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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第28巻(卯の巻)
序歌
総説歌
第1篇 高砂の島
第1章 カールス王
第2章 無理槍
第3章 玉藻山
第4章 淡渓の流
第5章 難有迷惑
第6章 麻の紊れ
第2篇 暗黒の叫
第7章 無痛の腹
第8章 混乱戦
第9章 当推量
第10章 縺れ髪
第11章 木茄子
第12章 サワラの都
第3篇 光明の魁
第13章 唖の対面
第14章 二男三女
第15章 願望成就
第16章 盲亀の浮木
第17章 誠の告白
第18章 天下泰平
第4篇 南米探険
第19章 高島丸
第20章 鉈理屈
第21章 喰へぬ女
第22章 高砂上陸
跋(暗闇)
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
>
第28巻(卯の巻)
> 第1篇 高砂の島 > 第5章 難有迷惑
<<< 淡渓の流
(B)
(N)
麻の紊れ >>>
第五章
難有
(
ありがた
)
迷惑
(
めいわく
)
〔八〇五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻
篇:
第1篇 高砂の島
よみ(新仮名遣い):
たかさごのしま
章:
第5章 難有迷惑
よみ(新仮名遣い):
ありがためいわく
通し章番号:
805
口述日:
1922(大正11)年08月06日(旧06月14日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年8月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
日楯と月鉾は禊を終わって、信徒を連れて神殿に戻ってきた。そして神殿の前で父の無事な帰還を祈っていた。そこへ人々をかきわけて真道彦が現れ、兄弟と共に拝礼を行った。
真道彦は拝礼を終えると、兄弟の手を握って父の名乗りをした。兄弟をはじめその場の信徒一同は喜び、祝いの直会は三日も続いた。
玉藻の湖水の東には、天嶺という景勝の山地があり、日楯とユリコ姫に守らせることになった。西側の泰嶺には、月鉾とマリヤス姫に守らせた。真道彦は玉藻山の霊場にヤーチン姫を奉じていた。
日楯とユリコ姫は夫婦となって神業に仕えた。マリヤス姫は月鉾に想いを寄せたが、月鉾は神の命により独身生活を続けていた。
ヤーチン姫は、老いたとはいえ精悍な真道彦に対し、自分を救ってくれたという思いからいつしか恋の想いを抱くようになった。そしてその想いが募って病気を発し、床に就いてしまった。
侍臣のキールスタンはヤーチン姫を看病したが、一向に効験はなく重病となってしまった。ある日真道彦がヤーチン姫の病床を見舞った。ヤーチン姫は、真道彦に想いを伝えた。
真道彦は、死の床にある婦人に対して没義道な振る舞いをせずに見送ろうと決心し、姫の思いを入れる返答をなした。ヤーチン姫は喜び、病の身のまま病床を出て身を繕い、真道彦を自分の居間に導いた。
そして真道彦をカールス王であると誤認して、当惑する真道彦の腕にしがみついて泣き伏した。キールスタンはこの様を見て驚き、二人の間には夫婦関係が結ばれたものという噂が信徒の間には広まった。
しかし真道彦は将来を慮り、ヤーチン姫には一指もさえることはなく、主人のように尊び仕えた。ヤーチン姫も病気が回復するにしたがい、誤認は解けて、真道彦の信仰の堅実さに感歎し、互いに胸襟を開いて神業に参加することとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
オリオン座(オレオン星座)
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-11-15 18:56:11
OBC :
rm2805
愛善世界社版:
59頁
八幡書店版:
第5輯 373頁
修補版:
校定版:
60頁
普及版:
26頁
初版:
ページ備考:
001
日楯
(
ひたて
)
、
002
月鉾
(
つきほこ
)
の
両
(
りやう
)
教主
(
けうしゆ
)
は
数多
(
あまた
)
の
取次
(
とりつぎ
)
信徒
(
しんと
)
等
(
ら
)
に
取巻
(
とりま
)
かれ、
003
数多
(
あまた
)
の
松明
(
たいまつ
)
を
点
(
てん
)
じ
乍
(
なが
)
ら、
004
湖
(
みづうみ
)
の
畔
(
ほとり
)
を
長蛇
(
ちやうだ
)
の
陣
(
ぢん
)
を
作
(
つく
)
り、
005
蜿蜒
(
えんえん
)
として
玉藻山
(
たまもやま
)
の
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
006
松明
(
たいまつ
)
の
火光
(
くわくわう
)
は
湖面
(
こめん
)
に
映
(
えい
)
じ、
007
恰
(
あたか
)
も
水中
(
すゐちう
)
に
火竜
(
ひりよう
)
の
泳
(
およ
)
ぐが
如
(
ごと
)
く、
008
壮観
(
さうくわん
)
譬
(
たと
)
ふるに
物
(
もの
)
なき
眺
(
なが
)
めなりけり。
009
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
松明
(
たいまつ
)
の
後
(
うしろ
)
より、
010
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
、
011
ユリコ
姫
(
ひめ
)
、
012
キールスタンと
共
(
とも
)
に
一行
(
いつかう
)
に
従
(
したが
)
ひ、
013
聖地
(
せいち
)
に
帰
(
かへ
)
り
着
(
つ
)
いた。
014
されど
一人
(
ひとり
)
として、
015
夜中
(
よなか
)
の
事
(
こと
)
と
云
(
い
)
ひ、
016
最後
(
さいご
)
より
来
(
きた
)
りし
事
(
こと
)
とて、
017
気
(
き
)
の
付
(
つ
)
く
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
もなかりけり。
018
日楯
(
ひたて
)
、
019
月鉾
(
つきほこ
)
の
二人
(
ふたり
)
は
新
(
あらた
)
に
建造
(
けんざう
)
されたる
神殿
(
しんでん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
020
『
父
(
ちち
)
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
行方
(
ゆくへ
)
の
分
(
わか
)
りますよう』……と
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
祈念
(
きねん
)
をし
居
(
ゐ
)
たり。
021
そこへ
衆人
(
しうじん
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
け、
022
悠々
(
いういう
)
として
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は、
023
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
神前
(
しんぜん
)
に
向
(
むか
)
つて
拍手
(
はくしゆ
)
し
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
024
二人
(
ふたり
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
は
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
と
云
(
い
)
ひ、
025
声
(
こゑ
)
と
云
(
い
)
ひ、
026
且
(
か
)
つ……
吾
(
わ
)
が
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
でて
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
する
者
(
もの
)
は、
027
三五教
(
あななひけう
)
に
一人
(
ひとり
)
もなし、
028
正
(
まさ
)
しく
神
(
かみ
)
の
顕現
(
けんげん
)
か、
029
但
(
ただし
)
は
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
の
帰
(
かへ
)
りませしにあらずや……と
心中
(
しんちう
)
に
且
(
か
)
つ
疑
(
うたが
)
ひ、
030
且
(
か
)
つ
歓
(
よろこ
)
び、
031
祝詞
(
のりと
)
の
終
(
をは
)
るを
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
032
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
拝礼
(
はいれい
)
を
了
(
をは
)
り、
033
一同
(
いちどう
)
に
目礼
(
もくれい
)
をなし、
034
兄弟
(
きやうだい
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り、
035
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
036
真道彦命
『
吾
(
わ
)
れは
久
(
ひさ
)
しく
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
を
逃
(
のが
)
れ
居
(
ゐ
)
たる
汝
(
なんぢ
)
が
父
(
ちち
)
なるぞ。
037
よくマア
無事
(
ぶじ
)
に
生
(
い
)
き
永
(
なが
)
らへしのみならず、
038
再
(
ふたた
)
び
聖場
(
せいぢやう
)
を
復興
(
ふくこう
)
し
得
(
え
)
たるは、
039
全
(
まつた
)
く
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
信仰
(
しんかう
)
の
真心
(
まごころ
)
を、
040
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
御
(
ご
)
照覧
(
せうらん
)
遊
(
あそ
)
ばし、
041
厚
(
あつ
)
く
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
ふものならむ。
042
あゝ
有難
(
ありがた
)
や、
043
辱
(
かたじけ
)
なや』
044
と
落涙
(
らくるい
)
に
咽
(
むせ
)
び、
045
嬉
(
うれ
)
しさ
余
(
あま
)
つて、
046
其
(
その
)
場
(
ば
)
にハタと
打倒
(
うちたふ
)
れけり。
047
これを
聞
(
き
)
きたる
数多
(
あまた
)
の
取次
(
とりつぎ
)
、
048
信徒
(
しんと
)
等
(
ら
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
神徳
(
しんとく
)
を
讃美
(
さんび
)
し、
049
神恩
(
しんおん
)
を
感謝
(
かんしや
)
し、
050
欣喜
(
きんき
)
雀躍
(
じやくやく
)
の
余
(
あま
)
り、
051
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるも
知
(
し
)
らずに、
052
直会
(
なほらひ
)
の
宴
(
えん
)
に、
053
日三日
(
ひみつか
)
、
054
夜三夜
(
よるみよさ
)
を
費
(
つひ
)
やしけるが、
055
玉藻
(
たまも
)
の
聖地
(
せいち
)
開設
(
かいせつ
)
以来
(
いらい
)
の
大盛宴
(
だいせいえん
)
なりける。
056
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
日楯
(
ひたて
)
、
057
月鉾
(
つきほこ
)
二人
(
ふたり
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
に、
058
美
(
うる
)
はしき
館
(
やかた
)
を
作
(
つく
)
られ、
059
そこに
老
(
おい
)
の
身
(
み
)
を
養
(
やしな
)
ふこととなりぬ。
060
されど
真道彦
(
まみちひこ
)
は
年齢
(
ねんれい
)
に
似合
(
にあ
)
はず、
061
神徳
(
しんとく
)
、
062
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
に
充実
(
じゆうじつ
)
して
若々
(
わかわか
)
しく、
063
元気
(
げんき
)
も
亦
(
また
)
壮者
(
さうしや
)
を
凌
(
しの
)
ぐ
許
(
ばか
)
りなり。
064
玉藻
(
たまも
)
の
湖水
(
こすゐ
)
は
東西
(
とうざい
)
十五
(
じうご
)
里
(
り
)
、
065
南北
(
なんぽく
)
八
(
はち
)
里
(
り
)
、
066
山中
(
さんちう
)
にては
可
(
か
)
なり
大
(
だい
)
なる
湖水
(
こすゐ
)
なり。
067
玉藻山
(
たまもやま
)
の
霊地
(
れいち
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
其
(
その
)
中心
(
ちうしん
)
に
位
(
くらゐ
)
し、
068
東
(
ひがし
)
の
端
(
はし
)
に
天嶺
(
てんれい
)
といふ
小高
(
こだか
)
き
樹木
(
じゆもく
)
密生
(
みつせい
)
せる
景勝
(
けいしよう
)
の
山地
(
さんち
)
があつた。
069
そこに
日楯
(
ひたて
)
をして
守
(
まも
)
らしめ、
070
神殿
(
しんでん
)
を
新
(
あらた
)
に
造
(
つく
)
り、
071
政教
(
せいけう
)
一致
(
いつち
)
の
道
(
みち
)
を
布
(
し
)
かしめた。
072
さうしてユリコ
姫
(
ひめ
)
を
宮司
(
みやつかさ
)
とし、
073
聖地
(
せいち
)
の
東方
(
とうはう
)
を
固
(
かた
)
めしめ、
074
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
玉藻山
(
たまもやま
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
に
在
(
あ
)
つて、
075
老後
(
らうご
)
を
養
(
やしな
)
ひつつヤーチン
姫
(
ひめ
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
076
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
して
居
(
ゐ
)
た。
077
玉藻湖
(
たまもこ
)
の
西端
(
せいたん
)
には
泰嶺
(
たいれい
)
と
云
(
い
)
ふ
霊山
(
れいざん
)
があつた。
078
そこには
月鉾
(
つきほこ
)
を
配置
(
はいち
)
し、
079
マリヤス
姫
(
ひめ
)
を
神司
(
かむづかさ
)
として
奉仕
(
ほうし
)
せしめつつありき。
080
玉藻山
(
たまもやま
)
以東
(
いとう
)
を
日潭
(
につたん
)
の
聖地
(
せいち
)
と
称
(
しよう
)
し、
081
以西
(
いせい
)
を
月潭
(
げつたん
)
の
霊地
(
れいち
)
と
称
(
とな
)
へ、
082
オレオン
星
(
せい
)
の
如
(
ごと
)
く
三座
(
さんざ
)
相並
(
あひなら
)
びて、
083
三五教
(
あななひけう
)
の
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
し、
084
其
(
その
)
稜威
(
みいづ
)
は
台湾
(
たいわん
)
全島
(
ぜんたう
)
に
轟
(
とどろ
)
き
渡
(
わた
)
り、
085
新高山
(
にひたかやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
なる
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
にまで、
086
其
(
その
)
勢力
(
せいりよく
)
は
轟
(
とどろ
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
087
泰嶺
(
たいれい
)
の
鎮守
(
ちんじゆ
)
として
使
(
つか
)
へたる
月鉾
(
つきほこ
)
は
神
(
かみ
)
の
命
(
めい
)
により
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
け
居
(
ゐ
)
たり。
088
マリヤス
姫
(
ひめ
)
は
何時
(
いつ
)
とはなしに
月鉾
(
つきほこ
)
に
対
(
たい
)
し
恋慕
(
れんぼ
)
の
念
(
ねん
)
起
(
おこ
)
り、
089
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
もたまらず、
090
神業
(
しんげふ
)
を
閑却
(
かんきやく
)
して
昼夜
(
ちうや
)
の
区別
(
くべつ
)
なく、
091
月鉾
(
つきほこ
)
に
対
(
たい
)
し
心
(
こころ
)
を
奪
(
うば
)
はれ、
092
隙
(
すき
)
ある
毎
(
ごと
)
に
寄
(
よ
)
り
添
(
そ
)
ひて、
093
種々
(
いろいろ
)
と
思
(
おも
)
ひの
丈
(
たけ
)
を
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つるのであつた。
094
されど
月鉾
(
つきほこ
)
は
信心
(
しんじん
)
堅固
(
けんご
)
にして、
095
神
(
かみ
)
の
命
(
めい
)
をよく
守
(
まも
)
り、
096
且
(
か
)
つマリヤス
姫
(
ひめ
)
は
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
にましますカールス
王
(
わう
)
の
妹
(
いもうと
)
たる
尊
(
たふと
)
き
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
なる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
り
居
(
ゐ
)
たれば、
097
手厳
(
てきび
)
しく
戒
(
いまし
)
むる
事
(
こと
)
も
得
(
え
)
せず、
098
又
(
また
)
放逐
(
はうちく
)
する
事
(
こと
)
も
得
(
え
)
ずして、
099
心
(
こころ
)
の
限
(
かぎ
)
り
尊敬
(
そんけい
)
を
払
(
はら
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
100
マリヤス
姫
(
ひめ
)
の
恋路
(
こひぢ
)
は
益々
(
ますます
)
猛烈
(
まうれつ
)
となり、
101
遂
(
つひ
)
には
取次
(
とりつぎ
)
信徒
(
しんと
)
等
(
ら
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
102
月鉾
(
つきほこ
)
とマリヤス
姫
(
ひめ
)
の
間
(
あひだ
)
に
温
(
あたた
)
かき
関係
(
くわんけい
)
の
結
(
むす
)
ばれある
事
(
こと
)
を
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じいたりけり。
103
月鉾
(
つきほこ
)
は
神命
(
しんめい
)
と
姫
(
ひめ
)
との
板挟
(
いたばさ
)
みとなつて、
104
日夜
(
にちや
)
苦慮
(
くりよ
)
しつつ
其
(
その
)
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
り
居
(
ゐ
)
たり。
105
又
(
また
)
日楯
(
ひたて
)
はユリコ
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
となり
睦
(
むつ
)
まじく
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
し
居
(
ゐ
)
たり。
106
老
(
おい
)
たりとは
云
(
い
)
へ、
107
未
(
いま
)
だ
元気
(
げんき
)
旺盛
(
わうせい
)
なる
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
妻
(
つま
)
に
先立
(
さきだ
)
たれ、
108
独身
(
どくしん
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて、
109
余生
(
よせい
)
を
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
に
送
(
おく
)
り
居
(
ゐ
)
たるが
危
(
あやふ
)
き
生命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
はれたる
真道彦
(
まみちひこ
)
に
対
(
たい
)
して、
110
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
は
何時
(
いつ
)
とはなしに
恋
(
こひ
)
に
落
(
お
)
ち、
111
昼夜
(
ちうや
)
煩悶
(
はんもん
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
112
面
(
おも
)
やつれ、
113
身体
(
しんたい
)
骨立
(
こつりつ
)
し、
114
遂
(
つひ
)
には
重
(
おも
)
き
病
(
やまひ
)
の
床
(
とこ
)
に
就
(
つ
)
きける。
115
侍女
(
じぢよ
)
のユリコ
姫
(
ひめ
)
は
天嶺
(
てんれい
)
の
聖地
(
せいち
)
にあつて、
116
日楯
(
ひたて
)
の
妻
(
つま
)
となり、
117
早
(
はや
)
くも
妊娠
(
にんしん
)
の
身
(
み
)
となり
居
(
ゐ
)
たり。
118
それ
故
(
ゆゑ
)
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
の
重病
(
ぢうびやう
)
を
看護
(
かんご
)
することさへ
出来
(
でき
)
ざりき。
119
キールスタンは
昼夜
(
ちうや
)
の
別
(
べつ
)
なく、
120
忠実
(
ちうじつ
)
に
姫
(
ひめ
)
の
看護
(
かんご
)
に
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
し
居
(
ゐ
)
たれ
共
(
ども
)
、
121
姫
(
ひめ
)
の
病
(
やまひ
)
は
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
重
(
おも
)
る
計
(
ばか
)
りなりける。
122
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
姫
(
ひめ
)
の
大病
(
たいびやう
)
を
救
(
すく
)
はむと、
123
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
な
神前
(
しんぜん
)
に
祈願
(
きぐわん
)
をこらしつつありしか
共
(
ども
)
、
124
少
(
すこ
)
しも
其
(
その
)
効験
(
かうけん
)
現
(
あら
)
はれず、
125
尊
(
たふと
)
きエーリスの
姫君
(
ひめきみ
)
、
126
如何
(
いか
)
にもして、
127
元
(
もと
)
の
身体
(
からだ
)
に
回復
(
くわいふく
)
せしめむと
心胆
(
しんたん
)
を
砕
(
くだ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
128
病床
(
びやうしやう
)
を
見舞
(
みま
)
つた。
129
キールスタンは
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
来
(
きた
)
れるに
打喜
(
うちよろこ
)
び、
130
挨拶
(
あいさつ
)
も
碌々
(
ろくろく
)
になさず、
131
あはてふためきて、
132
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
の
枕許
(
まくらもと
)
に
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
り、
133
耳
(
みみ
)
に
口
(
くち
)
を
寄
(
よ
)
せ、
134
キールスタン『あなたの
日頃
(
ひごろ
)
恋
(
こ
)
はせ
玉
(
たま
)
ふ
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
が、
135
今
(
いま
)
茲
(
ここ
)
におみえになりました』
136
と
囁
(
ささや
)
きし
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に、
137
姫
(
ひめ
)
はムツクと
起上
(
おきあが
)
り、
138
さも
嬉
(
うれ
)
しげに、
139
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
に
向
(
むか
)
ひ、
140
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
『
真道彦
(
まみちひこ
)
様
(
さま
)
、
141
ようこそ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
御
(
お
)
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいました。
142
モウ
妾
(
わたし
)
、
143
これぎり
国替
(
くにがへ
)
致
(
いた
)
しても、
144
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
る
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
145
どうぞ
妾
(
わたし
)
の
死後
(
しご
)
に
於
(
おい
)
て、
146
夢
(
ゆめ
)
になりとも
妾
(
わたし
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
し
玉
(
たま
)
ふ
事
(
こと
)
あらば、
147
只
(
ただ
)
一言
(
ひとこと
)
なりと
吾
(
わが
)
名
(
な
)
をお
呼
(
よ
)
び
下
(
くだ
)
さいませ。
148
これが
妾
(
わたし
)
の
一生
(
いつしやう
)
の
願
(
ねが
)
ひで
御座
(
ござ
)
います』
149
と
恥
(
はづ
)
かしげに
言
(
い
)
ひ
終
(
をは
)
つて、
150
枕
(
まくら
)
に
顔
(
かほ
)
を
伏
(
ふ
)
せた。
151
真道彦
(
まみちひこ
)
は
稍
(
やや
)
当惑
(
たうわく
)
の
体
(
てい
)
にて、
152
少時
(
しばし
)
ためらひ
居
(
ゐ
)
たりしが、
153
斯
(
か
)
く
迄
(
まで
)
吾
(
われ
)
を
慕
(
した
)
へる
此
(
この
)
婦人
(
ふじん
)
に
対
(
たい
)
し、
154
今
(
いま
)
はの
際
(
きは
)
に、
155
余
(
あま
)
り
没義道
(
もぎだう
)
にあしらふべきに
非
(
あら
)
ず、
156
何
(
いづ
)
れ
死
(
し
)
に
行
(
ゆ
)
く
運命
(
うんめい
)
の
人
(
ひと
)
ならば、
157
優
(
やさ
)
しき
言葉
(
ことば
)
をかけて、
158
潔
(
いさぎよ
)
く
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
らしむるに
若
(
し
)
かじ……と
決心
(
けつしん
)
し、
159
厳然
(
げんぜん
)
として
身
(
み
)
を
構
(
かま
)
へ、
160
真道彦
(
まみちひこ
)
『ヤーチン
姫殿
(
ひめどの
)
、
161
あなたの
尊
(
たふと
)
き
御
(
お
)
心
(
こころ
)
、
162
木石
(
ぼくせき
)
ならぬ
真道彦
(
まみちひこ
)
も
満足
(
まんぞく
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
163
今迄
(
いままで
)
の
貴女
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
する
無情
(
むじやう
)
の
罪
(
つみ
)
、
164
御
(
お
)
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
165
とキツパリ
言
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
つた。
166
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
は
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に
何
(
なん
)
となく
元気
(
げんき
)
づき、
167
病
(
やまひ
)
の
身
(
み
)
を
忘
(
わす
)
れて
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
し、
168
膝
(
ひざ
)
を
摺
(
す
)
り
寄
(
よ
)
せ、
169
命
(
みこと
)
の
顔
(
かほ
)
を
打
(
うち
)
みまもり、
170
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
171
ヤーチン『
日頃
(
ひごろ
)
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
ふ
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
172
それならあなたは
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より、
173
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
の
夫
(
をつと
)
、
174
よもや
御
(
ご
)
冗談
(
じようだん
)
では
御座
(
ござ
)
いますまいなア』
175
と
念
(
ねん
)
を
押
(
お
)
したりしに、
176
真道
(
まみち
)
『エー
勿体
(
もつたい
)
ない、
177
私
(
わたし
)
も
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
ふる
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
178
決
(
けつ
)
して
嘘
(
うそ
)
は
申
(
まを
)
しませぬ』
179
ヤーチン『そんなら……あなたは
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
、
180
モウ
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は、
181
病
(
やまひ
)
位
(
くらゐ
)
は
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ』
182
と
痩
(
やせ
)
こけたる
体
(
からだ
)
も
俄
(
にはか
)
に
元気
(
げんき
)
づき、
183
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
さへ
仄紅
(
ほのあか
)
く、
184
直
(
ただち
)
に
井戸端
(
ゐどばた
)
に
歩
(
あゆ
)
み
寄
(
よ
)
り、
185
身
(
み
)
を
浄
(
きよ
)
め、
186
自
(
みづか
)
ら
衣服
(
いふく
)
を
着替
(
きか
)
へ、
187
身繕
(
みつくろ
)
ひを
終
(
をは
)
つて、
188
再
(
ふたた
)
び
真道彦
(
まみちひこ
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
189
ヤーチン『あゝ
吾
(
わが
)
夫様
(
つまさま
)
、
190
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
へ
御
(
お
)
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
191
いろいろと
申上
(
まをしあ
)
げたき
仔細
(
しさい
)
が
御座
(
ござ
)
います』
192
と
無理
(
むり
)
に
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
き、
193
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
姿
(
すがた
)
を
没
(
ぼつ
)
したり。
194
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
は
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
195
あたりを
密閉
(
みつぺい
)
して
両人
(
りやうにん
)
端坐
(
たんざ
)
し
声
(
こゑ
)
を
私
(
ひそ
)
めて、
196
ヤーチン『カールス
様
(
さま
)
、
197
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
の
様子
(
やうす
)
は
如何
(
いかが
)
なりましたか。
198
セールス
姫
(
ひめ
)
は
如何
(
どう
)
遊
(
あそ
)
ばされました。
199
どうぞ
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず、
200
御
(
お
)
漏
(
も
)
らし
下
(
くだ
)
さいませ』
201
真道
(
まみち
)
『これは
又
(
また
)
異
(
い
)
なることを
承
(
うけたま
)
はるものかな。
202
私
(
わたし
)
は
祖先
(
そせん
)
代々
(
だいだい
)
此
(
この
)
玉藻
(
たまも
)
の
聖地
(
せいち
)
に
住居
(
ぢうきよ
)
して、
203
三五教
(
あななひけう
)
を
開
(
ひら
)
く
者
(
もの
)
、
204
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
のカールス
王
(
わう
)
などとは
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
205
永
(
なが
)
の
御
(
ご
)
病気
(
びやうき
)
の
為
(
ため
)
に、
206
精神
(
せいしん
)
に
御
(
ご
)
異状
(
いじやう
)
を
御
(
お
)
来
(
きた
)
し
遊
(
あそ
)
ばされ、
207
カールス
王
(
わう
)
に、
208
私
(
わたし
)
が
見
(
み
)
えたのでせう。
209
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
は
左様
(
さやう
)
な
尊
(
たふと
)
き
身分
(
みぶん
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
210
どうぞトツクリと
御
(
お
)
検
(
あらた
)
め
下
(
くだ
)
され』
211
とヤーチン
姫
(
ひめ
)
の
面前
(
めんぜん
)
にワザとに
顔
(
かほ
)
をつき
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
せた。
212
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
は、
213
兎見
(
とみ
)
斯
(
こ
)
う
見
(
み
)
し
乍
(
なが
)
ら
[
※
「と見こう見」は「あちらを見たり、こちらを見たり」の意〔広辞苑〕
]
ニヤリと
笑
(
わら
)
ひ、
214
ヤーチン姫
『
如何
(
いか
)
に
御
(
お
)
忍
(
しの
)
びの
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
なればとて、
215
さう
御
(
お
)
隠
(
かく
)
しなさるには
及
(
およ
)
びますまい。
216
妾
(
わたし
)
が
淡渓
(
たんけい
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれ、
217
生命
(
いのち
)
危
(
あやふ
)
き
所
(
ところ
)
へ
貴方
(
あなた
)
は
妾
(
わたし
)
を
助
(
たす
)
けむと、
218
先
(
さき
)
に
廻
(
まは
)
つて
御
(
お
)
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
さつた
生命
(
いのち
)
の
恩人
(
おんじん
)
カールス
様
(
さま
)
に
間違
(
まちが
)
ひは
御座
(
ござ
)
いますまい。
219
最早
(
もはや
)
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は、
220
御
(
お
)
隠
(
かく
)
しなさるには
及
(
およ
)
びませぬ。
221
どうぞ
打解
(
うちと
)
けて
誠
(
まこと
)
の
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
222
何程
(
なにほど
)
御
(
お
)
隠
(
かく
)
し
遊
(
あそ
)
ばしても、
223
どこから
何処
(
どこ
)
まで、
224
毛筋
(
けすぢ
)
の
横巾
(
よこはば
)
も
違
(
ちが
)
はぬあなたの
御
(
お
)
姿
(
すがた
)
、
225
これが
如何
(
どう
)
して
別人
(
べつじん
)
と
思
(
おも
)
へませうか』
226
真道
(
まみち
)
『これは
聊
(
いささ
)
か
迷惑
(
めいわく
)
千万
(
せんばん
)
、
227
能
(
よ
)
く
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へ
遊
(
あそ
)
ばしませ。
228
カールス
様
(
さま
)
は
未
(
ま
)
だ
御
(
おん
)
年
(
とし
)
三十
(
さんじふ
)
に
成
(
な
)
らせ
玉
(
たま
)
はず、
229
吾
(
われ
)
は
最早
(
もはや
)
五十路
(
いそぢ
)
の
坂
(
さか
)
にかかつて
居
(
ゐ
)
る
老
(
おい
)
ぼれ
者
(
もの
)
、
230
何程
(
なにほど
)
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
たりとは
言
(
い
)
へ、
231
老者
(
らうしや
)
と
壮者
(
さうしや
)
、
232
皮膚
(
ひふ
)
の
色
(
いろ
)
、
233
声
(
こゑ
)
の
色
(
いろ
)
、
234
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
同
(
おな
)
じ
筈
(
はず
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
235
仮令
(
たとへ
)
姿
(
すがた
)
は
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
たりと
雖
(
いへど
)
も、
236
月
(
つき
)
に
鼈
(
すつぽん
)
、
237
尊卑
(
そんぴ
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
て
雲泥
(
うんでい
)
の
相違
(
さうゐ
)
ある
私
(
わたし
)
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
お
)
心
(
こころ
)
を
鎮
(
しづ
)
められ、
238
真偽
(
しんぎ
)
の
御
(
ご
)
判断
(
はんだん
)
を
下
(
くだ
)
し
遊
(
あそ
)
ばす
様
(
やう
)
、
239
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
240
ヤーチン『どこまでも
用心
(
ようじん
)
深
(
ぶか
)
いあなたの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
241
女
(
をんな
)
は
嫉妬
(
しつと
)
に
大事
(
だいじ
)
を
漏
(
もら
)
すとの
諺
(
ことわざ
)
を
信
(
しん
)
じ、
242
分
(
わか
)
り
切
(
き
)
つたる
秘密
(
ひみつ
)
を、
243
どこまでも
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
さむと
遊
(
あそ
)
ばすあなた
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
心根
(
こころね
)
が
恨
(
うら
)
めしう
御座
(
ござ
)
います。
244
どこまでも
御
(
お
)
隠
(
かく
)
し
遊
(
あそ
)
ばすならば、
245
最早
(
もはや
)
是非
(
ぜひ
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
246
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
ならば
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
で
宜
(
よろ
)
しう
御座
(
ござ
)
います。
247
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
間違
(
まちがひ
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
248
どうぞ
此処
(
ここ
)
に
改
(
あらた
)
めて
結婚
(
けつこん
)
の
式
(
しき
)
を
御
(
お
)
挙
(
あ
)
げ
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
に
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
249
真道
(
まみち
)
『アヽ
困
(
こま
)
つたなア。
250
どうしたら
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
疑
(
うたがひ
)
が
晴
(
は
)
れるであらうか。
251
他人
(
たにん
)
の
空似
(
そらに
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
勿体
(
もつたい
)
ない、
252
カールス
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
るとは………
真道彦
(
まみちひこ
)
の
何
(
なん
)
たる
光栄
(
くわうえい
)
であらう。
253
否
(
いや
)
迷惑
(
めいわく
)
であらう。
254
アヽどうしたら
此
(
この
)
難関
(
なんくわん
)
が
切
(
き
)
り
抜
(
ぬ
)
けられようかなア』
255
とさし
俯
(
うつむ
)
いて
溜息
(
ためいき
)
をつき
居
(
ゐ
)
る。
256
ヤーチン『
何程
(
なにほど
)
御
(
お
)
隠
(
かく
)
し
遊
(
あそ
)
ばしても、
257
カールス
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
間違
(
まちがひ
)
はありませぬ。
258
あなたはサアルボースやホーロケース
両人
(
りやうにん
)
の
悪者
(
わるもの
)
に
恐
(
おそ
)
れて、
259
淡渓
(
たんけい
)
の
畔
(
ほとり
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し、
260
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
と
名
(
な
)
を
変
(
か
)
へて、
261
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
偽
(
いつは
)
る
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
の
御
(
お
)
振舞
(
ふるまひ
)
、
262
御
(
おん
)
父上
(
ちちうへ
)
の
許
(
ゆる
)
し
玉
(
たま
)
ひし
夫婦
(
ふうふ
)
の
仲
(
なか
)
、
263
未
(
いま
)
だ
一夜
(
いちや
)
も
枕
(
まくら
)
を
交
(
かは
)
さね
共
(
ども
)
、
264
親
(
おや
)
と
親
(
おや
)
との
許
(
ゆる
)
し
玉
(
たま
)
ひし
夫婦
(
ふうふ
)
の
間柄
(
あひだがら
)
、
265
誰
(
たれ
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
が
御座
(
ござ
)
いませう。
266
あなたは
昔
(
むかし
)
はエルサレムに
仕
(
つか
)
へ
玉
(
たま
)
ひし、
267
天使
(
てんし
)
花森彦
(
はなもりひこの
)
命
(
みこと
)
の
御
(
ご
)
末孫
(
ばつそん
)
、
268
高国別
(
たかくにわけ
)
や
玉手姫
(
たまてひめ
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
腹
(
はら
)
より
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる、
269
サアルボースや、
270
ホーロケースを
父
(
ちち
)
や
叔父
(
をぢ
)
に
持
(
も
)
つ、
271
セールス
姫
(
ひめ
)
が
御
(
お
)
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬのは
御尤
(
ごもつと
)
もで
御座
(
ござ
)
います。
272
さり
乍
(
なが
)
ら
何
(
なに
)
を
苦
(
くるし
)
んで、
273
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
を
脱
(
ぬ
)
け
出
(
い
)
で、
274
あの
様
(
やう
)
な
処
(
ところ
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
遊
(
あそ
)
ばしたので
御座
(
ござ
)
いますか……それはさうと、
275
妾
(
わたし
)
の
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さつたのもヤツパリあなた
様
(
さま
)
、
276
都
(
みやこ
)
を
出
(
い
)
でさせ
玉
(
たま
)
ひし
其
(
その
)
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
、
277
尽
(
つ
)
きぬ
縁
(
えにし
)
の
証
(
しるし
)
にて、
278
恋
(
こひ
)
しきあなたに
助
(
たす
)
けられ、
279
此
(
この
)
里
(
さと
)
に
参
(
まゐ
)
りましたのも、
280
結
(
むす
)
ぶの
神
(
かみ
)
の
引合
(
ひきあは
)
せ、
281
これより
夫婦
(
ふうふ
)
心
(
こころ
)
を
合
(
あは
)
せ、
282
三五教
(
あななひけう
)
の
信徒
(
しんと
)
を
引
(
ひき
)
つれ、
283
時
(
とき
)
を
見
(
み
)
て
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ、
284
父
(
ちち
)
の
業
(
げふ
)
を
御
(
お
)
継
(
つ
)
ぎ
遊
(
あそ
)
ばす
御
(
ご
)
所存
(
しよぞん
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬか。
285
それさへ
承
(
うけたま
)
はらば、
286
妾
(
わたし
)
は
此
(
この
)
儘
(
まま
)
帰幽
(
きいう
)
致
(
いた
)
す
共
(
とも
)
、
287
あなたの
雄々
(
をを
)
しき
心
(
こころ
)
を
力
(
ちから
)
として、
288
幽界
(
いうかい
)
より
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
を
御
(
お
)
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
す
覚悟
(
かくご
)
で
御座
(
ござ
)
います。
289
生
(
いき
)
ても
死
(
し
)
しても、
290
決
(
けつ
)
してあなたの
御
(
お
)
側
(
そば
)
を
離
(
はな
)
れぬヤーチン
姫
(
ひめ
)
の
真心
(
まごころ
)
、
291
どうぞ
仇
(
あだ
)
に
思召
(
おぼしめ
)
し
下
(
くだ
)
さいますな』
292
真道
(
まみち
)
『
私
(
わたし
)
には
日楯
(
ひたて
)
、
293
月鉾
(
つきほこ
)
と
云
(
い
)
ふ
二人
(
ふたり
)
の
息子
(
むすこ
)
が
御座
(
ござ
)
います。
294
私
(
わたし
)
の
妻
(
つま
)
は
既
(
すで
)
に
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
り、
295
今
(
いま
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
位牌
(
ゐはい
)
となつて、
296
此
(
この
)
神殿
(
しんでん
)
に
御
(
お
)
祭
(
まつ
)
りして
御座
(
ござ
)
いますれば、
297
どうしても
妻
(
つま
)
を
持
(
も
)
つことは、
298
私
(
わたし
)
として
出来
(
でき
)
ませぬ。
299
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らあなたの
御
(
おん
)
志
(
こころざし
)
を
無
(
む
)
にするも
情
(
つれ
)
なく
存
(
ぞん
)
じますれば、
300
夫婦
(
ふうふ
)
の
交
(
まじ
)
はりのみは
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
しを
頂
(
いただ
)
きまして、
301
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きどり
)
で
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
させて
下
(
くだ
)
さいませ。
302
カールス
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
就
(
つい
)
て、
303
変事
(
へんじ
)
あらば
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず、
304
吾々
(
われわれ
)
は
数多
(
あまた
)
の
強者
(
つはもの
)
を
引具
(
ひきぐ
)
し、
305
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
に
乗込
(
のりこ
)
んで
御
(
お
)
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
し、
306
貴女
(
あなた
)
の
望
(
のぞ
)
みを
達
(
たつ
)
し
参
(
まゐ
)
らす
覚悟
(
かくご
)
で
御座
(
ござ
)
います。
307
此
(
この
)
事
(
こと
)
計
(
ばか
)
りは
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
遊
(
あそ
)
ばしませ。
308
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
はカールス
王
(
わう
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
309
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
真道彦
(
まみちひこ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
310
ヤーチン『エーもどかしや』
311
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
312
矢庭
(
やには
)
に
真道彦
(
まみちひこ
)
の
利腕
(
ききうで
)
にしがみつき、
313
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
泣
(
な
)
き
口説
(
くど
)
き、
314
身
(
み
)
をもだえ
居
(
ゐ
)
る。
315
此
(
この
)
時
(
とき
)
何気
(
なにげ
)
なく、
316
隔
(
へだて
)
の
襖
(
ふすま
)
をおし
開
(
ひら
)
き、
317
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
るキールスタンは
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
驚
(
おどろ
)
き、
318
物
(
もの
)
をも
言
(
い
)
はず
一目散
(
いちもくさん
)
に
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
駆出
(
かけだ
)
したり。
319
これより
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
とヤーチン
姫
(
ひめ
)
の
間
(
あひだ
)
には、
320
情意
(
じやうい
)
投合
(
とうがふ
)
の
契約
(
けいやく
)
が
結
(
むす
)
ばれたるものとして、
321
窃
(
ひそか
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
一般
(
いつぱん
)
に
伝
(
つた
)
へらるる
事
(
こと
)
となりぬ。
322
されど
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
将来
(
しやうらい
)
を
慮
(
おもんばか
)
り、
323
姫
(
ひめ
)
に
対
(
たい
)
して
一指
(
いつし
)
だにも
支
(
さ
)
へざりける。
324
姫
(
ひめ
)
は
其
(
その
)
後
(
ご
)
病気
(
びやうき
)
追々
(
おひおひ
)
快復
(
くわいふく
)
して
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
く
容色
(
ようしよく
)
端麗
(
たんれい
)
なる
美人
(
びじん
)
となり、
325
聖地
(
せいち
)
の
大神殿
(
だいしんでん
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
奉仕
(
ほうし
)
して、
326
神
(
かみ
)
の
威徳
(
ゐとく
)
は
益々
(
ますます
)
四方
(
よも
)
に
輝
(
かがや
)
き
亘
(
わた
)
りぬ。
327
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
飽
(
あ
)
く
迄
(
まで
)
もヤーチン
姫
(
ひめ
)
を
尊敬
(
そんけい
)
し、
328
主人
(
しゆじん
)
の
如
(
ごと
)
く
待遇
(
たいぐう
)
して、
329
至誠
(
しせい
)
を
尽
(
つく
)
したるに、
330
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
も
漸
(
やうや
)
くにして、
331
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
のカールス
王
(
わう
)
に
非
(
あら
)
ざりしことを
悟
(
さと
)
り、
332
且
(
か
)
つ
命
(
みこと
)
の
信仰
(
しんかう
)
の
堅実
(
けんじつ
)
なるに
感歎
(
かんたん
)
し、
333
互
(
たがひ
)
に
胸襟
(
きやうきん
)
を
開
(
ひら
)
きて
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
し、
334
時
(
とき
)
の
到
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
ちつつありける。
335
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
336
(
大正一一・八・六
旧六・一四
松村真澄
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