霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 教主殿(けうしゆでん)〔七八六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第2篇 千差万別 よみ(新仮名遣い):せんさばんべつ
章:第4章 教主殿 よみ(新仮名遣い):きょうしゅでん 通し章番号:786
口述日:1922(大正11)年07月23日(旧閏05月29日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
教主殿の奥の広間には、言依別命をはじめとして、梅子姫、五十子姫、英子姫、亀彦、音彦、玉能姫、玉治別、初稚姫、杢助が集まって、麻邇の宝珠の処置について協議を凝らしていた。
そこへ高姫・黒姫・高山彦の三人がやってきた。言依別命は三人を上座に招くが、高姫は嫌味を言い、ついでに玉能姫に当り散らし、ついで玉治別、梅子姫、五十子姫、英子姫にもひととおり当たり散らした。
玉治別は、なにほど系統だといっても、高姫に迎合盲従はできない、と反撃する。高姫は黒姫・高山彦にも言い負けぬようにとけしかける。黒姫は、杢助・初稚姫・玉能姫につっかかる。
玉治別が割って入って黒姫の話の腰を折ろうとしたので、高姫は玉治別をたしなめた。そして怒り心頭に達した振りをして、その場を立って帰ろうとする。英子姫が下手に出て高姫を留めると、高姫はしてやったりとその場に居直った。
高姫は、麻邇の宝珠を信者に公開するに当たってまず自分たちが玉を検めると手はずを決めだした。玉治別が茶々を入れたが、英子姫、五十子姫にたしなめられ、高姫の指図どおりに麻邇の宝珠公開の段取りが決められた。
杢助は来る九月二十三日を公開日と定め、一同賛成の後、各自退場していった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-10-23 19:59:39 文字数:6912 OBC :rm2704
愛善世界社版:81頁 八幡書店版:第5輯 271頁 修補版: 校定版:85頁 普及版:35頁 初版: ページ備考:
001松(まつ)の老木(らうぼく)、梅林(うめばやし)
002楓(かへで)の紅葉(もみぢ)、百日紅(さるすべり)
003木斛(もくこく)、木犀(もくせい)、樅(もみ)、多羅樹(たら)や
004緑紅(みどりくれなゐ)こきまぜて
005幽邃(いうすゐ)閑雅(かんが)の神苑地(しんゑんち)
006魚鱗(ぎよりん)の波(なみ)を湛(たた)へたる
007金竜池(きんりういけ)に影(かげ)映(うつ)す
008言霊閣(ことたまかく)は雲表(うんぺう)に
009聳(そそ)りて下界(げかい)を睥睨(へいげい)し
010神威(しんゐ)は四方(よも)に赫々(くわくくわく)と
011轟(とどろ)き亘(わた)る三五(あななひ)の
012神(かみ)の教(をしへ)の教主殿(けうしゆでん)
013八咫(やた)の広間(ひろま)に寄(よ)り集(つど)ふ
014梅子(うめこ)の姫(ひめ)を始(はじ)めとし
015神(かみ)の大道(おほぢ)に朝夕(あさゆふ)に
016いそしみ仕(つか)ふる五十子(いそこ)姫(ひめ)
017闇(やみ)をはらして英子姫(ひでこひめ)
018万代(よろづよ)寿(ことほ)ぐ亀彦(かめひこ)や
019五十鈴(いすず)の滝(たき)の音彦(おとひこ)や
020心(こころ)も光(ひか)る玉能姫(たまのひめ)
021玉治別(たまはるわけ)を始(はじ)めとし
022初稚姫(はつわかひめ)や杢助(もくすけ)は
023言依別(ことよりわけ)と諸共(もろとも)に
024奥(おく)の広間(ひろま)に座(ざ)を占(し)めて
025玉依姫(たまよりひめ)の賜(たま)ひたる
026麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)の処置(しよち)につき
027互(たがひ)に協議(けふぎ)を凝(こ)らし居(を)る
028時(とき)しもあれや玄関(げんくわん)に
029現(あら)はれ来(きた)る三人(みたり)連(づ)れ
030御免(ごめん)々々(ごめん)と訪(おとな)へば
031玉治別(たまはるわけ)は出迎(いでむか)へ
032一目(ひとめ)見(み)るより慇懃(いんぎん)に
033笑顔(ゑがほ)を作(つく)り腰(こし)屈(かが)め
034高姫(たかひめ)さまか黒姫(くろひめ)か
035高山彦(たかやまひこ)の神司(かむづかさ)
036ようこそお入来(いで)下(くだ)さつた
037言依別(ことよりわけ)の神司(かむづかさ)
038其(その)他(た)数多(あまた)のお歴々(れきれき)
039今朝(けさ)からひどう御(お)待兼(まちか)ね
040サアサア御(お)通(とほ)りなさいませ
041高姫(たかひめ)軽(かる)く会釈(ゑしやく)して
042それは皆(みな)さまお待兼(まちか)ね
043奥(おく)へ案内(あんない)願(ねが)ひませう
044黒姫(くろひめ)さまや高山彦(たかやまひこ)の
045神(かみ)の司(つかさ)のお二方(ふたかた)
046サアサア共(とも)に参(まゐ)りませう
047黒姫(くろひめ)夫婦(ふうふ)は黙々(もくもく)と
048ものをも言(い)はず足摺(あしず)りし
049静々(しづしづ)あとに従(したが)うて
050奥(おく)の間(ま)さして進(すす)み入(い)る。
051高姫(たかひめ)『ヤア是(これ)は是(これ)は言依別(ことよりわけ)様(さま)を始(はじ)め、052英子姫(ひでこひめ)様(さま)其(その)他(た)のお歴々(れきれき)様(さま)方(がた)の御(おん)前(まへ)も憚(はばか)らず、053賤(いや)しき高姫(たかひめ)、054恐(おそ)れ気(げ)もなく御(お)伺(うかが)ひ致(いた)しまして、055さぞ御(お)居間(ゐま)を汚(けが)すことで御座(ござ)いませう。056何事(なにごと)も神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に広(ひろ)き御心(みこころ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)しまして、057此(この)老骨(らうこつ)をお咎(とが)めなく可愛(かあい)がつて下(くだ)さいませ』
058 一同(いちどう)は一(いち)時(じ)に手(て)をついて、059礼(れい)を施(ほどこ)した。
060言依別(ことよりわけ)『高姫(たかひめ)様(さま)、061そこは端近(はしぢか)、062ここにあなた方(がた)お三人(さんにん)様(さま)のお席(せき)が拵(こしら)へて御座(ござ)います。063どうぞこちらへお坐(すわ)り下(くだ)さいませ』
064高姫(たかひめ)『何分(なにぶん)にも身魂(みたま)の研(みが)けぬ、065偽日(にせひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)や、066体主(たいしゆ)霊従(れいじう)の身魂(みたま)計(ばか)りで御座(ござ)いまするから、067そんな正座(しやうざ)につきますのは畏(おそ)れ多(おほ)う御座(ござ)います。068庭(には)の隅(すみ)つこで結構(けつこう)で御座(ござ)いますが、069御(お)言葉(ことば)に甘(あま)えて、070お歴々(れきれき)様(さま)の末席(ばつせき)を汚(けが)さして頂(いただ)くことになりました。071どうぞ左様(さやう)な御(ご)心配(しんぱい)は下(くだ)さいますな』
072玉能姫(たまのひめ)『高姫(たかひめ)様(さま)、073さういふ御(ご)遠慮(ゑんりよ)には及(およ)びますまい。074教主(けうしゆ)様(さま)の御(お)言葉(ことば)、075どうぞお三人(さんにん)様(さま)共(とも)快(こころよ)くお坐(すわ)り下(くだ)さいませ』
076高姫(たかひめ)『コレお節(せつ)、077御(ご)歴々(れきれき)様(さま)の中(なか)も憚(はばか)らず、078何(なに)をツベコベと……女(をんな)のかしましい……口出(くちだ)しなさるのだ。079チツと御(お)慎(つつし)み遊(あそ)ばせ。080もう少(すこ)し神(かみ)様(さま)の感化(かんくわ)に依(よ)りて淑女(しゆくぢよ)におなりなさつたかと思(おも)へば、081ヤツパリお里(さと)は争(あらそ)はれぬもの、082平助(へいすけ)やお楢(なら)の娘(むすめ)のお節(せつ)丈(だけ)あつて、083名(な)は立派(りつぱ)な玉能姫(たまのひめ)さまでも、084ヤツパリ落付(おちつ)きがないので、085かういふ時(とき)には醜態(みつと)もない。086高姫(たかひめ)がかう申(まを)すと、087猜疑心(さいぎしん)か、088意地悪(いぢわる)かの様(やう)に思(おも)ふでせうが、089決(けつ)して私(わたし)はそんな心(こころ)は毛頭(まうとう)も持(も)ちませぬ。090お前(まへ)さまの身魂(みたま)を立派(りつぱ)なものに研(みが)き上(あ)げて、091神業(しんげふ)に参加(さんか)なさつた手前(てまへ)、092恥(はづか)しくない様(やう)に、093終始(しうし)一貫(いつくわん)した神司(かむづかさ)にして上(あ)げたい計(ばか)り、094お気(き)に障(さは)る様(やう)なことを申(まを)しますワイ。095必(かなら)ず必(かなら)ず三五教(あななひけう)の教(をしへ)は、096悪意(あくい)に取(と)つてはなりませぬぞ。097序(ついで)に初稚姫(はつわかひめ)にも云(い)うておきますが、098お前(まへ)もチツとは我慢(がまん)が強(つよ)い。099何程(なにほど)杢(もく)が総務(そうむ)ぢやと云(い)つて、100親(おや)を笠(かさ)に被(かぶ)り年端(としは)も行(ゆ)かぬ癖(くせ)に肩(かた)で風(かぜ)を切(き)り、101横柄面(わうへいづら)を曝(さら)してはなりませぬぞ。102金剛(こんがう)不壊(ふえ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)を何々(なになに)したと思(おも)つて慢心(まんしん)すると、103又(また)後戻(あともど)りを致(いた)さねばなりませぬから、104慈母(じぼ)の愛(あい)を以(もつ)て行末(ゆくすゑ)永(なが)きお前(まへ)さまに注意(ちうい)を与(あた)へます』
105玉能姫(たまのひめ)『ハイ何(なに)から何(なに)まで御(お)心(こころ)をこめられし御(ご)教訓(けうくん)、106猜疑心(さいぎしん)などは少(すこ)しも持(も)ちませぬ。107此(この)上(うへ)、108何事(なにごと)も万事(ばんじ)足(た)らはぬ玉能姫(たまのひめ)、109御(ご)指導(しだう)を御(お)願(ねが)ひ致(いた)します』
110高姫(たかひめ)『お前(まへ)さまはそれだから可(い)かぬのだ。111ヘン、112言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)さまから、113紫(むらさき)の玉(たま)の御用(ごよう)を仰(あふ)せつけられ、114何々(なになに)へ何々(なになに)したと思(おも)つて、115鼻(はな)にかけ、116玉能姫(たまのひめ)なんて、117傲慢(ごうまん)不遜(ふそん)にも程(ほど)があるぢやありませぬか。118そんな保護色(ほごしよく)は綺麗(きれい)サツパリと払拭(ふつしき)し去(さ)り、119何故(なぜ)お節(せつ)と仰有(おつしや)らぬのだ。120かう申(まを)すと又(また)お前(まへ)さまは平助(へいすけ)でもない、121お楢(なら)でもない様(やう)な、122お節介(せつかい)ぢやと御(ご)立腹(りつぷく)なさるだらうが、123人(ひと)は謙遜(けんそん)と云(い)ふ事(こと)が肝腎(かんじん)ですよ。124今後(こんご)はキツと玉能姫(たまのひめ)なぞと大(だい)それた事(こと)は御(ご)遠慮(ゑんりよ)なさつたがよからう。125何(なに)から何(なに)まで、126酢(す)につけ味噌(みそ)につけ、127八当(やつあた)りに当(あた)つて根性悪(こんじやうわる)を高姫(たかひめ)さまがなさるなぞと思(おも)つちや大間違(おほまちがひ)ですよ。128……これお節(せつ)さま、129わたしの申(まを)すことに点(てん)の打(う)ち所(どこ)がありますかなア』
130玉能姫(たまのひめ)『ハイ、131実(じつ)に聖者(せいじや)のお言葉(ことば)、132名論(めいろん)卓説(たくせつ)、133玉能姫(たまのひめ)……エー否々(いやいや)お節(せつ)、134誠(まこと)に感服(かんぷく)仕(つかまつ)りました。135其(その)剛情(がうじやう)……イエイエ御(ご)意見(いけん)には少(すこ)しも仇(あだ)は御座(ござ)いませぬ、136併(しか)し乍(なが)ら個人(こじん)としてはお節(せつ)でも、137お尻(いど)でも少(すこ)しも構(かま)ひませぬが、138神(かみ)様(さま)の御用(ごよう)を致(いた)します時(とき)は、139教主(けうしゆ)様(さま)から賜(たま)はつた玉能姫(たまのひめ)の職掌(しよくしやう)に奉仕(ほうし)せねばなりませぬから、140公(おほやけ)の席(せき)に於(おい)ては、141どうぞ玉能姫(たまのひめ)と申(まを)すことをお許(ゆる)し下(くだ)さいませ』
142高姫(たかひめ)『女(をんな)と云(い)ふ者(もの)はさう表(おもて)に立(た)つて、143堂々(だうだう)と神業(しんげふ)に参加(さんか)するものではありませぬ。144オツトドツコイ……それはエー、145ある人(ひと)の言(い)ふ事(こと)、146私(わたし)とても女(をんな)宣伝使(せんでんし)、147女(をんな)でなくちや、148天(あま)の岩戸(いはと)の初(はじめ)から夜(よ)の明(あ)けぬ国(くに)、149言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)様(さま)もヤツパリ女(をんな)に……綺麗(きれい)な女(をんな)の言葉(ことば)は受取(うけとり)易(やす)いと見(み)えますワイ。150オツホヽヽヽ、151もう斯(こ)う皺(しわ)が寄(よ)つて醜(みにく)うなると、152到底(たうてい)若(わか)い教主(けうしゆ)様(さま)のお気(き)に入(い)らないのは尤(もつと)もで御座(ござ)います。153こんなことを申(まを)すと、154又(また)高姫(たかひめ)鉄道(てつだう)の脱線(だつせん)だと仰有(おつしや)るかも知(し)れませぬが、155決(けつ)して脱線(だつせん)でも転覆(てんぷく)でも御座(ござ)いませぬぞ。156皆(みんな)日(ひ)の出神(でのかみ)さまが私(わたし)の口(くち)を借(か)つての御(ご)託宣(たくせん)、157冷静(れいせい)に聞(き)き流(なが)されては高姫(たかひめ)聊(いささ)か迷惑(めいわく)を致(いた)します。158お節(せつ)計(ばか)りでない、159お初(はつ)も其(その)通(とほ)り、160初稚姫(はつわかひめ)なぞと大(だい)それたことを言(い)つちやなりませぬぞ。161本末(ほんまつ)自他(じた)公私(こうし)を明(あきら)かにせなならぬお道(みち)、162神(かみ)第一(だいいち)、163人事(じんじ)第二(だいに)ぢやありませぬか。164私(わたし)は系統(ひつぽう)の身魂(みたま)、165四魂(しこん)の中(なか)の一人(ひとり)、166日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)、167言依別(ことよりわけ)さまが何程(なにほど)偉(えら)くても人間(にんげん)さまぢや。168人間(にんげん)の言(い)ふことを聞(き)いて、169此(この)生神(いきがみ)の言葉(ことば)を冷(ひや)やかな耳(みみ)で聞(き)き流(なが)すとは、170主客(しゆきやく)転倒(てんたふ)、171天地(てんち)転覆(てんぷく)も甚(はなはだ)しいと云(い)はねばなりませぬぞえ。172……コレ田吾作(たごさく)、173お前(まへ)も余程(よほど)偉者(えらもの)になつたなア。174竜宮(りうぐう)の一(ひつ)つ島(じま)へ行(い)つて、175玉依姫(たまよりひめ)様(さま)に玉(たま)を頂(いただ)き乍(なが)ら、176スレツからしの黄竜姫(わうりようひめ)に渡(わた)したぢやないか。177ヤツパリ田吾作(たごさく)はどこ迄(まで)も田吾作(たごさく)ぢや、178どこともなく目尻(めじり)が下(さが)つて居(ゐ)る。179何程(なにほど)顔(かほ)が美(うつく)しくても……其(その)声(こゑ)で蜴(とかげ)喰(くら)ふか時鳥(ほととぎす)……、180心(こころ)の奥(おく)の奥(おく)まで、181なぜ見抜(みぬ)きなさらぬ。182そんな黄竜姫(わうりようひめ)の様(やう)な若(わか)い方(かた)に渡(わた)すのならば、183なぜスツと持(も)つて帰(かへ)つて、184立派(りつぱ)な生宮(いきみや)にお渡(わた)しせぬのぢやい。185お節(せつ)だつて、186お初(はつ)だつて、187皆(みんな)量見(りやうけん)が間違(まちが)つて居(を)るぢやないか。188あんまり甚(はなはだ)しい矛盾(むじゆん)で、189開(あ)いた口(くち)が塞(ふさ)がりませぬワイな。190……コレコレ英子姫(ひでこひめ)さま、191梅子姫(うめこひめ)さま、192五十子(いそこ)姫(ひめ)さま、193お前(まへ)さまは変性(へんじやう)女子(によし)の系統(ひつぽう)、194天(あま)の岩戸(いはと)を閉(し)めた身魂(みたま)の血筋(ちすぢ)だから、195よほど遠慮(ゑんりよ)をなさらぬと可(い)けませぬぞえ。196人(ひと)がチヤホヤ言(い)うと、197つい好(よ)い気(き)になるものだ。198何程(なにほど)立派(りつぱ)な賢(かしこ)い人間(にんげん)でも、199悪(わる)くいはれるのは気(き)の好(よ)くないもの、200寄(よ)つてかかつて持上(もちあ)げられると、201つい好(よ)い気(き)になり、202馬鹿(ばか)にしられますぞえ。203表(おもて)で持上(もちあ)げておいて、204蔭(かげ)でソツと舌(した)を出(だ)す世(よ)の中(なか)で御座(ござ)いますからな』
205英子姫(ひでこひめ)『ハイ、206有難(ありがた)う御座(ござ)います。207御(ご)懇切(こんせつ)な御(ご)注意(ちうい)、208今後(こんご)の神界(しんかい)に奉仕(ほうし)する上(うへ)に於(おい)ても、209あなたのお言葉(ことば)は私(わたし)の為(ため)には貴重(きちよう)なる羅針盤(らしんばん)で御座(ござ)います。210併(しか)し乍(なが)ら面従(めんじう)腹背(ふくはい)的(てき)の人間(にんげん)は、211此(この)質朴(しつぼく)なる今(いま)の時代(じだい)には御座(ござ)いますまい。212善(ぜん)は善(ぜん)、213悪(あく)は悪(あく)とハツキリ区劃(くくわく)が立(た)つて居(を)りまする。214左様(さやう)な瓢鯰(へうねん)的(てき)の行動(かうどう)をとる人間(にんげん)は、215三十万(さんじふまん)年(ねん)未来(みらい)の二十(にじつ)世紀(せいき)とか云(い)ふ世(よ)の中(なか)に行(おこな)はれる人間(にんげん)同志(どうし)の腹(はら)の中(なか)でせう』
216高姫(たかひめ)『過去(くわこ)現在(げんざい)未来(みらい)一貫(いつくわん)の真理(しんり)、217そんな好(よ)い気(き)な事(こと)を思(おも)つて居(ゐ)らつしやるから、218無調法(ぶてうはふ)が出来(でき)ますのだ。219エ、220併(しか)し大(たい)した……あなた方(がた)に不調法(ぶてうはふ)は出来(でき)て居(を)らないから、221先(ま)づ安心(あんしん)だが、222併(しか)し三五教(あななひけう)は肝腎要(かんじんかなめ)の日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)は誰(たれ)、223竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)即(すなは)ち玉依姫(たまよりひめ)の生宮(いきみや)は誰(たれ)だと云(い)ふ事(こと)が分(わか)らなければ、224どこまでも御(ご)神業(しんげふ)は成就(じやうじゆ)致(いた)しませぬぞ。225それが分(わか)らねば駄目(だめ)ですから、226今後(こんご)は私(わたし)の云(い)ふ事(こと)を聞(き)きますかな』
227玉治別(たまはるわけ)『モシ英子姫(ひでこひめ)様(さま)、228決(けつ)して何事(なにごと)も高姫(たかひめ)さまが系統(ひつぽう)だと云(い)つて、229一々(いちいち)迎合(げいがふ)盲従(まうじう)は出来(でき)ませぬぞ。230婆心(ばしん)乍(なが)ら一寸(ちよつと)一言(いちごん)申上(まをしあ)げておきます』
231英子姫(ひでこひめ)『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います』
232高姫(たかひめ)『コレ田吾(たご)、233お前(まへ)の出(で)る幕(まく)とは違(ちが)ひますぞ。234日(ひ)の出神(でのかみ)が命令(めいれい)する。235此(この)場(ば)を速(すみやか)に退席(たいせき)なされ』
236玉治別(たまはるわけ)『ここは言依別(ことよりわけ)様(さま)の御(おん)館(やかた)、237御(ご)主人側(しゆじんがは)より退席(たいせき)せよと仰(あふ)せになる迄(まで)は、238一寸(いつすん)も動(うご)きませぬ。239我々(われわれ)は神(かみ)様(さま)の因縁(いんねん)はチツとも存(ぞん)じませぬ。240只(ただ)言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)に盲従(もうじう)否(いな)明従(めいじう)して居(を)るのですから、241御(お)気(き)の毒(どく)乍(なが)ら貴女(あなた)の要求(えうきう)には応(おう)じかねます。242何分(なにぶん)頻々(ひんぴん)として註文(ちうもん)が殺到(さつたう)して居(ゐ)る、243今(いま)が日(ひ)の出(で)の店(みせ)で御座(ござ)いますから、244アハヽヽヽ』
245高姫(たかひめ)『コレ黒姫(くろひめ)さま、246高山彦(たかやまひこ)さま、247お前(まへ)さまは借(か)つて来(き)た狆(ちん)の様(やう)に、248何(なに)を怖(お)ぢ怖(お)ぢしてるのだ。249日頃(ひごろ)の鬱憤(うつぷん)………イヤイヤ蘊蓄(うんちく)を吐露(とろ)して、250お前(まへ)さまの真心(まごころ)を皆(みな)さまの前(まへ)に披瀝(ひれき)し、251諒解(りやうかい)を得(え)ておかねば今後(こんご)の目的(もくてき)……否(いや)神業(しんげふ)が完全(くわんぜん)に勤(つと)まりますまい』
252黒姫(くろひめ)『あまり貴女(あなた)の……とつかけ引(ひ)つかけ、253流暢(りうちやう)な御(ご)弁舌(べんぜつ)で、254私(わたし)が一言(いちごん)半句(はんく)も申上(まをしあ)げる余地(よち)がなかつたので御座(ござ)います』
255高姫(たかひめ)『アヽさうだつたか、256オホヽヽヽ。257余(あんま)り話(はなし)に実(み)が入(い)つて気(き)がつきませなんだ。258そんなら黒姫(くろひめ)さま、259発言権(はつげんけん)を貴女(あなた)にお渡(わた)し致(いた)します』
260黒姫(くろひめ)『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います。261私(わたし)としては別(べつ)にこれと云(い)ふ意見(いけん)も御座(ござ)いませぬが、262只(ただ)皆様(みなさま)に御(ご)了解(れうかい)を願(ねが)つておきたいのは、263竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)様(さま)即(すなは)ち玉依姫(たまよりひめ)様(さま)の肉(にく)のお宮(みや)は、264黒姫(くろひめ)だと云(い)ふことを心(こころ)の底(そこ)より御(ご)了解(れうかい)願(ねが)ひたいので御座(ござ)います』
265杢助(もくすけ)『アハヽヽヽ』
266黒姫(くろひめ)『コレ杢(もく)さま、267何(なに)が可笑(をか)しいのですか。268チト失敬(しつけい)ぢやありませぬか』
269と舌鋒(ぜつぽう)を向(む)けかける。
270杢助(もくすけ)『黙(もく)して語(かた)らず……杢助(もくすけ)の今日(こんにち)の態度(たいど)、271さぞ貴女(あなた)にも飽(あ)き足(た)らないでせう。272杢助(もくすけ)は総務(そうむ)として、273責任(せきにん)の地位(ちゐ)に立(た)つて居(ゐ)る以上(いじやう)、274成行(なりゆ)きを見(み)た上(うへ)で、275何(なん)とか申上(まをしあ)げませう』
276黒姫(くろひめ)『コレ玉治別(たまはるわけ)さま、277玉能姫(たまのひめ)さま、278一番(いちばん)お偉(えら)い初稚姫(はつわかひめ)さま、279お前(まへ)さまはあの玉(たま)を誰(たれ)に貰(もら)つたと思(おも)うて居(ゐ)ますか』
280初稚姫(はつわかひめ)『ハイ、281竜(たつ)の宮居(みやゐ)の玉依姫(たまよりひめ)様(さま)から……』
282玉能姫(たまのひめ)『竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)さまから………』
283黒姫(くろひめ)『そらさうに違(ちが)ひありますまい。284そんなら私(わたし)を何(なん)とお考(かんが)へですか』
285初稚姫(はつわかひめ)『あなたは怖(こは)いお婆(ば)アさまの黒姫(くろひめ)さまだと思(おも)ひます。286違(ちが)ひますかな』
287玉能姫(たまのひめ)『竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)様(さま)の生宮(いきみや)だと聞(き)いて居(を)りまする』
288黒姫(くろひめ)『さうか、289お前(まへ)さまはヤツパリ年(とし)とつとる丈(だけ)で、290どこともなしに確(しつか)りして居(を)る。291併(しか)し乍(なが)ら聞(き)いた計(ばか)りで、292信(しん)じなければ何(なん)にもなりませぬぞ。293信(しん)じて居(を)られますか、294居(を)られませぬか、295それが根本(こんぽん)問題(もんだい)です』
296玉能姫(たまのひめ)『ハイ、297帝国(ていこく)憲法(けんぱふ)第(だい)二十八(にじふはち)条(でう)に依(よ)つて、298信仰(しんかう)の自由(じいう)を許(ゆる)されて居(を)りますから、299信(しん)ずるも信(しん)じないも、300私(わたし)の心(こころ)の中(なか)にあるのですから……』
301黒姫(くろひめ)『成(な)るべくはハツキリと言(い)つて貰(もら)ひたいものですな』
302玉能姫(たまのひめ)『ハツキリ言(い)はない方(はう)が花(はな)でせう。303……ナア初稚姫(はつわかひめ)さま、304あなた如何(どう)思(おも)ひますか』
305初稚姫(はつわかひめ)『私(わたし)は黒姫(くろひめ)さまを厚(あつ)く信(しん)じます。306併(しか)し乙姫(おとひめ)様(さま)の生宮(いきみや)問題(もんだい)に就(つい)ては不明(ふめい)だと信(しん)ずるのです』
307黒姫(くろひめ)『誰(たれ)も彼(かれ)も歯切(はぎ)れのせぬ御(ご)答弁(たふべん)だな。308女童(をんなわらべ)の分(わか)る所(ところ)でない、309神界(しんかい)の御(ご)経綸(けいりん)、310どんな人(ひと)にどんな御用(ごよう)がさせてあるか分(わか)らぬぞよ……とお筆(ふで)に出(で)て居(を)ります。311マアそこまで分(わか)れば結構(けつこう)だ。312……コレコレ玉治別(たまはるわけ)さま、313お前(まへ)さまの御(ご)意見(いけん)はどうだな』
314玉治別(たまはるわけ)『私(わたくし)の御(ご)意見(いけん)ですか。315私(わたくし)の御(ご)意見(いけん)はヤツパリ御(ご)意見(いけん)ですな。316灰吹(はひふき)から蛇(じや)が出(で)たと申(まを)さうか、317藪(やぶ)から棒(ぼう)と申(まを)さうか、318何(なに)が何(なん)だかテンと要領(えうりやう)を得(え)ませぬワイ』
319黒姫(くろひめ)『さうだろさうだろ、320分(わか)らな分(わか)らぬでよい。321分(わか)つてたまる事(こと)か。322広大(くわうだい)無辺(むへん)の神界(しんかい)のお仕組(しぐみ)を、323田吾作(たごさく)さま上(あが)りでは分(わか)らぬのが本当(ほんたう)だ。324これから私(わたし)が神界(しんかい)の事(こと)を噛(か)んで啣(ふく)める様(やう)に教(をし)へて上(あ)げるから、325チツと勉強(べんきやう)なされ』
326玉治別(たまはるわけ)『お前(まへ)さまに教(をし)へて貰(もら)ひますと、327竹生島(ちくぶじま)の弁天(べんてん)の床下(ゆかした)に隠(かく)してある三(み)つの宝玉(はうぎよく)が出(で)て来(き)ますかな。328私(わたくし)も其(その)所在(ありか)さへつきとめたら、329竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の生宮(いきみや)だと云(い)つて、330羽振(はぶり)を利(き)かすのだけれどなア。331序(ついで)に日(ひ)の出神(でのかみ)にも成(な)り澄(すま)すのだが、332……黒姫(くろひめ)さま教(をし)へて下(くだ)さいますか』
333高姫(たかひめ)『コレコレ黒(くろ)、334黒(くろ)、335黒姫(くろひめ)さま、336タヽ田吾(たご)に相手(あひて)になんなさんな。337……コレ田吾(たご)さま、338お前(まへ)さまは我々(われわれ)を嘲弄(てうろう)するのですか』
339玉治別(たまはるわけ)『滅相(めつさう)もない、340神(かみ)様(さま)から御(ご)神徳(しんとく)をタマハルワケを聞(き)かして下(くだ)さいと言(い)つて居(を)るのですよ。341何分(なにぶん)私(わたくし)の身魂(みたま)が黒姫(くろひめ)で、342慢心(まんしん)が強(つよ)うて、343鼻(はな)が高姫(たかひめ)で、344おまけに頭(あたま)が高(たか)うて、345福禄寿(げほう)の様(やう)に延長(えんちやう)し、346神界(しんかい)の御用(ごよう)だと思(おも)つて一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつてお邪魔(じやま)を致(いた)して居(を)りまする田吾作(たごさく)で御座(ござ)いますから、347どうぞ宜(よろ)しく執着心(しふちやくしん)の取(と)れますよう、348慢心(まんしん)の鼻(はな)が折(を)れますやう、349守(まも)り玉(たま)へ幸(さちは)ひ玉(たま)へ、350アヽ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
351高姫(たかひめ)『ヘン仰有(おつしや)るワイ。352黒姫(くろひめ)さま、353高山彦(たかやまひこ)さま、354サア帰(かへ)りませう。355アタ阿呆(あはう)らしい。356お節(せつ)やお初(はつ)、357田吾(たご)や杢(もく)に馬鹿(ばか)にせられて、358日(ひ)の出神(でのかみ)様(さま)も、359竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)さまも、360涙(なみだ)をこぼして居(ゐ)やはりますぞえ。361何(なん)と云(い)つても優勝(いうしよう)劣敗(れつぱい)、362弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)だ。363善(ぜん)の分(わか)るのは遅(おそ)いぞよ、364其(その)代(かは)り立派(りつぱ)な花(はな)が咲(さ)くぞよとお筆(ふで)に出(で)て居(を)ります。365皆(みな)さま、366アフンとなさるなツ。367是(これ)から是(これ)からサア是(こ)れから獅子(しし)奮迅(ふんじん)の勢(いきほひ)を以(もつ)て、368三五教(あななひけう)を根本(こつぽん)から立替(たてかへ)いたすから、369あとで吠面(ほえづら)かわかぬようになされませや。370ヒン阿呆(あはう)らしい』
371と座(ざ)を立(た)つて帰(かへ)らうとする。372英子姫(ひでこひめ)は、
373英子姫(ひでこひめ)『モシモシ高姫(たかひめ)様(さま)、374一寸(ちよつと)お待(ま)ち下(くだ)さいませ。375それは余(あま)りの御(ご)短慮(たんりよ)と申(まを)すもの、376十人(じふにん)十色(といろ)と申(まを)しまして、377各自(めいめい)に解釈(かいしやく)が違(ちが)つて居(を)りまするが神(かみ)様(さま)は一(ひと)つで御座(ござ)います。378さうお腹(はら)を立(た)てずに、379分(わか)らぬ我々(われわれ)、380充分(じゆうぶん)納得(なつとく)のゆく様(やう)にお示(しめ)し下(くだ)さいませ。381誠(まこと)の事(こと)ならばどこまでも服従(ふくじゆう)いたします』
382 高姫(たかひめ)はニヤリと笑(わら)ひ乍(なが)ら、383俄(にはか)に機嫌(きげん)をなほし、
384高姫(たかひめ)『流石(さすが)は八乙女(やをとめ)の随一(ずゐいつ)英子姫(ひでこひめ)様(さま)、385お前(まへ)さま丈(だけ)だ。386目(め)のキリツとした所(とこ)から口元(くちもと)の締(しま)つた所(ところ)、387ホンにお賢(かしこ)い立派(りつぱ)な淑女(しゆくぢよ)の鏡(かがみ)だ。388お前(まへ)さまならば、389此(この)高姫(たかひめ)の申(まを)すことの分(わか)るだけの素養(そやう)はありさうだ。390そんならモ一度(いちど)坐(すわ)り直(なほ)して、391トツクリと御(ご)意見(いけん)を伺(うかが)ひませう』
392と一旦(いつたん)立(た)つた膝(ひざ)を、393又(また)元(もと)の座(ざ)にキチンと帰(かへ)つた。
394英子姫(ひでこひめ)『私(わたし)は御存(ごぞん)じの通(とほ)り、395まだ世(よ)の中(なか)に経験(けいけん)少(すくな)き不束者(ふつつかもの)、396どうぞ何(なに)から何(なに)まで御(ご)指導(しだう)をお願(ねが)ひ致(いた)します。397就(つ)きましては御(お)聞(き)き及(およ)びでも御座(ござ)いませうが、398此(この)度(たび)竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)、399諏訪(すは)の湖(みづうみ)より五色(いついろ)の貴重(きちよう)なる麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)が無事(ぶじ)御(ご)到着(たうちやく)になりまして、400言依別(ことよりわけ)様(さま)が兎(と)も角(かく)お預(あづか)り遊(あそ)ばして、401一般(いつぱん)の信徒(しんと)等(ら)に拝観(はいくわん)をさせ、402それから一々(いちいち)役(やく)を拵(こしら)へ、403大切(たいせつ)に保管(ほくわん)をいたさねばなりませぬ。404何分(なにぶん)……貴女(あなた)始(はじ)め黒姫(くろひめ)さま、405高山彦(たかやまひこ)さまの肝腎(かんじん)の御(おん)方(かた)が御(ご)不在(ふざい)でありましたので、406今日(けふ)まで拝観(はいくわん)を延期(えんき)して居(を)りました次第(しだい)で御座(ござ)います。407先(ま)づ第一(だいいち)に其(その)玉(たま)の御(ご)点検(てんけん)を、408高姫(たかひめ)様(さま)、409黒姫(くろひめ)様(さま)に御(お)願(ねが)ひ致(いた)しまして、410それぞれ保管者(ほくわんしや)を定(き)めて頂(いただ)かねばなりませぬ。411……今日(けふ)は言依別(ことよりわけ)様(さま)始(はじ)め皆様(みなさま)と御(ご)協議(けうぎ)で御(ご)足労(そくらう)を煩(わづら)はした様(やう)な次第(しだい)で御座(ござ)いますから、412どうぞ日(ひ)をお定(さだ)め下(くだ)さいまして、413御(ご)点検(てんけん)を願(ねが)ひ、414其(その)上(うへ)で保管者(ほくわんしや)をお定(さだ)め願(ねが)はねばなりませぬ』
415 高姫(たかひめ)ニツコと笑(わら)ひ、
416高姫(たかひめ)『流石(さすが)は英子姫(ひでこひめ)さま、417言依別(ことよりわけ)さまも大分(だいぶ)によく分(わか)つて来(き)ました。418併(しか)し乍(なが)ら、419梅子姫(うめこひめ)様(さま)、420五十子(いそこ)姫(ひめ)、421杢助(もくすけ)さまの御(ご)意見(いけん)は……』
422英子姫(ひでこひめ)『何(いづ)れも私(わたし)と同意見(どういけん)で御座(ござ)います』
423高姫(たかひめ)『それならば頂上(ちやうじやう)の事(こと)、424日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が先(ま)づ麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)を受取(うけと)り、425竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の生宮(いきみや)が玉(たま)を検(あらた)めて、426其(その)上(うへ)、427各自(めいめい)日(ひ)の出神(でのかみ)、428竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の指図(さしづ)に従(したが)つて一切(いつさい)万事(ばんじ)取行(とりおこな)ふことと致(いた)しませう。429此(この)玉(たま)が無事(ぶじ)に納(をさ)まつたのも、430此(この)高姫(たかひめ)が神界(しんかい)の命(めい)に依(よ)つて、431黒姫(くろひめ)さまを一(ひと)つ島(じま)へ遣(つか)はしたのが第一(だいいち)の原因(げんいん)、432次(つぎ)に黒姫(くろひめ)は高山彦(たかやまひこ)さまと共(とも)に竜宮島(りうぐうじま)の御(ご)守護(しゆご)を遊(あそ)ばされ、433肝腎要(かんじんかなめ)の結構(けつこう)な玉(たま)を他(ほか)に取(と)られない様(やう)に、434其(その)身魂(みたま)をお分(わ)け遊(あそ)ばして玉依姫(たまよりひめの)命(みこと)となし、435此(この)玉(たま)を大切(たいせつ)に保管(ほくわん)しておかれたからだ』
436英子姫(ひでこひめ)『ハイ………』
437玉治別(たまはるわけ)『黒姫(くろひめ)さまの分霊(わけみたま)は又(また)大変(たいへん)に立派(りつぱ)なものだなア。438其(その)神格(しんかく)と云(い)ひ、439御(ご)精神(せいしん)といひ、440容色(ようしよく)と云(い)ひ、441御(ご)動作(どうさ)と云(い)ひ、442実(じつ)に天地(てんち)霄壤(せうぜう)の相違(さうゐ)があつた。443これが本当(ほんたう)なら、444雀(すずめ)が鷹(たか)を生(う)んだと云(い)はうか、445途方(とはう)途徹(とてつ)もない事件(じけん)だ。446此(この)玉治別(たまはるわけ)も竜宮(りうぐう)の玉依姫(たまよりひめ)様(さま)から玉(たま)を受取(うけと)つた時(とき)の心持(こころもち)、447一目(ひとめ)拝(をが)んだ時(とき)の気分(きぶん)と云(い)ふものは、448中々(なかなか)以(もつ)て黒姫(くろひめ)さまの前(まへ)へ行(い)つた時(とき)とは、449月(つき)と鼈(すつぽん)ほど違(ちが)つた感(かん)じが致(いた)しましたよ』
450高姫(たかひめ)『コレ田吾(たご)さま、451黙(だま)つて居(ゐ)なさい。452新米者(しんまいもの)の分(わか)る事(こと)ですかいな』
453玉治別(たまはるわけ)『さうだと云(い)つて、454其(その)玉(たま)に直接(ちよくせつ)に関係(くわんけい)のあるのは私(わたくし)ですからなア』
455五十子(いそこ)姫(ひめ)『玉治別(たまはるわけ)さま、456何事(なにごと)もお年(とし)のめしたお方(かた)の仰有(おつしや)ることに従(したが)ひなさる方(はう)が宜(よろ)しからう』
457玉治別(たまはるわけ)『ヘーエ、458そらさうですな』
459と煮(に)え切(き)らぬ返事(へんじ)をし乍(なが)ら頭(あたま)をかいて居(ゐ)る。
460梅子姫(うめこひめ)『今迄(いままで)の経緯(いきさつ)は何事(なにごと)もスツパリと川(かは)へ流(なが)し、461和気(わき)靄々(あいあい)として御(ご)神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)することに致(いた)しませう。462……高姫(たかひめ)様(さま)、463黒姫(くろひめ)様(さま)、464高山彦(たかやまひこ)様(さま)、465従前(じゆうぜん)の障壁(しやうへき)を除(と)つて、466層一層(そういつそう)神界(しんかい)のため、467親密(しんみつ)な御(ご)交際(かうさい)をお願(ねが)ひ致(いた)します』
468高姫(たかひめ)『ヨシヨシ、469結構(けつこう)々々(けつこう)』
470黒姫(くろひめ)『お前(まへ)さまも少々(せうせう)話(はな)せる方(かた)だ』
471玉治別(たまはるわけ)『何(なん)だか根(ね)つからよく分(わか)りました。472何(なに)は兎(と)も有(あ)れ、473日(ひ)をきめて頂(いただ)きませう。474信者(しんじや)一般(いつぱん)に報告(はうこく)する都合(つがふ)がありますから……』
475 言依別(ことよりわけ)は杢助(もくすけ)の方(はう)を看守(みまも)つた。476杢助(もくすけ)は厳然(げんぜん)として立上(たちあが)り、
477杢助(もくすけ)『かくも双方(さうはう)平穏(へいおん)無事(ぶじ)に了解(れうかい)が出来(でき)ました以上(いじやう)は、478来(きた)る二十三(にじふさん)日(にち)を以(もつ)て、479麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)を一般(いつぱん)に拝観(はいくわん)させることに定(さだ)めたら如何(どう)でせう。480先(ま)づ第一(だいいち)に高姫(たかひめ)様(さま)、481黒姫(くろひめ)様(さま)の御(ご)意見(いけん)を承(うけたま)はりたう御座(ござ)います』
482 高姫(たかひめ)ニコニコし乍(なが)ら立上(たちあが)り、
483高姫(たかひめ)『何事(なにごと)も此(この)件(けん)に付(つき)ては、484杢助(もくすけ)さまの総務(そうむ)に一任(いちにん)致(いた)しませう』
485黒姫(くろひめ)『私(わたし)も同様(どうやう)で御座(ござ)います』
486高山彦(たかやまひこ)『どちらなりとも御(ご)都合(つがふ)に願(ねが)ひます』
487杢助(もくすけ)『左様(さやう)ならば愈(いよいよ)九(く)月(ぐわつ)二十三(にじふさん)日(にち)と決定(けつてい)致(いた)します。488皆(みな)さま、489御(ご)異存(いぞん)あらば今(いま)の内(うち)に御(ご)遠慮(ゑんりよ)なく仰有(おつしや)つて下(くだ)さい』
490一同(いちどう)『賛成(さんせい)々々(さんせい)』
491と言葉(ことば)を揃(そろ)へる。492折柄(をりから)吹(ふ)き来(く)る秋風(あきかぜ)に十二分(じふにぶん)の涼味(りやうみ)を浴(あ)び乍(なが)ら各自(かくじ)に退場(たいぢやう)する事(こと)となつた。493アヽ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
494(大正一一・七・二三 旧閏五・二九 松村真澄録)
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