霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 高島丸(たかしままる)〔八一九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻 篇:第4篇 南米探険 よみ(新仮名遣い):なんべいたんけん
章:第19章 高島丸 よみ(新仮名遣い):たかしままる 通し章番号:819
口述日:1922(大正11)年08月10日(旧06月18日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年8月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高姫は常彦、春彦に舟を操らせてテルの国の山々が見えるところまで漕ぎつけたが、舟は暗礁に乗り上げて粉砕してしまった。この時代は海の塩分が非常に濃かったので、一里二里くらいであれば、なんとか海上を渡ることができた。
しかし三人が海を渡っていると風が吹き始め、波が荒れ出した。炎天下も手伝って、そろそろ高姫は不安の念にかられだし、声を限りに天津祝詞を唱え、日ごろ宿敵と楯突く言依別命にまで祈願をこらしだした。
そこへ高島丸という船が通りかかり、三人を救い出した。高島丸は、筑紫の島、竜宮の一つ島から常世の国へ渡る人々を乗せていた。船長は骨格勝れたタルチールという大男であった。
船長は、救い上げた三人を、船の規則に照らして誰何し、行き先を質した。しかし高姫は、自分は神の生き宮で神界の都合で動いているのだと傲然と述べるばかりである。船長は一方的に改心せよと迫られて怒り出した。
常彦と春彦は、高姫が変わっているのだといって船長をなだめるが、高姫はますます逆上する。船長は、高姫がのぼせ上がっているので縛って吊るし上げる必要があると宣言し、捕縛して帆柱に吊るし上げた。
そこへ、この船に乗り合わせていた言依別命と国依別がこの場に走り来たり、船長に目配せした。船長は慌てて高姫を降ろしたが、高姫、常彦、春彦は言依別命らが助けてくれたことには気がつかなかった。
船長のタルチールは言依別命と国依別の説示を聞いて三五教に改心しており、すでに宣伝使となっていた。それゆえ、常世の国に着いたら宣伝使として各地を廻る決心をしていたのであった。
言依別命と国依別は、素早く船長の部屋に姿を隠した。船長を含めて三人は鼎座して高姫話に時を遷した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-10-20 10:42:00 文字数:4410 OBC :rm2819
愛善世界社版:237頁 八幡書店版:第5輯 437頁 修補版: 校定版:245頁 普及版:106頁 初版: ページ備考:
001三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)
002変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)と
003日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を
004唯一(ゆゐいつ)の武器(ぶき)とふりかざし
005我意(がい)を立(た)て貫(ぬ)く高姫(たかひめ)は
006神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
007公平(こうへい)無私(むし)の御心(みこころ)に
008感謝(かんしや)の涙(なみだ)流(なが)しつつ
009ウラナイ教(けう)を解散(かいさん)し
010股肱(ここう)と頼(たの)む黒姫(くろひめ)や
011高山彦(たかやまひこ)や魔我彦(まがひこ)を
012伴(ともな)ひ聖地(せいち)に立帰(たちかへ)り
013三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)して
014金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
015紫色(むらさきいろ)の宝玉(ほうぎよく)の
016其(その)監督(かんとく)を命(めい)ぜられ
017鼻高々(はなたかだか)と諸人(もろびと)を
018眼下(がんか)に見(み)おろす慢心(まんしん)の
019心(こころ)の鬼(おに)に遮(さへぎ)られ
020再(ふたた)び魔道(まだう)へ逆転(ぎやくてん)し
021執着心(しふちやくしん)を再発(さいはつ)し
022玉(たま)の在処(ありか)を探(さぐ)らむと
023西(にし)や東(ひがし)や北(きた)南(みなみ)
024万里(ばんり)の波濤(はたう)を乗越(のりこ)えて
025力(ちから)を尽(つく)す玉探(たまさが)し
026聖地(せいち)を見捨(みすて)て遠近(をちこち)と
027彷徨(さまよ)ふ中(うち)に竜宮(りうぐう)の
028天(てん)火(くわ)水(すゐ)地(ち)と結(むす)びたる
029麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)は梅子姫(うめこひめ)
030蜈蚣(むかで)の姫(ひめ)や黄竜姫(わうりようひめ)
031テールス姫(ひめ)や友彦(ともひこ)の
032五(い)つの身魂(みたま)に神業(かむわざ)を
033占領(せんりやう)されて気(き)を苛(いら)ち
034聖地(せいち)に帰(かへ)りていろいろと
035怒(いか)りをもらし駄々(だだ)を捏(こ)ね
036麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)の監督(かんとく)を
037おためごかしに命(めい)ぜられ
038八尋(やひろ)の殿(との)に現(あら)はれて
039高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)と
040衆人(しうじん)環視(くわんし)の壇上(だんじやう)に
041玉(たま)検(あらた)めを始(はじ)めける
042此(この)時(とき)五(いつ)つの麻邇(まに)の玉(たま)
043紫玉(むらさきだま)を除(のぞ)く外(ほか)
044残(のこ)りの四(よつ)つはあら不思議(ふしぎ)
045珍(うづ)の宝(たから)と思(おも)ひきや
046見(み)る価値(かち)もなき団子石(だんごいし)
047何処(いづこ)の誰(たれ)が何時(いつ)の間(ま)に
048摺変(すりか)へたるかと高姫(たかひめ)は
049口(くち)を尖(とが)らし目(め)をみはり
050呆(あき)れ居(ゐ)る折(をり)言依別(ことよりわけ)の
051珍(うづ)の命(みこと)が宝玉(ほうぎよく)を
052抱(いだ)いて聖地(せいち)を遁走(とんそう)し
053国依別(くによりわけ)と諸共(もろとも)に
054高砂島(たかさごじま)に渡(わた)りしと
055聞(き)くより高姫(たかひめ)気(き)をいらち
056又(また)もや聖地(せいち)を立出(たちい)でて
057乗(の)るか反(そ)るかの瀬戸(せと)の波(なみ)
058常彦(つねひこ)、春彦(はるひこ)諸共(もろとも)に
059棚無(たなな)し舟(ぶね)に身(み)を任(まか)せ
060艪擢(ろかい)を操(あやつ)り荒波(あらなみ)を
061乗切(のりき)り乗切(のりき)り和田中(わだなか)に
062青(あを)く泛(うか)べる琉(りう)の島(しま)
063那覇(なは)の港(みなと)に安着(あんちやく)し
064常楠翁(つねくすをう)の住処(すみか)なる
065槻(つき)の大木(おほぎ)の洞穴(どうけつ)に
066現(あら)はれ来(きた)り言依別(ことよりわけ)の
067神(かみ)の命(みこと)は琉球(りうきう)の
068玉(たま)を手(て)に入(い)れ逸早(いちはや)く
069高砂島(たかさごじま)に渡(わた)りしと
070聞(き)くより心(こころ)もいら立(だ)ちて
071再(ふたた)び舟(ふね)に身(み)を任(まか)せ
072山(やま)なす波(なみ)を乗(の)り切(き)りて
073大和田中(おほわだなか)に浮(うか)びたる
074高砂島(たかさごじま)に渡(わた)らむと
075進(すす)み行(ゆ)くこそ健気(けなげ)なれ。
076 高姫(たかひめ)は常彦(つねひこ)、077春彦(はるひこ)に舟(ふね)を操(あやつ)らせ、078夜(よ)を日(ひ)に継(つ)いで、079漸(やうや)くにしてテルの国(くに)の山々(やまやま)仄(ほのか)に霞(かすみ)の如(ごと)く目(め)に入(い)る地点(ちてん)まで漕(こ)ぎ着(つ)けた。080舟(ふね)は忽(たちま)ち暗礁(あんせう)に乗上(のりあ)げ、081メキメキと粉砕(ふんさい)して了(しま)つた。082此(この)頃(ころ)の海面(かいめん)は塩分(えんぶん)最(もつと)も多(おほ)く、083波(なみ)なき時(とき)は海上(かいじやう)と雖(いへど)も、084直立(ちよくりつ)して歩(あゆ)むに僅(わづ)かにこぶらを没(ぼつ)する位(くらゐ)で、085水(みづ)の抵抗力(ていかうりよく)強(つよ)く、086一(いち)里(り)二(に)里(り)位(くらゐ)は容易(ようい)に徒歩(とほ)にて渡(わた)る事(こと)を得(え)たのである。087併(しか)し乍(なが)ら、088暴風(ばうふう)吹(ふ)き来(きた)り、089波(なみ)立(た)つ時(とき)は忽(たちま)ち波(なみ)に包(つつ)まれ、090生命(いのち)を失(うしな)ふ危険(きけん)があつた。
091 高姫(たかひめ)一行(いつかう)は船(ふね)を破(わ)り、092已(や)むを得(え)ず、093尻(しり)をからげて霞(かすみ)の如(ごと)く現(あら)はれたるテルの国(くに)を目当(めあ)てに海上(かいじやう)を徒渉(とせふ)し始(はじ)めた。094俄(にはか)に風(かぜ)が吹(ふ)いて来(き)た。095そろそろ波(なみ)は荒(あ)れ出(だ)した。096酷熱(こくねつ)の太陽(たいやう)は焼(や)きつく如(ごと)く照(て)り出(だ)した。097流石(さすが)大胆(だいたん)不敵(ふてき)の高姫(たかひめ)も、098到底(たうてい)此(この)儘(まま)にては、099高砂島(たかさごじま)に渡(わた)ることは出来(でき)ないと、100心中(しんちう)不安(ふあん)の念(ねん)に駆(か)られ、101声(こゑ)を限(かぎ)りに天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し天(あま)の数歌(かずうた)を唱(とな)へ、
102高姫(たかひめ)『国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)、103神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)、104玉照彦(たまてるひこ)様(さま)、105玉照姫(たまてるひめ)様(さま)、106言依別(ことよりわけの)神(かみ)様(さま)、107時置師(ときおかしの)神(かみ)様(さま)、108国依別(くによりわけ)様(さま)、109どうぞ、110此(この)危難(きなん)をお助(たす)け下(くだ)さいませ。111高姫(たかひめ)も只今(ただいま)限(かぎ)り我(が)を折(を)りまして、112あなた方(がた)の教(をしへ)通(どほ)り堅(かた)く守(まも)ります』
113と今迄(いままで)反対側(はんたいがは)に立(た)つた役員(やくゐん)の名(な)まで呼(よ)び出(だ)して祈願(きぐわん)する、114其(その)心根(こころね)余程(よほど)往生(わうじやう)したと見(み)える。115常彦(つねひこ)、116春彦(はるひこ)は高姫(たかひめ)の此(この)祈(いの)りを聞(き)いて、117俄(にはか)に心細(こころぼそ)くなり、118泣(な)き声(ごゑ)となつて、
119常彦、春彦『惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
120と蚊(か)の鳴(な)く様(やう)に唱(とな)へて居(ゐ)る。
121 折柄(をりから)波(なみ)を蹴立(けだ)てて進(すす)み来(く)る高島丸(たかしままる)は、122三(さん)人(にん)の波上(はじやう)に漂(ただよ)ひ困難(こんなん)の態(てい)を見(み)て、123直(ただち)に船(ふね)を近寄(ちかよ)せ、124これを救(すく)ひ上(あ)げた。125高島丸(たかしままる)には筑紫(つくし)の国(くに)、126竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)などより常世(とこよ)の国(くに)に渡(わた)らむとする者(もの)、127殆(ほとん)ど二百(にひやく)人(にん)許(ばか)り乗込(のりこ)んで居(ゐ)た。128船長(せんちやう)はタルチールと云(い)ふ骨格(こくかく)秀(すぐ)れた大(だい)の男(をとこ)であつた。
129 三(さん)人(にん)は船長室(せんちやうしつ)に招(まね)かれて、130いろいろと取調(とりしら)べを受(う)けた。
131船長(せんちやう)『お前(まへ)は何国(どこ)の方(かた)で、132何(なん)と云(い)ふお名前(なまへ)で、133何国(どこ)へ何用(なによう)あつてお出(い)でになるのか、134船中(せんちう)の規則(きそく)として調(しら)べておかねばなりませぬ。135ハツキリと茲(ここ)で、136国(くに)、137所(ところ)、138姓名(せいめい)、139用向(ようむき)の次第(しだい)を仰(おつしや)つて下(くだ)さい』
140高姫(たかひめ)『ハイ私(わたし)は自転倒(おのころ)島(じま)の中心地(ちうしんち)、141錦(にしき)の宮(みや)の八尋殿(やひろどの)に三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)の頭(かしら)として奉仕(ほうし)する変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)、142日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と世界(せかい)に有名(いうめい)な高姫(たかひめ)で御座(ござ)います。143人民(じんみん)の分際(ぶんざい)として、144神(かみ)の生宮(いきみや)がどこへ行(ゆ)かうと、145行(ゆ)かうまいと、146別(べつ)に取調(とりしら)べる必要(ひつえう)はありますまい。147神(かみ)の事(こと)は何程(なにほど)賢(かしこ)い人間(にんげん)でも、148到底(たうてい)見当(けんたう)の取(と)れぬものですよ』
149船長(せんちやう)『神(かみ)様(さま)は神(かみ)様(さま)として、150吾々(われわれ)は人間(にんげん)としての高姫(たかひめ)を監督(かんとく)する必要(ひつえう)があるから、151其(その)用向(ようむき)を尋(たづ)ねて置(お)くのだ。152キツパリ言(い)つて貰(もら)はねば此(この)船(ふね)に乗(の)つて貰(もら)ふことは出来(でき)ませぬ』
153高姫(たかひめ)『それだから人間(にんげん)は困(こま)ると云(い)ふのだ。154蕪(かぶら)から菜種(なたね)迄(まで)教(をし)へて上(あ)げねばならぬのかなア。155日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が行(ゆ)く所(ところ)ならば、156大抵(たいてい)分(わか)りさうなものだのに…………エー仕方(しかた)がない、157秘密(ひみつ)を守(まも)つて下(くだ)さるなら申(まを)しませう。158実(じつ)の所(ところ)は三五教(あななひけう)の教主(けうしゆ)言依別(ことよりわけの)命(みこと)が、159国依別(くによりわけ)のガンガラ者(もん)と大切(たいせつ)な玉(たま)を盗(ぬす)み、160高砂島(たかさごじま)へ逃(に)げて行(ゆ)きよつた。161それ故(ゆゑ)、162三千(さんぜん)世界(せかい)の御(お)宝(たから)、163あの様(やう)なドハイカラやガンガラ者(もん)に持(も)たせておいては、164世(よ)が乱(みだ)れる許(ばか)り、165いつまでも五六七(みろく)の世(よ)は出(で)て来(き)は致(いた)さぬから、166三千(さんぜん)世界(せかい)の人民(じんみん)を助(たす)ける大慈(だいじ)大悲(だいひ)の日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が、167其(その)玉(たま)を取返(とりかへ)さむと、168神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の術(じゆつ)を使(つか)ひ、169自転倒(おのころ)島(じま)よりはるばると、170舟(ふね)にも乗(の)らず、171二人(ふたり)の家来(けらい)を引(ひ)き連(つ)れ、172波(なみ)の上(うへ)を渡(わた)つて来(き)た生神(いきがみ)の高姫(たかひめ)で御座(ござ)る。173お前(まへ)も此(この)高姫(たかひめ)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)が、174言(い)うて貰(もら)はねば分(わか)らぬような事(こと)で、175如何(どう)して船長(せんちやう)が勤(つと)まりますか。176これから此(この)生宮(いきみや)の云(い)ふ事(こと)を聞(き)いて、177宏大(くわうだい)なる神徳(しんとく)を頂(いただ)きなさい。178際限(さいげん)もなき万里(ばんり)の波濤(はたう)を乗越(のりこ)える船頭(せんどう)としては、179チツと神力(しんりき)がないと、180大勢(おほぜい)の人間(にんげん)の生命(いのち)を預(あづか)つて海(うみ)を渡(わた)ると云(い)ふ事(こと)は中々(なかなか)荷(に)が重(おも)たい。181何程(なにほど)人間(にんげん)が力(ちから)がありたとて、182智慧(ちゑ)がありたとて、183神力(しんりき)には叶(かな)はぬから、184早(はや)く我(が)を折(を)つて改心(かいしん)なさるが宜(よろ)しいぞや』
185 船長(せんちやう)口(くち)を尖(とが)らし、
186船長『コリヤ高姫(たかひめ)とやら、187吾々(われわれ)を罪人扱(ざいにんあつかひ)に致(いた)し、188改心(かいしん)せよとはチツと無礼(ぶれい)ではないか。189改心(かいしん)と云(い)ふ言葉(ことば)は、190悪人(あくにん)や罪人(つみびと)に対(たい)して、191審判司(さばきつかさ)の申(まを)すべき言葉(ことば)であるぞよ。192汝(なんぢ)如(ごと)きに改心(かいしん)呼(よ)ばはりをされる様(やう)な汚(けが)れたタルチールでは御座(ござ)らぬぞ。193余(あま)りな無礼(ぶれい)を申(まを)すと、194了見(りやうけん)致(いた)さぬ』
195と稍(やや)怒気(どき)を含(ふく)み、196顔色(かほいろ)を変(か)へて大声(おほごゑ)に呶鳴(どな)り立(た)てた。
197高姫(たかひめ)『コレ船頭(せんどう)、198お前(まへ)は高姫(たかひめ)の言葉(ことば)がお気(き)に入(い)りませぬか、199腹(はら)が立(た)ちますか、200神(かみ)様(さま)の御(お)戒(いまし)めに、201怒(いか)る勿(なか)れと云(い)ふ事(こと)が御座(ござ)いますぞや。202怒(いか)ると云(い)ふ事(こと)は最(もつと)も神界(しんかい)より見(み)れば重(おも)き罪(つみ)で御座(ござ)いますぞ。203お前(まへ)は現(げん)に今(いま)、204怒(おこ)つた顔(かほ)をして尖(とが)つた声(こゑ)を出(だ)し、205神界(しんかい)の罪(つみ)を犯(おか)した罪人(ざいにん)です。206それ故(ゆゑ)改心(かいしん)をなされと高姫(たかひめ)が云(い)つたのだよ。207ヘン………コレでも返答(へんたふ)が出来(でき)るならして見(み)なさい。208そんな高(たか)い声(こゑ)をしておどしたつて、209いつかな いつかな、210ビクつく様(やう)な日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)とは違(ちが)ひますぞえ。211ヘン……』
212と鼻(はな)を手(て)の甲(かふ)でこすり上(あ)げ乍(なが)ら嘲笑(あざわら)ふ。
213船長(せんちやう)『コリヤ コリヤ其(その)方(はう)は此(この)高姫(たかひめ)の同行者(どうかうしや)であらうなア』
214両人(りやうにん)『ハイ仰(あふ)せの通(とほ)りで御座(ござ)います。215何(なに)を云(い)つても、216高姫(たかひめ)さまは、217逆上(ぎやくじやう)して居(を)りますから、218どうぞお気(き)に障(さ)へないでゐて下(くだ)さいませ。219吾々(われわれ)両人(りやうにん)は側(そば)に聞(き)いて居(ゐ)ても、220ハラハラ致(いた)します。221否(いや)腹(はら)が立(た)つて来(き)ます。222況(ま)してやあなた様(さま)のお腹立(はらだち)は御尤(ごもつと)もと存(ぞん)じます』
223船長(せんちやう)『あゝさうだらう。224何(なん)でも一通(ひととほ)りではないと思(おも)つた。225余程(よほど)変(かは)つてゐさうだなア』
226高姫(たかひめ)『ヘン、227そりや何(なに)を仰有(おつしや)るのだ。228変(かは)つて居(を)らいで何(なん)とせう。229日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)とガラクタ人間(にんげん)と一緒(いつしよ)にしられてたまるものか。230凡夫(ぼんぷ)の目(め)から神(かみ)様(さま)を見(み)れば、231そりやモウ変(かは)つた様(やう)に見(み)えるのは当前(あたりまへ)だ。232一通(ひととほり)でないなんて、233能(よ)うマアそんな馬鹿(ばか)な事(こと)が云(い)へたものだ。234一通(ひととほり)や二通(ふたとほり)所(どころ)か、235神(かみ)の階級(かいきふ)は百(ひやく)八十一(はちじふひと)通(とほり)ある。236そして其(その)一番(いちばん)上(うへ)の大神(おほかみ)こそ天御中主(あめのみなかぬしの)大神(おほかみ)、237又(また)の御名(みな)は大国治立(おほくにはるたちの)尊(みこと)と云(い)つて、238始(はじめ)無(な)く終(をはり)なく、239無限(むげん)絶対(ぜつたい)独一(どくいつ)の誠(まこと)の独(ひと)り神(かみ)様(さま)だ。240其(その)次(つぎ)には国治立(くにはるたちの)尊(みこと)、241其(その)次(つぎ)には日(ひ)の出神(でのかみ)、242それから段々(だんだん)と枝(えだ)の神(かみ)があり、243人民(じんみん)は神(かみ)の次(つぎ)だ。244百八十(ひやくはちじふ)通(とほ)りも隔(へだ)てがあるのだよ。245さうだからテンデお前(まへ)達(たち)は、246此(この)日(ひ)の出神(でのかみ)の申(まを)すことが分(わか)らぬのだ。247人民(じんみん)は人民(じんみん)らしくおとなしく致(いた)して神(かみ)に口答(くちごた)へを致(いた)すでないぞや。248コレ船長殿(せんちやうどの)、249此(この)生宮(いきみや)の申(まを)すこと、250チツとは御(ご)合点(がつてん)が参(まゐ)りましたかなア』
251船長(せんちやう)『常彦(つねひこ)、252春彦(はるひこ)の両人(りやうにん)、253お前(まへ)さまは此(この)女(をんな)を如何(どう)考(かんが)へてゐますか。254随分(ずゐぶん)エライのぼせ方(かた)だ。255まだ高砂島(たかさごじま)へは三日(みつか)や五日(いつか)では到着(たうちやく)するのは六(む)つかしい。256海(うみ)へでも飛(と)び込(こ)まれては大変(たいへん)だから、257一(ひと)つ手足(てあし)をしばり、258頭(あたま)から水(みづ)でもかけておくか、259頭(あたま)のてつぺんに穴(あな)でもあけて、260逆(さか)さまに吊(つ)り下(さ)げ、261少(すこ)し血(ち)でも抜(ぬ)いてやらねば、262此(この)病気(びやうき)は本復(ほんぷく)致(いた)すまい。263お前(まへ)達(たち)二人(ふたり)は此(この)船(ふね)に乗(の)つた以上(いじやう)は、264何事(なにごと)も船長(せんちやう)の命令(めいれい)をきかねばならないのだから、265お前(まへ)の手(て)で此(この)高姫(たかひめ)を縛(しば)り上(あ)げ、266船底(ふなぞこ)へ伴(つ)れて往(い)つて呉(く)れ。267吾々(われわれ)もついて往(い)つて血(ち)を出(だ)して逆上(のぼせ)を引下(ひきさ)げてやるから……』
268 常彦(つねひこ)、269春彦(はるひこ)は驚(おどろ)いて、
270両人(りやうにん)『モシモシ船長(せんちやう)様(さま)、271此(この)高姫(たかひめ)には吾々(われわれ)両人(りやうにん)が附添(つきそ)ひ、272決(けつ)して御(ご)迷惑(めいわく)になる様(やう)な事(こと)は致(いた)させませぬから、273頭(あたま)を割(わ)つて血(ち)を出(だ)したり、274縛(しば)り上(あ)げる事(こと)丈(だけ)は何卒(どうぞ)許(ゆる)して下(くだ)さいませ』
275船長(せんちやう)『…………』
276 高姫(たかひめ)パツと怒(いか)り、
277高姫『盲(めくら)の垣覗(かきのぞ)き、278猫(ねこ)に小判(こばん)とはお前(まへ)のことだ。279此(この)生宮(いきみや)は金鉄(きんてつ)も同様(どうやう)、280指一本(ゆびいつぽん)触(さ)へることは出来(でき)ませぬぞ。281勿体(もつたい)ない、282日(ひ)の出神(でのかみ)様(さま)の生宮(いきみや)を、283仮令(たとへ)蚤(のみ)の口(くち)程(ほど)でも傷(きず)つけてみよれ。284神(かみ)の御(ご)立腹(りつぷく)は忽(たちま)ち、285此(この)船(ふね)は瞬(またた)く間(うち)に岩(いは)に打(ぶ)つかり沈没(ちんぼつ)致(いた)し、286日(ひ)の出神(でのかみ)に敵対(てきと)うた者(もの)は海(うみ)の底(そこ)へ突落(つきおと)され、287真心(まごころ)になつて頼(たの)んだ人民(じんみん)は、288天(てん)から抓(つま)み上(あ)げて、289善悪(ぜんあく)の立別(たてわ)けをハツキリ致(いた)して見(み)せるぞや』
290船長(せんちやう)『ヤア此奴(こいつ)は如何(どう)しても駄目(だめ)だ。291……常彦(つねひこ)、292春彦(はるひこ)、293お前(まへ)は今迄(いままで)先生(せんせい)と仰(あふ)いで来(き)たのだから、294何程(なにほど)船長(せんちやう)の命令(めいれい)でも、295高姫(たかひめ)を縛(しば)る訳(わけ)には行(ゆ)くまい、296師弟(してい)の情(じやう)として無理(むり)もない。297これから此(この)タルチールが直接(ちよくせつ)に荒料理(あられうり)をしてやるから、298お前(まへ)達(たち)両人(りやうにん)は、299下(した)の船室(せんしつ)に控(ひか)へて居(を)れ』
300高姫(たかひめ)『コレコレ常(つね)、301春(はる)、302日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を、303チツとの間(あひだ)も、304目放(めはな)し致(いた)すことはならぬぞや。305此(この)肉体(にくたい)は、306尊(たふと)き神(かみ)のお役(やく)に立(た)てねばならぬ系統(ひつぽう)の生宮(いきみや)だ。307船長(せんちやう)に付(つ)くか、308日(ひ)の出神(でのかみ)に従(つ)くか。309サア二(ふた)つに一(ひと)つの返答(へんたふ)を承(うけたまは)りませう』
310 船長(せんちやう)は『エー面倒(めんだう)』と強力(がうりき)に任(まか)せ、311高姫(たかひめ)を後手(うしろで)に縛(しば)り、312両足(りやうあし)を括(くく)り、313太縄(ふとなは)を帆柱(ほばしら)にかけ、314キリキリと絞(しぼ)り出(だ)した。315高姫(たかひめ)は足(あし)を空(そら)に頭(あたま)を下(した)にした儘(まま)、316チクチク帆柱(ほばしら)目(め)がけて吊(つ)り上(あ)げられた。317常(つね)、318春(はる)の両人(りやうにん)は地団駄(ぢだんだ)ふんで、319ワイワイと泣(な)き叫(さけ)ぶ。
320 此(この)船(ふね)に折(をり)よくも乗(の)つてゐた言依別(ことよりわけ)、321国依別(くによりわけ)の宣伝使(せんでんし)は慌(あわて)て此(この)場(ば)に走(はし)り来(きた)り、322船長(せんちやう)に何事(なにごと)か目配(めくば)せした。323船長(せんちやう)は驚(おどろ)いた様(やう)な顔(かほ)して、324慇懃(いんぎん)に腰(こし)を屈(かが)め、325直(ただち)に高姫(たかひめ)を吊(つ)りおろした。326常彦(つねひこ)、327春彦(はるひこ)の両人(りやうにん)は、328余(あま)りの事(こと)に肝(きも)を潰(つぶ)し、329此(この)場(ば)に言依別(ことよりわけ)、330国依別(くによりわけ)の現(あら)はれ来(きた)りし事(こと)に気(き)がつかなかつた。331高姫(たかひめ)も亦(また)苦(くる)しさに両人(りやうにん)の現(あら)はれて吾(わ)れを助(たす)けて呉(く)れたる事(こと)をチツとも知(し)らなかつた。
332 船長(せんちやう)のタルチールは、333言依別(ことよりわけの)命(みこと)、334国依別(くによりわけ)の時々(ときどき)の説教(せつけう)を聞(き)き、335スツカリと三五教(あななひけう)の信者(しんじや)となり、336言依別(ことよりわけ)の高弟(かうてい)となつて、337既(すで)に宣伝使(せんでんし)の職名(しよくめい)を与(あた)へられてゐた。338それ故(ゆゑ)タルチールは言依別(ことよりわけの)命(みこと)を高砂島(たかさごじま)へ送(おく)り届(とど)けると共(とも)に、339自分(じぶん)は宣伝使(せんでんし)となつて、340高砂島(たかさごじま)や常世(とこよ)の国(くに)を宣伝(せんでん)すべく決心(けつしん)してゐたのである。341さうして高姫(たかひめ)の事(こと)も略(ほぼ)、342国依別(くによりわけ)より聞(き)かされてゐた。
343 言依別(ことよりわけ)、344国依別(くによりわけ)は手早(てばや)く船長(せんちやう)の寝室(しんしつ)の間(ま)に姿(すがた)を隠(かく)した。345船長(せんちやう)も亦(また)言依別(ことよりわけの)命(みこと)に従(したが)ひ、346おのが寝室(しんしつ)に這入(はい)つて、347三(さん)人(にん)鼎座(ていざ)し、348高姫話(たかひめばなし)に時(とき)を遷(うつ)した。
349(大正一一・八・一〇 旧六・一八 松村真澄録)
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