霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 竜(りゆう)の解脱(げだつ)〔七九五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第4篇 竜神昇天 よみ(新仮名遣い):りゅうじんしょうてん
章:第13章 竜の解脱 よみ(新仮名遣い):りゅうのげだつ 通し章番号:795
口述日:1922(大正11)年07月25日(旧06月02日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
国依別の言霊によって、竜若彦命と名乗る竜神は消滅し、大竜別命・大竜別姫命は改めてそろって現れ、琉球の玉をそれぞれお納めた玉手箱を言依別命、国依別に手渡した。
ここに竜神は一切の執着心を去り、三千年に及ぶ三寒三熱の苦行を終えて、悠々として紫の雲に乗り、天津日の稚宮に昇った。そして大神の右に座して天の水分神となって降雨を調節する大神に成った。
清く正しい言霊は、金剛不壊の如意宝珠とも言う。宇宙間においてもっとも貴重なる宝は声あって形なく、無にして有、有にして無、活殺自在の活用ある七十五声の言霊のみである。
今ここに竜神より受け取った琉と球の玉は、風雨水火を調節し、一切万有を摂受し祈伏し、摂取不捨の神業を完成する神器である。
ここに一同は湖水に向かって祝詞を奏上し、天の数歌を歌い上げて宣伝歌を歌いながら、元来た道を槻の洞穴まで戻っていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-11-03 19:48:33 文字数:3010 OBC :rm2713
愛善世界社版:213頁 八幡書店版:第5輯 319頁 修補版: 校定版:219頁 普及版:94頁 初版: ページ備考:
001大海中(おほわだなか)に浮(うか)びたる
002誉(ほまれ)も高(たか)き琉球(りうきう)の
003玉(たま)の潜(ひそ)みし神(かみ)の島(しま)
004三千(さんぜん)世界(せかい)の梅(うめ)の花(はな)
005一度(いちど)に開(ひら)く時(とき)来(きた)り
006綾(あや)の聖地(せいち)に宮柱(みやばしら)
007太敷(ふとしき)立(た)てて千木(ちぎ)高(たか)く
008鎮(しづ)まりゐます厳御霊(いづみたま)
009瑞(みづ)の御霊(みたま)の神勅(しんちよく)を
010玉照神(たまてるがみ)の二柱(ふたはしら)
011完全(うまら)に詳細(つばら)に受(う)け給(たま)ひ
012瑞(みづ)の御霊(みたま)の御裔(みすゑ)なる
013言依別(ことよりわけ)に言依(ことよ)さし
014潮満玉(しほみつだま)や潮干(しほひる)の
015珍(うづ)の宝(たから)を索(もと)めんと
016教主(けうしゆ)自(みづか)ら国依別(くによりわけ)の
017教(をしへ)の司(つかさ)を引(ひ)き率(つ)れて
018浪路(なみぢ)を遥(はるか)に乗(の)り渡(わた)り
019漸(やうや)う此処(ここ)に来(き)て見(み)れば
020我(われ)より前(さき)に紀(き)の国(くに)の
021若彦(わかひこ)始(はじ)め常楠(つねくす)が
022又(また)もや神(かみ)の御勅宣(みことのり)
023正(まさ)しく受(う)けて逸早(いちはや)く
024来(きた)り居(ゐ)ませる尊(たふと)さよ
025天(てん)を封(ふう)じて立(た)ち並(なら)ぶ
026欅(けやき)の楠(くす)の森林(しんりん)に
027勝(すぐ)れて太(ふと)き槻(つき)の幹(みき)
028天然(てんねん)自然(しぜん)の洞穴(ほらあな)に
029若彦(わかひこ)、常楠(つねくす)両人(りやうにん)は
030木俣(こまた)の神(かみ)と現(あら)はれて
031島人(しまびと)等(たち)を大神(おほかみ)の
032稜威(みいづ)に言向(ことむ)け和(やは)しつつ
033時(とき)の来(きた)るを待(ま)つ間(うち)に
034言霊(ことたま)清(きよ)き言依別(ことよりわけ)の
035瑞(みづ)の命(みこと)の大教主(だいけうしゆ)
036国依別(くによりわけ)と諸共(もろとも)に
037来(きた)りましたる嬉(うれ)しさに
038若彦(わかひこ)、常楠(つねくす)勇(いさ)み立(た)ち
039ハーリス山(ざん)の山奥(やまおく)に
040心(こころ)も勇(いさ)む膝栗毛(ひざくりげ)
041鞭(むち)撻(う)ち進(すす)む谷(たに)の奥(おく)
042湖水(こすゐ)の前(まへ)に着(つ)きにける
043四辺(あたり)は闇(やみ)に包(つつ)まれて
044礫(つぶて)の雨(あめ)は降(ふ)りしきり
045物凄(ものすさま)じき折(をり)もあれ
046闇(やみ)の帳(とばり)を引(ひ)き開(あ)けて
047波上(はじやう)を歩(あゆ)み進(すす)み来(く)る
048怪(あや)しの影(かげ)を眺(なが)むれば
049髭(ひげ)蓬々(ばうばう)と胸(むね)に垂(た)れ
050雪(ゆき)を欺(あざむ)く白髪(はくはつ)は
051長(なが)く背後(はいご)に垂(た)れ下(さが)り
052眼(まなこ)は鏡(かがみ)の如(ごと)光(ひか)り
053朱(あけ)を濺(そそ)ぎし顔(かほ)の色(いろ)
054耳(みみ)迄(まで)裂(さ)けた鰐口(わにぐち)に
055黄金(こがね)の色(いろ)の牙(きば)を剥(む)き
056四五寸(しごすん)許(ばか)り金色(こんじき)の
057角(つの)を額(ひたい)に立(た)て乍(なが)ら
058ガラガラ声(ごゑ)を張(は)りあげて
059怪(あや)しき舌(した)をニヨツと出(だ)し
060言依別(ことよりわけ)の一行(いつかう)に
061向(むか)つて叱言(こごと)を言(い)ひ掛(か)ける
062叱言(こごと)の条(すぢ)は竜神(たつがみ)の
063守(まも)ると聞(きこ)えし太平柿(たいへいがき)
064国依別(くによりわけ)が畏(かしこ)くも
065盗(ぬす)んで食(く)つたが罪(つみ)なりと
066執着心(しふちやくしん)の鬼神(おにがみ)が
067力(ちから)限(かぎ)りに罵倒(ばたふ)して
068琉(りう)と球(きう)との宝玉(ほうぎよく)を
069渡(わた)さじものと縄(なは)を張(は)る
070魔神(まがみ)の張(は)りし鉄条網(てつでうまう)
071手(て)も無(な)く切(き)つて呉(く)れんずと
072磊落(らいらく)不覊(ふき)の神司(かむづかさ)
073国依別(くによりわけ)が言霊(ことたま)の
074打(う)ち出(だ)す誠(まこと)の砲撃(はうげき)に
075流石(さすが)の魔神(まがみ)も辟易(へきえき)し
076おひおひ姿(すがた)を縮小(しゆくせう)し
077豆(まめ)の如(ごと)くになり果(は)てて
078遂(つひ)にあえなく消(き)えにける。
079『あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
080御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
081金剛(こんがう)不壊(ふえ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
082国依別(くによりわけ)が丹田(たんでん)に
083秘(ひ)め隠(かく)したる言霊(ことたま)の
084力(ちから)に刃向(はむか)ふ楯(たて)はなし
085我(われ)は正義(せいぎ)の鉾(ほこ)とりて
086天地(てんち)の神(かみ)の大道(だいだう)を
087高天原(たかあまはら)の神(かみ)の国(くに)
088豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みづほくに)
089大海原(おほうなばら)の底(そこ)までも
090照(て)らし渡(わた)さにや置(お)くべきか
091国依別(くによりわけ)の言霊(ことたま)は
092筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の
093小戸(をど)の青木(あはぎ)ケ原(はら)と鳴(な)る
094神(かむ)伊邪那岐(いざなぎの)大神(おほかみ)が
095珍(うづ)の伊吹(いぶき)になりませる
096祓戸(はらひど)四柱(よはしら)大御神(おほみかみ)
097瀬織津(せおりつ)姫(ひめ)や伊吹戸主(いぶきどぬし)
098珍(うづ)の大神(おほかみ)始(はじ)めとし
099速(はや)秋津姫(あきつひめの)神(かみ)
100速(はや)佐須良(さすら)姫(ひめの)神(かみ)
101此処(ここ)に四柱(よはしら)宣伝使(せんでんし)
102此(この)神(かみ)等(たち)の生宮(いきみや)と
103なりて現(あら)はれ来(きた)りけり
104大竜別(おほたつわけ)や大竜姫(おほたつひめ)の
105珍(うづ)の命(みこと)の竜神(たつがみ)よ
106是(これ)の天地(てんち)は言霊(ことたま)の
107助(たす)くる国(くに)ぞ生(い)ける国(くに)
108幸(さち)はひゐます国(くに)なるぞ
109天(あま)の岩戸(いはと)の開(あ)け放(はな)れ
110根底(ねそこ)の国(くに)も明(あきら)かに
111澄(す)み照(て)り渡(わた)る今(いま)の世(よ)に
112潮満珠(しほみつだま)や潮干(しほひる)の
113二(ふた)つの珠(たま)を何時(いつ)までも
114抱(いだ)きて何(なん)の益(えき)かある
115此(この)世(よ)を救(すく)ふ瑞御霊(みづみたま)
116神(かみ)の任(よさ)しの両人(りやうにん)に
117惜(をし)まず隠(かく)さず矗々(すくすく)と
118汝(なんぢ)が姿(すがた)を現(あら)はして
119はや献(たてまつ)れ惟神(かむながら)
120神(かみ)は我(われ)等(ら)と倶(とも)にあり
121仮令(たとへ)千尋(ちひろ)の水底(みなそこ)に
122何時迄(いつまで)包(つつ)み隠(かく)すとも
123三五教(あななひけう)の我々(われわれ)が
124此処(ここ)に現(あら)はれ来(き)し上(うへ)は
125只(ただ)一時(ひととき)も一息(ひといき)も
126躊躇(ためら)ひ給(たま)ふ事(こと)勿(なか)れ
127あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
128御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ
129一(ひと)、二(ふた)、三(みツ)、四(よツ)、五(いつツ)、六(むツ)
130七(なな)、八(や)、九(ここのツ)、十(とう)たらり
131百(もも)、千(ち)、万(よろづ)の神人(しんじん)を
132浦安国(うらやすくに)の心安(うらやす)く
133堅磐(かきは)常磐(ときは)に守(まも)らんと
134神(かみ)の任(よさ)しの此(この)旅路(たびぢ)
135諾(うべ)なひ給(たま)へ逸早(いちはや)く』
136早(はや)く早(はや)くと宣(の)りつれば
137今迄(いままで)包(つつ)みし黒雲(くろくも)は
138四辺(あたり)隈(くま)なく晴(は)れ渡(わた)り
139浪(なみ)を照(て)らして一団(いちだん)の
140火光(くわくわう)は徐々(しづしづ)両人(りやうにん)が
141佇(たたず)む前(まへ)に近(ちか)づきて
142忽(たちま)ち変(かは)る二柱(ふたはしら)
143尊(たふと)き女神(めがみ)と相現(あひげん)じ
144満面(まんめん)笑(ゑみ)を含(ふく)みつつ
145言依別(ことよりわけ)や国依別(くによりわけ)の
146二人(ふたり)の前(まへ)に手(て)を束(つか)ね
147地(つち)より湧(わ)き出(づ)る玉手箱(たまてばこ)
148各(おのおの)一個(いつこ)を両(りやう)の手(て)に
149捧(ささ)げて二人(ふたり)に献(たてまつ)り
150綾羅(れうら)の袖(そで)を翻(ひるがへ)し
151忽(たちま)ち起(おこ)る紫(むらさき)の
152雲(くも)に乗(じやう)じて久方(ひさかた)の
153大空(おほぞら)高(たか)く天(あま)の原(はら)
154日(ひ)の稚宮(わかみや)に登(のぼ)り行(ゆ)く
155執着心(しふちやくしん)の深(ふか)かりし
156大竜別(おほたつわけ)や大竜姫(おほたつひめ)の
157珍(うづ)の命(みこと)の両神(りやうしん)も
158愈(いよいよ)茲(ここ)に三千年(みちとせ)の
159三寒(さんかん)三熱(さんねつ)苦行(くぎやう)を終(を)へ
160神(かみ)の恵(めぐ)みに救(すく)はれて
161茲(ここ)に尊(たふと)き天津(あまつ)神(かみ)
162皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)右(みぎ)に
163坐(ゐ)まして清(きよ)き神国(かみくに)の
164常世(とこよ)の春(はる)に会(あ)ひ給(たま)ふ
165実(げ)にも尊(たふと)き物語(ものがたり)
166語(かた)るも嬉(うれ)し今日(けふ)の宵(よひ)
167陰暦(いんれき)六(ろく)月(ぐわつ)第二(だいに)日(にち)
168松雲閣(しよううんかく)に横臥(わうぐわ)して
169団扇(うちは)片手(かたて)に拍子(へうし)とり
170さも諄々(じゆんじゆん)と述(の)べて置(お)く
171筆(ふで)執(と)る人(ひと)は北村(きたむら)氏(し)
172神(かみ)の稜威(みいづ)も隆光(たかひか)る
173三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)の
174栞(しほり)となれば望外(ばうぐわい)の
175喜(よろこ)びなりと記(しる)し置(お)く
176あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
177御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
178 国依別(くによりわけ)の言霊(ことたま)に竜若彦(たつわかひこ)と称(しよう)する怪物(くわいぶつ)は忽(たちま)ち雲散(うんさん)霧消(むせう)し、179再(ふたた)び現(あら)はれ来(きた)る大竜別(おほたつわけ)、180大竜姫(おほたつひめ)は各(おのおの)手(て)に琉(りう)、181球(きう)の玉(たま)を納(をさ)めたる玉手箱(たまてばこ)を、182言依別(ことよりわけ)、183国依別(くによりわけ)の手(て)に恭(うやうや)しく捧(ささ)げ三千(さんぜん)年(ねん)の三寒(さんかん)三熱(さんねつ)の苦行(くぎやう)を茲(ここ)に終了(しうれう)し、184一切(いつさい)の執着(しふちやく)を去(さ)つて、185悠々(いういう)として紫(むらさき)の雲(くも)に乗(の)り、186天津(あまつ)日(ひ)の稚宮(わかみや)に上(のぼ)り、187大神(おほかみ)の右(みぎ)に座(ざ)し、188天(あめ)の水分(みくまりの)神(かみ)となつて降雨(かうう)を調節(てうせつ)し給(たま)ふ大神(おほかみ)と成(な)らせ給(たま)うたのである。
189 清(きよ)き正(ただ)しき言霊(ことたま)は一名(いちめい)金剛(こんがう)不壊(ふえ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)とも言(い)ふ。190此(この)天地(てんち)は言霊(ことたま)の幸(さち)はひ助(たす)け、191生(い)き働(はたら)く国(くに)である。192宇宙間(うちうかん)に於(おい)て最(もつと)も貴重(きちよう)なる宝(たから)は声(こゑ)あつて形(かたち)なく、193無(む)にして有(いう)、194有(いう)にして無(む)、195活殺(くわつさつ)自由(じいう)自在(じざい)の活用(くわつよう)ある七十五(しちじふご)声(せい)の言霊(ことたま)のみである。196之(これ)を霊的(れいてき)に称(とな)ふる時(とき)は即(すなは)ち金剛(こんがう)不壊(ふえ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)となる。197天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)の御(ご)神勅(しんちよく)に「言向(ことむ)け和(やは)せ、198宣(の)り直(なほ)せ」とあり、199之(これ)は神典(しんてん)古事記(こじき)に明(あきら)かに示(しめ)されてある。200天(あめ)の下(した)四方(よも)の国(くに)を治(をさ)め給(たま)ふは五百津(いほつ)美須麻琉(みすまる)の玉(たま)にして、201此(この)玉(たま)の活働(いきはたら)く時(とき)は天ケ下(あめがした)に饑饉(ききん)もなく、202病災(びやうさい)も無(な)く戦争(たたかひ)も無(な)し又(また)風難(ふうなん)、203水難(すゐなん)、204火難(くわなん)を始(はじ)め、205地異(ちい)天変(てんぺん)の虞(おそれ)なく、206宇宙(うちう)一切(いつさい)平安(へいあん)無事(ぶじ)に治(をさ)まるものである。
207 又(また)、208今(いま)此処(ここ)に言依別(ことよりわけ)、209国依別(くによりわけ)の二柱(ふたはしら)の竜神(りうじん)より受取(うけと)りたる琉(りう)、210球(きう)の二宝(にはう)は、211風雨(ふうう)水火(すゐくわ)を調節(てうせつ)し、212一切(いつさい)の万有(ばんいう)を摂受(せつじゆ)し或(あるひ)は折伏(しやくふく)し、213よく摂取(せつしゆ)不捨(ふしや)の神業(しんげふ)を完成(くわんせい)する神器(しんき)である。
214 ここに言依別(ことよりわけの)命(みこと)を始(はじ)め、215一同(いちどう)は湖水(こすゐ)に向(むか)つて天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、216天(あま)の数歌(かずうた)を歌(うた)ひ上(あ)げ宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら、217心地(ここち)よげに元来(もとき)し道(みち)を下(くだ)りつつ、218槻(つき)の洞穴(どうけつ)に一先(ひとま)づ帰(かへ)る事(こと)となつた。
219言依別(ことよりわけ)の一行(いつかう)は
220竜(たつ)の湖水(こすゐ)を後(あと)にして
221千畳岩(せんぜういは)の碁列(ごれつ)せる
222奇勝(きしよう)絶景(ぜつけい)縫(ぬ)ひ乍(なが)ら
223足(あし)に任(まか)せて降(くだ)り行(ゆ)く
224登(のぼ)りに引(ひ)き替(か)へ下(くだ)り坂(ざか)
225思(おも)うたよりも速(すみや)かに
226何時(いつ)の間(ま)にかは竜神(りうじん)の
227守(まも)り居(ゐ)たると伝(つた)へたる
228太平柿(たいへいがき)の辺(ほとり)まで
229帰(かへ)り来(きた)れば常楠(つねくす)は
230フト立(た)ち留(どま)り一行(いつかう)を
231顧(かへり)み乍(なが)ら『教主(けうしゆ)さま
232国依別(くによりわけの)神(かみ)さまが
233大蛇(をろち)の群(むれ)に襲(おそ)はれて
234太平柿(たいへいがき)の頂上(ちやうじやう)より
235身(み)を躍(をど)らして青淵(あをぶち)に
236ザンブと許(ばか)り飛(と)び下(くだ)り
237仮死(かし)状態(じやうたい)となり果(は)てて
238渦(うづ)に巻(ま)かれて流(なが)れたる
239改心(かいしん)記念(きねん)の霊場(れいぢやう)ぞ
240負(まけ)ぬ気(き)強(づよ)い国依別(くによりわけ)の
241神(かみ)の司(つかさ)は反対(はんたい)に
242竜若彦(たつわかひこ)に逆理屈(さかりくつ)
243いとも立派(りつぱ)に喰(くら)はして
244凹(へこ)ませ給(たま)ひし健気(けなげ)さよ
245あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
246斯(こ)うなる上(うへ)は常楠(つねくす)も
247神(かみ)の心(こころ)が分(わか)らない
248善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)の標準(へうじゆん)を
249如何(どう)して分(わ)けたら宜(よ)からうか
250お裁(さば)き頼(たの)む』と宣(の)りつれば
251言依別(ことよりわけ)は打(う)ち笑(わら)ひ
252『国依別(くによりわけ)の言霊(ことたま)は
253天地(てんち)の道理(だうり)に適(かな)ひたり
254善(ぜん)に堕(だ)すれば悪(あく)となり
255悪(あく)の極(きは)みは善(ぜん)となる
256善悪(ぜんあく)同体(どうたい)此(この)真理(しんり)
257胸(むね)に手(て)を当(あ)てつらつらと
258直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
259人(ひと)の小(ちい)さき智慧(ちゑ)もちて
260善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)の標準(へうじゆん)が
261分(わか)らう道理(だうり)のあるべきや
262此(この)世(よ)を造(つく)りし大神(おほかみ)の
263心(こころ)に適(かな)ひし事(こと)ならば
264何(いづ)れも自然(しぜん)の道(みち)となり
265其(その)御心(みこころ)に適(かな)はねば
266即(すなは)ち悪(あく)の道(みち)となる
267人(ひと)の身(み)として同胞(はらから)を
268裁(さば)く権利(けんり)は寸毫(すんがう)も
269与(あた)へられない人(ひと)の身(み)は
270只(ただ)何事(なにごと)も神(かみ)の手(て)に
271任(まか)せ奉(まつ)るに如(し)くはない』
272いと細(こま)やかに説(と)きつれば
273国依別(くによりわけ)や若彦(わかひこ)も
274常楠翁(つねくすをう)も勇(いさ)み立(た)ち
275心(こころ)欣々(いそいそ)一行(いつかう)は
276黄昏(たそがれ)過(す)ぐる宵(よひ)の口(くち)
277楠(くす)と槻(つき)との森林(しんりん)に
278極(きは)めて広(ひろ)き天然(てんねん)の
279ホテルにこそは帰(かへ)りけり
280あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
281御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
282(大正一一・七・二五 旧六・二 北村隆光録)
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