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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第45巻(申の巻)
序文
総説
第1篇 小北の特使
第1章 松風
第2章 神木
第3章 大根蕪
第4章 霊の淫念
第2篇 恵の松露
第5章 肱鉄
第6章 唖忿
第7章 相生の松
第8章 小蝶
第9章 賞詞
第3篇 裏名異審判
第10章 棚卸志
第11章 仲裁
第12章 喜苔歌
第13章 五三の月
第4篇 虎風獣雨
第14章 三昧経
第15章 曲角狸止
第16章 雨露月
第17章 万公月
第18章 玉則姫
第19章 吹雪
第20章 蛙行列
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第45巻(申の巻)
> 第1篇 小北の特使 > 第4章 霊の淫念
<<< 大根蕪
(B)
(N)
肱鉄 >>>
第四章
霊
(
みたま
)
の
淫念
(
いんねん
)
〔一一九四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
篇:
第1篇 小北の特使
よみ(新仮名遣い):
こぎたのとくし
章:
第4章 霊の淫念
よみ(新仮名遣い):
みたまのいんねん
通し章番号:
1194
口述日:
1922(大正11)年12月11日(旧10月23日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月12日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
蠑螈別は数多の神が自分の体に出入りするので、神様にお神酒を祀るのだと言って、朝から晩まで酒盛りをしていた。
お寅に酌をさせながら高姫を思ったり、奥の間に居る松姫をお酌に呼ばせようとしたりして、お寅と喧嘩になってしまう。
お寅は嫉妬のあまり、松彦を受け付けに待たせていることも忘れて蠑螈別を押さえつけ、徳利や盃はめちゃめちゃに砕けた。
魔我彦がやってきてお寅をたしなめるが、お寅は蠑螈別に思われてウラナイ教に入ってやったのに、その恩も忘れてほかの女に色目を使うと怒って、ますます蠑螈別を押さえつけ殴りつける。蠑螈別は助けてくれと叫ぶ。
文助がやってきて、教祖が呼び戻した末代日の王天の神の身魂という松彦が、受け付けでしびれを切らしていると注進する。お寅は蠑螈別を離し、捨て台詞を残して受付に帰って行く。
魔我彦はこんな醜態を松彦たちに見られてはたいへんと蠑螈別を奥へ引っ張って行って寝かせてしまった。お寅は松彦一行を導き、この場の荒れた様子を猫のせいにして魔我彦に片付けさせた。
お寅は、奥にいる松姫は上義姫の身魂であり、松彦と夫婦となって活動する因縁なのだという。松彦は迷惑な話だと居住まいを正している。万公は偽の神がかりをやって、自分は耕し大神だと自称する。
奥からは蠑螈別が、お寅をからかったために大変な目にあった、高姫がなつかしいとうわごとを言っているのが聞こえてきた。お寅は病気の信者に悪霊がかかって、教祖の声色でひとをだますのだとごまかしている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-02-22 17:22:21
OBC :
rm4504
愛善世界社版:
54頁
八幡書店版:
第8輯 272頁
修補版:
校定版:
58頁
普及版:
23頁
初版:
ページ備考:
001
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
酒盛
(
さかもり
)
の
002
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
003
数多
(
あまた
)
の
神
(
かみ
)
の
出入
(
しゆつにふ
)
に
004
酒
(
くし
)
を
祀
(
まつ
)
ると
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
005
頬
(
ほほ
)
べた
迄
(
まで
)
も
赤
(
あか
)
くして
006
臭
(
くさ
)
い
息
(
いき
)
をば
吹
(
ふき
)
まくり
007
侍者
(
じしや
)
の
鼻
(
はな
)
をばゆがませつ
008
腋臭
(
わきが
)
のかほり
紛々
(
ぷんぷん
)
と
009
あたりの
空気
(
くうき
)
を
改悪
(
かいあく
)
し
010
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
011
呂律
(
ろれつ
)
もまはらぬ
舌
(
した
)
の
根
(
ね
)
に
012
ころばせ
乍
(
なが
)
ら
朝
(
あさ
)
の
中
(
うち
)
013
ウラナイ
教
(
けう
)
の
神言
(
かみごと
)
を
014
汗
(
あせ
)
をタラタラ
絞
(
しぼ
)
りつつ
015
唱
(
とな
)
へて
又
(
また
)
もや
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
016
うましき
酒
(
さけ
)
を
献
(
たてまつ
)
り
017
づぶ
六
(
ろく
)
サンになつた
上
(
うへ
)
018
真昼
(
まひる
)
が
来
(
く
)
れば
神前
(
しんぜん
)
に
019
足許
(
あしもと
)
怪
(
あや
)
しく
進
(
すす
)
みより
020
天
(
てん
)
にまします
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
よ
021
御国
(
みくに
)
を
来
(
きた
)
らせ
玉
(
たま
)
へかし
022
天
(
てん
)
になります
其
(
その
)
如
(
ごと
)
く
023
地
(
ち
)
にも
天国
(
てんごく
)
建
(
た
)
てさせよ
024
アーメン、ソーメン、トコロテン
025
ウドンに
蕎麦
(
そば
)
に
焼芋
(
やきいも
)
の
026
肴
(
さかな
)
をドツサリ
前
(
まへ
)
に
据
(
す
)
ゑ
027
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
光来
(
くわうらい
)
028
いと
叮嚀
(
ていねい
)
に
歓迎
(
くわんげい
)
し
029
絶対
(
ぜつたい
)
的
(
てき
)
に
博愛
(
はくあい
)
の
030
趣旨
(
しゆし
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
させ
乍
(
なが
)
ら
031
夕
(
ゆふ
)
べになれば
正宗
(
まさむね
)
の
032
酒
(
さけ
)
にはあらぬ
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
033
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
数珠
(
じゆず
)
をもみ
034
南無
(
なむ
)
阿弥陀仏
(
あみだぶつ
)
南無
(
なむ
)
阿弥陀
(
あみだ
)
035
般若
(
はんにや
)
心経
(
しんぎやう
)
波羅蜜
(
はらみつ
)
経
(
きやう
)
036
節面白
(
ふしおもしろ
)
く
唱
(
とな
)
へ
上
(
あ
)
げ
037
三教
(
さんけう
)
合同
(
がふどう
)
の
御
(
ご
)
本尊
(
ほんぞん
)
038
床次
(
とこなみ
)
さまの
後
(
あと
)
をつぎ
039
天晴
(
あつぱ
)
れ
教主
(
けうしゆ
)
と
成
(
な
)
りすまし
040
酒
(
さけ
)
の
機嫌
(
きげん
)
でドラ
声
(
ごゑ
)
を
041
張上
(
はりあ
)
げ
唸
(
うな
)
るお
寅
(
とら
)
さま
042
小皺
(
こじわ
)
のよつた
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
して
043
燗徳利
(
かんどつくり
)
をひん
握
(
にぎ
)
り
044
朝顔型
(
あさがおがた
)
の
盃
(
さかづき
)
を
045
前
(
まへ
)
につき
出
(
だ
)
し
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うし
046
お
酒
(
さけ
)
の
功徳
(
くどく
)
も
大広木
(
おほひろき
)
047
正宗
(
まさむね
)
さまよコレちよいと
048
お
過
(
す
)
ごしあれと
差出
(
さしだ
)
せば
049
酒
(
さけ
)
のタンクの
正宗
(
まさむね
)
は
050
御
(
ご
)
機嫌斜
(
きげんななめ
)
ならずして
051
お
寅
(
とら
)
よお
前
(
まへ
)
は
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
052
年
(
とし
)
はとつても
姥桜
(
うばざくら
)
053
まだどこやらに
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
が
054
プンプン
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうだ
055
お
前
(
まへ
)
の
優
(
やさ
)
しい
其
(
その
)
目許
(
めもと
)
056
オツトヽヽヽヽヽこぼれます
057
あまり
勢
(
いきほひ
)
が
強
(
つよ
)
い
故
(
ゆゑ
)
058
情
(
じやう
)
が
余
(
あま
)
つて
迸
(
ほとばし
)
り
059
一張羅
(
いつちやうら
)
のお
小袖
(
こそで
)
が
060
サツパリ
わや
になりました
061
さは
去
(
さ
)
り
乍
(
なが
)
ら
之
(
これ
)
も
亦
(
また
)
062
正宗
(
まさむね
)
さまの
御
(
おん
)
酒
(
さけ
)
に
063
よごされたりと
見直
(
みなほ
)
せば
064
却
(
かへつ
)
て
私
(
わたし
)
は
有難
(
ありがた
)
い
065
可愛
(
かあい
)
いお
方
(
かた
)
が
好
(
す
)
き
好
(
この
)
む
066
霊
(
みたま
)
の
籠
(
こも
)
つた
露
(
つゆ
)
ぢやもの
067
如何
(
どう
)
して
不足
(
ふそく
)
に
思
(
おも
)
ひませう
068
一献
(
いつこん
)
あがれと
徳利
(
とくり
)
を
069
又
(
また
)
もや
前
(
まへ
)
に
突出
(
つきだ
)
せば
070
正宗
(
まさむね
)
さまは
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
り
071
あゝ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
酒
(
さけ
)
と
云
(
い
)
ふ
072
奴
(
やつ
)
程
(
ほど
)
可愛
(
かあい
)
いものはない
073
お
酒
(
さけ
)
が
俺
(
おれ
)
の
生命
(
せいめい
)
だ
074
酒
(
さけ
)
さへあらば
如何
(
いか
)
様
(
やう
)
な
075
ナイスも
嬶
(
かかあ
)
も
要
(
い
)
るものか
076
お
寅
(
とら
)
のさした
盃
(
さかづき
)
は
077
高姫
(
たかひめ
)
さまの
口元
(
くちもと
)
に
078
どことはなしによく
似
(
に
)
とる
079
此
(
この
)
盃
(
さかづき
)
を
唇
(
くちびる
)
に
080
あててキツスをする
時
(
とき
)
は
081
何
(
なん
)
ともいへぬ
味
(
あぢ
)
がする
082
あゝ
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い
083
これ
高姫
(
たかひめ
)
よ
高姫
(
たかひめ
)
よ
084
大
(
おほ
)
けな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
け
乍
(
なが
)
ら
085
ここに
居
(
ゐ
)
ますと
一言
(
ひとこと
)
の
086
なぜ
言問
(
ことと
)
ひをしてくれぬ
087
口
(
くち
)
ばつかりがあつたとて
088
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
089
お
目
(
め
)
にかからな
気
(
き
)
がゆかぬ
090
ホンに
思
(
おも
)
へば
情
(
なさけ
)
ない
091
夢
(
ゆめ
)
の
浮世
(
うきよ
)
といふことは
092
こんなことをば
言
(
い
)
ふのだろ
093
夢
(
ゆめ
)
の
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまと
094
播陽
(
ばんやう
)
さまが
言
(
い
)
ひよつた
095
コレコレ
丑寅
(
うしとら
)
婆
(
ば
)
アさまよ
096
お
前
(
まへ
)
ぢや
根
(
ね
)
つから
気
(
き
)
がゆかぬ
097
大奥
(
おほおく
)
に
居
(
ゐ
)
る
上義姫
(
じやうぎひめ
)
098
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
をば
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て
099
酒
(
さけ
)
の
相手
(
あひて
)
をさしてくれ
100
何
(
なん
)
とはなしに
淋
(
さび
)
しうて
101
そこらが
冷
(
つめ
)
たくなつて
来
(
き
)
た
102
そも
人間
(
にんげん
)
といふ
奴
(
やつ
)
は
103
異性
(
いせい
)
がなくては
面白
(
おもしろ
)
く
104
可笑
(
をか
)
しう
此
(
この
)
世
(
よ
)
が
渡
(
わた
)
れない
105
サアサア
早
(
はや
)
う
上義姫
(
じやうぎひめ
)
106
呼
(
よ
)
んでお
出
(
い
)
でとタダこねる
107
丑寅
(
うしとら
)
婆
(
ば
)
さまはキツとなり
108
口角泡
(
こうかくあわ
)
をとばしつつ
109
団栗
(
どんぐり
)
眼
(
まなこ
)
をむきいだし
110
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
旦那
(
だんな
)
さま
111
私
(
わたし
)
の
前
(
まへ
)
でそんな
事
(
こと
)
112
どこを
押
(
おさ
)
へたら
言
(
い
)
へますか
113
過
(
す
)
ぎし
逢瀬
(
あふせ
)
の
睦言
(
むつごと
)
を
114
最早
(
もはや
)
お
忘
(
わす
)
れなさつたか
115
ホンに
薄情
(
はくじやう
)
なお
前
(
まへ
)
さま
116
私
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
は
年老
(
としよ
)
つて
117
皺苦茶
(
しわくちや
)
婆
(
ば
)
アになつたれど
118
浮木
(
うきき
)
の
村
(
むら
)
の
侠客
(
けふかく
)
で
119
丑寅
(
うしとら
)
さまと
仇名
(
あだな
)
をば
120
取
(
と
)
つたる
女侠客
(
をんなけふかく
)
だ
121
バカになさるも
程
(
ほど
)
がある
122
何程
(
なにほど
)
神
(
かみ
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
123
お
出入
(
でい
)
りなさるか
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
124
さうクレクレと
猫
(
ねこ
)
の
目
(
め
)
の
125
お
変
(
かは
)
り
易
(
やす
)
い
恋衣
(
こひごろも
)
126
破
(
やぶ
)
つて
貰
(
もら
)
つちやたまらない
127
私
(
わたし
)
も
了見
(
れうけん
)
ある
程
(
ほど
)
に
128
覚
(
おぼ
)
えてゐろよと
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
129
松彦
(
まつひこ
)
さまを
受付
(
うけつけ
)
に
130
待
(
ま
)
たしたことを
打忘
(
うちわす
)
れ
131
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
胸倉
(
むなぐら
)
を
132
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
せてグツと
取
(
と
)
り
133
コリヤコリヤ
正宗
(
まさむね
)
大広木
(
おほひろき
)
134
蠑螈別
(
いもりわけ
)
よバカにすな
135
お
寅
(
とら
)
の
腕
(
うで
)
には
骨
(
ほね
)
がある
136
モウ
此
(
この
)
儘
(
まま
)
ですまさぬぞ
137
どうぢやどうぢやと
胸板
(
むないた
)
を
138
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
してもみつぶす
139
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
き
140
顔
(
かほ
)
を
蒼青
(
まつさを
)
にサツと
変
(
か
)
へ
141
アイタタタツタ
待
(
ま
)
つてくれ
142
どうやら
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れさうだ
143
もう
是
(
これ
)
からはスツパリと
144
松姫
(
まつひめ
)
さまの
上義姫
(
じやうぎひめ
)
145
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
をば
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り
146
お
前
(
まへ
)
を
大事
(
だいじ
)
にする
程
(
ほど
)
に
147
放
(
はな
)
せよ
放
(
はな
)
せ
胸倉
(
むなぐら
)
を
148
アイタタタツタ ウンウンウン
149
苦
(
くる
)
しいわいの、コラヤお
寅
(
とら
)
150
許
(
ゆる
)
してくれよと
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はし
151
剛情
(
がうじやう
)
我慢
(
がまん
)
の
正宗
(
まさむね
)
も
152
命
(
いのち
)
惜
(
をし
)
さに
詫入
(
わびい
)
れば
153
呆
(
あき
)
れてこける
燗徳利
(
かんどくり
)
154
盃
(
さかづき
)
までがメチヤメチヤに
155
砕
(
くだ
)
けて
笑
(
わら
)
ふ
面白
(
おもしろ
)
さ
156
ガチヤン ガチヤンと
拍子
(
ひやうし
)
取
(
と
)
り
157
土瓶
(
どびん
)
は
躍
(
をど
)
る
徳利
(
とくり
)
舞
(
ま
)
ふ
158
朝顔型
(
あさがほがた
)
の
盃
(
さかづき
)
は
159
落花
(
らくくわ
)
微塵
(
みぢん
)
となりはてて
160
姿
(
すがた
)
小
(
ちひ
)
さく
数
(
かず
)
多
(
おほ
)
く
161
変化
(
へんげ
)
したるぞ
可笑
(
をか
)
しけれ
162
お
寅
(
とら
)
は
尚
(
なほ
)
も
承知
(
しようち
)
せず
163
コリヤコリヤ
正宗
(
まさむね
)
大広木
(
おほひろき
)
164
口先
(
くちさき
)
ばかりでツベコベと
165
ゴマかしよるか、そんな
事
(
こと
)
166
聞
(
き
)
くよな
婆
(
ばば
)
ぢやない
程
(
ほど
)
に
167
以後
(
いご
)
のみせしめ
今一
(
いまひと
)
つ
168
あの
世
(
よ
)
この
世
(
よ
)
の
境
(
さかひ
)
まで
169
やつてやらねばおかないと
170
鬼
(
おに
)
の
蕨
(
わらび
)
をふり
立
(
た
)
てて
171
悋気
(
りんき
)
の
勢
(
いきほひ
)
凄
(
すさま
)
じく
172
ポカンポカンと
打
(
うち
)
たたく
173
目
(
め
)
を
白黒
(
しろくろ
)
とさせ
乍
(
なが
)
ら
174
アイタタ タツタ コリヤ
許
(
ゆる
)
せ
175
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
と
176
なる
世
(
よ
)
が
来
(
き
)
ても
正宗
(
まさむね
)
は
177
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
を
捨
(
す
)
てはせぬ
178
疑
(
うたがひ
)
はらして
其
(
その
)
手
(
て
)
をば
179
早
(
はや
)
く
放
(
はな
)
してくれぬかい
180
折角
(
せつかく
)
呑
(
の
)
んだ
酒
(
さけ
)
迄
(
まで
)
が
181
早
(
はや
)
遠国
(
ゑんごく
)
へ
出奔
(
しゆつぽん
)
し
182
ゾツと
身
(
み
)
に
沁
(
し
)
む
秋
(
あき
)
の
風
(
かぜ
)
183
冬
(
ふゆ
)
の
薄衣
(
うすぎぬ
)
ブルブルと
184
身体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
した
185
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
186
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ
187
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ
188
願
(
ねが
)
へばお
寅
(
とら
)
はつけ
上
(
あが
)
り
189
今日
(
けふ
)
はどしても
許
(
ゆる
)
しやせぬ
190
松姫
(
まつひめ
)
さまに
涎
(
よだれ
)
くり
191
怪体
(
けたい
)
な
細目
(
ほそめ
)
をむきやがつて
192
私
(
わたし
)
を
盲目
(
めくら
)
にしたぢやないか
193
今日
(
けふ
)
はドツサリ
身
(
み
)
のあぶら
194
絞
(
しぼ
)
つてやらねば
虫
(
むし
)
がいえぬ
195
たかが
男
(
をとこ
)
の
一人
(
ひとり
)
位
(
くらゐ
)
196
殺
(
ころ
)
した
所
(
ところ
)
で
何
(
なに
)
惜
(
をし
)
い
197
観念
(
くわんねん
)
せよと
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
198
怒
(
いか
)
りの
面色
(
めんしよく
)
凄
(
すさま
)
じく
199
何時
(
いつ
)
果
(
は
)
つべしとも
見
(
み
)
えざりし
200
所
(
ところ
)
へスタスタやつて
来
(
く
)
る
201
魔我彦
(
まがひこ
)
さまの
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
202
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
が
203
見
(
み
)
るより
忽
(
たちま
)
ち
仰天
(
ぎやうてん
)
し
204
アツとばかりに
尻餅
(
しりもち
)
を
205
ついたる
様
(
さま
)
の
可笑
(
をか
)
しさよ
206
魔我彦
(
まがひこ
)
漸
(
やうや
)
く
口
(
くち
)
をあけ
207
コリヤコリヤお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまよ
208
正宗
(
まさむね
)
さまの
肉宮
(
にくみや
)
を
209
なぜ
其
(
その
)
様
(
やう
)
に
失礼
(
しつれい
)
な
210
無体
(
むたい
)
なことを
致
(
いた
)
すのか
211
痩
(
やせ
)
てもこけてもウラナイの
212
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
213
神
(
かみ
)
の
出入
(
でいり
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
214
打擲
(
ちやうちやく
)
するとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
215
覿面
(
てきめん
)
に
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
るぞや
216
早
(
はや
)
く
其
(
その
)
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
さんせ
217
言
(
い
)
へばお
寅
(
とら
)
は
目
(
め
)
をすえて
218
コリヤコリヤ
魔我彦
(
まがひこ
)
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
219
訳
(
わけ
)
も
知
(
し
)
らずにツベコベと
220
仲裁
(
ちうさい
)
だてが
気
(
き
)
にくはぬ
221
唐変木
(
たうへんぼく
)
のお
前
(
まへ
)
さまに
222
此
(
この
)
いきさつが
分
(
わか
)
らうか
223
モウ
斯
(
か
)
くなれば
何
(
なに
)
もかも
224
一切
(
いつさい
)
曝露
(
ばくろ
)
して
了
(
しま
)
ふ
225
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
226
正宗
(
まさむね
)
さまに
思
(
おも
)
はれて
227
夜
(
よ
)
は
暖
(
あたたか
)
き
敷蒲団
(
しきぶとん
)
228
恩
(
おん
)
も
知
(
し
)
らずに
此
(
この
)
色魔
(
しきま
)
229
人
(
ひと
)
もあらうに
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
230
御用
(
ごよう
)
を
遊
(
あそ
)
ばす
松姫
(
まつひめ
)
に
231
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
り
二世
(
にせ
)
三世
(
さんせ
)
232
百生
(
ひやくしやう
)
迄
(
まで
)
も
夫婦
(
ふうふ
)
ぞと
233
約束
(
やくそく
)
したる
此
(
この
)
わしを
234
邪魔者
(
じやまもの
)
扱
(
あつかひ
)
にさらす
故
(
ゆゑ
)
235
お
寅
(
とら
)
の
顔
(
かほ
)
が
立
(
た
)
たないと
236
今
(
いま
)
折檻
(
せつかん
)
をするとこぢや
237
子供
(
こども
)
の
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
幕
(
まく
)
でない
238
グヅグヅしてると
飛
(
と
)
ばしづく
239
どこへかかるか
知
(
し
)
れないぞ
240
お
前
(
まへ
)
の
足元
(
あしもと
)
明
(
あか
)
い
内
(
うち
)
241
どこなと
勝手
(
かつて
)
に
逃
(
に
)
げなされ
242
サア
是
(
これ
)
からが
荒料理
(
あられうり
)
243
腹
(
はら
)
わた
迄
(
まで
)
もゑぐり
出
(
だ
)
し
244
大洗濯
(
おほせんたく
)
をしてやらな
245
中々
(
なかなか
)
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
すまい
246
ここらが
百尋
(
ひやくひろ
)
胃袋
(
ゐぶくろ
)
と
247
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
にひつつかみ
248
鷲
(
わし
)
のやうなる
爪
(
つめ
)
たてて
249
引
(
ひつ
)
かきむしるぞ
恐
(
おそ
)
ろしき
250
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
顔
(
かほ
)
しかめ
251
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
の
為体
(
ていたらく
)
252
アイタタ タツタ ウンウンウン
253
苦
(
くる
)
しい
苦
(
くる
)
しい
魔我彦
(
まがひこ
)
よ
254
どうぞ
助
(
たす
)
けてくれぬかい
255
アイタタ タツタ アイタタタ
256
お
寅
(
とら
)
といふ
奴
(
やつ
)
アこれ
程
(
ほど
)
に
257
悋気
(
りんき
)
の
強
(
つよ
)
い
女
(
をんな
)
だと
258
思
(
おも
)
はなかつたあゝ
苦
(
くる
)
しい
259
助
(
たす
)
けてくれえと
声
(
こゑ
)
限
(
かぎ
)
り
260
呼
(
よ
)
ばはり
居
(
ゐ
)
たる
折
(
をり
)
もあれ
261
目
(
め
)
かいの
見
(
み
)
えぬ
文助
(
ぶんすけ
)
が
262
コレコレ
申
(
まを
)
し
教祖
(
けうそ
)
さま
263
あなたがお
呼
(
よ
)
びなさつたる
264
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
265
生宮
(
いきみや
)
さまが
受付
(
うけつけ
)
に
266
しびれ
切
(
き
)
らして
待
(
ま
)
つて
厶
(
ござ
)
る
267
早
(
はや
)
くお
出会
(
であひ
)
なされませ
268
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬがガヤガヤと
269
いと
騒
(
さわ
)
がしい
音
(
おと
)
がする
270
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
いと
仰有
(
おつしや
)
るが
271
頭痛
(
づつう
)
がするのか
但
(
ただ
)
し
又
(
また
)
272
お
肩
(
かた
)
がこるのか
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
273
余
(
あま
)
り
人
(
ひと
)
を
待
(
ま
)
たしては
274
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
になるかも
知
(
し
)
れませぬ
275
目
(
め
)
かいの
見
(
み
)
えぬ
文助
(
ぶんすけ
)
は
276
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
様子
(
やうす
)
を
露
(
つゆ
)
知
(
し
)
らず
277
平気
(
へいき
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
うてゐる
278
お
寅
(
とら
)
はハツと
気
(
き
)
がついて
279
オウオウさうぢやオウさうぢや
280
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
281
此
(
この
)
門口
(
もんぐち
)
に
待
(
ま
)
つて
厶
(
ござ
)
る
282
コリヤコリヤ
正宗
(
まさむね
)
大広木
(
おほひろき
)
283
末代
(
まつだい
)
様
(
さま
)
のお
出
(
い
)
で
故
(
ゆゑ
)
284
今日
(
けふ
)
は
許
(
ゆる
)
しておく
程
(
ほど
)
に
285
モウこれからは
馬鹿
(
ばか
)
なこと
286
したり
言
(
い
)
うたり
致
(
いた
)
したら
287
お
前
(
まへ
)
の
首
(
くび
)
はない
程
(
ほど
)
に
288
覚悟
(
かくご
)
はよいかと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
289
パツと
放
(
はな
)
せば
正宗
(
まさむね
)
は
290
ハツと
一息
(
ひといき
)
鼻汁
(
はな
)
をかみ
291
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ふ
可笑
(
をか
)
しさよ
292
お
寅
(
とら
)
は
尻目
(
しりめ
)
にかけ
乍
(
なが
)
ら
293
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をよそほひつ
294
襟
(
えり
)
をば
直
(
なほ
)
しソロソロと
295
受付
(
うけつけ
)
さして
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
296
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまの
受付
(
うけつけ
)
へ
出
(
で
)
た
後
(
あと
)
で、
297
魔我彦
(
まがひこ
)
は
松彦
(
まつひこ
)
にこんな
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
られては
大変
(
たいへん
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
298
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
へ
寝
(
ね
)
かせて
了
(
しま
)
つた。
299
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
夢現
(
ゆめうつつ
)
になつて、
300
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
呶鳴
(
どな
)
つてゐる。
301
其
(
その
)
間
(
ま
)
にお
寅
(
とら
)
は
松彦
(
まつひこ
)
一行
(
いつかう
)
を
叮嚀
(
ていねい
)
に
導
(
みちび
)
き、
302
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
伴
(
つ
)
れて
来
(
き
)
た。
303
お
寅
(
とら
)
『あゝあ、
304
油断
(
ゆだん
)
のならぬ
悪
(
わる
)
い
猫
(
ねこ
)
奴
(
め
)
が
徳利
(
とつくり
)
をこかす、
305
盃
(
さかづき
)
をふみわる、
306
なんのこつちやいな、
307
エーエ
気
(
き
)
のつかぬ、
308
魔我彦
(
まがひこ
)
は
何
(
なに
)
しとるのぢやいな。
309
其
(
その
)
間
(
ま
)
に
座敷
(
ざしき
)
を
片付
(
かたづ
)
けてくれるかと
思
(
おも
)
ひ、
310
ワザと
暇
(
ひま
)
を
入
(
い
)
れて
居
(
を
)
つたのに……
私
(
わたし
)
がしたのだないから
知
(
し
)
らぬ……といふ
様
(
やう
)
な
他人
(
たにん
)
行儀
(
ぎやうぎ
)
の
魔我彦
(
まがひこ
)
の
仕方
(
しかた
)
、
311
エーエ
仕方
(
しかた
)
のないものだ』
312
と
小声
(
こごゑ
)
で
呟
(
つぶや
)
いてゐる。
313
松彦
(
まつひこ
)
『お
寅
(
とら
)
さま、
314
大変
(
たいへん
)
大
(
おほ
)
きな
猫
(
ねこ
)
がゐると
見
(
み
)
えますなア。
315
盃
(
さかづき
)
を
踏
(
ふ
)
みわるなんて、
316
随分
(
ずゐぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
物
(
もの
)
でせう』
317
魔我彦
(
まがひこ
)
は
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
からヌツと
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
した。
318
お
寅
(
とら
)
は
目
(
め
)
に
角
(
かど
)
を
立
(
た
)
て、
319
お
寅
(
とら
)
『コレ、
320
天上
(
てんじやう
)
さま、
321
気
(
き
)
のつかぬ
方
(
かた
)
ぢやなア。
322
これ
程
(
ほど
)
猫
(
ねこ
)
があばれてるのに、
323
なぜ
片付
(
かたづ
)
けないのだい。
324
お
客
(
きやく
)
さまがお
出
(
い
)
でになつたのに、
325
みつともないぢやないか』
326
魔我
(
まが
)
『ハイ
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
牡猫
(
をねこ
)
と
牝猫
(
めねこ
)
が
二疋
(
にひき
)
やつて
来
(
き
)
やがつて、
327
噛
(
か
)
み
合
(
あ
)
ひをやつたのですよ。
328
牡
(
をす
)
の
方
(
はう
)
は
酒
(
さけ
)
の
好
(
す
)
きな
猫
(
ねこ
)
で、
329
ヘベレケになり、
330
一方
(
いつぱう
)
はドテライ
牝猫
(
めんねこ
)
で
而
(
しか
)
も
寅猫
(
とらねこ
)
でした。
331
滅多
(
めつた
)
矢鱈
(
やたら
)
に
咬合
(
かみあ
)
ふものだから、
332
火箸
(
ひばし
)
でなぐらうと
思
(
おも
)
うたトタンに、
333
猫
(
ねこ
)
はなぐれず
盃
(
さかづき
)
をなぐつて、
334
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りメチヤメチヤにして
了
(
しま
)
うたのですよ』
335
お
寅
(
とら
)
『エーエ、
336
何
(
なに
)
をさしても
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
方
(
かた
)
だな、
337
サア、
338
早
(
はや
)
く
片付
(
かたづ
)
けなさい、
339
人様
(
ひとさま
)
にザマが
悪
(
わる
)
いぢやないかい』
340
魔我彦
(
まがひこ
)
は
苦笑
(
にがわら
)
ひし
乍
(
なが
)
ら、
341
魔我
(
まが
)
『ザマの
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
誰
(
たれ
)
がしたのだ。
342
ヘン
馬鹿
(
ばか
)
らしい』
343
と
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
で
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
344
不精
(
ふしやう
)
無精
(
ぶしやう
)
に
座敷
(
ざしき
)
を
片
(
かた
)
づける。
345
松彦
(
まつひこ
)
一党
(
いつたう
)
は
居間
(
ゐま
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
手持
(
てもち
)
無沙汰
(
ぶさた
)
な
風
(
ふう
)
をして
立待
(
たちま
)
ちをして
居
(
ゐ
)
る。
346
魔我彦
(
まがひこ
)
はあわただしく
一間
(
ひとま
)
の
掃除
(
さうぢ
)
をなし、
347
火鉢
(
ひばち
)
、
348
鉄瓶
(
てつびん
)
、
349
徳利
(
とくり
)
、
350
膳
(
ぜん
)
などの
置場所
(
おきばしよ
)
を
直
(
なほ
)
し、
351
座蒲団
(
ざぶとん
)
を
七
(
しち
)
枚
(
まい
)
布
(
し
)
き
終
(
をは
)
り、
352
魔我
(
まが
)
『サアえらうお
待
(
ま
)
たせしました。
353
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
354
どうぞ
正座
(
しやうざ
)
にお
直
(
なほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
355
松彦
(
まつひこ
)
『
天
(
てん
)
の
大神
(
おほかみ
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
落
(
お
)
ちぶれて
居
(
を
)
りました』
356
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
357
差図
(
さしづ
)
する
儘
(
まま
)
に
正座
(
しやうざ
)
に
坐
(
すわ
)
つた。
358
お
寅
(
とら
)
『これはこれはよくマアお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいました。
359
上義姫
(
じやうぎひめ
)
様
(
さま
)
の
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
が
大変
(
たいへん
)
にお
待受
(
まちうけ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
360
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だつて
夫婦
(
ふうふ
)
がなければ、
361
誠
(
まこと
)
の
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
は
出来
(
でき
)
ませぬからなア』
362
松彦
(
まつひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
にはそんな
粋事
(
すゐごと
)
はありませぬ。
363
お
見
(
み
)
かけ
通
(
どほ
)
りの
木石漢
(
ぼくせきかん
)
ですからなア』
364
お
寅
(
とら
)
はツツと
傍
(
そば
)
へ
寄
(
よ
)
り、
365
松彦
(
まつひこ
)
の
手
(
て
)
の
甲
(
かふ
)
をソツと
押
(
おさ
)
へて
細目
(
ほそめ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
366
お
寅
(
とら
)
『ヘヽヽ、
367
うまい
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますな。
368
流石
(
さすが
)
姫殺
(
ひめごろし
)
だ。
369
恋
(
こひ
)
の
上手
(
じやうづ
)
はやつれてかかるとか
言
(
い
)
ひましてな。
370
本当
(
ほんたう
)
に
至
(
いた
)
れり
尽
(
つく
)
せりだ。
371
蠑螈別
(
いもりわけ
)
オツトドツコイ……
大分
(
だいぶん
)
に
違
(
ちが
)
ひますわい。
372
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
アだつて
貴方
(
あなた
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
らしい
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
だつたら、
373
モウ
二十
(
にじふ
)
年
(
ねん
)
も
若
(
わか
)
かつたら
一苦労
(
ひとくらう
)
して
見
(
み
)
ますがなア。
374
ホツホヽヽヽ』
375
松彦
(
まつひこ
)
は
渋
(
しぶ
)
をかんだ
様
(
やう
)
な
面付
(
かほつき
)
で、
376
松彦
(
まつひこ
)
『どうぞ
揶揄
(
からかひ
)
はやめて
下
(
くだ
)
さい。
377
吾々
(
われわれ
)
は
大切
(
たいせつ
)
な
御用
(
ごよう
)
のある
身体
(
からだ
)
、
378
其
(
その
)
寸暇
(
すんか
)
を
伺
(
うかが
)
つてあなたのお
勧
(
すす
)
めに
任
(
まか
)
せ
参
(
まゐ
)
つたのですから、
379
下
(
くだ
)
らぬ
話
(
はなし
)
をなさるのならば、
380
最早
(
もはや
)
お
暇
(
いとま
)
を
致
(
いた
)
します』
381
と
箱
(
はこ
)
さしたやうなスタイルでキチンとすわつてゐる。
382
お
寅
(
とら
)
『これはしたり、
383
誠
(
まこと
)
に
失礼
(
しつれい
)
なことを
申上
(
まをしあ
)
げました。
384
併
(
しか
)
しねえ、
385
さう
仰有
(
おつしや
)
つても、
386
ヤツパリ
人間
(
にんげん
)
には
裏表
(
うらおもて
)
がありますからなア』
387
松彦
(
まつひこ
)
『ハヽヽヽ』
388
魔我
(
まが
)
『
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
389
よくマア
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
下
(
くだ
)
さいました。
390
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
太柱
(
ふとばしら
)
様
(
さま
)
、
391
どうぞあなたも
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
だから、
392
他所
(
よそ
)
へは
行
(
ゆ
)
かずに、
393
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
暁
(
あかつき
)
迄
(
まで
)
、
394
何卒
(
どうぞ
)
ここに
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
395
松彦
(
まつひこ
)
『それは
聊
(
いささ
)
か
迷惑
(
めいわく
)
、
396
半時
(
はんとき
)
ばかり
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
し、
397
今度
(
こんど
)
は
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
お
暇
(
ひま
)
を
頂
(
いただ
)
きませう』
398
魔我
(
まが
)
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
399
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
で
引寄
(
ひきよ
)
せられ
遊
(
あそ
)
ばしたのだから、
400
そりや
駄目
(
だめ
)
でせう。
401
マアゆつくりとして
下
(
くだ
)
さいませ』
402
松彦
(
まつひこ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
403
万公
(
まんこう
)
『モシ
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さま、
404
此
(
この
)
ブラリ
彦
(
ひこ
)
は
何時
(
いつ
)
帰
(
かへ
)
つたら
宜
(
よろ
)
しいかな』
405
魔我
(
まが
)
『どうぞ
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
随意
(
ずゐい
)
になさつて
下
(
くだ
)
さいませ。
406
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
ければ、
407
今
(
いま
)
直
(
すぐ
)
に
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りになりましても
構
(
かま
)
ひませぬ』
408
万公
(
まんこう
)
『
山竹姫
(
やまたけひめ
)
の
口
(
くち
)
から
生
(
うま
)
れた
生宮
(
いきみや
)
ぢやないが、
409
マンマンマン ウマーと
呆
(
あき
)
れざるを
得
(
え
)
ませぬわい。
410
ヘン』
411
魔我
(
まが
)
『お
前
(
まへ
)
はウラナイ
教
(
けう
)
を
研究
(
けんきう
)
しましたか。
412
ようそんな
細
(
こま
)
かいことまで
御存
(
ごぞん
)
じですな』
413
万公
(
まんこう
)
『ハイ
此
(
この
)
中
(
なか
)
でウラナイ
教
(
けう
)
通
(
つう
)
と
云
(
い
)
つたら、
414
マア
私
(
わたし
)
位
(
くらゐ
)
な
者
(
もの
)
でせう。
415
私
(
わたし
)
はお
寅
(
とら
)
さまの
内
(
うち
)
の
入婿
(
いりむこ
)
でしたからなア。
416
何
(
なに
)
か
因縁
(
いんねん
)
があるので、
417
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さいますわ。
418
山竹姫
(
やまたけひめ
)
さまは
馬
(
うま
)
が
出来
(
でき
)
たので、
419
ビツクリして
今度目
(
こんどめ
)
に
又
(
また
)
、
420
天
(
てん
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
にお
祈
(
いの
)
り
遊
(
あそ
)
ばし、
421
猪
(
ゐのしし
)
を
生
(
う
)
まれたでせう。
422
それから
又
(
また
)
次
(
つぎ
)
に
口
(
くち
)
から
玉
(
たま
)
を
生
(
う
)
み
出
(
だ
)
し、
423
其
(
その
)
玉
(
たま
)
がヘグれて
孔雀
(
くじやく
)
が
生
(
うま
)
れたでせうがなア。
424
其
(
その
)
位
(
くらゐ
)
なことはチヤーンと
此
(
この
)
万公
(
まんこう
)
は
知
(
し
)
つてゐるのですからなア』
425
魔我
(
まが
)
『
成程
(
なるほど
)
コリヤ
感心
(
かんしん
)
だ』
426
万公
(
まんこう
)
『
私
(
わたし
)
の
随意
(
ずゐい
)
にこれから
御
(
お
)
暇
(
いとま
)
を
致
(
いた
)
しませうか』
427
お
寅
(
とら
)
『コレコレ
万
(
まん
)
さま、
428
お
前
(
まへ
)
、
429
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にそんな
おかげ
を
頂
(
いただ
)
いたのだい。
430
それを
聞
(
き
)
くからは、
431
帰
(
い
)
のうといつたとて
帰
(
い
)
なしはせぬぞや。
432
それではヤツパリお
前
(
まへ
)
の
霊
(
みたま
)
はブラリ
彦
(
ひこ
)
ではなかつた。
433
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
の
霊
(
みたま
)
かも
知
(
し
)
れぬぞえ。
434
なア
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
435
どうも
耕
(
たがや
)
し
大神
(
おほかみ
)
の
様
(
やう
)
ですなア』
436
魔我
(
まが
)
『メツタにタガヤ……シませぬぢやらうかな。
437
私
(
わたし
)
や
疑
(
うたが
)
やしませぬけれどなア。
438
耕
(
たがや
)
し
大神
(
おほかみ
)
にしてはチツと
軽
(
かる
)
いやうな
気
(
き
)
がしますがなア』
439
万公
(
まんこう
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
440
目
(
め
)
を
閉
(
ふさ
)
ぎ『ウン』と
飛上
(
とびあが
)
り、
441
万公
(
まんこう
)
『コリヤ、
442
魔我彦
(
まがひこ
)
、
443
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
の
霊
(
みたま
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る、
444
そんなことで
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
言
(
い
)
へるかア。
445
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
事
(
こと
)
なら、
446
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
迄
(
まで
)
、
447
何
(
なに
)
もかも
知
(
し
)
つて
知
(
し
)
つて
知
(
し
)
りぬいた
此
(
この
)
方
(
はう
)
だぞウ』
448
魔我
(
まが
)
『ハイ
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました』
449
お
寅
(
とら
)
『これはこれは
万公
(
まんこう
)
、
450
イヤイヤ
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
の
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
451
誠
(
まこと
)
にすまぬことを
致
(
いた
)
しました。
452
コレコレお
菊
(
きく
)
、
453
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
がいつも
言
(
い
)
うて
厶
(
ござ
)
つただらう、
454
お
前
(
まへ
)
の
霊
(
みたま
)
は
地上姫
(
ちじやうひめ
)
だ、
455
地上姫
(
ちじやうひめ
)
の
夫
(
をつと
)
は
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
仰有
(
おつしや
)
つたぢやないか。
456
サア
早
(
はや
)
うこちらへ
来
(
き
)
て
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
を
申上
(
まをしあ
)
げないか』
457
と
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
呼
(
よ
)
ばはつた。
458
お
菊
(
きく
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
459
お
菊
(
きく
)
『お
母
(
か
)
アさま、
460
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
の
生宮
(
いきみや
)
さまて、
461
どなた?
此
(
この
)
お
方
(
かた
)
ですか』
462
と
松彦
(
まつひこ
)
を
指
(
ゆび
)
さす。
463
万公
(
まんこう
)
は
包
(
つつ
)
みきれぬ
嬉
(
うれ
)
しさと
可笑
(
をか
)
しさを
無理
(
むり
)
に
笑
(
わら
)
ふまいと
気張
(
きば
)
つてゐる。
464
成
(
な
)
るべくコクメンな
素知
(
そし
)
らぬ
体
(
てい
)
を
装
(
よそほ
)
うとしたが、
465
どうしても
堪
(
こら
)
へ
切
(
き
)
れなくなり、
466
万公
(
まんこう
)
『パーハツハヽヽヽ』
467
と
吹出
(
ふきだ
)
した。
468
お
寅
(
とら
)
『マアマア
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
のよいこと、
469
ソラさうだろ、
470
永
(
なが
)
らく
地
(
ち
)
の
底
(
そこ
)
へ
落
(
おち
)
ぶれて
厶
(
ござ
)
つたのだもの、
471
ここで
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
と
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
の
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
を、
472
天晴
(
あつぱれ
)
と
現
(
あら
)
はれてなさつたのだから
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
473
コレお
菊
(
きく
)
、
474
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
の
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
はあの
万公
(
まんこう
)
さまだよ』
475
お
菊
(
きく
)
『エーエ
好
(
す
)
かンたらしい、
476
あたしイヤだわ。
477
あんな
黒
(
くろ
)
い
褌
(
ふんどし
)
しとつた
男
(
をとこ
)
、
478
それお
母
(
あ
)
アさま、
479
にえ
茶
(
ちや
)
を
呑
(
の
)
ンでこけた
時
(
とき
)
、
480
あれ
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
すと、
481
何
(
なん
)
ぼ
耕
(
たがや
)
し
大神
(
だいじん
)
さまだつて、
482
愛想
(
あいさう
)
がつきますワ』
483
五三
(
いそ
)
『ウツフヽヽヽ』
484
アク、
485
タク、
486
テク
一度
(
いちど
)
に『ワアハツハヽヽヽ』
487
アク『
何
(
なん
)
とマア
都合
(
つがふ
)
のよい
教
(
をしへ
)
だなア。
488
俺
(
おれ
)
も
今日
(
けふ
)
からスツパリとウラナイ
教
(
けう
)
へ
入
(
い
)
れて
貰
(
もら
)
はうか
知
(
し
)
らぬてなア。
489
サア
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つたらよからうかな。
490
アクビ
直
(
なほ
)
し
彦
(
ひこ
)
でもつまらぬし……ウンさうだ、
491
同
(
おな
)
じアのつく
天若彦
(
あまわかひこ
)
になつてやらう。
492
ウンウンウン』
493
ドスン……
494
アク
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
悪
(
あく
)
にみせて
善
(
ぜん
)
を
働
(
はたら
)
く
天若彦
(
あまわかひこ
)
であるぞよ』
495
お
寅
(
とら
)
『オホヽヽヽ』
496
魔我
(
まが
)
『アハヽヽヽ』
497
お
寅
(
とら
)
『おきやんせいなア。
498
そんな
受売
(
うけうり
)
をしたつて
誰
(
たれ
)
が
買
(
か
)
ふものか。
499
よいかげんに
冗談
(
じやうだん
)
もなさるがよい。
500
悪垂彦
(
あくたれひこの
)
命
(
みこと
)
奴
(
め
)
が』
501
アク『あゝあ、
502
たうとう
尻尾
(
しつぽ
)
を
見
(
み
)
られて
了
(
しま
)
つた』
503
お
寅
(
とら
)
『
心得
(
こころえ
)
なされや、
504
私
(
わたし
)
の
前
(
まへ
)
だからよいが、
505
よそへ
行
(
い
)
つて、
506
そんな
山子
(
やまこ
)
をなさると、
507
ドテライ
恥
(
はぢ
)
をかきますぞや』
508
五三
(
いそ
)
『ウツフヽヽヽ、
509
たうとう
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みの
現
(
あら
)
はれ
口
(
ぐち
)
だ。
510
口
(
くち
)
は
災
(
わざはひ
)
の
門
(
かど
)
とは
能
(
よ
)
く
云
(
い
)
つたものだな、
511
無茶
(
むちや
)
苦茶
(
くちや
)
に
口
(
くち
)
をアクとアカンことになるのだ、
512
のうテク、
513
タク、
514
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
面
(
つら
)
よごしだ』
515
アク『
万公
(
まんこう
)
だつて、
516
さうぢやないか、
517
万公
(
まんこう
)
の
言
(
い
)
ふことが
通用
(
つうよう
)
して、
518
俺
(
おれ
)
のいふことが
通用
(
つうよう
)
せぬといふ
理屈
(
りくつ
)
がどこにあるかい』
519
五三
(
いそ
)
『アリヤ
万
(
まん
)
が
良
(
よ
)
いのだ。
520
アハヽヽヽ』
521
松彦
(
まつひこ
)
『
肝腎
(
かんじん
)
の
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまは
何処
(
どこ
)
にゐられますか。
522
私
(
わたし
)
は
正宗
(
まさむね
)
様
(
さま
)
に
会
(
あ
)
うてくれと
仰有
(
おつしや
)
つたので
参
(
まゐ
)
つたのですが、
523
御
(
ご
)
本人
(
ほんにん
)
が
居
(
を
)
られぬとすれば
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
524
帰
(
かへ
)
りませうかな』
525
お
寅
(
とら
)
『ヤ、
526
居
(
を
)
られます。
527
併
(
しか
)
し
今
(
いま
)
御
(
お
)
神懸
(
かむがかり
)
の
最中
(
さいちう
)
ですから、
528
どうぞ
暫
(
しばら
)
く
御
(
お
)
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
529
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
にお
伺
(
うかが
)
ひの
最中
(
さいちう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
530
松彦
(
まつひこ
)
『
私
(
わたし
)
も
何
(
なん
)
となく
気
(
き
)
がせきますから、
531
そんなら
私
(
わたし
)
の
方
(
はう
)
から
伺
(
うかが
)
ひませう』
532
とツツと
立
(
た
)
ち、
533
行
(
ゆ
)
かうとする、
534
お
寅
(
とら
)
は
酔
(
よ
)
ひつぶれた
蠑螈別
(
いもりわけ
)
を
見
(
み
)
られては
大変
(
たいへん
)
と、
535
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げ、
536
お
寅
(
とら
)
『マアマアマア、
537
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
538
今
(
いま
)
貴方
(
あなた
)
に
行
(
ゆ
)
かれては、
539
一寸
(
ちよつと
)
都合
(
つがふ
)
の
悪
(
わる
)
いことが
厶
(
ござ
)
います』
540
五三
(
いそ
)
『
松彦
(
まつひこ
)
さま、
541
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うて
厶
(
ござ
)
るのですよ。
542
受付
(
うけつけ
)
へ
聞
(
きこ
)
えとつたでせう、
543
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
さまと
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ、
544
イチヤ
付
(
つき
)
喧嘩
(
けんくわ
)
をして、
545
胸倉
(
むなぐら
)
をとられたり、
546
頭
(
あたま
)
をコツかれたり、
547
助
(
たす
)
けてくれ……と
叫
(
さけ
)
んでゐられたでせう。
548
盃
(
さかづき
)
を
破
(
わ
)
つたのも
猫
(
ねこ
)
ぢやありませぬよ、
549
皆
(
みな
)
二人
(
ふたり
)
の
意茶付
(
いちやつき
)
喧嘩
(
げんくわ
)
の
産物
(
さんぶつ
)
です、
550
シツカリせぬとゴマかされて
了
(
しま
)
ひますで』
551
松彦
(
まつひこ
)
『アハヽヽヽ、
552
人
(
ひと
)
さまの
内
(
うち
)
のことは
言
(
い
)
ふものぢやない。
553
沈黙
(
ちんもく
)
しなさい』
554
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
再
(
ふたた
)
び
元
(
もと
)
の
座
(
ざ
)
に
着
(
つ
)
いた。
555
隣
(
となり
)
の
間
(
ま
)
には
蠑螈別
(
いもりわけ
)
が
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひつぶれ、
556
うつつになつて
囈語
(
たわごと
)
を
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した。
557
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
は
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
へ
筒抜
(
つつぬ
)
けに
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
558
蠑螈
(
いもり
)
『あゝあ、
559
エライことになつたものだ。
560
つひ
酒
(
さけ
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
南瓜
(
かぼちや
)
みたやうなお
寅婆
(
とらばば
)
アをなぶつたのが
病
(
や
)
み
付
(
つき
)
で、
561
こんな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされたのだ。
562
あゝあ
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
高姫
(
たかひめ
)
は
親切
(
しんせつ
)
だ。
563
あゝあ
高姫
(
たかひめ
)
は
如何
(
どう
)
して
居
(
ゐ
)
るだらうなア。
564
高姫
(
たかひめ
)
ー
々々
(
たかひめ
)
、
565
会
(
あ
)
ひたいわいのう。
566
ウニヤ ウニヤ ウニヤ ウーン』
567
お
寅
(
とら
)
の
顔色
(
かほいろ
)
は
俄
(
にはか
)
に
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
た。
568
魔我
(
まが
)
『エヘヽヽヽお
寅
(
とら
)
さま、
569
お
気
(
き
)
のもめる
事
(
こと
)
でせうなア』
570
お
寅
(
とら
)
『アリヤ
信者
(
しんじや
)
の
病人
(
びやうにん
)
があんなこと
言
(
い
)
つてるのだよ。
571
ここへ
時々
(
ときどき
)
気
(
き
)
のふれた
者
(
もの
)
が
参
(
まゐ
)
つて
来
(
く
)
るから……
厄介
(
やくかい
)
な
事
(
こと
)
だ』
572
魔我
(
まが
)
『それでも
教祖
(
けうそ
)
さまの
声
(
こゑ
)
にソツクリぢやありませぬか』
573
お
寅
(
とら
)
『サアそこが
気違
(
きちがひ
)
だ。
574
悪神
(
あくがみ
)
が
憑
(
うつ
)
つて
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
の
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つてるのだ。
575
そんなことが
分
(
わか
)
らいで、
576
仮令
(
たとへ
)
看板
(
かんばん
)
丈
(
だけ
)
でも、
577
副教祖
(
ふくけうそ
)
が
勤
(
つと
)
まりますか。
578
すまないが
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
は
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
の……ウンではない……エヽ
二世
(
にせ
)
の
○○
(
まるまる
)
だよ。
579
お
寅
(
とら
)
さまを
差
(
さし
)
おいてヅケヅケと
言
(
い
)
ふものでない。
580
スツ
込
(
こ
)
んでゐなされや』
581
魔我
(
まが
)
『
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
もお
寅
(
とら
)
さまにかかつては
駄目
(
だめ
)
ですわい』
582
万公
(
まんこう
)
は
長
(
なが
)
らく
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んでゐたが、
583
足
(
あし
)
はしびれ、
584
手
(
て
)
はだるくなつて
堪
(
こら
)
え
切
(
き
)
れなくなり、
585
ワザとにドスンと
飛上
(
とびあが
)
り、
586
空呆
(
そらとぼ
)
けた
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
587
万公
(
まんこう
)
『あゝ、
588
あゝ
大変
(
たいへん
)
な
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つた。
589
綺麗
(
きれい
)
な
別嬪
(
べつぴん
)
さまと
祝言
(
しうげん
)
の
盃
(
さかづき
)
をしたと
思
(
おも
)
へば……
何
(
なん
)
だ
夢
(
ゆめ
)
だつたかいな。
590
オヽそれそれ
其
(
その
)
お
菊
(
きく
)
とソツクリの
女
(
をんな
)
だつた。
591
何
(
なん
)
とマア
妙
(
めう
)
なことがあるものだなア』
592
お
寅
(
とら
)
『ナアニ、
593
お
菊
(
きく
)
と
同
(
おな
)
じ
美人
(
びじん
)
と
結婚
(
けつこん
)
をしたことが
霊眼
(
れいがん
)
にうつつたのかな。
594
オヽさうだろさうだろ、
595
それで
益々
(
ますます
)
確実
(
かくじつ
)
になつて
来
(
き
)
た。
596
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
つたことは
違
(
ちが
)
はぬワイ……
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
597
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います、
598
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
599
と
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
腹立
(
はらだち
)
を
忘
(
わす
)
れてお
菊
(
きく
)
の
為
(
ため
)
に
祈
(
いの
)
つてゐる。
600
(
大正一一・一二・一一
旧一〇・二三
松村真澄
録)
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