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霊界物語
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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
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海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
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第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
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第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
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第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
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第40巻(卯の巻)
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第61巻(子の巻)
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第69巻(申の巻)
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第71巻(戌の巻)
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特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
01 入那の野辺
〔1105〕
02 入那城
〔1106〕
03 偽恋
〔1107〕
04 右守館
〔1108〕
05 急告
〔1109〕
06 誤解
〔1110〕
07 忍術使
〔1111〕
第2篇 神機赫灼
08 無理往生
〔1112〕
09 蓮の川辺
〔1113〕
10 狼の岩窟
〔1114〕
11 麓の邂逅
〔1115〕
12 都入り
〔1116〕
第3篇 北光神助
13 夜の駒
〔1117〕
14 慈訓
〔1118〕
15 難問題
〔1119〕
16 三番叟
〔1120〕
第4篇 神出鬼没
17 宵企み
〔1121〕
18 替へ玉
〔1122〕
19 当て飲み
〔1123〕
20 誘惑
〔1124〕
21 長舌
〔1125〕
余白歌
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> 第2篇 神機赫灼 > 第8章 無理往生
<<< 忍術使
(B)
(N)
蓮の川辺 >>>
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第八章
無理往生
(
むりわうじやう
)
〔一一一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第2篇 神機赫灼
よみ:
しんきかくしゃく
章:
第8章 無理往生
よみ:
むりおうじょう
通し章番号:
1112
口述日:
1922(大正11)年11月11日(旧09月23日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
中央印度のデカタン高原の南方に、テルマン国という大国があった。テルマンの都に富豪の聞こえたかい毘舎族のシャールという男があった。シャールは富力にまかせて妾を買い込み、本妻のヤスダラ姫には至極冷淡な扱いをしていた。
ヤスダラ姫はイルナ国の刹帝利の生まれで、セーラン王の許嫁であったが、右守の策略でシャールに嫁がせられていた。
ヤスダラ姫の別宅には二人の侍女と、取り締まりとしてリーダーという若い男が仕えていた。リーダーは万事抜け目なく立ち回る利口な男で、ヤスダラ姫も心をゆるし、時おり琴などを弾じさせて日々の憂鬱を慰めていた。
ある日、普段は寄り付かないシャールが突然、ヤスダラ姫の別宅を訪ねてきた。シャールは、イルナ国右守の妻・テーナ姫を伴ってやってきて、ヤスダラ姫がイルナ国王に恋文を送り不貞の罪を犯したと身に覚えのないことで姫を責め立てるのであった。
右守は、イルナ国からセーラン王とクーリンスを放逐するにあたって、クーリンスの娘にして王の従妹であるヤスダラ姫が障害とならないよう、シャールに不貞の罪を讒言し、ヤスダラ姫を幽閉させようという計略であった。
シャールは、大黒主の信任が厚いイルナ国右守の権勢を恐れており、もともと不仲のヤスダラ姫を邸内の牢獄に幽閉してしまった。
風雨雷電の激しい夜、忠義のリーダーは堅牢な牢獄を打ち破り、ヤスダラ姫を救い出し闇にまぎれてシャールの館を脱出した。二人は夜を日についでイルナ国に逃げ帰ることになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm4108
愛善世界社版:
113頁
八幡書店版:
第7輯 572頁
修補版:
校定版:
117頁
普及版:
56頁
初版:
ページ備考:
001
中央印度
(
ちうあういんど
)
のデカタン
高原
(
かうげん
)
の
南方
(
なんぱう
)
に
当
(
あた
)
るテルマン
国
(
ごく
)
と
云
(
い
)
ふ、
002
住民
(
ぢうみん
)
殆
(
ほとん
)
ど
十万
(
じふまん
)
に
近
(
ちか
)
き、
003
印度
(
いんど
)
では
相当
(
さうたう
)
な
大国
(
たいこく
)
があつた。
004
テルマンの
都
(
みやこ
)
に
富豪
(
ふうがう
)
の
聞
(
きこ
)
え
高
(
たか
)
き
毘舎族
(
びしやぞく
)
にシヤールと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
があつた。
005
其
(
その
)
邸宅
(
ていたく
)
は
都
(
みやこ
)
の
東方
(
とうはう
)
最
(
もつと
)
も
風景
(
ふうけい
)
佳
(
よ
)
き
地
(
ち
)
を
選
(
えら
)
み、
006
邸
(
やしき
)
の
周囲
(
しうゐ
)
一里
(
いちり
)
四方
(
しはう
)
にあまり、
007
深
(
ふか
)
き
広
(
ひろ
)
き
濠
(
ほり
)
を
囲
(
めぐ
)
らし、
008
其
(
その
)
勢
(
いきほ
)
ひ
王者
(
わうじや
)
を
凌
(
しの
)
ぐばかりの
豪奢
(
がうしや
)
振
(
ぶ
)
りを
発揮
(
はつき
)
してゐる。
009
富力
(
ふりよく
)
に
任
(
まか
)
せて
数多
(
あまた
)
の
美人
(
びじん
)
を
買
(
か
)
ひ
求
(
もと
)
め
来
(
きた
)
り
之
(
これ
)
を
妾
(
てかけ
)
となし、
010
本妻
(
ほんさい
)
のヤスダラ
姫
(
ひめ
)
に
対
(
たい
)
しては
極
(
きは
)
めて
冷酷
(
れいこく
)
な
取扱
(
とりあつかひ
)
をしてゐた。
011
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
のセーラン
王
(
わう
)
が
従妹
(
いとこ
)
に
当
(
あた
)
る
刹帝利
(
せつていり
)
の
生
(
うま
)
れで、
012
セーラン
王
(
わう
)
の
許嫁
(
いひなづけ
)
であつた
事
(
こと
)
は
前節
(
ぜんせつ
)
已
(
すで
)
に
述
(
の
)
べた
通
(
とほ
)
りである。
013
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
はシヤールの
広
(
ひろ
)
き
邸
(
やしき
)
の
中
(
なか
)
に
可
(
か
)
なり
美
(
うる
)
はしき
家宅
(
かたく
)
を
与
(
あた
)
へられ、
014
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
と
共
(
とも
)
に
面白
(
おもしろ
)
からぬ
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
りつつあつた。
015
ヤスダラ
姫館
(
ひめやかた
)
の
取締
(
とりしまり
)
にリーダーと
云
(
い
)
ふ
年若
(
としわか
)
き
綺麗
(
きれい
)
な
万事
(
ばんじ
)
抜目
(
ぬけめ
)
なく
立廻
(
たちまは
)
る
利口
(
りこう
)
な
男
(
をとこ
)
があつた。
016
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
此
(
この
)
リーダーを
此上
(
こよ
)
なきものと
愛
(
あい
)
し
時々
(
ときどき
)
琴
(
こと
)
等
(
など
)
を
弾
(
だん
)
じさせ
其
(
その
)
日
(
ひ
)
の
鬱
(
うつ
)
を
慰
(
なぐさ
)
めてゐた。
017
或
(
ある
)
時
(
とき
)
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
一間
(
ひとま
)
に
閉
(
と
)
ぢ
籠
(
こも
)
り、
018
一絃琴
(
いちげんきん
)
を
弾
(
だん
)
じながら
述懐
(
じゆつくわい
)
を
歌
(
うた
)
うてゐる。
019
『
水
(
みづ
)
の
流
(
なが
)
れと
人
(
ひと
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
020
定
(
さだ
)
めなき
世
(
よ
)
と
云
(
い
)
ひながら
021
夢
(
ゆめ
)
の
浮世
(
うきよ
)
に
生
(
うま
)
れ
来
(
き
)
て
022
妾
(
わらは
)
は
尊
(
たふと
)
き
刹帝利
(
せつていり
)
023
セーラン
王
(
わう
)
の
従妹
(
いとこ
)
と
生
(
うま
)
れ
024
年端
(
としは
)
も
行
(
ゆ
)
かぬ
幼
(
をさな
)
き
頃
(
ころ
)
より
025
親
(
おや
)
と
親
(
おや
)
との
許嫁
(
いひなづけ
)
026
吾
(
わが
)
行末
(
ゆくすゑ
)
はイルナの
国
(
くに
)
027
治統
(
うしは
)
ぎ
給
(
たま
)
ふセーラン
王
(
わう
)
の
028
后
(
きさき
)
と
仕
(
つか
)
へまつる
身
(
み
)
の
029
今
(
いま
)
は
果敢
(
はか
)
なきヤスダラ
姫
(
ひめ
)
030
遠
(
とほ
)
き
山野
(
さんや
)
を
隔
(
へだ
)
てたる
031
テルマン
国
(
ごく
)
の
毘舎
(
びしや
)
と
在
(
ま
)
す
032
シヤールの
妻
(
つま
)
と
下
(
おろ
)
されて
033
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
現世
(
うつしよ
)
を
034
はかなみ
暮
(
くら
)
す
悲
(
かな
)
しさよ
035
空
(
そら
)
ゆく
雲
(
くも
)
を
眺
(
なが
)
むれば
036
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
流
(
なが
)
れ
行
(
ゆ
)
く
037
御空
(
みそら
)
をかける
鳥
(
とり
)
見
(
み
)
れば
038
之
(
これ
)
また
西
(
にし
)
へ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
039
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
や
飛
(
た
)
つ
鳥
(
とり
)
の
040
人
(
ひと
)
の
哀
(
あは
)
れを
知
(
し
)
るならば
041
イルナの
国
(
くに
)
に
在
(
あ
)
れませる
042
セーラン
王
(
わう
)
の
御許
(
おんもと
)
へ
043
切
(
せつ
)
なき
妾
(
わらは
)
が
思
(
おも
)
ひねを
044
完全
(
うまら
)
に
詳細
(
つばら
)
に
訪
(
おとづ
)
れよ
045
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
吾
(
わが
)
恋
(
こ
)
ふる
046
聖
(
ひじり
)
の
王
(
きみ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
047
案
(
あん
)
じ
過
(
すご
)
して
夜
(
よ
)
も
昼
(
ひる
)
も
048
心
(
こころ
)
痛
(
いた
)
むるヤスダラ
姫
(
ひめ
)
049
思
(
おも
)
ひ
廻
(
まは
)
せば
吾
(
わが
)
身
(
み
)
ほど
050
因果
(
いんぐわ
)
なものが
世
(
よ
)
にあらうか
051
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
にて
刹帝利
(
せつていり
)
の
052
尊
(
たふと
)
き
家
(
いへ
)
に
生
(
うま
)
れあひ
053
貴勝
(
きしよう
)
の
地位
(
ちゐ
)
にありながら
054
今
(
いま
)
は
卑
(
いや
)
しき
毘舎
(
びしや
)
の
妻
(
つま
)
055
神
(
かみ
)
も
仏
(
ほとけ
)
も
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
056
お
在
(
は
)
しまさずや、あゝ
悲
(
かな
)
し
057
情
(
つれ
)
なの
娑婆
(
しやば
)
に
永
(
なが
)
らへて
058
胸
(
むね
)
の
炎
(
ほのほ
)
を
焦
(
こが
)
しつつ
059
消
(
け
)
す
術
(
すべ
)
もなき
苦
(
くる
)
しさよ
060
シヤールの
夫
(
をつと
)
は
朝夕
(
あさゆふ
)
に
061
富
(
とみ
)
の
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
せつつ
062
毘舎
(
びしや
)
の
娘
(
むすめ
)
や
首陀
(
しゆだ
)
の
子
(
こ
)
を
063
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
と
狩
(
か
)
り
集
(
あつ
)
め
064
吾物顔
(
わがものがほ
)
に
女子
(
をみなご
)
を
065
弄
(
もてあそ
)
びつつ
妹
(
いも
)
と
背
(
せ
)
の
066
尊
(
たふと
)
き
道
(
みち
)
を
打
(
う
)
ち
忘
(
わす
)
れ
067
妾
(
わらは
)
に
対
(
たい
)
して
一度
(
ひとたび
)
も
068
情
(
なさけ
)
をかけし
事
(
こと
)
もなし
069
バラモン
教
(
けう
)
を
守
(
まも
)
ります
070
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じさいてん
)
071
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
神様
(
かみさま
)
よ
072
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
を
073
憐
(
あは
)
れみ
給
(
たま
)
ひて
一時
(
ひととき
)
も
074
早
(
はや
)
く
恋
(
こひ
)
しきセーラン
王
(
わう
)
に
075
一目
(
ひとめ
)
なりとも
会
(
あ
)
はせかし
076
仮令
(
たとへ
)
吾
(
わが
)
身
(
み
)
は
朽
(
く
)
つるとも
077
神
(
かみ
)
より
受
(
う
)
けし
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
078
王
(
きみ
)
の
御側
(
みそば
)
に
通
(
かよ
)
ひつつ
079
朝夕
(
あさゆふ
)
御身
(
おんみ
)
を
守
(
まも
)
るべし
080
テルマン
国
(
ごく
)
は
広
(
ひろ
)
くとも
081
シヤールの
家
(
いへ
)
の
瑞垣
(
みづがき
)
は
082
山
(
やま
)
より
高
(
たか
)
く
築
(
きづ
)
くとも
083
邸
(
やしき
)
を
囲
(
めぐ
)
る
濠水
(
ほりみづ
)
は
084
何程
(
なにほど
)
深
(
ふか
)
く
広
(
ひろ
)
くとも
085
王
(
きみ
)
を
慕
(
した
)
へる
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
086
如何
(
いか
)
でか
通
(
かよ
)
はぬ
事
(
こと
)
やあらむ
087
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
088
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
089
御魂
(
みたま
)
の
清
(
きよ
)
き
人
(
ひと
)
の
来
(
き
)
て
090
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
救
(
すく
)
ひ
夜
(
よ
)
に
紛
(
まぎ
)
れ
091
父
(
ちち
)
のまします
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
に
092
送
(
おく
)
らせ
給
(
たま
)
へ
自在天
(
じさいてん
)
093
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御前
(
おんまへ
)
に
094
心
(
こころ
)
も
常
(
つね
)
に
安
(
やす
)
からぬ
095
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
が
真心
(
まごころ
)
を
096
籠
(
こ
)
めてぞ
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
097
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
098
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
り
給
(
たま
)
ひたる
099
皇大神
(
すめおほかみ
)
の
御前
(
おんまへ
)
に
100
慎
(
つつし
)
み
敬
(
いやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る』
101
と
淑
(
しとや
)
かに
歌
(
うた
)
つてゐる。
102
かかる
所
(
ところ
)
へ
邸
(
やしき
)
の
内外
(
ないぐわい
)
の
掃除
(
さうぢ
)
を
済
(
す
)
ませ
身禊
(
みそぎ
)
をなし、
103
正服
(
せいふく
)
と
着換
(
きか
)
へて
姫
(
ひめ
)
の
室
(
しつ
)
を
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
たのは
忠僕
(
ちうぼく
)
のリーダーである。
104
姫
(
ひめ
)
は
琴
(
こと
)
の
手
(
て
)
をやめてニツコと
笑
(
わら
)
ひ、
105
『あゝ
其方
(
そなた
)
はリーダー
殿
(
どの
)
、
106
大変
(
たいへん
)
早
(
はや
)
いぢやありませぬか。
107
大層
(
たいそう
)
お
掃除
(
さうぢ
)
が……
今日
(
けふ
)
は
又
(
また
)
特別
(
とくべつ
)
によく
出来
(
でき
)
たやうですな』
108
『ハイ、
109
今日
(
けふ
)
は
旦那様
(
だんなさま
)
から
御命令
(
ごめいれい
)
が
厶
(
ござ
)
りましたので、
110
早朝
(
さうてう
)
より
室内
(
しつない
)
の
掃除
(
さうぢ
)
を
致
(
いた
)
し、
111
門
(
もん
)
の
隅々
(
すみずみ
)
まで
竹箒
(
たけばうき
)
がバイタになる
所
(
ところ
)
まで
掃
(
は
)
きちぎつて
置
(
お
)
きました。
112
大変
(
たいへん
)
美
(
うつく
)
しくなつたでせう。
113
破
(
やぶ
)
れ
草鞋
(
わらぢ
)
の
様
(
やう
)
に
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
まで
はき
ちぎつて
置
(
お
)
きました。
114
アハヽヽヽ』
115
『ホヽヽヽヽ、
116
掃
(
は
)
きちぎつて
置
(
お
)
いたのは
結構
(
けつこう
)
だが、
117
今日
(
けふ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
特別
(
とくべつ
)
の
御命令
(
ごめいれい
)
を
遊
(
あそ
)
ばすとは、
118
何
(
なに
)
かの
はき
違
(
ちが
)
ひでも
出来
(
でき
)
たのぢやありませぬか』
119
『ハイハイ
何分
(
なにぶん
)
僕
(
しもべ
)
のことで
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
御存
(
ごぞん
)
じない
位
(
くらゐ
)
ですから、
120
吾々
(
われわれ
)
にはハキハキと
何
(
なに
)
御用
(
ごよう
)
か
分
(
わか
)
りませぬ。
121
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
履物
(
はきもの
)
の
位置
(
ゐち
)
をキチンと
揃
(
そろ
)
へて
置
(
お
)
きました。
122
これで
旦那様
(
だんなさま
)
がお
見
(
み
)
えになつても、
123
家内
(
かない
)
しめて
四名
(
よめい
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
りますやうに、
124
履物
(
はきもの
)
が
玄関口
(
げんくわんぐち
)
にお
迎
(
むか
)
へを
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますわ』
125
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
少
(
すこ
)
しく
頭
(
かうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
126
『ハテナ、
127
いつもお
見
(
み
)
えになつた
事
(
こと
)
のない
旦那様
(
だんなさま
)
が
御入
(
おい
)
りなのか
知
(
し
)
らぬ。
128
どうせ
碌
(
ろく
)
なことではあるまい』
129
と
独語
(
ひとりご
)
ちつつ
心配
(
しんぱい
)
さうに
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んでゐる。
130
そこへ
二三人
(
にさんにん
)
の
供人
(
ともびと
)
を
従
(
したが
)
へ
足音
(
あしおと
)
高
(
たか
)
くやつて
来
(
き
)
たのはシヤールである。
131
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
一絃琴
(
いちげんきん
)
を
手早
(
てばや
)
くとつて
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
にキチンと
直
(
なほ
)
し、
132
襟
(
えり
)
を
正
(
ただ
)
し
満面
(
まんめん
)
に
愛嬌
(
あいけう
)
を
湛
(
たた
)
へながら、
133
言葉
(
ことば
)
優
(
やさ
)
しく、
134
『あゝ
貴方
(
あなた
)
は
旦那様
(
だんなさま
)
、
135
よくまあ
入
(
い
)
らして
下
(
くだ
)
さいました。
136
今日
(
けふ
)
は
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
御用向
(
ごようむき
)
でも
出来
(
でき
)
ましたか』
137
と
慇懃
(
いんぎん
)
に
尋
(
たづ
)
ぬればシヤールは
木訥
(
ぼくとつ
)
な
声
(
こゑ
)
で、
138
『
何
(
なに
)
、
139
別
(
べつ
)
にこれと
云
(
い
)
ふ
用
(
よう
)
はないのだが、
140
今日
(
けふ
)
はお
前
(
まへ
)
に
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
き
訊
(
ただ
)
さねばならぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たのだから、
141
其
(
その
)
積
(
つも
)
りで
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さずハツキリと
返答
(
へんたふ
)
をしてもらはねばならぬよ』
142
と
面
(
つら
)
膨
(
ふく
)
らし
不機嫌
(
ふきげん
)
の
体
(
てい
)
である。
143
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
胸
(
むね
)
を
轟
(
とどろ
)
かせながら、
144
『それは
又
(
また
)
変
(
かは
)
つた
御用向
(
ごようむき
)
、
145
何
(
なに
)
か
妾
(
わらは
)
の
一身上
(
いつしんじやう
)
に
就
(
つ
)
いて
嫌疑
(
けんぎ
)
がおありなさるのですか』
146
『あればこそ、
147
忙
(
いそが
)
しい
中
(
なか
)
を
一日
(
いちにち
)
の
暇
(
ひま
)
を
割
(
さ
)
いてお
前
(
まへ
)
の
館
(
やかた
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのだ。
148
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ろ。
149
入那
(
いるな
)
の
都
(
みやこ
)
からカールチンの
奥様
(
おくさま
)
テーナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がお
前
(
まへ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
就
(
つ
)
いてお
越
(
こ
)
しになつたのだ。
150
お
前
(
まへ
)
は
夫
(
をつと
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
び、
151
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
のセーラン
王
(
わう
)
の
御許
(
みもと
)
へ
艶書
(
えんしよ
)
を
送
(
おく
)
つたではないか』
152
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
打驚
(
うちおどろ
)
き
顔色
(
がんしよく
)
を
変
(
か
)
へて、
153
『な……
何
(
なん
)
と
仰
(
あふ
)
せられます。
154
まるで
寝耳
(
ねみみ
)
に
水
(
みづ
)
のやうなお
話
(
はなし
)
ぢや
厶
(
ござ
)
りませぬか』
155
シヤールはあげ
面
(
づら
)
をしながら
嫌
(
いや
)
らしく
笑
(
わら
)
ひ、
156
『エヘヽヽヽ
寝耳
(
ねみみ
)
に
水
(
みづ
)
とは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だ。
157
お
前
(
まへ
)
は
幼少
(
えうせう
)
より
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
の
娘
(
むすめ
)
として
深窓
(
しんそう
)
に
育
(
そだ
)
てられ、
158
純粋
(
じゆんすゐ
)
な
淑女
(
しゆくぢよ
)
だと
思
(
おも
)
つてゐたのに、
159
夫
(
をつと
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
んで
艶書
(
えんしよ
)
を
送
(
おく
)
るとは
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
不貞腐
(
ふてくさ
)
れ
女
(
をんな
)
だ、
160
見下
(
みさ
)
げ
果
(
は
)
てたる
莫蓮者
(
ばくれんもの
)
奴
(
め
)
、
161
今
(
いま
)
に
面
(
つら
)
の
皮
(
かは
)
をヒン
剥
(
む
)
いてやるから
楽
(
たの
)
しんで
待
(
ま
)
つてゐるが
宜
(
よ
)
からうぞ』
162
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
悲
(
かな
)
しさ
身
(
み
)
に
迫
(
せま
)
り、
163
声
(
こゑ
)
を
立
(
た
)
ててワツと
其
(
そ
)
の
場
(
ば
)
に
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
した。
164
シヤールは
此
(
この
)
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
冷
(
ひや
)
やかに
笑
(
わら
)
ひながら、
165
『アハヽヽヽ、
166
何
(
なん
)
とまあ、
167
劫
(
がふ
)
を
経
(
へ
)
た
古狸
(
ふるだぬき
)
だな。
168
女
(
をんな
)
の
涙
(
なみだ
)
は
城
(
しろ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
五尺
(
ごしやく
)
の
男子
(
だんし
)
を
手鞠
(
てまり
)
の
如
(
ごと
)
くに
翻弄
(
ほんろう
)
すると
聞
(
き
)
く。
169
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
シヤールは
幾百人
(
いくひやくにん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
女性
(
ぢよせい
)
に
接
(
せつ
)
し
居
(
を
)
れば、
170
女
(
をんな
)
の
慣用
(
くわんよう
)
手段
(
しゆだん
)
たる
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
や
涙
(
なみだ
)
には
決
(
けつ
)
して
驚
(
おどろ
)
かないぞ。
171
此
(
この
)
道
(
みち
)
にかけては
天下無双
(
てんかむさう
)
の
勇士
(
ゆうし
)
、
172
シヤールに
向
(
むか
)
つてはバベルの
塔
(
たふ
)
を
蝶
(
てふ
)
が
襲撃
(
しふげき
)
する
程
(
ほど
)
にも
感
(
かん
)
じないのだから、
173
そんな
古手
(
ふるて
)
な
事
(
こと
)
は
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
はうかい。
174
あた
八釜
(
やかま
)
しい』
175
『
旦那様
(
だんなさま
)
、
176
貴方
(
あなた
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
妾
(
わらは
)
をお
疑
(
うたが
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばすのですか。
177
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
には
悪人
(
あくにん
)
蔓
(
はびこ
)
り
王様
(
わうさま
)
を
廃立
(
はいりつ
)
せむと
企
(
たく
)
らむ
一派
(
いつぱ
)
と、
178
これを
助
(
たす
)
けむとする
一派
(
いつぱ
)
とが
始終
(
しじう
)
暗闘
(
あんとう
)
を
続
(
つづ
)
けてゐるさうですから、
179
大方
(
おほかた
)
反対党
(
はんたいたう
)
の
方
(
はう
)
から
何
(
なに
)
かの
策略
(
さくりやく
)
で
妾
(
わらは
)
を
犠牲
(
ぎせい
)
にすべく
中傷讒誣
(
ちうしやうざんぶ
)
の
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つたのでせう。
180
何卒
(
どうぞ
)
冷静
(
れいせい
)
に
御熟考
(
ごじゆくかう
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
181
『
何処
(
どこ
)
までも
渋太
(
しぶと
)
い
阿女
(
あまつちよ
)
奴
(
め
)
、
182
汝
(
なんぢ
)
の
弁解
(
べんかい
)
は
聞
(
き
)
く
耳
(
みみ
)
持
(
も
)
たぬ。
183
今
(
いま
)
テーナ
姫
(
ひめ
)
を
此処
(
ここ
)
へお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
し
黒白
(
こくびやく
)
を
分
(
わ
)
けて
見
(
み
)
せてやるから、
184
赤恥
(
あかはぢ
)
をかかない
様
(
やう
)
に
致
(
いた
)
したが
宜
(
よ
)
からう』
185
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
はシヤールの
暴言
(
ばうげん
)
に
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
て、
186
心
(
こころ
)
弱
(
よわ
)
くては
叶
(
かな
)
はじと
気
(
き
)
をとり
直
(
なほ
)
し、
187
眼
(
まなこ
)
を
据
(
す
)
ゑ
坐
(
すわ
)
り
直
(
なほ
)
して
襟
(
えり
)
を
正
(
ただ
)
し、
188
儼然
(
げんぜん
)
として、
189
『
妾
(
わらは
)
はいやしくも
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
のクーリンスが
娘
(
むすめ
)
、
190
左様
(
さやう
)
な
穢
(
けがら
)
はしき
事
(
こと
)
が
如何
(
どう
)
して
出来
(
でき
)
ようぞ。
191
テーナ
姫
(
ひめ
)
とやら、
192
証拠
(
しようこ
)
に
立
(
た
)
つと
申
(
まを
)
すなら、
193
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
へお
招
(
まね
)
きなさいませ。
194
屹度
(
きつと
)
妾
(
わらは
)
が
悪者
(
わるもの
)
共
(
ども
)
の
謀計
(
ぼうけい
)
を
暴露
(
ばくろ
)
し
懲
(
こら
)
しめてくれませう』
195
と
形相
(
ぎやうさう
)
物凄
(
ものすご
)
く
稍
(
やや
)
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らせて
言
(
い
)
ひきつた。
196
シヤールも
名代
(
なだい
)
の
富豪
(
ふうがう
)
、
197
テルマン
国
(
ごく
)
の
有力者
(
いうりよくしや
)
の
中
(
うち
)
に
数
(
かぞ
)
へらるる
身
(
み
)
なれども、
198
生
(
うま
)
れは
卑
(
いや
)
しき
毘舎
(
びしや
)
の
種
(
たね
)
、
199
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
の
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に
何
(
なん
)
となく
恐
(
おそ
)
れを
抱
(
いだ
)
き、
200
次第々々
(
しだいしだい
)
に
尻込
(
しりご
)
みなして
引下
(
ひきさが
)
る。
201
かかる
所
(
ところ
)
へ
二三
(
にさん
)
の
供
(
とも
)
に
送
(
おく
)
られて
肩
(
かた
)
で
風
(
かぜ
)
を
切
(
き
)
りながら、
202
絹
(
きぬ
)
ずれの
音
(
おと
)
サヤサヤと
上使
(
じやうし
)
気取
(
きど
)
りでやつて
来
(
き
)
たのは
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
カールチンの
妻
(
つま
)
のテーナ
姫
(
ひめ
)
である。
203
テーナ
姫
(
ひめ
)
は
鷹揚
(
おうやう
)
に
玄関口
(
げんくわんぐち
)
を
上
(
あが
)
り、
204
少
(
すこ
)
しくフン
反
(
ぞ
)
り
返
(
かへ
)
つて
裾
(
すそ
)
を
長
(
なが
)
く
引
(
ひ
)
きずりながら、
205
身体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
に
瑠璃
(
るり
)
、
206
しやこ
、
207
珊瑚
(
さんご
)
、
208
金
(
きん
)
、
209
銀
(
ぎん
)
、
210
瑪瑙
(
めなう
)
等
(
など
)
で
飾
(
かざ
)
り
立
(
た
)
て、
211
棚機姫
(
たなばたひめ
)
の
降臨
(
かうりん
)
か、
212
松代姫
(
まつよひめ
)
の
再来
(
さいらい
)
かと
言
(
い
)
ふやうな
満艦飾
(
まんかんしよく
)
で
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
遠慮会釈
(
ゑんりよゑしやく
)
もなく
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
213
シヤールに
打
(
う
)
ち
向
(
むか
)
ひ、
214
『シヤール
殿
(
どの
)
、
215
其方
(
そなた
)
の
第一
(
だいいち
)
夫人
(
ふじん
)
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
此方
(
こなた
)
で
厶
(
ござ
)
るかな』
216
と
鷹揚
(
おうよう
)
にヤスダラ
姫
(
ひめ
)
を
睨
(
ね
)
めつけながら
故意
(
わざ
)
とに
問
(
と
)
ひかける。
217
シヤールは
頭
(
かうべ
)
を
下
(
さ
)
げ、
218
『ハイ、
219
問題
(
もんだい
)
のヤスダラ
姫
(
ひめ
)
はこれで
厶
(
ござ
)
ります。
220
何卒
(
どうぞ
)
十分
(
じふぶん
)
にお
取調
(
とりしらべ
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
221
貴女
(
あなた
)
の
御言葉
(
おことば
)
の
通
(
とほ
)
りならば
如何
(
どう
)
しても
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ』
222
テーナ
姫
(
ひめ
)
は
皺枯
(
しわが
)
れた
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
223
さも
憎々
(
にくにく
)
しげに、
224
『
此方
(
こなた
)
が
問題
(
もんだい
)
のヤスダラ
姫
(
ひめ
)
で
厶
(
ござ
)
るかな。
225
如何
(
いか
)
にも
虫
(
むし
)
も
殺
(
ころ
)
さぬやうな
淑女面
(
しゆくぢよづら
)
をさらし、
226
大
(
だい
)
それた
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
さるるものだな。
227
外面如菩薩
(
げめんによぼさつ
)
内心如夜叉
(
ないしんによやしや
)
、
228
善
(
ぜん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
つてシヤールの
家庭
(
かてい
)
を
紊乱
(
ぶんらん
)
し、
229
次
(
つ
)
いでイルナの
国
(
くに
)
を
攪乱
(
かくらん
)
致
(
いた
)
す
金毛九尾
(
きんまうきうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
の
再来
(
さいらい
)
、
230
一日
(
いちにち
)
も
早
(
はや
)
く
妾
(
わたし
)
の
申
(
まを
)
す
通
(
とほ
)
り
堅牢
(
けんらう
)
なる
座敷牢
(
ざしきろう
)
を
造
(
つく
)
り、
231
外間
(
ぐわいかん
)
の
交通
(
かうつう
)
を
絶
(
た
)
ち
幽閉
(
いうへい
)
なさらねば、
232
カールチンの
右守様
(
うもりさま
)
に
対
(
たい
)
し
申訳
(
まをしわけ
)
が
立
(
た
)
ちますまいぞ。
233
此
(
この
)
テルマン
国
(
ごく
)
はイルナの
国
(
くに
)
の
属邦
(
ぞくほう
)
なれば、
234
当時
(
たうじ
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
信任
(
しんにん
)
厚
(
あつ
)
き
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
命令
(
めいれい
)
に
背
(
そむ
)
かむか、
235
シヤールの
家
(
いへ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
闕所
(
けつしよ
)
の
憂目
(
うきめ
)
に
遇
(
あ
)
ひますぞ。
236
早
(
はや
)
く
決行
(
けつかう
)
なさるが
宜
(
よ
)
からう』
237
と
目
(
め
)
に
角
(
かど
)
を
立
(
た
)
て
厳
(
おごそ
)
かに
宣示
(
せんじ
)
するを、
238
シヤールは
縮
(
ちぢ
)
み
上
(
あが
)
り「ハツ」と
畳
(
たたみ
)
に
頭
(
かしら
)
をすりつけながら、
239
『
仰
(
あふ
)
せに
従
(
したが
)
ひ
其
(
その
)
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
と
)
りかかるで
厶
(
ござ
)
いませう』
240
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
夫
(
をつと
)
シヤールの
不甲斐
(
ふがひ
)
なき
態度
(
たいど
)
にグツと
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て、
241
声
(
こゑ
)
を
震
(
ふる
)
はせながらテーナ
姫
(
ひめ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
242
『
其方
(
そなた
)
は
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
妻
(
つま
)
テーナ
姫
(
ひめ
)
ではないか。
243
汝
(
なんぢ
)
が
夫
(
をつと
)
カールチンは
卑
(
いや
)
しき
首陀
(
しゆだ
)
の
生
(
うま
)
れ、
244
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
クーリンス
殿
(
どの
)
より
引
(
ひ
)
き
立
(
た
)
てられ、
245
今
(
いま
)
は
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
地位
(
ちゐ
)
に
迄
(
まで
)
進
(
すす
)
み、
246
漸
(
やうや
)
く
世
(
よ
)
に
認
(
みと
)
めらるる
様
(
やう
)
になつたのは
誰
(
たれ
)
のお
蔭
(
かげ
)
だと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
るか。
247
汝
(
なんぢ
)
は
吾
(
わが
)
幼少
(
えうせう
)
の
時
(
とき
)
の
子守役
(
こもりやく
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
を
)
つた
卑
(
いや
)
しき
婢女
(
はしため
)
、
248
今
(
いま
)
は
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
妻
(
つま
)
となりたればとて、
249
妾
(
わらは
)
に
対
(
たい
)
し
無礼
(
ぶれい
)
の
雑言
(
ざふごん
)
、
250
最早
(
もはや
)
聞棄
(
ききす
)
てはなりませぬぞ』
251
と
睨
(
ね
)
めつくればテーナ
姫
(
ひめ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
打笑
(
うちわら
)
ひ、
252
『オホヽヽヽ、
253
愈
(
いよいよ
)
以
(
もつ
)
てヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
狂気
(
きやうき
)
致
(
いた
)
したと
見
(
み
)
ゆる。
254
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
はイルナの
国
(
くに
)
にて
其
(
その
)
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
刹帝利
(
せつていり
)
の
生
(
うま
)
れ、
255
妾
(
わたし
)
は
又
(
また
)
貴勝族
(
きしようぞく
)
の
生
(
うま
)
れで
厶
(
ござ
)
る。
256
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
が
父
(
ちち
)
クーリンスこそ
卑
(
いや
)
しき
首陀
(
しゆだ
)
の
生
(
うま
)
れ、
257
吾
(
わが
)
夫
(
をつと
)
カールチンの
引立
(
ひきたて
)
によりて
今日
(
こんにち
)
の
地位
(
ちゐ
)
を
得
(
え
)
ながら、
258
其
(
その
)
大恩
(
だいおん
)
を
忘
(
わす
)
れ、
259
反対
(
はんたい
)
に
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
を
卑
(
いや
)
しき
首陀族
(
しゆだぞく
)
と
申
(
まを
)
すは
何
(
なん
)
たる
暴言
(
ばうげん
)
、
260
こりや
屹度
(
きつと
)
正気
(
しやうき
)
ではあるまい。
261
早
(
はや
)
く
牢獄
(
らうごく
)
に
打
(
う
)
ち
込
(
こ
)
めよ』
262
と
勢
(
いきほひ
)
に
任
(
まか
)
して
反対的
(
はんたいてき
)
の
捏論
(
ねつろん
)
をまくしたて、
263
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
にヤスダラ
姫
(
ひめ
)
を
幽閉
(
いうへい
)
せしめむと
焦慮
(
あせ
)
つてゐる。
264
カールチンがテーナ
姫
(
ひめ
)
をシヤールの
館
(
やかた
)
に、
265
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
に
難癖
(
なんくせ
)
をつけて
幽閉
(
いうへい
)
せしむべく、
266
使者
(
ししや
)
に
遣
(
つか
)
はしたのは
深
(
ふか
)
き
考
(
かんが
)
へがあつての
事
(
こと
)
である。
267
カールチンは
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
後援
(
こうゑん
)
の
下
(
もと
)
にセーラン
王
(
わう
)
、
268
クーリンスを
放逐
(
ほうちく
)
し
其
(
その
)
野心
(
やしん
)
を
達
(
たつ
)
せむとする
折
(
をり
)
、
269
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
のありては
後日
(
ごじつ
)
の
大妨害
(
だいばうがい
)
となる
事
(
こと
)
を
慮
(
おもんぱか
)
り、
270
難癖
(
なんくせ
)
をつけて
姫
(
ひめ
)
を
幽閉
(
いうへい
)
し
置
(
お
)
かむとの
策略
(
さくりやく
)
である。
271
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つには
娘
(
むすめ
)
のサマリー
姫
(
ひめ
)
とセーラン
王
(
わう
)
との
交情
(
かうじやう
)
あまり
面白
(
おもしろ
)
からざるは、
272
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生存
(
せいぞん
)
して
何時
(
いつ
)
とはなしにセーラン
王
(
わう
)
に
思
(
おも
)
ひを
通
(
つう
)
じるを
以
(
もつ
)
て、
273
セーラン
王
(
わう
)
の
斯
(
か
)
くも
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
を
冷遇
(
れいぐう
)
するならむとの
僻
(
ひが
)
みより、
274
犬糞的
(
けんぷんてき
)
にシヤールの
館
(
やかた
)
へ
頭抑
(
あたまおさ
)
へにテーナ
姫
(
ひめ
)
が
夫
(
をつと
)
の
使者
(
ししや
)
として
遥々
(
はるばる
)
やつて
来
(
き
)
たのである。
275
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
きカールチン、
276
テーナの
計略
(
けいりやく
)
によつて、
277
シヤールの
邸内
(
ていない
)
に
堅牢
(
けんらう
)
なる
牢獄
(
らうごく
)
を
造
(
つく
)
り
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
不愍
(
ふびん
)
にも
残酷
(
ざんこく
)
にも
幽閉
(
いうへい
)
さるる
身
(
み
)
となつて
了
(
しま
)
つた。
278
風雨雷電
(
ふううらいでん
)
の
烈
(
はげ
)
しき
夜
(
よ
)
、
279
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
によく
仕
(
つか
)
へたるリーダーは
堅牢
(
けんらう
)
なる
牢獄
(
らうごく
)
を
打
(
う
)
ち
破
(
やぶ
)
り、
280
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れてシヤールの
館
(
やかた
)
を
脱出
(
だつしゆつ
)
し、
281
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
についで
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
、
282
父
(
ちち
)
の
館
(
やかた
)
をさして
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
る
準備
(
じゆんび
)
にかかれり。
283
(
大正一一・一一・一一
旧九・二三
北村隆光
録)
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