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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第44巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 神示の合離
第1章 笑の恵
第2章 月の影
第3章 守衛の囁
第4章 滝の下
第5章 不眠症
第6章 山下り
第7章 山口の森
第2篇 月明清楓
第8章 光と熱
第9章 怪光
第10章 奇遇
第11章 腰ぬけ
第12章 大歓喜
第13章 山口の別
第14章 思ひ出の歌
第3篇 珍聞万怪
第15章 変化
第16章 怯風
第17章 罵狸鬼
第18章 一本橋
第19章 婆口露
第20章 脱線歌
第21章 小北山
余白歌
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霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
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第44巻(未の巻)
> 第2篇 月明清楓 > 第10章 奇遇
<<< 怪光
(B)
(N)
腰ぬけ >>>
第一〇章
奇遇
(
きぐう
)
〔一一七九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第44巻 舎身活躍 未の巻
篇:
第2篇 月明清楓
よみ(新仮名遣い):
げつめいせいふう
章:
第10章 奇遇
よみ(新仮名遣い):
きぐう
通し章番号:
1179
口述日:
1922(大正11)年12月08日(旧10月20日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年8月18日
概要:
舞台:
山口の森
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
女は自分は楓という名であり、父は珍彦、母は静子、別れた兄は俊というと明かした。治国別は、女の両親はきっと生きていて無事であろうと安堵させた。
晴公は楓の身の上話を聞いてふさぎ込んでいる。万公に問い詰められた晴公は、自分が楓の兄の俊であることを明かした。
兄妹は再会を果たし、二人はうれし涙に暮れた。楓は兄たち三五教の宣伝使一行に、両親を助けてくれるように頼みこんだ。
治国別は二人の再会を祝福し、両親の無事と再会を祈る宣伝歌を歌った。楓と晴公はそれぞれ述懐の歌を歌い、その他の供人たちも二人を励ます歌を歌った。治国別一行はふたたび眠りに就いたが、晴公と楓の兄妹は一睡もせずに涙と共にこれまでの物語を語り明かそうと森の外に立って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-02-11 15:49:50
OBC :
rm4410
愛善世界社版:
130頁
八幡書店版:
第8輯 185頁
修補版:
校定版:
135頁
普及版:
58頁
初版:
ページ備考:
001
万公
(
まんこう
)
、
002
晴公
(
はるこう
)
、
003
竜公
(
たつこう
)
はやつと
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
で
卸
(
おろ
)
し、
004
瘧
(
おこり
)
の
落
(
お
)
ちたやうな
顔
(
かほ
)
をして
女
(
をんな
)
の
顔
(
かほ
)
を
不思議
(
ふしぎ
)
さうに
見守
(
みまも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
005
松彦
(
まつひこ
)
は
何
(
なに
)
呉
(
くれ
)
となく
親切
(
しんせつ
)
に
女
(
をんな
)
を
労
(
いたは
)
り、
006
いろいろと
慰安
(
ゐあん
)
の
言葉
(
ことば
)
を
与
(
あた
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
007
治国別
(
はるくにわけ
)
は
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さに
頭
(
あたま
)
を
垂
(
た
)
れ、
008
目
(
め
)
を
瞬
(
しばたた
)
き
涙
(
なみだ
)
をそつと
拭
(
ぬぐ
)
ひながら、
009
治国別
『
承
(
うけたま
)
はれば
貴女
(
あなた
)
の
家庭
(
かてい
)
には
悲惨
(
ひさん
)
の
幕
(
まく
)
が
下
(
お
)
りたものですなア。
010
そして
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
き
三五教
(
あななひけう
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
居
(
ゐ
)
たために、
011
バラモンに
捕
(
とら
)
へられなさつたとは
実
(
じつ
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
事
(
こと
)
だ。
012
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ。
013
キツと
貴女
(
あなた
)
の
両親
(
りやうしん
)
は
命
(
いのち
)
に
別条
(
べつでう
)
ありませぬよ。
014
これから
私
(
わたし
)
が
何
(
なん
)
とかして
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
して
貴女
(
あなた
)
にお
渡
(
わた
)
し
致
(
いた
)
しませう』
015
女
(
をんな
)
は、
016
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひながら、
017
女(楓)
『ハイ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によう
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいました、
018
あり
難
(
がた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
019
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
遇
(
あ
)
ふたやうに
存
(
ぞん
)
じます。
020
何卒
(
どうぞ
)
憐
(
あは
)
れな
私
(
わたし
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
、
021
お
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
022
両親
(
りやうしん
)
はキツと
助
(
たす
)
かりませうかなア』
023
治国別
『キツと
助
(
たす
)
けてみせませう。
024
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
025
さうして
貴女
(
あなた
)
の
両親
(
りやうしん
)
の
名
(
な
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ひますかな』
026
女(楓)
『ハイ
父
(
ちち
)
の
名
(
な
)
は
珍彦
(
うづひこ
)
、
027
母
(
はは
)
は
静子
(
しづこ
)
と
申
(
まを
)
します。
028
そして
私
(
わたし
)
の
名
(
な
)
は
楓
(
かへで
)
と
申
(
まを
)
します』
029
治国別
『さうしてお
前
(
まへ
)
の
尋
(
たづ
)
ぬる
兄
(
あに
)
の
名
(
な
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふのかなア』
030
楓
『ハイ、
031
兄
(
あに
)
の
名
(
な
)
は
俊
(
とし
)
と
申
(
まを
)
しました。
032
其
(
その
)
兄
(
あに
)
に
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひたいばかりに、
033
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
広
(
ひろ
)
いフサの
国
(
くに
)
を
彷徨
(
さまよ
)
ひ、
034
漸
(
やうや
)
くライオン
河
(
がは
)
の
辺
(
ほとり
)
まで
参
(
まゐ
)
つて……
両親
(
りやうしん
)
は
老
(
お
)
い、
035
足
(
あし
)
の
歩
(
あゆ
)
みも、
036
はかばかしくないので、
037
つひそこへ
住居
(
ぢうきよ
)
を
定
(
さだ
)
めて
居
(
ゐ
)
たので
厶
(
ござ
)
います』
038
晴公
(
はるこう
)
は
此
(
この
)
女
(
をんな
)
の
物語
(
ものがたり
)
を
聞
(
き
)
き、
039
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
をつき、
040
口
(
くち
)
をへの
字
(
じ
)
に
結
(
むす
)
び、
041
目
(
め
)
を
閉
(
ふさ
)
いで、
042
頻
(
しき
)
りにウンウンと
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
きながら、
043
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
き
考
(
かんが
)
へに
沈
(
しづ
)
ンで
居
(
ゐ
)
る。
044
万公
(
まんこう
)
は
勢
(
いきほ
)
ひよく、
045
万公
『オイ
晴公
(
はるこう
)
、
046
何
(
なん
)
だい、
047
こくめい
な
顔
(
かほ
)
をしよつて、
048
貴様
(
きさま
)
が
生
(
う
)
ンだ
ナイス
ぢやないか。
049
仕様
(
しやう
)
もない
言霊
(
ことたま
)
を
出
(
だ
)
して
鬼女
(
きぢよ
)
を
生
(
う
)
ンだと
思
(
おも
)
へば
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
はない、
050
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
のナイスだ。
051
ちつと
噪
(
はしや
)
がぬかい、
052
こンな
時
(
とき
)
こそ
貴様
(
きさま
)
の
威張
(
ゐば
)
る
時
(
とき
)
だよ。
053
思
(
おも
)
ひきや
鬼女
(
きぢや
)
と
思
(
おも
)
ひし
其
(
その
)
影
(
かげ
)
は
054
譬
(
たと
)
へ
方
(
かた
)
なきナイスなりとは
055
だ。
056
本当
(
ほんたう
)
に
貴様
(
きさま
)
は
今夜
(
こんや
)
の
言霊戦
(
ことたません
)
の
殊勲者
(
しゆくんしや
)
だ。
057
この
女
(
をんな
)
を
発見
(
はつけん
)
して
一
(
ひと
)
つ
手
(
て
)
がかりを
得
(
え
)
、
058
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
を
根底
(
こんてい
)
より
覆
(
くつが
)
へし
神力
(
しんりき
)
を
現
(
あら
)
はす
機運
(
きうん
)
が
向
(
む
)
いたのだ。
059
何
(
なに
)
をウンウンと
溜息
(
ためいき
)
をつくのだ。
060
ちつと
確
(
しつか
)
りせぬかい、
061
エーン』
062
晴公
(
はるこう
)
は
力
(
ちから
)
なげに、
063
晴公
『アヽ
済
(
す
)
まぬ。
064
如何
(
どう
)
したらよからうかなア』
065
と
云
(
い
)
ひながら
豆
(
まめ
)
のやうな
涙
(
なみだ
)
をパラパラと
降
(
ふ
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
066
折
(
をり
)
から
十八夜
(
じふはちや
)
の
月
(
つき
)
は、
067
河鹿山
(
かじかやま
)
をかすめて
上
(
のぼ
)
り
初
(
はじ
)
めた。
068
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
とは
云
(
い
)
へ
全体
(
ぜんたい
)
的
(
てき
)
にホンノリと
四辺
(
あたり
)
は
明
(
あか
)
くなつて
来
(
き
)
た。
069
蝋燭
(
らふそく
)
の
火
(
ひ
)
はつぎ
換
(
か
)
へられた。
070
万公
(
まんこう
)
は
元気
(
げんき
)
よく、
071
万公
『
何
(
なん
)
だ
晴公
(
はるこう
)
、
072
貴様
(
きさま
)
は
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだな。
073
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
卵
(
たまご
)
が
何
(
なん
)
だ、
074
メソメソと
吠面
(
ほえづら
)
をかわくと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるかい。
075
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
活
(
くわつ
)
を
入
(
い
)
れてやらう
確
(
しつか
)
りせい』
076
と
云
(
い
)
ひながら
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めて
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
晴公
(
はるこう
)
の
背
(
せ
)
をつづけ
打
(
う
)
ちにした。
077
晴公
『
今
(
いま
)
あの
楓
(
かへで
)
の
云
(
い
)
つた
兄
(
あに
)
と
云
(
い
)
ふのは
俺
(
おれ
)
だよ、
078
この
晴公
(
はるこう
)
だよ』
079
万公
『
何
(
なに
)
、
080
お
前
(
まへ
)
があのナイスの
兄貴
(
あにき
)
か、
081
ヨウさう
聞
(
き
)
くと、
082
どこともなしに
似
(
に
)
よつた
処
(
ところ
)
があるやうだ。
083
もし
先生
(
せんせい
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
があるものですな。
084
これもやつぱり
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
引
(
ひ
)
き
合
(
あは
)
せでせう。
085
晴公
(
はるこう
)
がしやうもない
言霊
(
ことたま
)
を
寝
(
ね
)
もせずに
上
(
あ
)
げて
居
(
を
)
つたのを
見
(
み
)
て
怪体
(
けたい
)
な
男
(
をとこ
)
だと
怪
(
あや
)
しみながら
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
ましたが、
086
矢張
(
やつぱ
)
り
虫
(
むし
)
が
知
(
し
)
らしたので
寝
(
ね
)
られなかつたのですな。
087
兄妹
(
きやうだい
)
の
霊魂
(
れいこん
)
が
交通
(
かうつう
)
したのでせうかな。
088
ヤア
晴公
(
はるこう
)
さまお
目出度
(
めでた
)
う。
089
楓
(
かへで
)
さまお
目出度
(
めでた
)
う。
090
お
祝
(
いは
)
ひ
申
(
まを
)
します。
091
私
(
わたし
)
の
先生
(
せんせい
)
もこの
松彦
(
まつひこ
)
さまと
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
兄弟
(
きやうだい
)
の
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
なさつたのだ、
092
何
(
なん
)
と
人間
(
にんげん
)
の
運命
(
うんめい
)
は
分
(
わか
)
らぬものだなア、
093
先生
(
せんせい
)
、
094
本当
(
ほんと
)
に
不思議
(
ふしぎ
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか』
095
治国別
『さうだなア、
096
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
もあればあるものだ。
097
何
(
いづ
)
れ
宣伝使
(
せんでんし
)
になるものは
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
に
生
(
い
)
き
別
(
わか
)
れたり、
098
再
(
ふたた
)
び
世
(
よ
)
に
立
(
た
)
つ
可
(
べ
)
からざる
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
つた
者
(
もの
)
ばかりが
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
救
(
すく
)
はれて
御用
(
ごよう
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだから、
099
誰
(
たれ
)
だつて
其
(
その
)
来歴
(
らいれき
)
を
洗
(
あら
)
ひ
曝
(
さら
)
せば、
100
皆
(
みな
)
悲惨
(
ひさん
)
な
者
(
もの
)
ばかりだよ。
101
人間心
(
にんげんごころ
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
つて
考
(
かんが
)
へ
出
(
だ
)
した
位
(
くらゐ
)
なら
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
心
(
こころ
)
を
安
(
やす
)
むずる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないのだが、
102
愛
(
あい
)
と
信
(
しん
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
光明
(
くわうみやう
)
に
照
(
て
)
らされて
地上
(
ちじやう
)
の
憂
(
う
)
さを
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
るのだからなア』
103
と
悄然
(
せうぜん
)
として
首垂
(
うなだ
)
れる。
104
万公
(
まんこう
)
は
涙声
(
なみだごゑ
)
を
態
(
わざ
)
と
元気
(
げんき
)
らしく、
105
万公
『
先生
(
せんせい
)
貴方
(
あなた
)
からそう
悄気
(
しよげ
)
て
貰
(
もら
)
つては、
106
吾々
(
われわれ
)
は
如何
(
どう
)
するのです。
107
人
(
ひと
)
の
心霊
(
しんれい
)
は
歓喜
(
くわんき
)
のために
存在
(
そんざい
)
すると
何時
(
いつ
)
も
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか。
108
どうやら
貴方
(
あなた
)
は
歓喜
(
くわんき
)
去
(
さ
)
つて
悲哀
(
ひあい
)
来
(
きた
)
ると
云
(
い
)
ふ
状態
(
じやうたい
)
ですよ。
109
ちつと
確
(
しつか
)
りして
下
(
くだ
)
さいな』
110
治国別
『イヤわしは
歓喜
(
くわんき
)
余
(
あま
)
つての
悲哀
(
ひあい
)
だ。
111
つまり
有難涙
(
ありがたなみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
るのだ。
112
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
恵
(
めぐみ
)
を
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
感謝
(
かんしや
)
して
居
(
ゐ
)
る
随喜
(
ずいき
)
の
涙
(
なみだ
)
だからさう
心配
(
しんぱい
)
をして
呉
(
く
)
れるな』
113
万公
『
私
(
わたし
)
も
歓喜
(
くわんき
)
の
涙
(
なみだ
)
がアンアンアン
溢
(
こぼ
)
れますわい。
114
オンオンオンオイ
晴公
(
はるこう
)
、
115
いや
俊
(
とし
)
さま、
116
お
前
(
まへ
)
も
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
が
溢
(
こぼ
)
れるだらう。
117
歓喜
(
くわんき
)
の
涙
(
なみだ
)
なら
堤防
(
ていばう
)
が
崩
(
くづ
)
れる
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
流
(
なが
)
したらよからう。
118
アンアンアン
余
(
あま
)
り
嬉
(
うれ
)
しくて
泣
(
な
)
き
堪能
(
たんのう
)
が
仕度
(
した
)
いわい』
119
晴公
(
はるこう
)
は
又
(
また
)
涙声
(
なみだごゑ
)
にて、
120
晴公
『
治国別
(
はるくにわけ
)
の
先生
(
せんせい
)
様
(
さま
)
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
121
何卒
(
どうぞ
)
妹
(
いもうと
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
122
治国別
『ウン
私
(
わたし
)
も
満足
(
まんぞく
)
だが、
123
お
前
(
まへ
)
も
嘸
(
さぞ
)
満足
(
まんぞく
)
だらう』
124
楓
『あなたは
兄上
(
あにうへ
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか、
125
妾
(
わたし
)
は
楓
(
かへで
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
126
ようまあ
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
127
どうぞお
父
(
とう
)
さまやお
母
(
かあ
)
さまの
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
うて
下
(
くだ
)
さいませ。
128
貴兄
(
あなた
)
にこの
事
(
こと
)
さへ
知
(
し
)
らして
置
(
お
)
けば
楓
(
かへで
)
は
此
(
この
)
儘
(
まま
)
死
(
し
)
すとも
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
思
(
おも
)
ひは
残
(
のこ
)
りませぬ、
129
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
130
晴公
『
妹
(
いもうと
)
随分
(
ずゐぶん
)
苦労
(
くらう
)
をしたであらうなア、
131
俺
(
おれ
)
だとて
親兄妹
(
おやきやうだい
)
の
事
(
こと
)
を
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
忘
(
わす
)
れた
事
(
こと
)
はない。
132
雨
(
あめ
)
の
晨
(
あした
)
風
(
かぜ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
アーメニヤの
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
め、
133
両親
(
りやうしん
)
は
如何
(
いか
)
に、
134
妹
(
いもうと
)
は
如何
(
いか
)
にと、
135
涙
(
なみだ
)
の
種
(
たね
)
がつきる
程
(
ほど
)
どれ
丈
(
だけ
)
泣
(
な
)
き
暮
(
く
)
らしたか
知
(
し
)
れない。
136
治国別
(
はるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
拾
(
ひろ
)
はれて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
に
入
(
い
)
り、
137
歓喜
(
くわんき
)
の
雨
(
あめ
)
に
浴
(
よく
)
し、
138
「かへらぬ
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ふまい」といつも
心
(
こころ
)
を
紛
(
まぎ
)
らし、
139
馬鹿口
(
ばかぐち
)
ばかりたたいて
浮世
(
うきよ
)
三分
(
さんぶ
)
五厘
(
ごりん
)
で
表面
(
へうめん
)
は
暮
(
く
)
らして
居
(
ゐ
)
るものの、
140
恩愛
(
おんあい
)
の
覊
(
きづな
)
はどうしても
切
(
き
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
141
妹
(
いもうと
)
、
142
俺
(
おれ
)
も
会
(
あ
)
ひたかつた』
143
と
人目
(
ひとめ
)
も
構
(
かま
)
はず
楓
(
かへで
)
の
体
(
からだ
)
を
抱
(
いだ
)
きかかへ、
144
一言
(
ひとこと
)
も
発
(
はつ
)
し
得
(
え
)
ず
泣
(
な
)
き
崩
(
くづ
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
145
勇
(
いさ
)
みをつけむと
治国別
(
はるくにわけ
)
は
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
しぬ。
146
治国別
『
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
147
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
148
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
149
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
は
荒
(
すさ
)
ぶとも
150
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
三五
(
あななひ
)
の
151
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
152
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
153
善神
(
ぜんしん
)
邪神
(
じやしん
)
を
立
(
た
)
て
分
(
わ
)
ける
154
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
155
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
156
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
157
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
せ
158
身
(
み
)
の
禍
(
わざはひ
)
は
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
159
天地
(
てんち
)
を
造
(
つく
)
りたまひたる
160
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
のます
限
(
かぎ
)
り
161
信
(
しん
)
と
愛
(
あい
)
との
備
(
そな
)
はりし
162
誠
(
まこと
)
の
氏子
(
うぢこ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
163
守
(
まも
)
りたまはぬ
事
(
こと
)
やある
164
晴公
(
はるこう
)
楓
(
かへで
)
の
両人
(
りやうにん
)
よ
165
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
けく
平
(
たひ
)
らけく
166
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せよ
千早
(
ちはや
)
振
(
ふ
)
る
167
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
に
168
親子
(
おやこ
)
兄妹
(
きやうだい
)
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
169
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
の
楽
(
たの
)
しみを
170
摂受
(
せつじゆ
)
し
得
(
う
)
るは
目
(
ま
)
のあたり
171
治国別
(
はるくにわけ
)
は
三五
(
あななひ
)
の
172
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
を
頼
(
たよ
)
りつつ
173
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
の
望
(
のぞ
)
みをば
174
必
(
かなら
)
ず
叶
(
かな
)
へ
与
(
あた
)
ふべし
175
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
共
(
とも
)
にあり
176
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
も
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
177
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
は
178
如何
(
いか
)
に
悪魔
(
あくま
)
の
荒
(
すさ
)
ぶとも
179
如何
(
いか
)
でか
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
180
大和心
(
やまとごころ
)
を
振
(
ふ
)
り
興
(
おこ
)
し
181
四方
(
よも
)
の
醜草
(
しこぐさ
)
薙払
(
なぎはら
)
ひ
182
天地
(
てんち
)
に
塞
(
ふさ
)
がる
叢雲
(
むらくも
)
を
183
生言霊
(
いくことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
に
184
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひつつ
天
(
あま
)
つたふ
185
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
の
清
(
きよ
)
きごと
186
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
かげの
照
(
て
)
る
如
(
ごと
)
く
187
吾
(
わ
)
が
神力
(
しんりき
)
を
輝
(
かがや
)
かし
188
バラモン
教
(
けう
)
の
曲神
(
まがかみ
)
を
189
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
歓楽
(
くわんらく
)
の
190
海
(
うみ
)
に
真如
(
しんによ
)
の
日月
(
じつげつ
)
を
191
浮
(
うか
)
べて
歓喜
(
くわんき
)
の
小波
(
さざなみ
)
に
192
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
渡
(
わた
)
す
法
(
のり
)
の
船
(
ふね
)
193
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
けくおぼされよ
194
いざこれよりは
曲神
(
まがかみ
)
の
195
軍
(
いくさ
)
の
砦
(
とりで
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ
196
天津
(
あまつ
)
御神
(
みかみ
)
の
給
(
たま
)
ひてし
197
生言霊
(
いくことたま
)
を
打
(
う
)
ち
出
(
だ
)
して
198
天地
(
てんち
)
清浄
(
しやうじやう
)
山川
(
やまかは
)
も
199
木草
(
きくさ
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
るまで
200
歓喜
(
くわんき
)
の
雨
(
あめ
)
に
浴
(
よく
)
せしめ
201
救
(
すく
)
ひて
往
(
ゆ
)
かむ
惟神
(
かむながら
)
202
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
亀彦
(
かめひこ
)
が
203
治国別
(
はるくにわけ
)
と
現
(
あら
)
はれて
204
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
205
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
206
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましませよ。
207
今
(
いま
)
のぼる
月
(
つき
)
の
御光
(
みひかり
)
親
(
おや
)
と
子
(
こ
)
の
208
身
(
み
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
を
守
(
まも
)
らせたまへ。
209
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
時
(
とき
)
をまたせよ
楓姫
(
かへでひめ
)
210
珍彦
(
うづひこ
)
静子
(
しづこ
)
の
親
(
おや
)
に
遇
(
あ
)
はさむ。
211
たらちねの
親
(
おや
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
日月
(
じつげつ
)
の
212
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
く
光
(
ひかり
)
なるかも。
213
七里
(
ななさと
)
を
照
(
て
)
らすと
云
(
い
)
へる
垂乳根
(
たらちね
)
の
214
親
(
おや
)
の
光
(
ひかり
)
ぞめでたかりけり。
215
治国別
(
はるくにわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
は
村肝
(
むらきも
)
の
216
心
(
こころ
)
の
限
(
かぎ
)
り
汝
(
なれ
)
をたすけむ』
217
楓
(
かへで
)
は
唄
(
うた
)
ふ。
218
楓
『たまちはふ
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
に
遇
(
あ
)
ひしごと
219
吾
(
われ
)
は
心
(
こころ
)
も
勇
(
いさ
)
み
来
(
き
)
にけり。
220
有難
(
ありがた
)
き
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
照
(
て
)
らされて
221
吾
(
わが
)
父母
(
ちちはは
)
に
遇
(
あ
)
ふ
日
(
ひ
)
待
(
ま
)
たるる。
222
吾
(
わが
)
兄
(
あに
)
に
思
(
おも
)
はぬ
処
(
ところ
)
で
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
223
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
のとめどなきかな。
224
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
を
恨
(
うら
)
みし
吾
(
われ
)
こそは
225
身
(
み
)
の
愚
(
おろか
)
さを
今
(
いま
)
ぞ
悔
(
く
)
いぬる。
226
垂乳根
(
たらちね
)
の
親
(
おや
)
は
如何
(
いか
)
にと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
227
胸
(
むね
)
迫
(
せま
)
りつつ
神詣
(
かみまう
)
でせし。
228
父母
(
ちちはは
)
を
奪
(
うば
)
ひ
去
(
さ
)
りたる
曲神
(
まがかみ
)
を
229
憎
(
にく
)
みしあまり
醜業
(
しこわざ
)
せしかな。
230
大空
(
おほぞら
)
を
照
(
て
)
らして
登
(
のぼ
)
る
月影
(
つきかげ
)
を
231
見
(
み
)
るにつけてもうら
恥
(
はづ
)
かしき』
232
晴公
(
はるこう
)
『
三五
(
あななひ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
に
浴
(
よく
)
しつつ
233
浮世
(
うきよ
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
覚
(
さま
)
しけるかな。
234
妹
(
いもうと
)
と
聞
(
き
)
くより
心
(
こころ
)
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
ちて
235
抱
(
だ
)
きつきたくぞ
思
(
おも
)
ひけるかな。
236
バラモンに
捕
(
とら
)
へられたる
父母
(
ちちはは
)
の
237
身
(
み
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
を
果
(
は
)
かなくぞ
思
(
おも
)
ふ。
238
さりながら
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
垂乳根
(
たらちね
)
の
239
身
(
み
)
を
隅
(
くま
)
もなく
守
(
まも
)
りたまはむ。
240
垂乳根
(
たらちね
)
の
父
(
ちち
)
珍彦
(
うづひこ
)
よ
母
(
はは
)
の
君
(
きみ
)
よ
241
今
(
いま
)
兄妹
(
きやうだい
)
が
救
(
すく
)
ひまつらむ。
242
さは
云
(
い
)
へどか
弱
(
よわ
)
きわれの
力
(
ちから
)
ならず
243
産土山
(
うぶすなやま
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに。
244
治国別
(
はるくにわけ
)
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
助
(
たす
)
けられ
245
吾
(
わが
)
垂乳根
(
たらちね
)
を
救
(
すく
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しさ。
246
曲神
(
まがかみ
)
の
如何
(
いか
)
程
(
ほど
)
せまり
来
(
きた
)
るとも
247
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
におひ
退
(
そ
)
けやらむ。
248
妹
(
いもうと
)
よ
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
かれ
三五
(
あななひ
)
の
249
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
見捨
(
みす
)
てたまはじ』
250
楓
(
かへで
)
『
有難
(
ありがた
)
し
兄
(
あに
)
の
命
(
みこと
)
の
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
を
251
胸
(
むね
)
にたたみて
守
(
まも
)
りとやせむ。
252
アーメニヤ
恋
(
こひ
)
しき
家
(
いへ
)
をふり
捨
(
す
)
てて
253
逍
(
さまよ
)
ひし
親子
(
おやこ
)
の
身
(
み
)
の
果
(
はか
)
なさよ。
254
黄金姫
(
わうごんひめ
)
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
助
(
たす
)
けられ
255
またもやここに
救
(
すく
)
はれにけり。
256
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
経綸
(
しぐみ
)
257
見直
(
みなほ
)
し
見
(
み
)
れば
憂
(
う
)
き
事
(
こと
)
もなし。
258
憂
(
う
)
き
事
(
こと
)
のなほ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
に
積
(
つも
)
るとも
259
何
(
なに
)
か
恐
(
おそ
)
れむ
神
(
かみ
)
のまにまに』
260
松彦
(
まつひこ
)
『
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
大空
(
おほぞら
)
に
照
(
て
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
261
曲
(
まが
)
のかくらふ
隙
(
すき
)
はあらまし。
262
ランチてふ
軍
(
いくさ
)
の
司
(
つかさ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
て
263
生言霊
(
いくことたま
)
をたむけてや
見
(
み
)
む。
264
愛信
(
あいしん
)
の
誠
(
まこと
)
の
剣
(
つるぎ
)
振
(
ふ
)
りかざし
265
曲
(
まが
)
のとりでを
切
(
き
)
りはふりなむ。
266
面白
(
おもしろ
)
しあゝ
勇
(
いさ
)
ましき
門出
(
かどで
)
かな
267
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へし
軍司
(
いくさづかさ
)
の』
268
万公
(
まんこう
)
『
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
に
勝
(
まさ
)
る
宝
(
たから
)
なし
269
珍彦
(
うづひこ
)
静子
(
しづこ
)
の
心
(
こころ
)
しのばゆ。
270
珍彦
(
うづひこ
)
よ
静子
(
しづこ
)
の
姫
(
ひめ
)
よ
待
(
ま
)
てしばし
271
救
(
すくひ
)
の
神
(
かみ
)
と
現
(
あら
)
はれゆかむ。
272
ゆくりなく
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひたる
山口
(
やまぐち
)
の
273
森
(
もり
)
は
結
(
むす
)
びの
神
(
かみ
)
にますらむ』
274
竜公
(
たつこう
)
『
常暗
(
とこやみ
)
の
森
(
もり
)
を
照
(
て
)
らして
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
275
怪
(
あや
)
しき
影
(
かげ
)
に
驚
(
おどろ
)
きしかな。
276
さりながら
世
(
よ
)
にも
稀
(
まれ
)
なるナイスぞと
277
悟
(
さと
)
りし
時
(
とき
)
の
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
けさ。
278
今
(
いま
)
となり
身
(
み
)
の
愚
(
おろ
)
かさを
顧
(
かへり
)
みて
279
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
さへ
赤
(
あか
)
くなりぬる。
280
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
に
醜
(
しこ
)
の
曲津
(
まがつ
)
の
潜
(
ひそ
)
むらむ
281
正
(
ただ
)
しき
人
(
ひと
)
をおぢ
怖
(
おそ
)
れけり。
282
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
に
潜
(
ひそ
)
む
曲神
(
まがかみ
)
を
283
払
(
はら
)
はせたまへ
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
。
284
治国別
(
はるくにわけ
)
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
従
(
したが
)
ひて
285
言霊戦
(
ことたまいくさ
)
に
向
(
むか
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しさ』
286
治国別
(
はるくにわけ
)
『
山口
(
やまぐち
)
の
森
(
もり
)
に
休
(
やす
)
らひ
兄妹
(
おとどひ
)
の
287
名乗
(
なの
)
りあげたる
事
(
こと
)
の
床
(
ゆか
)
しさ。
288
片彦
(
かたひこ
)
やランチ
将軍
(
しやうぐん
)
何者
(
なにもの
)
ぞ
289
彼
(
かれ
)
は
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
なれば。
290
吾
(
われ
)
こそは
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
なり
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
291
いかで
恐
(
おそ
)
れむ
人
(
ひと
)
の
御子
(
みこ
)
らに。
292
さりながら
心
(
こころ
)
高
(
たか
)
ぶる
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ
293
言霊戦
(
ことたません
)
に
向
(
むか
)
ふ
人々
(
ひとびと
)
。
294
たらちねの
親子
(
おやこ
)
兄妹
(
きやうだい
)
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
295
抱
(
いだ
)
き
喜
(
よろこ
)
ぶ
時
(
とき
)
の
待
(
ま
)
たるる。
296
夜
(
よ
)
や
更
(
ふ
)
けぬ
月
(
つき
)
は
御空
(
みそら
)
に
上
(
のぼ
)
りましぬ
297
いざいねませよ
百
(
もも
)
の
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
』
298
晴公
(
はるこう
)
『
神司
(
かむづかさ
)
宣
(
の
)
らせたまへる
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
も
299
守
(
まも
)
るよしなき
今日
(
けふ
)
の
嬉
(
うれ
)
しさ。
300
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて
森
(
もり
)
の
夜
(
よ
)
の
301
明
(
あ
)
けゆく
空
(
そら
)
を
待
(
ま
)
ちあぐむなり』
302
楓
(
かへで
)
『なつかしき
兄
(
あに
)
の
命
(
みこと
)
よ
治国別
(
はるくにわけ
)
の
303
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
御言
(
みこと
)
守
(
まも
)
りませ
304
さりながら
妾
(
わらは
)
も
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
305
ねるに
寝
(
ね
)
られぬ
今宵
(
こよひ
)
ばかりは』
306
治国別
(
はるくにわけ
)
『
兄妹
(
きやうだい
)
の
心
(
こころ
)
はさもやあるべしと
307
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
しおく
308
いざさらば
万公
(
まんこう
)
五三公
(
いそこう
)
竜公
(
たつこう
)
よ
309
松彦
(
まつひこ
)
共
(
とも
)
に
一
(
ひと
)
ねむりせよ』
310
松彦
(
まつひこ
)
『
吾
(
わが
)
兄
(
あに
)
の
言葉
(
ことば
)
にならひ
人々
(
ひとびと
)
よ
311
よくねむりませ
寅
(
とら
)
の
刻
(
こく
)
まで』
312
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひて
治国別
(
はるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は、
313
やすやすと
眠
(
ねむ
)
りについた。
314
晴公
(
はるこう
)
、
315
楓
(
かへで
)
の
兄妹
(
きやうだい
)
は
嬉
(
うれ
)
しさの
余
(
あま
)
り
一睡
(
いつすゐ
)
もせず
辺
(
あた
)
りを
憚
(
はばか
)
り、
316
ひそびそと
長物語
(
ながものがたり
)
を
涙
(
なみだ
)
とともに
語
(
かた
)
り
明
(
あ
)
かさむと
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立出
(
たちい
)
で
兄妹
(
きやうだい
)
は
月光
(
げつくわう
)
を
浴
(
あ
)
びて
森
(
もり
)
の
外
(
そと
)
を
逍遥
(
せうえう
)
する
真夜中
(
まよなか
)
、
317
初冬
(
しよとう
)
の
月
(
つき
)
は
皎々
(
かうかう
)
として
満天
(
まんてん
)
に
輝
(
かがや
)
き、
318
此
(
この
)
森
(
もり
)
の
外面
(
ぐわいめん
)
は
白
(
しろ
)
く
光
(
ひか
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
319
(
大正一一・一二・八
旧一〇・二〇
加藤明子
録)
320
(昭和九・一二・二七 王仁校正)
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