霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 三昧経(さんまいきやう)〔一二〇四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第4篇 虎風獣雨 よみ(新仮名遣い):こふうじゅうう
章:第14章 三昧経 よみ(新仮名遣い):さんまいきょう 通し章番号:1204
口述日:1922(大正11)年12月13日(旧10月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
お寅は昔自分が捨てた夫の熊公に暴れこまれて千両の金をとられ、業を煮やして信仰上のぐらつきをはじめだし、ウラナイ教の神をののしったが、最後に自ら舌を噛んだことで神に心を向けた。
五三公はこれをきっかけにお寅の迷いをさまそうと、ウラナイ教の神は高姫の罪悪によって天の八衢にさまよったときに移った古狐が造ったものだと歌った。
教祖の高姫と黒姫は、極悪無道の神だと思っていた神素盞嗚大神の仁慈の徳に打たれて三五教に帰順し、宣伝使たちの薫陶によって迷いの雲は心から取り除かれた。
しかし蠑螈別は依然として高姫の衣鉢を継いでウラナイ教を支持していた。それは、高姫と黒姫の肉体を機関として三五教をかく乱しようと企んでいた悪魔たちが、高姫・黒姫の帰順によってその肉体から逃げ出し、蠑螈別・魔我彦・お寅に宿変えしてしまったのである。
蠑螈別は以前は軍人で教育もあるが、そういう人間ほど悪神にとっては道具として便利なのである。悪神に憑依された三人はもはや善悪正邪を判断する力を失っていた。
蠑螈別はありがたがって観物三昧経を常々唱えていたが、これは釈迦弟子どもの偽作であって、中身は釈迦のひいきの引き倒しのようなお経である。
万公、五三公、アク、タク、テクの五人がヘグレ神社をぶらぶらしていたところ、蠑螈別が熱心に経文を唱えるのが聞こえてきた。五三公は、このお経は釈迦が妻帯したことについてこじつけの説明をするあまり、釈迦の肉体について馬鹿馬鹿しい話をでっち上げた内容なのだと解説した。
万公たちは五三公の解説に感心する。五三公は先生のような口調になって冗談を言い、仲間を茶化す。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-03-01 23:27:23 OBC :rm4514
愛善世界社版:225頁 八幡書店版:第8輯 329頁 修補版: 校定版:237頁 普及版:87頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第一篇 既成宗教 > 第九章 仏説観物三昧経の真相
001 蠑螈別(いもりわけ)はお(とら)()アさまに()められ、002(はな)をねぢられ気絶(きぜつ)した揚句(あげく)003(いぬ)()はない悋気(りんき)喧嘩(げんくわ)をケロリと(わす)れて、004(おく)一間(ひとま)でお寅婆(とらばば)アの(しやく)(ふたた)般若湯(はんにやたう)舌鼓(したつづみ)打始(うちはじ)めた。005(とら)(かみ)より大切(たいせつ)(おも)うて()つた(せん)(りやう)小判(こばん)悪因縁(あくいんねん)のまはり(あは)せか、006十五(じふご)年前(ねんぜん)にふりすてた(をつと)007(よひ)どれの熊公(くまこう)にふンごまれ、008(さけ)をしたたか()みつぶされ、009ふンだくられて(ごふ)()やし、010迷信者(めいしんじや)にはよくある信仰(しんかう)(じやう)のグラツキを(はじ)()し、011(くち)(きは)めて()のつつ()りにもならぬ(かみ)だとコキおろした揚句(あげく)012(みづか)(した)()み、013ハツと()がつき、014(ふたた)(かみ)礼拝(れいはい)する(こころ)立返(たちかへ)つた。015五三公(いそこう)(いま)こそ迷夢(めいむ)()ましやらむと(うた)によそひて説明(せつめい)した。016小北山(こぎたやま)祭神(さいじん)虚偽(きよぎ)(てき)無名(むめい)(かみ)なること、017高姫(たかひめ)(みづか)(こころ)()んだ罪悪(ざいあく)のために、018一旦(いつたん)根底(ねそこ)(くに)(おちい)り、019(あめ)八衢(やちまた)にさまよひ、020(やうや)(いき)吹返(ふきかへ)し、021()(とほ)くなつてゐる(ところ)へ、022(その)(きよ)(うかが)つて這入(はい)つて()古狐(やかん)(かみ)真似(まね)をして、023いろいろの他愛(たあい)もない神名(しんめい)()()し、024()出神(でのかみ)生宮(いきみや)妄信(まうしん)し、025自分(じぶん)変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)だ、026生粋(きつすゐ)大和(やまと)(だましひ)だと(かた)主張(しゆちやう)()し、027三千(さんぜん)世界(せかい)のことは(この)()出神(でのかみ)でなければ(わか)らぬ、028(これ)変性(へんじやう)女子(によし)にソツと()らしてやるお(やく)だと、029(わる)(やかん)(たぶら)かされて、030益々(ますます)(かた)自分(じぶん)副守(ふくしゆ)(しん)()し、031変性(へんじやう)女子(によし)御霊(みたま)金勝要(きんかつかねの)(かみ)御霊(みたま)取上(とりあ)げぬのを、032非常(ひじやう)憤慨(ふんがい)し、033黒姫(くろひめ)034蠑螈別(いもりわけ)035魔我彦(まがひこ)036(その)(ほか)精神(せいしん)(じやう)大欠陥(だいけつかん)のあるデモ紳士(しんし)婆嬶(ばばかか)(ども)籠絡(ろうらく)し、037三五教(あななひけう)信者(しんじや)より寄附金(きふきん)(あつ)め、038北山村(きたやまむら)本拠(ほんきよ)(かま)へてゐた(ところ)039とうとう(ばけ)がはげかけたので、040蠑螈別(いもりわけ)(めい)じ、041小北山(こぎたやま)本山(ほんざん)(うつ)すことを(めい)じておいたのである。042(その)(うち)肝腎(かんじん)高姫(たかひめ)043黒姫(くろひめ)極悪(ごくあく)無道(ぶだう)(かみ)(おも)つてゐた(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)仁慈(じんじ)(とく)感歎(かんたん)し、044ウラナイ(けう)弊履(へいり)(ごと)くに()てて、045三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)し、046宣伝使(せんでんし)(うち)にヤツと(くは)へられたのである。047(しか)(なが)執着心(しふちやくしん)はどこ(まで)(つよ)く、048自分(じぶん)義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)だといふ観念(くわんねん)中々(なかなか)容易(ようい)()れなかつた。049(また)黒姫(くろひめ)黒姫(くろひめ)自分(じぶん)こそ竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)生宮(いきみや)だと(かた)(しん)じ、050随分(ずゐぶん)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)手古摺(てこず)らしたものである。051(しか)しながら言依別(ことよりわけの)(みこと)以下(いか)熱心(ねつしん)なる種々(しゆじゆ)薫陶(くんたう)()つて、052高姫(たかひめ)053黒姫(くろひめ)一日(いちにち)々々(いちにち)薄紙(うすがみ)をヘグ(やう)(まよ)ひの(くも)(こころ)(そら)から取除(とりのぞ)かれた。054(いま)(まつた)二人(ふたり)迷夢(めいむ)()めて、055今迄(いままで)自分(じぶん)言行(げんかう)(かへり)み、056羞恥(しうち)(こころ)(なや)んでゐる。057(しか)るに蠑螈別(いもりわけ)依然(いぜん)として高姫(たかひめ)遺鉢(ゐはつ)をつぎ、058執念深(しふねんぶか)くウラナイ(けう)支持(しぢ)してゐた。059(その)理由(りいう)は、060今迄(いままで)高姫(たかひめ)061黒姫(くろひめ)肉体(にくたい)機関(きくわん)として三五(あななひ)(まこと)(をしへ)攪乱(かくらん)せむと(たく)んでゐた諸々(もろもろ)悪魔(あくま)(ども)は、062高姫(たかひめ)063黒姫(くろひめ)帰順(きじゆん)(とも)(その)身内(みうち)(とど)まる余地(よち)なく次第(しだい)々々(しだい)脱出(だつしゆつ)して、064小北山(こぎたやま)蠑螈別(いもりわけ)065魔我彦(まがひこ)066寅婆(とらばあ)さまの肉体(にくたい)全部(ぜんぶ)宿替(やどがへ)をして(しま)つたのである。067それだから(これ)()(さん)(にん)猛烈(まうれつ)なる迷信(めいしん)以前(いぜん)高姫(たかひめ)068黒姫(くろひめ)(まさ)(とも)(けつ)して(おと)らなかつた。069(また)蠑螈別(いもりわけ)以前(いぜん)軍人(ぐんじん)であつて、070相当(さうたう)社会(しやくわい)(てき)教育(けういく)もあり、071一寸(ちよつと)哲学(てつがく)もカジリ、072各宗(かくしう)教典(けうてん)(なま)かじりて(やや)見聞(けんぶん)(ひろ)くして()たから、073曲神(まがかみ)道具(だうぐ)使(つか)ふのには、074高姫(たかひめ)075黒姫(くろひめ)よりも余程(よほど)便利(べんり)があるのだ。076(しか)(なが)何程(なにほど)常識(じやうしき)があつても、077学問(がくもん)があつても、078肝腎要(かんじんかなめ)良心(りやうしん)(をか)され、079精神(せいしん)大欠陥(だいけつかん)(きた)した(うへ)は、080世間(せけん)所謂(いはゆる)賢人(けんじん)学者(がくしや)もヤツパリ愚夫(ぐふ)愚婦(ぐふ)以上(いじやう)始末(しまつ)がをへなくなるものである。081蠑螈別(いもりわけ)高姫(たかひめ)のあらはした支離(しり)滅裂(めつれつ)神名(しんめい)教理(けうり)審判(さには)することの出来(でき)ない(やう)文盲者(もんまうしや)ではないが、082(しか)(なが)最早(もはや)今日(こんにち)となつては公平(こうへい)理解力(りかいりよく)全然(ぜんぜん)(うしな)つて()た。083それ(ゆゑ)(あした)にウラナイの(かみ)(ねん)じ、084日中(まひる)にアーメンを(さけ)び、085夕暮(ゆふぐれ)になれば数珠(じゆず)をもみ、086(りん)()らして、087(ぶつ)教典(けうてん)一生(いつしやう)懸命(けんめい)読誦(どくしよう)して唯一(ゆゐいつ)善行(ぜんぎやう)(しん)じてゐたのである。
088 蠑螈別(いもりわけ)有難(ありがた)がつて(とな)へる()(きやう)はいつも観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)であつた。089(この)経文(きやうもん)釈迦仏(しやかぶつ)弟子(でし)(ども)偽作(ぎさく)であつて、090仏教(ぶつけう)弘通(ぐつう)方便(はうべん)として、091釈迦(しやか)弁護(べんご)する(ため)(つく)つたものである。092(えう)するに(この)経文(きやうもん)釈迦(しやか)(たい)贔屓(ひいき)引倒(ひきだふ)しであることは(すこ)思慮(しりよ)ある(もの)(さと)()ることであらう。093夕暮(ゆふぐれ)になつたので、094蠑螈別(いもりわけ)(れい)(ごと)数珠(じゆず)をもみ、095(りん)打鳴(うちな)らし(なが)観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)(とな)()した。
096蠑螈別()()(たい)()()()(こん)(しよ)(しゆつ)(びやく)(れん)()097()(しき)(こう)(びやく)(じやう)()()(さん)()(さう)(れん)098(しよ)(によ)(けん)()()(さう)()(ごん)099(によ)()(しん)(にん)()(れん)()(さう)100()(にん)(うん)()101(しん)()(ぜん)(ぢやく)102()()()()(えつ)()(のう)(ごん)103()()(れん)(ちう)(こつ)()(しん)(こん)(によ)(どう)()(ぎやう)104(しよ)(によ)(けん)()(かう)()(しよう)()(えつ)(げん)()(さう)105()()()()()(けん)()(しん)(こん)()()(さう)()(によ)(てん)(ごふ)(まい)106(いち)(いち)()(じやう)(ない)()()(すう)(だい)(しん)(ぼう)(さつ)107(しゆ)(じう)(びやく)()()(によう)(しん)(こん)(げん)()(げん)(ぼつ)108()()()()(しよ)(いん)(によ)(とう)109(かい)(ごん)110()(どん)()()(こん)(にん)111(ぶつ)(もん)()()(によ)()(わう)(さう)(ぜん)(ぜん)(しゆつ)(げん)112(しよ)(しゆつ)()()(いう)(によ)(はつ)(さい)(どう)()(しん)(こん)113(ぜん)(ぜん)(ちやう)(だい)(によ)(せう)(ねん)(ぎやう)114(しよ)(によ)(けん)()(かい)(しつ)(くわん)()115()(ぜん)(ちやう)(だい)(によ)(れん)(げん)(とう)116(いち)(いち)(そう)(けん)()(ひやく)(のく)(れん)()117(いち)(いち)(れん)()()(ひやく)(のく)(ほう)(しよく)118(いち)(いち)(しよく)(ちう)()(ひやく)(のく)()(ぶつ)119(いち)(いち)()(ぶつ)()(ひやく)(のく)()(さつ)()(りやう)(だい)(しう)120()()()(しや)121()(しよ)()(ぶつ)()()(どう)(おん)()(しよ)(によ)(にん)(あく)(よく)122()(せつ)()(ごん)
123 (にやく)()(しよ)(なん)() (ねん)(かい)(じふ)()(ろく) (せい)(さう)()(りよく)(せい)
124 (すう)(まん)(ごう)()(しや) ()()()(きふ)(によ) ()(まん)()(ゆう)()
125()(しよ)(によ)(にん)(もん)()()()126(しん)(くわい)(ざん)()(おう)(なう)127(へき)()()(しゆ)(はく)(とう)128()()()(あく)(よく)129(かく)(おん)(によ)(しん)(かい)(ほつ)()(だい)(しん)底本では返り点が付いているが霊界物語ネットでは省略した。チーン……
130 万公(まんこう)131五三公(いそこう)132アク、133テク、134タクの()(にん)はヘグレ神社(じんしや)をブラブラと巡見(じゆんけん)して種々(いろいろ)批評(ひひやう)(こころ)みて()(ところ)135(にはか)不思議(ふしぎ)な、136(かみ)(やかた)似合(にあ)はず、137経文(きやうもん)(こゑ)(きこ)えて()たので、138ソツと(かべ)(そと)から、139足音(あしおと)(しの)ばせ、140どこの坊主(ばうず)がやつて()て、141経文(きやうもん)(とな)へてゐるのだらう、142蠑螈別(いもりわけ)余程(よほど)物好(ものずき)だ、143ドレ(ひと)(かんが)へて()ようかと、144一行(いつかう)()(にん)(みみ)をすまして()いてゐる。145()(にん)(なか)(ぶつ)経文(きやうもん)()つてゐる(もの)五三公(いそこう)一人(ひとり)であつた。
146五三(いそ)『あゝコリヤ不思議(ふしぎ)だ、147あの(こゑ)蠑螈別(いもりわけ)だ。148観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)()げてゐる(やう)だ。149ヤツパリ三教(さんけう)合同(がふどう)()本尊(ほんぞん)眷族(けんぞく)だと()いてゐたが、150(しん)151(ぶつ)152()混淆(こんかう)のウラナイ(けう)教主(けうしゆ)さまだな』
153万公(まんこう)観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)にはどんなことが()つてあるのだ。154(ひと)(その)(わけ)()きたいものだなア。155オイ(これ)から蠑螈別(いもりわけ)さまに拝謁(はいえつ)(ねが)つて、156(きやう)解説(かいせつ)(ねが)ふことにしようかなア』
157五三(いそ)(なに)……ダメだよ、158観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)真相(しんさう)理解(りかい)されたら、159馬鹿(ばか)らしくつて、160有難(ありがた)さうに(とな)へられるものぢやない。161ああして棒読(ぼうよ)みにダヽブダ ダヽブダと()んで()くから、162有難(ありがた)(やう)(きこ)えるのだ』
163万公(まんこう)『さうするとヤツパリ(わか)らぬのが有難(ありがた)いのかなア。164五三公(いそこう)さま、165(まへ)経文(きやうもん)精神(せいしん)()つてゐるのなら、166(ひと)(その)説明(せつめい)(ねが)ひたいものだなア』
167五三(いそ)(あま)馬鹿(ばか)らしくて、168説明(せつめい)する(だけ)価値(かち)がないのだ。169釈迦(しやか)さまも、170ああして(まつ)()まれちや、171本当(ほんたう)にお()(どく)だ。172露骨(ろこつ)()へば……全体(ぜんたい)釈迦(しやか)如来(によらい)(さま)無生(むせい)無死(むし)大神人(だいしんじん)国大立(くにひろたちの)(みこと)別御霊(わけみたま)なる大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)(さま)月照彦(つきてるひこ)(あら)はれ三五教(あななひけう)(をしへ)宣布(せんぷ)し、173(なが)幽政(いうせい)(つかさど)(つひ)には久劫(きうごふ)(むかし)から成仏(じやうぶつ)して都率天(とそつてん)といふ天上(てんじやう)()()印度(いんど)(くに)(おい)(ふたた)肉体(にくたい)示顕(じけん)され時代(じだい)地方(ちはう)との関係(くわんけい)(じやう)から仏法(ぶつぼふ)弘布(こうふ)せむと天津(あまつ)(かみ)(さま)命令(めいれい)(ほう)じて浄飯王(じやうぼんわう)(つま)摩耶(まや)夫人(ふじん)(はら)宿(やど)つて(うま)婆羅門(ばらもん)(けう)勢力(せいりよく)旺盛(わうせい)にして刹帝利(せつていり)(ぞく)圧迫(あつぱく)()毘舎(びしや)174首陀(しゆだ)二族(にぞく)(しひた)弊害(へいがい)(はなは)だしかつたので婆羅門(ばらもん)(けう)言向和(ことむけやは)すべく活動(くわつどう)されたのだ。175(しか)しその(をしへ)(なが)れを()後世(こうせい)仏弟子(ぶつでし)どもが()(ひと)に、176釈迦(しやか)はそれ(ほど)(ひさ)しい(むかし)から成仏(じやうぶつ)して()たといつたならば、177妻子(さいし)(ごと)きものが()るべき(はず)がないと(なん)じられた(とき)(こま)(わけ)だから、178その(とき)(しり)(むす)ぶために糞坊主(くそばうず)どもが()つたことだ。179まだまだその()仏教(ぶつけう)にも(しり)(むす)べぬ(こと)()いて()るが(みな)釈迦(しやか)如来(によらい)精神(せいしん)ではないのだ。
180 (いま)(とな)へて()るのは観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)だが、181その意味(いみ)(やく)すれば、182釈迦(しやか)(つま)(めと)つたけれど交合(かうがふ)()なかつた、183(ところ)耶輸(やしゆ)陀羅(だら)(はじ)数多(あまた)侍女(じぢよ)どもが非常(ひじやう)(あや)しんで()(とき)に、184侍女(じぢよ)一人(ひとり)()ふには(わし)釈迦(しやか)奉事(ほうじ)して(なが)らくの(とし)()たけれども(いま)だにその(こん)()たことが()い、185(いは)んや世事(せじ)あらむやといふ、186(ただし)(わし)(こん)()つたるは(すなは)陰茎(いんけい)のことだ。187そして世事(せじ)()ふのは、188やがて交合(かうがふ)(こと)だ、189(なん)(こと)はない釈迦(しやか)(つか)へて(とし)()たけれどもその陰茎(いんけい)()たことが()いから()して交合(かうがふ)はせぬ(はず)ぢやと()ふのだ。190(とき)にまた一人(ひとり)(をんな)()ふには、191(わたし)太子(たいし)(つか)へて十八(じふはち)(ねん)()たが(いま)太子(たいし)便利(べんり)(くわん)あるを()ない(いは)ンや()(もも)()()ようぞと()つた。192そこで一同(いちどう)(しか)らば太子(たいし)(をとこ)ではあるまいと()つて()るので釈迦(しやか)(これ)(さつ)して(わざ)昼寝(ひるね)をして(かれ)一物(いちもつ)()して()せた、193(その)(おもむき)経文(きやうもん)(まま)棒読(ぼうよ)みにするから(じつ)有難(ありがた)()えたり(きこ)えたりするのだ、194アハヽヽヽ(のち)坊主(ばうず)どもが釈迦(しやか)贔屓(ひいき)(おも)()ごしてこんな馬鹿(ばか)(せつ)(つく)つて贔屓(ひいき)引倒(ひきだふ)しを()たものだ。195何程(なにほど)わからぬ人間(にんげん)だとて蠑螈別(いもりわけ)(ごと)文盲(もんまう)なものばかりも()るもので()いから坊主(ばうず)のやうにダヽブダ ダヽブダ ダヽブダとばかり()んで()らず、196たまさかには(わし)(やう)にシヤンと()(ひと)もあるからなア、197こんな具合(ぐあひ)諸々(もろもろ)仏経(ぶつきやう)(ことごと)釈迦(しやか)(たく)して(のち)仏者(ぶつしや)どもが偽作(ぎさく)したものだよ、198大方(おほかた)人間(にんげん)(すべ)ての仏経(ぶつきやう)全部(ぜんぶ)阿難(あなん)()いて()いたものだと(かた)(おも)つて()るから目指(めざ)して釈迦(しやか)(そし)つたり非難(ひなん)する(やう)になるのだ』
199万公(まんこう)『ヤア有難(ありがた)い。200(しか)(なが)らヒイキの引倒(ひきだふ)し、201商売(しやうばい)道具(だうぐ)使(つか)はれちや、202釈迦(しやか)さまもキツと阿弥陀(あみだ)をこぼして(ござ)るだらう。203何程(なにほど)教祖(けうそ)(ただ)しいことを()つても、204(のち)(やつ)がいろいろと誤解(ごかい)をしたり、205勝手(かつて)(ねつ)()いたり、206自分(じぶん)(せつ)(とほ)らないと、207如是(によぜ)我聞(がもん)とつけて、208釈迦(しやか)(かく)(ごと)()いたと自説(じせつ)弁護(べんご)せうとするのだから(こま)つたものだな、209(しか)五三公(いそこう)さま、210(まへ)一行中(いつかうちう)大学者(だいがくしや)だ、211ヤアもう感心(かんしん)した、212今後(こんご)(けつ)してお(まへ)軽蔑(けいべつ)しないから、213どうぞ(おれ)知識(ちしき)分配(ぶんぱい)をしてくれ、214(たの)みだ』
215五三(いそ)『ヨシヨシ(おれ)(かみ)でもなければ(ほとけ)でもないのだから、216万屋(よろづや)(やう)(なん)でも引受(ひきう)けるといふことは出来(でき)ない。217蠑螈別(いもりわけ)(やう)()らぬことでも(なん)とか理屈(りくつ)をつけてチヨロまかすのなら、218どうでもなるが、219ゴマ(くわ)しは永続(ながつづ)きがせぬからな、220そして(また)下根(げこん)人間(にんげん)何程(なにほど)結構(けつこう)なことを()かした(ところ)で、221()(みみ)がないと反対(はんたい)()れるものだ、222さうだから愚夫(ぐふ)愚婦(ぐふ)には(かへつ)(まこと)のことは()はれないのだ。223自分(じぶん)暗愚(あんぐ)卑劣(ひれつ)(こころ)標準(へうじゆん)として、224(すべ)ての人間(にんげん)()くのだから、225(たま)(ひかり)のない(もの)には本当(ほんたう)のことを()つてやると(かへつ)誤解(ごかい)するものだ、226(しか)万公(まんこう)さまは下根(げこん)ではない、227中根(ちうこん)(くらゐ)(ところ)だから、228天国(てんごく)()へば第二(だいに)天国(てんごく)といふ(ところ)だ。229第二(だいに)天国(てんごく)相応(さうおう)説明(せつめい)(あた)へることにせう』
230万公(まんこう)『ヤア有難(ありがた)い、231中根(ちうこん)なら結構(けつこう)だ。232(おれ)(また)下根(げこん)だと()はれるかと(おも)つてヒヤヒヤしてゐたよ』
233五三(いそ)上根(じやうこん)にも上中下(じやうちうげ)があり、234中根(ちうこん)(うち)にも(また)上中下(じやうちうげ)があり、235下根(げこん)(なか)にも(また)上中下(じやうちうげ)があつて、236三三(さざん)九階級(くかいきふ)237区別(くべつ)がついてゐるのだ、238これもホンの大要(たいえう)で、239(こま)かく()へば百八十(ひやくはちじふ)(だん)になる』
240万公(まんこう)『さうすると、241(この)万公(まんこう)(ちう)(ちう)(くらゐ)(もの)かなア』
242五三(いそ)『さうだなア、243ヤツとマア(ちう)()(くらゐ)(もの)だらうよ』
244アク『五三公(いそこう)さま、245(わたし)はどこら(くらゐ)ですか』
246五三(いそ)『ウン、247(まへ)比較(ひかく)(てき)(みたま)(みが)けてゐる、248中根(ちうこん)(じやう)だ、249(ひと)気張(きば)れば上根(じやうこん)(すす)むのだよ』
250万公(まんこう)『オイ、251アク、252慢心(まんしん)すなよ、253芽出(めで)たう』
254アク『五三公(いそこう)さま、255イヤ先生(せんせい)256(わたし)のやうな(みたま)でも(ちう)(じやう)(くらゐ)理解力(りかいりよく)がありますかな』
257五三(いそ)『ハイ大丈夫(だいぢやうぶ)ですよ、258(しか)慢心(まんしん)をすると、259すぐに()ちますからな、260ハヽヽヽヽ』
261タク『先生(せんせい)262(わたし)はどこらですか』
263五三(いそ)『ウン、264(まへ)はさうだなア、265(なん)()つてよからうかな』
266タク『ヘー、267さうすると上中下(じやうちうげ)三根(さんこん)超越(てうゑつ)してゐるのですか』
268五三(いそ)番外(ばんぐわい)だなア、269よいと()へばよい、270(わる)いと()へば(わる)い、271まだ混沌(こんとん)として鶏子(けいし)(ごと)く、272溟淆(めいかう)にして()(ふく)めりと()(ところ)だ』
273タク『あゝさうすると、274開闢(かいびやく)(はじめ)(あら)はれた国治立(くにはるたちの)(みこと)(さま)同様(どうやう)身魂(みたま)ですかな、275(すなは)(くわ)して(かみ)となる、276国治立(くにはるたちの)(みこと)(がう)す……といふ(やう)なものですか。277成程(なるほど)国治立(くにはるたちの)(みこと)(さま)世界(せかい)最初(さいしよ)(えら)(かみ)(さま)であり(なが)ら、278一番(いちばん)()(なか)におちぶれて御座(ござ)つたといふ(こと)だから、279いかにも番外(ばんぐわい)でせう。280オイ、281(ちう)()先生(せんせい)282(ちう)(じやう)先生(せんせい)283どうですなア』
284万公(まんこう)『ハヽヽヽ、285国所(くにとこ)立退(たちの)きの(みこと)だな、286(すな)(くわ)して(かはら)となるといふ(ところ)だ』
287テク『先生(せんせい)288(わたし)(なん)ですか』
289五三(いそ)『さうだなア、290テクもタクと(あま)()(まけ)はないだらう』
291テク『ヤア有難(ありがた)う』
292万公(まんこう)『ハヽヽヽつまり()へば神界(しんかい)のハネノケ(もの)だ。293チツと(これ)から観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)でも研究(けんきう)して、294()()(くらゐ)(まで)(すす)んだらよからうぞ、295ウツフヽヽ』
296テク『馬鹿(ばか)にすない、297あんな(もの)がこんな(もの)になるといふ仕組(しぐみ)だ、298(いま)よくても(さき)がよくならねば(まこと)でないぞよ。299(みたま)がよいと(まを)して慢心(まんしん)(いた)すとスコタンを()ふぞよ、300万公(まんこう)どのに()をつけるぞよ、301(はや)改心(かいしん)して(くだ)されよ、302改心(かいしん)一等(いつとう)ぞよ。303(うしとら)(ばば)アに間違(まちがひ)ないぞよ、304蠑螈別(いもりわけ)女房(にようばう)(とら)()をつけるぞよ、305アハヽヽヽ』
306大正一一・一二・一三 旧一〇・二五 松村真澄録)
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