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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
第1章 入那の野辺
第2章 入那城
第3章 偽恋
第4章 右守館
第5章 急告
第6章 誤解
第7章 忍術使
第2篇 神機赫灼
第8章 無理往生
第9章 蓮の川辺
第10章 狼の岩窟
第11章 麓の邂逅
第12章 都入り
第3篇 北光神助
第13章 夜の駒
第14章 慈訓
第15章 難問題
第16章 三番叟
第4篇 神出鬼没
第17章 宵企み
第18章 替へ玉
第19章 当て飲み
第20章 誘惑
第21章 長舌
余白歌
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霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
>
第41巻(辰の巻)
> 第3篇 北光神助 > 第13章 夜の駒
<<< 都入り
(B)
(N)
慈訓 >>>
第一三章
夜
(
よる
)
の
駒
(
こま
)
〔一一一七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第3篇 北光神助
よみ(新仮名遣い):
きたてるしんじょ
章:
第13章 夜の駒
よみ(新仮名遣い):
よるのこま
通し章番号:
1117
口述日:
1922(大正11)年11月12日(旧09月24日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
イルナ城(入那城、セーラン王の館)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
イルナの都のセーラン王の館の奥の間には、王をはじめ黄金姫、清照姫、テームス、レーブ、カルの六人が上下の座についてひそびそと話し合っていた。
信仰を問うた黄金姫に対し、セーラン王は国治立大神も盤古神王も大自在天も名称が違うだけであると信じていたと答えた。それに対して黄金姫は、盤古神王や大自在天は人類の祖先から生じた邪霊が憑依した神であり、一方国治立尊は本当のこの世の御先祖様であると諭した。
セーラン王は黄金姫母娘を、自分の祈願所に招いた。祈願所の神号は、天一神王国治立尊とあった。そしてその下に、教主神素盞嗚尊と記し、中央の両側に盤古神王と大国彦命と記されていた。
黄金姫母娘は、セーラン王の信仰を見て王の信仰の正しさを称えた。セーラン王は、バラモン教を信仰して国を治めていたが、ある夜の夢に神素盞嗚大神と、尊敬する鬼熊別命が現れ、さまざまの有難い教訓を示してくれたのだという。
それからは自分ひとり、神命にしたがった信仰に励んでいたと明かした。セーラン王が描いた神素盞嗚大神と鬼熊別の肖像に、母娘は感に打たれていた。
セーラン王は、鬼熊別から王に当てた密書を取り出し、黄金姫に恭しく渡した黄金姫が密書を開いて見ると、夫の筆跡で三五教が真の教えであることがしたためられていた。
そして神素盞嗚大神のはからいにより自分の妻子がイルナ国を訪問するから、共に善後策を講じ、右守の魔手を逃れてどこかへ一時避難するようにと王に忠告する内容であった。
王と黄金姫母娘は早速居間に戻ると、テームス、カル、レーブに命じて王を高照山の狼の岩窟に送っていくようにと命じた。四人は裏口から駒を引き出し、闇の中を急いで出立した。
黄金姫と清照姫は後に残った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-14 12:00:28
OBC :
rm4113
愛善世界社版:
187頁
八幡書店版:
第7輯 598頁
修補版:
校定版:
197頁
普及版:
87頁
初版:
ページ備考:
001
イルナの
都
(
みやこ
)
、
002
セーラン
王
(
わう
)
の
館
(
やかた
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
には、
003
王
(
わう
)
を
始
(
はじ
)
め
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
004
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
005
テームス、
006
レーブ、
007
カルの
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
、
008
上下
(
じやうげ
)
の
列
(
れつ
)
を
正
(
ただ
)
し、
009
対坐
(
たいざ
)
しながら、
010
ひそびそ
話
(
ばなし
)
が
始
(
はじ
)
まつてゐる。
011
王
(
わう
)
『
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
、
012
遠方
(
ゑんぱう
)
の
所
(
ところ
)
夜中
(
やちう
)
にも
拘
(
かかは
)
らず、
013
よくお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました。
014
これで
私
(
わたし
)
も
一安心
(
ひとあんしん
)
致
(
いた
)
します。
015
貴女
(
あなた
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
奥様
(
おくさま
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
、
016
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア』
017
黄金姫
『ハイ、
018
恥
(
はづか
)
しながら
運命
(
うんめい
)
の
綱
(
つな
)
にひかれて、
019
とうとう
夫
(
をつと
)
と
別
(
わか
)
れ、
020
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
になりました。
021
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
にゆかないもので
厶
(
ござ
)
います』
022
セーラン王
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア、
023
私
(
わたし
)
も
夫婦
(
ふうふ
)
の
道
(
みち
)
に
就
(
つ
)
いて、
024
非常
(
ひじやう
)
に
悲惨
(
ひさん
)
な
境遇
(
きやうぐう
)
に
陥
(
おちい
)
つて
居
(
を
)
ります。
025
これでも
何時
(
いつ
)
か
又
(
また
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
に
依
(
よ
)
つて、
026
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
に
身魂
(
みたま
)
の
会
(
あ
)
うたもの
同士
(
どうし
)
添
(
そ
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうかなア。
027
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
は
最早
(
もはや
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
と
仲
(
なか
)
よく
元
(
もと
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
となつて、
028
神界
(
しんかい
)
にお
仕
(
つか
)
へ
遊
(
あそ
)
ばすことが
出来
(
でき
)
ませう。
029
私
(
わたし
)
は
到底
(
たうてい
)
望
(
のぞ
)
みがありますまい』
030
黄金姫
『
親子
(
おやこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
一緒
(
いつしよ
)
に
神界
(
しんかい
)
に
仕
(
つか
)
へる
位
(
くらゐ
)
、
031
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
はありませぬが、
032
私
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
033
バラモン
教
(
けう
)
の
柱石
(
ちうせき
)
、
034
私
(
わたし
)
始
(
はじ
)
め
娘
(
むすめ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
035
何程
(
なにほど
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
一
(
ひと
)
つだと
申
(
まを
)
しても、
036
むつかしい
仲
(
なか
)
で
厶
(
ござ
)
います』
037
セーラン王
『
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
038
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
は、
039
キツト
貴女
(
あなた
)
のお
説
(
せつ
)
に
御
(
ご
)
賛成
(
さんせい
)
遊
(
あそ
)
ばすで
厶
(
ござ
)
いませう。
040
私
(
わたし
)
の
今日
(
こんにち
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
は
実
(
じつ
)
に
言
(
い
)
ふに
言
(
い
)
はれぬ
境遇
(
きやうぐう
)
に
陥
(
おちい
)
つて
居
(
を
)
ります。
041
許嫁
(
いひなづけ
)
のヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
奸臣
(
かんしん
)
の
為
(
ため
)
に
郤
(
しりぞ
)
けられ、
042
心
(
こころ
)
に
合
(
あ
)
はぬ
妻
(
つま
)
を
押付
(
おしつ
)
けられ、
043
一
(
いち
)
日
(
にち
)
として
楽
(
たの
)
しく
暮
(
くら
)
した
事
(
こと
)
はありませぬ。
044
其
(
その
)
上
(
うへ
)
奸者
(
かんじや
)
侫人
(
ねいじん
)
跋扈
(
ばつこ
)
し、
045
私
(
わたし
)
の
身辺
(
しんぺん
)
は
実
(
じつ
)
に
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
に
陥
(
おちい
)
つて
居
(
を
)
ります。
046
就
(
つ
)
いては
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
をお
迎
(
むか
)
へ
申上
(
まをしあ
)
げ、
047
此
(
この
)
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
うて
頂
(
いただ
)
きたいと
存
(
ぞん
)
じまして、
048
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
夢
(
ゆめ
)
のお
告
(
つ
)
げに
依
(
よ
)
つて、
049
数日前
(
すうじつぜん
)
より
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
此方
(
こちら
)
へお
出
(
で
)
ましになるのをばお
捜
(
さが
)
し
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りました。
050
よくマア
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
051
今後
(
こんご
)
は
貴女
(
あなた
)
のお
指図
(
さしづ
)
に
従
(
したが
)
ひ
身
(
み
)
を
処
(
しよ
)
する
考
(
かんが
)
へですから、
052
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
053
黄金姫
『
貴方
(
あなた
)
は
三五
(
あななひ
)
の
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
じますか』
054
セーラン王
『ハイ、
055
別
(
べつ
)
に
信
(
しん
)
ずるといふ
訳
(
わけ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬが、
056
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
も
世界
(
せかい
)
の
創造主
(
さうざうしゆ
)
、
057
国治立
(
くにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
も
矢張
(
やは
)
り
世界
(
せかい
)
の
創造主
(
さうざうしゆ
)
、
058
名
(
な
)
は
変
(
かは
)
れども
元
(
もと
)
は
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だと
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
ります』
059
黄金姫
『
国治立
(
くにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
御
(
ご
)
先祖
(
せんぞ
)
様
(
さま
)
、
060
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
や
自在天
(
じざいてん
)
様
(
さま
)
は
人類
(
じんるゐ
)
の
祖先
(
そせん
)
天足彦
(
あだるひこ
)
、
061
胞場姫
(
えばひめ
)
の
身魂
(
みたま
)
から
発生
(
はつせい
)
した
大蛇
(
をろち
)
や
悪狐
(
あくこ
)
悪鬼
(
あくき
)
の
邪霊
(
じやれい
)
の
憑依
(
ひようい
)
した
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
で、
062
言
(
い
)
はば
其
(
その
)
祖先
(
そせん
)
を
人間
(
にんげん
)
に
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
る
方
(
かた
)
ですから、
063
非常
(
ひじやう
)
な
相違
(
さうゐ
)
があります。
064
神
(
かみ
)
から
現
(
あら
)
はれた
神
(
かみ
)
と、
065
人
(
ひと
)
から
現
(
あら
)
はれた
神
(
かみ
)
とは、
066
そこに
区別
(
くべつ
)
がなければなりませぬよ』
067
セーラン王
『あゝさうで
厶
(
ござ
)
いますかなア。
068
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
奉斎
(
ほうさい
)
主神
(
しゆしん
)
たる
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
も、
069
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
様
(
さま
)
も、
070
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
も
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
で、
071
名称
(
めいしよう
)
が
違
(
ちが
)
ふだけだと
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
ります。
072
私
(
わたし
)
も
固
(
かた
)
くそれを
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
りましたが、
073
さう
承
(
うけたま
)
はれば
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へねばなりますまい。
074
チヨツト
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
母娘
(
おやこ
)
に
見
(
み
)
て
頂
(
いただ
)
きたいものが
厶
(
ござ
)
りますから、
075
どうぞ
私
(
わたし
)
の
籠
(
こも
)
り
場所
(
ばしよ
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
076
妻
(
つま
)
でも
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
でも
誰一人
(
たれひとり
)
入
(
い
)
れたことのない
神聖
(
しんせい
)
な
居間
(
ゐま
)
で
厶
(
ござ
)
います。
077
テームスよ、
078
レーブ、
079
カルと
共
(
とも
)
にここに
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つてゐてくれ』
080
テームスは、
081
テームス
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました』
082
とさし
俯
(
うつ
)
むく。
083
王
(
わう
)
は
母娘
(
おやこ
)
を
伴
(
とも
)
なひ、
084
籠
(
こも
)
りの
室
(
しつ
)
へ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
085
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
れば、
086
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
い
室
(
しつ
)
が
二間
(
ふたま
)
並
(
なら
)
んでゐる。
087
そこには
立派
(
りつぱ
)
に
斎壇
(
さいだん
)
が
設
(
まう
)
けられ、
088
いろいろの
面白
(
おもしろ
)
き
骨董品
(
こつとうひん
)
などが、
089
陳列
(
ちんれつ
)
されてあつた。
090
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の
簾
(
みす
)
を
王
(
わう
)
はクリクリと
捲上
(
まきあ
)
げ、
091
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
ち、
092
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
093
母娘
(
おやこ
)
も
同
(
おな
)
じく
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
094
小声
(
こごゑ
)
に
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
095
終
(
をは
)
つて
斎壇
(
さいだん
)
をよくよく
見
(
み
)
れば、
096
一幅
(
いつぷく
)
の
掛軸
(
かけぢく
)
が
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の
正面
(
しやうめん
)
にかけられ、
097
神酒
(
みき
)
、
098
御饌
(
みけ
)
、
099
御水
(
みもひ
)
等
(
など
)
がキチンと
供
(
そな
)
へられてある。
100
これは
常
(
つね
)
に
王
(
わう
)
が
潔斎
(
けつさい
)
して
神慮
(
しんりよ
)
を
伺
(
うかが
)
ふ
秘密室
(
ひみつしつ
)
であつた。
101
掛物
(
かけもの
)
の
神号
(
しんがう
)
をよく
見
(
み
)
れば、
102
天一
(
てんいち
)
神王
(
しんわう
)
国治立
(
くにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
……と
正面
(
しやうめん
)
に
大字
(
だいじ
)
にて
記
(
しる
)
し、
103
其
(
その
)
真下
(
ました
)
に
教主
(
けうしゆ
)
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
と
記
(
しる
)
し、
104
中央
(
ちうあう
)
の
両側
(
りやうがは
)
に
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
塩長彦
(
しほながひこの
)
命
(
みこと
)
、
105
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
大国彦
(
おほくにひこの
)
命
(
みこと
)
と
王
(
わう
)
の
直筆
(
ぢきひつ
)
で
記
(
しる
)
されてあつた。
106
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
は
此
(
この
)
幅
(
ふく
)
に
目
(
め
)
をとめ、
107
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
へぬ
爽快
(
さうくわい
)
さと
驚
(
おどろ
)
きの
念
(
ねん
)
にうたれ、
108
呆然
(
ばうぜん
)
として
其
(
その
)
神号
(
しんがう
)
を
眺
(
なが
)
めてゐる。
109
セーラン王
『
私
(
わたし
)
の
信仰
(
しんかう
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
います。
110
お
分
(
わか
)
りになりましたか』
111
黄金姫
『
思
(
おも
)
ひもよらぬ
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
きました。
112
これではイルナの
城
(
しろ
)
も
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
、
113
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ。
114
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
御
(
ご
)
先祖
(
せんぞ
)
様
(
さま
)
でも
時世
(
ときよ
)
時節
(
じせつ
)
には
対抗
(
たいかう
)
し
難
(
がた
)
く、
115
一度
(
いちど
)
は
常世彦
(
とこよひこ
)
、
116
常世姫
(
とこよひめ
)
一派
(
いつぱ
)
の
為
(
ため
)
に、
117
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
までお
出
(
い
)
でなさつた
位
(
くらゐ
)
だから、
118
決
(
けつ
)
して
油断
(
ゆだん
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
119
貴方
(
あなた
)
の
信仰
(
しんかう
)
が
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
方
(
はう
)
へでも
分
(
わか
)
らうものなら
大変
(
たいへん
)
だから、
120
今
(
いま
)
暫
(
しばら
)
くは
発表
(
はつぺう
)
せないが
宜
(
よろ
)
しいぞや』
121
セーラン王
『ハイ、
122
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
にさへも
此
(
この
)
室
(
しつ
)
は
覗
(
のぞ
)
かせた
事
(
こと
)
はありませぬ。
123
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
る
者
(
もの
)
はないのですから、
124
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
125
黄金姫
『
仮令
(
たとへ
)
此
(
この
)
室
(
へや
)
を
覗
(
のぞ
)
かぬとも、
126
貴方
(
あなた
)
の
信仰
(
しんかう
)
が
斯
(
か
)
うだとすれば、
127
何時
(
いつ
)
とはなしに、
128
貴方
(
あなた
)
の
声音
(
せいおん
)
に
現
(
あら
)
はれ、
129
皮膚
(
ひふ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
130
遂
(
つひ
)
には
かん
付
(
づ
)
かれるものです。
131
如何
(
どう
)
しても
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
は
包
(
つつ
)
む
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬから』
132
セーラン王
『
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
が
此処
(
ここ
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さつた
以上
(
いじやう
)
は、
133
余
(
あま
)
り
心配
(
しんぱい
)
する
事
(
こと
)
も
要
(
い
)
りますまい。
134
一寸
(
ちよつと
)
これを
御覧
(
ごらん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
135
と
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
二人
(
ふたり
)
を
導
(
みちび
)
く。
136
見
(
み
)
ればここにも
一寸
(
ちよつと
)
した
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
があつて、
137
二幅
(
にふく
)
の
絵像
(
ゑざう
)
が
掲
(
かか
)
げられてあつた。
138
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
139
清照姫
(
きよてるひめ
)
はアツとばかり
驚
(
おどろ
)
かざるを
得
(
え
)
なかつた。
140
それは
日頃
(
ひごろ
)
心
(
こころ
)
にかけてゐる
夫
(
をつと
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
肖像
(
せうざう
)
と
一幅
(
いつぷく
)
は
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
御
(
ご
)
肖像
(
せうざう
)
であつた。
141
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
思
(
おも
)
はず、
142
清照姫
『あゝこれはお
父
(
とう
)
様
(
さま
)
、
143
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
』
144
と
言
(
い
)
はうとするを、
145
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
口
(
くち
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
て、
146
黄金姫
『コレコレ
清照姫
(
きよてるひめ
)
殿
(
どの
)
、
147
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
る。
148
これはキツト
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
と
自在天
(
じざいてん
)
様
(
さま
)
の
絵姿
(
ゑすがた
)
だ。
149
そんな
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
すと、
150
悪魔
(
あくま
)
の
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
つては
大変
(
たいへん
)
ですよ』
151
清照姫
『
父上
(
ちちうへ
)
によう
似
(
に
)
た
御
(
ご
)
肖像
(
せうざう
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア。
152
ホヽヽ』
153
セーラン王
『
私
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
までバラモン
神
(
しん
)
を
信仰
(
しんかう
)
して
此
(
この
)
国
(
くに
)
を
治
(
をさ
)
めて
居
(
を
)
りましたが、
154
或
(
ある
)
夜
(
よ
)
の
夢
(
ゆめ
)
に
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
155
鬼熊別
(
おにくまわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
と
二柱
(
ふたはしら
)
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひ、
156
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
の
有難
(
ありがた
)
き
教訓
(
けうくん
)
を
垂
(
た
)
れさせ
下
(
くだ
)
さいまして、
157
それより
神命
(
しんめい
)
に
従
(
したが
)
ひ、
158
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
信仰
(
しんかう
)
を
励
(
はげ
)
み、
159
時
(
とき
)
の
到
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りました。
160
私
(
わたし
)
の
夢
(
ゆめ
)
に
現
(
あら
)
はれたお
姿
(
すがた
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
して、
161
自
(
みづか
)
ら
筆
(
ふで
)
を
執
(
と
)
り、
162
ソツとお
給仕
(
きふじ
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
163
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
は
神界
(
しんかい
)
にては
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
のお
脇立
(
わきだち
)
になつてゐられます。
164
キツト
其
(
その
)
肉体
(
にくたい
)
も
三五
(
あななひ
)
のお
道
(
みち
)
へお
入
(
はい
)
り
遊
(
あそ
)
ばすでせう。
165
只
(
ただ
)
時間
(
じかん
)
の
問題
(
もんだい
)
のみが
残
(
のこ
)
つてゐるのだと
感
(
かん
)
じて
居
(
を
)
ります』
166
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
は
物
(
もの
)
をも
言
(
い
)
はず
感
(
かん
)
に
打
(
う
)
たれ、
167
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかきくれてゐる。
168
セーラン
王
(
わう
)
は、
169
セーラン王
『
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
目
(
ま
)
のあたり
170
拝
(
をが
)
みし
今日
(
けふ
)
ぞ
尊
(
たふと
)
かりけり。
171
素盞嗚
(
すさのをの
)
神
(
かみ
)
の
尊
(
みこと
)
に
服
(
まつろ
)
ひて
172
教
(
をしへ
)
を
守
(
まも
)
る
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
神司
(
かみ
)
よ。
173
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
は
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
174
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
忍
(
しの
)
びますらむ。
175
時機
(
じき
)
来
(
く
)
ればやがて
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
176
三五教
(
あななひけう
)
の
司
(
つかさ
)
となりまさむ。
177
あゝ
嬉
(
うれ
)
し
黄金姫
(
わうごんひめ
)
や
清照姫
(
きよてるひめ
)
178
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
会
(
あ
)
ひし
今宵
(
こよひ
)
は』
179
黄金
(
わうごん
)
『
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
思
(
おも
)
ひもよらぬ
王
(
きみ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
180
わが
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
の
姿
(
すがた
)
拝
(
をが
)
みし。
181
バラモンの
教
(
をしへ
)
の
御子
(
みこ
)
と
思
(
おも
)
ひしに
182
摩訶
(
まか
)
不思議
(
ふしぎ
)
なる
今宵
(
こよひ
)
なりけり』
183
清照
(
きよてる
)
『
千早振
(
ちはやぶ
)
る
神
(
かみ
)
の
光
(
ひかり
)
の
強
(
つよ
)
ければ
184
父
(
ちち
)
の
命
(
みこと
)
の
心
(
こころ
)
照
(
て
)
りつつ
185
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
は
最早
(
もはや
)
国治立
(
くにはるたちの
)
神
(
かみ
)
の
186
教
(
をしへ
)
の
御子
(
みこ
)
となりましにけむ。
187
セーランの
王
(
きみ
)
の
命
(
みこと
)
よ
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
188
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
ちませ
神
(
かみ
)
のまにまに。
189
清照姫
(
きよてるひめ
)
教
(
をしへ
)
の
司
(
つかさ
)
も
今宵
(
こよひ
)
こそ
190
積
(
つも
)
る
思
(
おも
)
ひの
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
りける』
191
黄金
(
わうごん
)
『
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
のかくれます
192
高照山
(
たかてるやま
)
にとく
進
(
すす
)
みませ。
193
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
は
世人
(
よびと
)
の
恐
(
おそ
)
ろしく
194
噂
(
うはさ
)
すれども
貴
(
うづ
)
の
真秀良場
(
まほらば
)
。
195
百千々
(
ももちぢ
)
の
狼
(
おほかみ
)
の
群
(
むれ
)
従
(
したが
)
へて
196
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
は
王
(
きみ
)
を
待
(
ま
)
ちつつ。
197
いざさらばテームス、レーブ、カル
三人
(
みたり
)
198
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
へとく
出
(
い
)
でませよ』
199
王
(
わう
)
『
黄金姫
(
わうごんひめ
)
神
(
かみ
)
の
御言
(
みこと
)
に
従
(
したが
)
ひて
200
とく
立出
(
たちい
)
でむ
高照山
(
たかてるやま
)
へ。
201
吾
(
わが
)
行
(
ゆ
)
きし
後
(
のち
)
の
館
(
やかた
)
は
汝
(
なが
)
命
(
みこと
)
202
暫
(
しば
)
し
止
(
とど
)
まり
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
はれ』
203
清照
(
きよてる
)
『
大神
(
おほかみ
)
の
稜威
(
いづ
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らされて
204
道
(
みち
)
も
隈
(
くま
)
なく
安
(
やす
)
く
行
(
ゆ
)
きませ。
205
母
(
おや
)
と
娘
(
こ
)
が
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せ
身
(
み
)
を
尽
(
つく
)
し
206
入那
(
いるな
)
の
城
(
しろ
)
を
暫
(
しば
)
し
守
(
まも
)
らむ』
207
王
(
わう
)
『
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
賜
(
たま
)
ひてし
208
生玉章
(
いくたまづさ
)
を
汝
(
なれ
)
に
奉
(
まつ
)
らむ。
209
心
(
こころ
)
して
披
(
ひら
)
き
見給
(
みたま
)
へ
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
210
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
真心
(
まごころ
)
の
色
(
いろ
)
を』
211
と
言
(
い
)
ひながら、
212
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
より
王
(
わう
)
に
遣
(
つか
)
はしたる
密書
(
みつしよ
)
を
黄金姫
(
わうごんひめ
)
に
恭
(
うやうや
)
しく
手渡
(
てわた
)
した。
213
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
手早
(
てばや
)
く
封
(
ふう
)
じ
目
(
め
)
を
切
(
き
)
り、
214
押披
(
おしひら
)
いて
読
(
よ
)
み
下
(
くだ
)
せば、
215
左
(
さ
)
の
文面
(
ぶんめん
)
であつた。
216
『
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
よりセーラン
王
(
わう
)
に
密書
(
みつしよ
)
を
送
(
おく
)
る。
217
一、
218
これの
天地
(
あめつち
)
は
天一
(
てんいち
)
神王
(
しんわう
)
大国治立
(
おほくにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
の
造
(
つく
)
り
給
(
たま
)
ひし
神国
(
しんこく
)
にして、
219
決
(
けつ
)
して
大国彦
(
おほくにひこ
)
、
220
塩長彦
(
しほながひこ
)
の
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
の
創造
(
さうざう
)
せし
天地
(
てんち
)
にあらず。
221
又
(
また
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
として
兵馬
(
へいば
)
の
権
(
けん
)
を
握
(
にぎ
)
り、
222
大教主
(
だいけうしゆ
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
り
居
(
を
)
らるれども、
223
天
(
てん
)
は
何時迄
(
いつまで
)
も
斯
(
か
)
かる
虚偽
(
きよぎ
)
を
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
はず、
224
必
(
かなら
)
ずや
本然
(
ほんぜん
)
の
誠
(
まこと
)
に
立
(
た
)
ち
返
(
かへ
)
り、
225
三五教
(
あななひけう
)
を
信従
(
しんじゆう
)
する
時
(
とき
)
あるべし。
226
それに
付
(
つ
)
いては
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
摂理
(
せつり
)
に
依
(
よ
)
り、
227
吾
(
わが
)
妻子
(
さいし
)
近々
(
きんきん
)
の
中
(
うち
)
に
王
(
わう
)
が
館
(
やかた
)
に
訪問
(
はうもん
)
すべければ、
228
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
を
打明
(
うちあ
)
け、
229
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
最善
(
さいぜん
)
の
努力
(
どりよく
)
をなさるべし。
230
ハルナの
都
(
みやこ
)
は
今
(
いま
)
や
軍隊
(
ぐんたい
)
の
大部分
(
だいぶぶん
)
は
遠征
(
ゑんせい
)
の
途
(
と
)
に
上
(
のぼ
)
り、
231
守
(
まも
)
り
最
(
もつと
)
も
少
(
すく
)
なくなり
居
(
を
)
れり。
232
然
(
しか
)
るに
王
(
わう
)
に
仕
(
つか
)
ふる
右守
(
うもり
)
より
王
(
わう
)
を
廃立
(
はいりつ
)
せむとの
願書
(
ぐわんしよ
)
、
233
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
許
(
もと
)
に
来
(
きた
)
り、
234
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
数千
(
すうせん
)
の
騎士
(
きし
)
を
近々
(
きんきん
)
差向
(
さしむ
)
くる
事
(
こと
)
となりをれば、
235
イルナ
城
(
じやう
)
は
実
(
じつ
)
に
風前
(
ふうぜん
)
の
灯火
(
ともしび
)
なるを
以
(
もつ
)
て、
236
貴王
(
きわう
)
は
吾
(
わが
)
妻子
(
さいし
)
と
共
(
とも
)
に
善後策
(
ぜんごさく
)
を
講
(
かう
)
じ、
237
一
(
いち
)
時
(
じ
)
何
(
いづ
)
れへか
避難
(
ひなん
)
さるべし。
238
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
はハルナの
都
(
みやこ
)
に
止
(
とど
)
まつて、
239
大黒主
(
おほくろぬし
)
を
悔
(
く
)
ひ
改
(
あらた
)
めしめ、
240
其
(
その
)
身魂
(
みたま
)
をして
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
に
救
(
すく
)
はむと
朝夕
(
てうせき
)
努
(
つと
)
めつつあり。
241
吾
(
わが
)
妻子
(
さいし
)
に
面会
(
めんくわい
)
の
日
(
ひ
)
を
期
(
き
)
し、
242
一刻
(
いつこく
)
の
猶予
(
いうよ
)
もなく、
243
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
へ
一
(
いち
)
時
(
じ
)
身
(
み
)
をかくさるべく
呉々
(
くれぐれ
)
も
注意
(
ちゆうい
)
致
(
いた
)
します。
244
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
245
と
記
(
しる
)
されてあつた。
246
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
247
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
久
(
ひさ
)
しぶりに
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
肉筆
(
にくひつ
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
見
(
み
)
て、
248
夫
(
をつと
)
に
直接
(
ちよくせつ
)
会
(
あ
)
ひし
如
(
ごと
)
く、
249
父
(
ちち
)
に
面会
(
めんくわい
)
せし
如
(
ごと
)
く、
250
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み、
251
感涙
(
かんるゐ
)
を
落
(
おと
)
しながら、
252
黄金
(
わうごん
)
『あゝ
之
(
これ
)
にて
何
(
なに
)
もかも
分
(
わか
)
りました。
253
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
貴方
(
あなた
)
を
狼
(
おほかみ
)
の
岩窟
(
いはや
)
へ
誘
(
いざな
)
ひ
来
(
きた
)
れとの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
も、
254
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
の
文面
(
ぶんめん
)
にて
氷解
(
ひようかい
)
しました。
255
あゝ、
256
何
(
なん
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
はどこまでも
注意
(
ちうい
)
周到
(
しうたう
)
なお
方
(
かた
)
だなア』
257
清照
(
きよてる
)
『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
に
直接
(
ちよくせつ
)
お
目
(
め
)
にかかつた
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
します。
258
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
259
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
260
と
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
261
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
聖像
(
せいざう
)
に
向
(
むか
)
つて、
262
感謝
(
かんしや
)
の
詞
(
ことば
)
を
捧
(
ささ
)
げた。
263
黄金
(
わうごん
)
『サアかうなる
上
(
うへ
)
は、
264
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
高照山
(
たかてるやま
)
へ
夜
(
よる
)
の
明
(
あ
)
けない
中
(
うち
)
にお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばせ。
265
申上
(
まをしあ
)
げたき
事
(
こと
)
は
山々
(
やまやま
)
あれど、
266
今
(
いま
)
はさういふ
余裕
(
よゆう
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
267
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
268
とせき
立
(
た
)
つれば
王
(
わう
)
は、
269
セーラン王
『
左様
(
さやう
)
ならば、
270
万事
(
ばんじ
)
宜
(
よろ
)
しく
願
(
ねが
)
ひます』
271
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち、
272
テームス
等
(
ら
)
が
控
(
ひか
)
へてゐる
居間
(
ゐま
)
に
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はした。
273
王
(
わう
)
は
母娘
(
おやこ
)
と
共
(
とも
)
に
表
(
おもて
)
の
居間
(
ゐま
)
に
立現
(
たちあら
)
はれ、
274
テームスに
打
(
う
)
ち
向
(
むか
)
ひ、
275
セーラン王
『テームス、
276
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
277
早
(
はや
)
く
駒
(
こま
)
の
用意
(
ようい
)
をしてくれ。
278
これから
高照山
(
たかてるやま
)
へレーブ、
279
カルを
伴
(
ともな
)
ひ、
280
出発
(
しゆつぱつ
)
致
(
いた
)
すから』
281
テームス
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
282
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
り、
283
馬
(
うま
)
の
用意
(
ようい
)
はチヤンと
整
(
ととの
)
へておきました。
284
何時
(
いつ
)
なりともお
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう』
285
セーラン王
『あゝそれは
有難
(
ありがた
)
い。
286
それなら、
287
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
、
288
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
、
289
あとを
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
290
黄金
(
わうごん
)
『
君
(
きみ
)
ゆきて
如何
(
いか
)
にけながくなるとても
291
われは
館
(
やかた
)
を
守
(
まも
)
りて
待
(
ま
)
たむ。
292
うら
安
(
やす
)
く
進
(
すす
)
み
出
(
い
)
でませ
高照
(
たかてる
)
の
293
山
(
やま
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
神
(
かみ
)
は
待
(
ま
)
たせり。
294
三五
(
あななひ
)
の
教司
(
をしへつかさ
)
の
北光
(
きたてる
)
の
神
(
かみ
)
は
295
君
(
きみ
)
のいでまし
待
(
ま
)
たせ
給
(
たま
)
はむ』
296
王
(
わう
)
『いざさらば
黄金姫
(
わうごんひめ
)
や
清照姫
(
きよてるひめ
)
297
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
よ
惜
(
を
)
しく
別
(
わか
)
れむ』
298
と
歌
(
うた
)
ひながら、
299
慌
(
あわただ
)
しく
表
(
おもて
)
に
出
(
い
)
で、
300
裏門口
(
うらもんぐち
)
より
駒
(
こま
)
引
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
し、
301
暗
(
やみ
)
の
道
(
みち
)
を
辿
(
たど
)
りて、
302
高照山
(
たかてるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
指
(
さ
)
して
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
駆
(
かけ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
303
(
大正一一・一一・一二
旧九・二四
松村真澄
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【第13章 夜の駒|第41巻|舎身活躍|霊界物語|/rm4113】
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