霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)〔八一五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻 篇:第3篇 光明の魁 よみ(新仮名遣い):こうみょうのさきがけ
章:第15章 願望成就 よみ(新仮名遣い):がんもうじょうじゅ 通し章番号:815
口述日:1922(大正11)年08月09日(旧06月17日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年8月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
日楯と月鉾は、マリヤス姫にならって、これまでの艱難辛苦から、今の神宝を授けられて戻ってきた喜びと、これからの戦いに臨む意気込みを歌った。
月鉾はテーリン姫に向かって、泰安城の戦に出て見事凱旋してから夫婦の契りを結ぼうと歌いかけた。
それに対してテーリン姫は、本当に自分を想う気持ちがあるのであれば、出陣前に今ここで、夫婦の誓いをして自分も戦に連れて行ってくれと歌って月鉾に迫った。
マリヤス姫も月鉾を促した。そして、ここに月鉾とテーリン姫の結婚式が行われた。これより、マリヤス姫を主将とし、日楯・月鉾夫婦と八千代姫、照代姫らは準備を整えて出陣することとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-01 18:11:35 文字数:4107 OBC :rm2815
愛善世界社版:179頁 八幡書店版:第5輯 418頁 修補版: 校定版:184頁 普及版:84頁 初版: ページ備考:
001 日楯(ひたて)は祝意(しゆくい)を表(へう)する為(ため)、002マリヤス姫(ひめ)に傚(なら)つて自(みづか)ら歌(うた)ひ且(か)つ自(みづか)ら舞(ま)ひ始(はじ)めた。
003日楯『遠(とほ)き神代(かみよ)の昔(むかし)より
004尊(たふと)き神(かみ)の選(えら)みてし
005高砂島(たかさごじま)の中心地(ちうしんち)
006雲(くも)に聳(そび)えた新高(にひたか)の
007山(やま)の巽(たつみ)の神聖地(しんせいち)
008日月潭(じつげつたん)の湖(みづうみ)を
009控(ひか)へて清(きよ)き玉藻山(たまもやま)
010遠津(とほつ)御祖(みおや)の真道彦(まみちひこの)命(みこと)は
011代毎(よごと)々々(よごと)に神定(しんてい)の
012此処(ここ)に鎮(しづ)まりましまして
013尊(たふと)き神(かみ)の御教(みをしへ)を
014四方(よも)の民草(たみぐさ)残(のこ)りなく
015教(をし)へ導(みちび)き玉(たま)ひつつ
016父(ちち)の命(みこと)の御代(みよ)になり
017醜(しこ)の教(をしへ)のバラモン教(けう)
018此(この)神島(かみしま)に渡(わた)り来(き)て
019体主(たいしゆ)霊従(れいじう)の振舞(ふるまひ)を
020世人(よびと)の頭(あたま)に浸(し)み込(こ)ませ
021日(ひ)に夜(よ)に曇(くも)る人心(ひとごころ)
022山河(やまかは)どよみ草木(くさき)枯(か)れ
023四方(よも)の人々(ひとびと)泣(な)き叫(さけ)び
024争(あらそ)ひ絶(た)ゆる隙(ひま)もなく
025修羅(しゆら)の巷(ちまた)となり果(は)てぬ
026父(ちち)の命(みこと)は今(いま)の世(よ)の
027有様(ありさま)見(み)るに忍(しの)びかね
028心(こころ)を尽(つく)し身(み)を尽(つく)し
029誠(まこと)の道(みち)を世(よ)の人(ひと)に
030朝(あさ)な夕(ゆふ)なにこまごまと
031諭(さと)し玉(たま)へど如何(いか)にせむ
032時(とき)の力(ちから)は容赦(ようしや)なく
033悪人(あくにん)栄(さか)え蔓(はびこ)りて
034善(ぜん)はますます凋落(てうらく)し
035神(かみ)の威徳(ゐとく)も完全(くわんぜん)に
036現(あら)はれ玉(たま)はず今(いま)は早(はや)
037御国(みくに)の為(ため)に尽(つく)したる
038其(その)真心(まごころ)が仇(あだ)となり
039カールス王(わう)に疑(うたが)はれ
040往来(ゆきき)絶(た)えたる岩窟(がんくつ)上(じやう)の
041暗(くら)き牢獄(ひとや)に呻吟(しんぎん)し
042果敢(はか)なき浮世(うきよ)を歎(かこ)ちつつ
043暮(くら)し玉(たま)へる悲(かな)しさに
044吾(われ)等(ら)兄弟(きやうだい)両人(りやうにん)は
045烏羽玉(うばたま)の世(よ)を
046旭(あさひ)の豊栄(とよさか)昇(のぼ)るごと
047照(てら)し清(きよ)めて国民(くにたみ)を
048塗炭(とたん)の苦(く)より救(すく)ひ出(だ)し
049父(ちち)の命(みこと)の寃罪(ゑんざい)を
050すすぎまつりて孝養(かうやう)を
051尽(つく)さむものと国魂神(くにたまがみ)
052竜世(たつよ)の姫(ひめ)の神勅(しんちよく)を
053いと厳(おごそ)かに被(かかぶ)りて
054アーリス山(ざん)を打渡(うちわた)り
055須安(シユアン)の山(やま)の峰伝(みねづた)ひ
056ふみも慣(なら)らはぬ長(なが)の旅(たび)
057千(せん)里(り)の波(なみ)を乗切(のりき)りて
058弟(おとうと)月鉾(つきほこ)、ユリコ姫(ひめ)
059茲(ここ)に三人(みたり)は琉球(りうきう)の
060南(みなみ)の島(しま)に安着(あんちやく)し
061サワラの都(みやこ)に進(すす)み入(い)り
062三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)
063国王(こきし)を兼(か)ねたる照彦王(てるひこわう)や
064照子(てるこ)の姫(ひめ)に面会(めんくわい)し
065神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の神策(しんさく)を
066いと細(こま)やかに教(をし)へられ
067大谷川(おほたにがは)を打渡(うちわた)り
068向陽山(こうやうざん)の岩窟(がんくつ)に
069進(すす)み進(すす)みて常楠(つねくす)の
070神(かみ)の司(つかさ)の仙人(せんにん)に
071玉(たま)や鏡(かがみ)を授(さづ)けられ
072二男(になん)三女(さんによ)の五(い)つ身魂(みたま)
073心(こころ)も勇(いさ)み身(み)も軽(かる)く
074再(ふたた)び船(ふね)を操(あやつ)りて
075此(この)神島(かみしま)に到着(たうちやく)し
076やうやう此処(ここ)に帰(かへ)りけり
077あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
078御霊(みたま)の幸(さち)を蒙(かうむ)りて
079吾(われ)等(ら)兄弟(きやうだい)始(はじ)めとし
080ユリコの姫(ひめ)や八千代(やちよ)姫(ひめ)
081曇(くも)る此(この)世(よ)も照代姫(てるよひめ)
082奇(くし)き功績(いさを)を現(あら)はして
083父(ちち)の命(みこと)の永久(とことは)に
084鎮(しづ)まりゐませし霊場(れいぢやう)に
085帰(かへ)り来(きた)れる嬉(うれ)しさは
086何(なん)に譬(たと)へむ物(もの)もなし
087あゝ尊(たふと)しや神(かみ)の恩(おん)
088仰(あふ)ぐも畏(かしこ)き神(かみ)の徳(とく)
089いよいよ吾(われ)等(ら)は大神(おほかみ)の
090大御守(おほみまも)りを力(ちから)とし
091泰安城(たいあんじやう)に立向(たちむか)ひ
092玉(たま)と鏡(かがみ)を手(て)に持(も)ちて
093言霊戦(ことたません)を押開(おしひら)き
094魔神(まがみ)を残(のこ)らず言向(ことむ)けて
095カールス王(わう)やヤーチン姫(ひめ)の
096珍(うづ)の命(みこと)を始(はじ)めとし
097恋(こひ)しき父(ちち)の生命(いのち)をば
098救(すく)ひ奉(まつ)らむ時(とき)は来(き)ぬ
099思(おも)へば嬉(うれ)し神(かみ)の恩(おん)
100仰(あふ)げば高(たか)し神(かみ)の徳(とく)
101あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
102御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
103と歌(うた)ひ終(をは)つて座(ざ)に着(つ)いた。104月鉾(つきほこ)は又(また)もや立上(たちあが)り自(みづか)ら歌(うた)ひ自(みづか)ら舞(ま)ひ始(はじ)めた。
105月鉾『時世(ときよ)時節(じせつ)といひ乍(なが)ら
106父(ちち)は牢獄(ひとや)に捕(とら)へられ
107三五教(あななひけう)の聖地(せいち)なる
108玉藻(たまも)の山(やま)に立向(たちむか)ひ
109千代(ちよ)の住家(すみか)と定(さだ)めたる
110数多(あまた)の神(かみ)の取次(とりつぎ)も
111父(ちち)の命(みこと)の遭難(さうなん)に
112心(こころ)の生地(きぢ)を露(あら)はして
113神(かみ)に反(そむ)いて逃(に)げ帰(かへ)り
114阿諛(あゆ)諂佞(てんねい)の限(かぎ)りを尽(つく)し
115カールス王(わう)に取入(とりい)りて
116自己(じこ)の利益(りえき)や栄達(えいたつ)を
117謀(はか)る魔神(まがみ)と還(かへ)りけり
118月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
119仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
120二(ふた)つなき身(み)の生命(いのち)をば
121神(かみ)の為(ため)には捧(ささ)げむと
122口先(くちさき)計(ばか)り華(はな)やかに
123囀(さへづ)りゐたる百鳥(ももどり)の
124尻(しり)より糞(ふん)を引(ひ)つかけて
125素知(そし)らぬ顔(かほ)の曲業(まがわざ)に
126無念(むねん)の涙(なみだ)やるせなく
127朝(あさ)な夕(ゆふ)なに国魂神(くにたまがみ)の
128珍(うづ)の御前(みまへ)にひれ伏(ふ)して
129祈(いの)る折(を)りしも竜世姫(たつよひめ)
130いと厳(おごそ)かに現(あら)はれて
131吾(われ)等(ら)二人(ふたり)に打向(うちむか)ひ
132汝(なんぢ)はこれより琉球(りうきう)の
133南(みなみ)の島(しま)に打渡(うちわた)り
134サワラの都(みやこ)の照彦王(てるひこわう)に
135一日(ひとひ)も早(はや)く面会(めんくわい)し
136至治(しち)太平(たいへい)の神策(しんさく)を
137授(さづ)かり帰(かへ)れと詳細(こまごま)と
138宣(の)らせ玉(たま)ひし嬉(うれ)しさに
139兄(あに)の日楯(ひたて)やユリコ姫(ひめ)
140暗(やみ)に紛(まぎ)れて聖地(せいち)をば
141密(ひそか)に立出(たちい)で蓑笠(みのかさ)の
142軽(かる)き扮装(いでたち)トボトボと
143山路(やまぢ)を伝(つた)ひてアーリスの
144峠(たうげ)にかかり路端(みちばた)の
145巌(いはほ)に腰(こし)を打掛(うちか)けて
146息(いき)を休(やす)むる折柄(をりから)に
147思掛(おもひが)けなきテーリン姫(ひめ)が
148蛇(へび)が蛙(かはず)を狙(ねら)ひし如(ごと)く
149執念深(しふねんぶか)くも後(あと)追(お)ひて
150大胆(だいたん)至極(しごく)の一人旅(ひとりたび)
151ヤツサモツサと恨(うら)み言(ごと)
152百万(ひやくまん)ダラリと並(なら)べられ
153困(こま)り切(き)つたる最中(さいちう)に
154現(あら)はれ出(い)でしマリヤス姫(ひめ)の
155珍(うづ)の命(みこと)の御計(みはか)らひ
156金剛杖(こんがうづゑ)を打(うち)ふりて
157吾(わが)身体(しんたい)を滅多打(めつたうち)
158木石(ぼくせき)ならぬ月鉾(つきほこ)も
159腹(はら)は切(しき)りに立騒(たちさわ)ぎ
160悔(くや)し涙(なみだ)は雨(あめ)の如(ごと)
161降(ふ)り来(きた)れ共(ども)如何(いか)にせむ
162大事(だいじ)を抱(かか)へし今(いま)の身(み)は
163堪忍(かんにん)するより道(みち)なしと
164諦(あきら)め居(ゐ)たる折柄(をりから)に
165テーリン姫(ひめ)は忽(たちま)ちに
166マリヤス姫(ひめ)の御(おん)腕(うで)に
167力(ちから)限(かぎ)りに噛(かぶ)りつき
168争(あらそ)ふ隙(すき)を窺(うかが)ひて
169吾(われ)等(ら)三人(みたり)は逸早(いちはや)く
170暗(やみ)に紛(まぎ)れて身(み)をかくし
171山(やま)の尾(を)渉(わた)り谷(たに)を越(こ)え
172いろいろ雑多(ざつた)の苦(くるし)みを
173嘗(な)めてやうやうキル港(みなと)
174船(ふね)を求(もと)めて波(なみ)の上(うへ)
175琉球島(りうきうじま)に安着(あんちやく)し
176竜世(たつよ)の姫(ひめ)の命(めい)の如(ごと)
177照彦(てるひこ)夫婦(ふうふ)や常楠(つねくす)の
178尊(たふと)き神(かみ)にめぐり会(あ)ひ
179五(いつ)つの宝(たから)を授(さづ)かりて
180漸(やうや)く茲(ここ)に帰(かへ)り来(き)ぬ
181あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
182御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
183今日(けふ)の生日(いくひ)の喜(よろこ)びは
184煎(い)りたる豆(まめ)に生花(いきばな)の
185咲(さ)き匂(にほ)ひたる思(おも)ひなり
186天津(あまつ)御神(みかみ)や国津(くにつ)神(かみ)
187国魂神(くにたまがみ)の御(おん)恵(めぐみ)
188未(いま)だ吾々(われわれ)兄弟(きやうだい)を
189見放(みはな)し玉(たま)はぬ嬉(うれ)しさよ
190さらば是(こ)れより五(い)つ身魂(みたま)
191水火(いき)を合(あは)せて泰安(たいあん)の
192都(みやこ)に進(すす)み言霊(ことたま)の
193伊吹(いぶき)の征矢(そや)を放(はな)しつつ
194群(むら)がる魔神(まがみ)を言向(ことむ)けて
195国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)の
196仕組(しぐ)ませ玉(たま)ひし五六七(みろく)の世(よ)
197堅磐(かきは)常磐(ときは)の松(まつ)の世(よ)を
198千代(ちよ)万代(よろづよ)に動(ゆる)ぎなく
199建設(けんせつ)せむは案(あん)の中(うち)
200マリヤス姫(ひめ)の計(はか)らひに
201テーリン姫(ひめ)はアーリスの
202山(やま)の尾(を)の上(へ)の争(あらそ)ひを
203漸(やうや)く茲(ここ)に納得(なつとく)し
204今迄(いままで)時節(じせつ)を待居(まちゐ)たる
205其(その)心根(こころね)の健気(けなげ)さよ
206さはさり乍(なが)らテーリン姫(ひめ)
207妹背(いもせ)の契(ちぎり)を今(いま)ここで
208結(むす)び了(を)へむは易(やす)けれど
209泰安城(たいあんじやう)の一戦(ひといくさ)
210無事(ぶじ)に凱旋(がいせん)する迄(まで)は
211暫(しばら)く待(ま)つて賜(たま)へかし
212あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
213竜世(たつよ)の姫(ひめ)の御(おん)前(まへ)に
214固(かた)く御(おん)誓(ちか)ひ奉(たてまつ)る
215必(かなら)ず共(とも)にテーリン姫(ひめ)
216心(こころ)を悩(なや)ます事(こと)勿(なか)れ』
217と歌(うた)ひ了(をは)つた。218テーリン姫(ひめ)は直(ただち)に立上(たちあが)り、219銀扇(ぎんせん)を拡(ひろ)げて、220自(みづか)ら歌(うた)ひ自(みづか)ら舞(ま)うた。
221テーリン姫『男心(をとこごころ)と秋(あき)の空(そら)
222猫(ねこ)の目玉(めだま)と諸共(もろとも)に
223変(かは)り易(やす)いと聞(き)くからは
224如何(いか)なる固(かた)き御(お)言葉(ことば)も
225妾(わたし)は心(こころ)安(やす)からず
226添(そ)はねばならぬ身魂(みたま)なら
227今(いま)でも将来(さき)でも同(おな)じこと
228美味(うま)い物(もの)なら先(さき)に食(く)へ
229世(よ)の諺(ことわざ)もあるものを
230何(いづ)れの人(ひと)に気兼(きがね)して
231左様(さやう)の事(こと)を仰有(おつしや)るか
232聞(きこ)えませぬぞえ月鉾(つきほこ)さま
233そんな気休(きやす)め妾(わたし)に云(い)うて
234結構(けつこう)な玉(たま)を手(て)に入(い)れた
235為(ため)にお前(まへ)の心(こころ)が変(かは)り
236田舎(いなか)じみたるテーリン姫(ひめ)を
237一生(いつしやう)一代(いちだい)の女房(にようばう)に持(も)つよりは
238泰安城(たいあんじやう)に到(いた)りなば
239桃(もも)や菫(すみれ)や桜花(さくらばな)
240選(え)り取(ど)り見取(みど)りのよい女房(にようばう)
241勝手(かつて)気儘(きまま)に娶(めと)らむと
242先(さき)を見越(みこ)してのお前(まへ)の言葉(ことば)
243妾(わたし)はどしても腑(ふ)におちぬ
244どうせ添(そ)うなら今(いま)の内(うち)
245大事(だいじ)を抱(かか)へたお前(まへ)の身(み)の上(うへ)
246無理(むり)に枕(まくら)を交(かは)せとは
247妾(わたし)も野暮(やぼ)な女(をんな)でない限(かぎ)り
248分(わか)らぬ事(こと)は云(い)ひませぬ
249マリヤス姫(ひめ)の御(おん)前(まへ)で
250二世(にせ)も三世(さんせ)も夫婦(ふうふ)ぞと
251キツパリ言(い)うて下(くだ)さんせ
252お前(まへ)の兄(あに)の日楯(ひたて)さま
253ユリコの姫(ひめ)と手(て)を曳(ひ)いて
254仲(なか)よう暮(くら)して厶(ござ)るでないか
255お前(まへ)は妾(わし)を邪魔者(じやまもの)扱(あつかひ)に
256なさつて一人(ひとり)琉球(りうきう)の
257島(しま)へお出(い)でたばつかりに
258夫婦(ふうふ)の中(なか)に只(ただ)一(ひと)つ
259白(しろ)い玉(たま)よりありはせぬ
260お前(まへ)の兄(あに)の日楯(ひたて)さま
261夫婦(ふうふ)揃(そろ)うて神業(しんげふ)に
262お勤(つと)めなさつた其(その)おかげ
263玉(たま)と鏡(かがみ)の夫婦事(ふうふごと)
264これでも分(わか)るでありませう
265あの時(とき)お前(まへ)が此(この)妾(わし)を
266御用(ごよう)に伴(つ)れて行(い)つたなら
267妾(わたし)も結構(けつこう)な神業(しんげふ)に
268加(くは)はり珍(うづ)の御鏡(みかがみ)を
269貰(もら)うて帰(かへ)つたに違(ちが)ひない
270今度(こんど)お前(まへ)が泰安城(たいあんじやう)へ
271言霊戦(ことたません)に行(ゆ)くならば
272日楯(ひたて)夫婦(ふうふ)と同(おな)じ様(やう)に
273妾(わたし)と結婚(けつこん)相済(あひす)まし
274夫婦(ふうふ)の水火(いき)を合(あは)せつつ
275神(かみ)の御用(ごよう)に立(た)たうでないか
276これ程(ほど)妾(わし)が言(こと)わけて
277言(い)うても聞(き)かぬお前(まへ)なら
278ヤツパリ今(いま)のお言葉(ことば)は
279嘘(うそ)と言(い)はれても仕方(しかた)があるまい
280早(はや)く返答(へんたふ)承(うけたま)はりませう
281あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
282国魂神(くにたまがみ)の竜世姫(たつよひめ)様(さま)
283何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)今(いま)ここで
284夫婦(ふうふ)の契(ちぎり)を結(むす)ばせ玉(たま)へ
285テーリン姫(ひめ)が真心(まごころ)を
286捧(ささ)げて祈(いの)り奉(たてまつ)る
287あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
288御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
289と歌(うた)ひ了(をは)つた。290月鉾(つきほこ)は当惑顔(たうわくがほ)を隠(かく)し、
291月鉾『あゝテーリン姫(ひめ)様(さま)、292あなたの御(お)心(こころ)はよく分(わか)りました。293私(わたくし)もこれから千騎(せんき)一騎(いつき)の活動(くわつどう)を致(いた)さねばなりませぬ。294女房(にようばう)があつては、295其(その)為(ため)心(こころ)を惹(ひ)かれ、296思(おも)ふ様(やう)の活動(くわつどう)が出来(でき)ませぬから、297どうぞ凱旋(がいせん)の後(のち)まで待(ま)つて下(くだ)さい。298キツト約束(やくそく)を履行(りかう)致(いた)しませう。299……マリヤス姫(ひめ)様(さま)、300さう致(いた)しましたら、301如何(どう)で厶(ござ)いませうかな』
302マリヤス姫(ひめ)『ヘイ……』
303と言(い)つた限(き)り、304黙然(もくねん)として俯(うつ)むいてゐる。
305テーリン姫(ひめ)『女房(にようばう)があつては気(き)を惹(ひ)かれて十分(じふぶん)の働(はたら)きが出来(でき)ぬとは、306これは又(また)妙(めう)な事(こと)を仰有(おつしや)いますな。307女房(にようばう)があつて働(はたら)きが出来(でき)ないのなら、308世界(せかい)の男(をとこ)は残(のこ)らず未結婚(みけつこん)で居(ゐ)る筈(はず)ぢやありませぬか。309日楯(ひたて)さまでさへも、310夫婦(ふうふ)揃(そろ)うて立派(りつぱ)に御(ご)神業(しんげふ)を御(お)勤(つと)め遊(あそ)ばしたぢやありませぬか。311瓢箪(へうたん)鯰(なまづ)式(しき)に何(なん)とか彼(か)んとか云(い)つて、312一(いち)時(じ)逃(のが)れに日(ひ)を延(の)ばし、313妾(わたし)を姥桜(うばざくら)にして了(しま)ふ貴方(あなた)の御(お)考(かんが)へでせう。314何(なん)と仰有(おつしや)つても、315妾(わたし)は貴方(あなた)の後(あと)を慕(した)ひ戦場(せんぢやう)に向(むか)ひます。316貴方(あなた)と一緒(いつしよ)に参(まゐ)り、317チツとでも御(お)邪魔(じやま)になる様(やう)な事(こと)がありましたら、318妾(わたし)も女(をんな)の端(はし)くれ、319潔(いさぎよ)う喉(のど)を掻(か)き切(き)つて死(し)んで見(み)せませう』
320月鉾(つきほこ)『そんな事(こと)をさせともないから、321凱旋(がいせん)の後(のち)まで待(ま)つて呉(く)れと云(い)ふのだ』
322テーリン姫(ひめ)『それ程(ほど)妾(わたし)をヤクザの女(をんな)とお見下(みさ)げ遊(あそ)ばして御座(ござ)るのですか。323妾(わたし)だつてユリコ姫(ひめ)様(さま)のなさる事(こと)位(くらゐ)は立派(りつぱ)に勤(つと)めてお目(め)にかけます。324……コレコレ、325マリヤス姫(ひめ)様(さま)、326貴女(あなた)は、327アーリス山(ざん)で妾(わたし)に仰有(おつしや)つたぢや御座(ござ)いませぬか。328どうぞ早(はや)く結婚(けつこん)の取持(とりもち)をして下(くだ)さいませ。329此(この)期(ご)に及(およ)んで躊躇(ちうちよ)なさるのはヤツパリ末(すゑ)になつて月鉾(つきほこ)さまと情意(じやうい)投合(とうがふ)なさるお考(かんが)へでせう』
330と妙(めう)な所(ところ)へ鉾(ほこ)を向(む)けて駄々(だだ)を捏(こ)ね出(だ)した。331マリヤス姫(ひめ)は是非(ぜひ)なく思(おも)ひ切(き)つた様(やう)に、
332マリヤス姫(ひめ)『月鉾(つきほこ)さま、333是非(ぜひ)此(この)場(ば)で結婚(けつこん)の式(しき)を挙(あ)げて下(くだ)さい。334万一(まんいち)お聞(き)き下(くだ)さらねば、335妾(わたし)はテーリン姫(ひめ)様(さま)の疑惑(ぎわく)を解(と)く為(ため)、336ここで自刃(じじん)して相果(あひは)てまする』
337と早(はや)くも懐剣(くわいけん)をスラリと引抜(ひきぬ)き決心(けつしん)の心(こころ)を現(あら)はし、338唇(くちびる)をビリビリ震(ふる)はせ、339顔色(がんしよく)青(あを)ざめて、340唯事(ただごと)ならぬ気配(けはい)を示(しめ)してゐる。
341月鉾(つきほこ)『ハイ、342貴女(あなた)の御意(ぎよい)に従(したが)ひます。343……テーリン姫(ひめ)様(さま)、344そんなら今日(けふ)から天下(てんか)晴(は)れての夫婦仲(めをとなか)、345どうぞ末長(すゑなが)う御(お)世話(せわ)を頼(たの)みます』
346 テーリン姫(ひめ)飛(と)び立(た)つ許(ばか)りに打喜(うちよろこ)び、
347テーリン姫『マリヤス姫(ひめ)様(さま)、348有難(ありがた)う、349……月鉾(つきほこ)さま、350お前(まへ)は立派(りつぱ)な男(をとこ)、351流石(さすが)は真道彦(まみちひこ)様(さま)の御(おん)胤(たね)、352私(わたし)の観察(くわんさつ)は違(ちが)はなかつた』
353と狂気(きやうき)の如(ごと)く喜(よろこ)び、354直(ただち)に神前(しんぜん)に駆上(かけあが)つて、355感謝(かんしや)の祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)するのであつた。
356 マリヤス姫(ひめ)の媒酌(ばいしやく)にて芽出度(めでた)く、357月鉾(つきほこ)、358テーリン姫(ひめ)の結婚(けつこん)は行(おこな)はれた。359これより、360マリヤス姫(ひめ)を首領(しゆりやう)とし、361日(ひ)、362月(つき)夫婦(ふうふ)を始(はじ)め、363八千代(やちよ)姫(ひめ)、364照代姫(てるよひめ)の二男(になん)五女(ごぢよ)は、365愈(いよいよ)準備(じゆんび)を整(ととの)へ、366泰安城(たいあんじやう)へカールス王(わう)、367ヤーチン姫(ひめ)、368真道彦(まみちひこの)命(みこと)其(その)他(た)を救(すく)ふべく出陣(しゆつぢん)する事(こと)となつた。
369(大正一一・八・九 旧六・一七 松村真澄録)
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