霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 猫(ねこ)の恋(こひ)〔七八九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第2篇 千差万別 よみ(新仮名遣い):せんさばんべつ
章:第7章 猫の恋 よみ(新仮名遣い):ねこのこい 通し章番号:789
口述日:1922(大正11)年07月24日(旧06月01日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
玉照姫は、初稚姫、玉能姫、お玉の方に紫の玉を守らせて、ひとまず館に帰った。幹部たちも解散した。
高山彦は旅装を整え、アールとエースを従えて館を立ち居でようとしたときに、夜叉のように髪を振り乱して追いかけてきた黒姫に、ばったり出くわした。高山彦は裏口へ回って逃げようとしたが、黒姫は癪を起こしてその場に伸びてしまった。
これを見捨てるわけにもゆかず、仕方なく高山彦はアールとエースと共に黒姫を介抱した。黒姫は気を取り戻した。高山彦は、玉探しのためにこれまでの縁をあきらめてくれ、と改めて懇願した。
黒姫は高山彦につらつらと恨み言を述べ、懐剣を抜いて喉に当てて見せた。高山彦は意に介さず行こうとするが、黒姫はアールとエースにも命じて高山彦に食らいついて放さない。
高山彦は黒姫の執着心をたしなめ、改心して皆に愛されるようになって欲しいと説示し、アールとエースに命じて出立しようとする。
そこへ玉治別がやってきた。あくまでしがみつく黒姫に、高山彦はついに当て身を食わせて気絶させた。高山彦は玉治別に、気絶から回復させるツボを教えると、アールとエースを従えて行ってしまった。
玉治別は教えられたツボを押して黒姫を回復させると、黒姫に説諭した。黒姫は回復させてくれたことを玉治別に感謝し、また一切の執着を捨てるべく、錦の宮に向かって共に拍手祈願をした。
ちなみに、言依別命は国依別を連れて、南米と高砂島に渡り、鷹依姫と竜国別の行方を尋ねるかたがた、宣伝の旅に出ることになった。
高姫は春彦と常彦を連れて、四個の玉を見つけ出そうと言依別命を追って高砂島に行くことになった。
杢助は初稚姫、玉治別、五十子姫、亀彦、音彦、黄竜姫、蜈蚣姫を率いて、波斯の国のウブスナ山脈の斎苑の館を指して行くことになった。
黒姫は、高山彦が竜宮島または筑紫島に行ったと聞いて、二人の従者を引き連れて追っかけて行くことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-10-27 18:03:26 文字数:3061 OBC :rm2707
愛善世界社版:133頁 八幡書店版:第5輯 291頁 修補版: 校定版:139頁 普及版:60頁 初版: ページ備考:
001 玉照姫(たまてるひめ)は紫(むらさき)の宝珠(ほつしゆ)を初稚姫(はつわかひめ)、002玉能姫(たまのひめ)、003お玉(たま)の方(かた)に守(まも)らせ乍(なが)ら、004我(わが)館(やかた)に帰(かへ)らせ給(たま)うた。005幹部(かんぶ)を始(はじ)め一同(いちどう)は更(あらた)めて天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し一先(ひとま)づ各自(かくじ)の宿所(しゆくしよ)に帰(かへ)る事(こと)となつた。
006 高山彦(たかやまひこ)は一旦(いつたん)館(やかた)へ立(た)ち帰(かへ)り旅装(りよさう)を整(ととの)へ、007アール、008エースの二人(ふたり)と共(とも)に早々(さうさう)館(やかた)を立(た)ち出(い)でんとする時(とき)しも、009髪(かみ)振(ふ)り乱(みだ)し夜叉(やしや)の如(ごと)くに帰(かへ)つて来(き)た黒姫(くろひめ)と門口(かどぐち)でピツタリ出会(でつくは)した。010南無(なむ)三宝(さんぽう)一大事(いちだいじ)と高山彦(たかやまひこ)は裏口(うらぐち)より駆出(かけだ)さんとする。011黒姫(くろひめ)は此(この)場(ば)に倒(たふ)れて癪(しやく)を起(おこ)してフン伸(の)びて仕舞(しま)つた。012流石(さすが)の高山彦(たかやまひこ)も之(これ)を見捨(みすて)て逃(に)げ出(だ)す訳(わけ)にもゆかず、
013高山彦(たかやまひこ)『エース、014水(みづ)だ。015…アール、016癪(しやく)だ』
017と呼(よ)ばはり乍(なが)ら介抱(かいほう)して居(ゐ)る。
018 黒姫(くろひめ)は目(め)の黒玉(くろたま)を何処(どこ)かへ隠(かく)して仕舞(しま)ひ、019白目(しろめ)ばかりになつて「フウフウ」と太(ふと)い息(いき)をして居(ゐ)る。020エース、021アールは口(くち)に水(みづ)を含(ふく)んで無性(むしやう)矢鱈(やたら)に面部(めんぶ)に吹(ふ)き付(つ)ける。022高山彦(たかやまひこ)は口(くち)を耳(みみ)にあてて反魂歌(はんこんか)の「一(ひと)、023二(ふた)、024三(み)、025四(よ)、026五(いつ)、027六(むゆ)、028七(なな)、029八(や)、030九(ここの)、031十(たり)、032百(もも)、033千(ち)、034万(よろづ)」を数回(すうくわい)繰返(くりかへ)した。035黒姫(くろひめ)は「ウン」と呻(うめ)き乍(なが)ら、
036黒姫(くろひめ)『ア、037何方(どなた)か知(し)りませぬが、038よう助(たす)けて下(くだ)さつた』
039と四辺(あたり)をキヨロキヨロ見廻(みまは)して居(ゐ)る。
040高山彦(たかやまひこ)『ア、041黒姫(くろひめ)、042気(き)がついたか。043マアマア之(これ)で安心(あんしん)だ。044これから高山彦(たかやまひこ)はお前(まへ)と縁(えん)を断(き)り、045竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)か、046但(ただし)は筑紫(つくし)の島(しま)へ玉探(たまさが)しに行(ゆ)くから、047これまでの縁(えん)と諦(あきら)めて下(くだ)さい』
048 黒姫(くろひめ)は怨(うら)めしさうに、
049黒姫(くろひめ)『高山(たかやま)さま、050お前(まへ)も余(あんま)りだ。051妾(わたし)の今(いま)卒倒(そつたふ)したのもお前(まへ)の心(こころ)が情無(つれな)いからだよ。052刃物(はもの)持(も)たずの人殺(ひとごろし)、053冥土(めいど)の鬼(おに)にエライ成敗(せいばい)を受(う)けなさるのが…妾(わたし)や…それが悲(かな)しい。054神(かみ)の結(むす)んだ縁(えん)ぢやもの、055何卒(どうぞ)モ一度(いちど)思(おも)ひ直(なほ)して下(くだ)さいませ』
056高山彦(たかやまひこ)『何(なん)と言(い)つても男(をとこ)の一旦(いつたん)口(くち)から出(だ)した事(こと)、057後(あと)へひく訳(わけ)にはゆかぬ。058先(さき)は先(さき)として一先(ひとま)づ此(この)場(ば)は離別(りべつ)を致(いた)す。059黒姫(くろひめ)、060さらば……』
061と立(た)ち去(さ)らんとする。062黒姫(くろひめ)は隠(かく)し持(も)つたる懐剣(くわいけん)、063ヒラリと引(ひ)き抜(ぬ)き、
064黒姫(くろひめ)『高山彦(たかやまひこ)さま、065永(なが)らくお世話(せわ)になりました。066妾(わたし)の恋(こひ)は九寸(くすん)五分(ごぶ)、067最早(もはや)此(この)世(よ)に生(いき)て望(のぞ)みなし。068妾(わたし)は此処(ここ)で潔(いさぎよ)く自害(じがい)を致(いた)し、069貴方(あなた)を怨(うら)める魂魄(こんぱく)凝(こ)つて鬼(おに)となり、070屹度(きつと)素首(そつくび)引(ひ)き抜(ぬ)いて見(み)せませう。071アヽ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
072と喉(のど)にピタリと当(あ)てて見(み)せた。
073高山彦(たかやまひこ)『自殺(じさつ)は罪悪中(ざいあくちう)の罪悪(ざいあく)だ。074これ黒姫(くろひめ)さま、075何程(なにほど)九寸(くすん)五分(ごぶ)だつて胸(むね)の方(はう)では喉(のど)は斬(き)れませぬよ。076随分(ずゐぶん)芝居(しばゐ)がお上手(じやうづ)ですね。077そんな事(こと)にチヨロマカされる高山彦(たかやまひこ)では御座(ござ)りませぬワイ。078アツハヽヽヽ』
079黒姫(くろひめ)『エー、080残念(ざんねん)や、081口惜(くちを)しい。082そんなら本当(ほんたう)に斬(き)つて見(み)せようか。083斬(き)ると云(い)うたら屹度(きつと)斬(き)つて見(み)せませう』
084高山彦(たかやまひこ)『一旦(いつたん)断(き)つた此(この)縁(えん)、085再(ふたた)びきられる道理(だうり)があらうか。086最早(もはや)お前(まへ)と俺(わし)との二人(ふたり)の間(あひだ)には何(なん)の連鎖(れんさ)もない。087赤(あか)の他人(たにん)も同様(どうやう)だ。088勝手(かつて)にお斬(き)りなさいませ』
089黒姫(くろひめ)『そりや聞(きこ)えませぬ高山(たかやま)さま、090天ケ下(あめがした)に他人(たにん)と云(い)ふ事(こと)は無(な)いもの……と三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)、091お前(まへ)はそれを忘(わす)れたか。092憐(あは)れな女(をんな)を見殺(みごろ)しにする御(ご)所存(しよぞん)か、093それ程(ほど)情(つれ)ないお前(まへ)ではなかつたに、094如何(いか)なる天魔(てんま)に魅(みい)られたか。095お前(まへ)の言葉(ことば)は鬼(おに)とも蛇(じや)とも悪人(あくにん)とも譬方(たとへがた)なき無情(むじやう)惨酷(ざんこく)さ、096死(し)んでも忘(わす)れは致(いた)しませぬぞや』
097高山彦(たかやまひこ)『イヤ、098もう神界(しんかい)の為(た)めには家(いへ)を忘(わす)れ、099身(み)を忘(わす)れ、100妻子(さいし)を忘(わす)れるとかや。101男子(だんし)は戦場(せんぢやう)に向(むか)ふ時(とき)には三忘(さんばう)が肝腎(かんじん)だ。102……黒姫(くろひめ)、103さらば……』
104と行(ゆ)かんとする。
105黒姫(くろひめ)『コレコレ、106アール、107エースの両人(りやうにん)、108高山(たかやま)さまの足(あし)に確(しつか)り喰(くら)ひついて居(ゐ)るのだよ。109屹度(きつと)放(はな)しちやなりませぬぞえ』
110 二人(ふたり)は高山彦(たかやまひこ)の両足(りやうあし)に喰(くら)ひ付(つ)き乍(なが)ら、
111アール『アヽア、112犬(いぬ)も喰(く)はぬ夫婦(めをと)喧嘩(けんくわ)の犠牲(ぎせい)に供(きよう)せられ、113随分(ずゐぶん)勤(つと)め奉公(ぼうこう)も辛(つら)いものだなア』
114高山彦(たかやまひこ)『こりやこりや、115アール、116エースの両人(りやうにん)、117早(はや)く放(はな)さぬか』
118黒姫(くろひめ)『決(けつ)して放(はな)しちやなりませぬぞ。119コレコレ高山(たかやま)さま、120男(をとこ)は閾(しきゐ)を跨(また)げるや否(いな)や七(しち)人(にん)の敵(てき)があると云(い)ふ事(こと)を知(し)つて居(ゐ)ますか』
121高山彦(たかやまひこ)『アハヽヽヽ、122イヤもう御(ご)親切(しんせつ)な御(ご)注意(ちうい)、123有難(ありがた)う御座(ござ)います。124誠(まこと)一(ひと)つの心(こころ)で居(を)れば、125世界(せかい)は敵(てき)の影(かげ)を見(み)たいと言(い)つても見(み)る事(こと)は出来(でき)ない。126山河(さんか)草木(さうもく)、127人類(じんるゐ)鳥獣(てうじう)魚鼈(ぎよべつ)に至(いた)る迄(まで)、128皆(みな)我々(われわれ)の味方(みかた)ばかりだ。129人(ひと)を見(み)たら泥坊(どろばう)と思(おも)へ等(など)と云(い)ふ猜疑心(さいぎしん)に駆(か)られて居(ゐ)る人間(にんげん)の目(め)には、130何(なに)も彼(か)も敵(てき)に見(み)えるだらうが、131我々(われわれ)は神(かみ)様(さま)にお任(まか)せした以上(いじやう)一人(ひとり)の敵(てき)も無(な)い。132お前(まへ)に添(そ)うて居(を)れば此(この)世(よ)の中(なか)で敵(てき)を作(つく)るばかりだから……何卒(どうぞ)心配(しんぱい)して下(くだ)さるな。133お前(まへ)もこれから改心(かいしん)をして、134世間(せけん)の人(ひと)に可愛(かあい)がられて呉(く)れ。135それが高山彦(たかやまひこ)の別(わか)れに臨(のぞ)みお前(まへ)に与(あた)ふる大切(たいせつ)な餞別(みやげ)だ。136高姫(たかひめ)さまにも何卒(どうぞ)よく言(い)うて置(お)いて下(くだ)さい。137必(かなら)ず必(かなら)ず執着心(しふちやくしん)を出(だ)してはなりませぬぞ。138今日(けふ)から心(こころ)を改(あらた)めて本当(ほんたう)の生(うま)れ赤子(あかご)になり、139仮(かり)にも竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)等(など)と大(だい)それた事(こと)を言(い)はない様(やう)にしなさい。140左様(さやう)なれば是(これ)にて……黒姫(くろひめ)さま、141お暇(いとま)致(いた)します』
142黒姫(くろひめ)『高山(たかやま)さま、143そりや貴方(あなた)、144本性(ほんしやう)で仰有(おつしや)るのか。145芝居(しばゐ)ぢやありますまいなア』
146高山彦(たかやまひこ)『本性(ほんしやう)で無(な)うて何(なん)とせう。147夫婦(ふうふ)の道(みち)は人倫(じんりん)の大本(たいほん)だ。148それを別(わか)れようと言(い)ふ高山彦(たかやまひこ)の胸(むね)の裏(うち)、149些(ちつ)とは推量(すゐりやう)して呉(く)れ。150……さあアール、151エース、152これから行(ゆ)かう。153……黒姫(くろひめ)さま、154これにて暫(しばら)くお別(わか)れ致(いた)します』
155と慌(あわただ)しく駆出(かけいだ)す。
156 斯(か)かる処(ところ)へ走(はし)つて来(き)た玉治別(たまはるわけ)、
157玉治別(たまはるわけ)『ヤア、158高山(たかやま)さま、159愈(いよいよ)御(お)出(い)でですか』
160高山彦(たかやまひこ)『ハイ、161何分(なにぶん)宜(よろ)しう願(ねが)ひますよ』
162黒姫(くろひめ)『何(なん)と言(い)つても放(はな)しはせぬ』
163と獅噛(しが)みつく。164高山彦(たかやまひこ)は「エー面倒(めんだう)」と当身(あてみ)を一(ひと)つ喰(く)はすや否(いな)や、165黒姫(くろひめ)は「ウン」と其(その)場(ば)に大(だい)の字(じ)に倒(たふ)れて仕舞(しま)つた。
166玉治別(たまはるわけ)『何(なん)と高山(たかやま)さま、167乱暴(らんばう)な事(こと)を致(いた)しますな』
168高山彦(たかやまひこ)『斯(か)うして置(お)かねば仕方(しかた)が無(な)いから……此(この)間(ま)に私(わたし)は身(み)を隠(かく)すから、169後(あと)は頼(たの)みますよ。170斯(か)うして此処(ここ)を拇指(おやゆび)でグツと押(お)して貰(もら)へば息(いき)を吹(ふ)き返(かへ)す……玉治別(たまはるわけ)さま、171此処(ここ)だよ。172何卒(どうぞ)二十分(にじふぶん)ばかり待(ま)つとつて下(くだ)さい』
173玉治別(たまはるわけ)『承知(しようち)致(いた)しました』
174 「左様(さやう)ならば」と高山彦(たかやまひこ)は二人(ふたり)を伴(ともな)ひ、175足早(あしばや)に何(いづ)れへか姿(すがた)を隠(かく)した。176玉治別(たまはるわけ)は時期(じき)を見計(みはか)らひ高山彦(たかやまひこ)に教(をそ)はつた局(つぼ)を拇指(おやゆび)に力(ちから)を入(い)れてグツと押(お)した。177「ウン」と息(いき)吹(ふ)き返(かへ)した黒姫(くろひめ)は四方(あたり)をキヨロキヨロ見廻(みまは)し、
178黒姫(くろひめ)『アヽ残念(ざんねん)や、179到頭(たうとう)逃(に)げられたか。180エー仕方(しかた)がない。181……お前(まへ)は玉治別(たまはるわけ)さま、182ようマア助(たす)けて下(くだ)さつた』
183玉治別(たまはるわけ)『高山彦(たかやまひこ)の奴(やつ)、184怪(け)しからぬ乱暴(らんばう)な男(をとこ)だ。185永(なが)らく添(そ)うて来(き)た女房(にようばう)に当身(あてみ)を喰(く)はして息(いき)を止(と)め、186筑紫(つくし)の島(しま)へ逃(に)げて行(ゆ)くとは不届(ふとど)き千万(せんばん)な者(もの)だ。187お前(まへ)さまも是(これ)で目(め)が醒(さ)めただらう。188虎(とら)、189狼(おほかみ)と一緒(いつしよ)に寝(ね)る様(やう)なものだ。190私(わし)もお前(まへ)さまを活(い)かさうと思(おも)つて、191何程(なにほど)骨(ほね)を折(を)つたか分(わか)りませぬ。192到頭(たうとう)局(つぼ)が分(わか)つて活(くわつ)を入(い)れた時(とき)、193貴女(あなた)がもの言(い)うたのも皆(みな)神(かみ)さまのお蔭(かげ)、194アヽ勿体(もつたい)ない。195是(これ)から一切(いつさい)の執着(しふちやく)を捨(す)てて大神(おほかみ)さまに感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)しませう』
196 「ハイ、197有難(ありがた)う」と黒姫(くろひめ)は玉治別(たまはるわけ)と相並(あひなら)び、198拍手(はくしゆ)の声(こゑ)も淑(しと)やかに錦(にしき)の宮(みや)の方面(はうめん)に向(むか)つて感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の言葉(ことば)を奏(そう)した。
199 因(ちなみ)に言(い)ふ、200錦(にしき)の宮(みや)の神司(かむづかさ)は従前(じゆうぜん)の通(とほ)り玉照彦(たまてるひこ)、201玉照姫(たまてるひめ)の二人(ふたり)相並(あひなら)ばれて御(ご)神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)され、202英子姫(ひでこひめ)選(えら)ばれて言依別(ことよりわけの)命(みこと)の不在中(ふざいちう)教主(けうしゆ)の役(やく)を勤(つと)めらるる事(こと)となつた。203そして東助(とうすけ)は教主(けうしゆ)代理(だいり)兼(けん)総務(そうむ)となつて聖地(せいち)に仕(つか)へた。
204 高山彦(たかやまひこ)、205秋彦(あきひこ)、206テールス姫(ひめ)、207夏彦(なつひこ)、208佐田彦(さだひこ)、209お玉(たま)の方(かた)は聖地(せいち)にあつて幹部(かんぶ)の位置(ゐち)を占(し)め神業(しんげふ)に従事(じゆうじ)しつつあつた。210玉能姫(たまのひめ)は生田(いくた)の森(もり)の館(やかた)に帰(かへ)りて駒彦(こまひこ)と共(とも)に神業(しんげふ)に従事(じゆうじ)する事(こと)となつた。211又(また)言依別(ことよりわけの)命(みこと)は国依別(くによりわけ)と共(とも)に南米(なんべい)、212高砂島(たかさごじま)に渡(わた)り、213鷹依姫(たかよりひめ)、214竜国別(たつくにわけ)の行衛(ゆくゑ)を探(たづ)ね、215旁(かたがた)宣伝(せんでん)の為(た)めに出張(しゆつちやう)さるる事(こと)となつた。
216 高姫(たかひめ)は言依別(ことよりわけの)命(みこと)の後(あと)を追(お)ひ四個(よんこ)の玉(たま)を取(と)り返(かへ)さんと、217春彦(はるひこ)、218常彦(つねひこ)の二人(ふたり)を引(ひ)き率(つ)れ、219高砂島(たかさごじま)に行(ゆ)く事(こと)となつた。220杢助(もくすけ)は初稚姫(はつわかひめ)、221玉治別(たまはるわけ)、222五十子(いそこ)姫(ひめ)、223亀彦(かめひこ)、224音彦(おとひこ)、225黄竜姫(わうりようひめ)、226蜈蚣姫(むかでひめ)其(その)他(た)を率(ひき)ゐ、227波斯(フサ)の国(くに)のウブスナ山脈(さんみやく)斎苑(いそ)の館(やかた)を指(さ)して行(ゆ)く事(こと)となつた。228梅子姫(うめこひめ)はコーカス山(ざん)に二三(にさん)の供者(ともびと)を従(したが)へ途々(みちみち)宣伝(せんでん)をし乍(なが)ら登(のぼ)らせ給(たま)ふ。229黒姫(くろひめ)は高山彦(たかやまひこ)が竜宮島(りうぐうじま)又(また)は筑紫(つくし)の島(しま)に逃(に)げ去(さ)りしと聞(き)き、230一方(いつぱう)は玉(たま)の詮議(せんぎ)を兼(か)ねて夫(をつと)の行衛(ゆくゑ)を捜査(さうさ)すべく聖地(せいち)を後(あと)に、231三人(みたり)の供者(ともびと)を従(したが)へ出発(しゆつぱつ)する事(こと)となつた。
232(大正一一・七・二四 旧六・一 北村隆光録)
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