霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 曲角(まがつの)狸止(りと)〔一二〇五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第4篇 虎風獣雨 よみ(新仮名遣い):こふうじゅうう
章:第15章 曲角狸止 よみ(新仮名遣い):まがつのりと 通し章番号:1205
口述日:1922(大正11)年12月13日(旧10月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
五三公は皆から先生とあだ名され、調子に乗ってしまう。タクからウラナイ教の小北山の因縁について聞かれ、解説を始めた。
常世の国から渡ってきた古狐が、野狐や古狸を引率して高姫に憑依し、国治立大神を看板にして世界を思うとおりに乱そうとしたのが始まりだと説いた。狐どもは変性女子に見抜かれるたびに憑依する肉体を替えながら、三五教を打ち壊そうと計画し狙っているのがこの小北山という場所なのだという。
松姫と松彦は、その小北山を抑えるために神様が派遣したのだという。五人がこんな話をする間に、蠑螈別はまた酒を飲み始めた。お寅は蠑螈別のお酌をお菊におしつけて行ってしまった。
蠑螈別は酔いが回ってお寅の悪口を言い、高姫を懐かしむ歌を歌いだした。外に出てきたお寅は、立ち聞きしている五人を見咎めたが、五三公はとっさに蠑螈別をほめたたえてお寅の矛先をかわした。
お寅は一同を連れて神前に行き、曲津祝詞を上げる。万公はそのでたらめさに茶々を入れるが、うまくお寅をかわし、寝に就くことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-03-01 23:30:52 文字数:5918 OBC :rm4515
愛善世界社版:237頁 八幡書店版:第8輯 334頁 修補版: 校定版:249頁 普及版:93頁 初版: ページ備考:
001 五三公(いそこう)は観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)説明(せつめい)のおかげで、002四(よ)人(にん)の連中(れんちう)からたうとう先生(せんせい)といふ仇名(あだな)をつけられて了(しま)つた。003五三公(いそこう)も先生(せんせい)と言(い)はれてよい気(き)になり、004ウンウンと返詞(へんじ)をすることになつて了(しま)つた。005そしてアク公(こう)を中上(ちうじやう)先生(せんせい)と仇名(あだな)し、006万公(まんこう)を中下(ちうげ)先生(せんせい)と称(とな)へ、007タクは番外(ばんぐわい)先生(せんせい)、008テクはチヨボチヨボ先生(せんせい)と互(たがひ)に呼(よ)びなす様(やう)になつた。
009タク『モシ先生(せんせい)、010小北山(こぎたやま)の神(かみ)の因縁(いんねん)に付(つ)いては最前(さいぜん)お寅(とら)婆(ば)アさまの前(まへ)でお歌(うた)ひになりましたが、011如何(どう)して又(また)こんなバカなことが出来(でき)たものでせうかな』
012五三(いそ)『之(これ)に就(つい)ては随分(ずゐぶん)面白(おもしろ)い秘密(ひみつ)があるのだ。013所謂(いはゆる)一輪(いちりん)の秘密(ひみつ)だ。014常世(とこよ)の国(くに)から渡(わた)つて来(き)た大変(たいへん)古(ふる)い斑狐(まんだらぎつね)が白(しろ)い狐(きつね)を二匹(にひき)、015古狸(くろさん)を三疋(さんびき)、016それから野狐(やかん)を幾疋(いくひき)ともなく引率(いんそつ)して、017波斯(フサ)の国(くに)北山村(きたやまむら)の本山(ほんざん)に現(あら)はれ、018バラモン教(けう)に一寸(ちよつと)首(くび)を突出(つきだ)してゐた精神(せいしん)上(じやう)に欠陥(けつかん)のあるヒポコンデル患者(くわんじや)高姫(たかひめ)といふ女(をんな)に憑依(ひようい)して、019此(この)世(よ)を紊(みだ)し、020国治立(くにはるたち)の大神(おほかみ)様(さま)を看板(かんばん)にして、021自分(じぶん)の世界(せかい)にせうと考(かんが)へたのが起(おこ)りだ。022そした所(ところ)、023此(この)高姫(たかひめ)も若(わか)い時(とき)は随分(ずゐぶん)情交(いろごと)が好(す)きで、024其(その)斑狐(はんこ)サンが思(おも)ふ様(やう)に肉体(にくたい)を使(つか)ふことが出来(でき)なかつたものだから、025やむを得(え)ず、026ネタ熊(くま)といふ若(わか)い男(をとこ)の体(たい)をかり、027上谷(かみだに)といふ所(ところ)で、028謀反(むほん)を企(たく)みかけたのだ。029そした所(ところ)、030変性(へんじやう)男子(なんし)の御霊(みたま)と、031変性(へんじやう)女子(によし)の御霊(みたま)が現(あら)はれて審神(さには)を遊(あそ)ばしたものだから、032斑狐(はんこ)サンたまりかね、033部下(ぶか)の狐狸(こり)共(ども)を引(ひき)つれ、034小北(こぎた)の山(やま)へ一目散(いちもくさん)に逃帰(にげかへ)つて了(しま)つたのだ。035さうすると、036ネタ熊(くま)の肉体(にくたい)は小北山(こぎたやま)へ来(こ)なくなり、037二三(にさん)日(にち)逗留(とうりう)する内(うち)に、038神罰(しんばつ)を蒙(かうむ)つて国替(くにがへ)をして了(しま)つた。039それから今度(こんど)は斑狐(はんこ)サン、040又(また)もや坂熊(さかくま)といふ男(をとこ)の肉体(にくたい)に巣(す)ぐひ、041金勝要(きんかつかねの)神(かみ)の肉宮(にくみや)を手(て)に入(い)れ、042変性(へんじやう)女子(によし)を却(しりぞ)け、043一芝居(ひとしばゐ)やらうと思(おも)うた所(ところ)、044又(また)もや女子(によし)の御霊(みたま)に看破(かんぱ)され、045ゐたたまらなくなつて、046アーメニヤへ逃出(にげいだ)し、047ウラル教(けう)に沈没(ちんぼつ)して了(しま)つた。048そこで今度(こんど)執念(しふねん)深(ぶか)い斑狐(はんこ)サンは、049石高(いしたか)といふ男(をとこ)の肉体(にくたい)に巣(す)をくみ、050変性(へんじやう)女子(によし)の向(むか)うを張(は)り、051日出(ひのでの)神(かみ)と名乗(なの)つて、052三五教(あななひけう)を蹂躙(じうりん)せむとした所(ところ)、053今度(こんど)は変性(へんじやう)男子(なんし)、054女子(によし)に看破(かんぱ)され、055これ又(また)キツイ神罰(しんばつ)で肉体(にくたい)が国替(くにがへ)したので、056今度(こんど)はミソ久(きう)といふ山子(やまこ)男(をとこ)の肉体(にくたい)をかつた、057そして又(また)女子(によし)に大反対(だいはんたい)をやつてみたが、058目的(もくてき)達(たつ)せず、059此奴(こいつ)もアーメニヤの方面(はうめん)へ逃失(にげう)せて了(しま)つた。060それから又(また)種熊(たねくま)の肉体(にくたい)を使(つか)ひ、061大奮闘(だいふんとう)をやつて女子(によし)を手古(てこ)づらせ、062たうとう此奴(こいつ)も神罰(しんばつ)で国替(くにがへ)をして了(しま)つた。063それから今度(こんど)憑(うつ)つたのが蠑螈別(いもりわけ)さまだ、064蠑螈別(いもりわけ)には斑狐(はんこ)サンが籠城(ろうじやう)遊(あそ)ばし、065左右(さいう)のお脇立(わきだち)の白狐(はくこ)サンは、066伴鬼世(ばんきよ)、067角鬼世(つのきよ)、068味噌勘(みそかん)、069石黒彦(いしぐろひこ)、070坂虫(さかむし)、071などに眷族(けんぞく)をうつして、072四方(しはう)八方(はつぱう)から三五教(あななひけう)を打(うち)こわさむと、073今(いま)や計画(けいくわく)の真最中(まつさいちう)なのだ、074併(しか)し乍(なが)ら悪神(あくがみ)のすることはいつも尻(しり)が結(むす)べないから賽(さい)の河原(かはら)で子供(こども)が石(いし)をつむ話(はなし)の様(やう)なものだよ』
075万公(まんこう)『さうすると此(この)小北山(こぎたやま)は容易(ようい)ならない所(ところ)だ。076根本(こんぽん)的(てき)に改革(かいかく)して世界(せかい)の災(わざはひ)をたたねばダメだなア、077先生(せんせい)』
078五三(いそ)『さうだから、079松彦(まつひこ)様(さま)がお出(い)でになつたのだ。080神(かみ)様(さま)は偉(えら)いものだ、081チヤンと松姫(まつひめ)を先(さき)へ派遣(はけん)しておかれたのだからなア、082悪神(あくがみ)といふ者(もの)は、083自分(じぶん)より上(うへ)の方(はう)は見(み)る事(こと)が出来(でき)ないので、084松姫(まつひめ)さまの肚(はら)の中(なか)を知(し)らず、085本当(ほんたう)に唯一(ゆゐいつ)の神柱(かむばしら)が出来(でき)たと喜(よろこ)んで奉(たてまつ)つてゐるのだよ』
086万公(まんこう)『アハヽヽヽ、087其奴(そいつ)ア面白(おもしろ)い、088さうすると、089松姫(まつひめ)さまを真(しん)から上義姫(じやうぎひめ)だと思(おも)つてゐるのだなア』
090五三(いそ)『松姫(まつひめ)様(さま)は、091上義姫(じやうぎひめ)様(さま)の誠生粋(まこときつすゐ)の肉(にく)の宮様(みやさま)と確信(かくしん)してるから面白(おもしろ)いのだ、092そして松彦(まつひこ)さまをユラリ彦(ひこの)命(みこと)だと確(かた)く信(しん)じてゐる所(ところ)がこちらの附目(つけめ)だ、093最早(もはや)落城(らくじやう)したも同様(どうやう)だよ』
094万公(まんこう)『益々(ますます)愉快(ゆくわい)でたまらなくなつた、095なア中上(ちうじやう)先生(せんせい)、096番外(ばんぐわい)先生(せんせい)、097チヨボチヨボ先生(せんせい)、098怪体(けたい)ぢやないか、099エヽー』
100アク『アク迄(まで)アクの根(ね)を断(た)ち切(き)り、101万公(まんこう)末代(まつだい)五三(ごさ)々々(ごさ)せぬ様(やう)に誠(まこと)の道(みち)を開拓(かいたく)し、102テクテク歩(ほ)を進(すす)めるとするのだなア、103ハツハヽヽヽ』
104 五(ご)人(にん)はこんな話(はなし)に現(うつつ)をぬかし、105蠑螈別(いもりわけ)の居室(きよしつ)の窓外(さうぐわい)に自分(じぶん)の立(た)つてゐる事(こと)を忘(わす)れ大声(おほごゑ)で喋(しやべ)つて了(しま)つた。106蠑螈別(いもりわけ)はお経(きやう)をすませ、107又(また)もやグイグイと酒(さけ)を呑(の)み始(はじ)めたらしい。108ケチン、109ケンケラケンと燗徳利(かんどつくり)や盃(さかづき)のかち合(あ)ふ音(おと)が聞(きこ)えてゐる。110お寅(とら)は五(ご)人(にん)の立話(たちばなし)を一伍(いちぶ)一什(しじふ)聞(き)いて了(しま)つた。
111 お寅(とら)は蠑螈別(いもりわけ)に酒(さけ)の用意(ようい)をなし、112何(なに)くはぬ顔(かほ)で、
113お寅(とら)『サア蠑螈別(いもりわけ)さま、114ドツサリおあがりなさいませ。115一寸(ちよつと)私(わたし)はお広前(ひろまへ)まで御(お)礼(れい)にいつて参(まゐ)ります、116コレお菊(きく)、117教祖(けうそ)様(さま)のお酒(さけ)の相手(あひて)をするのだよ』
118お菊(きく)『あたえ、119厭(いや)だワ、120お酒(さけ)のお給仕(きふじ)はお母(か)アさまの役(やく)だよ。121あたえはお広間(ひろま)へ参(まゐ)つて来(き)ますから、122お母(か)アさまは教祖(けうそ)さまのお給仕(きふじ)をして上(あ)げて下(くだ)さいな、123そして抓(つめ)つたり鼻(はな)をねぢたりせぬ様(やう)にして下(くだ)さい、124あたえ心配(しんぱい)でならないワ』
125お寅(とら)『私(わたし)がお給仕(きふじ)をしてゐると又(また)あんなランチキ騒(さわ)ぎが起(おこ)つちや大変(たいへん)だから、126それでお前(まへ)にお給仕(きふじ)をしてくれと云(い)つたのだよ』
127お菊(きく)『さうだつて、128あたえ、129嫌(いや)なのよ。130教祖(けうそ)さまは腋臭(わいが)だから、131お母(か)アさまにねぢられなくても、132私(あたえ)の鼻(はな)が独(ひと)りでねぢ曲(まが)るのよ』
133お寅(とら)『エヽ口(くち)の悪(わる)い娘(こ)だな、134そんな失礼(しつれい)なことを云(い)つちやすまないよ、135蠑螈別(いもりわけ)さま、136どうぞ子供(こども)の云(い)ふことだから気(き)にかけない様(やう)にして下(くだ)さいよ』
137 蠑螈別(いもりわけ)は細(ほそ)い目(め)をつり上(あ)げ、138口(くち)を尖(とが)らして鼻(はな)と背比(せくら)べさせ乍(なが)ら、
139蠑螈(いもり)『ウフヽヽヽ、140これお菊(きく)、141マア良(い)いぢやないか、142おれの腋臭(わいが)でも喜(よろこ)ぶ人(ひと)があるのだもの、143そうムゲにこきおろすものだない』
144お菊(きく)『さうよ、145教祖(けうそ)さまの腋臭(わいが)の好(す)きな人(ひと)は高姫(たかひめ)さまかお母(か)アさまだよ、146オホヽヽヽ』
147お寅(とら)『コレコレ何(なに)を言(い)ふのだ。148併(しか)し乍(なが)らお前(まへ)の云(い)ふ通(とほ)り、149蠑螈別(いもりわけ)さまは高姫(たかひめ)さまの腋臭(わいが)が好(す)きなのだからねえ、150私(わたし)もどうかして腋臭(わいが)になりたいのだけれど、151不器用(ぶきよう)な生(うま)れつきだから、152チツとも持合(もちあは)せがないのよ。153ホツホヽヽヽ』
154蠑螈(いもり)『お寅(とら)さまは腋臭(わいが)の代(かは)りにトベラだから、155マアそれでバランスが取(と)れるといふものだ』
156お菊(きく)『ホヽヽヽヽ、157腋臭(わいが)にトベラ、158何(なん)とマアいいコントラストだこと、159神(かみ)さまも随分(ずゐぶん)皮肉(ひにく)だね、160イヒヽヽヽ』
161お寅(とら)『蠑螈別(いもりわけ)さま、162一寸(ちよつと)之(これ)から御(ご)神前(しんぜん)へ参(まゐ)つて来(き)ます、163ぢきに帰(かへ)りますから』
164蠑螈(いもり)『ウン、165独酌(どくしやく)の方(はう)が却(かへつ)て興味(きようみ)がある、166トベラの匂(にほ)ひが酒(さけ)に混合(こんがふ)すると余(あま)りうまくないからなア』
167お寅(とら)『わいがの匂(にほ)ひが混合(こんがふ)するといいんだけれど、168ヘン』
169と云(い)ひ乍(なが)ら、170ツンとして立上(たちあが)り、171畳(たたみ)を踵(きびす)でポンと一(ひと)つ威喝(ゐかつ)させ乍(なが)ら表(おもて)へ飛出(とびだ)した。172蠑螈別(いもりわけ)はお菊(きく)を相手(あひて)にグヅグヅと口(くち)の奥(おく)で分(わか)らぬことを喋(しやべ)りつつお菊(きく)につがせては八百万(やほよろづ)の神(かみ)にお供(そな)へしてゐる。
173お菊(きく)『ホツホヽヽヽ、174何(なん)とマア青白(あをじろ)い顔(かほ)だこと、175丸(まる)で文助(ぶんすけ)さまの何時(いつ)も書(か)いてゐらつしやる蕪(かぶら)に目鼻(めはな)つけたよな顔(かほ)だワ。176それでも大根(だいこん)の様(やう)な形(かたち)した白(しろ)い燗徳利(かんとくり)がお好(す)きだからねえ。177ホヽヽヽヽ、178そして此(この)朝顔型(あさがほがた)の盃(さかづき)は高姫(たかひめ)さまの口元(くちもと)に似(に)とるんだから面白(おもしろ)いワ、179教祖(けうそ)さま、180サア、181此(この)盃(さかづき)で一(ひと)つキツスなさいませ。182随分(ずゐぶん)よい味(あぢ)が致(いた)しますよ』
183蠑螈(いもり)『ヤア朝顔型(あさがほかた)の盃(さかづき)は、184危険視(きけんし)されるから止(や)めておこう』
185お菊(きく)『さうですねえ、186よう祟(たた)る盃(さかづき)ですなア。187あたえも此(この)盃(さかづき)みるとゾツとするワ、188又(また)つねられたり、189鼻(はな)を捻(ねぢ)られたり、190息(いき)の根(ね)をとめられたりするよなことを突発(とつぱつ)させるのだから、191本当(ほんたう)に憎(にく)らしい猪口才(ちよこざい)な猪口(ちよこ)ですねえ、192此(この)猪口(ちよこ)のおかげでチヨコチヨコと腋臭(わいが)とトベラの直接(ちよくせつ)行動(かうどう)が始(はじ)まるのだから、193本当(ほんたう)に此(この)盃(さかづき)こそ過激(くわげき)思想(しさう)を包蔵(はうざう)してゐるのだワ』
194蠑螈(いもり)『お前(まへ)もお寅(とら)の娘(むすめ)丈(だけ)あつて、195随分(ずゐぶん)口(くち)の良(よ)い女(をんな)だ、196困(こま)つた者(もの)だのう』
197お菊(きく)『何(なに)も貴方(あなた)が困(こま)る筈(はず)はないワ、198犬(いぬ)もくはない喧嘩(けんくわ)の煽動(せんどう)するのは此(この)猪口(ちよこ)だから、199困(こま)るのは側(そば)に見(み)てゐる此(この)お菊(きく)だワ』
200蠑螈(いもり)『そんなら此処(ここ)にある菊型(きくがた)の盃(さかづき)で一杯(いつぱい)やつたら安全(あんぜん)だろ、201なアお菊(きく)』
202お菊(きく)『イヤですよ、203私(わたし)の名(な)に似(に)た盃(さかづき)を口(くち)に当(あ)てて貰(もら)うこた、204真平(まつぴら)御免(ごめん)だ』
205と云(い)ひ乍(なが)ら、206薄(うす)い平(ひら)たい陶器(すへもの)の盃(さかづき)をグツとひん握(にぎ)り矢庭(やには)に袂(たもと)へかくして了(しま)つた。
207 蠑螈別(いもりわけ)はソロソロ酔(よひ)がまはり出(だ)した。
208蠑螈別『高姫山(たかひめやま)から谷底(たにそこ)見(み)れば
209お寅(とら)の奴(やつ)めがウロウロと
210お菊(きく)の小虎(ことら)を引(ひき)つれて
211犬(いぬ)も喰(く)はない餅(もち)を焼(や)く
212ホンに浮世(うきよ)はこしたものか
213思(おも)へば思(おも)へば自烈(じれつ)たい。
214世界(せかい)に女(をんな)は沢山(たくさん)あれど
215トベラの女(をんな)に比(くら)ぶれば
216腋臭(わいが)の強(つよ)い高(たか)チヤンは
217蠑螈別(いもりわけ)の命(いのち)の親(おや)だ。
218好(す)きは出(で)て来(こ)ず厭(いや)は来(く)る
219ホンに浮世(うきよ)は儘(まま)ならぬ。
220わしと高(たか)ちやんはお倉(くら)の米(こめ)よ
221いつか世(よ)に出(で)てママとなる。
222ままになるならトベラの婆(ば)さま
223どつかへ嫁入(よめい)りさして見(み)たい。
224八木(やぎ)と云(い)ふ字(じ)は米国(べいこく)の米(べい)よ
225日(ひ)の出(で)といふ字(じ)は日本(にほん)の日(ひ)の字(じ)
226蠑螈別(いもりわけ)さまは日出(ひのでの)神(かみ)の
227光(ひかり)を身(み)に受(う)けママとなる。
228 デツカンシヨウ デツカンシヨウ……だ。229オイお菊(きく)、230お前(まへ)は随分(ずゐぶん)口(くち)八釜(やかま)しい女(をんな)だから、231お寅(とら)に直様(すぐさま)密告(みつこく)するだらうなア』
232お菊(きく)『今(いま)の内(うち)に十分(じふぶん)悪口(あくこう)をついておきなさい。233私(わたし)や決(けつ)して言(い)ひませぬ。234併(しか)し貴方(あなた)がお酒(さけ)に酔(よ)ふと後先(あとさき)見(み)ずに、235お母(か)アさまの前(まへ)でそんなこと仰有(おつしや)るからホンにオロオロするワ、236末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の大神(おほかみ)様(さま)がおこし遊(あそ)ばしてるに、237みつともない、238イチヤ付(つき)喧嘩(けんくわ)をおつぱじめるなんて、239見(み)くびつた人(ひと)ですねえ』
240蠑螈(いもり)『お前(まへ)さへ言(い)はなきやそれで良(よ)い、241俺(おれ)も成(な)るべく言(い)はぬ積(つも)りだ。242併(しか)しあのお寅(とら)といふ奴(やつ)ア、243お前(まへ)のお母(か)アだから、244エヽこんなこといつたら悪(わる)からうが、245顔(かほ)にも似合(にあ)はぬ助平(すけべえ)だよ、246おりやモウ、247スーツカリと厭(いや)になつちやつたのだ。
248いやで幸(さいは)ひ好(す)かれてなろか
249愛想(あいさう)づかしをまつわいな。
250いやぢや いやぢやと口(くち)では言(い)へど
251縁(えん)を切(き)るとなりや又(また)いやだ』
252お菊(きく)『ホヽヽヽヽ、253いいかげんに若後家(わかごけ)をつかまへて、254てらしておきなさい』
255蠑螈(いもり)『ハヽヽヽヽ、256ちつと妬(や)いてゐやがるなア、257若後家(わかごけ)だといの、258男(をとこ)も持(も)つた覚(おぼ)えもないのに、259若後家(わかごけ)とはふるつてる、260さうするとお菊(きく)お前(まへ)は純粋(じゆんすゐ)な処女(しよぢよ)ではないなア、261誰(たれ)にハナヅルを入(い)れて貰(もら)つたのだ』
262お菊(きく)『牛(うし)か何(なん)ぞの様(やう)に鼻(はな)づるなんて、263バカにして下(くだ)さいますな、264油断(ゆだん)のならぬは娘(むすめ)ですよ。265かげ裏(うら)の豆(まめ)もハヂける時(とき)が来(く)れば、266自然(しぜん)にハヂけますわ。267ホツホヽヽヽ』
268 斯(かく)の如(ごと)くお菊(きく)を相手(あひて)に水色(みづいろ)のうす汚(よご)れた昼夜(ちうや)着替(きがへ)なしの木綿(もめん)着物(ぎもの)を着(き)たまま、269クビリクビリと時(とき)の移(うつ)るも知(し)らず、270盃(さかづき)の数(かず)を重(かさ)ねて居(ゐ)る。271一方(いつぱう)お寅(とら)は門口(かどぐち)に立(た)つてゐる五(ご)人(にん)の男(をとこ)を認(みと)め、
272お寅(とら)『コレ皆(みな)さま、273そんな所(ところ)に何(なに)してゐらつしやるの、274何(なに)か立聞(たちぎき)でもしてゐなさつたのだありませぬかい』
275五三(いそ)『ハイ立聞(たちぎき)をさして頂(いただ)きました。276あの教祖(けうそ)様(さま)がお上(あ)げになつて居(を)つたのは観物(くわんぶつ)三昧経(さんまいきやう)でしたね。277声音(こはね)といひ節(ふし)まはしと言(い)ひ、278本当(ほんたう)に調子(てうし)がよく合(あ)つて、279知(し)らず知(し)らず吾々(われわれ)の身体(からだ)が躍動(やくどう)し、280其(その)言霊(ことたま)の徳(とく)に吸引(きふいん)されて、281何時(いつ)の間(ま)にやら窓(まど)の外(そと)まで引(ひき)よせられて了(しま)つたのですよ、282何(なん)とマア偉(えら)い先生(せんせい)ですね』
283とうまく五三公(いそこう)はさばいた。284お寅(とら)は怪訝(けげん)の目(め)を見(み)はつて、285聊(いささ)か不機嫌(ふきげん)の態(てい)であつたが、286蠑螈別(いもりわけ)の声(こゑ)がよいとか、287節(ふし)が上手(じやうづ)だとか言(い)つて褒(ほ)めた詞(ことば)に嬉(うれ)しさの余(あま)り、288何(なに)もかも打忘(うちわす)れ、289ニコニコし乍(なが)ら、
290お寅(とら)『さう聞(きこ)えましたかなア、291本当(ほんたう)によい声(こゑ)でせうがな、292サアお広間(ひろま)へ参(まゐ)りませう』
293万公(まんこう)『ハイ、294有難(ありがた)う、295お伴(とも)致(いた)しませう』
296 お寅(とら)は得意(とくい)の鼻(はな)うごめかし乍(なが)ら、297機嫌(きげん)よげに先(さき)に立(た)つ。298アクは小声(こごゑ)で、
299アク『成程(なるほど)あの濁(にご)つた言霊(ことたま)でああやられちや、300誠(まこと)の神(かみ)は嫌(きら)つて寄(よ)り付(つ)き玉(たま)はず、301せうもないガラクタ神(がみ)が密集(みつしふ)するのは当然(あたりまへ)だ、302言霊(ことたま)といふものは謹(つつし)まねばならぬものだなア』
303とウツカリ後(あと)の方(はう)を大(おほ)きく云(い)つて了(しま)つた。304お寅(とら)は目(め)を丸(まる)くし、305後(あと)ふり返(かへ)り、
306お寅(とら)『エヽ何(なん)と仰有(おつしや)ります、307蠑螈別(いもりわけ)さまの言霊(ことたま)が濁(にご)つてゐるのですか』
308アク『イエイエ濁(にご)つた所(ところ)もあり澄切(すみき)つた所(ところ)もあります、309それだから偉(えら)いお方(かた)と云(い)つたのですよ。310大海(たいかい)は濁川(だくせん)を入(い)れて其(その)色(いろ)を変(へん)ぜずとかいひましてなア、311清濁(せいだく)合(あは)せ呑(の)む蠑螈別(いもりわけ)様(さま)の度量(どりやう)には随分(ずゐぶん)感服(かんぷく)致(いた)しましたよ』
312 お寅(とら)は又(また)機嫌(きげん)を直(なほ)して、
313お寅(とら)『本当(ほんたう)にさうですね』
314テク『オイ、315アク、316否(いや)中上(ちうじやう)先生(せんせい)、317清濁(せいだく)併(あは)せ呑(の)むといふのは何(なに)か、318清酒(せいしゆ)と濁酒(だくしゆ)と一所(いつしよ)に蠑螈別(いもりわけ)さまはおあがりなさるかい』
319アク『バカツ、320スツ込(こ)んで居(を)れ』
321テク『へン、322偉相(えらさう)に仰有(おつしや)るワイ、323イヒヽヽヽだア』
324お寅(とら)『サア、325皆(みな)さま、326一同(いちどう)揃(そろ)うて御(お)礼(れい)を致(いた)しませう』
327と神殿(しんでん)の前(まへ)に仔細(しさい)らしくすわる。328お寅(とら)は四拍手(しはくしゆ)し乍(なが)ら声(こゑ)高(たか)らかに曲津(まがつ)祝詞(のりと)を、
329お寅『かかまの腹(はら)に餓鬼(がき)つまります。330かん徳利(どくり)燗(かん)ざましのみこともちて、331雀(すずめ)の親方(おやかた)、332かんたか姫(ひめ)の命(みこと)、333嘘(うそ)をつくしの日(ひ)の出(で)の、334高姫(たかひめ)のおいどのクサギが原(はら)に、335味噌(みそ)すり払(はら)ひ玉(たま)ふ時(とき)に、336泣(な)きませる、337金払戸(かねはらひど)の狼(おほかみ)達(たち)、338モサクサの間男(まをとこ)、339罪(つみ)汚(けが)れを払(はら)ひ玉(たま)へ清(きよ)め玉(たま)へと魔(ま)の申(まを)すことの由(よし)を、340曲津(まがつ)神(かみ)、341クダケ神(がみ)、342山子万(やまこよろづ)の狼(おほかみ)虎(とら)共(とも)に、343馬鹿(うましか)の耳(みみ)ふるひ立(た)てて、344おみききこしめせと、345カチコメ カチコメ申(まを)す。346ウラナイの雀(すずめ)大御神(おほみかみ)、347曲(まが)り玉(たま)へ逆(さか)らへ玉(たま)へ、348ポンポン』
349万公(まんこう)『アハヽヽヽ』
350お寅(とら)『コレ何方(どなた)か知(し)らぬが、351曲津(まがつ)祝詞(のりと)を上(あ)げてる時(とき)に笑(わら)ふとは何事(なにごと)ですか、352チツと謹(つつし)んで下(くだ)さい、353ここは狼(おほかみ)の前(まへ)ですよ、354狼(おほかみ)さまにお寅(とら)が祝詞(のりと)を上(あ)げて居(ゐ)るのだ』
355万公(まんこう)『寅(とら)に狼(おほかみ)、356何(なん)とよい対照(たいせう)だなア、357ここがウラナイ教(けう)のウラナイ教(けう)たる所以(ゆゑん)だ』
358 お寅(とら)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)に祈(いの)り出(だ)した。
359お寅『嘘(うそ)つきの狼(おほかみ)様(さま)、360ヤク日(ひ)の狼(おほかみ)様(さま)、361曲津日(まがつひ)の玉(たま)、362イタチ天(てん)の狼(おほかみ)様(さま)、363落(おち)滝津(たきつ)速川(はやかは)の狼(おほかみ)様(さま)、364てん手古舞(てこまひ)の狼(おほかみ)さま、365リントウ鉢巻(はちまき)ビテングの狼(おほかみ)様(さま)、366木曽(きそう)義仲姫(よしなかひめ)の狼(おほかみ)様(さま)、367上杉(うへすぎ)謙信(けんしん)姫(ひめ)の狼(おほかみ)様(さま)、368生羽(いきば)ぬかれ彦(ひこ)神社(じんしや)の狼(おほかみ)様(さま)、369岩(いは)テコ姫(ひめ)の狼(おほかみ)様(さま)、370五六七(みろく)成就(じやうじゆ)お邪魔(じやま)の狼(おほかみ)様(さま)、371夕日(ゆふひ)の豊栄下(とよさかくだ)りの狼(おほかみ)様(さま)、372不義理(ふぎり)天上(てんじやう)内(うち)から火(ひ)の出(で)の狼(おほかみ)様(さま)、373軽業師(かるわざし)玉(たま)のり姫(ひめ)の狼(おほかみ)様(さま)、374バカの大将軍(だいしやうぐん)様(さま)、375蠑螈別(いもりわけ)のおね間(ま)を守(まも)り玉(たま)ふお床代姫(とこよひめ)の狼(おほかみ)様(さま)、376種物(たねもの)神社(じんしや)御夫婦(ごふうふ)様(さま)、377悪魔(あくま)の根本地(こつぽんち)の十六柱(じふろくはしら)の狼(おほかみ)様(さま)、378堺(さかひ)の神政松(しんせいまつ)の御(ご)神木(しんぼく)様(さま)、379何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)朝(あさ)な夕(ゆふ)なの御(ご)神徳(しんとく)を蒙(かうむ)りまして、380蠑螈別(いもりわけ)がヨクの熊高姫(くまたかひめ)を思(おも)ひ切(き)りますやうに、381そして此(この)丑寅(うしとら)婆(ばあ)サン姫(ひめの)命(みこと)を此上(こよ)なきものとめでいつくしみくれます様(やう)に、382其(その)次(つぎ)にはお菊姫(きくひめの)命(みこと)、383万公(まんこう)と因縁(いんねん)が厶(ござ)りまするならば、384どうぞ一(いち)時(じ)も早(はや)く添(そ)はしておやり下(くだ)さいませ、385ハン狐(こ)さんの、386どこ迄(まで)も正体(しやうたい)が現(あら)はれませぬ様(やう)、387御(ご)注意(ちうい)下(くだ)さいますやう、388これが第一(だいいち)の御(お)願(ねがひ)で厶(ござ)います。389そして末代火(まつだいひ)の王天(わうてん)の大神(おほかみ)様(さま)の肉宮(にくみや)、390不情誼(ふじやうぎ)姫(ひめ)様(さま)の肉宮(にくみや)が、391どこ迄(まで)も此(この)小北山(こぎたやま)に鎮(しづ)まり遊(あそ)ばして、392吾々(われわれ)の心性(しんせい)不浄(ふじやう)自由(じいう)の目的(もくてき)が達(たつ)します様(やう)に、393再(ふたた)び素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)があばれ出(だ)しませぬ様(やう)に、394天(あま)の岩戸(いはと)が開(ひら)けます様(やう)に、395色(いろ)の黒(くろ)き尉殿(じようどの)と白(しろ)き尉殿(じやうどの)が、396天(てん)の屋敷(やしき)にお直(なほ)り候(さふら)ふやうに、397誤醜護(ごしうご)御(お)願(ねがひ)申上(まをしあ)げます、398ポンポンポンポン。
399 皆(みな)さま、400御(ご)苦労(くらう)で厶(ござ)いました。401サア之(これ)で今晩(こんばん)は御(ご)自由(じいう)にお休(やす)み下(くだ)さいませ。402御(お)広間(ひろま)に夜具(やぐ)を並(なら)べさせますから』
403万公(まんこう)『イヤどうぞ心配(しんぱい)して下(くだ)さいますな、404自分(じぶん)のことは自分(じぶん)にせなくてはなりませぬ。405夜具(やぐ)の在処(ありか)さへ聞(き)かして貰(もら)へば、406自分(じぶん)で床(とこ)をのべて休(やす)まして貰(もら)ひます』
407お寅(とら)『あゝそんなら此(この)押入(おしいれ)の襖(ふすま)をあけると、408チツと痛(いた)いけれど、409木(き)の枕(まくら)もある也(なり)、410蒲団(ふとん)も沢山(たくさん)にあるから、411万公(まんこう)、412お前(まへ)が皆(みな)さまに床(とこ)を布(し)いて寝(ね)て貰(もら)う様(やう)に世話(せわ)をやいて下(くだ)さい』
413万公(まんこう)『ハイ何(なに)もかも呑(の)み込(こ)みました。414どうぞ早(はや)くお帰(かへ)り下(くだ)さいませ。415教祖(けうそ)様(さま)が淋(さび)しがつてゐられますからなア』
416お寅(とら)『ホヽヽヽヽ、417何(なに)から何(なに)迄(まで)、418よう気(き)のつく男(をとこ)だこと。419ヤア五三公(いそこう)さま、420其(その)外(ほか)の御(ご)一同(いちどう)さま、421どうぞ御(お)ゆるりと明日(あす)の朝(あさ)迄(まで)お休(やす)み下(くだ)さいませ』
422と云(い)ひ乍(なが)ら、423慌(あわ)ただしく蠑螈別(いもりわけ)の居間(ゐま)を指(さ)して帰(かへ)り行(ゆ)く。
424(大正一一・一二・一三 旧一〇・二五 松村真澄録)
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