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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
第1章 入那の野辺
第2章 入那城
第3章 偽恋
第4章 右守館
第5章 急告
第6章 誤解
第7章 忍術使
第2篇 神機赫灼
第8章 無理往生
第9章 蓮の川辺
第10章 狼の岩窟
第11章 麓の邂逅
第12章 都入り
第3篇 北光神助
第13章 夜の駒
第14章 慈訓
第15章 難問題
第16章 三番叟
第4篇 神出鬼没
第17章 宵企み
第18章 替へ玉
第19章 当て飲み
第20章 誘惑
第21章 長舌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第41巻(辰の巻)
> 第3篇 北光神助 > 第15章 難問題
<<< 慈訓
(B)
(N)
三番叟 >>>
第一五章
難問題
(
なんもんだい
)
〔一一一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第3篇 北光神助
よみ(新仮名遣い):
きたてるしんじょ
章:
第15章 難問題
よみ(新仮名遣い):
なんもんだい
通し章番号:
1119
口述日:
1922(大正11)年11月12日(旧09月24日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
竜雲はセーラン王を出迎え、北光神の指示にしたがって岩窟内の一室に案内し準備を整えている。
王が一室で控えていると、北光神が現れた。お互いに挨拶を交わし、王は岩窟に至る経緯を北光神に語った。
北光神は王に対して、望まない政略結婚でめあわされた政敵の娘・サマリー姫を、今後どうするつもりかと尋ねた。王はついに、サマリー姫は自分の意にそぐわず、元の許嫁であるヤスダラ姫と夫婦になれるのであれば、王の地位を捨ててもかまわないと北光神に告げた。
北光神は、天則違反の場合にはヤスダラ姫をあきらめるようにと釘をさし、王とヤスダラ姫を二人で面会させた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-15 11:47:59
OBC :
rm4115
愛善世界社版:
213頁
八幡書店版:
第7輯 608頁
修補版:
校定版:
224頁
普及版:
100頁
初版:
ページ備考:
001
セーラン
王
(
わう
)
は、
002
テームス、
003
レーブ、
004
カルの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
従
(
したが
)
へ
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
も
勇
(
いさ
)
ましく、
005
漸
(
やうや
)
くにして
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
の
館
(
やかた
)
に
着
(
つ
)
いた。
006
竜雲
(
りううん
)
は
岩窟
(
がんくつ
)
の
口
(
くち
)
まで
出
(
い
)
で
迎
(
むか
)
へ、
007
竜雲
『
貴方
(
あなた
)
はセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
008
お
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
け
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りました。
009
一寸
(
ちよつと
)
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ、
010
主人
(
しゆじん
)
に
申上
(
まをしあ
)
げて
来
(
き
)
ますから』
011
セーラン王
『
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しく
頼
(
たの
)
み
入
(
い
)
る、
012
吾々
(
われわれ
)
は
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
013
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
の
指揮
(
さしづ
)
に
従
(
したが
)
ひ、
014
暗夜
(
あんや
)
を
幸
(
さいは
)
ひ、
015
イルナの
城
(
しろ
)
より
忍
(
しの
)
んで
参
(
まゐ
)
つたもので
厶
(
ござ
)
る。
016
どうぞ
北光彦
(
きたてるひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
宜敷
(
よろし
)
くお
取
(
と
)
りなしを
願
(
ねが
)
ひます』
017
竜雲
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
018
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ちを
願
(
ねが
)
ひます』
019
と
其
(
その
)
儘
(
まま
)
踵
(
きびす
)
をかへし
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
020
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
に
手
(
て
)
を
支
(
つか
)
へ、
021
竜雲
『
正
(
まさ
)
しくセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
のお
出
(
いで
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
022
どちらへお
通
(
とほ
)
し
申
(
まを
)
しませうか』
023
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
の
顔色
(
かほいろ
)
は
嬉
(
うれ
)
しさと
恥
(
はづ
)
かしさと
驚
(
おどろ
)
きとにサツと
変
(
かは
)
つた。
024
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
は
欣然
(
きんぜん
)
として、
025
北光神
『
只今
(
ただいま
)
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
致
(
いた
)
すから、
026
第三号
(
だいさんがう
)
室
(
しつ
)
に
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
して
置
(
お
)
け。
027
さうしてお
湯
(
ゆ
)
でも
差上
(
さしあ
)
げて、
028
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ちを
願
(
ねが
)
つて
置
(
お
)
いて
呉
(
く
)
れ。
029
吾
(
われ
)
は
是
(
これ
)
より
神殿
(
しんでん
)
に
参
(
まゐ
)
り、
030
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
礼
(
れい
)
を
申上
(
まをしあ
)
げて
来
(
く
)
る。
031
サア
竹野姫
(
たけのひめ
)
、
032
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
殿
(
どの
)
、
033
奥
(
おく
)
へ
参
(
まゐ
)
りませう』
034
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
神前
(
しんぜん
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
035
竜雲
(
りううん
)
は
表
(
おもて
)
へさしてセーラン
王
(
わう
)
を
迎
(
むか
)
ふべく
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す。
036
リーダーは
後
(
あと
)
に
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
んで
独
(
ひと
)
り
言
(
ごと
)
、
037
リーダー
『
何
(
なん
)
と
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
な
事
(
こと
)
があるものだなア。
038
狼
(
おほかみ
)
の
山
(
やま
)
へ
怖々
(
こはごは
)
やつて
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
039
沢山
(
たくさん
)
の
狼
(
おほかみ
)
は
犬
(
いぬ
)
のやうに
柔順
(
おとな
)
しい。
040
そこへ
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のやうな、
041
一
(
ひと
)
つ
目
(
め
)
のお
爺
(
ぢい
)
さまと、
042
花
(
はな
)
を
欺
(
あざむ
)
くやうな
奥様
(
おくさま
)
、
043
妙
(
めう
)
なコントラストだ。
044
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
供
(
とも
)
をして
此処
(
ここ
)
へやつて
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
へば、
045
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
がお
出
(
い
)
でなさるとは
何
(
なん
)
とした
不思議
(
ふしぎ
)
の
事
(
こと
)
だらう。
046
定
(
さだ
)
めし
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
も
王
(
わう
)
様
(
さま
)
のお
顔
(
かほ
)
を
御覧
(
ごらん
)
になつたら、
047
ビツクリと
喜
(
よろこ
)
びとで
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
をなさるだらう………(
浄瑠璃
(
じやうるり
)
口調
(
くてう
)
)
生者
(
しやうじや
)
必滅
(
ひつめつ
)
会者
(
ゑしや
)
定離
(
ぢやうり
)
、
048
浮世
(
うきよ
)
の
常
(
つね
)
とは
云
(
い
)
ひながら、
049
親
(
おや
)
と
親
(
おや
)
との
許嫁
(
いひなづけ
)
、
050
怪
(
あや
)
しき
雲
(
くも
)
に
隔
(
へだ
)
てられ、
051
国
(
くに
)
と
都
(
みやこ
)
に
引
(
ひ
)
き
分
(
わか
)
れ、
052
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
君
(
きみ
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
053
案
(
あん
)
じ
暮
(
くら
)
して
居
(
を
)
りました。
054
今日
(
けふ
)
は
如何
(
いか
)
なる
吉日
(
きちにち
)
ぞ。
055
焦
(
こが
)
れ
焦
(
こが
)
れた
其
(
その
)
人
(
ひと
)
に、
056
所
(
ところ
)
もあらうに
狼
(
おほかみ
)
の
住
(
す
)
む
高照山
(
たかてるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
でお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
らうとは、
057
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
知
(
し
)
るよしもなく、
058
泣
(
な
)
いてばかり
居
(
を
)
りました。
059
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
有難
(
ありがた
)
や、
060
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
引
(
ひ
)
き
合
(
あは
)
せ、
061
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
も
開
(
ひら
)
けたやうな、
062
私
(
わたし
)
や
心
(
こころ
)
になりました。
063
嬉
(
うれ
)
しいわいな、
064
なつかしいわいな………と
人目
(
ひとめ
)
も
恥
(
は
)
ぢず
縋
(
すが
)
りつき、
065
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り
交
(
かは
)
し、
066
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶこそ
可憐
(
いぢ
)
らしき。
067
チヤン、
068
チヤン、
069
チヤン………と
云
(
い
)
ふ
場合
(
ばあひ
)
だ。
070
俺
(
おれ
)
も
一度
(
いちど
)
こんなローマンスを
味
(
あぢ
)
はつて
見
(
み
)
たいものだ。
071
青春
(
せいしゆん
)
の
血
(
ち
)
に
燃
(
も
)
ゆる
壮者
(
そうしや
)
と
美人
(
びじん
)
、
072
どんなに
嬉
(
うれ
)
しからうぞ。
073
互
(
たがひ
)
に
焦
(
こが
)
れ
慕
(
した
)
うた
男
(
をとこ
)
と
女
(
をんな
)
が
思
(
おも
)
はぬ
処
(
ところ
)
で
遇
(
あ
)
ふのだもの、
074
これが
嬉
(
うれ
)
しうなうて
何
(
なん
)
とせうぞいのう………。
075
アハヽヽヽ、
076
目出度
(
めでた
)
い
目出度
(
めでた
)
い、
077
お
目出度
(
めでた
)
い。
078
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
苦労人
(
くらうにん
)
丈
(
だけ
)
あつて、
079
中々
(
なかなか
)
粋
(
すゐ
)
が
利
(
き
)
いて
居
(
を
)
るわい。
080
こんな
事
(
こと
)
の
分
(
わか
)
つた
宣伝使
(
せんでんし
)
にお
仕
(
つか
)
へするのなら、
081
俺
(
おれ
)
だつてどんな
苦労
(
くらう
)
だつて
厭
(
いと
)
ひはしない。
082
岩
(
いは
)
より
固
(
かた
)
い
千代
(
ちよ
)
の
固
(
かた
)
めを、
083
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
の
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
で、
084
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
目
(
め
)
ぢやないが、
085
確
(
しつか
)
り
カタメ
と
云
(
い
)
ふ
洒落
(
しやれ
)
だな、
086
ウフヽヽヽ』
087
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へセーラン
王
(
わう
)
一行
(
いつかう
)
を
三号室
(
さんがうしつ
)
に
導
(
みちび
)
き
置
(
お
)
き、
088
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
に
報告
(
はうこく
)
すべく
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
た
竜雲
(
りううん
)
は、
089
リーダーの
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
面白
(
おもしろ
)
さうに
笑
(
わら
)
うて
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
て、
090
竜雲
『おいリーダー、
091
何
(
なに
)
を
笑
(
わら
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
092
お
客
(
きやく
)
さまが
見
(
み
)
えたのだよ。
093
此
(
この
)
館
(
やかた
)
は
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
二人
(
ふたり
)
きりでお
手
(
て
)
が
足
(
た
)
らぬのだから、
094
早
(
はや
)
くお
客
(
きやく
)
さまのお
湯
(
ゆ
)
でも
汲
(
く
)
んでお
世話
(
せわ
)
をしないか、
095
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
男
(
をとこ
)
だなア』
096
リーダー
『
私
(
わたし
)
だつて
今
(
いま
)
来
(
き
)
たばつかし、
097
お
客
(
きやく
)
さまぢやありませぬか。
098
客
(
きやく
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
099
そんな
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますか。
100
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
許
(
ゆる
)
しさへあれば、
101
お
湯
(
ゆ
)
も
汲
(
く
)
みませう、
102
どんな
御用
(
ごよう
)
も
致
(
いた
)
します』
103
竜雲
『エヽ
何
(
なん
)
と
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
男
(
をとこ
)
だなア』
104
リーダー
『
余
(
あま
)
り
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いたり
融通
(
ゆうづう
)
が
利
(
き
)
くと、
105
シロ
の
島
(
しま
)
の
神地
(
かうぢ
)
の
都
(
みやこ
)
で
失敗
(
しつぱい
)
なさつたやうな
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますからなア。
106
まあヂツクリと
落着
(
おちつ
)
きなさい。
107
「
大鳥
(
おほとり
)
は
翼
(
つばさ
)
を
急
(
いそ
)
がぬ」と
云
(
い
)
ひまして、
108
度量
(
どりやう
)
の
大
(
おほ
)
きいものは、
109
さう
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
に
コセ
つきませぬからなア。
110
エヘヽヽヽ』
111
竜雲
『
大男
(
おほをとこ
)
総身
(
そうみ
)
に
智慧
(
ちゑ
)
が
廻
(
まは
)
り
兼
(
か
)
ねとか
云
(
い
)
つて、
112
胴柄
(
どうがら
)
ばかり
大
(
おほ
)
きくつて、
113
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬ
男
(
をとこ
)
だなア。
114
お
前
(
まへ
)
のやうなものは
仁王
(
にわう
)
さまにでもなつて
門
(
もん
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
シヤチコ
張
(
ば
)
つて
居
(
ゐ
)
るのが
適当
(
てきたう
)
だ』
115
リーダー
『モシ
竜雲
(
りううん
)
さま、
116
貴方
(
あなた
)
に
誠
(
まこと
)
があるなら、
117
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
ですよ。
118
師匠
(
ししやう
)
を
杖
(
つゑ
)
にするな、
119
人
(
ひと
)
を
力
(
ちから
)
にするな、
120
とは
三五教
(
あななひけう
)
の
教理
(
けうり
)
だと、
121
道々
(
みちみち
)
お
説教
(
せつけう
)
をなさいましたなア。
122
私
(
わたし
)
はよく
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
を
)
りますよ』
123
竜雲
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
124
それなら
是
(
これ
)
から
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
だ』
125
と
第三号
(
だいさんがう
)
室
(
しつ
)
に
向
(
むか
)
つて
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
かうとするのを、
126
リーダーは
裾
(
すそ
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
127
リーダー
『モシモシ
竜雲
(
りううん
)
さま、
128
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
だと
今
(
いま
)
仰有
(
おつしや
)
つたが、
129
それがもはや
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
の
原則
(
げんそく
)
を
破
(
やぶ
)
つて
居
(
を
)
られるでは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
130
竜雲
『エヽ
八釜
(
やかま
)
しい、
131
俺
(
おれ
)
のは
特別製
(
とくべつせい
)
の
准
(
じゆん
)
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
だ』
132
と
云
(
い
)
ひながら
袖
(
そで
)
振
(
ふ
)
りきつてセーラン
王
(
わう
)
の
室
(
しつ
)
に
走
(
はし
)
り
出
(
い
)
で、
133
恭
(
うやうや
)
しく
両手
(
りやうて
)
を
支
(
つか
)
へて、
134
竜雲
『セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
、
135
折角
(
せつかく
)
のお
越
(
こ
)
し
えらう
お
待
(
ま
)
たせ
申
(
まを
)
しまして
不都合
(
ふつがふ
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
136
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
137
私
(
わたし
)
もたつた
今
(
いま
)
初
(
はじ
)
めて
参
(
まゐ
)
つたもの、
138
まだ
席
(
せき
)
も
温
(
あたた
)
かくならない
位
(
くらゐ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
139
と
云
(
い
)
つても
最早
(
もはや
)
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
は
暮
(
く
)
れましたが、
140
此処
(
ここ
)
の
召使
(
めしつかひ
)
と
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
でもなし、
141
貴方
(
あなた
)
に
一足
(
ひとあし
)
お
先
(
さき
)
に
参
(
まゐ
)
つた
珍客
(
ちんきやく
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
142
どうぞ
悪
(
あ
)
しからず
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
143
セーラン王
『イヤ
有難
(
ありがた
)
う、
144
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
はまだお
越
(
こ
)
しになりませぬか』
145
竜雲
『
今
(
いま
)
お
見
(
み
)
えになるでせう。
146
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ちを
願
(
ねが
)
ひます』
147
王
(
わう
)
『
高照
(
たかてる
)
の
嶮
(
けは
)
しき
山
(
やま
)
を
登
(
のぼ
)
り
来
(
き
)
て
148
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
身
(
み
)
をやすめぬる。
149
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
に
会
(
あ
)
はむとて
150
神
(
かみ
)
の
随々
(
まにまに
)
訪
(
たづ
)
ね
来
(
こ
)
しはや』
151
竜雲
(
りううん
)
『
今
(
いま
)
しばし
待
(
ま
)
たせたまはれ
神司
(
かむづかさ
)
152
やがては
此処
(
ここ
)
に
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
。
153
生身魂
(
いくみたま
)
清
(
きよ
)
く
直
(
すぐ
)
なる
竹野姫
(
たけのひめ
)
154
妻
(
つま
)
の
命
(
みこと
)
も
共
(
とも
)
にいませり。
155
汝
(
な
)
が
命
(
みこと
)
慕
(
した
)
ひたまひし
姫神
(
ひめがみ
)
に
156
会
(
あ
)
はせたまはむ
時
(
とき
)
は
迫
(
せま
)
れり。
157
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
貴
(
うづ
)
の
命
(
みこと
)
は
君
(
きみ
)
を
慕
(
した
)
ひ
158
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
祈
(
いの
)
りたまへる』
159
王
(
わう
)
『
摩訶
(
まか
)
不思議
(
ふしぎ
)
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
が
如何
(
いか
)
にして
160
これの
岩窟
(
いはや
)
に
潜
(
ひそ
)
み
居
(
を
)
るにや』
161
竜雲
(
りううん
)
『
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
のまにまに
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
162
まもられて
行
(
ゆ
)
く
夢
(
ゆめ
)
の
世
(
よ
)
なるよ』
163
かく
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
ふ
所
(
ところ
)
へ、
164
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
は
衣服
(
いふく
)
を
着替
(
きか
)
へ
威儀
(
ゐぎ
)
を
正
(
ただ
)
して
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
165
王
(
わう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
166
北光神
『
私
(
わたし
)
は
北光彦
(
きたてるひこ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
167
能
(
よ
)
くまア
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
に
入
(
い
)
らせられました。
168
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
169
清照姫
(
きよてるひめ
)
殿
(
どの
)
は
機嫌
(
きげん
)
よくして
居
(
を
)
られますかなア』
170
セーラン王
『
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかりました。
171
貴方
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
にて
御
(
おん
)
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
172
一目
(
ひとめ
)
其
(
その
)
お
姿
(
すがた
)
を
拝
(
はい
)
しまして、
173
誠
(
まこと
)
の
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかかつたやうな
心
(
こころ
)
に
力
(
ちから
)
づきました。
174
何卒
(
なにとぞ
)
今後
(
こんご
)
の
御
(
ご
)
教導
(
けうだう
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
175
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
りイルナの
城
(
しろ
)
は
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
で
厶
(
ござ
)
りますれば、
176
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
指図
(
さしづ
)
に
従
(
したが
)
ひ、
177
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
とは
承知
(
しようち
)
しながら
神命
(
しんめい
)
を
奉
(
ほう
)
じて
微行
(
びかう
)
致
(
いた
)
して
参
(
まゐ
)
りました』
178
とやや
涙
(
なみだ
)
ぐみける。
179
北光神
『アハヽヽヽ、
180
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
遊
(
あそ
)
ばすな。
181
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
に
任
(
まか
)
すより
道
(
みち
)
はありませぬ。
182
これから
吾々
(
われわれ
)
は
神策
(
しんさく
)
を
施
(
ほどこ
)
しますから、
183
気
(
き
)
を
落着
(
おちつ
)
けてゆつくりとなさつたがよろしからう。
184
此処
(
ここ
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
狼
(
おほかみ
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
、
185
如何
(
いか
)
なる
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
も、
186
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
ばかりは
窺
(
うかが
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
187
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ。
188
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
189
貴方
(
あなた
)
に
一
(
ひと
)
つお
尋
(
たづ
)
ねして
置
(
お
)
かなければならぬ
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
ります。
190
それは
余
(
よ
)
の
儀
(
ぎ
)
では
厶
(
ござ
)
らぬ、
191
貴方
(
あなた
)
にはサマリー
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふお
妃
(
きさき
)
があるでせう、
192
其
(
その
)
妃
(
きさき
)
は
今後
(
こんご
)
どうなさるお
積
(
つも
)
りですか』
193
王
(
わう
)
は
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
にハタとつまり、
194
如何
(
いかが
)
答
(
こた
)
へむと
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
ませ、
195
黙然
(
もくねん
)
として
暫
(
しば
)
しが
間
(
あひだ
)
さし
俯
(
うつ
)
むいて
居
(
ゐ
)
る。
196
北光神
『
一旦
(
いつたん
)
妻
(
つま
)
と
定
(
きま
)
つたサマリー
姫
(
ひめ
)
を
何処迄
(
どこまで
)
も
連
(
つ
)
れて、
197
共々
(
ともども
)
に
苦労
(
くらう
)
をなさるお
考
(
かんが
)
へでせうなア。
198
万一
(
まんいち
)
貴方
(
あなた
)
の
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
女
(
をんな
)
が
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれたとすれば、
199
貴方
(
あなた
)
は
自分
(
じぶん
)
の
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
つて
其
(
その
)
女
(
をんな
)
を
妻
(
つま
)
に
致
(
いた
)
しますか。
200
但
(
ただし
)
は
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬサマリー
姫
(
ひめ
)
をどこ
迄
(
まで
)
も
愛
(
あい
)
して
行
(
ゆ
)
きますか。
201
それを
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
きたい。
202
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
にも
少
(
すこ
)
し
考
(
かんが
)
へが
厶
(
ござ
)
るから』
203
王
(
わう
)
は
如何
(
いかが
)
は
答
(
こた
)
へむかと、
204
とつおいつ
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れながら、
205
漸
(
やうや
)
くにして、
206
セーラン王
『ハイ
何事
(
なにごと
)
も
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
しませう。
207
心
(
こころ
)
の
曇
(
くも
)
つた
吾々
(
われわれ
)
、
208
どうしてよいか
判断
(
はんだん
)
がつきませぬ。
209
どうぞ
貴方
(
あなた
)
のお
考
(
かんが
)
へを
承
(
うけたま
)
はりたう
御座
(
ござ
)
います』
210
と
甘
(
うま
)
く
言葉
(
ことば
)
をそらし、
211
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
に
其
(
その
)
解決
(
かいけつ
)
をおつつけてしまつた。
212
北光神
『オツホヽヽヽ、
213
隅
(
すみ
)
にもおけぬ
王
(
わう
)
様
(
さま
)
だなア、
214
かう
北光
(
きたてる
)
が
申
(
まを
)
せば
御
(
ご
)
返答
(
へんたふ
)
にお
困
(
こま
)
りだらうと
思
(
おも
)
つたが、
215
反対
(
はんたい
)
にこちらへ
大問題
(
だいもんだい
)
をおつかぶせられ、
216
北光彦
(
きたてるひこ
)
も
聊
(
いささ
)
か
迷惑
(
めいわく
)
を
致
(
いた
)
しました』
217
セーラン王
『
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
御存
(
ごぞん
)
じの
貴方
(
あなた
)
の
前
(
まへ
)
で
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
すも
無駄
(
むだ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
218
又
(
また
)
私
(
わたし
)
も
心
(
こころ
)
にもなき
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げたくはありませぬ。
219
お
叱
(
しか
)
りかは
存
(
ぞん
)
じませぬが、
220
実
(
じつ
)
はサマリー
姫
(
ひめ
)
はどう
考
(
かんが
)
へても
厭
(
いや
)
で
厭
(
いや
)
で
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
221
何
(
なに
)
かの
策略
(
さくりやく
)
があつて、
222
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
が
私
(
わたし
)
の
許嫁
(
いひなづけ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
し、
223
娘
(
むすめ
)
を
無理
(
むり
)
に
押
(
お
)
しつけたので
厶
(
ござ
)
いますから、
224
要
(
えう
)
するに
愛
(
あい
)
のなき
縁談
(
えんだん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
225
かかる
虚偽
(
きよぎ
)
的
(
てき
)
愛
(
あい
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
は
却
(
かへつ
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し
済
(
す
)
まないやうな
気
(
き
)
も
致
(
いた
)
します。
226
又
(
また
)
一方
(
いつぱう
)
より
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
れば、
227
今日
(
こんにち
)
の
処
(
ところ
)
サマリー
姫
(
ひめ
)
は
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
私
(
わたし
)
に
対
(
たい
)
して
愛慕
(
あいぼ
)
の
念
(
ねん
)
を
起
(
おこ
)
して
居
(
ゐ
)
るやうで
厶
(
ござ
)
います。
228
それ
故
(
ゆゑ
)
に
日夜
(
にちや
)
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
め、
229
どうしたらよいかと
迷
(
まよ
)
うて
居
(
ゐ
)
る
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
230
サマリー
姫
(
ひめ
)
一人
(
ひとり
)
のためにイルナの
城
(
しろ
)
の
興亡
(
こうばう
)
に
関
(
くわん
)
する
問題
(
もんだい
)
ですから、
231
私
(
わたし
)
も
決
(
けつ
)
し
兼
(
か
)
ねて
居
(
を
)
ります』
232
北光神
『
何
(
なん
)
と
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
いお
方
(
かた
)
だなア。
233
なぜ
男
(
をとこ
)
らしく、
234
初
(
はじ
)
めにポンと
断
(
ことわ
)
りを
云
(
い
)
はなかつたのですか。
235
貴方
(
あなた
)
はセーラン
王
(
わう
)
の
位地
(
ゐち
)
に
恋々
(
れんれん
)
として、
236
心
(
こころ
)
にもなき
結婚
(
けつこん
)
を
承諾
(
しようだく
)
したのでせう。
237
貴方
(
あなた
)
には
親
(
おや
)
の
許
(
ゆる
)
した
許嫁
(
いひなづけ
)
があつた
筈
(
はず
)
、
238
なぜ
先約
(
せんやく
)
を
履行
(
りかう
)
なさらなかつたか。
239
それから
第一
(
だいいち
)
間違
(
まちが
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
240
両親
(
りやうしん
)
の
許
(
ゆる
)
した
許嫁
(
いひなづけ
)
を
無視
(
むし
)
して
途中
(
とちう
)
から
変更
(
へんかう
)
するといふ
事
(
こと
)
は
第一
(
だいいち
)
孝
(
かう
)
の
道
(
みち
)
に
欠
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
る。
241
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
事情
(
じじやう
)
があらうとも
父王
(
ちちわう
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
を
遵守
(
じゆんしゆ
)
し、
242
一身
(
いつしん
)
を
賭
(
と
)
してなぜ
争
(
あらそ
)
はなかつたのですか』
243
セーラン王
『そのお
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
自分
(
じぶん
)
の
薄志
(
はくし
)
弱行
(
じやくかう
)
を
悔
(
くや
)
みます。
244
私
(
わたし
)
も
何
(
なん
)
とかして
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
か
知
(
し
)
らねどもヤスダラ
姫
(
ひめ
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
となる
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ば、
245
たとへ
王位
(
わうゐ
)
を
捨
(
す
)
てても
悔
(
く
)
ゆる
処
(
ところ
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ』
246
北光神
『ウフヽヽヽ、
247
とうとう
本音
(
ほんね
)
を
吹
(
ふ
)
きましたな。
248
それが
偽
(
いつは
)
りのなき
貴方
(
あなた
)
の
真心
(
まごころ
)
だ。
249
併
(
しか
)
しながら、
250
其
(
その
)
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が、
251
夫
(
をつと
)
に
一回
(
いつくわい
)
なりとも
交
(
まじ
)
はりを
結
(
むす
)
んで
居
(
を
)
られたならどうなされますか。
252
それでも
貴方
(
あなた
)
は
喜
(
よろこ
)
んで
夫婦
(
ふうふ
)
になるお
考
(
かんが
)
へですか。
253
もしヤスダラ
姫
(
ひめ
)
に
対
(
たい
)
し
貞節
(
ていせつ
)
を
守
(
まも
)
り、
254
一回
(
いつくわい
)
の
交
(
まじ
)
はりもして
居
(
ゐ
)
なかつたとすれば
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
255
どうでもかまはぬ、
256
添
(
そ
)
ひさへすればよいと
云
(
い
)
ふお
考
(
かんが
)
へなれば、
257
貴方
(
あなた
)
はもはや
人間
(
にんげん
)
ではない、
258
恋
(
こひ
)
の
奴隷
(
どれい
)
と
云
(
い
)
ふものですよ』
259
セーラン王
『ハイ、
260
仰
(
あふ
)
せの
如
(
ごと
)
くヤスダラ
姫
(
ひめ
)
にして
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
がありとすれば
私
(
わたし
)
は
断念
(
だんねん
)
致
(
いた
)
します。
261
併
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
はあるまいと
思
(
おも
)
ひます』
262
北光神
『
今
(
いま
)
貴方
(
あなた
)
に
会
(
あ
)
はせたいものがある。
263
驚
(
おどろ
)
かないやうにして
下
(
くだ
)
さい』
264
セーラン王
『それはヤスダラ
姫
(
ひめ
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
265
何
(
なん
)
とはなしにそのやうな
気分
(
きぶん
)
が
浮
(
うか
)
んで
参
(
まゐ
)
りました』
266
北光神
『アハヽヽヽ、
267
矢張
(
やつぱ
)
り
蛇
(
じや
)
の
道
(
みち
)
は
蛇
(
へび
)
だなア』
268
(
大正一一・一一・一二
旧九・二四
加藤明子
録)
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