霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 (おほかみ)岩窟(いはや)〔一一一四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻 篇:第2篇 神機赫灼 よみ(新仮名遣い):しんきかくしゃく
章:第10章 狼の岩窟 よみ(新仮名遣い):おおかみのいわや 通し章番号:1114
口述日:1922(大正11)年11月11日(旧09月23日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
イルナの都から四五里ほど離れたところに高照山という高い山脈が横たわっている。イルナの都に行くためには、この山を越す必要があった。高照山は昔、大洪水があったときに高照姫命が天降り給いて国人をその頂に救った因縁があった。
この山の峠は照山峠といった。今より十万年以前に世界的な大地震があり、ハルナの都は海底深く沈没してしまった。今のボンベイは、その時代の大雲山の頂に当たっている。
照山峠の二三里右手に、狼の岩窟があり、恐ろしい狼が群れて闊歩し、人間の侵入を許さない場所であった。黄金姫と清照姫は、イルナの森の手前から狼に誘われて、この岩窟に進み入ることになった。
二人は狼の歓呼の声に迎えられ、狼王の大岩窟に進み入った。岩窟の中は広く美しく、天国の宮殿のようであった。母娘は案に相違しながら狼に導かれて奥に進むと、そこには白髪異様の老人が美しい姫神とともに端座して狼に何事かささやいている。
母娘がよくよく見れば、三五教の宣伝使・天の目一つ神(北光神)と竹野姫の夫婦であった。黄金姫は、北光神夫婦がどうしてこのようなところに立て籠もっているのか尋ねた。
北光神は、神素盞嗚尊より猛獣を済度するようにと命じられたのだと答えた。竹野姫は、狼を使いとして母娘をここへ呼んだのは、イルナの国で大黒主の一派・右守のカールチンの陰謀を打ち破ってもらいたいためだ、と明かした。
イルナのセーラン王の一族を誘い出し、この狼の岩窟に一時かくまう必要があり、その役目を母娘に託したいのだという。母娘は任務を承諾した。
竹野姫は、任務中は狼の眷属が二人を守るであろうと告げた。また道中左守の娘・ヤスダラ姫の一行に会うだろうと告げ、一行中の竜雲に、北光神が岩窟で待っていると伝言してほしいと依頼した。
黄金姫母娘と北光神夫婦は互いに宣伝歌、和歌を交わして任務の成功を祈願した。黄金姫母娘は元来た道を引き換えし、狼の眷属に守られつつ峠を越えてイルナの都に進むことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-12 12:15:54 OBC :rm4110
愛善世界社版:142頁 八幡書店版:第7輯 582頁 修補版: 校定版:148頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 入那(いるな)(みやこ)より四五(しご)()(へだ)てたる(ところ)高照山(たかてるやま)といふ高山脈(かうさんみやく)(よこた)はつてゐる。002イルナの(みやこ)()くには如何(どう)しても(この)(やま)()さねばならぬ。003(むかし)大洪水(だいこうずゐ)のあつた(とき)004高照姫(たかてるひめの)(みこと)天降(あまくだ)(たま)ひて、005国人(くにびと)(この)高山(かうざん)(いただき)(すく)はれた因縁(いんねん)()つて(いま)(なほ)高照山(たかてるやま)(とな)へられてゐるのである。006(この)(たうげ)照山峠(てるやまたうげ)(とな)へられてゐる。007(いま)より十万(じふまん)(ねん)以前(いぜん)世界(せかい)(てき)大地震(だいぢしん)があつて、008(いま)印度(いんど)非常(ひじやう)高原地(かうげんち)であつたのが、009(おほい)降下(かうか)して(しま)つたものである。010ハルナの(みやこ)(いま)孟買(ボンベイ)となつてゐるが、011(いま)孟買(ボンベイ)丁度(ちやうど)(その)時代(じだい)大雲山(たいうんざん)(いただき)(あた)つてゐる。012ハルナの(みやこ)海底(かいてい)(ふか)沈没(ちんぼつ)して(しま)つた。013(ゆゑ)今日(こんにち)地理学(ちりがく)014地質学(ちしつがく)より()れば、015大変(たいへん)(この)物語(ものがたり)相違(さうゐ)する(てん)多々(たた)あるは(げん)()たない次第(しだい)である。
016 照山峠(てるやまたうげ)二三(にさん)()右手(みぎて)(あた)つて、017(おほかみ)岩窟(いはや)といふのがある。018ここには(じつ)(おそ)ろしき(おほかみ)(むれ)天地(てんち)我物顔(わがものがほ)横行(わうかう)闊歩(くわつぽ)して、019人間(にんげん)一歩(いつぽ)(その)地点(ちてん)()()(こと)(ゆる)さない狼窟(らうくつ)であつた。020黄金姫(わうごんひめ)021清照姫(きよてるひめ)はイルナの(もり)(すこ)しく手前(てまへ)から(おほかみ)(むれ)(さそ)はれて、022(この)(おほかみ)岩窟(いはや)(すす)()(こと)となつた。023(おほかみ)とは食人種(しよくじんしゆ)別称(べつしよう)
024 (うはさ)()(おそ)ろしき(おほかみ)棲処(すみか)とは()ふものの、025母娘(おやこ)両人(りやうにん)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら、026(おほかみ)につれられて(やま)(ふか)(すす)()ると、027幾千万(いくせんまん)とも(かぎ)りなく、028狼軍(らうぐん)細谷路(ほそたにみち)(かたはら)(れつ)(つく)り、029ウーウーと歓呼(くわんこ)(こゑ)(はな)ち、030二人(ふたり)()(きた)るをば(うれ)しげに()(むか)へてゐる。031母娘(おやこ)はあたりに(こころ)(くば)りながら、032(やうや)くにして狼王(らうわう)棲息(せいそく)せる大岩窟(だいがんくつ)(すす)()つた。
033 岩窟(いはや)(なか)大変(たいへん)(ひろ)()(うつく)しく、034所々(しよしよ)(きん)035(ぎん)036瑪瑙(めなう)037しやこ038瑠璃(るり)などが(ひか)つてゐる。039(その)(うる)はしさ、040(あだか)天国(てんごく)宮殿(きうでん)(すす)()つた(ごと)(かん)じがした。041母娘(おやこ)(あん)相違(さうゐ)しながら(おほかみ)(みちび)かれて(おく)(ふか)(すす)()ると、042そこに白髪(はくはつ)異様(いやう)老人(らうじん)(うる)はしき姫神(ひめがみ)(とも)端坐(たんざ)し、043何事(なにごと)(おほかみ)(ささや)いてゐる。044(おほかみ)はよく人語(じんご)(かい)するものの(ごと)くであつた。045母娘(おやこ)(あや)しみながら老人(らうじん)(そば)(ちか)()()れば、046(あに)(はか)らむや三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)047(あめ)目一(まひと)(かみ)夫婦(ふうふ)である。
048 黄金姫(わうごんひめ)打驚(うちおどろ)き、049頓狂(とんきやう)(こゑ)()して、
050黄金姫『ヨウ、051貴方(あなた)北光(きたてる)(かみ)(さま)では(ござ)いませぬか。052(めづら)しい(ところ)でお()にかかりました。053どうしてマア斯様(かやう)狼窟(らうくつ)()夫婦(ふうふ)とも()立籠(たてこもり)になつてゐられますか』
054北光神(かむ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)より、055(なんぢ)神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)神力(しんりき)()たれば、056最早(もはや)人間界(にんげんかい)済度(さいど)するには(およ)ばぬ。057人間界(にんげんかい)()宣伝使(せんでんし)にて事足(ことた)れば、058(なんぢ)(これ)より猛獣(まうじう)棲処(すみか)(すす)()り、059(かれ)()(あは)れなる獣類(じうるゐ)(れい)済度(さいど)し、060向上(かうじやう)せしめ、061(しやう)()へて人間(にんげん)(うま)れしむべく、062(めぐみ)(つゆ)(ほどこ)せよとの()命令(めいれい)063(つつし)んで(うけたま)はり、064とうとう(いま)鷹依姫(たかよりひめ)065竜国別(たつくにわけ)さまのやうに、066猛獣(まうじう)(わう)となりましたよ。067アハヽヽヽ』
068黄金姫(なん)とマア大神(おほかみ)(さま)()仁慈(じんじ)は、069禽獣(きんじう)まで(およ)ぼすとはここの(こと)(ござ)いますなア。070(わたし)(たち)母娘(おやこ)071入那(いるな)(もり)()えて(みやこ)(すす)まむとする(をり)しも、072数十頭(すうじつとう)(おほかみ)(あら)はれ(きた)り、073(われ)()母娘(おやこ)(そで)(くは)無理(むり)引張(ひつぱ)りますので、074何事(なにごと)(かみ)(さま)思召(おぼしめし)ならむと、075ここ(まで)(おほかみ)にひかれて岩窟参(いはやまゐ)りをやつて()ました。076オホヽヽヽ』
077竹野(たけの)貴女(あなた)三五教(あななひけう)にて(おん)()(たか)黄金姫(わうごんひめ)神司(かむつかさ)(ござ)いましたか、078(わか)いのは清照姫(きよてるひめ)(さま)(ござ)いますか。079()(ため)(みち)(ため)080()苦労(くらう)さまで(ござ)いますなア』
081黄金姫『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。082貴女(あなた)黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)(おい)(もも)()(つか)(たま)うた竹野姫(たけのひめ)(さま)(ござ)いましたか。083()高名(かうめい)(うけたま)はり、084一度(いちど)拝顔(はいがん)()たしと明暮(あけく)(いの)つてゐましたが、085これは(また)(おも)はぬ(ところ)拝顔(はいがん)()ました。086何分(なにぶん)身魂(みたま)(くも)つた吾々(われわれ)母娘(おやこ)087どうぞお(しか)りを(ねが)ひます』
088竹野姫()鄭重(ていちよう)()挨拶(あいさつ)089(いた)()ります。090どうぞ何分(なにぶん)にも(よろ)しく()交際(かうさい)(ねが)ひます』
091北光(きたてる)貴女(あなた)玉山峠(たまやまたうげ)(おい)て、092(おほかみ)(すく)はれたでせう』
093黄金(わうごん)『ハイ左様(さやう)(ござ)います、094貴方(あなた)それを御存(ごぞん)じで(ござ)いますか』
095北光神(おほかみ)(ども)注進(ちゆうしん)により、096貴女(あなた)危急(ききふ)(すく)ふべく、097一小隊(いちせうたい)ばかり繰出(くりだ)しました、098アハヽヽヽヽ』
099黄金姫『それは()親切(しんせつ)()(すく)うて(くだ)さいました。100吾々(われわれ)()人間心(にんげんごころ)がぬけませぬので、101猛獣(まうじう)(まで)もなづけることは出来(でき)ませぬ。102(また)(けだもの)(ことば)(かい)する(こと)出来(でき)ない(こま)つた(をんな)(ござ)います。103かやうな身魂(みたま)(もつ)宣伝使(せんでんし)とは(じつ)にお(はづか)しう(ござ)います』
104北光神貴女(あなた)をここへお(まね)きしたのは(ほか)では(ござ)いませぬ。105(じつ)貴女(あなた)はハルナの(みやこ)へお()(あそ)ばす(こと)になつて()りますれども、106それ以前(いぜん)(ひと)つ、107不思議(ふしぎ)(はたら)きをして(いただ)かねばなりませぬから、108(おほかみ)(つか)はして、109(みぎ)手続(てつづ)きを()つたので御座(ござ)います。110(じつ)はイルナの(くに)にバラモン(けう)神司(かむつかさ)(けん)刹帝利(せつていり)なるセーラン(わう)部下(ぶか)にカールチンといふ(こころ)(きたな)右守(うもり)があつて、111ハルナの(みやこ)大黒主(おほくろぬし)(しめ)(あは)せ、112セーラン(わう)打亡(うちほろ)ぼし、113(みづか)刹帝利(せつていり)位地(ゐち)(すす)まむと(いた)して()ります。114()いてはハルナの(みやこ)より数千騎(すうせんき)(もつ)て、115近々(ちかぢか)にセーラン(わう)(やかた)()めよせ(きた)(はず)なれば、116貴女(あなた)(これ)よりイルナ(じやう)(すす)()り、117セーラン(わう)(その)()一族(いちぞく)(さそ)()し、118(この)(おほかみ)岩窟(いはや)(むか)へとり、119(おもむろ)右守(うもり)陰謀(いんぼう)打破(うちやぶ)つて(もら)ひたい。120(その)(ため)貴女(あなた)()苦労(くらう)になつたのです』
121(はじ)めて(おほかみ)(むか)へに()理由(りいう)物語(ものがた)る。
122黄金姫委細(ゐさい)承知(しようち)(いた)しました。123左様(さやう)ならば母娘(おやこ)両人(りやうにん)(これ)よりイルナ(じやう)(すす)みませう。124何卒(なにとぞ)()保護(ほご)(ねが)ひます』
125北光神眷族(けんぞく)(ども)数多(あまた)(したが)へさせますれば()安心(あんしん)(くだ)さいませ。126(しか)しながら(おほかみ)といふ(やつ)屋外(をくぐわい)守護(しゆご)にはなりますが、127屋内(をくない)這入(はい)れば(すこ)しも(はたら)きの出来(でき)ない(やつ)ですから、128どうぞ()をつけて()つて(くだ)さい。129貴女(あなた)途中(とちう)(おい)て、130竜雲(りううん)(はじ)め、131ヤスダラ(ひめ)にキツト()ふでせう。132北光(きたてる)(かみ)()つてゐたと()つて(くだ)さい』
133 黄金姫(わうごんひめ)()(まる)くし、
134黄金姫『ナニ竜雲(りううん)仰有(おつしや)るのは、135セイロン(たう)(おい)謀叛(むほん)(たく)んだ妖僧(えうそう)では(ござ)いませぬか』
136 北光(きたてる)(かみ)ニツコと(わら)ひ、
137北光神左様(さやう)(ござ)る。138如何(いか)悪人(あくにん)なればとて改心(かいしん)した(うへ)(たふと)(かみ)(さま)御子(みこ)139(いま)修行(しゆぎやう)(ため)140(つき)(くに)七千(しちせん)余国(よこく)巡礼(じゆんれい)させてありますが、141時々(ときどき)(おほかみ)眷族(けんぞく)をさし(つか)はし、142竜雲(りううん)(まも)らせ、143(また)竜雲(りううん)より()えず手紙(てがみ)眷族(けんぞく)()たせて(おく)つて()ます。144(じつ)(おほかみ)(いへど)も、145なづいたら重宝(ちようほう)なものですよ。146アハヽヽヽ』
147黄金姫丁度(ちやうど)吾々(われわれ)母娘(おやこ)のやうなものですなア。148(わたし)蜈蚣姫(むかでひめ)といつた(ころ)は、149随分(ずゐぶん)大神(おほかみ)(さま)(をしへ)敵対(てきた)ひ、150黄金(わうごん)(たま)(ぬす)みなどして、151(あく)(かぎ)りを(つく)して()ましたが、152改心(かいしん)結果(けつくわ)153かやうな(たふと)宣伝使(せんでんし)採用(さいよう)されましたのですから、154(じつ)(かみ)(さま)()仁慈(じんじ)は、155言葉(ことば)(つく)すことが出来(でき)ませぬ』
156(こゑ)まで(くも)らせてホロリと(なみだ)(おと)し、157さし(うつ)むく。
158清照姫北光(きたてる)(かみ)(さま)159どうぞ清照(きよてる)()守護(しゆご)をして(くだ)さいませや。160キツト()使命(しめい)(はた)しますから。161竹野姫(たけのひめ)(さま)162(よろ)しく()(ねが)(いた)します』
163竹野姫(なん)凛々(りり)しい清照姫(きよてるひめ)(さま)()姿(すがた)164どうぞ(をとこ)(なん)()はないやうに()をつけて(くだ)さいませ。165貴女(あなた)一度(いちど)()経験(けいけん)()()りなさるのですからなア』
166 清照姫(きよてるひめ)(すこ)しく(ほほ)(あか)らめて差俯(さしうつ)むくしほらしさ。167北光(きたてる)(かみ)母娘(おやこ)首途(かどで)(しゆく)すべく、168音吐(おんと)朗々(らうらう)として宣伝歌(せんでんか)(うた)(はじ)むる。
169北光神(かみ)御稜威(みいづ)高照(たかてる)
170山奥(やまおく)(ふか)(きづ)かれし
171(おほかみ)(たち)岩窟(いはやど)
172(をしへ)(ひら)宣伝使(せんでんし)
173北光彦(きたてるひこ)竹野姫(たけのひめ)
174黄金姫(わうごんひめ)清照姫(きよてるひめ)
175(うづ)(みこと)首途(かどいで)
176(しゆく)して(きよ)宣伝歌(せんでんか)
177(つつし)(いやま)()()つる
178あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
179御霊(みたま)(さち)はひましまして
180イルナの(みやこ)立向(たちむか)
181(あき)草野(くさの)(いろ)(ふか)
182黄金姫(わうごんひめ)清照姫(きよてるひめ)
183(うづ)(みこと)御使(みつかひ)
184仁慈(じんじ)無限(むげん)大神(おほかみ)
185大御力(おほみちから)(さづ)けまし
186眷族(けんぞく)(ども)(まも)らせて
187セーラン(わう)(やかた)へと
188(つか)はし(まつ)(いさ)ましさ
189(すめ)大神(おほかみ)御言(みこと)もて
190(あめ)目一(まひと)神司(かむつかさ)
191竹野(たけの)(ひめ)諸共(もろとも)
192(なれ)(みこと)打向(うちむか)
193イルナの(みやこ)曲神(まがかみ)
194言向和(ことむけやは)出陣(しゆつぢん)
195(かみ)(かは)りて()(つた)
196朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
197(つき)()つとも()くるとも
198仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
199魔神(まがみ)はいかに(すさ)ぶとも
200(すめ)大神(おほかみ)(まも)ります
201三五教(あななひけう)神司(かむつかさ)
202(おそ)るることは(さら)になし
203悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)神司(かむつかさ)
204右守司(うもりつかさ)のカールチン
205それに(したが)曲神(まがかみ)
206いかに沢山(さはやま)あるとても
207生言霊(いくことたま)神力(しんりき)
208言向和(ことむけやは)三五(あななひ)
209(をしへ)にまつろへ(やは)すこと
210()()るよりも(あきら)けし
211さはさりながらバラモンの
212大黒主(おほくろぬし)()にし()
213八岐(やまた)大蛇(をろち)生宮(いきみや)
214(くだ)()てたる(たま)なれば
215いかに(たふと)神力(しんりき)
216容易(ようい)(ほろ)ぼす(すべ)もなし
217(こころ)ひそめて(とき)()
218(かれ)()(みづか)(よわ)りはて
219悔悟(くわいご)(ねん)(おこ)るまで
220ひそかに(こと)(はか)るべし
221()第一(だいいち)にセーランの
222(わう)をば(すく)一族(いちぞく)
223(たす)けてこれの岩窟(いはやど)
224(ふか)くかくした(その)(うへ)
225大黒主(おほくろぬし)軍勢(ぐんぜい)
226生言霊(いくことたま)(ことごと)
227言向和(ことむけやは)し、さもなくば
228(うみ)彼方(あなた)()ひちらし
229三五教(あななひけう)神力(しんりき)
230時節(じせつ)をまつて()らすべし
231(とき)(ちから)天地(あめつち)
232(つく)(たま)ひし大神(おほかみ)
233左右(さいう)(たま)(こと)ならず
234ここの道理(だうり)()()けて
235(あわ)てず(さわ)がず悠々(いういう)
236時節(じせつ)()つて曲神(まがかみ)
237言向(ことむ)(たま)惟神(かむながら)
238(かみ)(かは)りて北光(きたてる)
239(かみ)(つかさ)()(つた)
240あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
241御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
242 竹野姫(たけのひめ)(また)黄金姫(わうごんひめ)母娘(おやこ)首途(かどで)(しゆく)し、243宣伝歌(せんでんか)(うた)ふ。
244竹野姫鬼熊別(おにくまわけ)妻司(つまがみ)
245(あら)はれ(たま)ひし蜈蚣姫(むかでひめ)
246(こころ)(やみ)()()(ひら)
247真如(しんによ)(つき)御光(みひかり)
248()らされ(たま)三五(あななひ)
249(かみ)(つかさ)(すす)みまし
250()さへ目出度(めでた)黄金姫(わうごんひめ)
251(うづ)(みこと)(こと)あげし
252黄竜姫(わうりようひめ)(あら)はれて
253竜宮島(りうぐうじま)(とき)めきし
254小糸(こいと)(ひめ)(いま)(はや)
255三五教(あななひけう)神司(かむつかさ)
256清照姫(きよてるひめ)となり(たま)
257(かみ)(めぐみ)(さち)はひて
258(まが)(たちま)(ぜん)となり
259(くもり)()れて大空(おほぞら)
260(あを)きが(ごと)く すくすくと
261(こころ)(いさ)ませ(たま)ひつつ
262(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
263御言(みこと)(かしこ)(あき)(そら)
264草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)()をかため
265(こころ)(かる)蓑笠(みのかさ)
266そのいでたちの(いさ)ましさ
267(おも)へば(おも)へば三五(あななひ)
268(たふと)(かみ)御教(みをしへ)
269魔司(まがみ)(たちま)(ぜん)となり
270(おに)(ほとけ)となり(かは)
271(おほかみ)さへも()くの(ごと)
272いと従順(じうじゆん)になりをへぬ
273黄金姫(わうごんひめ)清照姫(きよてるひめ)
274(うづ)(みこと)(なれ)(いま)
275イルナの(みやこ)(いた)りなば
276我情(がじやう)我慢(がまん)(くも)()
277仁慈(じんじ)無限(むげん)大神(おほかみ)
278(きよ)(こころ)(かむ)ならひ
279あくまで(あらそ)(きそ)ふなく
280無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)発揮(はつき)して
281四方(よも)にさやれる曲司(まがかみ)
282(ぜん)(みちび)(すく)ひませ
283何程(なにほど)知識(ちしき)はさとくとも
284意念(いねん)はいかに(つよ)くとも
285禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)(たす)くるは
286慈悲(じひ)(こころ)(およ)ぶまじ
287慈悲(じひ)博愛(はくあい)禽獣(きんじう)
288(およ)ぼし(すく)神心(かみごころ)
289(かなら)(わす)(たま)ふまじ
290あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
291(かみ)(いの)りて竹野姫(たけのひめ)
292(なれ)(みこと)出陣(しゆつぢん)
293(さい)して忠告(ちうこく)(つかまつ)
294あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
295(まも)らせ(たま)天津(あまつ)(かみ)
296国津(くにつ)(かみ)たち八百万(やほよろづ)
297母娘(おやこ)二人(ふたり)成功(せいこう)
298指折(ゆびを)(かぞ)()()らす
299竹野(たけの)(ひめ)(こころざし)
300(こころ)(ふか)(きざ)みつつ
301とく()でませよ神司(かむつかさ)
302成功(せいこう)(いの)(たてまつ)る』
303(うた)(をは)り、304神殿(しんでん)神酒(みき)()(きた)りて、305母娘(おやこ)(いただ)かせ、306首途(かどで)(おく)る。307黄金姫(わうごんひめ)簡単(かんたん)三十一(みそひと)文字(もじ)(もつ)答礼(たふれい)()ふ。
308黄金姫北光(きたてる)(かみ)(みこと)竹野姫(たけのひめ)
309その宣言(のりごと)(かた)(まも)らむ。
310()(すく)(こころ)のたけの(きよ)ければ
311()(おそ)るべき(まが)はあるらめ。
312いざさらばこれより(すす)入那国(いるなくに)
313セーラン(わう)(まも)(たす)けむ』
314清照(きよてる)二柱(ふたはしら)(かみ)御言(みこと)(かしこ)みて
315母娘(おやこ)(こころ)(いさ)みて()かむ。
316(おほかみ)御供(みとも)(かみ)(まも)られて
317入那(いるな)(くに)(すす)(うれ)しさ。
318北光(きたてる)(かみ)(みこと)よいざさらば
319()たせ(たま)へよ(かへ)()()を。
320竹野姫(たけのひめ)(かみ)(みこと)(もの)(まを)
321()()(きみ)をよく(まも)りませ』
322 竹野姫(たけのひめ)(これ)(こた)へて、
323竹野姫大神(おほかみ)御稜威(みいづ)(そら)高照(たかてる)
324イルナに(すす)(ひと)(たふと)き。
325北光(きたてる)(かみ)(つかさ)生神(いきがみ)
326今日(けふ)岩窟(いはや)明日(あす)入那(いるな)に』
327黄金(わうごん)『いと(きよ)(かみ)(つかさ)御教(みをしへ)
328われは(すす)みて(みやこ)(のぼ)らむ。
329いざさらば二柱(ふたはしら)ともまめやかに
330(かみ)大道(おほぢ)(つか)(たま)はれ』
331 かく(うた)ひ、332(わか)れを()げて(ふたた)()づくろひをなし、333黄金姫(わうごんひめ)334清照姫(きよてるひめ)(おほかみ)(おく)られ、335急坂(きふはん)(いさ)(すす)んで(くだ)り、336山口(やまぐち)()で、337(ふたた)元来(もとき)(みち)引返(ひつかへ)し、338照山峠(てるやまたうげ)()えて入那(いるな)(みやこ)(すす)むこととはなりぬ。
339大正一一・一一・一一 旧九・二三 松村真澄録)
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