霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第五章 肱鉄(ひぢてつ)〔一一九五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第2篇 恵の松露 よみ(新仮名遣い):めぐみのしょうろ
章:第5章 肱鉄 よみ(新仮名遣い):ひじてつ 通し章番号:1195
口述日:1922(大正11)年12月11日(旧10月23日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
松彦たちはお寅たちの身魂の因縁話の迷信にあきれていると、一人の娘がやってきて、義理天上日の出神の生き宮である魔我彦に、上義姫が用があるからちょっと来てくれと促した。
別館に居る松姫は、元は高城山のウラナイ教団を率い高姫の片腕として活躍していたあの凄腕の松姫である。三五教に帰順し、玉照彦を奉迎して帰った三五教の殊勲者でもある。
蠑螈別がウラナイ教の残党を集めて小北山に根拠を構えて邪教を宣伝し始めたので、言依別命は松姫に命じてウラナイ教に潜入させた。松姫はたちまち小北山の実権を握り、蠑螈別やお寅たちは表面上は蠑螈別を教祖としていたが、松姫の言にしたがっていた。
魔我彦はかねてから松姫に想いを寄せてあからさまに言い寄っていたが、松姫はわざわざ魔我彦を呼んで、改めてきっぱりと断りを入れた。
魔我彦は、松姫の侍女のお千代にも馬鹿にされ、気分を害して松姫の館を去っていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-02-22 17:09:43 文字数:4180 OBC :rm4505
愛善世界社版:81頁 八幡書店版:第8輯 281頁 修補版: 校定版:85頁 普及版:33頁 初版: ページ備考:
001思(おも)はず酒(さけ)に酔(よ)ひつぶれ
002前後(ぜんご)も知(し)らず喋(しやべ)り立(た)て
003つひ脱線(だつせん)の其(その)挙句(あげく)
004お寅(とら)の前(まへ)でうつかりと
005高姫(たかひめ)恋(こひ)しい恋(こひ)しいと
006云(い)つた言葉(ことば)を聞咎(ききとが)め
007酒(さけ)つぎ居(ゐ)たるお寅(とら)さまは
008烈火(れつくわ)の如(ごと)く憤(いきどほ)り
009胸倉(むなぐら)とつて抑(おさ)へつけ
010前後(ぜんご)も知(し)らぬ正宗(まさむね)の
011肉(にく)の宮(みや)をば打(う)ちたたき
012義理天(ぎりてん)さまの手(て)をかつて
013奥(おく)の一間(ひとま)に連(つ)れ込(こ)んで
014布団(ふとん)の上(うへ)に寝(ね)させおき
015此(この)場(ば)を繕(つくろ)ふ可笑(をか)しさよ
016末代(まつだい)さまと崇(あが)めたる
017松彦(まつひこ)一行(いつかう)此(この)居間(ゐま)の
018乱(みだ)れ果(は)てたる有様(ありさま)を
019眺(なが)めて不審(ふしん)の眉(まゆ)ひそめ
020其(その)入口(いりぐち)に佇(たたず)みて
021魔我彦(まがひこ)さまが棕櫚箒(しゆろばうき)
022持(も)つて掃除(さうぢ)の済(す)む間(あひだ)
023阿呆待(あほま)ちし乍(なが)らやうやうに
024一間(ひとま)に入(い)りて座(ざ)につけば
025隣(となり)に聞(きこ)ゆる呻(うな)り声(ごゑ)
026お寅(とら)婆(ば)さまはひどい奴(やつ)
027高姫(たかひめ)殿(どの)が恋(こひ)しいと
028囈言(うさごと)ばかり並(なら)べ立(た)て
029夢中(むちう)になつて呻(うな)り居(を)る
030お寅(とら)は眥(まなじり)つり上(あ)げて
031面(つら)を膨(ふく)らす折柄(をりから)に
032万公(まんこう)さまが手(て)を組(く)んで
033俄(にはか)に装(よそほ)ふ神懸(かむがか)り
034ウンウンウンウンドスドスン
035一(いつ)尺(しやく)ばかりも飛(と)び上(あが)り
036両手(りやうて)をキチンと胸(むね)に組(く)み
037此(この)方(はう)は耕(たがや)し大神(だいじん)だ
038潮時(しほどき)狙(ねら)つて囁(ささや)けば
039お寅(とら)は吃驚(びつくり)仰天(ぎやうてん)し
040万公(まんこう)さまの肉宮(にくみや)は
041矢張(やつぱ)り耕(たがや)し大神(だいじん)か
042そんなら霊(みたま)の因縁(いんねん)で
043お菊(きく)の婿(むこ)になるお方(かた)
044あゝ有難(ありがた)い有難(ありがた)い
045なぞと頻(しき)りに手(て)を合(あは)せ
046蠑螈別(いもりわけ)の腹立(はらだ)ちを
047ケロリと忘(わす)れたあどけなさ
048松彦(まつひこ)初(はじ)め一同(いちどう)は
049此(この)場(ば)の有様(ありさま)打眺(うちなが)め
050実(げ)に迷信(めいしん)の集団(しふだん)と
051呆(あき)れ果(は)てたる折(をり)もあれ
052一人(ひとり)の娘(むすめ)が現(あら)はれて
053これこれもうし義理(ぎり)天上(てんじやう)
054日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)さま
055上義姫(じやうぎひめ)さまがお前(まへ)さまに
056俄(にはか)に用(よう)が出来(でき)た故(ゆゑ)
057お客(きやく)様(さま)等(ら)に失礼(しつれい)して
058一寸(ちよつと)でよいから来(き)て呉(く)れと
059仰有(おつしや)いましたよ逸早(いちはや)く
060御(お)いでなされと手(て)を支(つか)へ
061話(はな)せば魔我彦(まがひこ)立(た)ち上(あが)り
062皆(みな)さま失礼(しつれい)致(いた)します
063お寅(とら)婆(ば)さまやお菊(きく)さま
064末代(まつだい)様(さま)や皆様(みなさま)を
065大切(たいせつ)にもてなし成(な)されませ
066暫(しばら)くしたら又(また)此処(ここ)へ
067帰(かへ)つて来(き)ますと云(い)ひ乍(なが)ら
068使(つか)ひの娘(むすめ)と諸共(もろとも)に
069離(はな)れの館(やかた)へスタスタと
070肩(かた)怒(いか)らして進(すす)み行(ゆ)く。
071 別(べつ)の館(やかた)には松姫(まつひめ)の居間(ゐま)があり間(ま)は狭(せま)けれど三間作(みまづく)り、072飾(かざ)りもなく白木作(しらきづく)りで小(こ)ザツパリした家(いへ)である。073松姫(まつひめ)は千代(ちよ)と云(い)ふ十二三(じふにさん)の小娘(こむすめ)を小間使(こまづかひ)として此処(ここ)に引籠(ひきこも)りウラナイ教(けう)の実権(じつけん)を握(にぎ)つて居(ゐ)る。074表面(へうめん)からは蠑螈別(いもりわけ)が教祖(けうそ)なれど実力(じつりよく)は此(この)松姫(まつひめ)にあつた。075それ故(ゆゑ)蠑螈別(いもりわけ)もお寅婆(とらばあ)さまも一目(いちもく)を置(お)いて内部(ないぶ)では全部(ぜんぶ)其(その)頤使(いし)に甘(あま)んじて居(ゐ)た。076無論(むろん)此(この)松姫(まつひめ)はもとウラナイ教(けう)の取次(とりつぎ)で高城山(たかしろやま)に教主(けうしゆ)をやつて居(ゐ)た剛(がう)の女(をんな)である。077さうして三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)し玉照彦(たまてるひこ)を奉迎(ほうげい)して帰(かへ)つた殊勲者(しゆくんしや)である。078松姫(まつひめ)は蠑螈別(いもりわけ)一派(いつぱ)がウラナイ教(けう)の残党(ざんたう)を集(あつ)め小北山(こぎたやま)に霊場(れいぢやう)を開(ひら)き邪教(じやけう)を宣伝(せんでん)しウラル教式(けうしき)を盛(さかん)に発揮(はつき)してゐたので、079言依別(ことよりわけの)命(みこと)が特(とく)に松姫(まつひめ)に命(めい)じウラナイ教(けう)に差遣(さしつか)はし、080教理(けうり)を根本(こんぽん)的(てき)に改正(かいせい)せしめむとなし給(たま)うたのである。081それ故(ゆゑ)松姫(まつひめ)は特別(とくべつ)の神力(しんりき)備(そな)はり流石(さすが)の蠑螈別(いもりわけ)も一歩(いつぽ)を譲(ゆづ)り徒(いたづら)に教祖(けうそ)の虚名(きよめい)に甘(あま)んじ、082朝(あさ)から晩(ばん)まで神(かみ)のお出入(でいり)と称(しよう)して酒(さけ)に浸(ひた)り高姫(たかひめ)の行衛(ゆくゑ)を尋(たづ)ね求(もと)めつつ酒(さけ)に酔(よ)つて悶々(もんもん)の情(じやう)を消(け)して居(ゐ)たのである。
083魔我(まが)『上義姫(じやうぎひめ)様(さま)、084今(いま)お千代(ちよ)さまを以(もつ)て私(わたし)をお呼(よ)びなさいましたのは何(なん)の御用(ごよう)で厶(ござ)りますか』
085松姫(まつひめ)『別(べつ)に折入(をりい)つて用(よう)と云(い)ふ事(こと)はありませぬが、086お前(まへ)さま、087私(わたし)の事(こと)を今日(こんにち)限(かぎ)り云(い)はない様(やう)にして貰(もら)はないと困(こま)りますから、088一寸(ちよつと)来(き)て貰(もら)つたのです』
089魔我(まが)『私(わたし)が貴女(あなた)に対(たい)し、090何(なん)ぞお邪魔(じやま)になる事(こと)を申(まをし)ましたか』
091松姫(まつひめ)『貴方(あなた)いつでも私(わたし)に向(むか)つて、092いやらしい事(こと)を仰有(おつしや)るぢやないか。093今日(けふ)迄(まで)一(いち)日(にち)のばしに色々(いろいろ)と云(い)つてお前(まへ)さまの恋(こひ)の鋭鋒(えいほう)を避(さ)けて来(き)ましたが、094今日(けふ)はお前(まへ)さまに、095とつくり云(い)うておかねばならぬ。096今(いま)のお客様(きやくさま)は松彦(まつひこ)様(さま)と云(い)ふお方(かた)でせうがな、097松彦(まつひこ)様(さま)は誰方(どなた)の生宮(いきみや)だと思(おも)つてゐますか』
098魔我(まが)『末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の大神(おほかみ)様(さま)の生宮(いきみや)ぢやありませぬか』
099松姫(まつひめ)『さうでせう。100さうだから末代(まつだい)様(さま)とは何(ど)うしても夫婦(ふうふ)にならねばならぬ因縁(いんねん)があるので、101義理(ぎり)天上(てんじやう)さまは私(わたし)の事(こと)を只今(ただいま)限(かぎ)りスツパリと諦(あきら)めて貰(もら)ひ度(た)いのだ』
102魔我(まが)『昔(むかし)の神(かみ)様(さま)は末代(まつだい)さまと上義姫(じやうぎひめ)さまと夫婦(ふうふ)だつたでせう。103然(しか)し乍(なが)ら今日(けふ)は霊(みたま)とお成(な)り遊(あそ)ばし肉(にく)の宮(みや)が違(ちが)つて居(を)るのだから貴女(あなた)と私(わたし)と夫婦(ふうふ)になつた処(ところ)で滅多(めつた)に罰(ばち)は当(あた)りますまい。104何(なん)と仰有(おつしや)つても私(わたし)は是(これ)まで影(かげ)になり日向(ひなた)になり苦労(くらう)をして来(き)たのだから、105藪(やぶ)から棒(ぼう)をつき出(だ)した様(やう)に、106そんな事(こと)を仰有(おつしや)つても仲々(なかなか)承知(しようち)致(いた)しませぬぞや』
107松姫(まつひめ)『これ義理(ぎり)天上(てんじやう)さま、108影(かげ)になり日向(ひなた)になり私(わたし)のために尽(つく)したとは、109どんな事(こと)をして下(くだ)さつたの。110お礼(れい)も申(まを)さねばなりませぬから一寸(ちよつと)聞(き)かして下(くだ)さい』
111魔我(まが)『義理(ぎり)天上(てんじやう)の生宮(いきみや)だけあつて私(わたし)は義理固(ぎりがた)いものですよ。112お前(まへ)さまが三五教(あななひけう)であり乍(なが)ら、113うまく化(ば)けて這入(はい)つて厶(ござ)つたのは百(ひやく)も千(せん)も私(わたし)は承知(しようち)してゐるのだ。114蠑螈別(いもりわけ)さまも「彼奴(あいつ)あ怪(あや)しい、115ヒヨツとしたら爆裂弾(ばくれつだん)となつて来(き)たのだらうから酒(さけ)にでも酔(よ)ひ潰(つぶ)して片(かた)づけてやらうか」と、116お寅(とら)婆(ば)アさまと私(わたし)と三(さん)人(にん)の処(ところ)でソツと相談(さうだん)をなさつた事(こと)がある。117それでも此(こ)の魔我彦(まがひこ)はお前(まへ)さまが可愛(かあい)いものだから、118何(なん)とか云(い)つて助(たす)けておけば否応(いやおう)なしにウンと云(い)ふだらうと思(おも)つたものだからいろいろと弁解(べんかい)してヤツとの事(こと)に蠑螈別(いもりわけ)やあのえぐいお寅婆(とらばあ)さまを納得(なつとく)させ、119今(いま)ではお前(まへ)さまがウラナイ教(けう)第一(だいいち)の権威者(けんゐしや)となり、120蠑螈別(いもりわけ)だつてお寅(とら)さまだつて貴方(あなた)を内証(ないしよう)で先生(せんせい)と仰(あふ)ぎ、121何事(なにごと)も皆(みな)貴女(あなた)の神勅(しんちよく)を受(う)けて処置(しよち)する様(やう)にならしやつたのも皆(みな)魔我彦(まがひこ)が斡旋(あつせん)の功(こう)で厶(ござ)りますよ。122此(この)魔我彦(まがひこ)が居(ゐ)なかつたら貴女(あなた)の生命(いのち)は、123とうの昔(むかし)になくなつてゐるのだ。124さア之(これ)でもいやと仰有(おつしや)いますか。125松彦(まつひこ)様(さま)が成程(なるほど)末代(まつだい)日(ひ)の王(わう)様(さま)で厶(ござ)りませう。126然(しか)し乍(なが)らそれは霊(みたま)の御(ご)夫婦(ふうふ)、127私(わたし)と貴女(あなた)は肉体(にくたい)の夫婦(ふうふ)の縁(えん)を結(むす)んで頂(いただ)かねば此(この)魔我彦(まがひこ)の男(をとこ)が立(た)ちませぬ。128さあキツパリと返答(へんたふ)を聞(き)かして下(くだ)さい。129返答(へんたふ)によつては此(この)魔我彦(まがひこ)にも考(かんが)へがありますから』
130松姫(まつひめ)『ホヽヽヽヽ考(かんが)へがあるとは如何(どう)しようと云(い)ふの。131お前(まへ)さまに考(かんが)へがあれば此方(こちら)にも亦(また)考(かんが)へがある。132サア其(その)考(かんが)へを聞(き)かして貰(もら)ひませう』
133 魔我彦(まがひこ)は言葉(ことば)につまり、
134魔我(まが)『エ…………其(その)考(かんがへ)と云(い)ふのは即(すなは)ち感慨(かんがい)無量(むりやう)だと云(い)ふのです』
135松姫(まつひめ)『ホヽヽヽヽ感慨(かんがい)無量(むりやう)が如何(どう)したと云(い)ふの。136可笑(をか)しい事(こと)を仰有(おつしや)るぢや有(あり)ませぬか』
137魔我(まが)『こんな問答(もんだふ)はぬきにして手取(てつと)り早(ばや)く条約(でうやく)成立(せいりつ)をさして下(くだ)さいな』
138松姫(まつひめ)『何(なん)の条約(でうやく)です。139治外(ちぐわい)法権(はふけん)、140内地(ないち)雑居(ざつきよ)、141条約(でうやく)改正(かいせい)、142機会(きくわい)均等(きんとう)の流行(はや)る世(よ)の中(なか)窮屈(きうくつ)な条約(でうやく)は結(むす)び度(た)くはありませぬ。143総(すべ)て国家(こくか)でも相互(さうご)の間(あひだ)に危険(きけん)が迫(せま)つた時(とき)に条約(でうやく)が成立(せいりつ)するものだ。144天津(てんしん)条約(でうやく)だとて、145華府(くわふ)会議(くわいぎ)の条約(でうやく)だとて、146決(けつ)して天下(てんか)太平(たいへい)のために結(むす)ばれたのぢやありませぬ。147貴方(あなた)と私(わたし)との間(あひだ)に別(べつ)に危険(きけん)の要素(えうそ)が含(ふく)まれて居(ゐ)るのぢやなし、148何(なん)の為(ため)の条約(でうやく)ですか。149又(また)其(その)条文(でうぶん)の趣(おもむき)は何(ど)んな事(こと)が問題(もんだい)になつて居(を)りますか。150それを聞(き)いた上(うへ)でなければ、151さうやすやすと条約(でうやく)締結(ていけつ)批准(ひじゆん)交換(かうくわん)も出来(でき)ぬぢやありませぬか』
152魔我(まが)『貴女(あなた)の仰有(おつしや)る条約(でうやく)の条(でう)と私(わたし)の仰有(おつしや)る情約(じやうやく)の情(じやう)とは情(じやう)に於(おい)て天地(てんち)霄壌(せうじやう)の相違(さうゐ)があります。153貴女(あなた)の条(でう)はスヂと云(い)ふ字(じ)、154私(わたくし)の情(じやう)は青(あを)い心(こころ)と云(い)ふ情(じやう)ですよ』
155松姫(まつひめ)『上義姫(じやうぎひめ)の上(じやう)とは違(ちが)ひますな』
156魔我(まが)『そりや全然(ぜんぜん)正反対(せいはんたい)です』
157松姫(まつひめ)『肝腎(かんじん)の条(でう)が正反対(せいはんたい)なれば条約(でうやく)したつて成立(せいりつ)せぬぢやありませぬか。158無条件(むでうけん)否(いな)無情漢(むじやうかん)だと思(おも)はずに、159こんな提案(ていあん)は速(すみやか)に撤回(てつくわい)して下(くだ)さい。160末代(まつだい)日(ひ)の王(わう)様(さま)が今(いま)にお越(こ)しになつたら叱(しか)られますからな。161ホヽヽヽヽ、162あの末代(まつだい)さまは何(ど)うして厶(ござ)るのだらう。163エーじれつたい。164好(す)きは来(きた)らず嫌(いや)は来(きた)る、165本当(ほんたう)に世(よ)の中(なか)は思(おも)ふ様(やう)には行(ゆ)かぬものだわ。166これ千代(ちよ)さま、167お前(まへ)御(ご)苦労(くらう)だが早(はや)く末代(まつだい)さまに別館(べつくわん)へ来(き)て下(くだ)さる様(やう)お招(まね)き申(まを)して来(き)て下(くだ)さい』
168千代(ちよ)『はい、169只今(ただいま)行(い)つて参(まゐ)ります』
170魔我(まが)『これ、171お千代(ちよ)さま、172一寸(ちよつと)待(ま)つてくれ、173今(いま)行(い)つて貰(もら)つては大(おほい)に困(こま)る。174行(い)つてもいい様(やう)になつたら此(この)義理(ぎり)天上(てんじやう)さまが指図(さしづ)をするから』
175千代(ちよ)『いえいえ、176私(わたし)は魔我彦(まがひこ)さまの召使(めしつか)ひぢやありませぬ。177上義姫(じやうぎひめ)様(さま)の家来(けらい)ですから貴方(あなた)の仰有(おつしや)る事(こと)は聞(き)く義務(ぎむ)はありませぬ。178私(わたし)は御(ご)主人(しゆじん)様(さま)に全権(ぜんけん)委員(ゐゐん)を任(まか)されたのですから、179自分(じぶん)の権利(けんり)を執行(しつかう)すれば宜(い)いのです。180阿呆(あはう)の天上(てんじやう)さま、181大(おほ)きに憚(はばか)りさま』
182と云(い)ひ乍(なが)らツツと立(た)ち上(あが)り左(ひだり)の足(あし)でポンと畳(たたみ)を脅(おびや)かしスタスタと表(おもて)へ出(で)て行(ゆ)かうとする。
183魔我(まが)『こりやこりやお千代(ちよ)殿(どの)、184何故(なぜ)長上(ちやうじやう)の云(い)ふ事(こと)を聞(きき)ませぬか。185子供(こども)の癖(くせ)に我(が)の強(つよ)い』
186お千代(ちよ)『師(し)の君(きみ)の厳(いづ)の言葉(ことば)を如何(いか)にして
187魔我彦(まがひこ)さまにまげらるべしやは。
188村肝(むらきも)の心(こころ)も腰(こし)も魔我彦(まがひこ)が
189恋(こひ)の魔神(まがみ)にとらはれてゐる。
190義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)神(かみ)とはおとましや
191赤(あか)い顔(かほ)して焔(ほのほ)吹(ふ)きつつ』
192魔我(まが)『こりやお千代(ちよ)、193そりや何(なに)を吐(ぬか)す。194義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)神(かみ)を何(なん)と心得(こころえ)て居(ゐ)るか。195世界(せかい)の根本(こつぽん)の根本(こつぽん)から何(なに)もかも知(し)りぬいた誠(まこと)一(ひと)つの大和(やまと)魂(だましひ)の生粋(きつすゐ)の生宮(いきみや)さまだぞ』
196千代(ちよ)『ホヽヽヽヽ不義理(ふぎり)の天上(てんじやう)、197上義姫(じやうぎひめ)様(さま)に弾(はじ)かれて目(め)から火(ひ)の出(で)の神(かみ)様(さま)、198心(こころ)も腰(こし)も曲(まが)つた魔我彦(まがひこ)様(さま)、199よう、200まアそんな馬鹿(ばか)な事(こと)を仰有(おつしや)られたものですわ』
201松姫(まつひめ)『相生(あひおひ)の松(まつ)の緑(みどり)も高砂(たかさご)の
202幹(みき)の根元(ねもと)に荒浪(あらなみ)がうつ。
203相生(あひおひ)の松(まつ)の緑(みどり)は千代(ちよ)かけて
204栄(さか)え栄(さか)えて曲(まが)る事(こと)なし。
205魔我彦(まがひこ)が何程(なにほど)日(ひ)の出(で)の神(かみ)だとて
206此(この)松(まつ)のみは影(かげ)もささせぬ。
207松彦(まつひこ)と松姫(まつひめ)二人(ふたり)並(なら)ばして
208松(まつ)の神世(かみよ)の千代(ちよ)を祝(ことほ)ぐ』
209魔我(まが)『今日(けふ)か明日(あす)か、何時(いつ)吉日(きちにち)が来(きた)るやと
210まつ甲斐(かひ)もなき魔我彦(まがひこ)の胸(むね)。
211さり乍(なが)ら日(ひ)の出(で)の神(かみ)の魔我彦(まがひこ)は
212理(り)を非(ひ)に曲(ま)げても通(とほ)さなおかぬ。
213義理(ぎり)と云(い)ふ事(こと)を知(し)るなら上義姫(じやうぎひめ)
214吾(わが)心根(こころね)もちとは汲(く)ませよ』
215松姫(まつひめ)『山(やま)の井(ゐ)の底(そこ)にも知(し)れぬ水鏡(みづかがみ)
216汲(く)みとり難(がた)きふり釣瓶(つるべ)かな』
217魔我(まが)『ふり釣瓶(つるべ)いかにピンピン覆(かへ)るとも
218汲(く)んで見(み)ようぞ天上(てんじやう)車井(くるまゐ)』
219松姫(まつひめ)『義理(ぎり)天上(てんじやう)車(くるま)に釣瓶(つるべ)はかかるとも
220片方(かたはう)は汲(く)めど片方(かたはう)からから。
221並(なら)べては少(すこ)しも汲(く)めぬ山(やま)の井(ゐ)の
222釣瓶(つるべ)を如何(いか)に濡(ぬ)らす由(よし)なし』
223千代(ちよ)『義理(ぎり)天上(てんじやう)恋(こひ)の破(やぶ)れた悲(かな)しさに
224首(くび)をつる瓶(べ)とおなり遊(あそ)ばせ。
225ホヽヽヽヽ釣瓶(つるべ)おろしにかけられて
226沈(しづ)み給(たま)へり恋(こひ)の深井(ふかゐ)に』
227魔我(まが)『まだ年(とし)も行(ゆ)かぬ癖(くせ)して魔我彦(まがひこ)に
228何(なに)をつるつる水臭(みづくさ)い事(こと)云(い)ふ』
229千代(ちよ)『如何(どう)しても末代(まつだい)さまの御(おん)前(まへ)に
230行(ゆ)かねばならぬ魔我(まが)左様(さやう)なら』
231魔我(まが)『まて暫(しば)し、そんな事(こと)なら俺(おれ)が行(ゆ)く
232子供(こども)の飛(と)び出(だ)す幕(まく)でないぞや』
233松姫(まつひめ)『義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出(で)の神(かみ)の生宮(いきみや)に
234今日(けふ)は改(あらた)め一言(ひとこと)申(まを)す。
235松彦(まつひこ)は此(この)松姫(まつひめ)がその昔(むかし)
236相知(あひし)り合(あ)うた珍(うづ)の恋人(こひびと)。
237恋人(こひびと)と聞(き)いて驚(おどろ)き給(たま)ふまじ
238神(かみ)の許(ゆる)せし夫婦(ふうふ)なりせば』
239魔我(まが)『何(なん)とまア悪性(あくしやう)な事(こと)になつて来(き)た
240こんな事(こと)なら救(すく)ふぢやなかつたに』
241松姫(まつひめ)『村肝(むらきも)の心(こころ)の底(そこ)ぞ知(し)られける
242枉(まが)のすくひし魔我彦(まがひこ)司(つかさ)を』
243 魔我彦(まがひこ)は双手(もろて)を組(く)み、
244魔我彦『エーエ、245雪隠(せんち)の火事(くわじ)だ』
246松姫(まつひめ)『オホヽヽヽ』
247千代(ちよ)『イヒヽヽヽ、248阿呆(あはう)阿呆(あはう)阿呆(あはう)』
249魔我(まが)『エー、250コメツチヨの癖(くせ)に八釜(やかま)しいわい。251キヽヽヽヽ気色(きしよく)が悪(わる)いわい。252サツパリ杓子(しやくし)だ。253源助(げんすけ)だ、254アーア』
255(大正一一・一二・一一 旧一〇・二三 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→