霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第一五章 情意(じやうい)投合(とうがふ)〔七九七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第4篇 竜神昇天 よみ(新仮名遣い):りゅうじんしょうてん
章:第15章 情意投合 よみ(新仮名遣い):じょういとうごう 通し章番号:797
口述日:1922(大正11)年07月27日(旧06月04日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
虻公(清彦)と蜂公(照彦)は、生田の森の館で駒彦より、言依別命教主が琉球に出かけたこと、それを追って高姫が船出したことを聞いた。
言依別命から清彦、照彦という名を授かって準宣伝使に抜擢されていた二人は、教主への忠心から、高姫が教主を妨害してはならじと、取るものも取り合えず、舟に乗って琉球に船出した。
途中、児島半島の沖合いの暗礁で難船している二人を発見し、救い出してみれば、これは比沼真奈井に仕えていた清子姫と照子姫であった。
四人は荒波を漕ぎぬけて、琉球の那覇の港に安着し、何ものにか引かれるように槻の木の大きな洞穴にやってきた。
照子姫と清子姫の祖先は行成彦命であり、四代目の孫に当たる。神勅を受けて豊国姫命が比沼真奈井に出現するに先立って現れ、比治山に草庵を結んで時を待っていたのであった。
過去にはウラナイ教時代の黒姫に出くわしていろいろ教理を聞かされ誘われたこともあったが、反駁もせずかといって付かず、表面上服従していたのみであった。
四人の男女は長い航海の間に、密かにお互いに意中の人を定めていた。清子姫と清彦、照子姫と照彦は互いに想いあっていたが、それを口に出さずにそれぞれ互いに胸中に秘めたままとしていた。
四人はここに一夜を明かすことにした。洞穴の中が整っていることから、ここは琉球の立派な酋長の住処かもしれないので、夜は清彦と照彦が交代で見張りに立つことにした。
一行はまず火をつけて、道々採ってきた木の実で夕食を済ませることにした。清彦は雑談のうちに、独身生活は不便なものだから、照彦は清子姫と夫婦になったら媒酌をしてやるのだが、と話を向けた。
清子姫、照彦はお互いに別に意中の人がいる風に答えた。そして照彦は逆に、照子姫と清彦が夫婦となったらどうか、と話を向けた。すると照子姫は、単刀直入に自分の意中の人は照彦だと明かした。
清子姫も、自分の意中の人は清彦だと明かす。四人がこのような話をしていると、洞穴の入口に二三人の話し声が聞こえてきた。清彦はそれが高姫一行だと気がつき、入口の方に偵察に行った。
高姫、春彦、常彦はおそるおそる入口から中をうかがいながら、お互いに先に入って様子を見てくるようにと譲り合っている。高姫は、言依別がすべての玉を持って高砂島へ渡り、高砂島の国王となる陰謀だと独り合点して、言依別命の改心を勝手に祈り、必死に祈願を凝らしている。
その様子に清彦は思わず噴出してしまう。清彦は声色を変えて高姫一行をからかった後、名乗り出た。高姫は相手が清彦たちだとわかると、俄かに勇気づいて春彦・常彦を引き連れて、清彦が止めるのも構わずに奥に入って行った。
高姫は、照彦が二人の美人を共に居るのを見て名乗った。清子姫と照子姫は手を付いて自己紹介をなした。高姫は、おおかた照彦と清彦が二人をかどわかしたか、たぶらかしたのだろう、と悪口を並べ立てる。
清彦が怒って高姫の胸倉をつかんだのを、照彦がひとしきりからかって間に割って入った。高姫は憤慨して、こんな乱暴な男をどう思うか、清子姫と照子姫に尋ねるが、案に相違して二人は、照彦・清彦が意に沿う方だと口にする。
高姫は言依別命がここに来たかと執念深く聞き出そうとする。一同は高姫を追い払おうと、すでに言依別命は琉球の玉を手に入れて台湾を経て、南米の高砂島に渡ったと答えて高姫の気をそらした。
高姫はそれを聞くと、春彦と常彦をせきたてて港に戻り、大海原に漕ぎ出して行ってしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-11-04 19:17:46 OBC :rm2715
愛善世界社版:232頁 八幡書店版:第5輯 325頁 修補版: 校定版:239頁 普及版:100頁 初版: ページ備考:
001 (あぶ)002(はち)両人(りやうにん)生田(いくた)(もり)立寄(たちよ)り、003駒彦(こまひこ)面会(めんくわい)して、004言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)国依別(くによりわけ)(とも)高砂(たかさご)(しま)神務(しんむ)()び、005急遽(きふきよ)聖地(せいち)()ちて出発(しゆつぱつ)せられ、006瀬戸(せと)(うみ)を、007西南(せいなん)()して()かれたりと()消息(せうそく)を、008(れい)高姫(たかひめ)()きつけ、009春彦(はるひこ)010常彦(つねひこ)一行(いつかう)(さん)(にん)011言依別(ことよりわけ)(あと)()ひしと()きしより、012(ここ)(あぶ)013(はち)二人(ふたり)は、014()(もの)取敢(とりあへ)ず、015一隻(いつさう)軽舟(けいしう)()(まか)せ、016高姫(たかひめ)教主(けうしゆ)(たい)し、017如何(いか)なる妨害(ばうがい)(くは)ふるやも(はか)(がた)しと、018一生(いつしやう)懸命(けんめい)高姫(たかひめ)(あと)(たづ)ねて()(いだ)し、019児島(こじま)半島(はんとう)沿岸(えんがん)(さし)かかる(とき)020暗礁(あんせう)()()げたる一隻(いつさう)(ふね)見付(みつ)け、021何人(なにびと)ならんと(ほし)(ひかり)()かし()れば、022比沼(ひぬ)真奈井(まなゐ)宝座(ほうざ)(つか)()たる、023清子姫(きよこひめ)024照子姫(てるこひめ)二人(ふたり)であつた。
025 (ここ)二人(ふたり)(わが)(ふね)(すく)()げ、026(なかば)(やぶ)れし(その)(ふね)見棄(みす)て、027荒波(あらなみ)(いきほひ)よく()ぎつけて、028(やうや)琉球(りうきう)那覇(なは)(みなと)安着(あんちやく)し、029一行(いつかう)()(にん)何者(なにもの)にか()かるる(やう)心地(ここち)して、030(その)()(ゆふ)(ごろ)常楠(つねくす)031若彦(わかひこ)両人(りやうにん)(いち)()住居(ぢうきよ)となしたる(つき)()洞窟(どうくつ)(まへ)辿(たど)りついた。
032 虻公(あぶこう)(すで)言依別(ことよりわけの)(みこと)より清彦(きよひこ)()()(たまは)り、033蜂公(はちこう)照彦(てるひこ)()()(たまは)つて、034(じゆん)宣伝使(せんでんし)(しよく)()いて()たのである。035二人(ふたり)(おも)(がけ)なく言依別(ことよりわけの)(みこと)抜擢(ばつてき)されたのを、036(この)(うへ)なく打喜(うちよろこ)び、037(その)師恩(しおん)(むく)いん(ため)038言依別(ことよりわけの)(みこと)(たい)しては、039如何(いか)なる苦労(くらう)も、040仮令(たとへ)身命(しんめい)(なげう)つても(をし)まざるの決心(けつしん)をきめて()たのであつた。
041 (たう)目的物(もくてきぶつ)たる高姫(たかひめ)一行(いつかう)を、042海上(かいじやう)にて見失(みうしな)ひたれ(ども)043照子姫(てるこひめ)044清子姫(きよこひめ)遭難(さうなん)(すく)ひたるは、045(まつた)(かみ)()摂理(せつり)として(やや)満足(まんぞく)(てい)であつた。
046 (この)照子姫(てるこひめ)047清子姫(きよこひめ)(その)祖先(そせん)行成彦(ゆきなりひこの)(みこと)であつて、048四代目(よんだいめ)(まご)(あた)つて()る。049神勅(しんちよく)()けて、050比沼(ひぬの)真奈井(まなゐ)豊国姫(とよくにひめ)出現(しゆつげん)先立(さきだ)つて(あら)はれ、051比治山(ひぢやま)草庵(さうあん)(むす)び、052(とき)()つて()たのである。053そこへウラナイ(けう)黒姫(くろひめ)出会(でつくわ)し、054いろいろとウラナイ(けう)教理(けうり)()()かされ、055(なかば)()れを(しん)じ、056(なかば)(これ)(うたが)ひ、057何程(なにほど)黒姫(くろひめ)弁舌(べんぜつ)(もつ)()きつくる(とも)058清子姫(きよこひめ)059照子姫(てるこひめ)魔窟(まくつ)(はら)黒姫(くろひめ)(やかた)には一回(いつくわい)(あし)をむけず、060(また)高姫(たかひめ)などにも()はなかつた。061(ただ)黒姫(くろひめ)言葉(ことば)反駁(はんばく)もせず、062善悪(ぜんあく)取捨(しゆしや)して表面(へうめん)服従(ふくじゆう)して()たのみであつた。063(この)二女(にぢよ)黒姫(くろひめ)(たい)する態度(たいど)は、064(その)(とき)勢上(いきほひじやう)()むを()ず、065()以上(いじやう)最善(さいぜん)態度(たいど)()ることが出来(でき)なかつたのである。
066 (とき)豊国姫(とよくにひめの)(みこと)神勅(しんちよく)067(この)二人(ふたり)(くだ)り、068諏訪(すは)(うみ)玉依姫(たまよりひめ)より麻邇(まに)宝珠(ほつしゆ)受取(うけと)り、069梅子姫(うめこひめ)(その)()一行(いつかう)が、070由良(ゆら)(みなと)秋山彦(あきやまひこ)(やかた)(かへ)(きた)り、071(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)072国武彦(くにたけひこの)(みこと)()でますと()きて、073二人(ふたり)旅装(りよさう)(ととの)へ、074由良(ゆら)(みなと)秋山彦(あきやまひこ)(やかた)()(きた)りし(ころ)は、075最早(もはや)麻邇(まに)宝珠(ほつしゆ)聖地(せいち)(おく)られ、076(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)077国武彦(くにたけひこの)(みこと)(おん)行方(ゆくへ)(わか)らなくなつた(あと)(まつ)りであつたから、078二人(ふたり)(とき)(うつ)さず、079陸路(りくろ)聖地(せいち)(むか)ひ、080(にしき)(みや)玉照彦(たまてるひこ)081玉照姫(たまてるひめ)神司(かむづかさ)(えつ)し、082琉球(りうきう)(しま)(わた)るべく、083(ふたた)聖地(せいち)()ちて、084玉照彦(たまてるひこの)(みこと)出現地(しゆつげんち)なる高熊山(たかくまやま)立籠(たてこ)もり、085(さん)週間(しうかん)(あらた)めて修業(しうげふ)をなし、086木花姫(このはなひめ)神教(みをしへ)(かうむ)りて、087意気(いき)揚々(やうやう)山坂(やまさか)()え、088生田(いくた)(もり)立寄(たちよ)り、089それより兵庫(ひやうご)(みなと)船出(ふなで)して、090琉球(りうきう)(むか)はんとし、091(かみ)仕組(しぐみ)か、092(おも)はずも児島(こじま)半島(はんたう)手前(てまへ)(おい)暗礁(あんせう)()りあげ、093危険(きけん)(きは)まる(ところ)へ、094三五教(あななひけう)(しん)宣伝使(せんでんし)095清彦(きよひこ)096照彦(てるひこ)(ふね)(たす)けられ、097(やうや)那覇港(なはかう)四人(よにん)()安着(あんちやく)し、098(つき)洞穴(どうけつ)(まへ)(まで)(すす)んで()たのである。
099 ()(にん)男女(だんぢよ)(ちい)さき(ふね)にて長途(ちやうと)航海(かうかい)をなす(うち)100何時(いつ)とはなしに意気(いき)投合(とうがふ)し、101(たがひ)意中(いちう)(ひと)(こころ)(ふか)(さだ)めて()た。102清子姫(きよこひめ)清彦(きよひこ)に、103照子姫(てるこひめ)照彦(てるひこ)(のぞ)みを(しよく)して()た。104(しか)るに清彦(きよひこ)(また)照子姫(てるこひめ)に、105照彦(てるひこ)清子姫(きよこひめ)(のぞ)みを(しよく)し、106将来(しやうらい)夫婦(ふうふ)となつて神業(しんげふ)参加(さんか)()(おも)つて()たのである。107清彦(きよひこ)四十四五(よんじふしご)(さい)108照彦(てるひこ)四十二三(よんじふにさん)(さい)元気(げんき)(ざか)り、109清子姫(きよこひめ)二十五(にじふご)(さい)110照子姫(てるこひめ)二十三(にじふさん)(さい)になつて()た。111年齢(ねんれい)(おい)二十(にじふ)(ねん)(ばか)(ちが)つて()る。112されど神徳(しんとく)(かうむ)りて(まこと)(みち)(さと)りたる清彦(きよひこ)113照彦(てるひこ)は、114全身(ぜんしん)爽快(さうくわい)気分(きぶん)(みなぎ)り、115血色(けつしよく)もよく比較(ひかく)(てき)(わか)()え、116夫婦(ふうふ)として一見(いつけん)(あま)不釣合(ふつりあひ)(やう)にも()えなかつたのである。
117 ()(にん)一夜(いちや)此処(ここ)()かさんと、118洞穴(どうけつ)(おく)(ふか)(すす)んだ。119サヤサヤした葦莚(ゐむしろ)(たたみ)120土間(どま)()きつめられ、121食器(しよくき)など行儀(ぎやうぎ)よく(なら)べられてあつた。
122清彦(きよひこ)『あゝこれは何人(なんぴと)住家(すみか)()らぬが、123穴居(けつきよ)人種(じんしゆ)(おほ)(この)(しま)に、124木株(きかぶ)のこんな天然(てんねん)(やかた)があるとは、125(たい)したものだ。126(なん)でもこれは(この)(あた)りの酋長(しうちやう)住家(すみか)(わか)らないぞ。127斯様(かやう)(ところ)にうつかりと安眠(あんみん)して()(ところ)へ、128沢山(たくさん)眷族(けんぞく)()れ、129(かへ)(きた)つて立腹(りつぷく)でもしようものなら、130どんな(こと)突発(とつぱつ)するか()れたものだない。131入口(いりぐち)一方(いつぱう)132グヅグヅして()ると、133徳利攻(とつくりぜ)めに()うて(くる)しまねばならぬ。134コリヤ一人(ひとり)(づつ)135(たがひ)入口(いりぐち)立番(たちばん)をし、136もしも(あや)しき(やつ)がやつて()たら合図(あひづ)をすると()(こと)にしようかなア』
137照彦(てるひこ)『それもさうだ。138(しか)(なが)()路々(みちみち)むしつて()()(いちご)夕食(ゆふしよく)()ませ、139(その)(うへ)(こと)にしても(あま)(おそ)くはあるまい。140そろそろそこらが(くら)くなつて()たようだ』
141(ふところ)より火燧(ひうち)取出(とりいだ)し、142そこらに()(かさ)ねたる肥松(こえまつ)割木(わりき)()をつけ(あか)りを(てん)じ、143夕食(ゆふしよく)(きつ)し、144(うち)(かへ)つた(やう)気分(きぶん)になつて、145()(にん)(おく)(はう)安坐(あんざ)し、146種々(いろいろ)感想談(かんさうだん)(ふけ)つて()た。
147清彦(きよひこ)『こうして我々(われわれ)男女(だんぢよ)()(にん)148(この)(しま)(わた)つた以上(いじやう)は、149(いづ)れも独身(どくしん)生活(せいくわつ)不便(ふべん)なものだ。150恰度(ちやうど)諾冊(なぎなみ)二尊(にそん)自転倒(おのころ)(じま)天降(あまくだ)(たま)うた(やう)なものだ。151(この)大木(たいぼく)(つき)御柱(みはしら)(さだ)めて、152……あなにやしえー乙女(をとめ)……とか…えー(をとこ)…とか()つて、153惟神(かむながら)神業(しんげふ)(はじ)めたら如何(どう)でせう。154……照彦(てるひこ)さま、155(わたし)媒酌人(ばいしやくにん)となつて、156清子姫(きよこひめ)(さま)結婚(けつこん)(しき)をあげられたらどうです。157ナア清子姫(きよこひめ)さま、158あなたも以時(いつ)(まで)独身(どくしん)斯様(かやう)蛮地(ばんち)(くら)(わけ)にも(まゐ)りますまい』
159清子姫(きよこひめ)『ハイ、160有難(ありがた)御座(ござ)います。161(しか)(なが)(すこ)(かんが)へさして(いただ)きたう御座(ござ)います』
162清彦(きよひこ)清子(きよこ)さま、163あなたは照彦(てるひこ)さまがお()()らぬのですか』
164清子姫(きよこひめ)『イーエ、165勿体(もつたい)ない、166左様(さやう)(わけ)では御座(ござ)いませぬ』
167(なみだ)ぐまし()(うつ)むく。
168照彦(てるひこ)『コレコレ清彦(きよひこ)169()親切(しんせつ)有難(ありがた)いが、170モウ結婚(けつこん)(こと)()つて()れな。171清子(きよこ)さまは(この)照彦(てるひこ)がお()()さぬのだよ。172無理押(むりお)しに決行(けつかう)した(ところ)で、173うま()はぬ夫婦(ふうふ)はキツと後日(ごじつ)破鏡(はきやう)(なげ)きに()はねばならぬから、174(この)(はなし)()めて(もら)はう。175()いては照子姫(てるこひめ)さまを、176(まへ)(おく)さまに()世話(せわ)したいと(おも)ふのだが、177どうだ』
178清彦(きよひこ)『それは(じつ)有難(ありがた)い、179(しか)(なが)照子姫(てるこひめ)さまの()意見(いけん)(うけたま)はりたい。180(その)(うへ)でなくば、181(なん)とも返答(へんたふ)する(こと)出来(でき)ないワ』
182照子姫(てるこひめ)照彦(てるひこ)さまの()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)いますが、183(わたし)(なん)だか……どこが如何(どう)といふ(こと)はありませぬが、184清彦(きよひこ)さまは(むし)()きませぬワ。185(わたし)意中(いちう)(ひと)露骨(ろこつ)()ひますが、186照彦(てるひこ)さまで御座(ござ)います。187あなたならばどこまでも、188偕老(かいらう)同穴(どうけつ)(ちぎり)(むす)んで(いただ)きたう御座(ござ)います』
189照彦(てるひこ)『コレハコレハ大変(たいへん)迷惑(めいわく)御座(ござ)る。190(じつ)(ところ)(この)照彦(てるひこ)191清子姫(きよこひめ)(さま)夫婦(ふうふ)約束(やくそく)(むす)びたいのです。192それに清子(きよこ)さまは(なん)とか、193かんとか仰有(おつしや)つて、194(わたし)()(きら)(あそ)ばす(やう)形勢(けいせい)です』
195 清子姫(きよこひめ)は『ホヽヽヽヽ』と(そで)(かほ)をかくし、
196清子姫(きよこひめ)(わたし)本当(ほんたう)清彦(きよひこ)さまと夫婦(ふうふ)になつて、197神界(しんかい)御用(ごよう)(いた)したう御座(ござ)います。198照彦(てるひこ)さまと夫婦(ふうふ)になるのは、199(なん)だか身魂(みたま)()はない(やう)気分(きぶん)(いた)します』
200清彦(きよひこ)(たがひ)目的物(もくてきぶつ)()複雑(ふくざつ)になつて()ては仕方(しかた)がない。201ハテ(こま)つたな。202此方(こちら)(すき)だと()へば(むか)ふが(きら)ひだと()ふ、203此方(こちら)(きら)ひだといへば一方(いつぱう)(すき)だと()ふ。204此奴(こいつ)アどうやら人間力(にんげんぢから)()める(こと)出来(でき)ないワイ。205言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)でも御座(ござ)つたならば、206判断(はんだん)をして()めて(もら)ふのだけれど、207斯様(かやう)結構(けつこう)洞穴館(どうけつやかた)に、208(たれ)()らぬことを(おも)へば、209言依別(ことよりわけ)(かみ)(さま)は、210(りう)211(きう)宝玉(ほうぎよく)()()れ、212(はや)くも出発(しゆつぱつ)された(あと)()える。213ハテ……(こま)つたなア』
214 ()(にん)(たがひ)(かほ)見合(みあは)せ、215青息(あをいき)吐息(といき)真最中(まつさいちう)216洞穴(どうけつ)入口(いりぐち)二三(にさん)(にん)(こゑ)(きこ)えて()た。217清彦(きよひこ)耳敏(みみざと)くも(これ)聞付(ききつ)け、
218清彦(きよひこ)『ヤアあの(こゑ)はどうやら、219高姫(たかひめ)(こゑ)らしいぞ。220一寸(ちよつと)(しら)べて()るから、221(さん)(にん)(なか)よく()つて()(くだ)さい』
222(はや)くも洞穴(どうけつ)入口(いりぐち)()つた。
223 (そと)には高姫(たかひめ)224春彦(はるひこ)225常彦(つねひこ)(とも)(こは)(さう)洞穴(どうけつ)(のぞ)いて()る。226(つき)()かりに(さん)(にん)(かほ)はハツキリと()えた。227されど高姫(たかひめ)(はう)からは、228清彦(きよひこ)姿(すがた)(すこ)しも()えない。229清彦(きよひこ)(かたはら)小石(こいし)(ひろ)ひ、230左右(さいう)()()つて(なか)よりカチカチと()つて()せた。
231高姫(たかひめ)大変(たいへん)(おほ)きな洞空(うつろ)であるが、232(なに)(この)(なか)(けもの)でも()まつてゐるやうな気配(けはい)(いた)しますぞ。233……常彦(つねひこ)234一寸(ちよつと)(まへ)235(なか)這入(はい)つて調(しら)べて()(くだ)さらぬか』
236 清彦(きよひこ)(なか)より『カチカチカチ』、
237常彦(つねひこ)『ハハー、238ここはカチカチ(やま)古狸(ふるだぬき)住居(ぢうきよ)して()洞穴(どうけつ)()えますワイ。239……オイ春彦(はるひこ)240(まへ)241斥候(せきこう)となつて(ひと)探険(たんけん)して()たら如何(どう)だ』
242春彦(はるひこ)『お(まへ)命令(めいれい)(くだ)つたのだ。243(たぬき)巣窟(さうくつ)常彦(つねひこ)這入(はい)るのは当然(たうぜん)だよ。244マア君子(くんし)(あやふ)きに(ちか)よらずだ。245命令(めいれい)()けないことを、246危険(きけん)(をか)して失敗(しつぱい)しては、247それこそ(いぬ)()はれた(やう)なものだ』
248高姫(たかひめ)春彦(はるひこ)249(まへ)一緒(いつしよ)探険(たんけん)這入(はい)つて()るのだよ』
250春彦(はるひこ)『たかが()れた(この)洞窟(どうくつ)251さう二人(ふたり)這入(はい)必要(ひつえう)はありますまい』
252高姫(たかひめ)『アヽさうだらう。253そんなら一人(ひとり)()いから、254春彦(はるひこ)さま、255(まへ)豪胆者(がうたんもの)だから這入(はい)つて(くだ)さい』
256 春彦(はるひこ)(あたま)をかき(なが)ら、
257春彦(はるひこ)『ヘー……ハイ』
258とモジモジして()る。259『カチカチ カチカチ ウー』と(うな)(ごゑ)(きこ)えて()る。
260春彦(はるひこ)『モシモシ高姫(たかひめ)さま、261此奴(こいつ)一人(ひとり)では如何(どう)しても()きませぬワ。262あの(こゑ)()いて御覧(ごらん)263数十匹(すうじつぴき)猛獣(まうじう)がキツと(ひそ)んで()ますよ。264グヅグヅして()ると、265(いち)()らず()()らず虻蜂(あぶはち)()らずになつて(しま)ひますぜ』
266高姫(たかひめ)(その)虻蜂(あぶはち)(おも)()したが、267彼奴(あいつ)(なん)でも言依別(ことよりわけの)(みこと)から、268清彦(きよひこ)269照彦(てるひこ)()()(いただ)宣伝使(せんでんし)になり、270飽迄(あくまで)我々(われわれ)反抗(はんかう)(てき)態度(たいど)()ると()つて()たさうだが、271(いま)どこに如何(どう)して()るだらう。272言依別(ことよりわけの)(みこと)(この)琉球(りうきう)(わた)り、273(りう)(きう)との宝玉(ほうぎよく)()()れ、274自分(じぶん)(かく)した七個(しちこ)(たま)(とも)に、275高砂島(たかさごじま)()(わた)つて、276高砂島(たかさごじま)国王(こくわう)となる計画(たくみ)だと()いて()る。277自転倒(おのころ)(じま)では(この)高姫(たかひめ)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)が、278()(うへ)(こぶ)となつて(おも)はしく目的(もくてき)()たぬので、279高姫(たかひめ)()ない地点(ちてん)野心(やしん)遂行(すゐかう)すると()(かんが)へで、280大切(たいせつ)宝玉(ほうぎよく)(ぬす)()し、281自転倒(おのころ)(じま)立去(たちさ)つたのだから、282仮令(たとへ)言依別(ことよりわけ)283(てん)()けり()(くぐ)るとも、284(くさ)()けても(さが)()し、285宝玉(ほうぎよく)取返(とりかへ)し、286さうして(かれ)面皮(めんぴ)()いて、287(こころ)(そこ)より改心(かいしん)さしてやらねば、288我々(われわれ)系統(ひつぽう)としての役目(やくめ)()まぬ。289アヽ(とし)()つてから、290(また)しても(また)しても海洋(かいやう)万里(ばんり)(なみ)(わた)り、291苦労(くらう)(いた)さねばならぬのか。292これも(まつた)言依別(ことよりわけ)肉体(にくたい)(あく)守護神(しゆごじん)憑依(ひようい)してゐるからだ。293……アヽ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)294(いち)()(はや)言依別(ことよりわけ)(ふく)守護神(しゆごじん)退却(たいきやく)させ、295(まこと)大和(やまと)(だましひ)立返(たちかへ)つて、296()出神(でのかみ)命令(めいれい)()(やう)にして(くだ)さいませ』
297(なかば)泣声(なきごゑ)になり、298(はな)(すす)つて両手(りやうて)(あは)せ、299一生(いつしやう)懸命(けんめい)祈願(きぐわん)して()る。300清彦(きよひこ)(この)(てい)()(にはか)可笑(をか)しくなり「プーツプーツ」()()し、301(しま)ひには大声(おほごゑ)をあげて、
302清彦(きよひこ)『ワツハヽヽヽ』
303(わら)()けた。
304高姫(たかひめ)(たれ)だ。305()出神(でのかみ)生宮(いきみや)神界(しんかい)(ため)306一生(いつしやう)懸命(けんめい)()祈願(きぐわん)(まを)()げてるのに、307ウフヽアハヽヽヽと(わら)(やつ)は……よもや(たぬき)ぢやあるまい。308何者(なにもの)だ。309サアこうなる(うへ)高姫(たかひめ)承知(しようち)(いた)さぬ。310(この)入口(いりぐち)青松葉(あをまつば)でくすべてでも往生(わうじやう)さしてやらねば()かぬ。311……コレ常彦(つねひこ)さま、312春彦(はるひこ)さま、313そこらの、314(あを)いものを()つて()なさい。315コラ大変(たいへん)(ごふ)()古狸(ふるだぬき)()るのだ。316()(あし)(ごふ)()ると人語(じんご)使(つか)ふやうになるからなア』
317 清彦(きよひこ)(にはか)(をんな)(こゑ)()し、
318清彦(きよひこ)『コレハコレハ高姫(たかひめ)(さま)319常彦(つねひこ)320春彦(はるひこ)()両人(りやうにん)(さま)321遠方(ゑんぱう)(ところ)遥々(はるばる)()くこそ()()(くだ)さいました。322ここは琉球王(りうきうわう)仮館(かりやかた)323()丸殿(まるどの)()(ところ)御座(ござ)います。324(わう)(さま)は……言依別(ことよりわけの)(かみ)(さま)とやらが、325自転倒(おのころ)(じま)から遥々(はるばる)()()しになり、326(りう)(きう)との宝玉(ほうぎよく)()受取(うけと)(あそ)ばし、327台湾(たいわん)一寸(ちよつと)立寄(たちよ)り、328それから南米(なんべい)高砂島(たかさごじま)()()しになりました不在中(るすちう)御座(ござ)います。329(わらは)(あぶ)……オツトドツコイ、330(あぶな)猛獣(まうじう)毒蛇(どくじや)沢山(たくさん)棲息(せいそく)する(この)(しま)留守(るす)(まも)つて()大蛇姫(をろちひめ)()ふ、331(それ)(それ)(いや)らしい(をんな)御座(ござ)います。332サア()遠慮(ゑんりよ)()りませぬ。333(この)洞穴(どうけつ)には沢山(たくさん)古狸(ふるだぬき)大蛇(だいぢや)住居(ぢうきよ)(いた)し、334今日(けふ)(ところ)綺麗(きれい)(をとこ)二人(ふたり)335綺麗(きれい)(をんな)二人(ふたり)336四魂(しこん)(そろ)うて守護(しゆご)(いた)してをります。337(しか)(なが)(いづ)れも本当(ほんたう)人間(にんげん)では御座(ござ)いませぬ。338(みんな)化物(ばけもの)御座(ござ)いますから、339(その)心算(つもり)()這入(はい)りを(ねが)ひます。340メツタにあなた(がた)(しほ)をつけて(あたま)から()んだり、341(へび)(かへる)()むやうにキユウキユウと()()むやうな(こと)御座(ござ)りませぬ。342如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)でも()()むと()不可思議(ふかしぎ)(りよく)(そな)へた貴女(あなた)343(はや)()這入(はい)(くだ)さいませ』
344高姫(たかひめ)這入(はい)れなら這入(はい)つてもあげませう。345(しか)一遍(いつぺん)(そと)姿(すがた)をあらはし、346案内(あんない)をなさらぬか』
347清彦(きよひこ)(そと)()るが最後(さいご)348虻公(あぶこう)正体(しやうたい)(あら)はれますワイ。349アツハヽヽヽ』
350高姫(たかひめ)最前(さいぜん)から(なん)だか可笑(をか)しいと(おも)つて()つた。351(まへ)淡路(あはぢ)東助(とうすけ)門番(もんばん)をして()つた泥坊(どろばう)(あが)りの虻公(あぶこう)ぢやないか。352如何(どう)して(また)()んな(ところ)へやつて()たのだ。353(まへ)はドハイカラの教主(けうしゆ)から、354清彦(きよひこ)()()(もら)うたぢやないか。355自転倒(おのころ)(じま)では最早(もはや)泥坊(どろばう)出来(でき)ないと(おも)うて、356こんな(ところ)まで海賊(かいぞく)(はたら)漂着(へうちやく)して()たのだらう。357サアお(まへ)一人(ひとり)ではあるまい、358大方(おほかた)(はち)()()るだらう。359(その)()同類(どうるゐ)(のこ)らず此処(ここ)引張(ひつぱ)つて()なさい。360天地(てんち)根本(こつぽん)(まこと)(みち)()いて()かせ、361大和(やまと)(だましひ)をねりなをして(たす)けて()げよう。362(こと)(しな)によつたら(この)高姫(たかひめ)家来(けらい)にしてやらぬ(こと)もない』
363清彦(きよひこ)(いま)(まへ)さまに這入(はい)られると、364(じつ)(こま)つた(こと)があるのだ。365今日(けふ)情意(じやうい)投合(とうがふ)……オツトドツコイ情約(じやうやく)履行(りかう)をしようと()肝腎要(かんじんかなめ)吉日(きちにち)だ。366(まへ)さまのやうなお()アさまは我々(われわれ)壮年者(さうねんしや)心理(しんり)(わか)るまい。367あゝエライ(ところ)へエライ(やつ)()たものだ。368(つき)村雲(むらくも)(はな)(あらし)369美人(びじん)(まへ)皺苦茶(しわくちや)(ばば)ア……』
370小声(こごゑ)(つぶや)いた。371高姫(たかひめ)(この)言葉(ことば)一端(いつたん)(みみ)()れ、
372高姫(たかひめ)『ナニ、373美人(びじん)皺苦茶(しわくちや)(ばば)アと()つたなア。374コリヤ(なん)でも秘密(ひみつ)伏在(ふくざい)する(この)洞穴(どうけつ)375モウ()うなる以上(いじやう)強行(きやうかう)(てき)押入(おしい)り、376(すみ)から(すみ)まで調(しら)べてやらねばなるまい。377ヒヨツとしたら(てん)(くわ)(すゐ)()宝玉(ほうぎよく)(かく)してあるか(わか)らない。378常彦(つねひこ)379春彦(はるひこ)380(わし)(つづ)け』
381()(なが)ら、382清彦(きよひこ)が「()つた()つた」と大手(おほで)(ひろ)げて(さへぎ)るのも()かず、383むりやりに()()んで(しま)つた。
384 (おく)には肥松(こえまつ)(あか)りが(またた)いて()る。385(さん)(にん)(かほ)はハツキリと輪廓(りんくわく)まで(あら)はれて()る。
386高姫(たかひめ)『コレハコレハ(みな)さま、387()(たの)しみの最中(さいちう)388()邪魔(じやま)(いた)しまして申訳(まをしわけ)のない(こと)御座(ござ)いました。389(はな)(あざむ)美男子(びだんし)美人(びじん)390そこへ白髪交(しらがまじ)りの歯脱婆(はぬけばば)アが(まゐ)りまして、391(さぞ)392折角(せつかく)(きよう)がさめた(こと)御座(ござ)いませう。393(この)洞穴(どうけつ)似合(にあ)はぬ……お(まへ)さまは(うつく)しい(かた)だが、394(この)(しま)(かた)か、395(ただし)は、396(あぶ)397(はち)両人(りやうにん)(かどは)かされてこんな(ところ)押込(おしこ)められたのか、398様子(やうす)がありさうに(おも)はれる。399サア(つつ)まずかくさず仰有(おつしや)つて(くだ)さい。400()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(この)()(あら)はれた以上(いじやう)は、401(あぶ)402(はち)両人(りやうにん)(くらゐ)(なん)()つても駄目(だめ)ですよ』
403 清子姫(きよこひめ)404照子姫(てるこひめ)両人(りやうにん)行儀(ぎやうぎ)よく両手(りやうて)をつき、
405両女(りやうぢよ)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。406聖地(せいち)(おい)()高名(かうめい)(いちじる)しき、407あなた(さま)高姫(たかひめ)(さま)御座(ござ)いましたか。408(わたし)比沼(ひぬ)真奈井(まなゐ)宝座(ほうざ)(つか)へて()りました清子姫(きよこひめ)409照子姫(てるこひめ)両人(りやうにん)御座(ござ)います』
410高姫(たかひめ)『かねがね黒姫(くろひめ)さまから(うけたま)はつて()つた、411比治山(ひぢやま)隠家(かくれが)(ござ)つた淑女(しゆくぢよ)はお(まへ)さまの(こと)であつたか。412如何(どう)して(また)かやうな(ところ)へお()(あそ)ばしたのだ。413大方(おほかた)(あぶ)414(はち)両人(りやうにん)小盗人(こぬすびと)(かど)はかされて、415()んな(ところ)()なさつたのだらう。416グヅグヅして()ると此奴(こいつ)ア○○をしかねまい代物(しろもの)です。417最前(さいぜん)小声(こごゑ)情約(じやうやく)履行(りかう)間際(まぎは)だとか(なん)とか(ほざ)いて()ました。418サア、419(わたし)()以上(いじやう)最早(もはや)大丈夫(だいぢやうぶ)420高姫(たかひめ)一緒(いつしよ)(この)琉球(りうきう)(しま)探険(たんけん)し、421結構(けつこう)宝玉(ほうぎよく)所在(ありか)(もと)め、422言依別(ことよりわけ)(あと)()うて、423(その)(なな)つの宝玉(ほうぎよく)()()れて聖地(せいち)(かへ)り、424大神(おほかみ)(さま)()神業(しんげふ)をお(たす)けしようではありませぬか』
425 二人(ふたり)(かほ)(あか)らめて、426無言(むごん)(まま)(うつむ)いて()る。427清彦(きよひこ)高姫(たかひめ)胸倉(むなぐら)をグツととり、
428清彦(きよひこ)『コラ(ばば)ア、429小盗人(こぬすびと)とは聞捨(ききずて)ならぬ。430三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)清彦(きよひこ)431照彦(てるひこ)両人(りやうにん)だ』
432高姫(たかひめ)『ヘン、433馬鹿(ばか)にするない。434(まへ)(たち)胸倉(むなぐら)()つて威喝(ゐかつ)した(ところ)で、435そんな(こと)にビクとも(いた)高姫(たかひめ)ぢやありませぬぞ。436(あぶ)437(はち)小泥坊(こどろばう)(おそ)ろしくて、438こんな(ところ)まで活動(くわつどう)()られますかい。439(いま)宣伝使(せんでんし)でも、440(むかし)はヤツパリ泥坊(どろばう)をやつて()たぢやないか』
441清彦(きよひこ)(むかし)(むかし)442(いま)(いま)だ。443改心(かいしん)すれば(その)()から真人間(まにんげん)にしてやらうと(かみ)(さま)仰有(おつしや)るぢやないか。444(おれ)泥坊(どろばう)なら高姫(たかひめ)大泥坊(おほどうばう)だ』
445高姫(たかひめ)『オイ常彦(つねひこ)446春彦(はるひこ)447(なに)をグヅグヅして()るのか、448高姫(たかひめ)(この)(とほ)胸倉(むなぐら)()られて()るのに平気(へいき)()()ると()(こと)がありますか』
449常彦(つねひこ)左様(さやう)(ござ)います。450あなたも(あま)()(つよ)いから、451(かみ)(さま)清彦(きよひこ)さまの()()つて身魂研(みたまみが)きをなさるのだと(おも)つて、452ジツとして()神徳(かげ)(いただ)いて()ります。453……なア春彦(はるひこ)さま、454キツと(ぜん)()つと(かみ)さまが仰有(おつしや)いますから、455(いま)善悪(ぜんあく)立別(たてわ)けが(はじ)まるのですで……高姫(たかひめ)さま、456シツカリやりなさい。457……清彦(きよひこ)さま、458何方(どちら)()けて(くだ)さるなや』
459 照彦(てるひこ)はムツクと立上(たちあが)り、460行司(ぎやうじ)気取(きど)りになつて、461そこにあつた芭蕉(ばせう)()(はし)をむしり唐団扇(たううちは)(やう)(かたち)にして、462(みぎ)()(ささ)げ、
463照彦(てるひこ)東西(とうざい)……(ひがし)高姫山(たかひめやま)に、464西(にし)清彦川(きよひこがは)……(いづ)れも一番(いちばん)勝負(しようぶ)465アハヽヽヽ』
466(わら)つて()る。467高姫(たかひめ)金切声(かなきりごゑ)()して、468(つめ)()て、469一生(いつしやう)懸命(けんめい)()きむしらうとする。470強力(がうりき)清彦(きよひこ)両方(りやうはう)手首(てくび)をグツと(にぎ)られ、471如何(いかん)ともすること(あた)はず、472()(ばか)白黒(しろくろ)させ前歯(まへば)のぬけた(くち)から、473(くさ)(いき)(つばき)とを(さかん)()()して、474清彦(きよひこ)(かほ)(そそ)いでゐる。475清彦(きよひこ)(たま)りかねて両方(りやうはう)()をパツと(はな)した。476照彦(てるひこ)(なか)()つて()り、
477照彦(てるひこ)()見物(けんぶつ)方々(かたがた)478(この)勝負(しようぶ)照彦(てるひこ)来年(らいねん)(まで)(あづ)かりと(いた)します』
479高姫(たかひめ)清子姫(きよこひめ)さま、480照子姫(てるこひめ)さま、481(まへ)さまは、482()んな乱暴(らんばう)(をとこ)(なん)(おも)うてゐられますか』
483清子姫(きよこひめ)『ハイ、484()二人(ふたり)(とも)申分(まをしぶん)のない、485立派(りつぱ)なお(かた)御座(ござ)います。486(なか)にも清彦(きよひこ)さまはどこともなしに(むし)()()(かた)ですよ。487なア照子姫(てるこひめ)さま』
488照子姫(てるこひめ)『あなたの()言葉(ことば)(とほ)り、489()二人(ふたり)とも本当(ほんたう)立派(りつぱ)(かた)ですワ。490(わたし)(なん)だか照彦(てるひこ)さまの(はう)が、491(なか)でもモ(ひと)立派(りつぱ)(かた)だと(おも)ひます、492ホヽヽヽヽ』
493(うつ)むく。
494高姫(たかひめ)清彦(きよひこ)(わたし)胸倉(むなぐら)()つたのも道理(だうり)495二人(ふたり)(をとこ)二人(ふたり)(をんな)496()いた同志(どうし)今晩(こんばん)こそは、497(この)(はな)(じま)何々(なになに)しようと(おも)うてる(ところ)へ、498(この)(ばば)アがやつて()たものだから(はら)()つたでせう。499()無理(むり)もありませぬ。500(しか)(なが)(えん)()ふものは(きたな)いものぢやな。501行成彦(ゆきなりひこの)(みこと)系統(けいとう)をうけた()両人(りやうにん)さまが、502(ひと)もあらうにこんなお(かた)女房(にようばう)にならうとは、503イヤモウ理外(りぐわい)()504高姫(たかひめ)(かん)()りました。505(しか)言依別(ことよりわけの)(みこと)さまは此処(ここ)()られたか、506御存(ごぞん)じでせうな』
507 清子姫(きよこひめ)508照子姫(てるこひめ)(いち)()に、
509両女(りやうぢよ)『ハイ、510おいでになつた(さう)御座(ござ)います』
511清彦(きよひこ)『おいでになるはなつたが、512(りう)(あぎと)(ふた)つの(たま)()()れ、513意気(いき)揚々(やうやう)として、514(とほ)(むかし)台湾島(たいわんたう)()き、515それから南米(なんべい)高砂島(たかさごじま)(わた)られたといふことだ。516我々(われわれ)もその(りう)(きう)との(ふた)つの(たま)()()れる(ため)にやつて()たのだが、517一足(ひとあし)(おく)れた(ため)に、518(あと)(まつ)り、519せめても(はら)いせに男女(だんぢよ)()(にん)が、520(つき)御柱(みはしら)(めぐ)()ひ、521美斗能(みとの)麻具波比(まぐはひ)をなせと()(たま)ひ、522(この)(しま)(まも)(がみ)とならうと(おも)つて()(ところ)ですよ』
523高姫(たかひめ)(なん)とお(まへ)(をとこ)にも似合(にあ)はぬ、524チツポけな肝玉(きもだま)だな。525(この)(ひろ)世界(せかい)()んな(しま)(ひと)(をさ)めて満足(まんぞく)してゐる(やう)(こと)では、526到底(たうてい)三千(さんぜん)世界(せかい)御用(ごよう)出来(でき)ませぬぞや。527(しか)(なが)身魂(みたま)相応(さうおう)御用(ごよう)だから、528何程(なにほど)(からす)孔雀(くじやく)になれと()つたつてなれる気遣(きづか)ひはなし、529仕方(しかた)がないなア』
530()(づら)し、531冷笑(れいせう)(うか)べて()る。
532照彦(てるひこ)高姫(たかひめ)さま、533(あま)見下(みさ)げて(くだ)さいますな。534(わたし)だつて(りう)(きう)との(たま)()()れ、535言依別(ことよりわけ)さまの(かく)された(なな)つの(たま)を、536仮令(たとへ)半分(はんぶん)でも(さが)()し、537そして、538高砂島(たかさごじま)(まを)すに(およ)ばず、539筑紫(つくし)(しま)から世界中(せかいぢう)覇権(はけん)(にぎ)(くらゐ)(かんが)へは()つて()るのだが、540肝腎(かんじん)(りう)(きう)との宝玉(ほうぎよく)言依別(ことよりわけ)()られて(しま)つたのだから、541(あと)()(ねら)うと()つても見当(けんたう)がつかぬだないか。542それだから(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)水行(すゐぎやう)でもして、543二夫婦(ふたふうふ)(もの)(たま)(ありか)(さが)しに()かうといふ(かんが)へだ。544(ひやく)(にち)水行(すゐぎやう)をすれば世界(せかい)()えすくと三五教(あななひけう)(かみ)(さま)仰有(おつしや)るのだから、545(たま)所在(ありか)はもとより、546言依別(ことよりわけ)行方(ゆくへ)(わか)るのだ。547あなたは()出神(でのかみ)生宮(いきみや)なら、548猶更(なほさら)(わか)るでせう』
549高姫(たかひめ)『きまつた(こと)だよ。550()かればこそ、551ここ(まで)()いて()たのだ……サア言依別(ことよりわけの)(みこと)552(あま)(とほ)くは()くまい。553グヅグヅしてると(また)面倒(めんだう)だ。554……常彦(つねひこ)さま、555春彦(はるひこ)さま、556(はや)(まゐ)りませう。557なる(こと)ならば、558照子姫(てるこひめ)さま、559清子姫(きよこひめ)さま、560あなた(だけ)(わたし)のお(とも)なさいませぬか。561(あぶ)562(はち)両人(りやうにん)女房(にようばう)になるのは(ひと)(かんが)(もの)ですで』
563清彦(きよひこ)『エー(また)(ばば)アの(くせ)(かま)ひやがる。564サア(はや)()()け』
565高姫(たかひめ)()()けと()はなくても、566こんな(ところ)にグヅグヅしてをれるか。567……サア常彦(つねひこ)568春彦(はるひこ)569(はや)(はや)く』
570とせき()てて、571()()らうとする。
572常彦(つねひこ)『モシモシ高姫(たかひめ)さま、573何程(なにほど)(いそ)いだつて、574なる(やう)により()りませぬで。575今夜(こんや)はここで宿()めて(もら)つて、576明日(あす)(あさ)ゆつくり()きませうか……ナア春彦(はるひこ)577(まへ)大分(だいぶん)草臥(くたび)れただらう』
578春彦(はるひこ)草臥(くたび)れたと()つた(ところ)で、579(ふね)(なか)()いて()るのだ。580目的(もくてき)()つてから、581何程(なにほど)ゆつくり(やす)まうとままだ。582サア()かう』
583(いや)さうにしてる常彦(つねひこ)()()り、584引摺(ひきず)るやうにして、585高姫(たかひめ)(とも)(この)洞穴(どうけつ)()()し、586路々(みちみち)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(なが)ら、587(いちご)石松(いしまつ)(しげ)珊瑚岩(さんごがん)碁列(ごれつ)せる浜辺(はまべ)()して一目散(いちもくさん)(かけ)つけ、588()()(ふね)()(まか)せ、589一生(いつしやう)懸命(けんめい)(みなみ)()して大海原(おほうなばら)()()した。
590大正一一・七・二七 旧六・四 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki