霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 木茄子(きなすび)〔八一一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻 篇:第2篇 暗黒の叫 よみ(新仮名遣い):あんこくのさけび
章:第11章 木茄子 よみ(新仮名遣い):きなすび 通し章番号:811
口述日:1922(大正11)年08月08日(旧06月16日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年8月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方、日楯ら三人はアーリス山を下り、テルナの渓谷に着いた。三人は飢えと疲れから、谷に生える木茄子を見つけてむしり食べると、その場に熟睡してしまった。
この木茄子は、テルナの里人が、バラモン教の祭典に際して供物に捧げようと保存しておいたものであった。祭典にあわせて木茄子を取りに来た里人たちは、木茄子がひとつも残っておらず、巡礼姿の三人の男女が傍らで寝ているのを見て驚き、酋長を呼んだ。
里人は三人を起こして、神饌の木茄子を食べてしまったことを責め立てた。酋長がやってくると、バラモンの神に大罪を犯した者は、生贄にするのだと言い渡した。しかしユリコ姫に相好を崩し、自分の妻になれば命は助けてやる、と言い出した。
ユリコ姫の助命嘆願に、酋長は、日楯と月鉾が烈火をくぐり、剣を渡り、釘の足駄を履いて裸で茨の叢をくぐれば赦してやる、と言い渡した。
酋長と里人たちは、三人を促して祭典の場所に連れて行った。そして日楯と月鉾を燃え上がる火の中に投げ込んだ。二人は天の数歌を唱えると、猛火の中を少しも火傷をせずに巡って戻ってきた。二人の神力に、里人たちは肝をつぶした。
一方ユリコ姫は酋長の俄妻として美々しく飾り立てられて、酋長と並んで祭壇に立たされたが、どこからともなく一塊の火光が来て爆発し、酋長は空中に巻き上げられた。里人たちは驚いて逃げる者、腰を抜かす者など混乱している。
ユリコ姫は美々しい衣装を火中に投げ捨てると、日楯、月鉾とともに祭壇の前に立って、感謝祈願の祝詞を唱えると宣伝歌を歌い始めた。
祈り終わると、酋長は礼服を着飾って三人の前にひざまづき、生き神に対して数々の無礼を加えたことを陳謝した。そして大自在天の怒りの火光で中空に巻き上げられた後、国魂神・竜世姫の守りによって助かったことを明かした。
三人は酋長をはじめ里人たちに三五教の教理を説き諭し、数日後に送られてキールの港に着いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-11-25 18:38:55 OBC :rm2811
愛善世界社版:125頁 八幡書店版:第5輯 398頁 修補版: 校定版:128頁 普及版:60頁 初版: ページ備考:
001 日楯(ひたて)002月鉾(つきほこ)003ユリコ(ひめ)(さん)(にん)は、004人目(ひとめ)()けて峰伝(みねづた)ひに、005アーリス(ざん)より須安(シユアン)山脈(さんみやく)(わた)り、006(いし)(まくら)青雲(あをぐも)夜具(やぐ)()ぶり、007(いく)()()かし(なが)ら、008(やうや)くにしてテルナの渓谷(けいこく)辿(たど)()いた。009(とき)しも()(やま)(かく)れ、010黄昏(たそがれ)間近(まぢか)くなつて()た。011(ここ)(いち)(にち)二日(ふつか)山中(さんちう)旅行(りよかう)は、012(みね)()()のみを(つた)つて()たので、013(おも)はしき()()もなく、014食料(しよくれう)(きう)し、015空腹(くうふく)(くるし)み、016歩行(ほかう)自由(じいう)ならず、017(のど)(かは)(みづ)()く、018(よわ)()つて()た。
019 (この)(とき)(はるか)谷間(たにあひ)黄昏(たそがれ)(やみ)()うて、020一塊(いつくわい)火光(くわくわう)(またた)いて()る。021(さん)(にん)(その)火光(くわくわう)(ちから)()022(つか)れた(あし)(ひき)ずり(なが)(すす)んで()く。023火光(くわくわう)中心(ちうしん)数多(あまた)(いや)らしき面構(つらがまゑ)毛武者(けむしや)(をとこ)幾十(いくじふ)(にん)となく赤裸(まつぱだか)(まま)024何事(なにごと)大声(おほごゑ)(わら)ひさざめいて()た。
025 (さん)(にん)木蔭(こかげ)()(よこ)たへ、026(しば)谷水(たにみづ)(のど)をうるほし、027(いき)(やす)めて()折柄(をりから)028サツと()()谷風(たにかぜ)()られて(さん)(にん)(かしら)(さわ)つたものがある。029月鉾(つきほこ)(おも)はず()頭上(づじやう)にあげた途端(とたん)()(さわ)つたのは、030(みづ)(したた)るような木茄子(きなすび)であつた。031(さん)(にん)(てん)(あた)へと(よろこ)(いさ)んで矢庭(やには)木茄子(きなすび)をむしり、032(はら)(こしら)へた。033長途(ちやうと)(つか)れに(はら)(ふと)り、034(にはか)眠気(ねむけ)(もよほ)し、035(さん)(にん)(とも)(その)()他愛(たあい)もなく熟睡(じゆくすゐ)して(しま)つた。
036 今日(けふ)はテルナの(さと)のバラモン(けう)大祭日(だいさいじつ)にして、037数多(あまた)里人(さとびと)(あつ)まり、038夜祭(よまつ)りをなさむと、039種々(いろいろ)準備(じゆんび)相談(さうだん)をして()最中(さいちう)であつた。040今日(けふ)祭典(さいてん)(たてまつ)らむと、041(この)(さと)(ただ)一本(いつぽん)よりなき木茄子(きなすび)を、042今迄(いままで)一個(いつこ)もむしり()らず、043大切(たいせつ)保存(ほぞん)して()た。044それを(さん)(にん)(もの)(のこ)らずむしり()つて()はれて(しま)つたのである。045(いよいよ)祭典(さいてん)時刻(じこく)となり、046四五(しご)里人(さとびと)白衣(びやくい)(ちやく)し、047大麻(おほぬさ)打振(うちふ)り、048バラモン(けう)神歌(しんか)(とな)(なが)ら、049大切(たいせつ)なる木茄子(きなすび)をむしり()り、050供物(くもつ)にせむと()()れば、051大切(たいせつ)なる木茄子(きなすび)何者(なにもの)にか(ぬす)()られ、052一個(いつこ)(えだ)(とど)まつて()ない。053一同(いちどう)(おどろ)(なが)ら、054あたりを()かし()れば、055(らい)(ごと)(いびき)をかいて(さん)(にん)男女(なんによ)(かたはら)()()る。
056 里人(さとびと)(たちま)大騒(おほさわ)ぎをなし、057松明(たいまつ)(てん)(きた)り、058よくよく()れば、059一人(ひとり)(をとこ)木茄子(きなすび)片手(かたて)()ち、060半分(はんぶん)(ばか)りかぢつた(まま)061熟睡(じゆくすゐ)してゐる。
062(かふ)『オイオイ(みな)連中(れんちう)063大変(たいへん)(やつ)()()やがつて、064神饌用(しんせんよう)木茄子(きなすび)を、065(みんな)()つて(くら)ひ、066(はら)をふくらせ、067平気(へいき)でグウグウ()てゐやがるぢやないか、068()しからぬ(やつ)だ。069……オイ(たれ)一時(ひととき)(はや)(この)(よし)を、070テルナの酋長(しうちやう)(さま)報告(はうこく)して()い。071さうせなくては(おれ)(たち)()つて()(やう)(うたが)はれ、072酋長(しうちやう)よりどんなお目玉(めだま)(くら)ふか(わか)らないぞ』
073 (その)(なか)一人(ひとり)は『オイ』と(こた)へて、074韋駄天(ゐだてん)(ばし)りに、075群集(ぐんしふ)(あつ)まる斎場(さいぢやう)(むか)つて酋長(しうちやう)報告(はうこく)すべく(はし)()つた。
076 (かふ)(つゑ)(さき)にて(さん)(にん)(あたま)をコンコンと()(なが)ら、
077(かふ)『コラツ、078(だい)それた大盗人(おほぬすと)()079(はや)()きぬか』
080呶鳴(どな)りつけた。081(さん)(にん)(おどろ)いて()きあがり四辺(あたり)()れば、082松明(たいまつ)()つた四五(しご)(にん)(をとこ)083(そば)には白衣(びやくい)()けた(をとこ)(とも)に、084(おに)(やう)(かほ)団栗眼(どんぐりまなこ)()()し、085(くちびる)をビリビリ(ふる)はせ(なが)(にら)みつけてゐる。
086日楯(ひたて)何人(なにびと)ならば……吾々(われわれ)(さん)(にん)(あたま)を、087失礼(しつれい)千万(せんばん)にも…(つゑ)(さき)にて打叩(うちたた)くとは何事(なにごと)ぞ』
088()はせも()てず、089(かふ)()だらけの(うで)()ばし、090日楯(ひたて)首筋(くびすぢ)をグツと(にぎ)つた。091日楯(ひたて)(くび)千切(ちぎ)れる(やう)(いた)さに顔色(かほいろ)(あを)ざめ、092(くちびる)まで紫色(むらさきいろ)にして(くるし)んで()る。093(だい)(をとこ)(こゑ)(あら)らげ、
094大男(おほをとこ)(その)(はう)(ども)大方(おほかた)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)であらう。095今日(けふ)はバラモン大神(おほかみ)大祭日(だいさいじつ)096里人(さとびと)大切(たいせつ)(いた)して今日(けふ)祭典(さいてん)供物(くもつ)にせうと(まも)つて()た、097木茄子(きなすび)(のこ)らず()(くら)ひ、098(この)聖場(せいぢやう)(おい)不行儀(ふぎやうぎ)千万(せんばん)にも()さらばひ、099大胆(だいたん)不敵(ふてき)(その)(はう)()振舞(ふるまひ)100()つて()れ、101(いま)酋長(しうちやう)(さま)(この)()()()しになるから、102何分(なにぶん)()沙汰(さた)があるであらう』
103()(をは)つて、104日楯(ひたて)(くび)(にぎ)つた()(はな)した。105日楯(ひたて)(あま)りの(いた)さに(もの)をも()はず、106(その)(まま)大地(だいち)獅噛(しがみ)ついて苦痛(くつう)(こら)へてゐた。107月鉾(つきほこ)一同(いちどう)(むか)丁寧(ていねい)両手(りやうて)をつき、
108月鉾(つきほこ)吾々(われわれ)(さん)(にん)(けつ)して三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)では御座(ござ)いませぬ。109バラモン(けう)聖場(せいぢやう)巡拝(じゆんぱい)(いた)巡礼(じゆんれい)御座(ござ)います。110(なれ)(みち)とて山奥(やまおく)にふみ(まよ)ひ、111空腹(くうふく)(くるし)みつつありし(ところ)112谷間(たにま)(あた)つて一点(いつてん)火光(くわくわう)(みと)め、113それを便(たよ)りに此処(ここ)まで()(まゐ)り、114休息(きうそく)(いた)して()(さい)115フト木茄子(きなすび)(あたま)(さは)り、116左様(さやう)大切(たいせつ)(もの)とは()らず、117(べつ)(ぬす)むと()(こころ)もなく、118頂戴(ちやうだい)(いた)しました。119(まこと)申訳(まをしわけ)のない(こと)御座(ござ)います。120どうぞ酋長(しうちやう)(さま)(よろ)しく()執成(とりな)しを(ねが)ひます』
121(かふ)今日(けふ)はバラモン(けう)大祭日(だいさいじつ)で、122人間(にんげん)犠牲(いけにへ)(たてまつ)らねばならぬ大切(たいせつ)()である。123され(ども)人命(じんめい)(そん)するは如何(いか)にも残酷(ざんこく)だと、124酋長(しうちやう)(さま)大神(おほかみ)()(ねがひ)(あそ)ばし、125(この)谷間(たにま)一本(いつぽん)よりない木茄子(きなすび)を、126人間(にんげん)(かは)りとして大神(おほかみ)(さま)(たてまつ)りますから、127人身(ひとみ)御供(ごくう)(だけ)()(ゆる)(くだ)されと()(ねが)ひになり、128それから(この)果物(くだもの)(かみ)(さま)御物(ぎよぶつ)として、129里人(さとびと)(ゆび)をもさへず、130大切(たいせつ)夜廻(よまは)りをつけて(まも)つて()たのだ。131それを(なんぢ)()(さん)(にん)ムザムザと取食(とりくら)うた以上(いじやう)は、132仕方(しかた)がない、133(その)(はう)腹中(ふくちう)にはまだ幾分(いくぶん)(のこ)つて()るであらう。134(ただち)(はら)をかき()つて木茄子(きなすび)をゑぐり()し、135(なんぢ)(からだ)(いけにへ)として(かみ)(たてまつ)り、136(かみ)(いか)りを()かねばならぬ。137(みな)者共(ものども)138(その)覚悟(かくご)(いた)したがよからうぞ』
139月鉾(つきほこ)『それは(また)大変(たいへん)(こと)御座(ござ)いますなア。140(しか)(かみ)(ひと)(たす)くるが(かみ)(こころ)141人間(にんげん)(いのち)()り、142(あるひ)(いけにへ)(たてまつ)らせて(よろこ)(やう)(かみ)(まこと)(かみ)ではありますまい。143吾々(われわれ)(およ)ばず(なが)(その)(かみ)(むか)つて、144(ひと)訓戒(くんかい)(あた)へて()ませう』
145(かふ)『ナニ、146馬鹿(ばか)(こと)(まを)すか。147(かみ)(さま)(たい)して、148人間(にんげん)訓戒(くんかい)(あた)へるなどとは、149不届(ふとど)千万(せんばん)申条(まをしでう)150左様(さやう)(こと)(まを)すと、151(かみ)(いか)りにふれて、152(この)テルナの(さと)果実(くわじつ)(みの)らず、153暴風雨(ばうふうう)大洪水(だいこうずゐ)(ため)(くる)しまねばならぬ。154いよいよ(もつ)差赦(さしゆる)(がた)痴者(しれもの)
155()(なが)ら、156(ちから)(まか)せて(つゑ)振上(ふりあ)げ、157(さん)(にん)背骨(せぼね)()れる(ほど)(たた)きつけた。
158 (しばら)くあつて、159テルナの(さと)酋長(しうちやう)ゼームスは四五(しご)従者(じゆうしや)鋭利(えいり)なる青竜刀(せいりうたう)()たせ(なが)ら、160(この)()(あら)はれ(きた)り、161(さん)(にん)姿(すがた)()て、162(こゑ)(あら)らかに()ふ。
163ゼームス『(その)(はう)大切(たいせつ)なる果物(くだもの)取喰(とりくら)ひし大罪人(だいざいにん)164(この)(まま)にては差赦(さしゆる)(がた)し。165(なんぢ)()(さん)(にん)166これより(かみ)(いけにへ)とし、167(かみ)(いか)りを(やは)らげなくてはならぬ。168サア覚悟(かくご)(いた)せよ』
169()(わた)した。170ユリコ(ひめ)両手(りやうて)(あは)せ、171ゼームスの(まへ)ににじり()り、172(かな)しさうな(かほ)をあげて(なみだ)(なが)し、
173ユリコ(ひめ)何卒(なにとぞ)174()らず()らずの不都合(ふつがふ)なれば、175どうぞ(この)(たび)()見逃(みのが)しを(ねが)ひます』
176(たの)んだ。177ゼームスはユリコ(ひめ)(かほ)一目(ひとめ)()るより、178(たちま)顔色(かほいろ)をやはらげ、
179ゼームス『(ゆる)(がた)罪人(ざいにん)なれ(ども)180(なんぢ)(わが)(つま)となる(こと)承諾(しようだく)するに(おい)ては、181(なんぢ)生命(いのち)(だけ)(たす)けてやらう。182どうぢや…有難(ありがた)いか』
183(やや)(くだ)けた相好(さうがう)(なが)ら、184ユリコ(ひめ)(かほ)(のぞ)()んだ。
185ユリコ(ひめ)『どうぞ、186(わたくし)のみならず、187二人(ふたり)(をとこ)生命(いのち)(ばか)りは(たす)けて(くだ)さいませ。188それさへ()承諾(しようだく)(くだ)さらば、189如何(いか)なるあなたの要求(えうきう)にも(おう)じまする』
190酋長(しうちやう)(ゼームス)『イヤ、191さうはならぬ。192如何(どう)しても一人(ひとり)(だけ)生命(いのち)()つて、193(いけにへ)(いた)さねばならぬ。194(この)(うち)(なんぢ)(をつと)があるであらう。195(その)(はう)(めん)じて、196(をつと)だけは(たす)けてやらう』
197日楯(ひたて)『ゼームスとやら、198吾々(われわれ)仮令(たとへ)()()()らず()らず取喰(とりくら)ひたればとて、199(なんぢ)()(ごと)きに(いのち)()らるる理由(りいう)何処(どこ)にある。200生命(いのち)()るなら勝手(かつて)()つて()よ』
201 ゼームス大口(おほぐち)をあけて、
202ゼームス『アハヽヽヽ』
203高笑(たかわら)ひし(なが)ら、
204ゼームス『(なんぢ)205いかに神力(しんりき)あればとて、206(わづか)二人(ふたり)(さん)(にん)207(この)大勢(おほぜい)(なか)(かこ)まれ(なが)ら、208如何(いかん)ともする(こと)(あた)ふまじ。209神妙(しんめう)(その)(はう)覚悟(かくご)をきはめて(いけにへ)となれ』
210ユリコ(ひめ)『もしもし酋長(しうちやう)(さま)211あれは(わたくし)(をつと)御座(ござ)います。212さうしてモウ一人(ひとり)(わが)(をつと)(おとうと)御座(ござ)います。213(わたし)如何(いか)なる(こと)でも(うけたま)はりませう。214(その)(かは)りどうぞ二人(ふたり)(いのち)()(たす)(くだ)さいませ』
215ゼームス『あゝ仕方(しかた)がない。216可愛(かあい)(その)(はう)(まを)(こと)217無下(むげ)(ことわ)(わけ)にも()こまい。218(しか)らば生命(いのち)(だけ)(たす)けてやらう。219バラモン(けう)の、220今日(けふ)大祭日(だいさいじつ)221両人(りやうにん)(とも)烈火(れつくわ)(なか)(わた)り、222(つるぎ)(はし)()え、223(くぎ)足駄(あしだ)()き、224赤裸(まつぱだか)となつて(いばら)(むろ)(くぐ)れ。225これがバラモン(けう)第一(だいいち)(かみ)(たい)する謝罪(しやざい)(みち)である。226生命(いのち)()らるる(こと)(おも)へば(やす)(こと)である。227吾々(われわれ)斯様(かやう)(ぎやう)年中(ねんぢう)行事(ぎやうじ)として、228(べつ)(つら)しとも(おも)つて()ない。229(その)(はう)巡礼(じゆんれい)ならば、230これ(くらゐ)修業(しうげふ)(こら)へられるであらう』
231 両人(りやうにん)一度(いちど)に、
232日楯、月鉾承知(しようち)(いた)しました。233生命(いのち)さへ(たす)けて(いただ)けるならば、234どんな(ぎやう)でも…(よろこ)んで(いた)しませう』
235ゼームス『最早(もはや)祭典(さいてん)時期(じき)(せま)つた。236サア(はや)此方(こちら)(きた)れ。237さうして(はだか)238跣足(はだし)(まま)239烈火(れつくわ)(なか)(わた)り、240(かみ)(いか)りを()くがよからう』
241(さん)(にん)前後(あとさき)大勢(おほぜい)警固(けいご)させ(なが)ら、242斎場(さいぢやう)(みちび)いた。
243 斎場(さいぢやう)(いた)()れば、244数多(あまた)果物(くだもの)小山(こやま)(ごと)神前(しんぜん)(かざ)られ、245前方(ぜんぱう)広庭(ひろには)には(やま)(ごと)枯柴(かれしば)()み、246これに()(はな)てば炎々(えんえん)として()えあがる(その)(すさま)じさ。247二人(ふたり)大勢(おほぜい)(もの)()()まれて、248火中(くわちう)()むを()()()んだ。249一生(いつしやう)懸命(けんめい)(あま)数歌(かずうた)(とな)へつつ、250猛火(まうくわ)(なか)(すこ)しも火傷(やけど)もせず、251幾度(いくど)となく(めぐ)つて(もと)(ところ)(かへ)つて()た。252一同(いちどう)(その)神力(しんりき)(きも)(つぶ)し、253二人(ふたり)(かほ)(なが)めてゐる。
254 ユリコ(ひめ)酋長(しうちやう)俄妻(にはかづま)として美々(びび)しき衣裳(いしやう)(あた)へられ、255酋長(しうちやう)相並(あひなら)んで斎壇(さいだん)()つた。256(たちま)何処(いづこ)よりともなく、257一塊(いつくわい)火光(くわくわう)()(きた)つて(この)()爆発(ばくはつ)し、258ゼームスの身体(からだ)は、259中空(ちうくう)()きあげられて(しま)つた。260一同(いちどう)はこれに(きも)(つぶ)し、261右往(うわう)左往(さわう)()(まど)ひ、262(あるひ)(こし)()かし、263(かほ)(いろ)さへ紫色(むらさきいろ)になつて半死(はんし)半生(はんしやう)(てい)呻吟(しんぎん)して()るものもあつた。
264 ユリコ(ひめ)美々(びび)しき衣裳(いしやう)矢庭(やには)()()(ただ)ちに火中(くわちう)(とう)じ、265日楯(ひたて)266月鉾(つきほこ)(とも)(さん)(にん)祭壇(さいだん)(まへ)()ち、267感謝(かんしや)祈願(きぐわん)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、268宣伝歌(せんでんか)(うた)(はじ)めたり。
269ユリコ(ひめ)朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
270(つき)()つとも()くるとも
271仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)(とも)
272(まこと)(ちから)()(すく)
273(かみ)(おもて)(あら)はれて
274(ぜん)(あく)とを立別(たてわけ)
275(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
276(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
277(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
278直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
279()(あやま)ちは()(なほ)
280(あめ)(した)なる民草(たみぐさ)
281(いづ)れも(たふと)(かみ)御子(みこ)
282(ちから)(よわ)(ひと)()
283いなで(あやま)ちあらざらめ
284(まこと)()らぬバラモンの
285(かみ)(つかさ)のゼームスや
286それに(したが)者共(ものども)
287(くら)(こころ)のいぢらしさ
288(たふと)(ひと)(めい)()
289(かみ)御前(みまへ)(いけにへ)
290(たてまつ)るとは(なん)(こと)
291(はた)して(かみ)(いけにへ)
292(のぞ)むとすればバラモンの
293大国彦(おほくにひこ)曲津(まがつ)(かみ)
294かかる(あや)しき御教(みをしへ)
295高砂島(たかさごじま)()(ひろ)
296国魂神(くにたまがみ)竜世姫(たつよひめ)
297外所(よそ)になしたる天罰(てんばつ)
298(たちま)(その)()(むく)()
299猛火(まうくわ)(なか)打渡(うちわた)
300(いばら)(むろ)()()まれ
301(つるぎ)(わた)(くぎ)下駄(げた)
302穿(うが)ちて(かみ)(おん)(まへ)
303(おも)(つみ)をば(わび)(なが)
304(たの)しき(この)()(くるし)みて
305(くら)世人(よびと)(あは)れさよ
306あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
307御霊(みたま)(さち)はひましまして
308仁慈(じんじ)無限(むげん)三五(あななひ)
309(かみ)(をしへ)(ひろ)まりて
310(あや)しき(をしへ)逸早(いちはや)
311(うみ)彼方(あなた)追払(おひはら)
312至治(しぢ)太平(たいへい)(かみ)()
313(きづ)かせ(たま)天津(あまつ)(かみ)
314国津(くにつ)(かみ)(たち)八百万(やほよろづ)
315竜世(たつよ)(ひめ)(おん)(まへ)
316三五教(あななひけう)神司(かむづかさ)
317(てん)(かがや)日月(じつげつ)
318()()(たま)ひし(わが)(つま)
319日楯(ひたて)(かみ)月鉾(つきほこ)
320(たふと)(をしへ)国人(くにびと)
321一人(ひとり)(のこ)さず服従(まつろ)はせ
322暗黒(あんこく)無道(ぶだう)()(なか)
323天国(てんごく)浄土(じやうど)(くわ)せしめよ
324あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
325御霊(みたま)(さち)(たま)へかし』
326(いの)(をは)つた。327何時(いつ)()にやら、328中天(ちうてん)()()げられたる酋長(しうちやう)のゼームスは、329礼服(れいふく)着飾(きかざ)り、330四五(しご)従者(じゆうしや)(とも)に、331(めづ)らしき果物(くだもの)()(きた)り、332(さん)(にん)(まへ)(うやうや)しく(ささ)げ、
333ゼームス『(わたくし)最前(さいぜん)のゼームスと(まを)(この)(さと)酋長(しうちやう)御座(ござ)います。334(たふと)きあなた(がた)()(たい)し、335()無礼(ぶれい)(こと)申上(まをしあ)げました。336勿体(もつたい)なくも生神(いきがみ)(さま)(たい)し、337吾々(われわれ)(ごと)(いや)しき(もの)女房(にようばう)になれとか、338火渡(ひわた)りをせよとか、339いろいろの難題(なんだい)申上(まをしあ)げました無礼(ぶれい)(つみ)340何卒(なにとぞ)()(ゆる)(くだ)さいませ。341これも(まつた)くバラモン(けう)(おきて)遵奉(じゆんぽう)(いた)しての言葉(ことば)御座(ござ)いました。342(ただ)()まなかつたのは(たふと)女神(めがみ)(さま)(たい)し、343女房(にようばう)になれと申上(まをしあ)げた(こと)のみは、344バラモン(けう)(はう)から(まを)しても(だい)なる罪悪(ざいあく)御座(ござ)います。345(その)(ため)346大自在天(だいじざいてん)(さま)()(いか)りに()れ、347(てん)より(いまし)めの大火弾(だいくわだん)()げつけられ、348(わたくし)(その)途端(とたん)中空(ちうくう)(まき)あげられ、349最早(もはや)(いのち)()きものと覚悟(かくご)(いた)して()りましたが、350国魂神(くにたまがみ)竜世姫(たつよひめ)(さま)とやらの、351(あつ)御守(みまも)りに()つて大切(たいせつ)なる生命(いのち)(すく)はれ、352()ついろいろの訓戒(くんかい)をうけました。353それ(ゆゑ)()(もの)取敢(とりあへ)ず、354あなた(さま)()(わび)申上(まをしあ)げむと(まゐ)りました。355どうぞ(この)(つゑ)にて、356(わたくし)身体(からだ)(ところ)かまはず、357(はら)のいえる(まで)打据(うちす)(くだ)さいますれば、358(つみ)一部(いちぶ)(あがな)へられるものと心得(こころえ)ます。359どうぞ(よろ)しく()(ねが)(いた)します』
360熱涙(ねつるい)(なが)し、361真心(まごころ)より(たの)()るのであつた。362()()つた数多(あまた)里人(さとびと)は、363追々(おひおひ)(あつ)まり(きた)り、364(いづ)れも(ひと)つの負傷(ふしやう)もなきに、365不審(ふしん)(おも)ひをし(なが)ら、366酋長(しうちやう)(この)(てい)()て、367一同(いちどう)(さん)(にん)(むか)()(あは)し、368(かみ)(ごと)尊敬(そんけい)()(へう)し、369合掌(がつしやう)して(をが)(たふ)して()る。
370 (さん)(にん)三五教(あななひけう)教理(けうり)諄々(じゆんじゆん)()(さと)酋長(しうちやう)以下(いか)数十(すうじふ)(にん)(まも)られて数日(すうじつ)(のち)371(やうや)くキールの(みなと)()いた。
372大正一一・八・八 旧六・一六 松村真澄録)
373(昭和一〇・六・八 王仁校正)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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