霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第六章 唖忿(あふん)〔一一九六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第2篇 恵の松露 よみ(新仮名遣い):めぐみのしょうろ
章:第6章 唖忿 よみ(新仮名遣い):あふん 通し章番号:1196
口述日:1922(大正11)年12月11日(旧10月23日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
魔我彦が松姫に呼ばれて行ったあと、お寅も文助に呼ばれて広前に行ってしまった。後に残った文助は松彦たちと話をするうち、蠑螈別が探している本当の義理天上の身魂・高姫が、今は三五教の斎苑館に仕えていることを知った。
そこへお寅が戻ってきて、松彦に上義姫の身魂・松姫にどうしても会うようにと促した。そこへ折よくお千代がやってきて、松彦を松姫館に連れて行った。
お寅は蠑螈別が高姫の話を立ち聞きしていたことを知って、また蠑螈別に手荒いことをする。一同はお寅に追い払われてしまう。後には蠑螈別とお寅は何事かぶつぶつ話をしているのみであった。
そこへ松姫に振られてしょんぼりとした魔我彦が帰ってきて一同にからかわれる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-10-28 10:02:58 文字数:4570 OBC :rm4506
愛善世界社版:95頁 八幡書店版:第8輯 286頁 修補版: 校定版:99頁 普及版:39頁 初版: ページ備考:
001 魔我彦(まがひこ)の義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出(で)の神(かみ)の生宮(いきみや)がお千代(ちよ)に導(みちび)かれ上義姫(じやうぎひめ)の館(やかた)へ往(い)つた後(あと)には、002松彦(まつひこ)一行(いつかう)と、003お寅(とら)婆(ば)アさま、004お菊(きく)の八(はち)人(にん)が茶(ちや)を汲(く)み果物(くだもの)なぞを頬張(ほほば)つて道(みち)の話(はなし)に耽(ふけ)つて居(ゐ)る。005其所(そこ)へ受付(うけつけ)の文助(ぶんすけ)爺(ぢい)さまが、006ノソリノソリとやつて来(き)て、
007文助(ぶんすけ)『もしお寅(とら)さま、008お広前(ひろまへ)の方(はう)から貴女(あなた)に来(き)て頂(いただ)き度(た)いと、009大変(たいへん)矢釜(やかま)しう云(い)つて来(き)ました。010お客(きやく)さまの央(なかば)で済(す)まないが一寸(ちよつと)往(い)つて来(き)て下(くだ)さいな。011私(わたし)がそれ迄(まで)お相手(あひて)して居(ゐ)ますから』
012お寅(とら)『又(また)狂人(きちがひ)の信者(しんじや)が、013暴(あば)れ出(だ)したのだらう、014あゝ仕方(しかた)がない、015一(ひと)つ鎮(しづ)めて来(き)てやりませう。016末代(まつだい)様(さま)一寸(ちよつと)失礼(しつれい)します。017落滝(おちたき)つ彦(ひこ)がその代(かは)り話(はなし)のお相手(あひて)になりますから』
018松彦(まつひこ)『御(ご)苦労(くらう)です、019どうぞゆつくり往(い)つて来(き)て下(くだ)さい、020ここで私(わたし)はゆつくりと休(やす)まして頂(いただ)いて居(を)りますから』
021万公(まんこう)『おい五三公(いそこう)、022蠑螈別(いもりわけ)さまは、023俺(おれ)の察(さつ)する所(ところ)、024酒(さけ)に喰(くら)ひ酔(よ)つて奥(おく)の間(ま)で寝(ね)て居(ゐ)るのだよ。025それに違(ちが)ひないわ。026そして彼(あ)のお寅(とら)婆(ば)アさまと痴話(ちわ)喧嘩(げんくわ)をやつたのだ。027キツトそれに極(き)まつて居(ゐ)るよ』
028五三(いそ)『何(なん)でも高姫(たかひめ)々々(たかひめ)と云(い)つて居(を)られたぢやないか。029三五教(あななひけう)の高姫(たかひめ)さまと何(なに)か関係(くわんけい)があるのだらうかなア』
030万公(まんこう)『何(なん)とも知(し)れないなア、031併(しか)し高姫(たかひめ)さまは昔(むかし)の馴染(なじみ)だと云(い)つて東野別(あづまのわけの)命(みこと)に一生(いつしやう)懸命(けんめい)になり、032眼(め)迄(まで)釣(つ)つて自転倒(おのころ)島(じま)から遥々(はるばる)斎苑(いそ)の館(やかた)迄(まで)お越(こ)しになつて居(ゐ)るぢやないか。033此処(ここ)の蠑螈別(いもりわけ)さまの云(い)ふ高姫(たかひめ)は同名(どうめい)異人(いじん)だらうよ』
034五三(いそ)『さうだらうかな。035同(おな)じ名(な)も世界(せかい)には沢山(たくさん)あるから、036さうかもしれないなア。037併(しか)し高(たか)と云(い)ふ名(な)のつく女(をんな)には随分(ずゐぶん)惚手(ほれて)が多(おほ)いと見(み)えるねえ』
038文助(ぶんすけ)『皆(みな)さま、039今(いま)高姫(たかひめ)さまが斎苑(いそ)の館(やかた)に居(ゐ)らつしやると云(い)はれましたなア、040それは本当(ほんたう)ですかい』
041万公(まんこう)『ハイ本当(ほんたう)ですよ、042何(なん)でもウラナイ教(けう)とかを開(ひら)いて居(ゐ)た方(かた)だと仄(ほのか)に聞(き)きました。043随分(ずゐぶん)口喧(くちやかま)しい宣伝使(せんでんし)ですよ』
044文助(ぶんすけ)『ハテナ、045そんなら大方(おほかた)蠑螈別(いもりわけ)の教祖(けうそ)様(さま)が探(たづ)ねて厶(ござ)る高姫(たかひめ)さまかも知(し)れない』
046五三(いそ)『高姫(たかひめ)さまと云(い)ふのは黒姫(くろひめ)と云(い)ふ弟子(でし)があつたやうですよ。047そして黒姫(くろひめ)には高山彦(たかやまひこ)といふ頭(あたま)の長(なが)いハズバンドがあつたと云(い)ふ事(こと)です』
048文助(ぶんすけ)『それ聞(き)く上(うへ)は蠑螈別(いもりわけ)様(さま)の探(たづ)ねて厶(ござ)る高姫(たかひめ)さまに違(ちが)ひない、049今(いま)斎苑(いそ)の館(やかた)に居(を)られますかなア』
050五三(いそ)『ハイ居(を)られます。051高姫(たかひめ)さまも此処(ここ)の教主(けうしゆ)と何(なに)か深(ふか)い霊(みたま)の因縁(いんねん)があつたのですかなア』
052文助(ぶんすけ)『あつたともあつたとも霊(みたま)の御(ご)夫婦(ふうふ)だから、053どしても高姫(たかひめ)様(さま)が厶(ござ)らねば蠑螈別(いもりわけ)様(さま)の行状(ぎやうじやう)が直(なほ)らないのだ。054蠑螈別(いもりわけ)さまを改心(かいしん)さすのは高姫(たかひめ)さまのお役(やく)だ、055義理(ぎり)天上(てんじやう)様(さま)の生宮(いきみや)だ』
056五三(いそ)『ヘー、057魔我彦(まがひこ)さまが義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出神(でのかみ)と違(ちが)ひますかな。058さう二人(ふたり)もあつてはどちらが真(しん)か偽(ぎ)か分(わか)らぬぢやありませぬか』
059文助(ぶんすけ)『実(じつ)の処(ところ)は高姫(たかひめ)様(さま)の所在(ありか)が分(わか)り、060此処(ここ)へお迎(むか)へする迄(まで)、061一(いち)日(にち)も無(な)くてはならぬ義理(ぎり)天上(てんじやう)さまだから魔我彦(まがひこ)さまがそれ迄(まで)代理(だいり)を勤(つと)めて厶(ござ)るのだ。062魔我彦(まがひこ)さまの本当(ほんたう)のお霊(みたま)は道成(だうじやう)行成(ゆきなり)さまぢやぞえ』
063万公(まんこう)『何(なん)と自由(じいう)のきく神(かみ)様(さま)ぢやなア』
064 蠑螈別(いもりわけ)は次(つぎ)の間(ま)に酒(さけ)に酔(よ)ひ潰(つぶ)れ、065お寅(とら)に擲(なぐ)られた頭(あたま)の痛(いた)さをこらへ乍(なが)ら、066高姫(たかひめ)の話(はなし)を耳(みみ)に入(い)れるや否(いな)や、067俄(にはか)に酔(よひ)もさめ、068襖(ふすま)に耳(みみ)をあて、069一言(いちごん)も漏(も)らさじと聞(き)いて居(ゐ)た。070そこへお寅(とら)婆(ば)アさまがスタスタと帰(かへ)つて来(き)て、
071お寅(とら)『皆(みな)さま、072えらう待(ま)たせましたなア』
073文助(ぶんすけ)『これお寅(とら)さま、074お前(まへ)さま怒(おこ)つてはいけませぬよ。075此(この)方々(かたがた)の仰有(おつしや)るには、076あの蠑螈別(いもりわけ)さまの酒(さけ)の上(うへ)で仰有(おつしや)る高姫(たかひめ)さまが、077斎苑(いそ)の館(やかた)に来(き)て居(を)られるさうです』
078と小声(こごゑ)で囁(ささや)いた。079お寅(とら)は怪訝(けげん)な顔(かほ)をして、
080お寅(とら)『アヽ左様(さやう)か』
081と云(い)ひながら、
082お寅(とら)『末代(まつだい)様(さま)誠(まこと)にお待(ま)たせ致(いた)しました、083どうぞ、084上義姫(じやうぎひめ)様(さま)に一度(いちど)会(あ)つて下(くだ)さい。085さうすると貴方(あなた)の霊(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)がすつかり分(わか)りますから』
086松彦(まつひこ)『上義姫(じやうぎひめ)とか、087松姫(まつひめ)とかチヨイチヨイ聞(き)きますが、088どんな方(かた)ですか』
089お寅(とら)『エヽ素々(しらじら)しい、090さう照(てら)すものぢやありませぬ。091これお菊(きく)や、092末代(まつだい)様(さま)を上義姫(じやうぎひめ)のお館(やかた)迄(まで)御(ご)案内(あんない)申(まを)しなさい』
093お菊(きく)『ハイ、094さア末代(まつだい)様(さま)、095私(わたし)が御(ご)案内(あんない)致(いた)しませう』
096松彦(まつひこ)『何(なに)はともあれ、097それではお目(め)にかかりませう』
098と座(ざ)を立(た)ち往(ゆ)かうとする所(ところ)へお千代(ちよ)は走(はし)り来(きた)り、
099千代(ちよ)『もし末代(まつだい)様(さま)とやら上義姫(じやうぎひめ)様(さま)が大変(たいへん)お待(ま)ち兼(か)ねです。100何卒(どうぞ)お一人(ひとり)さま入(い)らして下(くだ)さいませ、101折入(をりい)つてお話(はな)し申(まをし)たいとの事(こと)で厶(ござ)います』
102松彦(まつひこ)『然(しか)らば伺(うかが)つて見(み)ませう。103お寅(とら)さま、104其(その)外(ほか)の御(ご)一同(いちどう)、105一寸(ちよつと)失礼(しつれい)致(いた)します』
106お寅(とら)『何卒(どうぞ)シツポリと水(みづ)も漏(も)らさぬ情約(じやうやく)締結(ていけつ)を遊(あそ)ばしませ』
107と嫌(いや)らしく笑(わら)ふ。108松彦(まつひこ)は合点(がてん)往(ゆ)かぬと思(おも)ひながらお千代(ちよ)に導(みちび)かれ、109此(この)場(ば)を去(さ)つた。
110 お寅(とら)は蠑螈別(いもりわけ)の身(み)を気遣(きづか)ひ、111そつと襖(ふすま)を引(ひ)き明(あ)けた。112見(み)れば蠑螈別(いもりわけ)は襖(ふすま)の際(きは)に鉢巻(はちまき)しながら立(た)つて居(ゐ)る。
113蠑螈(いもり)『ヤアお寅(とら)か、114吃驚(びつくり)した』
115お寅(とら)『それや吃驚(びつくり)なさつたでせう。116高姫(たかひめ)様(さま)の所在(ありか)を立(た)ち聞(ぎ)きして厶(ござ)つた処(ところ)へ、117お気(き)に召(め)さぬお寅婆(とらばば)が突然(とつぜん)襖(ふすま)をあけたものですから、118御尤(ごもつと)もです』
119と云(い)ひながら、120二(に)の腕(うで)を力(ちから)一(いつ)ぱい抓(つめ)つた。121蠑螈別(いもりわけ)は、
122蠑螈(いもり)『エヽ馬鹿(ばか)にすない、123いつとても打擲(ちやうちやく)ばかりしよつて、124貴様(きさま)のお蔭(かげ)で生創(なまきづ)の絶(た)えた間(ま)なしだ』
125お寅(とら)『これ蠑螈別(いもりわけ)さま、126憎(にく)くつて一(ひと)つも抓(つめ)られませうか』
127と云(い)うて又(また)抓(つ)める。
128蠑螈(いもり)『エヽ痛(いた)い、129お客(きやく)さまがあるぢやないか、130見(み)つともない』
131と呟(つぶや)く。132お寅(とら)は狂気(きやうき)のやうになつて、
133お寅(とら)『エヽ見(み)つともないとは能(よ)くも云(い)へたものだ。134あまり馬鹿(ばか)にしなさるな。135この寅(とら)だつて馬鹿(ばか)ぢやありませぬよ。136些(ちつと)は性根(しやうね)もありますからな』
137蠑螈(いもり)『俺(お)れやもう今日(けふ)限(かぎ)りに此処(ここ)を出(で)て往(ゆ)く、138後(あと)は何分(なにぶん)頼(たの)む』
139お寅(とら)『エヽ何(なん)と仰有(おつしや)る、140いやな私(わたし)を振(ふ)り捨(す)てて夜鷹(よたか)のやうな高姫(たかひめ)の処(ところ)へ往(ゆ)くのでせう、141そんなら往(ゆ)きなさい。142お別(わか)れに此(こ)の通(とほ)り』
143と云(い)ひ乍(なが)ら、144力(ちから)一(いつ)ぱい剛力(がうりき)に任(まか)せて鼻(はな)をねぢあげた。145蠑螈別(いもりわけ)はフラフラと目(め)が眩(くら)み、146ドスンと其(その)場(ば)に打(う)ち倒(たふ)れた。
147 此(この)物音(ものおと)に驚(おどろ)いて、148万公(まんこう)、149五三公(いそこう)、150アク、151テク、152タクの五(ご)人(にん)はバラバラと一室(ひとま)に駆込(かけこ)み、
153五三(いそ)『これこれお婆(ばあ)さま、154神(かみ)様(さま)の道(みち)で居(ゐ)ながら何(なん)と云(い)ふ手荒(てあら)い事(こと)をするのだ』
155お寅(とら)『ほんの些細(ささい)の内証事(ないしようごと)、156さう皆(みな)さまに来(き)て貰(もら)ふやうな事(こと)ではありませぬ。157どうぞ彼方(あちら)で、158ゆつくりとお茶(ちや)を上(あが)つて下(くだ)さいませ』
159お菊(きく)『お母(かあ)さま、160蠑螈別(いもりわけ)さまは目(め)を眩(まわ)して居(ゐ)られるぢやありませぬか』
161アク『何(なん)と手荒(てあら)い婆(ばあ)さまぢやなア』
162タク『本当(ほんたう)に』
163テク『ひどいなア、164こんな事(こと)思(おも)ふと女(をんな)はもう恐(おそ)ろしくなつたわ』
165五三(いそ)『オイ万公(まんこう)、166随分(ずゐぶん)お前(まへ)の義理(ぎり)の親(おや)は侠客(けふかく)だけあつて強(つよ)いものぢやなア』
167お寅(とら)『ホヽヽヽヽ、168猪喰(ししく)つた犬(いぬ)は、169どこかに違(ちが)ふ所(ところ)がありませうがな。170サア彼方(あちら)へ往(ゆ)きなさい。171蠑螈別(いもりわけ)さまはチヨコチヨコかう云(い)ふ病気(びやうき)があるのだ。172これから私(わたし)が活(くわつ)を入(い)れて呼(よ)び活(いけ)て上(あ)げますから、173あまり大勢(おほぜい)ドヤドヤとして居(ゐ)ると霊(みたま)が中有(ちうう)に迷(まよ)うて元(もと)の鞘(さや)に納(をさ)まらぬと迷惑(めいわく)だから』
174万公(まんこう)『此(こ)の場(ば)はお寅(とら)さまに任(まか)して、175俺(おれ)達(たち)は次(つぎ)の間(ま)でお茶(ちや)でも頂(いただ)かうかい』
176一同(いちどう)『ウンそんならさうしようかなア』
177と次(つぎ)の間(ま)に立(た)つて往(ゆ)く。
178お寅(とら)『オイお菊(きく)、179お前(まへ)も小供(こども)だてらこんな所(ところ)にジツとしてゐるものぢやない、180蠑螈別(いもりわけ)さまは私(わたし)が介抱(かいほう)してあげるから』
181お菊(きく)『あまり手荒(てあら)い事(こと)はしないやうにして下(くだ)さいな』
182お寅(とら)『何(ど)うしようと、183斯(か)うしようと此方(こちら)の勝手(かつて)だ。184小供(こども)だてら差出口(さしでぐち)をするものぢやない。185サア彼方(あちら)に往(ゆ)きなさい』
186お菊(きく)『それでも心配(しんぱい)でならないわ』
187お寅(とら)『エヽ執(しつ)こい』
188と突(つ)き出(だ)す、189お菊(きく)は涙(なみだ)ぐみながら表(おもて)を指(さ)して出(いで)て往(ゆ)く。190蠑螈別(いもりわけ)は漸(やうや)く息(いき)を吹(ふ)き返(かへ)し、191何(なに)かハツキリは聞(きこ)えないが、192お寅(とら)と二人(ふたり)でブツブツと話(はな)しをやつて居(ゐ)る。
193タク『アク、194何(なん)とまア、195ウラナイ教(けう)は手荒(てあら)い事(こと)をする女(をんな)が居(ゐ)るものぢやなア。196バラモン教(けう)だつてあんな酷(ひど)い事(こと)は、197まだしたのを見(み)た事(こと)はないがなア。198最前(さいぜん)もウラナイ教(けう)は天下(てんか)泰平(たいへい)上下(じやうげ)一致(いつち)和合(わがふ)の教(をしへ)だ。199三五教(あななひけう)、200ウラル教(けう)、201バラモン教(けう)のやうに喧嘩(けんくわ)計(ばか)りして居(ゐ)る教(をしへ)を信(しん)ぜず、202ウラナイ教(けう)に入(はい)れと偉(えら)さうに云(い)ひよつたが、203薩張(さつぱり)、204口(くち)と行(おこな)ひとは裏表(うらおもて)だ』
205テク『それだから世(よ)の中(なか)に誠(まこと)の者(もの)は目薬(めぐすり)程(ほど)も無(な)いと神(かみ)様(さま)が仰有(おつしや)るのだよ』
206タク『本当(ほんたう)だねえ』
207万公(まんこう)『上(うは)べから見(み)れば尊(たふと)き神司(かむつかさ)
208其(その)内幕(うちまく)には大蛇(をろち)住(す)むなり』
209五三(いそ)『本当(ほんたう)に愛想(あいさう)が尽(つ)きたウラナイの
210神(かみ)の道(みち)にもやはり裏(うら)あり』
211アク『あきれたよお寅(とら)婆(ば)さまの勢(いきほ)ひに
212蠑螈別(いもりわけ)を捻伏(ねぢふ)せた所(とこ)』
213タク『それやさうぢや女白浪(をんなしらなみ)ばくちうち
214夜叉(やしや)のやうなるお寅(とら)婆(ば)さまだ』
215テク『テクテクと強(きつ)い山道(やまみち)登(のぼ)り来(き)て
216思(おも)ひもよらぬ喧嘩(けんくわ)見(み)るかな。
217あの婆(ばば)は唯者(ただもの)ならじと思(おも)うたら
218白浪(しらなみ)女(をんな)のなれの果(は)てなる。
219あの人(ひと)がウラナイ教(けう)の教祖(けうそ)かと
220思(おも)へばたまげて物(もの)が言(い)はれぬ。
221小北山(こぎたやま)醜(しこ)の嵐(あらし)が吹(ふ)き荒(すさ)び
222丑寅(うしとら)婆(ば)さまが荒(すさ)び狂(くる)へる。
223ユラリ彦(ひこ)ユラリの姫(ひめ)[※御校正本・愛世版では「ユラリの姫」だが、校定版・八幡版では「上義の姫」になっている。小北山に「ユラリ姫」という祭神はここ以外には登場しないので、「上義姫」の間違いだと校定版の編者が判断したのであろう]を祭(まつ)つたる
224小北(こぎた)の山(やま)は恋(こひ)の埃捨(ごみす)て。
225埃溜(ごみため)に千歳(ちとせ)の鶴(つる)の下(お)りたよな
226松彦(まつひこ)さまのお出(で)ましあはれ。
227お寅婆(とらばば)何(なん)ぢやかんぢやと口先(くちさき)で
228喧嘩(けんくわ)見(み)せよと連(つ)れて来(き)たのか』
229五三(いそ)『やきもちをやいて俺(おれ)等(ら)に振(ふ)れ舞(ま)ふと
230一生(いつしやう)懸命(けんめい)にやつて居(ゐ)るのだ。
231犬(いぬ)さへも喰(く)はない様(やう)な喧嘩(けんくわ)して
232見(み)せつけるとはこいつアたまらぬ。
233悋気(りんき)して死(し)ぬの走(はし)るの暇(ひま)くれと
234吐(ぬか)す嬶(かか)よりひどい婆(ばば)うき』
235アク『アク迄(まで)も恋(こひ)の意地(いぢ)をば立(た)て通(とほ)し
236小北(こぎた)の山(やま)がこはれる迄(まで)往(ゆ)く。
237あのやうなアク性女(しやうをんな)に魅(みい)られて
238蠑螈別(いもりわけ)も嘸(さぞ)困(こま)るだらう』
239テク『それやさうぢや丑寅(うしとら)婆(ば)さまと云(い)ふぢやないか
240悋気(りんき)の角(つの)をふるは当然(たうぜん)。
241こいつア又(また)怪体(けたい)な所(とこ)へ来(き)たものぢや
242往(い)ぬに往(い)なれず居(を)るに居(ゐ)られず。
243松彦(まつひこ)の司(つかさ)は何(なに)して厶(ござ)るだろ
244心許(こころもと)なし小北(こぎた)山風(やまかぜ)』
245 斯(か)かる所(ところ)へ蒼青(まつさを)な顔(かほ)してブラリブラリと入(はい)つて来(き)たのは魔我彦(まがひこ)であつた。
246万公(まんこう)『よう魔我彦(まがひこ)さま、247些(ち)つと顔色(かほいろ)が悪(わる)いぢやありませぬか、248何(なに)か又(また)ナイスに油(あぶら)を取(と)られたのでせう』
249魔我(まが)『チヨツ、250イヤ何(なん)でもありませぬ、251恐(おそ)ろしいものでありますわい。252本当(ほんたう)にチヨツ、253ふげたの悪(わる)い[※「ふげた」とは若狭地方の方言で「胸糞」の意味。〔『若狭和田郷土誌』298頁、391頁〕]、254もう嫌(いや)になつて仕舞(しま)つた。255エヽもどかしい、256焦(ぢれ)つたい、257胸糞(むねくそ)の悪(わる)い、258チヨツしんごくど奴(め)、259エヽあかんあかん、260チヨツ因縁(いんねん)づくだ。261ウンザリして仕舞(しま)つた。262チヨツ、263エヽ儘(まま)よ、264おれもチヨツもう自暴自棄(やけ)だ。265カヽヽヽヽ構(かま)うものかい、266チヨツ、267キヽ気(き)に喰(く)はぬ、268チヨツ、269クヽヽヽヽ糞(くそ)の餓鬼(がき)奴(め)、270チヨツ、271ケヽヽヽヽ怪(け)つ体(たい)の悪(わる)いわ、272コヽヽヽヽころりとやられて来(き)た。273チヨツ、274さらしやがつたな、275しんごくど奴(め)、276チヨツ、277好(す)かんたらしい、278セヽヽ雪隠虫(せんちむし)め。279チヨツ、280あゝ、281そろそろと寝間(ねま)へでも入(はい)つて休(やす)まうかな、282タヽヽ忽(たちま)ちだ、283覚(おぼ)えてけつかれチツとは性(しやう)があるぞ、284チヨツ、285つき出(だ)しやがつてテヽてれ臭(くさ)い、286トツととんぼり返(かへ)りをさせやがつたな、287チヨツ、288ナヽ情(なさけ)ない、289チヨツ、290ニヽにくらしい、291ヌヽヽヌツと出(で)て来(き)やがつて、292ネヽヽ根(ね)つから葉(は)つからのぞみが達(たつ)しさうにもなしヒドい目(め)に遇(あ)はしやがつた。293チヨツ、294フヽ太(ふと)い事(こと)をへい気(き)でやつてけつかるのだらう、295ホヽほんまに、296欲(よく)の熊鷹(くまたか)だ。297マヽヽヽまたが裂(さ)けるぞ、298ミヽヽ見(み)てけつかれ、299ムヽ無茶(むちや)でも、300メヽ目(め)をかけた以上(いじやう)は、301モヽもう許(ゆる)さぬぞ』
302五三(いそ)『コレコレ魔我彦(まがひこ)さま、303何(なに)独(ひと)り言(ごと)を云(い)つて居(ゐ)るのだ、304テンと訳(わけ)が分(わか)らないぢやないか。305ヤヽややこしいイキサツが、306ウルサイ程(ほど)、307ユヽ湧出(ゆうしゆつ)して居(ゐ)るのだろ、308エヽ遠慮(ゑんりよ)なく五三公(いそこう)さまにヨヽよく知(し)らして呉(く)れラヽらちもない事(こと)で無(な)ければ、309リヽ立派(りつぱ)に理由(りいう)を、310ルヽ縷述(るじゆつ)して方(かた)をつけたらよいぢやないか。311大方(おほかた)レヽ恋愛(れんあい)の失策(しつさく)だらう。312ロヽローマンスがあるのぢやないか、313ワヽ吾(わが)身(み)の力(ちから)に合(あ)ふ事(こと)なら、314イヽいかなる事(こと)でもウヽ受(う)け合(あ)うてエヽ縁(えん)を結(むす)び、315オヽ納(をさ)めてやろか、316ホヽヽヽヽ』
317魔我(まが)『五三公(いそこう)さま、318実(じつ)の処(ところ)はパリぢや、319パリはパリだが、320サツパリだ』
321五三(いそ)『ヘーン』
322一同(いちどう)『ウフヽヽヽ、323ワハヽヽヽ、324何(なに)が何(なん)だか訳(わけ)が分(わか)らぬやうになつて来(き)たワイ、325分(わか)らいでも矢張(やつぱり)をかしいワイ、326ウハヽヽヽヽ、327イヒヽヽヽ』
328(大正一一・一二・一一 旧一〇・二三 加藤明子録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→