霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 相生(あひおひ)(まつ)〔一一九七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第2篇 恵の松露 よみ(新仮名遣い):めぐみのしょうろ
章:第7章 相生の松 よみ(新仮名遣い):あいおいのまつ 通し章番号:1197
口述日:1922(大正11)年12月12日(旧10月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
松姫は実は、松彦の生き別れの妻であった。思わぬ夫婦の対面に驚き喜ぶ松彦は、松姫と来し方をしばし語り合った。
アーメニヤで夫婦となっていた二人は、バラモン軍によるエルサレム蹂躙によって生き別れてしまった。松彦はバラモン教に拾われてランチ将軍の秘書となっていた。そして河鹿峠で三五教の宣伝使となっていた兄と再会したのであった。
生き別れになった戦乱の当時、松姫は身ごもっていた。家族散り散りに逃げる途中、親切な老侠客に助けられ、そこで女の子を生んだという。松姫は娘をその老侠客夫婦に引き取ってもらい、自分はウラナイ教でフサの国から自転倒島まで渡り、活躍していた。
小北山の蠑螈別のウラナイ教に潜入してから、かつて娘を預けた老侠客夫婦がなくなり、娘の千代が孤児になっていたことを知り、侍女として引取り教育していたのだと明かした。このことは千代も知らず、今松彦の前で初めて明かされて夫婦親子の対面となった。
三人は歌を持って心のたけを述べ合っている。突然、館の外から瓦をぶちあけたような怪しい笑い声が響いた。親子は驚いたが、この声の主は三人の話を立ち聞きしていた魔我彦であった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-02-25 19:10:37 OBC :rm4507
愛善世界社版:109頁 八幡書店版:第8輯 291頁 修補版: 校定版:114頁 普及版:45頁 初版: ページ備考:
001ウラルの(ひめ)系統(けいとう)
002(うま)()ひたる高姫(たかひめ)
003バラモン(けう)やウラル(けう)
004三五教(あななひけう)御教(みをしへ)
005あちら此方(こちら)取交(とりま)ぜて
006変性(へんじやう)男子(なんし)系統(けいとう)
007自称(じしよう)(なが)らフサの(くに)
008北山村(きたやまむら)(きよ)(かま)
009蠑螈別(いもりわけ)魔我彦(まがひこ)
010高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
011唯一(ゆゐいつ)股肱(ここう)(たの)みつつ
012ウラナイ(けう)本山(ほんざん)
013()てて(をしへ)四方(よも)(くに)
014()(つた)へつつ三五(あななひ)
015(かみ)仁慈(じんじ)にほだされて
016(まつた)前非(ぜんぴ)後悔(こうくわい)
017(かみ)(おん)(ため)()(ため)
018舎身(しやしん)活動(くわつどう)(はげ)みつつ
019(いま)(まつた)三五(あななひ)
020(をしへ)(つかさ)()りすまし
021生田(いくた)(もり)神館(かむやかた)
022(うづ)(つかさ)となりにける。
023(あと)(のこ)りし魔我彦(まがひこ)
024蠑螈別(いもりわけ)教祖(けうそ)とし
025北山村(きたやまむら)(あと)にして
026坂照山(さかてるやま)(たて)こもり
027(ここ)(いよいよ)ウラナイの
028(をしへ)(ふたた)開設(かいせつ)
029小北(こぎた)(やま)神殿(しんでん)
030(とな)へて(をしへ)近国(きんごく)
031(つた)()るこそ雄々(をを)しけれ
032蠑螈別(いもりわけ)魔我彦(まがひこ)
033高姫(たかひめ)仕込(しこ)みの雄弁(ゆうべん)
034縦横(じうわう)無尽(むじん)にふり(まは)
035彼方(かなた)此方(こなた)愚夫(ぐふ)愚婦(ぐふ)
036将棋倒(しやうぎたふ)しに()きまくり
037天下(てんか)無比(むひ)真教(しんけう)
038随喜(ずいき)(なみだ)をこぼさせつ
039(ほたる)(ごと)(ひかり)をば
040小北(こぎた)(やま)谷間(たにあひ)
041細々(ほそぼそ)(なが)(かがや)かす
042さはさり(なが)常暗(とこやみ)
043黒白(あやめ)(わか)()(なか)
044蠑螈別(いもりわけ)魔我彦(まがひこ)
045ねぢけ(まが)れる(をしへ)をも
046正邪(せいじや)調(しら)ぶる智者(ちしや)もなく
047(よく)にからまれ天国(てんごく)
048(のぼ)りて死後(しご)安楽(あんらく)
049(くら)さむものと婆嬶(ばばかか)
050愚者(ぐしや)々々(ぐしや)(あつ)まりゐたりけり
051浮木(うきき)(むら)()(たか)
052白浪(しらなみ)(をんな)のお(とら)さま
053どうした(はづ)みか何時(いつ)となく
054小北(こぎた)(やま)(かよ)()
055(あし)しげしげと(かさ)なつて
056蠑螈別(いもりわけ)殊愛(しゆあい)され
057女房(にようばう)気取(きど)りで(なに)くれと
058一切(いつさい)万事(ばんじ)()のまはり
059注意(ちうい)注意(ちうい)(くは)へつつ
060あらむ(かぎ)りの親切(しんせつ)
061(つく)して教祖(けうそ)歓心(くわんしん)
062やつと(もと)めて丑寅(うしとら)
063()さまはニコニコ(えつ)()
064小北(こぎた)(やま)一身(いつしん)
065(わが)双肩(さうけん)(にな)うたる
066やうな心地(ここち)(ひか)えゐる。
067蠑螈別(いもりわけ)曲神(まがかみ)
068(たま)をぬかれて(さけ)(ばか)
069(よる)(ひる)との区別(くべつ)なく
070あふりて(こころ)煩悶(はんもん)
071(なぐさ)()れど時々(ときどき)
072(こころ)(ひそ)みし曲鬼(まがおに)
073飛出(とびだ)(きた)高姫(たかひめ)
074色香(いろか)(した)口走(くちばし)
075(とら)(こころ)(いた)めたる
076(その)醜態(しうたい)幾度(いくたび)
077(かぞ)(つく)せぬ(ばか)(なり)
078(とら)無念(むねん)(おさ)へつつ
079勘忍袋(かんにんぶくろ)をキツと()
080こばり()めてぞゐたりしが
081大洪水(だいこうずゐ)襲来(しふらい)
082(せん)()堤防(ていばう)一時(いちどき)
083決潰(けつくわい)したる(ばか)りにて
084悋気(りんき)濁水(だくすゐ)氾濫(はんらん)
085人目(ひとめ)もかまはず前後(ぜんご)をも
086(わす)れて教祖(けうそ)胸倉(むなぐら)
087つかみ()めたる(おそ)ろしさ
088かかる乱痴気(らんちき)(さわ)ぎをば
089(おもて)()ちし松彦(まつひこ)
090(つかさ)一行(いつかう)(かく)さむと
091(こころ)(いた)めいろいろと
092(この)()体裁(ていさい)つくろへど
093(かく)()うせぬ燗徳利(かんどくり)
094土瓶(どびん)()ずまひわれた猪口(ちよこ)
095金切声(かなきりごゑ)屋外(をくぐわい)
096(きこ)(きた)るぞ是非(ぜひ)なけれ
097(とら)()さまが(この)(やま)
098(きた)つて御用(ごよう)(はじ)めてゆ
099これ(だけ)(おこ)つた大喧嘩(おほげんくわ)
100(いま)一度(いちど)もなかつたに
101如何(どう)した拍子(ひやうし)瓢箪(へうたん)
102(おも)ひもよらぬ醜状(しうじやう)
103珍客(ちんきやく)さまの()(まへ)
104曝露(ばくろ)したるぞ神罰(しんばつ)
105()ふもなかなか(おろか)なり
106あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
107御霊(みたま)(さちは)ひましませよ。
108
109小北(こぎた)(やま)別館(べつくわん)
110(ひそ)みて(をしへ)実権(じつけん)
111掌握(しやうあく)しつつ朝夕(あさゆふ)
112(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
113大御心(おほみこころ)奉戴(ほうたい)
114ウラナイ(けう)曲神(まがかみ)
115日日(ひにち)(よろづ)言向(ことむ)けて
116根本(こんぽん)(てき)改良(かいりやう)
117蠑螈別(いもりわけ)魔我彦(まがひこ)
118身魂(みたま)立替(たてかへ)立直(たてなほ)
119三五教(あななひけう)真髄(しんずい)
120理解(りかい)せしめて(みち)(ため)
121世人(よびと)(ため)神徳(しんとく)
122(かがや)かさむと松姫(まつひめ)
123蠑螈別(いもりわけ)()ふままに
124上義(じやうぎ)(ひめ)(とな)へられ
125(こころ)ならずも春陽(しゆんやう)
126(はな)()(にほ)時節(じせつ)をば
127(かみ)(いの)りて松姫(まつひめ)
128(こころ)(おく)(ゆか)しけれ
129小北(こぎた)(やま)(まつ)りたる
130ユラリの(ひこ)(また)御名(みな)
131末代(まつだい)()王天(わうてん)(かみ)
132(その)(ほか)(もも)神名(しんめい)
133いずれも(ただ)しきものならず
134(きつね)(たぬき)神霊(しんれい)
135(たぶらか)されて魔我彦(まがひこ)
136(まこと)(かみ)(おも)ひつめ
137得意(とくい)になりて宮柱(みやばしら)
138ヘグレのヘグレのヘグレムシヤ
139ヘグレ神社(じんじや)()(なら)
140(まよ)ひゐるこそうたてけれ
141三五教(あななひけう)松姫(まつひめ)
142かやうな(こと)(だまさ)れて
143信仰(しんかう)するよな(もの)でない
144さは()(なが)(いま)すぐに
145いと厳格(げんかく)審神(さには)をば
146なすに(おい)ては蠑螈別(いもりわけ)
147(その)(ほか)(もも)神司(かむづかさ)
148一度(いちど)(かなへ)()(ごと)
149(いか)(くる)ひて松姫(まつひめ)
150身辺(しんぺん)(たちま)(あやふ)しと
151(さと)りたるより松姫(まつひめ)
152素知(そし)らぬ(かほ)(よそほ)ひつ
153ウラナイ(けう)実権(じつけん)
154何時(いつ)()にかは掌握(しやうあく)
155小北(こぎた)(やま)神殿(しんでん)
156(ほとん)松姫(まつひめ)(いち)(にん)
157指命(しめい)(もと)大部分(だいぶぶん)
158(うご)かし()べき()となりぬ
159モウ(この)(うへ)松姫(まつひめ)
160(なん)遠慮(ゑんりよ)()るものか
161やがてボツボツ正体(しやうたい)
162(あら)はしくれむと(おも)(うち)
163(むかし)(わか)れし(わが)(つま)
164松彦(まつひこ)さまが三五(あななひ)
165(かみ)(つかさ)となりすまし
166(おも)ひも()らぬ(この)(やま)
167(とら)()さまに(みちび)かれ
168(のぼ)(きた)りし(その)姿(すがた)
169居間(ゐま)(まど)より(のぞ)きこみ
170ハツと(むね)をば(をど)らせつ
171(にはか)(こひ)しさ()にせまり
172たまりかねてぞなりければ
173神勅(しんちよく)なりと()ひくろめ
174(とら)()さまを(まね)きよせ
175(いま)()(ひと)はユラリ(ひこ)
176末代(まつだい)()王天(わうてん)(かみ)
177(たふと)(かみ)生宮(いきみや)
178あの(かみ)(さま)()なれては
179五六七(みろく)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)
180仕組(しぐみ)はとても()たうまい
181()苦労(くらう)(なが)一走(ひとはし)
182(まへ)(あと)()つかけて
183末代(まつだい)さまを是非(ぜひ)一度(いちど)
184これの(やかた)()(かへ)
185いと慇懃(いんぎん)(もてな)して
186いついつ(まで)(この)(やま)
187鎮座(ちんざ)ましましウラナイの
188(かみ)(をしへ)目的(もくてき)
189()たさにやならぬお(とら)さま
190これの使命(しめい)(はた)しなば
191(まへ)はこれから(この)(やま)
192最大一(さいだいいち)殊勲者(しゆくんじや)
193おだてあぐればお(とら)さま
194(にはか)元気(げんき)(はふ)()して
195十曜(とえう)(もん)(ゑが)きたる
196(あふぎ)片手(かたて)にひつつかみ
197松姫館(まつひめやかた)飛出(とびだ)して
198オーイオーイと松彦(まつひこ)
199呼戻(よびもど)したる(その)手腕(しゆわん)
200なみなみならぬ()さま(なり)
201あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
202御霊(みたま)(さちは)ひましませよ。
203蠑螈別(いもりわけ)片腕(かたうで)
204自分(じぶん)(ゆる)(ひと)(また)
205(ゆる)魔我彦(まがひこ)副教主(ふくけうしゆ)
206蠑螈別(いもりわけ)託宣(たくせん)
207(いち)から(じふ)(まで)鵜呑(うの)みして
208善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)区別(くべつ)なく
209(ただ)有難(ありがた)有難(ありがた)
210(まこと)(かみ)(この)(ほか)
211(ひろ)世界(せかい)にやあるまいと
212(こころ)(そこ)から歓喜(くわんき)して
213真理(しんり)(みだ)(をしへ)とは
214(すこ)しも()らず朝夕(あさゆふ)
215骨身(ほねみ)(をし)まず神前(しんぜん)
216いとまめやかに(つか)へつつ
217(まよ)()つたる魔我彦(まがひこ)
218蠑螈別(いもりわけ)のなす(こと)
219善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)(かか)はらず
220(いづ)れも(かみ)正業(せいげふ)
221迷信(めいしん)せるこそ(おろか)なれ
222かくも(をしへ)迷信(めいしん)
223朴直(ぼくちよく)一途(いちづ)魔我彦(まがひこ)
224(わか)(をとこ)(せん)にもれず
225(こひ)(こころ)(みだ)しつつ
226()れにかしづく女房(にようばう)
227(かふ)(いた)そか(おつ)にせうか
228又々(またまた)(へい)丁戍(ていぼう)
229なぞと(あつ)まる信者(しんじや)をば
230(をんな)()れば探索(たんさく)
231物色(ぶつしよく)しつつ()(ほそ)
232(いろ)(しろ)いが(はな)(ひく)
233(はな)(たか)いが()(ほそ)
234背丈(せたけ)(たか)(ひく)いなど
235(あさ)(ゆふ)なに(くび)かたげ
236(つま)選挙(せんきよ)余念(よねん)なく
237(こころ)(なや)ましゐたる(をり)
238(すこ)しく(とし)はよつたれど
239(はな)(あざむ)松姫(まつひめ)
240これの(やかた)(きた)りしゆ
241二世(にせ)女房(にようばう)松姫(まつひめ)
242自分(じぶん)免許(めんきよ)(つま)さだめ
243(かみ)奉仕(ほうし)(その)(あひ)
244万事(ばんじ)万端(ばんたん)()()けて
245松姫(まつひめ)さまの歓心(くわんしん)
246()(こと)(ばか)りに()(やつ)
247吉日(きちにち)良辰(りやうしん)到来(たうらい)
248連理(れんり)(そで)(ひるがへ)
249合衾式(がふきんしき)をあげむぞと
250(たの)しみゐたるも(みづ)(あわ)
251(おも)ひもよらぬ松彦(まつひこ)
252(この)神館(しんくわん)(あら)はれて
253ウラナイ(けう)信徒(まめひと)
254唯一(ゆゐいつ)主神(しゆしん)(たの)みたる
255神徳(しんとく)(たか)きユラリ(ひこ)
256(また)(おん)()(たづ)ぬれば
257末代(まつだい)()王天(わうてん)(かみ)
258(うづ)宮居(みやゐ)(あら)はれて
259突然(とつぜん)ここに天降(あまくだ)
260上義(じやうぎ)(ひめ)松姫(まつひめ)
261(みたま)夫婦(ふうふ)()きしより
262()()でならぬ魔我彦(まがひこ)
263(むね)(をど)らせゐたりける
264かかる(ところ)松姫(まつひめ)
265侍女(じぢよ)のお千代(ちよ)(あら)はれて
266魔我彦(まがひこ)さまへ上義姫(じやうぎひめ)
267あが()(きみ)御用(ごよう)ぞと
268()いたを(しほ)()()つて
269(はな)うごめかし(ひぢ)()
270吉報(きつぽう)()かむと()てみれば
271豈計(あにはか)らむや松姫(まつひめ)
272()つて(かは)つた(その)様子(やうす)
273(をか)(がた)くぞ()えにける
274義理(ぎり)天上(てんじやう)自称(じしよう)する
275魔我彦(まがひこ)(ひめ)打向(うちむか)
276(おも)ひの(たけ)をクドクドと
277()べむとすれば松姫(まつひめ)
278(てこ)でも(うご)かぬ(いきほひ)
279魔我彦(まがひこ)さまへ今日(けふ)からは
280(まへ)(たの)(こと)がある
281松彦(まつひこ)さまは(わが)(つま)
282モウ(これ)からは(いや)らしい
283目付(めつき)をしたりバカな(こと)
284()はない(やう)にしておくれ
285二世(にせ)(をつと)のある(わたし)
286(おほい)迷惑(めいわく)(いた)します
287松彦(まつひこ)さまはユラリ(ひこ)
288末代(まつだい)()王天(わうてん)(かみ)
289(わたし)(つま)上義姫(じやうぎひめ)
290(とほ)神世(かみよ)(むかし)から
291()るに()られぬ因縁(いんねん)
292ヘグレのヘグレのヘグレ武者(むしや)
293世界(せかい)(くま)なく(さま)よひて
294おちて()つたが優曇華(うどんげ)
295(はな)()(はる)相生(あひおひ)
296(まつ)(まつ)との深緑(ふかみどり)
297千代(ちよ)(ちぎり)(むす)昆布(こぶ)
298(まへ)(わし)との(その)(なか)
299至清(しせい)至潔(しけつ)()(うへ)
300(けが)しもなさず(けが)されも
301せない二人(ふたり)神司(かむつかさ)
302(よろづ)(もの)霊長(れいちやう)
303(うま)れた(ひと)(なに)よりも
304(だん)一字(いちじ)大切(たいせつ)
305(こひ)執着(しふちやく)サツパリと
306()かしてお()れと手厳(てきび)しく
307不意(ふい)打出(うちだ)肱鉄砲(ひぢてつぱう)
308(あき)れて言葉(ことば)もないじやくり
309言葉(ことば)(つく)最善(さいぜん)
310(つく)せど松姫(まつひめ)承知(しようち)せず
311千代(ちよ)(まで)馬鹿(ばか)にされ
312無念(むねん)(なみだ)ハラハラと
313松彦司(まつひこつかさ)(うら)みつつ
314シオシオ()つて(もと)()
315(かほ)(いろ)まで(あを)くして
316(かへ)つて()れば万公(まんこう)
317五三公(いそこう)(その)()連中(れんちう)
318力限(ちからかぎ)りに嘲笑(てうせう)する
319魔我彦(まがひこ)さまは(はら)()
320()ぎしりすれど(ひと)(まへ)
321(おこ)りもならず()けもせず
322煩悶(はんもん)苦悩(くなう)(むね)おさへ
323(うつ)むきゐるぞ(あは)れなる
324少女(せうぢよ)千代(ちよ)(みちび)かれ
325松彦(まつひこ)さまは別館(べつやかた)
326(すす)みて()れば()はいかに
327日頃(ひごろ)(した)ひし松姫(まつひめ)
328盛装(せいさう)()らしニコニコと
329笑顔(ゑがほ)(たた)へて松彦(まつひこ)
330()をとり(おく)へよび()れる
331流石(さすが)松彦(まつひこ)呆然(ばうぜん)
332言葉(ことば)()でず松姫(まつひめ)
333(おもて)(なが)めてゐたりしが
334あたり()まはし松姫(まつひめ)
335ソツと(その)()(にぎ)りしめ
336(こひ)しき(わが)(つま)松彦(まつひこ)
337(よる)(あらし)(さそ)はれて
338(わか)れてから(はや)十年(ととせ)
339(あま)りの月日(つきひ)(おく)りました
340(あめ)(あした)(かぜ)(よひ)
341(おも)()しては(なき)くらし
342(おも)()しては(また)(なげ)
343月日(つきひ)(こま)(せき)もなく
344今日(けふ)()(まで)(わが)(つま)
345行方(ゆくへ)(たづ)(かみ)(さま)
346(いの)りを()げて(いち)(にち)
347(はや)()はさせ(たま)へやと
348(いの)りし甲斐(かひ)もありありと
349(あら)はれ(たま)ひし(かみ)(とく)
350今日(けふ)(つど)ひの有難(ありがた)
351(なに)から()うてよかろやら
352(はなし)海山(うみやま)(つも)(ども)
353(その)糸口(いとぐち)(みだ)()
354(ほど)きかねたる(むね)(うち)
355推量(すゐりやう)なされて(くだ)さんせ
356マアマア無事(ぶじ)()達者(たつしや)
357(わたし)(うれ)しいお目出(めで)たい
358貴方(あなた)()せたい(もの)がある
359どうぞ(よろこ)んで(くだ)さんせ
360(かた)れば松彦(まつひこ)(なみだ)ぐみ
361(その)()をしかと(にぎ)りしめ
362(まへ)(わが)(つま)松姫(まつひめ)
363ヨウまあ無事(ぶじ)でゐてくれた
364(まへ)(わか)れた(その)(のち)
365()果敢(はか)なみてウロウロと
366フサの(くに)をば遠近(をちこち)
367(めぐ)(めぐ)りて(つき)(くに)
368バラモン(けう)本山(ほんざん)
369(あら)はれ(たま)神柱(かむばしら)
370大黒主(おほくろぬし)部下(ぶか)とます
371ランチ将軍(しやうぐん)片彦(かたひこ)
372(つかさ)(かみ)見出(みいだ)され
373(かみ)(はしら)軍人(いくさびと)
374(ふた)つを()ねてまめやかに
375(つか)(なが)らも両親(ふたおや)
376(あに)()(うへ)(なれ)()
377(おも)(あん)じて(いち)(にち)
378(やす)(この)()(わた)りたる
379(とき)(なみだ)にかきくれて
380(かな)しき月日(つきひ)(おく)(をり)
381(たふと)(かみ)引合(ひきあは)
382河鹿(かじか)(たうげ)谷間(たにあひ)
383(こひ)しき(あに)(めぐ)()
384(ここ)(こころ)(ひるが)へし
385三五教(あななひけう)入信(にふしん)
386御伴(みとも)(つか)へまつりつつ
387野中(のなか)(もり)()をあかし
388(はし)(たもと)()()れば
389(とら)()さまの(おや)()
390(おも)はず()らず出会(でつく)はし
391(えにし)(つな)()かされて
392(おも)はず()らず()()れば
393日頃(ひごろ)(した)ひし(わが)(つま)
394ここに()たのか(うれ)しやな
395(むす)ぶの(かみ)(むす)びたる
396二人(ふたり)(なか)一旦(いつたん)
397(みぎ)(ひだり)(わか)(とも)
398(こころ)(とけ)(こひ)(いと)
399(ほど)()めたる今日(けふ)(そら)
400(うれ)しさ(むね)()(あふ)
401(こた)ふる言葉(ことば)もないじやくり
402(かみ)(めぐみ)今更(いまさら)
403(おも)(うか)べて有難(ありがた)
404()()みわたる(たふと)さよ
405(あさひ)()(とも)(くも)(とも)
406(つき)()(とも)()くる(とも)
407仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)(とも)
408(まこと)(ちから)()(すく)
409真心(まごころ)こめてひたすらに
410(かみ)(をしへ)(まも)りたる
411二人(ふたり)()をば(あは)れみて
412(おも)ひもよらぬ(この)(やま)
413()はし(たま)ひし天地(あめつち)
414(かみ)御前(みまへ)感謝(かんしや)して
415(この)行先(ゆくさき)殊更(ことさら)
416(いのち)(をし)まず(みち)(ため)
417(こころ)(かぎ)()(かぎ)
418(つか)へまつりて神恩(しんおん)
419万分一(まんぶんいち)(むく)うべし
420あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
421御霊(みたま)(さちは)ひましませよ。
422松彦(まつひこ)(たふと)(かみ)(さま)御恵(みめぐ)みに()つて、423(なが)らくの(あひだ)424(たがひ)在所(ありか)(わか)らなかつた(まつ)(まつ)との夫婦(ふうふ)が、425(おも)はぬ(この)(やま)(めぐ)()ふとは、426(なん)たる有難(ありがた)(こと)であらう。427()其方(そなた)無事(ぶじ)で、428松彦(まつひこ)(うれ)しい、429(つい)ては(わし)()せたい(もの)があると()つたのはどんな(もの)だ、430様子(やうす)()りげなお(まへ)言葉(ことば)431グツと(むね)にこたえた』
432松姫(まつひめ)『ソリヤさうで(ござ)いませう。433貴方(あなた)にお(わか)れした(とき)に、434(わたし)身重(みおも)になつて()つた(こと)(おぼ)えてゐらつしやるでせう』
435松彦(まつひこ)(たしか)(おぼ)えてゐる。436機嫌(きげん)よく身二(みふた)つになつただらうなア』
437松姫(まつひめ)『ハイ、438アーメニヤを()()途中(とちう)439フサの(くに)のライオン(がは)(ほとり)(はら)(いた)くなり、440たうとう妊娠(にんしん)(はち)(げつ)で、441可愛(かあい)(をんな)()()みおとしました』
442松彦(まつひこ)『そして(その)()()うなつたのだ。443(はや)()かして()れ』
444松姫(まつひめ)途中(とちう)(こと)とて如何(どう)する(こと)出来(でき)ず、445(くるし)んで()(ところ)へ、446(さけ)()うた(をとこ)がブラリブラリと(とほ)(あは)せ、447親切(しんせつ)(わが)()へつれ(かへ)り、448介抱(かいほう)をしてくれました。449それが(ため)母子(おやこ)(とも)機嫌(きげん)よく肥立(ひだ)ち、450(むすめ)(その)(をとこ)()がないのを(さいは)ひ、451(もら)つて(もら)ひ、452(わたし)はフサの(くに)北山村(きたやまむら)のウラナイ(けう)信仰(しんかう)(いた)し、453(つひ)には抜擢(ばつてき)されて宣伝使(せんでんし)となり、454自転倒(おのころ)(じま)高城山(たかしろやま)教主(けうしゆ)となつて御用(ごよう)(いた)して()りましたが、455高姫(たかひめ)(さま)三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)(とも)(わたし)三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)(いた)し、456言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)内命(ないめい)()つて、457小北山(こぎたやま)へいろいろと(ことば)(まう)け、458うまく()()んで、459神業(しんげふ)(ため)に、460(こころ)(くだ)いて()ります。461そして(その)(むすめ)はここに()(この)千代(ちよ)(ござ)います』
462松彦(まつひこ)『ヤアこれが(わが)(むすめ)か、463ヨウまア(おほ)きくなつてくれた。464(おや)はなうても()(そだ)つとは()()つたものだな。465コレお千代(ちよ)466(わし)はお(まへ)父親(てておや)ぢや、467養育(やういく)人手(ひとで)(わた)して()まぬ(こと)だつたなア』
468(なみだ)ぐむ。469千代(ちよ)(はじ)めて松姫(まつひめ)物語(ものがたり)()き、470松姫(まつひめ)自分(じぶん)(じつ)(はは)で、471松彦(まつひこ)(じつ)(ちち)なることを(さと)つた。472千代(ちよ)(おも)はず(うれ)(なみだ)にくれてワツと(その)()泣倒(なきたふ)れた。473松姫(まつひめ)(なみだ)(なが)らにお千代(ちよ)抱起(だきおこ)し、474(あたま)()(せな)()でて()をくひしめて(しの)()きしてゐる。
475松彦(まつひこ)『たらちねの(おや)はなくても()(そだ)
476(そだ)ての(おや)(めぐ)(たふと)き。
477(わが)()をば(そだ)(たま)ひし両親(ふたおや)
478いづくの(ひと)()かまほしさよ』
479松姫(まつひめ)『フサの(くに)竹野(たけの)(むら)のカーチンと
480()つて名高(なだか)白浪(しらなみ)(をとこ)
481さり(なが)らカーチンさまの夫婦(ふうふ)づれ
482(いま)はあの()(ひと)となりぬる』
483松彦(まつひこ)一言(ひとこと)のいやひ言葉(ことば)もかはされぬ
484(そだ)ての(おや)有難(ありがた)(かな)
485(わが)(むすめ)千代(ちよ)八千代(やちよ)もカーチンの
486(そだ)ての(おん)(わす)れまいぞや』
487千代(ちよ)有難(ありがた)(そだ)ての(おや)(かな)しくも
488(わか)れて(まこと)(おや)()ひぬる。
489たらちねの(ちち)(はは)とに(めぐ)()
490(うれ)(なみだ)()めどなくふる』
491松姫(まつひめ)(はは)()よと名乗(なの)らむものと(おも)ひしが
492あたり(はばか)(つつ)()たりし。
493(わが)(はは)()らずに(つか)(はべ)りたる
494千代(ちよ)(こころ)いとしかりけり』
495千代(ちよ)(わが)(はは)()らず()らずに(なつか)しく
496()君様(きみさま)(おも)(つか)へぬ。
497どことなく(ぬく)みのゐます()(きみ)
498(あさ)(ゆふ)なに伏拝(ふしをが)みける』
499松彦(まつひこ)三五(あななひ)(かみ)大道(おほぢ)()りしより
500三日(みつか)ならずに(つま)にあひぬる。
501(つま)となり(をつと)となるも天地(あめつち)
502(かみ)御水火(みいき)のこもるまにまに。
503天地(あめつち)(かみ)御水火(みいき)(うま)れたる
504(わが)()千代(ちよ)(さか)()くらむ』
505千代(ちよ)父母(ちちはは)(めぐみ)のたまくら()らね(ども)
506(なん)とはなしに(した)ひぬる(かな)
507カーチンの(ちち)(みこと)()みの(おや)
508(した)ひて朝夕(あさゆふ)(つか)()にけり。
509朝夕(あさゆふ)になでさすりつつ(わが)()をば
510(そだ)(たま)ひし(おや)(こひ)しき』
511松彦(まつひこ)『さもあらむ、(わら)(うへ)から(そだ)てられ
512慈悲(じひ)(ぬく)みに()()ちし()は。
513われよりも(そだ)ての(おや)(たふと)みて
514とひ(とむら)ひを(わす)れざらまし』
515松姫(まつひめ)(こひ)したふ、あが()(きみ)(めぐ)()
516(うれ)(なみだ)のとめどなき(かな)
517 かく親子(おやこ)(うた)(もつ)(こころ)(たけ)()べてゐる。518(やかた)外面(そとも)より(にはか)(きこ)ゆる(かはら)をぶちやけた(やう)(こゑ)
519(魔我彦)『グワハツヽヽヽ、520イツヒヽヽヽ』
521 親子(おやこ)(さん)(にん)(この)(こゑ)(おどろ)き、522あたりをキヨロキヨロと見廻(みまは)した。523(あや)しき(わら)(ごゑ)はそれつきりにて屋上(をくじやう)()(わた)(こがらし)(おと)ゾウゾウと(きこ)えてゐる。524(この)(こゑ)(ぬし)魔我彦(まがひこ)であつた(こと)前後(ぜんご)事情(じじやう)より(うかが)(こと)出来(でき)る。
525大正一一・一二・一二 旧一〇・二四 松村真澄録)
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