霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 三昧経(さんまいきやう)〔一二〇四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第4篇 虎風獣雨 よみ(新仮名遣い):こふうじゅうう
章:第14章 三昧経 よみ(新仮名遣い):さんまいきょう 通し章番号:1204
口述日:1922(大正11)年12月13日(旧10月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
お寅は昔自分が捨てた夫の熊公に暴れこまれて千両の金をとられ、業を煮やして信仰上のぐらつきをはじめだし、ウラナイ教の神をののしったが、最後に自ら舌を噛んだことで神に心を向けた。
五三公はこれをきっかけにお寅の迷いをさまそうと、ウラナイ教の神は高姫の罪悪によって天の八衢にさまよったときに移った古狐が造ったものだと歌った。
教祖の高姫と黒姫は、極悪無道の神だと思っていた神素盞嗚大神の仁慈の徳に打たれて三五教に帰順し、宣伝使たちの薫陶によって迷いの雲は心から取り除かれた。
しかし蠑螈別は依然として高姫の衣鉢を継いでウラナイ教を支持していた。それは、高姫と黒姫の肉体を機関として三五教をかく乱しようと企んでいた悪魔たちが、高姫・黒姫の帰順によってその肉体から逃げ出し、蠑螈別・魔我彦・お寅に宿変えしてしまったのである。
蠑螈別は以前は軍人で教育もあるが、そういう人間ほど悪神にとっては道具として便利なのである。悪神に憑依された三人はもはや善悪正邪を判断する力を失っていた。
蠑螈別はありがたがって観物三昧経を常々唱えていたが、これは釈迦弟子どもの偽作であって、中身は釈迦のひいきの引き倒しのようなお経である。
万公、五三公、アク、タク、テクの五人がヘグレ神社をぶらぶらしていたところ、蠑螈別が熱心に経文を唱えるのが聞こえてきた。五三公は、このお経は釈迦が妻帯したことについてこじつけの説明をするあまり、釈迦の肉体について馬鹿馬鹿しい話をでっち上げた内容なのだと解説した。
万公たちは五三公の解説に感心する。五三公は先生のような口調になって冗談を言い、仲間を茶化す。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-11-16 23:04:09 文字数:4874 OBC :rm4514
愛善世界社版:225頁 八幡書店版:第8輯 329頁 修補版: 校定版:237頁 普及版:87頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]:出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第一篇 既成宗教 > 第九章 仏説観物三昧経の真相
001 蠑螈別(いもりわけ)はお寅(とら)婆(ば)アさまに抓(つ)められ、002鼻(はな)をねぢられ気絶(きぜつ)した揚句(あげく)、003犬(いぬ)も喰(く)はない悋気(りんき)喧嘩(げんくわ)をケロリと忘(わす)れて、004奥(おく)の一間(ひとま)でお寅婆(とらばば)アの酌(しやく)で再(ふたた)び般若湯(はんにやたう)に舌鼓(したつづみ)を打始(うちはじ)めた。005お寅(とら)は神(かみ)より大切(たいせつ)に思(おも)うて居(を)つた千(せん)両(りやう)の小判(こばん)を悪因縁(あくいんねん)のまはり合(あは)せか、006十五(じふご)年前(ねんぜん)にふりすてた夫(をつと)、007酔(よひ)どれの熊公(くまこう)にふンごまれ、008酒(さけ)をしたたか呑(の)みつぶされ、009ふンだくられて劫(ごふ)を煮(に)やし、010迷信者(めいしんじや)にはよくある信仰(しんかう)上(じやう)のグラツキを始(はじ)め出(だ)し、011口(くち)を極(きは)めて屁(へ)のつつ張(ぱ)りにもならぬ神(かみ)だとコキおろした揚句(あげく)、012自(みづか)ら舌(した)を噛(か)み、013ハツと気(き)がつき、014再(ふたた)び神(かみ)を礼拝(れいはい)する心(こころ)に立返(たちかへ)つた。015五三公(いそこう)は今(いま)こそ迷夢(めいむ)を醒(さ)ましやらむと歌(うた)によそひて説明(せつめい)した。016小北山(こぎたやま)の祭神(さいじん)の虚偽(きよぎ)的(てき)無名(むめい)の神(かみ)なること、017高姫(たかひめ)が自(みづか)ら心(こころ)に積(つ)んだ罪悪(ざいあく)のために、018一旦(いつたん)根底(ねそこ)の国(くに)に陥(おちい)り、019天(あめ)の八衢(やちまた)にさまよひ、020漸(やうや)く息(いき)を吹返(ふきかへ)し、021気(き)が遠(とほ)くなつてゐる所(ところ)へ、022其(その)虚(きよ)を窺(うかが)つて這入(はい)つて来(き)た古狐(やかん)が神(かみ)の真似(まね)をして、023いろいろの他愛(たあい)もない神名(しんめい)を編(あ)み出(だ)し、024日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と妄信(まうしん)し、025自分(じぶん)は変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)だ、026生粋(きつすゐ)の大和(やまと)魂(だましひ)だと固(かた)く主張(しゆちやう)し出(だ)し、027三千(さんぜん)世界(せかい)のことは此(この)日(ひ)の出神(でのかみ)でなければ分(わか)らぬ、028之(これ)を変性(へんじやう)女子(によし)にソツと知(し)らしてやるお役(やく)だと、029悪(わる)い狐(やかん)に誑(たぶら)かされて、030益々(ますます)固(かた)く自分(じぶん)の副守(ふくしゆ)を信(しん)じ出(だ)し、031変性(へんじやう)女子(によし)の御霊(みたま)や金勝要(きんかつかねの)神(かみ)の御霊(みたま)が取上(とりあ)げぬのを、032非常(ひじやう)に憤慨(ふんがい)し、033黒姫(くろひめ)、034蠑螈別(いもりわけ)、035魔我彦(まがひこ)、036其(その)外(ほか)精神(せいしん)上(じやう)に大欠陥(だいけつかん)のあるデモ紳士(しんし)や婆嬶(ばばかか)共(ども)を籠絡(ろうらく)し、037三五教(あななひけう)の信者(しんじや)より寄附金(きふきん)を集(あつ)め、038北山村(きたやまむら)に本拠(ほんきよ)を構(かま)へてゐた所(ところ)、039とうとう化(ばけ)がはげかけたので、040蠑螈別(いもりわけ)に命(めい)じ、041小北山(こぎたやま)へ本山(ほんざん)を移(うつ)すことを命(めい)じておいたのである。042其(その)内(うち)に肝腎(かんじん)の高姫(たかひめ)、043黒姫(くろひめ)は極悪(ごくあく)無道(ぶだう)の神(かみ)と思(おも)つてゐた神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の仁慈(じんじ)の徳(とく)に感歎(かんたん)し、044ウラナイ教(けう)を弊履(へいり)の如(ごと)くに棄(す)てて、045三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)し、046宣伝使(せんでんし)の中(うち)にヤツと加(くは)へられたのである。047併(しか)し乍(なが)ら執着心(しふちやくしん)はどこ迄(まで)も強(つよ)く、048自分(じぶん)は義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)だといふ観念(くわんねん)は中々(なかなか)容易(ようい)に除(と)れなかつた。049又(また)黒姫(くろひめ)は黒姫(くろひめ)で自分(じぶん)こそ竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の生宮(いきみや)だと固(かた)く信(しん)じ、050随分(ずゐぶん)三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)を手古摺(てこず)らしたものである。051併(しか)しながら言依別(ことよりわけの)命(みこと)以下(いか)の熱心(ねつしん)なる種々(しゆじゆ)の薫陶(くんたう)に依(よ)つて、052高姫(たかひめ)、053黒姫(くろひめ)は一日(いちにち)々々(いちにち)薄紙(うすがみ)をヘグ様(やう)に迷(まよ)ひの雲(くも)が心(こころ)の空(そら)から取除(とりのぞ)かれた。054今(いま)は全(まつた)く二人(ふたり)は迷夢(めいむ)も醒(さ)めて、055今迄(いままで)の自分(じぶん)の言行(げんかう)を省(かへり)み、056羞恥(しうち)の心(こころ)に悩(なや)んでゐる。057然(しか)るに蠑螈別(いもりわけ)は依然(いぜん)として高姫(たかひめ)の遺鉢(ゐはつ)をつぎ、058執念深(しふねんぶか)くウラナイ教(けう)を支持(しぢ)してゐた。059其(その)理由(りいう)は、060今迄(いままで)高姫(たかひめ)、061黒姫(くろひめ)の肉体(にくたい)を機関(きくわん)として三五(あななひ)の誠(まこと)の教(をしへ)を攪乱(かくらん)せむと企(たく)んでゐた諸々(もろもろ)の悪魔(あくま)共(ども)は、062高姫(たかひめ)、063黒姫(くろひめ)の帰順(きじゆん)と共(とも)に其(その)身内(みうち)に止(とど)まる余地(よち)なく次第(しだい)々々(しだい)に脱出(だつしゆつ)して、064小北山(こぎたやま)の蠑螈別(いもりわけ)、065魔我彦(まがひこ)、066お寅婆(とらばあ)さまの肉体(にくたい)に全部(ぜんぶ)宿替(やどがへ)をして了(しま)つたのである。067それだから此(これ)等(ら)三(さん)人(にん)の猛烈(まうれつ)なる迷信(めいしん)は以前(いぜん)の高姫(たかひめ)、068黒姫(くろひめ)に優(まさ)る共(とも)決(けつ)して劣(おと)らなかつた。069又(また)蠑螈別(いもりわけ)は以前(いぜん)は軍人(ぐんじん)であつて、070相当(さうたう)の社会(しやくわい)的(てき)教育(けういく)もあり、071一寸(ちよつと)哲学(てつがく)もカジリ、072各宗(かくしう)の教典(けうてん)も生(なま)かじりて稍(やや)見聞(けんぶん)を広(ひろ)くして居(ゐ)たから、073曲神(まがかみ)が道具(だうぐ)に使(つか)ふのには、074高姫(たかひめ)、075黒姫(くろひめ)よりも余程(よほど)の便利(べんり)があるのだ。076併(しか)し乍(なが)ら何程(なにほど)常識(じやうしき)があつても、077学問(がくもん)があつても、078肝腎要(かんじんかなめ)の良心(りやうしん)を犯(をか)され、079精神(せいしん)の大欠陥(だいけつかん)を来(きた)した上(うへ)は、080世間(せけん)の所謂(いはゆる)賢人(けんじん)も学者(がくしや)もヤツパリ愚夫(ぐふ)愚婦(ぐふ)以上(いじやう)に始末(しまつ)がをへなくなるものである。081蠑螈別(いもりわけ)は高姫(たかひめ)のあらはした支離(しり)滅裂(めつれつ)な神名(しんめい)や教理(けうり)を審判(さには)することの出来(でき)ない様(やう)な文盲者(もんまうしや)ではないが、082併(しか)し乍(なが)ら最早(もはや)今日(こんにち)となつては公平(こうへい)な理解力(りかいりよく)も全然(ぜんぜん)失(うしな)つて居(ゐ)た。083それ故(ゆゑ)晨(あした)にウラナイの神(かみ)を念(ねん)じ、084日中(まひる)にアーメンを叫(さけ)び、085夕暮(ゆふぐれ)になれば数珠(じゆず)をもみ、086鈴(りん)を鳴(な)らして、087仏(ぶつ)の教典(けうてん)を一生(いつしやう)懸命(けんめい)に読誦(どくしよう)して唯一(ゆゐいつ)の善行(ぜんぎやう)と信(しん)じてゐたのである。
088 蠑螈別(いもりわけ)の有難(ありがた)がつて唱(とな)へる御(お)経(きやう)はいつも観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)であつた。089此(この)経文(きやうもん)は釈迦仏(しやかぶつ)の弟子(でし)共(ども)の偽作(ぎさく)であつて、090仏教(ぶつけう)弘通(ぐつう)の方便(はうべん)として、091釈迦(しやか)を弁護(べんご)する為(ため)に作(つく)つたものである。092要(えう)するに此(この)経文(きやうもん)は釈迦(しやか)に対(たい)し贔屓(ひいき)の引倒(ひきだふ)しであることは少(すこ)し思慮(しりよ)ある者(もの)は悟(さと)り得(う)ることであらう。093夕暮(ゆふぐれ)になつたので、094蠑螈別(いもりわけ)は例(れい)の如(ごと)く数珠(じゆず)をもみ、095鈴(りん)を打鳴(うちな)らし乍(なが)ら観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)を称(とな)へ出(だ)した。
096蠑螈別『爾(に)時(じ)太(たい)子(し)於(お)其(ご)根(こん)処(しよ)出(しゆつ)白(びやく)蓮(れん)華(げ)。097其(ご)色(しき)紅(こう)白(びやく)上(じやう)下(げ)二(に)三(さん)華(げ)相(さう)連(れん)。098諸(しよ)女(によ)見(けん)已(い)復(ぶ)相(さう)謂(ゐ)言(ごん)。099如(によ)此(し)神(しん)人(にん)有(う)蓮(れん)華(げ)相(さう)。100此(し)人(にん)云(うん)何(が)。101心(しん)有(う)染(ぜん)著(ぢやく)。102作(さ)此(し)語(ご)已(い)噎(えつ)不(ふ)能(のう)言(ごん)。103是(ぜ)時(じ)蓮(れん)中(ちう)忽(こつ)有(う)身(しん)根(こん)如(によ)童(どう)子(じ)形(ぎやう)。104諸(しよ)女(によ)見(けん)已(い)更(かう)不(ふ)勝(しよう)喜(き)悦(えつ)現(げん)此(し)相(さう)。105時(じ)羅(ら)睺(ご)羅(ら)母(も)見(けん)彼(ぴ)身(しん)根(こん)華(け)々(け)相(さう)次(じ)如(によ)天(てん)劫(ごふ)貝(まい)。106一(いち)々(いち)華(け)上(じやう)乃(ない)有(う)無(む)数(すう)大(だい)身(しん)菩(ぼう)薩(さつ)。107手(しゆ)執(じう)白(びやく)華(げ)囲(ゐ)繞(によう)身(しん)根(こん)現(げん)已(い)還(げん)没(ぼつ)。108爾(に)時(じ)復(ぶ)有(う)諸(しよ)婬(いん)女(によ)等(とう)。109皆(かい)言(ごん)。110瞿(く)曇(どん)是(ぜ)無(む)根(こん)人(にん)。111仏(ぶつ)聞(もん)此(し)語(ご)如(によ)馬(め)王(わう)相(さう)漸(ぜん)々(ぜん)出(しゆつ)現(げん)。112初(しよ)出(しゆつ)之(し)時(じ)猶(いう)如(によ)八(はつ)歳(さい)童(どう)子(じ)身(しん)根(こん)。113漸(ぜん)々(ぜん)長(ちやう)大(だい)如(によ)少(せう)年(ねん)形(ぎやう)。114諸(しよ)女(によ)見(けん)已(い)皆(かい)悉(しつ)歓(くわん)喜(ぎ)。115時(じ)漸(ぜん)長(ちやう)大(だい)如(によ)蓮(れん)華(げん)幢(とう)。116一(いち)々(いち)層(そう)間(けん)有(う)百(ひやく)億(のく)蓮(れん)華(げ)。117一(いち)々(いち)蓮(れん)華(げ)有(う)百(ひやく)億(のく)宝(ほう)色(しよく)。118一(いち)々(いち)色(しよく)中(ちう)有(う)百(ひやく)億(のく)化(け)仏(ぶつ)。119一(いち)々(いち)化(け)仏(ぶつ)有(う)百(ひやく)億(のく)菩(ぼ)薩(さつ)無(む)量(りやう)大(だい)衆(しう)。120以(い)為(ゐ)侍(じ)者(しや)。121時(じ)諸(しよ)化(け)仏(ぶつ)異(い)口(く)同(どう)音(おん)毀(き)諸(しよ)女(によ)人(にん)悪(あく)欲(よく)。122而(に)説(せつ)偈(げ)言(ごん)。
123 若(にやく)有(う)諸(しよ)男(なん)子(し) 年(ねん)皆(かい)十(じふ)五(ご)六(ろく) 盛(せい)壮(さう)多(た)力(りよく)勢(せい)
124 数(すう)満(まん)恒(ごう)河(が)沙(しや) 持(ぢ)以(い)供(く)給(きふ)女(によ) 不(ふ)満(まん)須(す)臾(ゆう)意(い)
125時(じ)諸(しよ)女(によ)人(にん)聞(もん)此(し)語(ご)已(い)。126心(しん)懐(くわい)慚(ざん)愧(き)懊(おう)悩(なう)。127躃(へき)地(ち)挙(こ)手(しゆ)拍(はく)頭(とう)。128而(に)嗚(を)呼(こ)悪(あく)欲(よく)。129各(かく)厭(おん)女(によ)身(しん)皆(かい)発(ほつ)菩(ぼ)提(だい)心(しん)』[※底本では返り点が付いているが霊界物語ネットでは省略した。読み下し文はオニペディアの「観物三昧経」参照。]チーン……
130 万公(まんこう)、131五三公(いそこう)、132アク、133テク、134タクの五(ご)人(にん)はヘグレ神社(じんしや)をブラブラと巡見(じゆんけん)して種々(いろいろ)と批評(ひひやう)を試(こころ)みて居(ゐ)た所(ところ)、135俄(にはか)に不思議(ふしぎ)な、136神(かみ)の館(やかた)に似合(にあ)はず、137経文(きやうもん)の声(こゑ)が聞(きこ)えて来(き)たので、138ソツと壁(かべ)の外(そと)から、139足音(あしおと)を忍(しの)ばせ、140どこの坊主(ばうず)がやつて来(き)て、141経文(きやうもん)を称(とな)へてゐるのだらう、142蠑螈別(いもりわけ)も余程(よほど)物好(ものずき)だ、143ドレ一(ひと)つ考(かんが)へて見(み)ようかと、144一行(いつかう)五(ご)人(にん)は耳(みみ)をすまして聞(き)いてゐる。145五(ご)人(にん)の中(なか)で仏(ぶつ)の経文(きやうもん)を知(し)つてゐる者(もの)は五三公(いそこう)一人(ひとり)であつた。
146五三(いそ)『あゝコリヤ不思議(ふしぎ)だ、147あの声(こゑ)は蠑螈別(いもりわけ)だ。148観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)を上(あ)げてゐる様(やう)だ。149ヤツパリ三教(さんけう)合同(がふどう)の御(ご)本尊(ほんぞん)の眷族(けんぞく)だと聞(き)いてゐたが、150神(しん)、151仏(ぶつ)、152耶(や)混淆(こんかう)のウラナイ教(けう)の教主(けうしゆ)さまだな』
153万公(まんこう)『観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)にはどんなことが云(い)つてあるのだ。154一(ひと)つ其(その)訳(わけ)を聞(き)きたいものだなア。155オイ是(これ)から蠑螈別(いもりわけ)さまに拝謁(はいえつ)を願(ねが)つて、156お経(きやう)の解説(かいせつ)を願(ねが)ふことにしようかなア』
157五三(いそ)『何(なに)……ダメだよ、158観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)の真相(しんさう)が理解(りかい)されたら、159馬鹿(ばか)らしくつて、160有難(ありがた)さうに唱(とな)へられるものぢやない。161ああして棒読(ぼうよ)みにダヽブダ ダヽブダと読(よ)んで行(ゆ)くから、162有難(ありがた)い様(やう)に聞(きこ)えるのだ』
163万公(まんこう)『さうするとヤツパリ分(わか)らぬのが有難(ありがた)いのかなア。164五三公(いそこう)さま、165お前(まへ)経文(きやうもん)の精神(せいしん)を知(し)つてゐるのなら、166一(ひと)つ其(その)説明(せつめい)を願(ねが)ひたいものだなア』
167五三(いそ)『余(あま)り馬鹿(ばか)らしくて、168説明(せつめい)する丈(だけ)の価値(かち)がないのだ。169お釈迦(しやか)さまも、170ああして祭(まつ)り込(こ)まれちや、171本当(ほんたう)にお気(き)の毒(どく)だ。172露骨(ろこつ)に言(い)へば……全体(ぜんたい)釈迦(しやか)如来(によらい)様(さま)は無生(むせい)無死(むし)の大神人(だいしんじん)国大立(くにひろたちの)尊(みこと)の別御霊(わけみたま)なる大八洲彦(おほやしまひこの)命(みこと)様(さま)が月照彦(つきてるひこ)と現(あら)はれ三五教(あななひけう)の教(をしへ)を宣布(せんぷ)し、173永(なが)く幽政(いうせい)を掌(つかさど)り遂(つひ)には久劫(きうごふ)の昔(むかし)から成仏(じやうぶつ)して都率天(とそつてん)といふ天上(てんじやう)に坐(ま)し坐(ま)し印度(いんど)の国(くに)に於(おい)て再(ふたた)び肉体(にくたい)を示顕(じけん)され時代(じだい)と地方(ちはう)との関係(くわんけい)上(じやう)から仏法(ぶつぼふ)を弘布(こうふ)せむと天津(あまつ)神(かみ)様(さま)の命令(めいれい)を奉(ほう)じて浄飯王(じやうぼんわう)の妻(つま)摩耶(まや)夫人(ふじん)の腹(はら)に宿(やど)つて生(うま)れ婆羅門(ばらもん)教(けう)の勢力(せいりよく)旺盛(わうせい)にして刹帝利(せつていり)族(ぞく)を圧迫(あつぱく)し且(か)つ毘舎(びしや)、174首陀(しゆだ)の二族(にぞく)を虐(しひた)げ弊害(へいがい)が甚(はなは)だしかつたので婆羅門(ばらもん)教(けう)を言向和(ことむけやは)すべく活動(くわつどう)されたのだ。175併(しか)しその教(をしへ)の流(なが)れを汲(く)む後世(こうせい)の仏弟子(ぶつでし)どもが若(も)し人(ひと)に、176釈迦(しやか)はそれ程(ほど)久(ひさ)しい昔(むかし)から成仏(じやうぶつ)して居(ゐ)たといつたならば、177妻子(さいし)の如(ごと)きものが在(あ)るべき筈(はず)がないと難(なん)じられた時(とき)に困(こま)る訳(わけ)だから、178その時(とき)の尻(しり)を結(むす)ぶために糞坊主(くそばうず)どもが言(い)つたことだ。179まだまだその他(た)の仏教(ぶつけう)にも尻(しり)の結(むす)べぬ事(こと)が書(か)いて居(ゐ)るが皆(みな)釈迦(しやか)如来(によらい)の精神(せいしん)ではないのだ。
180 今(いま)唱(とな)へて居(ゐ)るのは観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)だが、181その意味(いみ)を訳(やく)すれば、182釈迦(しやか)は妻(つま)を娶(めと)つたけれど交合(かうがふ)を為(し)なかつた、183所(ところ)が耶輸(やしゆ)陀羅(だら)を始(はじ)め数多(あまた)の侍女(じぢよ)どもが非常(ひじやう)に怪(あや)しんで居(ゐ)た時(とき)に、184侍女(じぢよ)の一人(ひとり)が云(い)ふには妾(わし)は釈迦(しやか)に奉事(ほうじ)して永(なが)らくの年(とし)を経(へ)たけれども未(いま)だにその根(こん)を見(み)たことが無(な)い、185況(いは)んや世事(せじ)あらむやといふ、186但(ただし)俺(わし)が根(こん)と云(い)つたるは即(すなは)ち陰茎(いんけい)のことだ。187そして世事(せじ)と云(い)ふのは、188やがて交合(かうがふ)の事(こと)だ、189何(なん)の事(こと)はない釈迦(しやか)に仕(つか)へて年(とし)を経(へ)たけれどもその陰茎(いんけい)を見(み)たことが無(な)いから況(ま)して交合(かうがふ)はせぬ筈(はず)ぢやと云(い)ふのだ。190時(とき)にまた一人(ひとり)の女(をんな)が云(い)ふには、191妾(わたし)は太子(たいし)に仕(つか)へて十八(じふはち)年(ねん)を経(へ)たが未(いま)だ太子(たいし)の便利(べんり)の患(くわん)あるを見(み)ない況(いは)ンや復(ま)た諸(もも)の余(よ)を見(み)ようぞと云(い)つた。192そこで一同(いちどう)が然(しか)らば太子(たいし)は男(をとこ)ではあるまいと云(い)つて居(ゐ)るので釈迦(しやか)は之(これ)を察(さつ)して態(わざ)と昼寝(ひるね)をして彼(かれ)の一物(いちもつ)を出(だ)して見(み)せた、193其(その)趣(おもむき)を経文(きやうもん)の儘(まま)に棒読(ぼうよ)みにするから実(じつ)に有難(ありがた)く見(み)えたり聞(きこ)えたりするのだ、194アハヽヽヽ後(のち)の坊主(ばうず)どもが釈迦(しやか)を贔屓(ひいき)に思(おも)ひ過(す)ごしてこんな馬鹿(ばか)な説(せつ)を作(つく)つて贔屓(ひいき)の引倒(ひきだふ)しを為(し)たものだ。195何程(なにほど)わからぬ人間(にんげん)だとて蠑螈別(いもりわけ)の如(ごと)き文盲(もんまう)なものばかりも有(あ)るもので無(な)いから坊主(ばうず)のやうにダヽブダ ダヽブダ ダヽブダとばかり読(よ)んで居(を)らず、196たまさかには俺(わし)の様(やう)にシヤンと読(よ)む人(ひと)もあるからなア、197こんな具合(ぐあひ)で諸々(もろもろ)の仏経(ぶつきやう)は尽(ことごと)く釈迦(しやか)に托(たく)して後(のち)の仏者(ぶつしや)どもが偽作(ぎさく)したものだよ、198大方(おほかた)の人間(にんげん)は凡(すべ)ての仏経(ぶつきやう)は全部(ぜんぶ)阿難(あなん)が書(か)いて置(お)いたものだと固(かた)く思(おも)つて居(を)るから目指(めざ)して釈迦(しやか)を譏(そし)つたり非難(ひなん)する様(やう)になるのだ』
199万公(まんこう)『ヤア有難(ありがた)い。200併(しか)し乍(なが)らヒイキの引倒(ひきだふ)し、201商売(しやうばい)道具(だうぐ)に使(つか)はれちや、202お釈迦(しやか)さまもキツと阿弥陀(あみだ)をこぼして厶(ござ)るだらう。203何程(なにほど)教祖(けうそ)は正(ただ)しいことを云(い)つても、204後(のち)の奴(やつ)がいろいろと誤解(ごかい)をしたり、205勝手(かつて)な熱(ねつ)を吹(ふ)いたり、206自分(じぶん)の説(せつ)が通(とほ)らないと、207如是(によぜ)我聞(がもん)とつけて、208釈迦(しやか)に是(かく)の如(ごと)く聞(き)いたと自説(じせつ)を弁護(べんご)せうとするのだから困(こま)つたものだな、209併(しか)し五三公(いそこう)さま、210お前(まへ)は一行中(いつかうちう)の大学者(だいがくしや)だ、211ヤアもう感心(かんしん)した、212今後(こんご)は決(けつ)してお前(まへ)を軽蔑(けいべつ)しないから、213どうぞ俺(おれ)に知識(ちしき)の分配(ぶんぱい)をしてくれ、214お頼(たの)みだ』
215五三(いそ)『ヨシヨシ俺(おれ)も神(かみ)でもなければ仏(ほとけ)でもないのだから、216万屋(よろづや)の様(やう)に何(なん)でも引受(ひきう)けるといふことは出来(でき)ない。217蠑螈別(いもりわけ)の様(やう)に知(し)らぬことでも何(なん)とか理屈(りくつ)をつけてチヨロまかすのなら、218どうでもなるが、219ゴマ化(くわ)しは永続(ながつづ)きがせぬからな、220そして又(また)下根(げこん)の人間(にんげん)に何程(なにほど)結構(けつこう)なことを聞(き)かした所(ところ)で、221聞(き)く耳(みみ)がないと反対(はんたい)に取(と)れるものだ、222さうだから愚夫(ぐふ)愚婦(ぐふ)には却(かへつ)て誠(まこと)のことは言(い)はれないのだ。223自分(じぶん)の暗愚(あんぐ)な卑劣(ひれつ)な心(こころ)を標準(へうじゆん)として、224凡(すべ)ての人間(にんげん)は聞(き)くのだから、225玉(たま)に光(ひかり)のない者(もの)には本当(ほんたう)のことを云(い)つてやると却(かへつ)て誤解(ごかい)するものだ、226併(しか)し万公(まんこう)さまは下根(げこん)ではない、227中根(ちうこん)位(くらゐ)な所(ところ)だから、228天国(てんごく)で云(い)へば第二(だいに)天国(てんごく)といふ所(ところ)だ。229第二(だいに)天国(てんごく)相応(さうおう)の説明(せつめい)を与(あた)へることにせう』
230万公(まんこう)『ヤア有難(ありがた)い、231中根(ちうこん)なら結構(けつこう)だ。232俺(おれ)は又(また)下根(げこん)だと言(い)はれるかと思(おも)つてヒヤヒヤしてゐたよ』
233五三(いそ)『上根(じやうこん)にも上中下(じやうちうげ)があり、234中根(ちうこん)の中(うち)にも又(また)上中下(じやうちうげ)があり、235下根(げこん)の中(なか)にも亦(また)上中下(じやうちうげ)があつて、236三三(さざん)が九階級(くかいきふ)、237区別(くべつ)がついてゐるのだ、238これもホンの大要(たいえう)で、239細(こま)かく言(い)へば百八十(ひやくはちじふ)段(だん)になる』
240万公(まんこう)『さうすると、241此(この)万公(まんこう)は中(ちう)の中(ちう)位(くらゐ)な者(もの)かなア』
242五三(いそ)『さうだなア、243ヤツとマア中(ちう)の下(げ)位(くらゐ)な者(もの)だらうよ』
244アク『五三公(いそこう)さま、245私(わたし)はどこら位(くらゐ)ですか』
246五三(いそ)『ウン、247お前(まへ)は比較(ひかく)的(てき)霊(みたま)が研(みが)けてゐる、248中根(ちうこん)の上(じやう)だ、249モ一(ひと)つ気張(きば)れば上根(じやうこん)に進(すす)むのだよ』
250万公(まんこう)『オイ、251アク、252慢心(まんしん)すなよ、253お芽出(めで)たう』
254アク『五三公(いそこう)さま、255イヤ先生(せんせい)、256私(わたし)のやうな霊(みたま)でも中(ちう)の上(じやう)位(くらゐ)な理解力(りかいりよく)がありますかな』
257五三(いそ)『ハイ大丈夫(だいぢやうぶ)ですよ、258併(しか)し慢心(まんしん)をすると、259すぐに落(お)ちますからな、260ハヽヽヽヽ』
261タク『先生(せんせい)、262私(わたし)はどこらですか』
263五三(いそ)『ウン、264お前(まへ)はさうだなア、265何(なん)と云(い)つてよからうかな』
266タク『ヘー、267さうすると上中下(じやうちうげ)三根(さんこん)を超越(てうゑつ)してゐるのですか』
268五三(いそ)『番外(ばんぐわい)だなア、269よいと云(い)へばよい、270悪(わる)いと云(い)へば悪(わる)い、271まだ混沌(こんとん)として鶏子(けいし)の如(ごと)く、272溟淆(めいかう)にして牙(が)を含(ふく)めりと云(い)ふ所(ところ)だ』
273タク『あゝさうすると、274開闢(かいびやく)の初(はじめ)に現(あら)はれた国治立(くにはるたちの)命(みこと)様(さま)同様(どうやう)の身魂(みたま)ですかな、275即(すなは)ち化(くわ)して神(かみ)となる、276国治立(くにはるたちの)命(みこと)と号(がう)す……といふ様(やう)なものですか。277成程(なるほど)国治立(くにはるたちの)命(みこと)様(さま)は世界(せかい)最初(さいしよ)の偉(えら)い神(かみ)様(さま)であり乍(なが)ら、278一番(いちばん)世(よ)の中(なか)におちぶれて御座(ござ)つたといふ事(こと)だから、279いかにも番外(ばんぐわい)でせう。280オイ、281中(ちう)の下(げ)先生(せんせい)、282中(ちう)の上(じやう)先生(せんせい)、283どうですなア』
284万公(まんこう)『ハヽヽヽ、285国所(くにとこ)立退(たちの)きの命(みこと)だな、286砂(すな)が化(くわ)して瓦(かはら)となるといふ所(ところ)だ』
287テク『先生(せんせい)、288私(わたし)は何(なん)ですか』
289五三(いそ)『さうだなア、290テクもタクと余(あま)り勝(か)ち負(まけ)はないだらう』
291テク『ヤア有難(ありがた)う』
292万公(まんこう)『ハヽヽヽつまり言(い)へば神界(しんかい)のハネノケ者(もの)だ。293チツと之(これ)から観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)でも研究(けんきう)して、294下(げ)の下(げ)位(くらゐ)迄(まで)進(すす)んだらよからうぞ、295ウツフヽヽ』
296テク『馬鹿(ばか)にすない、297あんな者(もの)がこんな者(もの)になるといふ仕組(しぐみ)だ、298今(いま)よくても先(さき)がよくならねば誠(まこと)でないぞよ。299霊(みたま)がよいと申(まを)して慢心(まんしん)致(いた)すとスコタンを食(く)ふぞよ、300万公(まんこう)どのに気(き)をつけるぞよ、301早(はや)く改心(かいしん)して下(くだ)されよ、302改心(かいしん)が一等(いつとう)ぞよ。303艮(うしとら)婆(ばば)アに間違(まちがひ)ないぞよ、304蠑螈別(いもりわけ)の女房(にようばう)お寅(とら)が気(き)をつけるぞよ、305アハヽヽヽ』
306(大正一一・一二・一三 旧一〇・二五 松村真澄録)
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