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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第45巻(申の巻)
序文
総説
第1篇 小北の特使
第1章 松風
第2章 神木
第3章 大根蕪
第4章 霊の淫念
第2篇 恵の松露
第5章 肱鉄
第6章 唖忿
第7章 相生の松
第8章 小蝶
第9章 賞詞
第3篇 裏名異審判
第10章 棚卸志
第11章 仲裁
第12章 喜苔歌
第13章 五三の月
第4篇 虎風獣雨
第14章 三昧経
第15章 曲角狸止
第16章 雨露月
第17章 万公月
第18章 玉則姫
第19章 吹雪
第20章 蛙行列
余白歌
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舎身活躍(第37~48巻)
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第45巻(申の巻)
> 第2篇 恵の松露 > 第7章 相生の松
<<< 唖忿
(B)
(N)
小蝶 >>>
第七章
相生
(
あひおひ
)
の
松
(
まつ
)
〔一一九七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
篇:
第2篇 恵の松露
よみ(新仮名遣い):
めぐみのしょうろ
章:
第7章 相生の松
よみ(新仮名遣い):
あいおいのまつ
通し章番号:
1197
口述日:
1922(大正11)年12月12日(旧10月24日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月12日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
松姫は実は、松彦の生き別れの妻であった。思わぬ夫婦の対面に驚き喜ぶ松彦は、松姫と来し方をしばし語り合った。
アーメニヤで夫婦となっていた二人は、バラモン軍によるエルサレム蹂躙によって生き別れてしまった。松彦はバラモン教に拾われてランチ将軍の秘書となっていた。そして河鹿峠で三五教の宣伝使となっていた兄と再会したのであった。
生き別れになった戦乱の当時、松姫は身ごもっていた。家族散り散りに逃げる途中、親切な老侠客に助けられ、そこで女の子を生んだという。松姫は娘をその老侠客夫婦に引き取ってもらい、自分はウラナイ教でフサの国から自転倒島まで渡り、活躍していた。
小北山の蠑螈別のウラナイ教に潜入してから、かつて娘を預けた老侠客夫婦がなくなり、娘の千代が孤児になっていたことを知り、侍女として引取り教育していたのだと明かした。このことは千代も知らず、今松彦の前で初めて明かされて夫婦親子の対面となった。
三人は歌を持って心のたけを述べ合っている。突然、館の外から瓦をぶちあけたような怪しい笑い声が響いた。親子は驚いたが、この声の主は三人の話を立ち聞きしていた魔我彦であった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-02-25 19:10:37
OBC :
rm4507
愛善世界社版:
109頁
八幡書店版:
第8輯 291頁
修補版:
校定版:
114頁
普及版:
45頁
初版:
ページ備考:
001
ウラルの
姫
(
ひめ
)
の
系統
(
けいとう
)
と
002
生
(
うま
)
れ
合
(
あ
)
ひたる
高姫
(
たかひめ
)
が
003
バラモン
教
(
けう
)
やウラル
教
(
けう
)
004
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
005
あちら
此方
(
こちら
)
と
取交
(
とりま
)
ぜて
006
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
けいとう
)
と
007
自称
(
じしよう
)
し
乍
(
なが
)
らフサの
国
(
くに
)
008
北山村
(
きたやまむら
)
に
居
(
きよ
)
を
構
(
かま
)
へ
009
蠑螈別
(
いもりわけ
)
や
魔我彦
(
まがひこ
)
や
010
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
を
011
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
股肱
(
ここう
)
と
頼
(
たの
)
みつつ
012
ウラナイ
教
(
けう
)
の
本山
(
ほんざん
)
を
013
立
(
た
)
てて
教
(
をしへ
)
を
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
014
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
へつつ
三五
(
あななひ
)
の
015
神
(
かみ
)
の
仁慈
(
じんじ
)
にほだされて
016
全
(
まつた
)
く
前非
(
ぜんぴ
)
を
後悔
(
こうくわい
)
し
017
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
世
(
よ
)
の
為
(
ため
)
に
018
舎身
(
しやしん
)
の
活動
(
くわつどう
)
励
(
はげ
)
みつつ
019
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
く
三五
(
あななひ
)
の
020
教
(
をしへ
)
の
司
(
つかさ
)
と
成
(
な
)
りすまし
021
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
の
神館
(
かむやかた
)
022
珍
(
うづ
)
の
司
(
つかさ
)
となりにける。
023
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
りし
魔我彦
(
まがひこ
)
は
024
蠑螈別
(
いもりわけ
)
を
教祖
(
けうそ
)
とし
025
北山村
(
きたやまむら
)
を
後
(
あと
)
にして
026
坂照山
(
さかてるやま
)
に
立
(
たて
)
こもり
027
茲
(
ここ
)
に
愈
(
いよいよ
)
ウラナイの
028
教
(
をしへ
)
を
再
(
ふたた
)
び
開設
(
かいせつ
)
し
029
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
の
神殿
(
しんでん
)
と
030
称
(
とな
)
へて
教
(
をしへ
)
を
近国
(
きんごく
)
に
031
伝
(
つた
)
へ
居
(
ゐ
)
るこそ
雄々
(
をを
)
しけれ
032
蠑螈別
(
いもりわけ
)
や
魔我彦
(
まがひこ
)
は
033
高姫
(
たかひめ
)
仕込
(
しこ
)
みの
雄弁
(
ゆうべん
)
を
034
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
にふり
廻
(
まは
)
し
035
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
の
愚夫
(
ぐふ
)
愚婦
(
ぐふ
)
を
036
将棋倒
(
しやうぎたふ
)
しに
説
(
と
)
きまくり
037
天下
(
てんか
)
に
無比
(
むひ
)
の
真教
(
しんけう
)
と
038
随喜
(
ずいき
)
の
涙
(
なみだ
)
をこぼさせつ
039
螢
(
ほたる
)
の
如
(
ごと
)
き
光
(
ひかり
)
をば
040
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
の
谷間
(
たにあひ
)
に
041
細々
(
ほそぼそ
)
乍
(
なが
)
ら
輝
(
かがや
)
かす
042
さはさり
乍
(
なが
)
ら
常暗
(
とこやみ
)
の
043
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
044
蠑螈別
(
いもりわけ
)
や
魔我彦
(
まがひこ
)
の
045
ねぢけ
曲
(
まが
)
れる
教
(
をしへ
)
をも
046
正邪
(
せいじや
)
を
調
(
しら
)
ぶる
智者
(
ちしや
)
もなく
047
欲
(
よく
)
にからまれ
天国
(
てんごく
)
へ
048
昇
(
のぼ
)
りて
死後
(
しご
)
を
安楽
(
あんらく
)
に
049
暮
(
くら
)
さむものと
婆嬶
(
ばばかか
)
が
050
愚者
(
ぐしや
)
々々
(
ぐしや
)
集
(
あつ
)
まりゐたりけり
051
浮木
(
うきき
)
の
村
(
むら
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
052
白浪
(
しらなみ
)
女
(
をんな
)
のお
寅
(
とら
)
さま
053
どうした
機
(
はづ
)
みか
何時
(
いつ
)
となく
054
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
に
通
(
かよ
)
ひ
出
(
だ
)
し
055
足
(
あし
)
しげしげと
重
(
かさ
)
なつて
056
蠑螈別
(
いもりわけ
)
に
殊愛
(
しゆあい
)
され
057
女房
(
にようばう
)
気取
(
きど
)
りで
何
(
なに
)
くれと
058
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
身
(
み
)
のまはり
059
注意
(
ちうい
)
に
注意
(
ちうい
)
を
加
(
くは
)
へつつ
060
あらむ
限
(
かぎ
)
りの
親切
(
しんせつ
)
を
061
尽
(
つく
)
して
教祖
(
けうそ
)
の
歓心
(
くわんしん
)
を
062
やつと
求
(
もと
)
めて
丑寅
(
うしとら
)
の
063
婆
(
ば
)
さまはニコニコ
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
り
064
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
を
一身
(
いつしん
)
に
065
吾
(
わが
)
双肩
(
さうけん
)
に
担
(
にな
)
うたる
066
やうな
心地
(
ここち
)
で
控
(
ひか
)
えゐる。
067
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
曲神
(
まがかみ
)
に
068
魂
(
たま
)
をぬかれて
酒
(
さけ
)
計
(
ばか
)
り
069
夜
(
よる
)
と
昼
(
ひる
)
との
区別
(
くべつ
)
なく
070
あふりて
心
(
こころ
)
の
煩悶
(
はんもん
)
を
071
慰
(
なぐさ
)
め
居
(
を
)
れど
時々
(
ときどき
)
に
072
心
(
こころ
)
に
潜
(
ひそ
)
みし
曲鬼
(
まがおに
)
が
073
飛出
(
とびだ
)
し
来
(
きた
)
り
高姫
(
たかひめ
)
の
074
色香
(
いろか
)
を
慕
(
した
)
ひ
口走
(
くちばし
)
り
075
お
寅
(
とら
)
の
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めたる
076
其
(
その
)
醜態
(
しうたい
)
は
幾度
(
いくたび
)
か
077
数
(
かぞ
)
へ
尽
(
つく
)
せぬ
計
(
ばか
)
り
也
(
なり
)
078
お
寅
(
とら
)
は
無念
(
むねん
)
を
抑
(
おさ
)
へつつ
079
勘忍袋
(
かんにんぶくろ
)
をキツと
締
(
し
)
め
080
こばり
詰
(
つ
)
めてぞゐたりしが
081
大洪水
(
だいこうずゐ
)
の
襲来
(
しふらい
)
し
082
千
(
せん
)
里
(
り
)
の
堤防
(
ていばう
)
一時
(
いちどき
)
に
083
決潰
(
けつくわい
)
したる
計
(
ばか
)
りにて
084
悋気
(
りんき
)
の
濁水
(
だくすゐ
)
氾濫
(
はんらん
)
し
085
人目
(
ひとめ
)
もかまはず
前後
(
ぜんご
)
をも
086
忘
(
わす
)
れて
教祖
(
けうそ
)
の
胸倉
(
むなぐら
)
を
087
つかみ
締
(
し
)
めたる
恐
(
おそ
)
ろしさ
088
かかる
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎをば
089
表
(
おもて
)
に
待
(
ま
)
ちし
松彦
(
まつひこ
)
の
090
司
(
つかさ
)
の
一行
(
いつかう
)
に
隠
(
かく
)
さむと
091
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めいろいろと
092
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
体裁
(
ていさい
)
つくろへど
093
隠
(
かく
)
し
終
(
を
)
うせぬ
燗徳利
(
かんどくり
)
094
土瓶
(
どびん
)
の
居
(
ゐ
)
ずまひわれた
猪口
(
ちよこ
)
095
金切声
(
かなきりごゑ
)
は
屋外
(
をくぐわい
)
に
096
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
るぞ
是非
(
ぜひ
)
なけれ
097
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまが
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
098
来
(
きた
)
つて
御用
(
ごよう
)
を
始
(
はじ
)
めてゆ
099
これ
丈
(
だけ
)
怒
(
おこ
)
つた
大喧嘩
(
おほげんくわ
)
100
未
(
いま
)
だ
一度
(
いちど
)
もなかつたに
101
如何
(
どう
)
した
拍子
(
ひやうし
)
の
瓢箪
(
へうたん
)
か
102
思
(
おも
)
ひもよらぬ
醜状
(
しうじやう
)
を
103
珍客
(
ちんきやく
)
さまの
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
104
曝露
(
ばくろ
)
したるぞ
神罰
(
しんばつ
)
と
105
云
(
い
)
ふもなかなか
愚
(
おろか
)
なり
106
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
107
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ。
108
○
109
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
の
別館
(
べつくわん
)
に
110
潜
(
ひそ
)
みて
教
(
をしへ
)
の
実権
(
じつけん
)
を
111
掌握
(
しやうあく
)
しつつ
朝夕
(
あさゆふ
)
に
112
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
113
大御心
(
おほみこころ
)
を
奉戴
(
ほうたい
)
し
114
ウラナイ
教
(
けう
)
の
曲神
(
まがかみ
)
を
115
日日
(
ひにち
)
万
(
よろづ
)
に
言向
(
ことむ
)
けて
116
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
改良
(
かいりやう
)
し
117
蠑螈別
(
いもりわけ
)
や
魔我彦
(
まがひこ
)
の
118
身魂
(
みたま
)
を
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
し
119
三五教
(
あななひけう
)
の
真髄
(
しんずい
)
を
120
理解
(
りかい
)
せしめて
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
121
世人
(
よびと
)
の
為
(
ため
)
に
神徳
(
しんとく
)
を
122
輝
(
かがや
)
かさむと
松姫
(
まつひめ
)
は
123
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
言
(
い
)
ふままに
124
上義
(
じやうぎ
)
の
姫
(
ひめ
)
と
称
(
とな
)
へられ
125
心
(
こころ
)
ならずも
春陽
(
しゆんやう
)
の
126
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
時節
(
じせつ
)
をば
127
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
りて
松姫
(
まつひめ
)
が
128
心
(
こころ
)
の
奥
(
おく
)
ぞ
床
(
ゆか
)
しけれ
129
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
に
祀
(
まつ
)
りたる
130
ユラリの
彦
(
ひこ
)
の
又
(
また
)
の
御名
(
みな
)
131
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
132
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
神名
(
しんめい
)
は
133
いずれも
正
(
ただ
)
しきものならず
134
狐
(
きつね
)
狸
(
たぬき
)
の
神霊
(
しんれい
)
に
135
誑
(
たぶらか
)
されて
魔我彦
(
まがひこ
)
が
136
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
と
思
(
おも
)
ひつめ
137
得意
(
とくい
)
になりて
宮柱
(
みやばしら
)
138
ヘグレのヘグレのヘグレムシヤ
139
ヘグレ
神社
(
じんじや
)
を
立
(
た
)
て
並
(
なら
)
べ
140
迷
(
まよ
)
ひゐるこそうたてけれ
141
三五教
(
あななひけう
)
の
松姫
(
まつひめ
)
も
142
かやうな
事
(
こと
)
に
騙
(
だまさ
)
れて
143
信仰
(
しんかう
)
するよな
者
(
もの
)
でない
144
さは
去
(
さ
)
り
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
すぐに
145
いと
厳格
(
げんかく
)
な
審神
(
さには
)
をば
146
なすに
於
(
おい
)
ては
蠑螈別
(
いもりわけ
)
147
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
神司
(
かむづかさ
)
148
一度
(
いちど
)
に
鼎
(
かなへ
)
の
湧
(
わ
)
く
如
(
ごと
)
く
149
怒
(
いか
)
り
狂
(
くる
)
ひて
松姫
(
まつひめ
)
の
150
身辺
(
しんぺん
)
忽
(
たちま
)
ち
危
(
あやふ
)
しと
151
悟
(
さと
)
りたるより
松姫
(
まつひめ
)
は
152
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
を
装
(
よそほ
)
ひつ
153
ウラナイ
教
(
けう
)
の
実権
(
じつけん
)
を
154
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にかは
掌握
(
しやうあく
)
し
155
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
の
神殿
(
しんでん
)
は
156
殆
(
ほとん
)
ど
松姫
(
まつひめ
)
一
(
いち
)
人
(
にん
)
の
157
指命
(
しめい
)
の
下
(
もと
)
に
大部分
(
だいぶぶん
)
158
動
(
うご
)
かし
得
(
う
)
べき
身
(
み
)
となりぬ
159
モウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
松姫
(
まつひめ
)
も
160
何
(
なん
)
の
遠慮
(
ゑんりよ
)
も
要
(
い
)
るものか
161
やがてボツボツ
正体
(
しやうたい
)
を
162
現
(
あら
)
はしくれむと
思
(
おも
)
ふ
内
(
うち
)
163
昔
(
むかし
)
別
(
わか
)
れし
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
の
164
松彦
(
まつひこ
)
さまが
三五
(
あななひ
)
の
165
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
となりすまし
166
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
167
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまに
導
(
みちび
)
かれ
168
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
りし
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
169
居間
(
ゐま
)
の
窓
(
まど
)
より
覗
(
のぞ
)
きこみ
170
ハツと
胸
(
むね
)
をば
躍
(
をど
)
らせつ
171
俄
(
にはか
)
に
恋
(
こひ
)
しさ
身
(
み
)
にせまり
172
たまりかねてぞなりければ
173
神勅
(
しんちよく
)
なりと
言
(
い
)
ひくろめ
174
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまを
招
(
まね
)
きよせ
175
今
(
いま
)
来
(
き
)
た
人
(
ひと
)
はユラリ
彦
(
ひこ
)
176
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
177
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぞ
178
あの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
帰
(
い
)
なれては
179
五六七
(
みろく
)
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
180
仕組
(
しぐみ
)
はとても
立
(
た
)
たうまい
181
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら
一走
(
ひとはし
)
り
182
お
前
(
まへ
)
は
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかけて
183
末代
(
まつだい
)
さまを
是非
(
ぜひ
)
一度
(
いちど
)
184
これの
館
(
やかた
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り
185
いと
慇懃
(
いんぎん
)
に
遇
(
もてな
)
して
186
いついつ
迄
(
まで
)
も
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
187
鎮座
(
ちんざ
)
ましましウラナイの
188
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
目的
(
もくてき
)
を
189
立
(
た
)
たさにやならぬお
寅
(
とら
)
さま
190
これの
使命
(
しめい
)
を
果
(
はた
)
しなば
191
お
前
(
まへ
)
はこれから
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
192
最大一
(
さいだいいち
)
の
殊勲者
(
しゆくんじや
)
と
193
おだてあぐればお
寅
(
とら
)
さま
194
俄
(
にはか
)
に
元気
(
げんき
)
を
放
(
はふ
)
り
出
(
だ
)
して
195
十曜
(
とえう
)
の
紋
(
もん
)
の
描
(
ゑが
)
きたる
196
扇
(
あふぎ
)
片手
(
かたて
)
にひつつかみ
197
松姫館
(
まつひめやかた
)
を
飛出
(
とびだ
)
して
198
オーイオーイと
松彦
(
まつひこ
)
を
199
呼戻
(
よびもど
)
したる
其
(
その
)
手腕
(
しゆわん
)
200
なみなみならぬ
婆
(
ば
)
さま
也
(
なり
)
201
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
202
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ。
203
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
片腕
(
かたうで
)
と
204
自分
(
じぶん
)
も
許
(
ゆる
)
し
人
(
ひと
)
も
亦
(
また
)
205
許
(
ゆる
)
す
魔我彦
(
まがひこ
)
副教主
(
ふくけうしゆ
)
206
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
託宣
(
たくせん
)
を
207
一
(
いち
)
から
十
(
じふ
)
迄
(
まで
)
鵜呑
(
うの
)
みして
208
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
区別
(
くべつ
)
なく
209
只
(
ただ
)
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い
210
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
は
此
(
この
)
外
(
ほか
)
に
211
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
にやあるまいと
212
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
歓喜
(
くわんき
)
して
213
真理
(
しんり
)
を
紊
(
みだ
)
す
教
(
をしへ
)
とは
214
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
らず
朝夕
(
あさゆふ
)
に
215
骨身
(
ほねみ
)
を
惜
(
をし
)
まず
神前
(
しんぜん
)
に
216
いとまめやかに
仕
(
つか
)
へつつ
217
迷
(
まよ
)
い
切
(
き
)
つたる
魔我彦
(
まがひこ
)
は
218
蠑螈別
(
いもりわけ
)
のなす
事
(
こと
)
は
219
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
に
係
(
かか
)
はらず
220
何
(
いづ
)
れも
神
(
かみ
)
の
正業
(
せいげふ
)
と
221
迷信
(
めいしん
)
せるこそ
愚
(
おろか
)
なれ
222
かくも
教
(
をしへ
)
に
迷信
(
めいしん
)
な
223
朴直
(
ぼくちよく
)
一途
(
いちづ
)
な
魔我彦
(
まがひこ
)
も
224
若
(
わか
)
き
男
(
をとこ
)
の
選
(
せん
)
にもれず
225
恋
(
こひ
)
に
心
(
こころ
)
を
乱
(
みだ
)
しつつ
226
吾
(
わ
)
れにかしづく
女房
(
にようばう
)
は
227
甲
(
かふ
)
に
致
(
いた
)
そか
乙
(
おつ
)
にせうか
228
又々
(
またまた
)
丙
(
へい
)
か
丁戍
(
ていぼう
)
か
229
なぞと
集
(
あつ
)
まる
信者
(
しんじや
)
をば
230
女
(
をんな
)
と
見
(
み
)
れば
探索
(
たんさく
)
し
231
物色
(
ぶつしよく
)
しつつ
目
(
め
)
が
細
(
ほそ
)
い
232
色
(
いろ
)
は
白
(
しろ
)
いが
鼻
(
はな
)
低
(
ひく
)
い
233
鼻
(
はな
)
は
高
(
たか
)
いが
目
(
め
)
が
細
(
ほそ
)
い
234
背丈
(
せたけ
)
が
高
(
たか
)
い
低
(
ひく
)
いなど
235
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
首
(
くび
)
かたげ
236
妻
(
つま
)
の
選挙
(
せんきよ
)
に
余念
(
よねん
)
なく
237
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
ましゐたる
折
(
をり
)
238
少
(
すこ
)
しく
年
(
とし
)
はよつたれど
239
花
(
はな
)
を
欺
(
あざむ
)
く
松姫
(
まつひめ
)
が
240
これの
館
(
やかた
)
に
来
(
きた
)
りしゆ
241
二世
(
にせ
)
の
女房
(
にようばう
)
は
松姫
(
まつひめ
)
と
242
自分
(
じぶん
)
免許
(
めんきよ
)
の
妻
(
つま
)
さだめ
243
神
(
かみ
)
の
奉仕
(
ほうし
)
の
其
(
その
)
間
(
あひ
)
は
244
万事
(
ばんじ
)
万端
(
ばんたん
)
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて
245
松姫
(
まつひめ
)
さまの
歓心
(
くわんしん
)
を
246
買
(
か
)
ふ
事
(
こと
)
計
(
ばか
)
りに
身
(
み
)
を
俏
(
やつ
)
し
247
吉日
(
きちにち
)
良辰
(
りやうしん
)
到来
(
たうらい
)
し
248
連理
(
れんり
)
の
袖
(
そで
)
を
翻
(
ひるがへ
)
し
249
合衾式
(
がふきんしき
)
をあげむぞと
250
楽
(
たの
)
しみゐたるも
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
251
思
(
おも
)
ひもよらぬ
松彦
(
まつひこ
)
が
252
此
(
この
)
神館
(
しんくわん
)
に
現
(
あら
)
はれて
253
ウラナイ
教
(
けう
)
の
信徒
(
まめひと
)
が
254
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
主神
(
しゆしん
)
と
頼
(
たの
)
みたる
255
神徳
(
しんとく
)
高
(
たか
)
きユラリ
彦
(
ひこ
)
256
又
(
また
)
の
御
(
おん
)
名
(
な
)
を
尋
(
たづ
)
ぬれば
257
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
258
珍
(
うづ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
と
現
(
あら
)
はれて
259
突然
(
とつぜん
)
ここに
天降
(
あまくだ
)
り
260
上義
(
じやうぎ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
松姫
(
まつひめ
)
が
261
霊
(
みたま
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
と
聞
(
き
)
きしより
262
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でならぬ
魔我彦
(
まがひこ
)
は
263
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせゐたりける
264
かかる
所
(
ところ
)
へ
松姫
(
まつひめ
)
の
265
侍女
(
じぢよ
)
のお
千代
(
ちよ
)
が
現
(
あら
)
はれて
266
魔我彦
(
まがひこ
)
さまへ
上義姫
(
じやうぎひめ
)
267
あが
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
が
御用
(
ごよう
)
ぞと
268
聞
(
き
)
いたを
機
(
しほ
)
に
座
(
ざ
)
を
立
(
た
)
つて
269
鼻
(
はな
)
うごめかし
肘
(
ひぢ
)
を
張
(
は
)
り
270
吉報
(
きつぽう
)
聞
(
き
)
かむと
行
(
い
)
てみれば
271
豈計
(
あにはか
)
らむや
松姫
(
まつひめ
)
は
272
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つた
其
(
その
)
様子
(
やうす
)
273
犯
(
をか
)
し
難
(
がた
)
くぞ
見
(
み
)
えにける
274
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
と
自称
(
じしよう
)
する
275
魔我彦
(
まがひこ
)
、
姫
(
ひめ
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
276
思
(
おも
)
ひの
丈
(
たけ
)
をクドクドと
277
述
(
の
)
べむとすれば
松姫
(
まつひめ
)
は
278
挺
(
てこ
)
でも
動
(
うご
)
かぬ
勢
(
いきほひ
)
で
279
魔我彦
(
まがひこ
)
さまへ
今日
(
けふ
)
からは
280
お
前
(
まへ
)
に
頼
(
たの
)
む
事
(
こと
)
がある
281
松彦
(
まつひこ
)
さまは
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
よ
282
モウ
之
(
これ
)
からは
厭
(
いや
)
らしい
283
目付
(
めつき
)
をしたりバカな
事
(
こと
)
284
言
(
い
)
はない
様
(
やう
)
にしておくれ
285
二世
(
にせ
)
の
夫
(
をつと
)
のある
私
(
わたし
)
286
大
(
おほい
)
に
迷惑
(
めいわく
)
致
(
いた
)
します
287
松彦
(
まつひこ
)
さまはユラリ
彦
(
ひこ
)
288
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
289
私
(
わたし
)
は
妻
(
つま
)
の
上義姫
(
じやうぎひめ
)
290
遠
(
とほ
)
き
神世
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
から
291
切
(
き
)
るに
切
(
き
)
られぬ
因縁
(
いんねん
)
で
292
ヘグレのヘグレのヘグレ
武者
(
むしや
)
293
世界
(
せかい
)
隅
(
くま
)
なく
逍
(
さま
)
よひて
294
おちて
居
(
を
)
つたが
優曇華
(
うどんげ
)
の
295
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
春
(
はる
)
に
相生
(
あひおひ
)
の
296
松
(
まつ
)
と
松
(
まつ
)
との
深緑
(
ふかみどり
)
297
千代
(
ちよ
)
の
契
(
ちぎり
)
を
結
(
むす
)
び
昆布
(
こぶ
)
298
お
前
(
まへ
)
と
私
(
わし
)
との
其
(
その
)
仲
(
なか
)
は
299
至清
(
しせい
)
至潔
(
しけつ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
だ
300
汚
(
けが
)
しもなさず
汚
(
けが
)
されも
301
せない
二人
(
ふたり
)
の
神司
(
かむつかさ
)
302
万
(
よろづ
)
の
物
(
もの
)
の
霊長
(
れいちやう
)
と
303
生
(
うま
)
れた
人
(
ひと
)
は
何
(
なに
)
よりも
304
断
(
だん
)
の
一字
(
いちじ
)
が
大切
(
たいせつ
)
よ
305
恋
(
こひ
)
の
執着
(
しふちやく
)
サツパリと
306
放
(
ほ
)
かしてお
呉
(
く
)
れと
手厳
(
てきび
)
しく
307
不意
(
ふい
)
に
打出
(
うちだ
)
す
肱鉄砲
(
ひぢてつぱう
)
308
呆
(
あき
)
れて
言葉
(
ことば
)
もないじやくり
309
言葉
(
ことば
)
を
尽
(
つく
)
し
最善
(
さいぜん
)
を
310
尽
(
つく
)
せど
松姫
(
まつひめ
)
承知
(
しようち
)
せず
311
お
千代
(
ちよ
)
に
迄
(
まで
)
も
馬鹿
(
ばか
)
にされ
312
無念
(
むねん
)
の
涙
(
なみだ
)
ハラハラと
313
松彦司
(
まつひこつかさ
)
を
恨
(
うら
)
みつつ
314
シオシオ
立
(
た
)
つて
元
(
もと
)
の
座
(
ざ
)
へ
315
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
まで
青
(
あを
)
くして
316
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
れば
万公
(
まんこう
)
や
317
五三公
(
いそこう
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
連中
(
れんちう
)
が
318
力限
(
ちからかぎ
)
りに
嘲笑
(
てうせう
)
する
319
魔我彦
(
まがひこ
)
さまは
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て
320
歯
(
は
)
ぎしりすれど
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
321
怒
(
おこ
)
りもならず
泣
(
な
)
けもせず
322
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
の
胸
(
むね
)
おさへ
323
俯
(
うつ
)
むきゐるぞ
憐
(
あは
)
れなる
324
少女
(
せうぢよ
)
の
千代
(
ちよ
)
に
導
(
みちび
)
かれ
325
松彦
(
まつひこ
)
さまは
別館
(
べつやかた
)
326
進
(
すす
)
みて
見
(
み
)
れば
此
(
こ
)
はいかに
327
日頃
(
ひごろ
)
慕
(
した
)
ひし
松姫
(
まつひめ
)
が
328
盛装
(
せいさう
)
凝
(
こ
)
らしニコニコと
329
笑顔
(
ゑがほ
)
を
湛
(
たた
)
へて
松彦
(
まつひこ
)
が
330
手
(
て
)
をとり
奥
(
おく
)
へよび
入
(
い
)
れる
331
流石
(
さすが
)
の
松彦
(
まつひこ
)
呆然
(
ばうぜん
)
と
332
言葉
(
ことば
)
も
出
(
い
)
でず
松姫
(
まつひめ
)
が
333
面
(
おもて
)
を
眺
(
なが
)
めてゐたりしが
334
あたり
見
(
み
)
まはし
松姫
(
まつひめ
)
は
335
ソツと
其
(
その
)
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
りしめ
336
恋
(
こひ
)
しき
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
松彦
(
まつひこ
)
よ
337
夜
(
よる
)
の
嵐
(
あらし
)
に
誘
(
さそ
)
はれて
338
別
(
わか
)
れてから
早
(
はや
)
十年
(
ととせ
)
339
余
(
あま
)
りの
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
りました
340
雨
(
あめ
)
の
晨
(
あした
)
や
風
(
かぜ
)
の
宵
(
よひ
)
341
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しては
泣
(
なき
)
くらし
342
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しては
又
(
また
)
歎
(
なげ
)
く
343
月日
(
つきひ
)
の
駒
(
こま
)
の
関
(
せき
)
もなく
344
今日
(
けふ
)
が
日
(
ひ
)
迄
(
まで
)
も
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
の
345
行方
(
ゆくへ
)
を
探
(
たづ
)
ね
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
346
祈
(
いの
)
りを
上
(
あ
)
げて
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
347
早
(
はや
)
く
会
(
あ
)
はさせ
玉
(
たま
)
へやと
348
祈
(
いの
)
りし
甲斐
(
かひ
)
もありありと
349
現
(
あら
)
はれ
玉
(
たま
)
ひし
神
(
かみ
)
の
徳
(
とく
)
350
今日
(
けふ
)
の
集
(
つど
)
ひの
有難
(
ありがた
)
さ
351
何
(
なに
)
から
言
(
い
)
うてよかろやら
352
話
(
はなし
)
は
海山
(
うみやま
)
積
(
つも
)
れ
共
(
ども
)
353
其
(
その
)
糸口
(
いとぐち
)
も
乱
(
みだ
)
れ
果
(
は
)
て
354
解
(
ほど
)
きかねたる
胸
(
むね
)
の
内
(
うち
)
355
推量
(
すゐりやう
)
なされて
下
(
くだ
)
さんせ
356
マアマア
無事
(
ぶじ
)
で
御
(
お
)
達者
(
たつしや
)
で
357
私
(
わたし
)
も
嬉
(
うれ
)
しいお
目出
(
めで
)
たい
358
貴方
(
あなた
)
に
見
(
み
)
せたい
者
(
もの
)
がある
359
どうぞ
喜
(
よろこ
)
んで
下
(
くだ
)
さんせ
360
語
(
かた
)
れば
松彦
(
まつひこ
)
涙
(
なみだ
)
ぐみ
361
其
(
その
)
手
(
て
)
をしかと
握
(
にぎ
)
りしめ
362
お
前
(
まへ
)
は
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
松姫
(
まつひめ
)
か
363
ヨウまあ
無事
(
ぶじ
)
でゐてくれた
364
お
前
(
まへ
)
に
別
(
わか
)
れた
其
(
その
)
後
(
のち
)
は
365
世
(
よ
)
を
果敢
(
はか
)
なみてウロウロと
366
フサの
国
(
くに
)
をば
遠近
(
をちこち
)
と
367
巡
(
めぐ
)
り
巡
(
めぐ
)
りて
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
368
バラモン
教
(
けう
)
の
本山
(
ほんざん
)
に
369
現
(
あら
)
はれ
玉
(
たま
)
ふ
神柱
(
かむばしら
)
370
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
部下
(
ぶか
)
とます
371
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
片彦
(
かたひこ
)
が
372
司
(
つかさ
)
の
神
(
かみ
)
に
見出
(
みいだ
)
され
373
神
(
かみ
)
の
柱
(
はしら
)
や
軍人
(
いくさびと
)
374
二
(
ふた
)
つを
兼
(
か
)
ねてまめやかに
375
仕
(
つか
)
へ
乍
(
なが
)
らも
両親
(
ふたおや
)
や
376
兄
(
あに
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
汝
(
なれ
)
が
身
(
み
)
を
377
思
(
おも
)
ひ
案
(
あん
)
じて
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
378
安
(
やす
)
く
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
渡
(
わた
)
りたる
379
時
(
とき
)
も
涙
(
なみだ
)
にかきくれて
380
悲
(
かな
)
しき
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
る
折
(
をり
)
381
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
引合
(
ひきあは
)
せ
382
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
谷間
(
たにあひ
)
で
383
恋
(
こひ
)
しき
兄
(
あに
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
384
茲
(
ここ
)
に
心
(
こころ
)
を
翻
(
ひるが
)
へし
385
三五教
(
あななひけう
)
に
入信
(
にふしん
)
し
386
御伴
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へまつりつつ
387
野中
(
のなか
)
の
森
(
もり
)
で
夜
(
よ
)
をあかし
388
橋
(
はし
)
の
袂
(
たもと
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
389
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまの
母
(
おや
)
と
子
(
こ
)
に
390
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
出会
(
でつく
)
はし
391
縁
(
えにし
)
の
綱
(
つな
)
に
曳
(
ひ
)
かされて
392
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
393
日頃
(
ひごろ
)
慕
(
した
)
ひし
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
は
394
ここに
居
(
ゐ
)
たのか
嬉
(
うれ
)
しやな
395
結
(
むす
)
ぶの
神
(
かみ
)
の
結
(
むす
)
びたる
396
二人
(
ふたり
)
の
仲
(
なか
)
は
一旦
(
いつたん
)
は
397
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
別
(
わか
)
る
共
(
とも
)
398
心
(
こころ
)
に
解
(
とけ
)
ぬ
恋
(
こひ
)
の
糸
(
いと
)
399
解
(
ほど
)
き
初
(
そ
)
めたる
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
400
嬉
(
うれ
)
しさ
胸
(
むね
)
に
満
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れ
401
答
(
こた
)
ふる
言葉
(
ことば
)
もないじやくり
402
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
今更
(
いまさら
)
に
403
思
(
おも
)
ひ
浮
(
うか
)
べて
有難
(
ありがた
)
く
404
身
(
み
)
に
沁
(
し
)
みわたる
尊
(
たふと
)
さよ
405
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
る
共
(
とも
)
曇
(
くも
)
る
共
(
とも
)
406
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つ
共
(
とも
)
虧
(
か
)
くる
共
(
とも
)
407
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
む
共
(
とも
)
408
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
409
真心
(
まごころ
)
こめてひたすらに
410
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
守
(
まも
)
りたる
411
二人
(
ふたり
)
の
身
(
み
)
をば
憐
(
あは
)
れみて
412
思
(
おも
)
ひもよらぬ
此
(
この
)
山
(
やま
)
で
413
会
(
あ
)
はし
玉
(
たま
)
ひし
天地
(
あめつち
)
の
414
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
感謝
(
かんしや
)
して
415
此
(
この
)
行先
(
ゆくさき
)
は
殊更
(
ことさら
)
に
416
命
(
いのち
)
を
惜
(
をし
)
まず
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
417
心
(
こころ
)
の
限
(
かぎ
)
り
身
(
み
)
の
限
(
かぎ
)
り
418
仕
(
つか
)
へまつりて
神恩
(
しんおん
)
の
419
万分一
(
まんぶんいち
)
に
報
(
むく
)
うべし
420
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
421
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ。
422
松彦
(
まつひこ
)
『
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みに
依
(
よ
)
つて、
423
永
(
なが
)
らくの
間
(
あひだ
)
、
424
互
(
たがひ
)
に
在所
(
ありか
)
の
分
(
わか
)
らなかつた
松
(
まつ
)
と
松
(
まつ
)
との
夫婦
(
ふうふ
)
が、
425
思
(
おも
)
はぬ
此
(
この
)
山
(
やま
)
で
廻
(
めぐ
)
り
合
(
あ
)
ふとは、
426
何
(
なん
)
たる
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
であらう。
427
先
(
ま
)
づ
其方
(
そなた
)
も
無事
(
ぶじ
)
で、
428
松彦
(
まつひこ
)
も
嬉
(
うれ
)
しい、
429
就
(
つい
)
ては
私
(
わし
)
に
見
(
み
)
せたい
物
(
もの
)
があると
云
(
い
)
つたのはどんな
物
(
もの
)
だ、
430
様子
(
やうす
)
有
(
あ
)
りげなお
前
(
まへ
)
の
言葉
(
ことば
)
、
431
グツと
胸
(
むね
)
にこたえた』
432
松姫
(
まつひめ
)
『ソリヤさうで
厶
(
ござ
)
いませう。
433
貴方
(
あなた
)
にお
別
(
わか
)
れした
時
(
とき
)
に、
434
私
(
わたし
)
は
身重
(
みおも
)
になつて
居
(
を
)
つた
事
(
こと
)
を
覚
(
おぼ
)
えてゐらつしやるでせう』
435
松彦
(
まつひこ
)
『
確
(
たしか
)
に
覚
(
おぼ
)
えてゐる。
436
機嫌
(
きげん
)
よく
身二
(
みふた
)
つになつただらうなア』
437
松姫
(
まつひめ
)
『ハイ、
438
アーメニヤを
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す
途中
(
とちう
)
、
439
フサの
国
(
くに
)
のライオン
河
(
がは
)
の
畔
(
ほとり
)
で
腹
(
はら
)
が
痛
(
いた
)
くなり、
440
たうとう
妊娠
(
にんしん
)
八
(
はち
)
ケ
月
(
げつ
)
で、
441
可愛
(
かあい
)
い
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
みおとしました』
442
松彦
(
まつひこ
)
『そして
其
(
その
)
子
(
こ
)
は
何
(
ど
)
うなつたのだ。
443
早
(
はや
)
く
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れ』
444
松姫
(
まつひめ
)
『
途中
(
とちう
)
の
事
(
こと
)
とて
如何
(
どう
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
445
苦
(
くるし
)
んで
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
446
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うた
男
(
をとこ
)
がブラリブラリと
通
(
とほ
)
り
合
(
あは
)
せ、
447
親切
(
しんせつ
)
に
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へつれ
帰
(
かへ
)
り、
448
介抱
(
かいほう
)
をしてくれました。
449
それが
為
(
ため
)
に
母子
(
おやこ
)
共
(
とも
)
に
機嫌
(
きげん
)
よく
肥立
(
ひだ
)
ち、
450
娘
(
むすめ
)
は
其
(
その
)
男
(
をとこ
)
に
子
(
こ
)
がないのを
幸
(
さいは
)
ひ、
451
貰
(
もら
)
つて
貰
(
もら
)
ひ、
452
私
(
わたし
)
はフサの
国
(
くに
)
北山村
(
きたやまむら
)
のウラナイ
教
(
けう
)
へ
信仰
(
しんかう
)
を
致
(
いた
)
し、
453
遂
(
つひ
)
には
抜擢
(
ばつてき
)
されて
宣伝使
(
せんでんし
)
となり、
454
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
高城山
(
たかしろやま
)
に
教主
(
けうしゆ
)
となつて
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましたが、
455
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
三五教
(
あななひけう
)
へ
帰順
(
きじゆん
)
と
共
(
とも
)
に
私
(
わたし
)
も
三五教
(
あななひけう
)
へ
帰順
(
きじゆん
)
致
(
いた
)
し、
456
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
内命
(
ないめい
)
に
依
(
よ
)
つて、
457
小北山
(
こぎたやま
)
へいろいろと
言
(
ことば
)
を
設
(
まう
)
け、
458
うまく
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
んで、
459
神業
(
しんげふ
)
の
為
(
ため
)
に、
460
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
いて
居
(
を
)
ります。
461
そして
其
(
その
)
娘
(
むすめ
)
はここに
居
(
ゐ
)
る
此
(
この
)
お
千代
(
ちよ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
462
松彦
(
まつひこ
)
『ヤアこれが
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
か、
463
ヨウまア
大
(
おほ
)
きくなつてくれた。
464
親
(
おや
)
はなうても
子
(
こ
)
は
育
(
そだ
)
つとは
能
(
よ
)
く
云
(
い
)
つたものだな。
465
コレお
千代
(
ちよ
)
、
466
私
(
わし
)
はお
前
(
まへ
)
の
父親
(
てておや
)
ぢや、
467
養育
(
やういく
)
を
人手
(
ひとで
)
に
渡
(
わた
)
して
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
だつたなア』
468
と
涙
(
なみだ
)
ぐむ。
469
お
千代
(
ちよ
)
は
始
(
はじ
)
めて
松姫
(
まつひめ
)
の
物語
(
ものがたり
)
を
聞
(
き
)
き、
470
松姫
(
まつひめ
)
は
自分
(
じぶん
)
の
実
(
じつ
)
の
母
(
はは
)
で、
471
松彦
(
まつひこ
)
は
実
(
じつ
)
の
父
(
ちち
)
なることを
悟
(
さと
)
つた。
472
お
千代
(
ちよ
)
は
思
(
おも
)
はず
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にくれてワツと
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
泣倒
(
なきたふ
)
れた。
473
松姫
(
まつひめ
)
も
涙
(
なみだ
)
乍
(
なが
)
らにお
千代
(
ちよ
)
を
抱起
(
だきおこ
)
し、
474
頭
(
あたま
)
を
撫
(
な
)
で
背
(
せな
)
を
撫
(
な
)
でて
歯
(
は
)
をくひしめて
忍
(
しの
)
び
泣
(
な
)
きしてゐる。
475
松彦
(
まつひこ
)
『たらちねの
親
(
おや
)
はなくても
子
(
こ
)
は
育
(
そだ
)
つ
476
育
(
そだ
)
ての
親
(
おや
)
の
恵
(
めぐ
)
み
尊
(
たふと
)
き。
477
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
をば
育
(
そだ
)
て
玉
(
たま
)
ひし
両親
(
ふたおや
)
は
478
いづくの
人
(
ひと
)
か
聞
(
き
)
かまほしさよ』
479
松姫
(
まつひめ
)
『フサの
国
(
くに
)
竹野
(
たけの
)
の
村
(
むら
)
のカーチンと
480
言
(
い
)
つて
名高
(
なだか
)
き
白浪
(
しらなみ
)
男
(
をとこ
)
。
481
さり
乍
(
なが
)
らカーチンさまの
夫婦
(
ふうふ
)
づれ
482
今
(
いま
)
はあの
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
となりぬる』
483
松彦
(
まつひこ
)
『
一言
(
ひとこと
)
のいやひ
言葉
(
ことば
)
もかはされぬ
484
育
(
そだ
)
ての
親
(
おや
)
の
有難
(
ありがた
)
き
哉
(
かな
)
。
485
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
、
千代
(
ちよ
)
も
八千代
(
やちよ
)
もカーチンの
486
育
(
そだ
)
ての
恩
(
おん
)
を
忘
(
わす
)
れまいぞや』
487
千代
(
ちよ
)
『
有難
(
ありがた
)
き
育
(
そだ
)
ての
親
(
おや
)
に
悲
(
かな
)
しくも
488
別
(
わか
)
れて
誠
(
まこと
)
の
親
(
おや
)
に
会
(
あ
)
ひぬる。
489
たらちねの
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とに
巡
(
めぐ
)
り
合
(
あ
)
ひ
490
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
の
止
(
と
)
めどなくふる』
491
松姫
(
まつひめ
)
『
母
(
はは
)
よ
子
(
こ
)
よと
名乗
(
なの
)
らむものと
思
(
おも
)
ひしが
492
あたり
憚
(
はばか
)
り
包
(
つつ
)
み
居
(
ゐ
)
たりし。
493
吾
(
わが
)
母
(
はは
)
と
知
(
し
)
らずに
仕
(
つか
)
へ
侍
(
はべ
)
りたる
494
お
千代
(
ちよ
)
の
心
(
こころ
)
いとしかりけり』
495
千代
(
ちよ
)
『
吾
(
わが
)
母
(
はは
)
と
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
懐
(
なつか
)
しく
496
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
と
思
(
おも
)
ひ
仕
(
つか
)
へぬ。
497
どことなく
温
(
ぬく
)
みのゐます
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
と
498
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
伏拝
(
ふしをが
)
みける』
499
松彦
(
まつひこ
)
『
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
入
(
い
)
りしより
500
三日
(
みつか
)
ならずに
妻
(
つま
)
にあひぬる。
501
妻
(
つま
)
となり
夫
(
をつと
)
となるも
天地
(
あめつち
)
の
502
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
のこもるまにまに。
503
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
生
(
うま
)
れたる
504
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
は
千代
(
ちよ
)
に
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
くらむ』
505
千代
(
ちよ
)
『
父母
(
ちちはは
)
の
恵
(
めぐみ
)
のたまくら
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
506
何
(
なん
)
とはなしに
慕
(
した
)
ひぬる
哉
(
かな
)
。
507
カーチンの
父
(
ちち
)
の
命
(
みこと
)
を
生
(
う
)
みの
親
(
おや
)
と
508
慕
(
した
)
ひて
朝夕
(
あさゆふ
)
仕
(
つか
)
へ
来
(
き
)
にけり。
509
朝夕
(
あさゆふ
)
になでさすりつつ
吾
(
わが
)
身
(
み
)
をば
510
育
(
そだ
)
て
玉
(
たま
)
ひし
親
(
おや
)
ぞ
恋
(
こひ
)
しき』
511
松彦
(
まつひこ
)
『さもあらむ、
藁
(
わら
)
の
上
(
うへ
)
から
育
(
そだ
)
てられ
512
慈悲
(
じひ
)
の
温
(
ぬく
)
みに
生
(
お
)
ひ
立
(
た
)
ちし
身
(
み
)
は。
513
われよりも
育
(
そだ
)
ての
親
(
おや
)
を
尊
(
たふと
)
みて
514
とひ
弔
(
とむら
)
ひを
忘
(
わす
)
れざらまし』
515
松姫
(
まつひめ
)
『
恋
(
こひ
)
したふ、あが
脊
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
516
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
のとめどなき
哉
(
かな
)
』
517
かく
親子
(
おやこ
)
は
歌
(
うた
)
を
以
(
もつ
)
て
心
(
こころ
)
の
丈
(
たけ
)
を
述
(
の
)
べてゐる。
518
館
(
やかた
)
の
外面
(
そとも
)
より
俄
(
にはか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
瓦
(
かはら
)
をぶちやけた
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
、
519
(魔我彦)
『グワハツヽヽヽ、
520
イツヒヽヽヽ』
521
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
き、
522
あたりをキヨロキヨロと
見廻
(
みまは
)
した。
523
怪
(
あや
)
しき
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
はそれつきりにて
屋上
(
をくじやう
)
を
吹
(
ふ
)
き
亘
(
わた
)
る
凩
(
こがらし
)
の
音
(
おと
)
ゾウゾウと
聞
(
きこ
)
えてゐる。
524
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
の
主
(
ぬし
)
は
魔我彦
(
まがひこ
)
であつた
事
(
こと
)
は
前後
(
ぜんご
)
の
事情
(
じじやう
)
より
伺
(
うかが
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
る。
525
(
大正一一・一二・一二
旧一〇・二四
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 唖忿
(B)
(N)
小蝶 >>>
霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
>
第45巻(申の巻)
> 第2篇 恵の松露 > 第7章 相生の松
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【第7章 相生の松|第45巻|舎身活躍|霊界物語|/rm4507】
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