わか
)
らぬか
130
荒浪
(
あらなみ
)
凪
(
な
)
いだ
明朝
(
あすのあさ
)
131
又
(
また
)
出直
(
でなほ
)
して
来
(
き
)
てお
呉
(
く
)
れ
132
其
(
その
)
時
(
とき
)
こそは
喜
(
よろこ
)
んで
133
𧘕𧘔
(
かみしも
)
つけて
門口
(
かどぐち
)
へ
134
私
(
わたし
)
が
出迎
(
でむか
)
へ
致
(
いた
)
します
135
頼
(
たの
)
む
頼
(
たの
)
む』と
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
を
136
放
(
はな
)
てば
友彦
(
ともひこ
)
立
(
た
)
ち
止
(
と
)
まり
137
平地
(
へいち
)
に
浪
(
なみ
)
を
起
(
おこ
)
すよな
138
悪戯
(
いたづら
)
しても
済
(
す
)
まないと
139
心
(
こころ
)
を
柔
(
やはら
)
げ
声
(
こゑ
)
を
変
(
か
)
へ
140
『お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふのも
尤
(
もつと
)
もだ
141
そんなら
今日
(
けふ
)
は
帰
(
かへ
)
ります
142
高姫
(
たかひめ
)
さまや
黒姫
(
くろひめ
)
に
143
友彦
(
ともひこ
)
さまがやつて
来
(
き
)
て
144
秘密
(
ひみつ
)
の
話
(
はなし
)
があるさうぢや
145
お
邪魔
(
じやま
)
をしてはならないと
146
賢
(
かしこ
)
いお
方
(
かた
)
の
事
(
こと
)
なれば
147
先見
(
せんけん
)
つけて
我
(
わが
)
館
(
やかた
)
148
いそいそ
帰
(
かへ
)
つて
往
(
ゆ
)
きました
149
万一
(
もしも
)
明日
(
みやうにち
)
来
(
き
)
たなれば
150
高姫
(
たかひめ
)
さまも
黒姫
(
くろひめ
)
も
151
高山彦
(
たかやまひこ
)
も
安公
(
やすこう
)
も
152
𧘕𧘔
(
かみしも
)
姿
(
すがた
)
でお
出迎
(
でむか
)
ひ
153
必
(
かなら
)
ず
粗相
(
そさう
)
あるまいぞ
154
呉
(
く
)
れ
呉
(
ぐ
)
れ
申
(
まをし
)
て
置
(
お
)
く
程
(
ほど
)
に
155
沢山
(
たくさん
)
さうに
友彦
(
ともひこ
)
と
156
お
前
(
まへ
)
は
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
るだらう
157
黄金
(
こがね
)
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
竜宮
(
りうぐう
)
の
158
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
にて
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
159
ネルソン
山
(
ざん
)
の
峰続
(
みねつづ
)
き
160
ジヤンナの
郷
(
さと
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
161
小野
(
をの
)
の
小町
(
こまち
)
か
衣通
(
そとをり
)
か
162
ネルソンパテイか
楊貴妃
(
やうきひ
)
か
163
テールス
姫
(
ひめ
)
かと
云
(
い
)
ふやうな
164
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
のナイスをば
165
女房
(
にようばう
)
に
持
(
も
)
つた
果報者
(
くわほうもの
)
166
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ずこの
言葉
(
ことば
)
167
忘
(
わす
)
れちやならぬぞ
高姫
(
たかひめ
)
に
168
頭
(
あたま
)
を
低
(
ひく
)
ふ
尻高
(
しりたか
)
く
169
犬蹲踞
(
いぬつくばい
)
に
身構
(
みがま
)
へし
170
申伝
(
まをしつた
)
へて
呉
(
く
)
れよかし
171
高姫
(
たかひめ
)
さまも
友彦
(
ともひこ
)
の
172
光来
(
くわうらい
)
ありしと
聞
(
き
)
くならば
173
忽
(
たちま
)
ち
顔色
(
かほいろ
)
青
(
あを
)
くして
174
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ね
山
(
やま
)
の
友彦
(
ともひこ
)
が
175
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
たのを
素気
(
すげ
)
なくも
176
主人
(
あるじ
)
の
我
(
われ
)
に
無断
(
むだん
)
にて
177
帰
(
かへ
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
あるものか
178
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
割
(
わり
)
に
間
(
ま
)
の
脱
(
ぬ
)
けた
179
安公
(
やすこう
)
の
野郎
(
やらう
)
と
頭
(
あたま
)
から
180
雷
(
かみなり
)
さまが
落
(
お
)
ちるだろ
181
夫
(
それ
)
を
思
(
おも
)
へば
安公
(
やすこう
)
が
182
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
にて
耐
(
たま
)
らない
183
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
ぢやと
思
(
おも
)
ふなよ
184
武士
(
ぶし
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
ない
185
研
(
みが
)
き
悟
(
さと
)
りし
天眼通
(
てんがんつう
)
186
鏡
(
かがみ
)
に
映
(
うつ
)
したその
如
(
ごと
)
く
187
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
知
(
し
)
れて
居
(
を
)
る
188
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
189
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
坐
(
まし
)
ませよ
190
青垣山
(
あをがきやま
)
は
裂
(
さ
)
けるとも
191
和知
(
わち
)
の
流
(
ながれ
)
は
涸
(
か
)
れるとも
192
友彦
(
ともひこ
)
さまの
云
(
い
)
つた
事
(
こと
)
193
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
違
(
ちが
)
はない
194
大地
(
だいち
)
を
狙
(
ねら
)
つて
打
(
う
)
ち
下
(
お
)
ろす
195
此
(
この
)
棍棒
(
こんぼう
)
は
外
(
はづ
)
れても
196
我
(
わが
)
一言
(
いちごん
)
は
外
(
はづ
)
れない
197
頤
(
あご
)
が
外
(
はづ
)
れて
泡
(
あわ
)
吹
(
ふ
)
いて
198
吠面
(
ほえづら
)
かわいて
梟鳥
(
ふくろどり
)
199
夜食
(
やしよく
)
に
外
(
はづ
)
れた
時
(
とき
)
のよな
200
妙
(
めう
)
な
面
(
つら
)
つきせぬやうに
201
親切心
(
しんせつごころ
)
で
友彦
(
ともひこ
)
が
202
一寸
(
ちよつと
)
お
前
(
まへ
)
に
気
(
き
)
をつける
203
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
友達
(
ともだち
)
の
204
好誼
(
よしみ
)
ぢや
程
(
ほど
)
に
安公
(
やすこう
)
よ
205
決
(
けつ
)
して
仇
(
あだ
)
に
聞
(
き
)
くでない
206
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
には
敵
(
てき
)
も
無
(
な
)
く
207
一人
(
ひとり
)
も
悪
(
あく
)
は
無
(
な
)
い
程
(
ほど
)
に
208
心
(
こころ
)
の
隔
(
へだ
)
ての
柴垣
(
しばがき
)
を
209
早
(
はや
)
く
取
(
と
)
り
除
(
の
)
け
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
210
人
(
ひと
)
を
残
(
のこ
)
らず
仁愛
(
じんあい
)
の
211
ミロクの
眼
(
まなこ
)
で
見
(
み
)
るならば
212
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
ばかり
213
高姫
(
たかひめ
)
さまに
此
(
この
)
事
(
こと
)
を
214
重
(
かさ
)
ねて
云
(
い
)
うて
置
(
お
)
くがよい
215
別
(
わか
)
れに
望
(
のぞ
)
んで
友彦
(
ともひこ
)
が
216
一寸
(
ちよつと
)
憎
(
にく
)
まれ
口
(
ぐち
)
叩
(
たた
)
く
217
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
218
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
219
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
夕焼
(
ゆふやけ
)
の
空
(
そら
)
を
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぎつつ、
220
いそいそと
我
(
わが
)
家
(
や
)
をさして
帰
(
かへ
)
り
往
(
ゆ
)
く。
221
友彦
(
ともひこ
)
の
帰
(
かへ
)
り
往
(
ゆ
)
く
後姿
(
うしろすがた
)
の
見
(
み
)
えぬ
迄
(
まで
)
見送
(
みおく
)
つた
安公
(
やすこう
)
は、
222
安公
(
やすこう
)
『アヽとんでも
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
がやつて
来
(
き
)
やがつて、
223
いらぬ
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ましやがつた。
224
褒
(
ほ
)
めて
去
(
い
)
なさうと
思
(
おも
)
へば
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
這入
(
はい
)
らうとする。
225
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
いから
悪
(
わる
)
く
云
(
い
)
つて
帰
(
かへ
)
さうと
思
(
おも
)
へば、
226
無理
(
むり
)
やりに
戸
(
と
)
を
押
(
お
)
し
開
(
あ
)
けて
這入
(
はい
)
らうとする。
227
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だ。
228
あんな
男
(
をとこ
)
を
此
(
こ
)
の
結構
(
けつこう
)
な
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
のお
館
(
やかた
)
へ
入
(
い
)
れやうものなら、
229
又
(
また
)
高姫
(
たかひめ
)
さまが
四足
(
よつあし
)
身魂
(
みたま
)
が
来
(
き
)
たから、
230
此辺
(
ここら
)
が
汚
(
けが
)
れたから、
231
塩
(
しほ
)
をふれ、
232
水
(
みづ
)
を
撒
(
ま
)
け、
233
其辺
(
そこら
)
を
掃
(
は
)
けと
矢釜
(
やかま
)
しく
仰有
(
おつしや
)
るに
違
(
ちが
)
ひない。
234
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
庭前
(
ていぜん
)
を
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
が
何程
(
なにほど
)
鯱
(
しやち
)
んなつても、
235
お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るやうな
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
はしない。
236
マアマア
高姫
(
たかひめ
)
さまに
分
(
わか
)
らいで
掃除
(
さうぢ
)
だけは
助
(
たす
)
かつた。
237
友彦
(
ともひこ
)
の
奴
(
やつ
)
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
きやがつて、
238
𧘕𧘔
(
かみしも
)
姿
(
すがた
)
でお
出迎
(
でむか
)
ひせよと
馬鹿
(
ばか
)
にしやがる。
239
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
其
(
その
)
場
(
ば
)
逃
(
のが
)
れにお
仕着
(
しき
)
せ
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
つたのが
誤
(
あやま
)
りだ。
240
……
何
(
なに
)
、
241
変説
(
へんせつ
)
改論
(
かいろん
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
242
日進
(
につしん
)
月歩
(
げつぽ
)
だ。
243
今日
(
こんにち
)
の
哲学者
(
てつがくしや
)
の
以
(
も
)
つて
真理
(
しんり
)
となす
所
(
ところ
)
、
244
必
(
かなら
)
ずしも
明日
(
あす
)
は
真理
(
しんり
)
でない。
245
又
(
また
)
夫
(
それ
)
以上
(
いじやう
)
の
大真理
(
だいしんり
)
が
発見
(
はつけん
)
せられたら、
246
今日
(
こんにち
)
の
真理
(
しんり
)
は
三文
(
さんもん
)
の
価値
(
かち
)
も
無
(
な
)
く
社会
(
しやくわい
)
から
葬
(
はうむ
)
られて
仕舞
(
しま
)
ふのだ。
247
エヽそんな
事
(
こと
)
考
(
かんが
)
へて
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
をするのは
馬鹿
(
ばか
)
らしい。
248
刹那心
(
せつなしん
)
を
楽
(
たの
)
しむのだ。
249
あゝ
今
(
いま
)
と
云
(
い
)
ふ
此
(
この
)
刹那
(
せつな
)
の
心配
(
しんぱい
)
と
云
(
い
)
うたら
有
(
あ
)
つたものでない。
250
併
(
しか
)
しマア
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
呉
(
く
)
れたので、
251
俺
(
おれ
)
も
今晩
(
こんばん
)
は
足
(
あし
)
を
長
(
なが
)
うして
寝
(
ね
)
られるワイ』
252
と
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
で
呟
(
つぶや
)
いて
居
(
ゐ
)
たが、
253
いつしか
声高
(
こわだか
)
になり、
254
高姫
(
たかひめ
)
が
小便
(
こやう
)
に
往
(
い
)
つた
帰
(
かへ
)
りがけ、
255
フト
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
り、
256
高姫
(
たかひめ
)
『これこれ
安公
(
やすこう
)
さま、
257
お
前
(
まへ
)
今
(
いま
)
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
たの』
258
安公
(
やすこう
)
『ハイ、
259
眼下
(
がんか
)
に
瞳
(
ひとみ
)
を
放
(
はな
)
てば
淙々
(
そうそう
)
たる
小雲
(
こくも
)
の
清流
(
せいりう
)
老松
(
らうしよう
)
の
枝
(
えだ
)
を
浸
(
ひた
)
し、
260
清鮮
(
せいせん
)
溌溂
(
はつらつ
)
たる
魚
(
うを
)
は
梢
(
こずゑ
)
に
躍
(
をど
)
る。
261
実
(
じつ
)
に
天下
(
てんか
)
の
絶景
(
ぜつけい
)
だ。
262
それにつけても
此
(
この
)
お
庭先
(
にはさき
)
、
263
勝公
(
かつこう
)
と
安公
(
やすこう
)
さま
両人
(
りやうにん
)
の
丹精
(
たんせい
)
により、
264
実
(
じつ
)
に
清浄
(
きれい
)
なものだ。
265
実
(
じつ
)
に
一点
(
いつてん
)
の
塵
(
ちり
)
もなく
汚
(
けが
)
れも
無
(
な
)
い。
266
まるで
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
の
身魂
(
みたま
)
に
好
(
よ
)
く
似
(
に
)
た
綺麗
(
きれい
)
な
庭先
(
にはさき
)
だと、
267
感歎
(
かんたん
)
して
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いますワイ』
268
高姫
(
たかひめ
)
『
友彦
(
ともひこ
)
が
何
(
なん
)
とか、
269
……
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
たぢやないか』
270
安公
(
やすこう
)
『ヘー、
271
……ヘヽヽヽー、
272
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
273
舳
(
へ
)
解
(
と
)
き
放
(
はな
)
ち
艫
(
とも
)
解
(
と
)
き
放
(
はな
)
ち、
274
あの
水面
(
すゐめん
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
渡
(
わた
)
る
船
(
ふね
)
の
美
(
うつく
)
しさ。
275
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
何
(
なん
)
とも
かん
とも
云
(
い
)
はれぬ、
276
結構
(
けつこう
)
な
眺
(
なが
)
めだと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたのですよ』
277
高姫
(
たかひめ
)
『これ
安公
(
やすこう
)
さま、
278
お
前
(
まへ
)
は
掃除
(
さうぢ
)
するのが
嫌
(
きら
)
ひだらう』
279
安公
(
やすこう
)
『ハイ、
280
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
281
身魂
(
みたま
)
の
洗濯
(
せんたく
)
、
282
心
(
こころ
)
の
掃除
(
さうぢ
)
するために
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
へ
修業
(
しうげふ
)
に
参
(
まゐ
)
り、
283
貴女
(
あなた
)
のお
館
(
やかた
)
の
掃除番
(
さうぢばん
)
をさして
頂
(
いただ
)
き、
284
日々
(
にちにち
)
身魂
(
みたま
)
を
結構
(
けつこう
)
に
研
(
みが
)
かして
貰
(
もら
)
うて
居
(
ゐ
)
ます』
285
高姫
(
たかひめ
)
『
何
(
ど
)
うも
糞彦
(
くそひこ
)
の
匂
(
にほ
)
ひがする。
286
厠
(
かはや
)
の
穴
(
あな
)
から
抜
(
ぬ
)
け
出
(
で
)
た
男
(
をとこ
)
の
友彦
(
ともひこ
)
が
来
(
き
)
たのぢやないかな』
287
安公
(
やすこう
)
『
何
(
なん
)
とまア
貴女
(
あなた
)
の
鼻
(
はな
)
は
能
(
よ
)
う
利
(
き
)
きますね。
288
恰
(
まる
)
でワンワンさまのやうですわ』
289
高姫
(
たかひめ
)
『
私
(
わし
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
なれば
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さるかな』
290
安公
(
やすこう
)
『ハイハイ
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
でも
聞
(
き
)
きまする。
291
仮令
(
たとへ
)
貴女
(
あなた
)
が
死
(
し
)
ねと
仰有
(
おつしや
)
つても
背
(
そむ
)
かずに
聞
(
き
)
きまする』
292
高姫
(
たかひめ
)
『
耳
(
みみ
)
だけ
聞
(
き
)
くのぢやないよ。
293
聞
(
き
)
くと
云
(
い
)
ふのは
行
(
おこな
)
ひをする
事
(
こと
)
ぢや。
294
サア
是
(
これ
)
から
屋敷中
(
やしきぢう
)
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
まで
箒
(
はうき
)
で
掃
(
は
)
き
浄
(
きよ
)
め、
295
塩
(
しほ
)
をふり、
296
水
(
みづ
)
を
一面
(
いちめん
)
に
打
(
う
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
297
さうして
此
(
この
)
雨戸
(
あまど
)
にも
何
(
ど
)
うやら
四足
(
よつあし
)
の
手
(
て
)
で
押
(
お
)
したやうな
臭
(
にほひ
)
がする、
298
此
(
この
)
戸
(
と
)
の
薄
(
うす
)
くなる
程
(
ほど
)
砂
(
すな
)
で
磨
(
みが
)
いて
擦
(
こす
)
つて
置
(
お
)
きなさい』
299
安公
(
やすこう
)
『それや……
些
(
ちつ
)
と……ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか』
300
高姫
(
たかひめ
)
『
些
(
ちつ
)
とで
不足
(
ふそく
)
なら
座敷
(
ざしき
)
から
厠
(
かはや
)
の
中
(
なか
)
迄
(
まで
)
掃除
(
さうぢ
)
をさして
上
(
あ
)
げやう。
301
人間
(
にんげん
)
は
苦労
(
くらう
)
せなくては
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
りませぬぞエ』
302
安公
(
やすこう
)
『チー……、
303
チツト……、
304
ムヽヽヽですな』
305
高姫
(
たかひめ
)
『そんなら
とつと
と
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
306
安公
(
やすこう
)
『
勝公
(
かつこう
)
さまと
二人
(
ふたり
)
で
掃除
(
さうぢ
)
をさして
頂
(
いただ
)
くのでせうなア』
307
高姫
(
たかひめ
)
『
勝公
(
かつこう
)
さまは
炊事
(
すゐじ
)
万端
(
ばんたん
)
、
308
座敷
(
ざしき
)
の
用
(
よう
)
もあるし、
309
一息
(
ひといき
)
の
間
(
ま
)
も
手
(
て
)
が
抜
(
ぬ
)
けませぬ。
310
エヽ
何
(
なん
)
だか
汚
(
きたな
)
い
臭
(
にほひ
)
がする。
311
是
(
これ
)
から
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けても
構
(
かま
)
はぬ、
312
掃除
(
さうぢ
)
をするのだよ』
313
安公
(
やすこう
)
『アヽ
掃除
(
さうぢ
)
ですか』
314
と
力
(
ちから
)
無
(
な
)
げに
頸垂
(
うなだ
)
れる。
315
高姫
(
たかひめ
)
『
安公
(
やすこう
)
さま、
316
間違
(
まちがひ
)
無
(
な
)
からうなア』
317
安公
(
やすこう
)
『ヘエー……』
318
と
長返辞
(
ながへんじ
)
し
乍
(
なが
)
ら
水桶
(
みづをけ
)
を
持
(
も
)
つて
井戸端
(
ゐどばた
)
に、
319
のそりのそりと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
320
高姫
(
たかひめ
)
は
細
(
ほそ
)
い
廊下
(
らうか
)
を
伝
(
つた
)
つて
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
321
安公
(
やすこう
)
はブツブツ
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
322
十三夜
(
じふさんや
)
の
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
幸
(
さいはひ
)
に、
323
さしもに
広
(
ひろ
)
き
庭
(
には
)
の
面
(
おも
)
に、
324
深
(
ふか
)
い
井戸
(
ゐど
)
から
撥釣瓶
(
はねつるべ
)
に
汲
(
く
)
み
上
(
あ
)
げては
手桶
(
てをけ
)
に
移
(
うつ
)
し、
325
撒布
(
さんぷ
)
しながら、
326
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
327
安公
(
やすこう
)
『アヽ
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
つて
来
(
き
)
た。
328
天変
(
てんぺん
)
地異
(
ちい
)
よりも
何
(
なに
)
よりも
俺
(
おれ
)
に
取
(
と
)
つては
大問題
(
だいもんだい
)
だ。
329
大国治立
(
おほくにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
が
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
をお
立替
(
たてか
)
へ
遊
(
あそ
)
ばし、
330
綺麗
(
きれい
)
薩張
(
さつぱり
)
水晶
(
すゐしやう
)
の
世
(
よ
)
になさる
以上
(
いじやう
)
の
大神業
(
だいしんげふ
)
だ。
331
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
折角
(
せつかく
)
ちやんと
掃除
(
さうぢ
)
を
済
(
す
)
まし、
332
高姫
(
たかひめ
)
衛生
(
えいせい
)
委員長
(
ゐゐんちやう
)
の
試験
(
しけん
)
にやつと
合格
(
がふかく
)
して、
333
やれやれと
息
(
いき
)
を
入
(
い
)
れる
時分
(
じぶん
)
に、
334
又
(
また
)
もや
友彦
(
ともひこ
)
が
明日
(
あす
)
になるとやつて
来
(
き
)
よる。
335
さうすりや
又
(
また
)
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
を
繰返
(
くりかへ
)
さねばなるまい。
336
高姫
(
たかひめ
)
も
高姫
(
たかひめ
)
じや、
337
友彦
(
ともひこ
)
も
友彦
(
ともひこ
)
ぢや、
338
鷹
(
たか
)
とも
鳶
(
とんび
)
とも
、
339
鬼
(
おに
)
とも
、
340
蛇
(
じや
)
とも
、
341
馬鹿
(
ばか
)
とも
、
342
何
(
なん
)
とも
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
代者
(
しろもの
)
の
寄合
(
よりあひ
)
だ。
343
さうぢやと
云
(
い
)
つて
此
(
この
)
儘
(
まま
)
掃除
(
さうぢ
)
をせずに
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
にも
往
(
ゆ
)
かず、
344
是非
(
ぜひ
)
とも
皆
(
みな
)
やらねばならぬ。
345
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
る
とも
曇
(
くも
)
る
とも
、
346
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つ
とも
虧
(
か
)
くる
とも
、
347
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
む
とも
、
348
友
彦
(
ともひこ
)
の
命
(
いのち
)
のある
限
(
かぎ
)
り、
349
やつて
来
(
こ
)
ぬ
とも
分
(
わか
)
らない。
350
困
(
こま
)
つたものだ。
351
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
さまの
道
(
みち
)
に
居
(
ゐ
)
ながら、
352
何故
(
なぜ
)
犬
(
いぬ
)
と
猿
(
さる
)
のやうに
仲
(
なか
)
が
悪
(
わる
)
いのだらう。
353
共
(
とも
)
に
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
き
合
(
あ
)
うて
往
(
ゆ
)
かねばならぬ
神
(
かみ
)
のお
道
(
みち
)
、
354
とも
角
(
かく
)
も
困
(
こま
)
つたものだなア、
355
エヽ
焼糞
(
やけくそ
)
だツ。
356
(安公)
『
今日
(
けふ
)
は
九
(
く
)
月
(
ぐわつ
)
の
十三夜
(
じふさんや
)
357
俺
(
おれ
)
の
副守
(
ふくしゆ
)
よ
能
(
よ
)
つく
聞
(
き
)
け
358
必
(
かなら
)
ず
忘
(
わす
)
れちやならないぞ
359
こんな
苦
(
くる
)
しい
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
ふも
360
鼻赤
(
はなあか
)
男
(
をとこ
)
の
友彦
(
ともひこ
)
が
361
来
(
き
)
やがつたばかりに
肉体
(
にくたい
)
も
362
お
前
(
まへ
)
も
共
(
とも
)
に
苦労
(
くらう
)
する
363
苦労
(
くらう
)
するのがイヤなれば
364
俺
(
おれ
)
の
体
(
からだ
)
を
一寸
(
ちよつと
)
放
(
はな
)
れ
365
鼻赤
(
はなあか
)
天狗
(
てんぐ
)
に
憑依
(
ひようい
)
して
366
又
(
また
)
しても
友彦
(
ともひこ
)
が
来
(
こ
)
ぬやうに
367
頭
(
あたま
)
を
痛
(
いた
)
め
足
(
あし
)
痛
(
いた
)
め
368
鉄条網
(
てつでうまう
)
を
張
(
は
)
つて
呉
(
く
)
れ
369
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
来
(
こ
)
られては
370
俺
(
おれ
)
の
肉体
(
からだ
)
がつづかない
371
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
372
叶
(
かな
)
はん
叶
(
かな
)
はん
耐
(
たま
)
らない
373
叶
(
かな
)
はん
時
(
とき
)
の
神頼
(
かみだの
)
み
374
同
(
おな
)
じ
主人
(
あるじ
)
を
持
(
も
)
つならば
375
言依別
(
ことよりわけの
)
神
(
かみ
)
さまや
376
杢助
(
もくすけ
)
さまのやうな
人
(
ひと
)
377
神
(
かみ
)
さま
持
(
も
)
たして
下
(
くだ
)
しやんせ
378
鼻高姫
(
はなたかひめ
)
の
頑固者
(
ぐわんこもの
)
379
偏狭
(
へんけふ
)
な
心
(
こころ
)
を
出
(
だ
)
しよつて
380
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬ
奴
(
やつ
)
が
来
(
き
)
たと
云
(
い
)
ひ
381
汚
(
よご
)
れて
臭
(
くさ
)
いとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
382
我
(
わが
)
儘
(
まま
)
気儘
(
きまま
)
も
程
(
ほど
)
がある
383
人
(
ひと
)
を
使
(
つか
)
はうと
思
(
おも
)
つたら
384
一度
(
いちど
)
は
使
(
つか
)
はれ
見
(
み
)
るがよい
385
高姫
(
たかひめ
)
さまのやうな
人
(
ひと
)
386
弥
(
いよいよ
)
嫌
(
いや
)
になつて
来
(
き
)
た
387
是
(
これ
)
から
此
(
この
)
家
(
や
)
を
夜抜
(
よぬ
)
けして
388
国依別
(
くによりわけ
)
か
秋彦
(
あきひこ
)
の
389
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して
逃
(
に
)
げ
込
(
こ
)
まうか
390
宇都山
(
うづやま
)
郷
(
ごう
)
の
破屋
(
あばらや
)
の
391
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
の
真似
(
まね
)
をした
392
俺
(
おれ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
国
(
くに
)
さまの
393
親
(
おや
)
の
御霊
(
みたま
)
か
知
(
し
)
れないぞ
394
エヽエヽ
思
(
おも
)
へば
高姫
(
たかひめ
)
が
395
小癪
(
こしやく
)
に
触
(
さは
)
つて
耐
(
たま
)
らない
396
小癪
(
こしやく
)
に
触
(
さは
)
つて
耐
(
たま
)
らない
397
小杓
(
こしやく
)
を
握
(
にぎ
)
つた
此
(
この
)
手
(
て
)
さへ
398
びりびり
震
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
た
399
エヽ
邪魔
(
じやま
)
くさい
邪魔
(
じやま
)
くさい』
400
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
水桶
(
みづをけ
)
を
401
頭上
(
づじやう
)
に
高
(
たか
)
く
差
(
さ
)
し
上
(
あ
)
げて
402
庭
(
には
)
に
並
(
なら
)
んだ
捨
(
す
)
て
石
(
いし
)
を
403
睨
(
にら
)
んでどつと
打
(
う
)
ちつける
404
桶
(
をけ
)
は
忽
(
たちま
)
ちめきめきと
405
木
(
こ
)
つ
端
(
ぱ
)
微塵
(
みじん
)
に
潰滅
(
くわいめつ
)
し
406
水
(
みづ
)
は
一度
(
いちど
)
に
飛
(
と
)
び
散
(
ち
)
つて
407
高姫
(
たかひめ
)
黒姫
(
くろひめ
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
408
居間
(
ゐま
)
の
障子
(
しやうじ
)
に
打
(
ぶ
)
つ
突
(
つ
)
かる
409
高姫
(
たかひめ
)
驚
(
おどろ
)
き
外面
(
そとも
)
をば
410
眺
(
なが
)
める
途端
(
とたん
)
に
安公
(
やすこう
)
は
411
『お
前
(
まへ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
黒姫
(
くろひめ
)
か
412
長
(
なが
)
らくお
世話
(
せわ
)
になりました
413
お
前
(
まへ
)
のやうな
えぐい
人
(
ひと
)
414
誰
(
たれ
)
がヘイヘイハイハイと
415
粗末
(
そまつ
)
な
粗末
(
そまつ
)
な
椀給
(
わんきふ
)
で
416
御用
(
ごよう
)
聞
(
き
)
く
奴
(
やつ
)
がありませうか
417
一先
(
ひとま
)
づ
御免
(
ごめん
)
候
(
さふら
)
へ』と
418
後
(
あと
)
を
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
き
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
いて
419
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びながら
420
黍畠
(
きびばた
)
深
(
ふか
)
く
隠
(
かく
)
れける。
421
高姫
(
たかひめ
)
『エヽ
仕方
(
しかた
)
のないものだ。
422
とうとう
彼奴
(
あいつ
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
の
悪霊
(
あくれい
)
に
憑
(
つ
)
かれて
仕舞
(
しま
)
つたな。
423
是
(
これ
)
から
国依別
(
くによりわけ
)
の
館
(
やかた
)
に
行
(
ゆ
)
くと、
424
独言
(
ひとりごと
)
を
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
た。
425
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
身魂
(
みたま
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると、
426
碌
(
ろく
)
な
事
(
こと
)
は
一
(
ひと
)
つも
出来
(
でき
)
はしない。
427
……なア
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
428
確
(
しつか
)
りしないと
貴方
(
あなた
)
も
何時
(
いつ
)
悪神
(
わるがみ
)
に
憑依
(
ひようい
)
せられるか
分
(
わか
)
りませぬぜ』
429
黒姫
(
くろひめ
)
『オホヽヽヽ』
430
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
勝公
(
かつこう
)
は、
431
勝公
(
かつこう
)
『もしもし
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
さま、
432
大変
(
たいへん
)
に
御飯
(
ごはん
)
が
遅
(
おく
)
れて
済
(
す
)
みませぬ。
433
どうぞ
此
(
この
)
窓
(
まど
)
を
開
(
あ
)
けて、
434
お
月
(
つき
)
さまを
見
(
み
)
乍
(
なが
)
ら、
435
悠
(
ゆつ
)
くりとお
食
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
436
高姫
(
たかひめ
)
『あゝ
夫
(
それ
)
は
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつた。
437
お
前
(
まへ
)
も
早
(
はや
)
う
御飯
(
ごはん
)
をお
食
(
あが
)
り、
438
安公
(
やすこう
)
のやうに
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さぬやうにして
下
(
くだ
)
されや』
439
勝公
(
かつこう
)
『ヘエ、
440
もう
彼奴
(
あいつ
)
は
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
しましたかな。
441
ヤヽ
仕舞
(
しま
)
つた。
442
先立
(
さきだ
)
たれたか、
443
残念
(
ざんねん
)
だ』
444
高姫
(
たかひめ
)
『これこれ
勝公
(
かつこう
)
さま、
445
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
446
高姫館
(
たかひめやかた
)
が
嫌
(
いや
)
になつたので、
447
抜
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
す
積
(
つも
)
りで
居
(
ゐ
)
たのだらう』
448
勝公
(
かつこう
)
『
何
(
なん
)
だか
聖地
(
せいち
)
の
方々
(
かたがた
)
に
対
(
たい
)
しても
肩身
(
かたみ
)
が
狭
(
せま
)
いやうな
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
しましてなア。
449
立寄
(
たちよ
)
れば
大木
(
おほぎ
)
の
蔭
(
かげ
)
とやら、
450
何程
(
なにほど
)
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
に
大木
(
たいぼく
)
が
沢山
(
たくさん
)
あつても、
451
箸
(
はし
)
と
親分
(
おやぶん
)
は
丈夫
(
ぢやうぶ
)
なのがよいとか
申
(
まを
)
しましてな。
452
実
(
じつ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
思案
(
しあん
)
をして
居
(
を
)
りますので
御座
(
ござ
)
いますワイ』
453
高姫
(
たかひめ
)
『
宜敷
(
よろし
)
い、
454
旗色
(
はたいろ
)
のよい
方
(
はう
)
につくのが
当世
(
たうせい
)
だ。
455
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
さまにでも
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げて
貰
(
もら
)
ひなさい』
456
勝公
(
かつこう
)
『
今日
(
けふ
)
から
此処
(
ここ
)
を
出
(
だ
)
されては
実
(
じつ
)
は
困
(
こま
)
ります。
457
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
458
○○の
留守
(
るす
)
をして
居
(
を
)
つた
奴
(
やつ
)
だからと
云
(
い
)
つて、
459
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
排斥
(
はいせき
)
して
使
(
つか
)
つて
呉
(
く
)
れませぬから、
460
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
貴方
(
あなた
)
のお
宅
(
たく
)
にお
世話
(
せわ
)
になつて
居
(
ゐ
)
ました。
461
よい
口
(
くち
)
があれば
誰
(
たれ
)
がこんな
所
(
ところ
)
へ
半時
(
はんとき
)
でも
居
(
を
)
りませうか。
462
私
(
わたし
)
の
口
(
くち
)
が
出来
(
でき
)
る
迄
(
まで
)
一寸
(
ちよつと
)
腰
(
こし
)
かけに
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい』
463
高姫
(
たかひめ
)
『エヽ
汚
(
けが
)
らはしい。
464
そんな
心
(
こころ
)
の
人
(
ひと
)
はトツトと
去
(
い
)
んで
下
(
くだ
)
さい、
465
反吐
(
へど
)
が
出
(
で
)
る』
466
勝公
(
かつこう
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
反吐
(
へど
)
の
出
(
で
)
るやうな
汚
(
きたな
)
い
者
(
もの
)
を
集
(
あつ
)
めて
洗濯
(
せんたく
)
をなさるのぢやありませぬか。
467
清
(
きよ
)
らかな
者
(
もの
)
計
(
ばか
)
りなら、
468
別
(
べつ
)
に
教
(
をしへ
)
を
立
(
た
)
てる
必要
(
ひつえう
)
はありますまい。
469
高姫
(
たかひめ
)
さまもよい
洗濯
(
せんたく
)
の
材料
(
ざいれう
)
が
出来
(
でき
)
たと
思
(
おも
)
つて、
470
も
少
(
すこ
)
し
私
(
わたし
)
の
身魂
(
みたま
)
を
洗濯
(
せんたく
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
471
高姫
(
たかひめ
)
『もう
洗濯屋
(
せんたくや
)
は
廃業
(
はいげふ
)
しました。
472
洗濯
(
せんたく
)
がして
欲
(
ほつ
)
しければ
一本木
(
いつぽんぎ
)
迄
(
まで
)
いつて
来
(
き
)
なさい。
473
サアサアトツトと
帰
(
かへ
)
つた
帰
(
かへ
)
つた……とは
云
(
い
)
ふものの、
474
明日
(
あす
)
から
誰
(
たれ
)
が
飯
(
めし
)
を
炊
(
た
)
いて
呉
(
く
)
れるだらう。
475
チヨツ、
476
いまいましいが、
477
そんなら
暫
(
しばら
)
く
置
(
お
)
いて
上
(
あ
)
げよう』
478
勝公
(
かつこう
)
『
何
(
なん
)
だか
安公
(
やすこう
)
が
出
(
で
)
やがつてから
俺
(
おれ
)
も
出
(
で
)
たくなつた。
479
何
(
なん
)
ぼう
置
(
お
)
いてやると
云
(
い
)
うても
居
(
を
)
る
気
(
き
)
もせず、
480
あゝ
仕方
(
しかた
)
がないなア』
481
と
小
(
ちい
)
さい
声
(
こゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
きながら、
482
納戸
(
なんど
)
の
方
(
はう
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
483
(
大正一一・七・二二
旧閏五・二八
加藤明子
録)
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