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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第45巻(申の巻)
序文
総説
第1篇 小北の特使
第1章 松風
第2章 神木
第3章 大根蕪
第4章 霊の淫念
第2篇 恵の松露
第5章 肱鉄
第6章 唖忿
第7章 相生の松
第8章 小蝶
第9章 賞詞
第3篇 裏名異審判
第10章 棚卸志
第11章 仲裁
第12章 喜苔歌
第13章 五三の月
第4篇 虎風獣雨
第14章 三昧経
第15章 曲角狸止
第16章 雨露月
第17章 万公月
第18章 玉則姫
第19章 吹雪
第20章 蛙行列
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<<< 吹雪
(B)
(N)
余白歌 >>>
第二〇章
蛙行列
(
かはづぎやうれつ
)
〔一二一〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
篇:
第4篇 虎風獣雨
よみ(新仮名遣い):
こふうじゅうう
章:
第20章 蛙行列
よみ(新仮名遣い):
かわずぎょうれつ
通し章番号:
1210
口述日:
1922(大正11)年12月13日(旧10月25日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月12日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
蠑螈別は酒に酔い潰れていびきをかいていた。そこへ裏口を開いてお民がやってきた。お民は蠑螈別をゆすりおこし、二人の間のことをお寅にかぎつかれたので、今日かぎりここを逃げ出すと暇乞いをした。
蠑螈別は酔いもいっぺんに覚め、お民に野口の森で一足先に待っていてくれ、自分は金を持って後から追いかけると言い含めた。
お民が出て行ったあと、蠑螈別は身支度をして九千両の金を身に着けて門口を飛び出そうとしたとたん、あわてて柱に額を打ち、その場に倒れてしまった。
一方お寅は松姫を説きつけて、今晩のうちに松姫からお民を説得することになった。松姫はお民の寝間を指して雪の中を行ってしまった。
お寅は蠑螈別の居間に戻ると、蠑螈別は旅装束の姿で門口に打ち倒れている。お寅が蠑螈別の背中を叩いて起こすと、蠑螈別はお寅をお民だと思って話しかけ、駆け落ちの魂胆をしゃべってしまう。
お寅は怒って蠑螈別の胸ぐらをつかんで怒鳴りだした。蠑螈別はお寅に責められてお民との駆け落ちを白状した。そして床に落ちたときの音で蠑螈別が小判を持ち出そうとしていたことに気付いたお寅は怒り心頭に達して狂気のごとくになった。
しかしその勢いで火鉢につまづいたお寅は柱に額を打ちつけてうずくまってしまう。蠑螈別はこの機を逃さず小判を腰につけ直し、修業に出ると言ってお寅を金剛杖で打つと走って出て行ってしまった。お寅は怒って蠑螈別を追いかけて行ってしまう。
松彦は残った松姫らと相談の上小北山に修祓を行い、国治立大神をはじめ三五教を守る神々を鎮祭した。そして松姫、お千代、お菊、文助らに真理を説き諭してこの聖場を祀らせた。
松彦は、万公、五三公、アク、タク、テクを引き連れて、浮木の森を指して進んで行った。
ちなみに魔我彦は、お民を追いかけてお寅の後から野口の森を目当てにかけて行ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-03-06 14:51:12
OBC :
rm4520
愛善世界社版:
287頁
八幡書店版:
第8輯 352頁
修補版:
校定版:
300頁
普及版:
117頁
初版:
ページ備考:
001
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らず、
002
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひつぶれて
雷
(
らい
)
の
如
(
や
)
うな
鼾
(
いびき
)
をかいてゐる、
003
其処
(
そこ
)
へ
裏口
(
うらぐち
)
の
戸
(
と
)
をソツと
開
(
ひら
)
いて、
004
震
(
ふる
)
ひ
震
(
ふる
)
ひやつて
来
(
き
)
たのはお
民
(
たみ
)
であつた。
005
お
民
(
たみ
)
は
蠑螈別
(
いもりわけ
)
をゆすりおこし
小声
(
こごゑ
)
で、
006
お
民
(
たみ
)
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
007
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
がおこりました。
008
私
(
わたし
)
は
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
れませぬ。
009
今晩
(
こんばん
)
限
(
かぎ
)
り
此処
(
ここ
)
を
逃出
(
にげだ
)
しますから、
010
一寸
(
ちよつと
)
貴方
(
あなた
)
に
応
(
こた
)
へに
参
(
まゐ
)
りました。
011
どうぞ
悪
(
わる
)
くは
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな』
012
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
俄
(
にはか
)
に
酒
(
さけ
)
の
酔
(
よ
)
ひもさめ
起上
(
おきあが
)
つて
目
(
め
)
をこすり
乍
(
なが
)
ら、
013
蠑螈
(
いもり
)
『お
前
(
まへ
)
はお
民
(
たみ
)
ぢやないか。
014
大変
(
たいへん
)
とは
何事
(
なにごと
)
だ。
015
グヅグヅしてゐるとお
寅
(
とら
)
に
見
(
み
)
つかつたら、
016
俺
(
おれ
)
もお
前
(
まへ
)
も
大変
(
たいへん
)
だから、
017
早
(
はや
)
く
要件
(
えうけん
)
を
云
(
い
)
つて、
018
此処
(
ここ
)
を
立去
(
たちさ
)
つて
呉
(
く
)
れ』
019
お
民
(
たみ
)
『
大変
(
たいへん
)
と
申
(
まを
)
すのは
外
(
ほか
)
でもありませぬ、
020
最前
(
さいぜん
)
もお
寅
(
とら
)
さまが
私
(
わたし
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
021
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
魔我彦
(
まがひこ
)
の
女房
(
にようばう
)
になれと
仰有
(
おつしや
)
るのです。
022
アタ
好
(
す
)
かぬたらしい、
023
誰
(
たれ
)
が、
024
死
(
し
)
んでも
女房
(
にようばう
)
になりますものか。
025
私
(
わたし
)
が
此処
(
ここ
)
へ
参
(
まゐ
)
つて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのも
貴方
(
あなた
)
にお
約束
(
やくそく
)
があるばつかりで、
026
御
(
お
)
つとめ
の
時
(
とき
)
にチヨイチヨイお
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るのを
楽
(
たの
)
しみに
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのでせう、
027
それだから
一寸
(
ちよつと
)
貴方
(
あなた
)
に
此
(
この
)
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げ、
028
これから
私
(
わたし
)
は
一足先
(
ひとあしさき
)
へ
帰
(
かへ
)
りますから、
029
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
がありますなら
後
(
あと
)
から
追
(
お
)
つかけて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
030
蠑螈
(
いもり
)
『ソラ
大変
(
たいへん
)
だ。
031
お
前
(
まへ
)
は
一先
(
ひとま
)
づ
野口
(
のぐち
)
の
森
(
もり
)
まで
行
(
い
)
つて
待
(
ま
)
つとつてくれ。
032
俺
(
おれ
)
はこれからお
寅
(
とら
)
の
松姫館
(
まつひめやかた
)
へ
行
(
い
)
つた
留守
(
るす
)
を
幸
(
さいは
)
ひ、
033
お
寅
(
とら
)
の
隠
(
かく
)
しとつた
金
(
かね
)
の
所在
(
ありか
)
も
略
(
ほぼ
)
分
(
わか
)
つたから
九千
(
きうせん
)
両
(
りやう
)
の
金子
(
かね
)
を
腰
(
こし
)
に
捲
(
ま
)
きつけ、
034
後
(
あと
)
から
追
(
お
)
ひつくよ』
035
と
せき
たつればお
民
(
たみ
)
は
莞爾
(
につこ
)
と
笑
(
わら
)
ひ、
036
お
民
(
たみ
)
『
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
037
キツトですよ、
038
そんなら
一歩
(
ひとあし
)
お
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
りますから……』
039
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
040
長居
(
ながゐ
)
はおそれ、
041
月
(
つき
)
の
出
(
で
)
ぬうちにと
坂道
(
さかみち
)
をスタスタと
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませ
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
042
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
早速
(
さつそく
)
に
衣類
(
いるゐ
)
を
着
(
き
)
かへ、
043
蓑笠
(
みのかさ
)
の
用意
(
ようい
)
をなし、
044
九千
(
きうせん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
内懐
(
うちふところ
)
にグツト
締
(
し
)
め
込
(
こ
)
み、
045
脚装束
(
あししやうぞく
)
をして
草鞋
(
わらぢ
)
脚袢
(
きやはん
)
迄
(
まで
)
も
首尾
(
しゆび
)
よくつけ、
046
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をひんにぎり、
047
今
(
いま
)
や
門口
(
かどぐち
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さむとして、
048
あわてて
柱
(
はしら
)
に
額
(
ひたひ
)
を
打
(
う
)
ちウンと
一声
(
ひとこゑ
)
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
049
こんな
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
るとは
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
知
(
し
)
る
由
(
よし
)
もなく、
050
お
寅
(
とら
)
は
頻
(
しきり
)
に
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
051
お
民
(
たみ
)
の
密約
(
みつやく
)
成立
(
せいりつ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
運動
(
うんどう
)
に
熱中
(
ねつちゆう
)
し、
052
松姫
(
まつひめ
)
と
膝
(
ひざ
)
を
交
(
まじ
)
へてヒソヒソ
話
(
ばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
053
お
寅
(
とら
)
『コレお
菊
(
きく
)
、
054
モウお
休
(
やす
)
みと
云
(
い
)
ふのに、
055
夜更
(
よふけ
)
まで
子供
(
こども
)
が
起
(
お
)
きてゐるものぢやないよ。
056
此
(
この
)
子
(
こ
)
はマア
十七
(
じふしち
)
にもなつて
一寸
(
ちよつと
)
も
親
(
おや
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かない
子
(
こ
)
だ。
057
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つ
了
(
ちま
)
わ』
058
お
菊
(
きく
)
『お
母
(
かあ
)
さま、
059
何
(
なん
)
だか
目
(
め
)
がさえざえして、
060
一寸
(
ちよつと
)
も
寝
(
ね
)
られないのよ。
061
今晩
(
こんばん
)
は
廿一夜
(
にじふいちや
)
だから、
062
モウお
月様
(
つきさま
)
が
鎌
(
かま
)
の
様
(
やう
)
な
光
(
ひかり
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げて
小北山
(
こぎたやま
)
を
御
(
お
)
上
(
のぼ
)
り
遊
(
あそ
)
ばすから、
063
月見
(
つきみ
)
でもした
方
(
はう
)
が
好
(
い
)
いわ』
064
お
寅
(
とら
)
『
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
お
言
(
い
)
ひでないよ。
065
外
(
そと
)
は
凩
(
こがらし
)
が
吹
(
ふ
)
いて
吹雪
(
ふぶき
)
がして
居
(
ゐ
)
るよ。
066
こんな
夜
(
よ
)
さに
月見
(
つきみ
)
したつて
何
(
なに
)
が
面白
(
おもしろ
)
いか。
067
又
(
また
)
風
(
かぜ
)
に
当
(
あた
)
つてインフルエンザにでも
罹
(
かか
)
つたら
何
(
ど
)
うするのだい』
068
お
菊
(
きく
)
『お
母
(
かあ
)
さま、
069
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
つとるの、
070
ソレは
尚
(
なほ
)
結構
(
けつこう
)
ぢやありませぬか。
071
空
(
そら
)
にはお
月
(
つき
)
さま、
072
下
(
した
)
には
雪
(
ゆき
)
、
073
そこへ
花
(
はな
)
の
蕾
(
つぼみ
)
のお
菊
(
きく
)
の
花
(
はな
)
が
出
(
で
)
るのですもの、
074
月雪花
(
つきゆきはな
)
を
一時
(
いつとき
)
に
眺
(
なが
)
めるやうなものぢやありませぬか。
075
こんなよい
機会
(
きくわい
)
は
滅多
(
めつた
)
に
有
(
あ
)
りはしませぬわ』
076
お
寅
(
とら
)
『コマシヤクレた
子
(
こ
)
だな。
077
早
(
はや
)
く
休
(
やす
)
ましてお
貰
(
もら
)
ひなさらぬか。
078
モシ
松姫
(
まつひめ
)
さま、
079
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りお
転婆娘
(
てんばむすめ
)
で、
080
本当
(
ほんたう
)
に
親
(
おや
)
も
手
(
て
)
こずつてゐますのよ』
081
松姫
(
まつひめ
)
『さうですね、
082
今時
(
いまどき
)
の
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
はどうして、
083
これ
程
(
ほど
)
ヤン
茶
(
ちや
)
になるのでせう。
084
お
千代
(
ちよ
)
だつてコマシヤクレた
事
(
こと
)
ばかり
云
(
い
)
つて、
085
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
に
逆理屈
(
さかりくつ
)
をこね、
086
仕方
(
しかた
)
がありませぬわ』
087
お
寅
(
とら
)
『さうですねー、
088
こんな
子
(
こ
)
は
今
(
いま
)
の
教育
(
けういく
)
でもさした
位
(
くらゐ
)
なら、
089
到底
(
たうてい
)
親
(
おや
)
の
挺
(
てこ
)
には
合
(
あ
)
はぬようになりますぢやろ。
090
モウ
学校
(
がくかう
)
は
尋常
(
じんじやう
)
で
止
(
や
)
めるつもりですわ。
091
高竹寺
(
かうちくぢ
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
へでも
入
(
い
)
れようものなら、
092
男女
(
だんぢよ
)
同権
(
どうけん
)
だとか、
093
女権
(
ぢよけん
)
拡張
(
くわくちやう
)
だとか、
094
下
(
くだ
)
らぬ
屁理屈
(
へりくつ
)
をいつて
両親
(
りやうしん
)
を
困
(
こま
)
らせますからね』
095
松姫
(
まつひめ
)
『あの
高竹寺
(
かうちくじ
)
には
女学校
(
ぢよがくかう
)
がありますか。
096
さうすると
坊
(
ばう
)
さまの
娘
(
むすめ
)
なんかが
入学
(
にふがく
)
するのでせうね』
097
お
寅
(
とら
)
『イエ
坊
(
ばう
)
さまの
娘
(
むすめ
)
なんか
一人
(
ひとり
)
も
入学
(
にふがく
)
してゐやしませぬわ。
098
みんな
毘沙
(
びしや
)
や、
099
首陀
(
しゆだ
)
の
娘
(
むすめ
)
ばかり
入学
(
にふがく
)
して
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
、
100
球突
(
たまつ
)
きだとか、
101
マラソン
競走
(
きやうそう
)
だとか、
102
テニスだとか、
103
ダンスだとか、
104
せう
もない
事
(
こと
)
ばつかり
教
(
をし
)
へられてゐますのよ』
105
松姫
(
まつひめ
)
『ホヽヽヽヽ、
106
ソラ
高竹寺
(
かうちくじ
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
ぢやありますまい、
107
高等
(
かうとう
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
でせう。
108
等
(
とう
)
の
字
(
じ
)
を
竹
(
ちく
)
と
寺
(
じ
)
とに
分
(
わ
)
けてお
読
(
よ
)
みになつたのでせう』
109
お
寅
(
とら
)
『
時
(
とき
)
に
松姫
(
まつひめ
)
さま、
110
魔我彦
(
まがひこ
)
の
結婚
(
けつこん
)
問題
(
もんだい
)
は
何
(
ど
)
ういたしませうかなア。
111
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
今晩
(
こんばん
)
の
間
(
うち
)
にきめたいのですが』
112
松姫
(
まつひめ
)
『サ、
113
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
もこれから
私
(
わたし
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
にお
民
(
たみ
)
さまに
逢
(
あ
)
うて、
114
トツクリと
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
も
承
(
うけたま
)
はり、
115
成
(
な
)
る
可
(
べ
)
く
円満
(
ゑんまん
)
に
話
(
はなし
)
がまとまりますやうに
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
見
(
み
)
ませう』
116
お
寅
(
とら
)
『ソレは
済
(
す
)
みませぬな、
117
何卒
(
なにとぞ
)
貴女
(
あなた
)
の
雄弁
(
ゆうべん
)
と
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
によつて
成功
(
せいこう
)
する
様
(
やう
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
118
松姫
(
まつひめ
)
『ソンなら
是
(
これ
)
からお
民
(
たみ
)
さまのお
居間
(
ゐま
)
へ
伺
(
うかが
)
ひませう』
119
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
細
(
ほそ
)
い
二百段
(
にひやくだん
)
の
階段
(
きざはし
)
を
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
120
お
寅
(
とら
)
もお
菊
(
きく
)
も
松姫
(
まつひめ
)
の
後
(
あと
)
からついて
来
(
く
)
る。
121
松姫
(
まつひめ
)
はスツと
炊事場
(
すゐじば
)
の
隣室
(
りんしつ
)
、
122
お
民
(
たみ
)
の
寝間
(
ねま
)
を
指
(
さ
)
して
吹雪
(
ふぶき
)
をぬひつつ
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
123
お
寅
(
とら
)
は
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ると、
124
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
125
旅装束
(
たびしやうぞく
)
をしたまま
打倒
(
うちたふ
)
れてゐる。
126
お
寅
(
とら
)
『コレヤまあ
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だいなア、
127
コレ
蠑
(
い
)
さま、
128
何
(
なに
)
こんな
所
(
ところ
)
に
厳
(
いか
)
めしい
装束
(
しやうぞく
)
をして
倒
(
たふ
)
れてゐるのだい。
129
アーア
魔我彦
(
まがひこ
)
は
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つたのだい。
130
番犬
(
ばんけん
)
を
仰
(
おほ
)
せつけておくのに
雪
(
ゆき
)
の
降
(
ふ
)
るのに、
131
のそのそと
夜歩
(
よある
)
きをしてをると
見
(
み
)
える。
132
困
(
こま
)
つた
男
(
をとこ
)
だな、
133
コレお
菊
(
きく
)
、
134
水
(
みづ
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
い』
135
お
菊
(
きく
)
『
水
(
みづ
)
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
いといつたつて、
136
下
(
した
)
まで
汲
(
く
)
みに
下
(
お
)
りなくちや
一滴
(
ひとしづく
)
もあれやしないわ。
137
ソレよりも
鼻
(
はな
)
をつまんでおやり、
138
そしたら
屹度
(
きつと
)
気
(
き
)
がつくわ』
139
お
寅
(
とら
)
は
合点
(
がつてん
)
だと
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
鼻
(
はな
)
を
例
(
れい
)
の
如
(
ごと
)
くグツと
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
で
捻
(
ね
)
ぢ、
140
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
で
背
(
せな
)
を
三
(
みつ
)
つ
四
(
よ
)
つ
喰
(
くら
)
はした。
141
蠑螈別
(
いもりわけ
)
はハツと
気
(
き
)
がつき、
142
蠑螈
(
いもり
)
『お
民
(
たみ
)
、
143
ヨウ
助
(
たす
)
けて
呉
(
く
)
れた。
144
到頭
(
たうとう
)
走
(
はし
)
る
最中
(
さいちう
)
、
145
蹴
(
け
)
つまづいて、
146
ひどい
事
(
こと
)
だつた。
147
もうスツテの
事
(
こと
)
で
幽冥
(
いうめい
)
旅行
(
りよかう
)
をやるところだつた。
148
お
寅
(
とら
)
の
奴
(
やつ
)
追
(
お
)
ひかけて
来
(
き
)
やがつて………』
149
お
寅
(
とら
)
はグツと
胸倉
(
むなぐら
)
を
握
(
と
)
り、
150
お寅
『コラ
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
151
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふとるのだい。
152
お
民
(
たみ
)
が
何
(
ど
)
うしたと
云
(
い
)
ふのだいなア』
153
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
目
(
め
)
を
見
(
み
)
ひらけば、
154
閻魔
(
えんま
)
が
駄羅助
(
だらすけ
)
を
舐
(
ねぶ
)
つたやうな
顔
(
かほ
)
してブルブル
震
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
らお
寅
(
とら
)
が
胸倉
(
むなぐら
)
をとり、
155
歯
(
は
)
をくひしめて
睨
(
にら
)
んでゐる。
156
蠑螈
(
いもり
)
『ナニ
一寸
(
ちよつと
)
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たのだ。
157
ナヽヽヽヽナンでもない、
158
そこ
放
(
はな
)
してくれ、
159
苦
(
くる
)
しい、
160
苦
(
くる
)
しい
哩
(
わい
)
』
161
お
寅
(
とら
)
『たいさうな
脚装束
(
あししやうぞく
)
をして
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くつもりだい』
162
蠑螈
(
いもり
)
『ナニ
一寸
(
ちよつと
)
松姫
(
まつひめ
)
さまに
逢
(
あ
)
ひたいと
思
(
おも
)
つて』
163
お
寅
(
とら
)
『
松姫
(
まつひめ
)
さまとこへ
行
(
ゆ
)
くのに
旅装束
(
たびしやうぞく
)
をして………
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だいなア。
164
些
(
ちつと
)
怪
(
あや
)
しいぢやありませぬか』
165
蠑螈
(
いもり
)
『ナニ
一寸
(
ちよつと
)
大広間
(
おほひろま
)
まで
御
(
お
)
礼
(
れい
)
に
行
(
い
)
つて
来
(
く
)
るつもりだ』
166
お
寅
(
とら
)
『
此
(
この
)
雪
(
ゆき
)
の
降
(
ふ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに
今日
(
けふ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
行
(
ゆ
)
く
必要
(
ひつえう
)
がありますか。
167
アンマリ
馬鹿
(
ばか
)
にしなさるな、
168
人
(
ひと
)
を
盲
(
めくら
)
にして……』
169
蠑螈
(
いもり
)
『ナニ
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
つて
居
(
ゐ
)
るから、
170
下駄
(
げた
)
の
歯
(
は
)
に
雪
(
ゆき
)
がつまつてこけると
思
(
おも
)
つて、
171
草鞋
(
わらぢ
)
をはいたのだ』
172
お
寅
(
とら
)
『
五間
(
ごけん
)
や
六間
(
ろくけん
)
の
距離
(
きより
)
よりない
大広間
(
おほひろま
)
へ
行
(
ゆ
)
くのに
大変
(
たいへん
)
な
旅装束
(
たびしやうぞく
)
すると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますかい。
173
しかも
御
(
ご
)
叮嚀
(
ていねい
)
に
蓑笠
(
みのかさ
)
をかぶり、
174
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だいなア。
175
お
前
(
まへ
)
さまの
行
(
ゆ
)
く
処
(
ところ
)
は
外
(
ほか
)
にあるのだらう』
176
蠑螈
(
いもり
)
『ウン
外
(
ほか
)
にある、
177
笠松
(
かさまつ
)
の
根元
(
ねもと
)
の
御
(
ご
)
神木
(
しんぼく
)
の
傍
(
はた
)
まで
一寸
(
ちよつと
)
御
(
お
)
礼
(
れい
)
に
行
(
ゆ
)
くのだよ』
178
お
寅
(
とら
)
『あまり
馬鹿
(
ばか
)
になさると、
179
鼻
(
はな
)
を
捩
(
ねぢ
)
ますぜ』
180
蠑螈
(
いもり
)
『イヤ
鼻
(
はな
)
ばつかりは
御免
(
ごめん
)
だ』
181
お
寅
(
とら
)
『そんなら、
182
つめつて
上
(
あ
)
げようかい』
183
蠑螈
(
いもり
)
『イヤア
此
(
こ
)
の
冷
(
つめ
)
たいのに
抓
(
つめ
)
るのは
御免
(
ごめん
)
だ。
184
お
寅
(
とら
)
、
185
モウ
怺
(
こら
)
へてくれ。
186
もう
何処
(
どこ
)
へも
行
(
ゆ
)
きはせぬから』
187
お
寅
(
とら
)
『コレ
兵六玉
(
ひやうろくだま
)
、
188
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
を
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ、
189
これでも
浮木
(
うきき
)
の
村
(
むら
)
の
白浪
(
しらなみ
)
女
(
をんな
)
丑寅
(
うしとら
)
さまといつたら
誰
(
たれ
)
知
(
し
)
らぬものもない
姐
(
ねえ
)
さまだぞ。
190
此
(
この
)
姐
(
ねい
)
さまの
目
(
め
)
を
晦
(
くら
)
まさうと
思
(
おも
)
つたつて、
191
野郎
(
やらう
)
の
力
(
ちから
)
でくらまさるるものか、
192
サ
綺麗
(
きれい
)
薩張
(
さつぱ
)
りと
白状
(
はくじやう
)
すればよし、
193
白状
(
はくじやう
)
せぬに
於
(
おい
)
ては、
194
可愛
(
かあい
)
さあまつて
憎
(
にく
)
さが
百倍
(
ひやくばい
)
ひねりつぶしてやるぞ』
195
蠑螈
(
いもり
)
『
実
(
じつ
)
はエーンその
実
(
じつ
)
は………
実
(
じつ
)
はやつぱり
実
(
じつ
)
だ。
196
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
へといつたつて、
197
胸倉
(
むなぐら
)
とつてゐては
息
(
いき
)
が
苦
(
くる
)
しくつて
云
(
い
)
へはせぬぢやないか。
198
はなせ はなせ』
199
お
寅
(
とら
)
『そんなら
放
(
はな
)
すから、
200
薩張
(
さつぱ
)
り
白状
(
はくじやう
)
せ、
201
お
前
(
まへ
)
はお
民
(
たみ
)
と
今晩
(
こんばん
)
駆落
(
かけお
)
ちするつもりぢやろ。
202
お
民
(
たみ
)
は
野口
(
のぐち
)
の
森
(
もり
)
辺
(
あた
)
りに
待合
(
まちあは
)
して
居
(
ゐ
)
るのだろ』
203
といひ
乍
(
なが
)
ら、
204
胸倉
(
むなぐら
)
を
握
(
にぎ
)
つた
手
(
て
)
をパツとはなした。
205
蠑螈別
(
いもりわけ
)
はスツと
立
(
た
)
つた
途端
(
とたん
)
に
懐
(
ふところ
)
の
小判
(
こばん
)
が、
206
ガタツと
音
(
おと
)
がして
落
(
お
)
ちた。
207
お
寅
(
とら
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
るより
怒
(
いか
)
り
心頭
(
しんとう
)
に
達
(
たつ
)
し、
208
狂気
(
きやうき
)
の
如
(
ごと
)
くなり、
209
お
寅
(
とら
)
『
此
(
こ
)
の
泥坊
(
どろばう
)
奴
(
め
)
、
210
金子
(
かね
)
を
掻浚
(
かつさら
)
へてお
民
(
たみ
)
と
駆落
(
かけおち
)
するつもりだつたのだなア、
211
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て
今
(
いま
)
に
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
らしてやらう』
212
とあわてて
火鉢
(
ひばち
)
につまづき
逆上
(
のぼせ
)
て
空
(
そら
)
ぶつた
身体
(
からだ
)
は
忽
(
たちま
)
ちスツテンドウと
倒
(
たふ
)
れて、
213
柱
(
はしら
)
の
角
(
かど
)
に
額
(
ひたひ
)
をグワンと
打
(
う
)
ち「アイタ」と
云
(
い
)
つたきり、
214
其
(
その
)
場
(
ば
)
にしやがんで
仕舞
(
しま
)
つた。
215
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
手早
(
てばや
)
く
小判
(
こばん
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あ
)
げ
腰
(
こし
)
につけ
直
(
なほ
)
し、
216
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
を
手
(
て
)
に
持
(
も
)
ち、
217
蠑螈
(
いもり
)
『お
寅
(
とら
)
、
218
俺
(
おれ
)
は
寸時
(
しばらく
)
修行
(
しうぎやう
)
に
行
(
い
)
て
来
(
く
)
る
程
(
ほど
)
に
留守
(
るす
)
を
頼
(
たの
)
むぞや。
219
人間
(
にんげん
)
は
老少
(
らうせう
)
不定
(
ふぢやう
)
、
220
会
(
あ
)
ふのは
別
(
わか
)
れの
初
(
はじ
)
めとやら、
221
御縁
(
ごえん
)
があつたら
又
(
また
)
未来
(
みらい
)
で
御
(
お
)
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
りませう。
222
之
(
これ
)
がお
寅
(
とら
)
さまと
別
(
わか
)
れに
際
(
さい
)
しての
形見
(
かたみ
)
だ』
223
といひ
乍
(
なが
)
ら、
224
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
で
頭
(
あたま
)
をコツコツと
打
(
うち
)
たたき「アリヨース」といひ
乍
(
なが
)
ら、
225
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
226
柱
(
はしら
)
に
額
(
ひたひ
)
を
打
(
う
)
つて
気
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなつてゐたお
寅
(
とら
)
は、
227
頭
(
あたま
)
を
叩
(
たた
)
かれた
途端
(
とたん
)
に
気
(
き
)
がつき、
228
面
(
おもて
)
を
上
(
あ
)
げ
屋外
(
をくぐわい
)
を
見
(
み
)
れば、
229
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
下
(
した
)
の
坂
(
さか
)
を
一丁
(
いつちやう
)
許
(
ばか
)
りも
走
(
はし
)
つて
居
(
ゐ
)
るのが、
230
折柄
(
をりから
)
上
(
のぼ
)
る
鋭鎌
(
とがま
)
の
如
(
ごと
)
き
月
(
つき
)
に
照
(
て
)
らされ
見
(
み
)
えてゐる。
231
お
寅
(
とら
)
は
狂気
(
きやうき
)
となり、
232
お
寅
(
とら
)
『おのれ
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
233
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしをつたなア』
234
と
怒
(
いか
)
りの
声
(
こゑ
)
をはり
上
(
あ
)
げ
乍
(
なが
)
ら
裾
(
すそ
)
もあらはに
雪
(
ゆき
)
の
路
(
みち
)
を
こけつ
転
(
まろ
)
びつ
追
(
お
)
つかけて
行
(
ゆ
)
く。
235
○
236
偖
(
さ
)
て
松彦
(
まつひこ
)
は
松姫
(
まつひめ
)
を
始
(
はじ
)
め
万公
(
まんこう
)
、
237
五三公
(
いそこう
)
、
238
アク、
239
タク、
240
テク
等
(
など
)
と
相談
(
さうだん
)
の
上
(
うへ
)
、
241
小北山
(
こぎたやま
)
に
修祓
(
しうばつ
)
を
行
(
おこな
)
ひ、
242
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
を
始
(
はじ
)
め
三五教
(
あななひけう
)
を
守
(
まも
)
ります
天地
(
あめつち
)
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
を
一々
(
いちいち
)
鎮祭
(
ちんさい
)
し、
243
松姫
(
まつひめ
)
、
244
お
千代
(
ちよ
)
、
245
お
菊
(
きく
)
並
(
ならび
)
に
受付
(
うけつけ
)
の
文助
(
ぶんすけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
に
真理
(
しんり
)
を
説
(
と
)
きさとし、
246
此
(
この
)
聖場
(
せいぢやう
)
を
清
(
きよ
)
く
正
(
ただ
)
しく
祭
(
まつ
)
らしめおき、
247
松彦
(
まつひこ
)
、
248
万公
(
まんこう
)
、
249
五三公
(
いそこう
)
、
250
アク、
251
タク、
252
テクの
一行
(
いつかう
)
は、
253
小北山
(
こぎたやま
)
を
後
(
あと
)
に
眺
(
なが
)
めて
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
を
指
(
さ
)
して
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めた。
254
因
(
ちなみ
)
に
魔我彦
(
まがひこ
)
はお
民
(
たみ
)
の
此
(
この
)
館
(
やかた
)
を
逃去
(
にげさ
)
つた
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
き
何処迄
(
どこまで
)
も
探
(
さが
)
しあてねばおくものかと、
255
是
(
これ
)
又
(
また
)
尻
(
しり
)
ひつからげ、
256
お
寅
(
とら
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うて
三丁
(
さんちやう
)
許
(
ばか
)
り
距離
(
きより
)
を
保
(
たも
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
257
トントントンと
野口
(
のぐち
)
の
森
(
もり
)
を
目当
(
めあて
)
にかけり
行
(
ゆ
)
く。
258
(
大正一一・一二・一三
旧一〇・二五
外山豊二
録)
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