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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
第1章 入那の野辺
第2章 入那城
第3章 偽恋
第4章 右守館
第5章 急告
第6章 誤解
第7章 忍術使
第2篇 神機赫灼
第8章 無理往生
第9章 蓮の川辺
第10章 狼の岩窟
第11章 麓の邂逅
第12章 都入り
第3篇 北光神助
第13章 夜の駒
第14章 慈訓
第15章 難問題
第16章 三番叟
第4篇 神出鬼没
第17章 宵企み
第18章 替へ玉
第19章 当て飲み
第20章 誘惑
第21章 長舌
余白歌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第41巻(辰の巻)
> 第1篇 天空地平 > 第6章 誤解
<<< 急告
(B)
(N)
忍術使 >>>
第六章
誤解
(
ごかい
)
〔一一一〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第1篇 天空地平
よみ(新仮名遣い):
てんくうちへい
章:
第6章 誤解
よみ(新仮名遣い):
ごかい
通し章番号:
1110
口述日:
1922(大正11)年11月10日(旧09月22日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
左守クーリンスの家老・テームスの奥座敷には、レーブとカルが招かれて会議が開かれた。テームスは秘密の会議とのことで、妻のべリス姫を退座させた。
テームスは神夢に三五教の黄金姫と清照姫が国を通るから、助けを乞うようにとお告げを受けたことを明かし、カルとレーブに行方を尋ねた。レーブは、黄金姫と清照姫は狼の守護を得ているから、困ったときにきっと現れるとクーリンスに答えた。
そこへ左守クーリンスの娘・セーリス姫が、右守方の計略を探知したことをテームスに伝えに夜分人目を忍んでやってきた。
応対したべリス姫は、セーリス姫をクーリンスの愛人だと勘違いしてとんちんかんな対応をするが、セーリス姫が奥に入って素性を明かしたので誤解が解けた。
テームスは、セーリス姫が右守の家老ユーフテスから聞き出した計略を聞いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-10 13:38:49
OBC :
rm4106
愛善世界社版:
79頁
八幡書店版:
第7輯 559頁
修補版:
校定版:
82頁
普及版:
39頁
初版:
ページ備考:
派生
[?]
この文献を底本として書かれたと思われる文献です。
[×閉じる]
:
出口王仁三郎全集 > 第一巻 皇道編 > 第七篇 高天原 > 第十二章 仁愛の真相
001
セーラン
王
(
わう
)
の
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
と
仕
(
つか
)
へたるクーリンスの
家老職
(
からうしよく
)
テームスの
奥座敷
(
おくざしき
)
にはレーブ、
002
カルの
両人
(
りやうにん
)
と
妻
(
つま
)
のベリス
姫
(
ひめ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が
車座
(
くるまざ
)
となつて
私々話
(
ひそびそばなし
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
003
テームスはベリス
姫
(
ひめ
)
を
遠
(
とほ
)
ざけ、
004
いよいよ
熟談
(
じゆくだん
)
に
取
(
と
)
りかかつた。
005
注意深
(
ちういぶか
)
きテームスは
最
(
もつと
)
も
信用
(
しんよう
)
するわが
女房
(
にようばう
)
でさへも
秘密
(
ひみつ
)
の
他
(
た
)
に
洩
(
も
)
れむ
事
(
こと
)
を
恐
(
おそ
)
れて
態
(
わざ
)
とに
遠
(
とほ
)
ざけたのである。
006
ベリス
姫
(
ひめ
)
は
夫
(
をつと
)
の
言葉
(
ことば
)
に
是非
(
ぜひ
)
もなく
立
(
た
)
つてわが
居間
(
ゐま
)
に
行
(
ゆ
)
く。
007
後
(
あと
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
め
密々話
(
ひそびそばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
り
出
(
だ
)
した。
008
テームス
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
のお
館
(
やかた
)
には
悪人
(
あくにん
)
はびこり、
009
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
のカールチンは
大棟梁
(
だいとうりやう
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
甘
(
うま
)
く
取
(
と
)
り
入
(
い
)
り、
010
吾々
(
われわれ
)
が
主人
(
しゆじん
)
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
なるクーリンス
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め、
011
王
(
わう
)
様
(
さま
)
迄
(
まで
)
も
排斥
(
はいせき
)
せむと
企
(
たく
)
んで
居
(
ゐ
)
るのだ。
012
さうなつちや
大変
(
たいへん
)
だから、
013
何
(
なん
)
とかしてこの
難関
(
なんくわん
)
を
切
(
き
)
り
抜
(
ぬ
)
け、
014
悪人
(
あくにん
)
を
懲
(
こ
)
らしめてやらむと
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
た
処
(
ところ
)
が、
015
別
(
べつ
)
に
之
(
これ
)
と
云
(
い
)
ふ
好
(
よ
)
い
方法
(
はうはふ
)
も
考案
(
かうあん
)
も
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ない。
016
それからこれは
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
考
(
かんが
)
へでは
往
(
い
)
かない、
017
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねが
)
ひするより
途
(
みち
)
はないとクーリンス
様
(
さま
)
が
三七
(
さんしち
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
梵天王
(
ぼんてんわう
)
様
(
さま
)
の
祠
(
ほこら
)
に
立籠
(
たてこも
)
り
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
を
乞
(
こ
)
はれた
処
(
ところ
)
、
018
豈
(
あに
)
計
(
はか
)
らむや「
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
019
清照姫
(
きよてるひめ
)
がやがてイルナの
都
(
みやこ
)
をお
通
(
とほ
)
りになるから、
020
甘
(
うま
)
く
両人
(
りやうにん
)
に
頼
(
たの
)
み
込
(
こ
)
んで
此
(
この
)
解決
(
かいけつ
)
をつけて
貰
(
もら
)
へよ」とのお
諭
(
さと
)
し、
021
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
も
合点
(
がてん
)
行
(
ゆ
)
かずと
幾度
(
いくど
)
もお
伺
(
うかが
)
ひになつたところ、
022
依然
(
いぜん
)
として
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
告
(
つげ
)
は
変
(
かは
)
らない。
023
そこで
左守
(
さもり
)
の
司様
(
かみさま
)
はこのテームスを
私
(
ひそ
)
かに
招
(
まね
)
き、
024
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
のお
出
(
いで
)
を
途
(
みち
)
にお
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
け
申
(
まを
)
し
城内
(
じやうない
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
025
この
解決
(
かいけつ
)
を
付
(
つ
)
けて
貰
(
もら
)
はうと
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
をつれ
関所
(
せきしよ
)
迄
(
まで
)
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で、
026
土中
(
どちう
)
の
洞
(
ほら
)
に
身
(
み
)
をひそめ
窺
(
うかが
)
ひ
居
(
を
)
れば、
027
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
お
二人
(
ふたり
)
の
道々
(
みちみち
)
の
話
(
はなし
)
、
028
時
(
とき
)
こそ
来
(
きた
)
れと、
029
洞穴
(
ほらあな
)
を
這
(
は
)
ひ
出
(
だ
)
し、
030
お
二人
(
ふたり
)
の
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
かむとした
処
(
ところ
)
、
031
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
は、
032
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
で
話
(
はな
)
すと
云
(
い
)
はれたが、
033
さうしては
却
(
かへつ
)
て
敵
(
てき
)
に
悟
(
さと
)
られてはならないから、
034
どうぞ
吾々
(
われわれ
)
に
其
(
その
)
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
まいかなア』
035
カル『ハイ、
036
実
(
じつ
)
はイルナの
森
(
もり
)
迄
(
まで
)
お
供
(
とも
)
をして
来
(
き
)
たのだが、
037
俄
(
にはか
)
に
狼
(
おほかみ
)
の
群
(
むれ
)
がやつて
来
(
き
)
て、
038
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
を
何処
(
どこ
)
かへ、
039
くはへて
往
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つたのだから、
040
ほんとの
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
は、
041
吾々
(
われわれ
)
は
分
(
わか
)
りませぬわい』
042
テームス
『そりや
困
(
こま
)
りましたなア。
043
そんな
事
(
こと
)
なら
態々
(
わざわざ
)
こんな
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
ふのぢやなかつたに』
044
レーブ『いや
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
045
カルは
新米
(
しんまい
)
で
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らぬのです。
046
私
(
わたし
)
は
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
047
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はお
二人
(
ふたり
)
は
狼
(
おほかみ
)
を
眷族
(
けんぞく
)
にお
使
(
つか
)
ひになつて
居
(
ゐ
)
ます。
048
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
時
(
とき
)
には、
049
いつも
二人
(
ふたり
)
をお
助
(
たす
)
けする
事
(
こと
)
になつて
居
(
ゐ
)
ますから、
050
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
が
眷族
(
けんぞく
)
に
殺
(
ころ
)
されるやうな
事
(
こと
)
は
決
(
けつ
)
してありませぬ。
051
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
が
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
連
(
つ
)
れて
洞穴
(
ほらあな
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
られる
事
(
こと
)
を
前知
(
ぜんち
)
せられ、
052
狼
(
おほかみ
)
を
出
(
だ
)
して
外
(
ほか
)
の
方面
(
はうめん
)
へお
隠
(
かく
)
しなさつたのです』
053
テームス
『さうすると、
054
このテームスはお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
の
敵
(
てき
)
と
見
(
み
)
られたのでせうか。
055
さうなると
仮令
(
たとへ
)
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
つても、
056
容易
(
ようい
)
に
吾々
(
われわれ
)
の
願
(
ねが
)
ひはお
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さいますまい。
057
はて、
058
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
ぢやな』
059
レーブ『イエイエ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
道理
(
だうり
)
はありませぬ。
060
貴方
(
あなた
)
のお
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れになつた
八
(
はち
)
人
(
にん
)
の
中
(
うち
)
には
半分
(
はんぶん
)
以上
(
いじやう
)
カールチンの
部下
(
ぶか
)
が
混
(
まじ
)
つて
居
(
ゐ
)
ますから、
061
態
(
わざ
)
とにお
外
(
はづ
)
しなさつたのですよ。
062
此
(
この
)
レーブも
其
(
その
)
事
(
こと
)
を
感付
(
かんづ
)
いたので、
063
あのやうな
不得
(
ふとく
)
要領
(
えうりやう
)
な
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
態
(
わざ
)
とに
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げたのです。
064
きつと
一両日
(
いちりやうじつ
)
の
中
(
うち
)
には
数多
(
あまた
)
の
狼
(
おほかみ
)
を
引
(
ひ
)
きつれ
悪人
(
あくにん
)
を
調伏
(
てうふく
)
せむとお
越
(
こ
)
しになるでせう。
065
あの
方
(
かた
)
は
神通力
(
じんつうりき
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
られますから、
066
レーブ、
067
カルの
両人
(
りやうにん
)
が
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
御存
(
ごぞん
)
じですから、
068
キツと
見
(
み
)
えます。
069
此
(
この
)
大事
(
だいじ
)
な
臣
(
けらい
)
を
振
(
ふ
)
りまいて
勝手
(
かつて
)
に
往
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
ふやうな
水臭
(
みづくさ
)
い
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬからなア』
070
カルは、
071
カル
『さうかなア』
072
とやや
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
不安
(
ふあん
)
の
色
(
いろ
)
を
浮
(
うか
)
べてゐる。
073
表門
(
おもてもん
)
には
二人
(
ふたり
)
の
門番
(
もんばん
)
、
074
大欠伸
(
おほあくび
)
をしながら
睡
(
ねむ
)
た
目
(
め
)
を
擦
(
こす
)
つて、
075
下
(
くだ
)
らぬ
話
(
はなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
076
門番の一人(シャール)
『オイ、
077
ピー
州
(
しう
)
、
078
もう
何時
(
なんどき
)
だらうなア、
079
イイ
加減
(
かげん
)
に
就寝
(
しうしん
)
の
振鈴
(
しんれい
)
が
聞
(
きこ
)
えさうなものぢやないか』
080
ピー州
『さうだなア、
081
もう
二十三
(
にじふさん
)
時
(
じ
)
、
082
百十五
(
ひやくじふご
)
分
(
ふん
)
位
(
くらゐ
)
なものだよ。
083
もう
五
(
ご
)
分間
(
ふんかん
)
待
(
ま
)
て……さうすれば
就寝
(
しうしん
)
の
振鈴
(
しんれい
)
が
鳴
(
な
)
るだらう。
084
監督
(
かんとく
)
が
廻
(
まは
)
つて
来
(
く
)
ると
面倒
(
めんだう
)
だから、
085
もチツと
目
(
め
)
を
擦
(
こす
)
つて
辛抱
(
しんばう
)
するのだなア』
086
シャール
『モウいい
加減
(
かげん
)
に
監督
(
かんとく
)
が
廻
(
まは
)
つて
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れぬと
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
睡
(
ねむ
)
たくなつて
仕方
(
しかた
)
がないわ。
087
併
(
しか
)
し
家
(
うち
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
妙
(
めう
)
な
男
(
をとこ
)
を
二人
(
ふたり
)
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つたぢやないか。
088
あれは
大方
(
おほかた
)
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
諜者
(
まはしもの
)
か
知
(
し
)
れやしないがなア。
089
家
(
うち
)
の
大将
(
たいしやう
)
は
人
(
ひと
)
が
好
(
よ
)
いから
又
(
また
)
騙
(
だま
)
されやしないかと
思
(
おも
)
うてそれが
心配
(
しんぱい
)
で
耐
(
たま
)
らないわ』
090
ピー州
『こりやシヤール、
091
何
(
なに
)
をおつシヤールのだ。
092
門番
(
もんばん
)
位
(
くらゐ
)
がピーピー
云
(
い
)
つたとて
何
(
なん
)
になるかい。
093
何事
(
なにごと
)
も
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
の
胸
(
むね
)
にあるのだから、
094
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
神妙
(
しんめう
)
に
門番
(
もんばん
)
さへして
居
(
を
)
ればよいのだ。
095
こんな
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
つて
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
親類
(
しんるゐ
)
にでも
聞
(
き
)
かれようものなら
大変
(
たいへん
)
だぞ』
096
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ
館
(
やかた
)
の
監督
(
かんとく
)
エムが
足音
(
あしおと
)
高
(
たか
)
く
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
097
エム
『コリヤ コリヤ、
098
ピー、
099
シヤールの
両人
(
りやうにん
)
、
100
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたか』
101
ピー『ハイ
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はよう
日和
(
ひより
)
の
続
(
つづ
)
くことだ。
102
お
月様
(
つきさま
)
は
下弦
(
かげん
)
になりなさつたけれど、
103
冬
(
ふゆ
)
の
初
(
はじめ
)
の
月
(
つき
)
は
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
なものだとピーから
切
(
き
)
りまで
賞
(
ほ
)
めて
居
(
を
)
りました』
104
エム
『
貴様
(
きさま
)
、
105
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
から
月
(
つき
)
が
拝
(
をが
)
めるか、
106
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
せ、
107
エーム』
108
ピー州
『
今
(
いま
)
此
(
この
)
武者窓
(
むしやまど
)
から
覗
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
います、
109
なあシヤール、
110
好
(
よ
)
い
月
(
つき
)
だつたなア』
111
エム
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ、
112
まだ
月
(
つき
)
は
昇
(
のぼ
)
つてゐないぢやないか。
113
貴様
(
きさま
)
大方
(
おほかた
)
門番
(
もんばん
)
を
怠
(
をこた
)
り、
114
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たのだらう。
115
何故
(
なぜ
)
振鈴
(
しんれい
)
の
鳴
(
な
)
る
迄
(
まで
)
起
(
お
)
きて
居
(
ゐ
)
ないのか。
116
貴様
(
きさま
)
はいつもサボる
癖
(
くせ
)
があるから
駄目
(
だめ
)
だ。
117
明日
(
みやうにち
)
限
(
かぎ
)
り
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
に
申上
(
まをしあ
)
げて
暇
(
ひま
)
を
遣
(
つか
)
はすぞ』
118
ピー州
『イエ
昨日
(
きのふ
)
の
月
(
つき
)
の
話
(
はなし
)
をして
居
(
ゐ
)
たので
厶
(
ござ
)
います。
119
何卒
(
どうぞ
)
今晩
(
こんばん
)
はお
見逃
(
みのが
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
120
エム
『それなら
今日
(
けふ
)
は
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
報告
(
はうこく
)
をするのを
止
(
や
)
めてやらう。
121
よく
気
(
き
)
をつけよ。
122
未
(
ま
)
だ
半時
(
はんとき
)
ばかり
振鈴
(
しんれい
)
が
鳴
(
な
)
るには
間
(
ま
)
があるから、
123
それ
迄
(
まで
)
はキツト
勤
(
つと
)
めるのだぞ。
124
睡
(
ねむ
)
たければ
目
(
め
)
を
出
(
だ
)
せ。
125
唐辛子
(
たうがらし
)
の
粉
(
こ
)
でも
塗
(
ぬ
)
つてやらう』
126
ピー州
『メヽ
滅相
(
めつさう
)
な、
127
そんな
事
(
こと
)
をしられて
耐
(
たま
)
りますか。
128
目
(
め
)
が
腫
(
は
)
れ
上
(
あが
)
つて
了
(
しま
)
ひます』
129
エム
『オイ、
130
シヤール、
131
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
唐辛子
(
たうがらし
)
のお
見舞
(
みまひ
)
はどうぢや。
132
大分
(
だいぶ
)
睡
(
ねむ
)
たさうな
顔
(
かほ
)
をして
居
(
を
)
るぢやないか』
133
シャール
『イヤ
別
(
べつ
)
に
睡
(
ねむ
)
たいことはありませぬ。
134
私
(
わたし
)
の
目
(
め
)
はピーのやうな
柔
(
やはら
)
かい
目
(
め
)
とは
違
(
ちが
)
ひます。
135
かたいかたい
目
(
め
)
で
厶
(
ござ
)
います。
136
只
(
ただ
)
時々
(
ときどき
)
上瞼
(
うはまぶた
)
と
下瞼
(
したまぶた
)
とが
集会
(
しふくわい
)
をしたり、
137
結婚
(
けつこん
)
をするだけのもので
厶
(
ござ
)
います』
138
エム
『サア
其
(
その
)
集会
(
しふくわい
)
が
不可
(
いか
)
ぬのぢや、
139
目
(
め
)
はぢき
でもかけて
団栗眼
(
どんぐりめ
)
をむいて
居
(
ゐ
)
ろよ。
140
好
(
よ
)
いか、
141
アーン』
142
シャール
『それでも、
143
この
間
(
あひだ
)
も
目
(
め
)
つけ
役
(
やく
)
と
目
(
め
)
つけ
役
(
やく
)
が
集会
(
しふくわい
)
をして
居
(
を
)
られましたぜ。
144
どうぞ
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さいな。
145
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
何時
(
いつ
)
もサボつて
居
(
を
)
るなどと
報告
(
はうこく
)
をせられては、
146
私
(
わたし
)
のみか
女房
(
にようぼう
)
子
(
こ
)
までが
めい
惑
(
わく
)
を
致
(
いた
)
しますから』
147
エムは「ウン」と
横柄
(
わうへい
)
な
返事
(
へんじ
)
をしながら
棒千切
(
ぼうちぎれ
)
を
打
(
う
)
ちふり
打
(
う
)
ちふり
暗
(
やみ
)
に
姿
(
すがた
)
をかくした。
148
暫
(
しばら
)
くすると
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
を
分
(
わ
)
けて
下弦
(
かげん
)
の
月
(
つき
)
、
149
利鎌
(
とがま
)
のやうな
影
(
かげ
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げて
昇
(
のぼ
)
り
始
(
はじ
)
めた。
150
門口
(
もんぐち
)
に
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
、
151
女(セーリス姫)
『モシモシ
門番
(
もんばん
)
さまえ、
152
余
(
あま
)
り
遅
(
おそ
)
くて
済
(
す
)
みませぬが、
153
一寸
(
ちよつと
)
様子
(
やうす
)
あつてテームス
殿
(
どの
)
にお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
りに
参
(
まゐ
)
つたもの、
154
どうぞ
通
(
とほ
)
して
下
(
くだ
)
さい』
155
ピー州
『オイオイ シヤール、
156
今頃
(
いまごろ
)
に
女
(
をんな
)
がやつて
来
(
き
)
たぞ。
157
此奴
(
こいつ
)
は
迂濶
(
うつかり
)
相手
(
あひて
)
になれないぞ。
158
狐
(
きつね
)
か
狸
(
たぬき
)
が
化
(
ば
)
けて
居
(
ゐ
)
やがるのだ。
159
日
(
ひ
)
の
暮
(
くれ
)
の
十八
(
じふはち
)
時
(
じ
)
過
(
す
)
ぎたら
女
(
をんな
)
は
歩
(
ある
)
くものぢやない。
160
それに
今頃
(
いまごろ
)
あんな
優
(
やさ
)
しい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
しやがつて、
161
此
(
この
)
門戸
(
もんこ
)
を
叩
(
たた
)
くものはキツト
ば
の
字
(
じ
)
に
け
の
字
(
じ
)
だ。
162
知
(
し
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をして
居
(
を
)
るが
一番
(
いちばん
)
よい』
163
門外
(
もんぐわい
)
から、
164
女(セーリス姫)
『もしもし
門番
(
もんばん
)
さま、
165
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さい』
166
とトントンと
小
(
ちひ
)
さく
叩
(
たた
)
く。
167
ピー州
『オイオイ
来
(
き
)
たぞ
来
(
き
)
たぞ。
168
あの
門
(
もん
)
の
叩
(
たた
)
きやうを
見
(
み
)
い。
169
狐
(
きつね
)
が
化
(
ば
)
けやがつて
尻尾
(
しつぽ
)
で
門
(
もん
)
の
戸
(
と
)
を
叩
(
たた
)
いて
居
(
ゐ
)
やがるのだよ、
170
のうシヤール』
171
シャール
『それでもありやきつと
人間
(
にんげん
)
だぞ。
172
どんな
秘密
(
ひみつ
)
の
御用
(
ごよう
)
でどんな
方
(
かた
)
がお
出
(
いで
)
になつたのか
知
(
し
)
れやしないぞ。
173
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
たらどうだ。
174
もし
怪
(
あや
)
しいものと
見
(
み
)
たら
此
(
この
)
棒
(
ぼう
)
で
撲
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
けて
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はしさへすりやよいぢやないか。
175
もし
狐
(
きつね
)
ででもあつて
見
(
み
)
い。
176
その
肉
(
にく
)
を
剥焼
(
すきやき
)
にして
酒
(
さけ
)
の
肴
(
さかな
)
にすりや
大変
(
たいへん
)
美味
(
うま
)
いぞ』
177
ピー州
『それなら
開
(
あ
)
けてやらうか。
178
シヤール、
179
貴様
(
きさま
)
も
棍棒
(
こんぼう
)
を
放
(
はな
)
すな。
180
俺
(
おれ
)
も
怪
(
あや
)
しいと
見
(
み
)
たら
撲
(
なぐ
)
りつけてやるのだから』
181
と
片手
(
かたて
)
に
棒
(
ぼう
)
を
握
(
にぎ
)
り
片手
(
かたて
)
で
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
いた。
182
女
(
をんな
)
は
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねたやうに
細
(
ほそ
)
く
開
(
ひら
)
いた
所
(
ところ
)
から
転
(
こ
)
けるが
如
(
ごと
)
く
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだ。
183
女
(
をんな
)
の
白
(
しろ
)
い
顔
(
かほ
)
、
184
美
(
うつく
)
しき
衣
(
きぬ
)
の
色
(
いろ
)
は、
185
折
(
をり
)
から
昇
(
のぼ
)
る
月
(
つき
)
に
輝
(
かがや
)
いて
恰
(
あだか
)
も
天女
(
てんによ
)
の
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た。
186
二人
(
ふたり
)
は
此奴
(
こいつ
)
テツキリ
化物
(
ばけもの
)
と、
187
双方
(
さうはう
)
より
棍棒
(
こんぼう
)
をもつて
打
(
う
)
つてかかるを、
188
女
(
をんな
)
も
しれもの
引
(
ひ
)
き
外
(
はづ
)
し、
189
小股
(
こまた
)
を
掬
(
すく
)
つて
大地
(
だいち
)
にドツと
二人
(
ふたり
)
を
投
(
な
)
げつけ、
190
平然
(
へいぜん
)
として
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
き、
191
女(セーリス姫)
『ホヽヽヽヽ
危険
(
あぶな
)
い
事
(
こと
)
』
192
と
云
(
い
)
ひながら、
193
スタスタと
奥
(
おく
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く。
194
二人
(
ふたり
)
は
女
(
をんな
)
の
強力
(
がうりき
)
に
投
(
な
)
げつけられ
胆
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
して
声
(
こゑ
)
を
震
(
ふる
)
はせ、
195
ピー州
『オイ、
196
シヤールよ』
197
シャール
『オイ、
198
ピー………よ』
199
ピー州
『
薩張
(
さつぱり
)
だなア、
200
シヤール』
201
シャール
『ウン
薩張
(
さつぱり
)
だ。
202
これだから
門番
(
もんばん
)
は
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬと
云
(
い
)
ふのだ。
203
キツト
明日
(
あす
)
は
免職
(
めんしよく
)
だよ。
204
門番
(
もんばん
)
もかうなつては
面色
(
めんしよく
)
無
(
な
)
しだから
免職
(
めんしよく
)
されても
仕方
(
しかた
)
がないわ。
205
アヽ
大変
(
たいへん
)
に
大腿骨
(
だいたいこつ
)
を
打
(
う
)
つたと
見
(
み
)
えて、
206
チヨツくらチヨツとには
動
(
うご
)
けないわ。
207
ピー、
208
貴様
(
きさま
)
はどうだい』
209
ピー州
『
俺
(
おれ
)
だつて
矢張
(
やつぱり
)
大地
(
だいち
)
に
投
(
な
)
げ
付
(
つ
)
けられたのだもの、
210
大抵
(
たいてい
)
定
(
きま
)
つたものだよ』
211
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも
四辺
(
あたり
)
に
響
(
ひび
)
く
振鈴
(
しんれい
)
の
声
(
こゑ
)
、
212
二人
『ヤアヤア
有難
(
ありがた
)
い、
213
これから
暫
(
しばら
)
く
俺
(
おれ
)
の
天下
(
てんか
)
だ』
214
と
二人
(
ふたり
)
は
四這
(
よつばひ
)
になつて
門番
(
もんばん
)
部屋
(
べや
)
に
這込
(
はひこ
)
み、
215
足腰
(
あしこし
)
の
痛
(
いた
)
さを
耐
(
こら
)
へながら
寝
(
しん
)
につくのであつた。
216
ベリス
姫
(
ひめ
)
は
夫
(
をつと
)
に
相談
(
さうだん
)
の
場所
(
ばしよ
)
から
退去
(
たいきよ
)
を
命
(
めい
)
ぜられ、
217
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
で「
水臭
(
みづくさ
)
い
夫
(
をつと
)
だ、
218
秘密
(
ひみつ
)
が
洩
(
も
)
れると
云
(
い
)
つたつて
一生
(
いつしやう
)
連
(
つ
)
れ
添
(
そ
)
ふ
女房
(
にようばう
)
に
云
(
い
)
はれぬ
秘密
(
ひみつ
)
がどこにあるものか。
219
キツト
自分
(
じぶん
)
に
隠
(
かく
)
して
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
をどこかに
囲
(
かこ
)
つて
居
(
を
)
るのだらう。
220
それでなくては
女房
(
にようばう
)
が
傍
(
そば
)
に
居
(
を
)
られぬ
筈
(
はず
)
がない。
221
レーブ、
222
カルの
両人
(
りやうにん
)
はきつとナイスを
取
(
と
)
りもち、
223
終
(
しまひ
)
の
果
(
はて
)
には
此
(
この
)
ベリスを
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
し
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
二
(
に
)
の
舞
(
まひ
)
をさするのかも
知
(
し
)
れない。
224
エヽ
気分
(
きぶん
)
の
悪
(
わる
)
い。
225
男
(
をとこ
)
と
云
(
い
)
ふものは
油断
(
ゆだん
)
のならぬものだ。
226
斯
(
か
)
うなつて
来
(
く
)
ると
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
厭
(
いや
)
になつて
来
(
き
)
た」と
呟
(
つぶや
)
きながら
睡
(
ねむ
)
りもならず
玄関口
(
げんくわんぐち
)
にヒヨロリ ヒヨロリとやつて
来
(
き
)
た。
227
玄関口
(
げんくわんぐち
)
には
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
が
月
(
つき
)
に
照
(
て
)
らされて
細
(
ほそ
)
き
涼
(
すず
)
しき
声
(
こゑ
)
にて、
228
女(セーリス姫)
『もしもし、
229
テームス
様
(
さま
)
に
至急
(
しきふ
)
の
用事
(
ようじ
)
が
厶
(
ござ
)
いますから、
230
一寸
(
ちよつと
)
取
(
と
)
り
次
(
つ
)
いで
下
(
くだ
)
さいませ』
231
と
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
232
ベリス
姫
(
ひめ
)
は
むつ
として、
233
ベリス姫
『どこの
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
234
夜夜中
(
よるよなか
)
に
大
(
だい
)
それた
男
(
をとこ
)
の
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
んで
かい
出
(
だ
)
しに
来
(
く
)
るものが
何処
(
どこ
)
にあるかえ。
235
テームスにはベリスと
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
家内
(
かない
)
が
厶
(
ござ
)
りますぞや。
236
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
に
夫
(
をつと
)
の
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
んで
貰
(
もら
)
ふ
必要
(
ひつえう
)
はありませぬ、
237
とつと
と
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
238
女(セーリス姫)
『
貴女
(
あなた
)
が、
239
ベリス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか。
240
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
でお
目出度
(
めでた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
241
テームス
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
在宅
(
ざいたく
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
242
ベリス姫
『ハイ、
243
居
(
を
)
るか
居
(
を
)
らぬか
早速
(
さつそく
)
お
答
(
こた
)
へは
出来
(
でき
)
ませぬわい。
244
貴女
(
あなた
)
もテームスと
永
(
なが
)
らくの
御
(
ご
)
関係
(
くわんけい
)
、
245
私
(
わたし
)
の
死
(
し
)
ぬのを
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
られましたらうが、
246
憎
(
にく
)
まれ
子
(
ご
)
世
(
よ
)
に
覇張
(
はば
)
るとか……これこの
通
(
とほ
)
りピチピチと
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
も
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
も
生
(
い
)
きるやうな
此
(
この
)
体
(
からだ
)
、
247
あまり
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
で
貴女
(
あなた
)
の
身
(
み
)
に
取
(
と
)
つて
余
(
あま
)
りお
目出度
(
めでた
)
うは
厶
(
ござ
)
いますまい』
248
女(セーリス姫)
『
一寸
(
ちよつと
)
急
(
きふ
)
に
申
(
まを
)
しあげ
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いまして
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
いますから、
249
お
疑
(
うたが
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばさずに、
250
どうぞ
奥
(
おく
)
へお
取
(
と
)
り
次
(
つぎ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
251
ベリス姫
『オホヽヽヽ、
252
何
(
なん
)
とまあ
家
(
うち
)
の
旦那
(
だんな
)
をチヨロまかすだけの
腕前
(
うでまへ
)
をもつて
居
(
を
)
られると
見
(
み
)
え、
253
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますわい。
254
此
(
この
)
ベリス
姫
(
ひめ
)
はそんな
馬鹿
(
ばか
)
ではありませぬ。
255
用
(
よう
)
があるなら
昼
(
ひる
)
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
256
今頃
(
いまごろ
)
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るものにどうで
碌
(
ろく
)
なものはない。
257
断
(
だん
)
じて
取次
(
とりつぎ
)
は
致
(
いた
)
しませぬ。
258
いつ
迄
(
まで
)
なと
其処
(
そこ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
らつしやい。
259
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
様
(
さま
)
、
260
アバよ』
261
と
頤
(
あご
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つしやくつて
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
をかくした。
262
此
(
この
)
女
(
をんな
)
は
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
クーリンスの
娘
(
むすめ
)
セーリス
姫
(
ひめ
)
である。
263
ユーフテスの
口
(
くち
)
より
聞
(
き
)
いた
一切
(
いつさい
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
今夜
(
こんや
)
の
中
(
うち
)
にテームスに
知
(
し
)
らせ、
264
其
(
その
)
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
と
)
りかからせむ
為
(
ため
)
に
人目
(
ひとめ
)
を
忍
(
しの
)
んでソツとやつて
来
(
き
)
たのである。
265
ベリス
姫
(
ひめ
)
は
面
(
つら
)
を
膨
(
ふく
)
らし
畳触
(
たたみざは
)
り
荒々
(
あらあら
)
しくテームスの
部屋
(
へや
)
に
駆
(
か
)
け
込
(
こ
)
み、
266
レーブ、
267
カルの
両人
(
りやうにん
)
をカツと
睨
(
ね
)
め
付
(
つ
)
け、
268
声
(
こゑ
)
を
震
(
ふる
)
はせ
地団駄
(
ぢだんだ
)
を
踏
(
ふ
)
みながら、
269
ベリス姫
『こりや、
270
レーブ、
271
カルの
悪人
(
あくにん
)
共
(
ども
)
、
272
ようまア
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
を
煽
(
おだ
)
てあげ
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
を
世話
(
せわ
)
致
(
いた
)
したな。
273
家
(
いへ
)
を
乱
(
みだ
)
す
大悪人
(
だいあくにん
)
、
274
了簡
(
れうけん
)
致
(
いた
)
さぬぞや。
275
これ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
276
私
(
わたし
)
を
今迄
(
いままで
)
よくお
騙
(
だま
)
しなさいました。
277
貴方
(
あなた
)
のお
腕前
(
うでまへ
)
には
此
(
この
)
ベリスも
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
278
何
(
なに
)
も
男
(
をとこ
)
の
御
(
ご
)
器量
(
きりやう
)
でなさる
事
(
こと
)
だもの、
279
私
(
わたし
)
に
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
しをせずに、
280
何故
(
なぜ
)
公然
(
こうぜん
)
と
女
(
をんな
)
を
引
(
ひ
)
き
入
(
い
)
れ
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
のやうに
私
(
わたし
)
を
放逐
(
はうちく
)
なさらぬのか、
281
余
(
あま
)
り
遣方
(
やりかた
)
が
姑息
(
こそく
)
ぢやありませぬか。
282
エヽ
残念
(
ざんねん
)
や
口惜
(
くや
)
しやなア』
283
と
其
(
その
)
辺
(
へん
)
にあつた
小道具
(
こだうぐ
)
を
狂気
(
きやうき
)
の
如
(
ごと
)
く
投
(
な
)
げつけ
狂
(
くる
)
ひ
廻
(
まは
)
る。
284
レーブ、
285
カルの
両人
(
りやうにん
)
は
合点
(
がてん
)
往
(
ゆ
)
かず、
286
唖然
(
あぜん
)
としてベリス
姫
(
ひめ
)
の
乱暴
(
らんばう
)
を
打
(
う
)
ち
見守
(
みまも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
287
テームスは
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし、
288
テームス
『こりやベリス
姫
(
ひめ
)
、
289
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
狂気
(
きやうき
)
致
(
いた
)
したか。
290
このテームスに
女
(
をんな
)
があるとは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
事
(
こと
)
、
291
何
(
なに
)
を
証拠
(
しようこ
)
に
左様
(
さやう
)
なことを
申
(
まを
)
すか。
292
証拠
(
しようこ
)
なくして
大切
(
たいせつ
)
なお
客様
(
きやくさま
)
の
前
(
まへ
)
で
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すと、
293
第一
(
だいいち
)
夫
(
をつと
)
の
名折
(
なを
)
れ、
294
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
に
傷
(
きず
)
がつく。
295
サア
返答
(
へんたふ
)
を
致
(
いた
)
せ』
296
ベリス
姫
(
ひめ
)
は
恨
(
うら
)
めし
気
(
げ
)
に
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひながら、
297
ベリス姫
『オホヽヽヽ
何
(
なん
)
とまア
白々
(
しらじら
)
しい
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますわい。
298
証拠
(
しようこ
)
がなくて
何
(
なに
)
そんな
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しませうぞ。
299
貴方
(
あなた
)
の
名誉
(
めいよ
)
を
思
(
おも
)
ひ、
300
教
(
をしへ
)
を
大切
(
たいせつ
)
だと
思
(
おも
)
へばこそ
私
(
わたし
)
が
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
むのぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
301
よう
此処
(
ここ
)
の
所
(
ところ
)
を
聞分
(
ききわ
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
302
貴方
(
あなた
)
の
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ねば、
303
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
で
自殺
(
じさつ
)
致
(
いた
)
します。
304
何卒
(
どうぞ
)
それを
見
(
み
)
て
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
305
と
早
(
はや
)
くも
懐剣
(
くわいけん
)
抜
(
ぬ
)
き
放
(
はな
)
ち
喉
(
のど
)
に
突
(
つ
)
き
立
(
た
)
てむとするを、
306
レーブは
慌
(
あわ
)
てて
其
(
その
)
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り
短刀
(
たんたう
)
を
引
(
ひ
)
つたくり、
307
レーブ
『コレコレ
奥様
(
おくさま
)
、
308
誤解
(
ごかい
)
なさつては
困
(
こま
)
りますよ。
309
此方
(
こなた
)
の
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
限
(
かぎ
)
つてそんな
事
(
こと
)
をなさる
気遣
(
きづか
)
ひはありませぬ。
310
そりや
何
(
なに
)
かの
間違
(
まちが
)
ひでせう。
311
キツト
私
(
わたし
)
が
保証
(
ほしよう
)
致
(
いた
)
しますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
312
ベリスは
冷笑
(
れいせう
)
を
浮
(
うか
)
べながら、
313
ベリス姫
『オホヽヽヽ
措
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さいませ。
314
そんな
巧妙
(
かうめう
)
な
辞令
(
じれい
)
を
百万遍
(
ひやくまんべん
)
お
並
(
なら
)
べなさつても、
315
そんな
事
(
こと
)
に
胡麻化
(
ごまか
)
されるやうなベリスではありませぬ。
316
よい
加減
(
かげん
)
に
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしておきなさい。
317
レーブとカルが、
318
家
(
うち
)
のテームスと
腹
(
はら
)
を
合
(
あは
)
せたる
同
(
おな
)
じ
穴
(
あな
)
の
貉
(
むじな
)
でせう。
319
どこを
押
(
おさ
)
へたら、
320
そんな
素々
(
しらじら
)
しい
事
(
こと
)
がよく
言
(
い
)
はれるものですかなア。
321
オホヽヽヽ』
322
テームス、
323
レーブ、
324
カルの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
一向
(
いつかう
)
合点
(
がてん
)
往
(
ゆ
)
かず、
325
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
んで
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
326
其処
(
そこ
)
へ
監督
(
かんとく
)
のエムが、
327
セーリス
姫
(
ひめ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
恭
(
うやうや
)
しく
両手
(
りやうて
)
をついて、
328
エム
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
329
只今
(
ただいま
)
、
330
左守
(
さもり
)
の
司様
(
かみさま
)
の
御
(
おん
)
息女
(
そくぢよ
)
、
331
セーリス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が、
332
至急
(
しきふ
)
の
御用
(
ごよう
)
があつて、
333
夜中
(
やちう
)
にも
拘
(
かかは
)
らず
何
(
なに
)
か
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
たと
見
(
み
)
えてお
越
(
こ
)
しになりましたから、
334
此処迄
(
ここまで
)
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
しました』
335
テームスはセーリス
姫
(
ひめ
)
の
来訪
(
らいほう
)
と
聞
(
き
)
き、
336
ハツと
驚
(
おどろ
)
き
叮嚀
(
ていねい
)
に
首
(
くび
)
を
畳
(
たたみ
)
に
擦
(
す
)
り
付
(
つ
)
けながら、
337
テームス
『これはこれはセーリス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
338
よくまア
夜中
(
やちう
)
にも
拘
(
かかは
)
らず
此
(
この
)
破家
(
あばらや
)
をお
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいました。
339
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
御用
(
ごよう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
340
セーリス姫
『ハイ、
341
今晩
(
こんばん
)
是非
(
ぜひ
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げねばならぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ましたので、
342
夜中
(
やちう
)
お
驚
(
おどろ
)
かせ
申
(
まを
)
しまして
誠
(
まこと
)
にすみませぬ』
343
ベリス
姫
(
ひめ
)
は、
344
セーリス
姫
(
ひめ
)
と
聞
(
き
)
きて
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
打
(
う
)
ち
驚
(
おどろ
)
き、
345
鯱鉾立
(
しやちほこだち
)
になつて
頭
(
あたま
)
をペコペコ
打
(
う
)
ちつけながら、
346
ベリス姫
『これはこれは
尊
(
たふと
)
き
尊
(
たふと
)
きセーリス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
347
存
(
ぞん
)
ぜぬ
事
(
こと
)
とて
重々
(
ぢゆうぢゆう
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
、
348
どうぞお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
349
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
何気
(
なにげ
)
なき
体
(
てい
)
にて、
350
セーリス姫
『オホヽヽヽ、
351
誠
(
まこと
)
に
夜中
(
やちう
)
に
参
(
まゐ
)
りまして
強
(
きつ
)
い
誤解
(
ごかい
)
をさせました。
352
定
(
さだ
)
めしテームス
様
(
さま
)
の
情婦
(
いろ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たと
誤解
(
ごかい
)
をおさせしたと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
ました。
353
あの
時
(
とき
)
お
名乗
(
なのり
)
をすればよかつたのですが、
354
天
(
てん
)
に
口
(
くち
)
、
355
壁
(
かべ
)
に
耳
(
みみ
)
と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますから
申上
(
まをしあ
)
げませぬでした。
356
どうぞテームス
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して、
357
怪
(
あや
)
しき
関係
(
くわんけい
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
る
女
(
をんな
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬから、
358
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
359
ベリス
姫
(
ひめ
)
は、
360
ベリス姫
『ハイハイ』
361
と
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
り
頭
(
あたま
)
も
得上
(
えあ
)
げず、
362
顔
(
かほ
)
を
真紅
(
まつか
)
にして
畏縮
(
ゐしゆく
)
してゐる。
363
テームス『ベリス
姫
(
ひめ
)
、
364
毎度
(
まいど
)
云
(
い
)
つてお
前
(
まへ
)
の
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ますか
知
(
し
)
らぬが、
365
一寸
(
ちよつと
)
秘密
(
ひみつ
)
の
御用
(
ごよう
)
があるさうだから
席
(
せき
)
を
外
(
はづ
)
して
居
(
ゐ
)
て
呉
(
く
)
れ』
366
ベリスは、
367
ベリス姫
『ヘー』
368
と
長返事
(
ながへんじ
)
しながら、
369
少
(
すこ
)
しく
不安心
(
ふあんしん
)
の
面持
(
おももち
)
にて、
370
不承
(
ふしよう
)
々々
(
ぶしよう
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
もせず
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
371
テームスはセーリス
姫
(
ひめ
)
に
対
(
たい
)
して
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でならず
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めながら、
372
テームス
『セーリス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
373
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
りの
困
(
こま
)
つた
女房
(
にようばう
)
ですから、
374
どうぞお
気
(
き
)
に
触
(
さ
)
へられないやうに
願
(
ねが
)
ひます』
375
セーリス姫
『そんなお
心遣
(
こころづか
)
ひは
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ。
376
夫
(
をつと
)
のある
方
(
かた
)
に
対
(
たい
)
し、
377
若
(
わか
)
い
女
(
をんな
)
が
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
く
)
るのが
元来
(
ぐわんらい
)
間違
(
まちが
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
378
併
(
しか
)
しながら、
379
そんなことを
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
られないのでお
訪
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しました。
380
時
(
とき
)
にこのお
二人
(
ふたり
)
の
方
(
かた
)
は
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
られても
差支
(
さしつか
)
へ
厶
(
ござ
)
いますまいかなア。
381
何
(
なん
)
だか
申上
(
まをしあ
)
げ
悪
(
にく
)
うて
困
(
こま
)
ります』
382
レーブ『イヤ、
383
私
(
わたし
)
も
長
(
なが
)
らく
座談
(
ざだん
)
に
時
(
とき
)
を
費
(
つひ
)
やし
尻
(
しり
)
も
痛
(
いた
)
くなりましたから
一寸
(
ちよつと
)
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
て
月
(
つき
)
でも
賞
(
ほ
)
めて
来
(
き
)
ませう。
384
サア、
385
カルさま、
386
暫
(
しばら
)
く
屋外
(
をくぐわい
)
の
空気
(
くうき
)
を
吸
(
す
)
うて
来
(
こ
)
ようぢやありませぬか』
387
と
云
(
い
)
ひながら
早
(
はや
)
くも
立
(
た
)
つて
外
(
そと
)
に
出
(
い
)
でて
往
(
ゆ
)
く。
388
カルも
従
(
したが
)
つて
屋外
(
をくぐわい
)
に
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はした。
389
無心
(
むしん
)
の
月
(
つき
)
は、
390
皎々
(
かうかう
)
として
遺憾
(
ゐかん
)
なく
万物
(
ばんぶつ
)
を
照臨
(
せうりん
)
してゐる。
391
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
にはテームスとセーリス
姫
(
ひめ
)
との
間
(
あひだ
)
に
重要
(
ぢうえう
)
なる
問答
(
もんだふ
)
が
交換
(
かうくわん
)
された
様子
(
やうす
)
である。
392
(
大正一一・一一・一〇
旧九・二二
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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