霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 大根蕪(だいこんかぶら)〔一一九三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第1篇 小北の特使 よみ(新仮名遣い):こぎたのとくし
章:第3章 大根蕪 よみ(新仮名遣い):だいこんかぶら 通し章番号:1193
口述日:1922(大正11)年12月11日(旧10月23日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
お寅に引っ張られてウラナイ教にやってきた松彦の前に、魔我彦が現れて、教主蠑螈別の代理だと言って挨拶をなした。
松彦は、お寅が言うように自分の身魂がそれほどウラナイ教にとって尊い神格ならば、教主自身が挨拶に来てもよさそうなものなのに、誠のある扱いをされているようには見えないと言って、去ろうとする。
お寅と魔我彦は松彦を引き留め、蠑螈別に松彦の申し分をよく伝えるからと一同をその場に待たせて奥の間に姿を隠した。
万公は長く待たされて不満を抱き、松彦を尊い神様だと崇めておきながら、入信したら謀反を起こすつもりだろうと、松彦に出立を促した。
五三公は、高姫・黒姫が悪神にうつられて開いたウラナイ教だが、教祖の高姫・黒姫自身が今や立派な三五教の宣伝使となり、自ら愛想をつかした教えに真実がありそうはない、と松彦に意見する。
アク、タク、テクも万公と五三公に同調するが、松彦はいましばし自分のなすがままに任せて見ておいてくれという。
万公たちがウラナイ教を責めるのを聞いていた文助は、万公と言い争いになる。万公は文助をからかい、それにうんざりした文助は、奥へ行って教祖に催促をしてくると姿を隠した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:4545 OBC :rm4503
愛善世界社版:36頁 八幡書店版:第8輯 266頁 修補版: 校定版:38頁 普及版:17頁 初版: ページ備考:
001艮(うしとら)婆(ば)さまに誘(さそ)はれて
002末代(まつだい)さまの松彦(まつひこ)は
003万公(まんこう)五三公(いそこう)其(その)外(ほか)の
004三人(みたり)と共(とも)に急坂(きふはん)を
005心(こころ)ならずも登(のぼ)りゆく
006川辺(かはべ)の松(まつ)の根本(ねもと)なる
007千引(ちびき)の岩(いは)に包(つつ)まれし
008秘密(ひみつ)の鍵(かぎ)を握(にぎ)りつつ
009油断(ゆだん)ならじと村肝(むらきも)の
010心(こころ)を固(かた)め腹(はら)を据(す)ゑ
011さあらぬ体(てい)を装(よそほ)ひつ
012細(ほそ)い階段(きざはし)スタスタと
013刻(きざ)んで上(のぼ)る門(もん)の前(まへ)
014お寅(とら)婆(ば)さまは立(た)ち止(と)まり
015これこれ申(まを)し受付(うけつけ)の
016文助(ぶんすけ)さまよ末代(まつだい)の
017神(かみ)の生宮(いきみや)初(はじ)めとし
018五(ご)人(にん)のガラクタ神(かみ)さまが
019いよいよ此処(ここ)へお出(で)ましだ
020一(いち)時(じ)も早(はや)く奥(おく)へいて
021蠑螈別(いもりわけ)の教祖(けうそ)さまに
022早(はや)く取次(とりつぎ)なされませ
023神(かみ)の恵(めぐみ)も大広木(おほひろき)
024正宗(まさむね)さまや義理(ぎり)天上(てんじやう)
025日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)も
026嘸(さぞ)や満足(まんぞく)なされましよ
027竜宮海(りうぐうかい)の乙姫(おとひめ)が
028懸(かか)りたまうた肉(にく)の宮(みや)
029艮(うしとら)婆(ば)さまの挨拶(あいさつ)で
030ここまで喰(くわ)へて来(き)た程(ほど)に
031グヅグヅしてると帰(かへ)られちや
032又(また)もや元(もと)の杢阿弥(もくあみ)だ
033早(はや)く早(はや)くと小声(こごゑ)にて
034耳(みみ)に口寄(くちよ)せ囁(ささや)けば
035文助(ぶんすけ)爺(ぢ)さまは頭(かしら)をば
036縦(たて)に三(み)つ四(よ)つ振(ふ)りながら
037川(かは)の流(なが)れを遡(さかのぼ)る
038やうな足(あし)つきトボトボと
039襖(ふすま)押開(おしあ)け奥(おく)の間(ま)へ
040白(しろ)き姿(すがた)をかくしける
041暫(しばら)くあつて魔我彦(まがひこ)は
042満面(まんめん)笑(ゑみ)を湛(たた)へつつ
043気(き)もいそいそといで迎(むか)へ
044貴方(あなた)は末代(まつだい)日(ひ)の王(わう)の
045天(てん)の大神(おほかみ)生宮(いきみや)だ
046能(よ)くまアお出(いで)下(くだ)さつた
047正宗(まさむね)さまが奥(おく)の間(ま)で
048山野(さんや)河海(かかい)の珍肴(ちんかう)に
049ポートワインの瓶(びん)並(なら)べ
050にこにこ顔(がほ)で待(ま)ちたまふ
051遠慮(ゑんりよ)は決(けつ)して入(い)りませぬ
052貴方(あなた)は神(かみ)の生宮(いきみや)だ
053かうなる上(うへ)はお互(たがひ)に
054敵(てき)と味方(みかた)の隔(へだ)てなく
055腹(はら)を合(あは)して神業(しんげふ)に
056力(ちから)の限(かぎ)り尽(つく)しませう
057小(ちひ)さき隔(へだ)てを拵(こしら)へて
058ゴテゴテ争(あらそ)ふ時(とき)でない
059神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の御(ご)時節(じせつ)が
060いよいよ切迫(せつぱく)した上(うへ)は
061末代(まつだい)様(さま)の肉(にく)の宮(みや)
062どうしてもかうしても此(この)山(やま)に
063居(を)つて貰(もら)はにやなりませぬ
064神(かむ)素盞嗚(すさのを)の悪神(あくがみ)が
065立(た)てた教(をしへ)に沈溺(ちんでき)し
066下(くだ)らぬ熱(ねつ)を吹(ふ)き乍(なが)ら
067広(ひろ)い世界(せかい)を遠近(をちこち)と
068宣伝(せんでん)して居(ゐ)る馬鹿者(ばかもの)が
069沢山(たくさん)あると聞(き)きました
070承(うけたま)はれば貴方(あなた)様(さま)
071三五教(あななひけう)にお入(はい)りと
072聞(き)いて一寸(ちよつと)は驚(おどろ)いた
073さはさり乍(なが)ら能(よ)く聞(き)けば
074河鹿(かじか)峠(たうげ)で兄(あに)様(さま)に
075廻(めぐ)り会(あ)うたが嬉(うれ)しさに
076ほんの当座(たうざ)の出来(でき)心(ごころ)
077三五教(あななひけう)に御(ご)入信(にふしん)
078なさつた事(こと)が知(し)れた故(ゆゑ)
079いよいよこいつは脈(みやく)がある
080こんな結構(けつこう)な肉宮(にくみや)を
081ムザムザ帰(かへ)してはならないと
082正宗(まさむね)さまの肉宮(にくみや)が
083焦(こが)れ遊(あそ)ばしお寅(とら)さまを
084もつて態々(わざわざ)貴方(あなた)をば
085引(ひ)き留(と)めなさつた御(ご)無礼(ぶれい)を
086よきに見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
087宣(の)り直(なほ)しませ魔我彦(まがひこ)が
088蠑螈別(いもりわけ)の代理(だいり)とし
089茲(ここ)に挨拶(あいさつ)仕(つかまつ)る
090サアサア早(はや)う遠慮(ゑんりよ)なく
091奥(おく)へ通(とほ)つて下(くだ)さんせ
092神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の糸口(いとぐち)が
093開(ひら)けて来(きた)る小北山(こぎたやま)
094これ程(ほど)目出度(めでた)い事(こと)あらうか
095あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
096神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎ奉(まつ)る。
097松彦(まつひこ)『朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
098 万公(まんこう)『悪魔(あくま)は如何(いか)に叫(さけ)ぶとも
099松彦(まつひこ)『月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
100 万公(まんこう)『つまらぬ教(をしへ)を聞(き)くとても
101松彦(まつひこ)『仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
102 万公(まんこう)『足(た)らはぬ吾(われ)等(ら)の魂(たましひ)で
103松彦(まつひこ)『誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ
104 万公(まんこう)『誠(まこと)の事(こと)は分(わか)らない
105松彦(まつひこ)『此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
106 万公(まんこう)『此(この)世(よ)の罪(つみ)を神直日(かむなほひ)
107松彦(まつひこ)『心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
108 万公(まんこう)『困(こま)つた事(こと)と知(し)り乍(なが)ら
109松彦(まつひこ)『唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
110 万公(まんこう)『唯(ただ)何(なん)となく調(しら)べむと
111松彦(まつひこ)『直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
112 万公(まんこう)『何(なに)は兎(と)もあれ上(のぼ)り来(き)て
113松彦(まつひこ)『身(み)の過(あやまち)は宣直(のりなほ)す
114 万公(まんこう)『皆(みな)山坂(やまさか)を乗(の)り越(こ)えて
115松彦(まつひこ)『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
116 万公(まんこう)『危(あぶ)ない教(をしへ)を宣伝(せんでん)し
117松彦(まつひこ)『治国別(はるくにわけ)の後(あと)追(お)うて
118 万公(まんこう)『蠑螈(いもり)の別(わけ)に招(まね)かれて
119松彦(まつひこ)『漸(やうや)く此処(ここ)に上(のぼ)り来(き)ぬ
120 万公(まんこう)『如何(いか)なる事(こと)か知(し)らねども
121松彦(まつひこ)『末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の神(かみ)
122 万公(まんこう)『なぞと云(い)はれて松彦(まつひこ)は
123松彦(まつひこ)『怪(あや)しき雲(くも)に覆(おほ)はれつ
124 万公(まんこう)『様子(やうす)探(さぐ)らむものをとて
125松彦(まつひこ)『忙(せわ)しき身(み)をば顧(かへり)みず
126 万公(まんこう)『お寅(とら)婆(ば)さまの後(あと)につき
127松彦(まつひこ)『来(きた)りて見(み)れば文助(ぶんすけ)が
128 万公(まんこう)『置物然(おきものぜん)と坐(すわ)り居(を)る
129松彦(まつひこ)『お寅(とら)婆(ば)さまは声(こゑ)をかけ
130 万公(まんこう)『教主(けうしゆ)の宮(みや)に逸早(いちはや)く
131松彦(まつひこ)『報告(はうこく)なされと急(せ)き立(た)てる
132 万公(まんこう)『合点(がてん)往(ゆ)かぬと待(ま)つうちに
133松彦(まつひこ)『やつて来(き)たのはお前(まへ)さま
134 万公(まんこう)『義理(ぎり)天上(てんじやう)の肉宮(にくみや)と
135松彦(まつひこ)『名乗(なの)るお前(まへ)は魔我彦(まがひこ)か
136 万公(まんこう)『道理(だうり)で腰(こし)が曲(まが)つてる
137松彦(まつひこ)『丑寅(うしとら)婆(ば)さまの云(い)うたよに
138 万公(まんこう)『この松彦(まつひこ)が天(てん)の神(かみ)
139松彦(まつひこ)『一番(いちばん)偉(えら)い身魂(みたま)なら
140 万公(まんこう)『蠑螈(いもり)の別(わけ)は逸早(いちはや)く
141松彦(まつひこ)『迎(むか)ひに来(こ)なくちやならうまい
142 万公(まんこう)『何(なに)か秘密(ひみつ)が此(この)家(いへ)に
143松彦(まつひこ)『潜(ひそ)んで居(ゐ)るに違(ちが)ひない
144 万公(まんこう)『これや浮(う)か浮(う)かと奥(おく)の間(ま)に
145松彦(まつひこ)『進(すす)む訳(わけ)には行(ゆ)きませぬ
146 万公(まんこう)『誠(まこと)の心(こころ)があるならば
147松彦(まつひこ)『肝腎要(かんじんかなめ)の教祖(けうそ)さま
148 万公(まんこう)『蠑螈別(いもりわけ)が吾(わが)前(まへ)に
149松彦(まつひこ)『お越(こ)しになつて御(ご)挨拶(あいさつ)
150 万公(まんこう)『叮嚀(ていねい)になさらにやならうまい
151松彦(まつひこ)『これが第一(だいいち)不思議(ふしぎ)ぞや
152 万公(まんこう)『魔我彦(まがひこ)さまよ今一度(いまいちど)
153松彦(まつひこ)『奥(おく)の一間(ひとま)に駆(か)け入(い)つて
154 万公(まんこう)『確(たしか)な返答(へんたふ)を聞(き)いた上(うへ)
155松彦(まつひこ)『又(また)改(あらた)めて御(ご)挨拶(あいさつ)
156 万公(まんこう)『得心(とくしん)するよに云(い)うて呉(く)れ
157松彦(まつひこ)『さうでなければ何処(どこ)迄(まで)も
158 万公(まんこう)『面会(めんくわい)する事(こと)お断(ことわ)り
159松彦(まつひこ)『これからぼつぼつ帰(かへ)ります
160 万公(まんこう)『これこれ丑寅(うしとら)お婆(ばあ)さま
161松彦(まつひこ)『いかいお世話(せわ)になりました
162 万公(まんこう)『いざいざさらばいざさらば』
163 お寅婆(とらばば)は両手(りやうて)を拡(ひろ)げて、
164『これこれもうし肉(にく)の宮(みや)
165末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の神(かみ)
166気(き)が短(みじか)いも程(ほど)がある
167悪気(わるぎ)を廻(まは)して貰(もら)つては
168大(おほい)に迷惑(めいわく)致(いた)します
169正宗(まさむね)さまの肉宮(にくみや)は
170貴方(あなた)を決(けつ)して袖(そで)にせぬ
171一(いち)時(じ)も早(はや)く現(あら)はれて
172飛(と)びつきたいよに心(こころ)では
173思(おも)うて厶(ござ)るは知(し)れた事(こと)
174さはさり乍(なが)ら八百万(やほよろづ)
175尊(たふと)き神(かみ)が出入(でいり)して
176お神酒(みき)を飲(あが)つて厶(ござ)る故(ゆゑ)
177どしてもこしても暇(ひま)が無(な)い
178短気(たんき)を出(だ)さずに気(き)を静(しづ)め
179暫(しばら)く待(ま)つて下(くだ)さんせ
180貴方(あなた)の顔(かほ)を潰(つぶ)すよな
181下手(へた)なる事(こと)はさせませぬ
182これこれ日(ひ)の出(で)の義理(ぎり)天上(てんじやう)
183何(なに)をグヅグヅして厶(ござ)る
184一(いち)時(じ)も早(はや)く奥(おく)へいて
185何(なん)とか彼(か)とかそこはそれ
186お前(まへ)の智慧(ちゑ)のありたけを
187縦横(じうわう)無尽(むじん)に振(ふ)り廻(まは)し
188蠑螈別(いもりわけ)の神(かみ)様(さま)に
189○○○○してお出(い)で
190それが出来(でき)ぬよな事(こと)ならば
191義理(ぎり)天上(てんじやう)も怪(あや)しいぞ
192日(ひ)の出(で)の神(かみ)も駄目(だめ)ぢやぞえ』
193魔我彦(まがひこ)『お寅(とら)婆(ば)さまの云(い)ふ通(とほ)り
194これから奥(おく)へ踏(ふ)み込(こ)んで
195羽織(はおり)の紐(ひも)ぢやないけれど
196私(わたし)の胸(むね)にちやんとある
197一伍(いちぶ)一什(しじふ)を打(う)ち明(あ)けて
198蠑螈別(いもりわけ)に申(まを)しませう
199末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の神(かみ)
200暫(しばら)く待(ま)つて下(くだ)しやんせ
201失礼(しつれい)します』と云(い)ひながら
202一間(ひとま)をさして入(い)りにける。
203○
204待(ま)つ間(ま)久(ひさ)しき鶴(つる)の首(くび)
205万公(まんこう)さまは気(き)を焦(いら)ち
206脱線(だつせん)だらけの言霊(ことたま)を
207無性(むしやう)矢鱈(やたら)に打(う)ち出(いだ)す。
208万公(まんこう)『松彦(まつひこ)さまよ五三公(いそこう)よ
209アク、テク、タクの三(さん)人(にん)よ
210蠑螈別(いもりわけ)と云(い)ふ奴(やつ)は
211尊(たふと)き俺(おれ)等(ら)の一行(いつかう)を
212本当(ほんたう)に馬鹿(ばか)にするぢやないか
213木枯(こがら)し強(きつ)い寒空(さむぞら)に
214火(ひ)の気(け)一(ひと)つなき受付(うけつけ)に
215待(ま)たして置(お)いてグヅグヅと
216神(かみ)のお給仕(きふじ)か知(し)らねども
217鱈腹(たらふく)酒(さけ)に喰(くら)ひ酔(よ)ひ
218ズブロクさんになりよつて
219無我(むが)と夢中(むちう)の為体(ていたらく)
220夜中(やちう)の夢(ゆめ)を安々(やすやす)と
221見(み)て居(ゐ)やがるに違(ちが)ひない
222これこれ申(まを)し松彦(まつひこ)さま
223私(わたし)は腹(はら)が立(た)つて来(き)た
224松(まつ)の根下(ねもと)の岩(いは)と云(い)ひ
225艮(うしとら)婆(ば)さまの云(い)ひ草(ぐさ)が
226どうしたものか腑(ふ)に落(お)ちぬ
227こんな所(ところ)へ迷(まよ)ひ込(こ)み
228眉毛(まゆげ)をよまれ尻(しり)の毛(け)を
229一(ひと)つも無(な)いよに抜(ぬ)かれては
230世間(せけん)へ対(たい)して恥晒(はぢさらし)
231治国別(はるくにわけ)の先生(せんせい)に
232どうして云(い)ひ訳(わけ)立(た)つものか
233俺(おれ)をば失敬(しつけい)な婆(ばば)の奴(やつ)
234ブラリ彦(ひこ)だと云(い)ひ居(を)つた
235松彦(まつひこ)さまはユラリ彦(ひこ)
236国治立(くにはるたち)の神(かみ)さまの
237お脇立(わきだち)だと崇(あが)め置(お)き
238口(くち)の先(さき)にてチヨロまかし
239謀叛(むほん)を起(おこ)すつもりだらう
240挺(てこ)にも棒(ぼう)にも合(あ)はぬ奴(やつ)
241したたかものが此(こ)の山(やま)に
242潜(ひそ)んで居(を)るに違(ちが)ひない
243聖人(せいじん)君子(くんし)は危(あやふ)きに
244近(ちか)づかないと云(い)ふ事(こと)だ
245貴方(あなた)は知(し)つて居(ゐ)る筈(はず)ぢや
246サアサア松彦(まつひこ)帰(かへ)りませう
247こんな処(ところ)で馬鹿(ばか)にされ
248どうして男(をとこ)が立(た)つものか
249アク、テク、タクよ五三公(いそこう)よ
250お前(まへ)は何(なん)と思(おも)うて居(ゐ)る
251意見(いけん)があれば今(いま)ここで
252遠慮(ゑんりよ)は入(い)らぬ薩張(さつぱり)と
253俺(おれ)にぶちあけて呉(く)れぬかい
254腹(はら)の虫(むし)奴(め)がグウグウと
255怒(おこ)つて怒(おこ)つて仕様(しやう)が無(な)い』
256五三公(いそこう)『五三公(いそこう)司(つかさ)が思(おも)ふ事(こと)
257遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなきままに
258陳列(ちんれつ)すれば左(さ)の通(とほ)り
259耳(みみ)を浚(さら)へて聞(き)くがよい
260小北(こぎた)の山(やま)の神(かみ)さまは
261常世(とこよ)の姫(ひめ)の憑(うつ)りたる
262高姫(たかひめ)黒姫(くろひめ)両人(りやうにん)が
263迷(まよ)ひの雲(くも)に包(つつ)まれて
264開(ひら)いて置(お)いた醜道(しこみち)だ
265肝腎要(かんじんかなめ)の高姫(たかひめ)や
266黒姫(くろひめ)さまが改悟(かいご)して
267三五教(あななひけう)に降伏(かうふく)し
268今(いま)は立派(りつぱ)な神司(かむつかさ)
269見向(みむ)きもやらぬウラナイの
270教(をしへ)を信(しん)じて何(なん)になる
271肝腎要(かんじんかなめ)の教祖(けうそ)さま
272高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)が
273自(みづか)ら愛想(あいさう)を尽(つ)かしたる
274ウラナイ教(けう)に信実(しんじつ)が
275ありそな事(こと)は無(な)いぢやないか
276これだけ聞(き)いても分(わか)るだらう
277思(おも)へば研究(けんきう)の価値(かち)はない
278これこれ申(まを)し松彦(まつひこ)さま
279私(わたし)はもはや嫌(いや)になつた
280深(ふか)くはまらぬ其(その)中(うち)に
281ここをば立(た)ち去(さ)りスタスタと
282悪魔(あくま)の征途(せいと)に上(のぼ)りませう
283取(と)るにも足(た)らぬ奴原(やつばら)を
284相手(あひて)に致(いた)して暇潰(ひまつぶ)し
285肝腎要(かんじんかなめ)の神業(しんげふ)に
286後(おく)れた時(とき)は何(なん)としよう
287斎苑(いそ)の館(やかた)の神(かみ)様(さま)に
288云(い)ひ訳(わけ)立(た)たぬ事(こと)になる
289万公(まんこう)、アク、タク、テクさまよ
290お前(まへ)等(ら)は何(なん)と思(おも)うてるか
291一応(いちおう)意見(いけん)を五三公(いそこう)に
292聞(き)かして呉(く)れよ頼(たの)むぞや』
293アク『天地(あめつち)の神(かみ)の御(おん)名(な)を笠(かさ)にきて
294世(よ)を乱(みだ)しゆく曲(まが)ぞ忌々(ゆゆ)しき。
295義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出(で)の神(かみ)と魔我彦(まがひこ)が
296何(なに)を目(め)あてにそんなデマ云(い)ふか。
297松彦(まつひこ)を末代(まつだい)様(さま)よ日(ひ)の王(わう)よ
298天(てん)の神(かみ)ぢやと旨(うま)く釣(つ)りやがる。
299善(よ)く云(い)はれ気持(きもち)の悪(わる)う無(な)いものと
300松彦(まつひこ)さまが迷(まよ)ひかけたる』
301松彦(まつひこ)『今(いま)暫(しば)し吾(わが)なすままに任(まか)しおけ
302善(よ)しと悪(あ)しとは神(かみ)がさばかむ』
303タク『沢山(たくさん)に怪体(けたい)な宮(みや)を建(た)て並(なら)べ
304怪体(けたい)な託宣(たくせん)するぞをかしき。
305タクは今(いま)思(おも)ひ浮(う)かぶる事(こと)はなし
306此(この)場(ば)を早(はや)くぬけたいばかりぞ』
307テク『テクテクと強(きつ)い山(やま)をば登(のぼ)らされ
308きつい狐(きつね)につままれてける。
309きつく姫(ひめ)名(な)から狐(きつね)の守護神(しゆごうじん)
310義理(ぎり)も天上(てんじやう)もあつたものかい』
311文助(ぶんすけ)『最前(さいぜん)から黙言(だま)つて此処(ここ)で聞(き)いて居(を)れば、312お前(まへ)さま達(たち)は大変(たいへん)にこのウラナイ教(けう)の本山(ほんざん)を疑(うたが)ひ、313ゴテゴテと小言(こごと)を仰有(おつしや)るやうだが、314そんな事(こと)を仰有(おつしや)ると神罰(しんばつ)が当(あた)りますぞや。315唯(ただ)何事(なにごと)も神(かみ)様(さま)にお任(まか)せなされ、316自分(じぶん)の着物(きもの)の襟裏(えりうら)についた虱(しらみ)さへ捻(ひね)り尽(つく)されない身(み)で居(ゐ)ながら、317広大(くわうだい)無辺(むへん)の御(ご)神力(しんりき)を彼(かれ)是(これ)云(い)ふといふ事(こと)がありますか。318障子(しやうじ)一(いち)枚(まい)外(そと)は見(み)えぬと云(い)ふ人間(にんげん)の分際(ぶんざい)で居(ゐ)ながら、319大広木(おほひろき)正宗(まさむね)様(さま)のお樹(た)てなされた教(をしへ)を何(なに)ゴテゴテと云(い)ひなさる、320ちと嗜(たしなみ)なされたら好(よ)からう、321ほんに憐(あは)れな人(ひと)達(たち)だなア』
322万公(まんこう)『芋(いも)蕪(かぶら)大根(だいこん)蛇(くちなは)松(まつ)を書(か)く
323文助(ぶんすけ)さまにかきまはされにけり。
324芋(いも)南瓜(かぼちや)茄子(なすび)のやうな面(つら)をして
325蕪(かぶら)大根(だいこん)書(か)くぞをかしき。
326文助(ぶんすけ)が屁理屈(へりくつ)計(ばか)り並(なら)べ立(た)て
327ばば垂(た)れ腰(ごし)で睨(にら)みけるかな』
328文助(ぶんすけ)『これこれ若(わか)い衆(しう)、329蕪(かぶら)大根(だいこん)描(か)いたとて蛇(へび)を描(か)いたとて大(おほ)きなお世話(せわ)さまだ。330放(ほ)つといて下(くだ)され、331お前(まへ)達(たち)のやうな糸瓜(へちま)のかすに分(わか)つたものかい。332瓢箪(へうたん)から駒(こま)が出(で)る、333徳利(とくり)から酒(さけ)が出(で)る。334早(はや)く改心(かいしん)をなさらぬと、335往(ゆ)きも戻(もど)りもならぬやうな大根(だいこん)なんが迫(せま)つて来(き)ますぞや。336嘘(うそ)計(ばか)りツグネ芋(いも)して、337山(やま)の芋(いも)ばかりして居(ゐ)るのだらう。338本当(ほんたう)に、339芋(いも)もよい芋助(いもすけ)だなア。340屁(へ)のつつぱりにもならぬやうな小理屈(こりくつ)計(ばか)り囀(さへづ)つて、341何(なん)の事(こと)だいな』
342万公(まんこう)『お爺(ぢい)さま、343誠(まこと)に失礼(しつれい)な事(こと)を申(まをし)ました』
344文助(ぶんすけ)『失礼(しつれい)だと云(い)ふ事(こと)が分(わか)つたかな、345分(わか)ればよい、346神(かみ)様(さま)は何(なん)でも見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し宣直(のりなほ)し遊(あそ)ばすのだから、347これからは心得(こころえ)なされよ。348吾(わし)が目(め)が見(み)えぬと思(おも)うて馬鹿(ばか)にして居(ゐ)なさるが、349目(め)の見(み)えぬ目(め)あきもあり、350目(め)の見(み)える盲(めくら)もある世(よ)の中(なか)だから、351余(あま)り左兵衛治(さひやうゑぢ)をなさると、352取(と)り返(かへ)しのならぬ事(こと)が出来(でき)ますぞえ』
353万公(まんこう)『こんな魔窟(まくつ)へやつて来(き)て、354身魂(みたま)も曇(くも)らされては取(と)り返(かへ)しがつきませぬわい。355ウフヽヽヽ』
356文助(ぶんすけ)『エヽ仕方(しかた)が無(な)い男(をとこ)だ。357こんな没分暁漢(わからずや)に相手(あひて)になつて居(を)つたら竜神(りうじん)さまが一(いち)枚(まい)も描(か)けぬやうになつてしまふ。358お蛸(たこ)さまに頼(たの)まれた蕪(かぶら)がもちつと仕上(しあが)らぬから、359どれ、360奥(おく)へ往(い)つて静(しづ)かな所(ところ)で一筆(ひとふで)揮(ふる)つて来(き)ませう、361これこれ末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の大神(おほかみ)様(さま)、362暫(しばら)く待(ま)つて居(ゐ)て下(くだ)さいませ。363これから教祖(けうそ)様(さま)へ御(ご)催促(さいそく)して来(き)ますから』
364万公(まんこう)『蕪(かぶら)の先生(せんせい)、365左様(さやう)なら』
366文助(ぶんすけ)『エヽ仕方(しかた)が無(な)いわい、367仕方(しかた)の無(な)いケレマタだなア』
368と呟(つぶや)きながら奥(おく)の間(ま)へ姿(すがた)を隠(かく)した。
369(大正一一・一二・一一 旧一〇・二三 加藤明子録)
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