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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第48巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 変現乱痴
第1章 聖言
第2章 武乱泥
第3章 観音経
第4章 雪雑寝
第5章 鞘当
第6章 狂転
第2篇 幽冥摸索
第7章 六道の辻
第8章 亡者苦雑
第9章 罪人橋
第3篇 愛善信真
第10章 天国の富
第11章 霊陽山
第12章 西王母
第13章 月照山
第14章 至愛
第4篇 福音輝陣
第15章 金玉の辻
第16章 途上の変
第17章 甦生
第18章 冥歌
第19章 兵舎の囁
第20章 心の鬼
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(B)
(N)
雪雑寝 >>>
第三章
観音経
(
くわんのんきやう
)
〔一二五七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻
篇:
第1篇 変現乱痴
よみ(新仮名遣い):
へんげんらんち
章:
第3章 観音経
よみ(新仮名遣い):
かんおんぎょう
通し章番号:
1257
口述日:
1923(大正12)年01月12日(旧11月26日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年10月25日
概要:
舞台:
浮木の森のバラモン軍の陣営
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ランチ将軍は上機嫌で、三五教の二人の女宣伝使に言い寄られてたいへんなことだった、一方でもてない片彦将軍はすっかり気落ちしてしまったのだ、とのろけている。
蠑螈別が呼び出しの意図を尋ねると、ランチ将軍は、お民を片彦に嫁がせてやってくれないかと言い出した。蠑螈別はこれを聞いて怒りだすが、逆にランチ将軍から酒ばかり飲む役立たずだと引導を渡されてしまう。
蠑螈別は自分の法力でランチ将軍の命を取ってやると言い放ち、次の間に行って大自在天の前に数珠をもみながら端座した。大自在天やウラナイ教の神々を念じ、観音経を唱え始めた。しかしまったく効力を表さないので、観音に向かってブツブツと不平を呟くのみであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-05-17 10:32:38
OBC :
rm4803
愛善世界社版:
37頁
八幡書店版:
第8輯 601頁
修補版:
校定版:
38頁
普及版:
19頁
初版:
ページ備考:
001
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
002
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
003
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
004
治国別
(
はるくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
005
怪
(
あや
)
しの
森
(
もり
)
を
通過
(
つうくわ
)
して
006
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
に
屯
(
たむろ
)
せる
007
ランチ、
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
008
陣営
(
ぢんえい
)
を
守
(
まも
)
る
番卒
(
ばんそつ
)
に
009
其
(
その
)
入口
(
いりぐち
)
に
出会
(
しゆつくわい
)
し
010
種々
(
しゆじゆ
)
様々
(
さまざま
)
の
問答
(
もんだふ
)
を
011
なせる
折
(
をり
)
しも
敵軍
(
てきぐん
)
の
012
企
(
たく
)
みの
穽
(
あな
)
におとされて
013
命
(
いのち
)
危
(
あやふ
)
く
見
(
み
)
えけるが
014
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りし
神司
(
かむづかさ
)
015
危
(
あやふ
)
き
穽
(
あな
)
に
落
(
お
)
ちながら
016
卯
(
う
)
の
毛
(
け
)
の
露
(
つゆ
)
の
怪我
(
けが
)
もなく
017
治国別
(
はるくにわけ
)
と
竜公
(
たつこう
)
は
018
早速
(
さそく
)
の
頓智
(
とんち
)
番卒
(
ばんそつ
)
の
019
アーク、タールを
説
(
と
)
き
伏
(
ふ
)
せて
020
危難
(
きなん
)
を
逃
(
のが
)
れ
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
り
021
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
022
いとも
細
(
こま
)
かに
説
(
と
)
きつれば
023
もとより
神
(
かみ
)
の
御魂
(
みたま
)
をば
024
うけたる
二人
(
ふたり
)
の
番卒
(
ばんそつ
)
は
025
忽
(
たちま
)
ち
心機
(
しんき
)
一転
(
いつてん
)
し
026
悔悟
(
くわいご
)
の
花
(
はな
)
も
咲
(
さ
)
き
満
(
み
)
ちて
027
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
帰順
(
きじゆん
)
しつ
028
治国別
(
はるくにわけ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
029
ランチの
陣営
(
ぢんえい
)
をさして
行
(
ゆ
)
く
030
ランチ、
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
031
治国別
(
はるくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
が
032
思
(
おも
)
はぬここに
来
(
きた
)
りしを
033
眺
(
なが
)
めて
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
りながら
034
表面
(
うはべ
)
を
飾
(
かざ
)
る
柔言葉
(
やさことば
)
035
和睦
(
わぼく
)
の
酒
(
さけ
)
と
云
(
い
)
ひながら
036
二人
(
ふたり
)
を
酔
(
よ
)
はせ
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
の
037
秘密
(
ひみつ
)
の
場所
(
ばしよ
)
へ
誘
(
いざな
)
ひて
038
燕返
(
つばめがへ
)
しの
計略
(
けいりやく
)
に
039
千尋
(
ちひろ
)
の
深
(
ふか
)
き
暗窟
(
あんくつ
)
へ
040
落
(
おと
)
し
込
(
こ
)
みしぞ
忌々
(
ゆゆ
)
しけれ
041
治国別
(
はるくにわけ
)
や
竜公
(
たつこう
)
は
042
忽
(
たちま
)
ち
正気
(
しやうき
)
を
失
(
うしな
)
ひて
043
其
(
その
)
霊魂
(
れいこん
)
は
宙
(
ちう
)
に
飛
(
と
)
び
044
精霊界
(
せいれいかい
)
に
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ひ
045
一人
(
ひとり
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
に
教
(
をし
)
へられ
046
狭
(
せま
)
き
谷道
(
たにみち
)
攀
(
よ
)
ぢのぼり
047
漸
(
やうや
)
う
此処
(
ここ
)
に
八衢
(
やちまた
)
の
048
関所
(
せきしよ
)
の
前
(
まへ
)
にと
着
(
つ
)
きにけり
049
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
との
精霊
(
せいれい
)
が
050
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り
八衢
(
やちまた
)
の
051
審判
(
さばき
)
を
受
(
う
)
くる
有様
(
ありさま
)
を
052
心
(
こころ
)
をひそめて
眺
(
なが
)
めつつ
053
現幽
(
げんいう
)
二界
(
にかい
)
の
真諦
(
しんたい
)
を
054
おぼろげながら
感得
(
かんとく
)
し
055
伊吹戸主
(
いぶきどぬし
)
の
御館
(
みやかた
)
に
056
暫
(
しばら
)
く
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めつつ
057
外面
(
とのも
)
の
景色
(
けしき
)
を
眺
(
なが
)
め
居
(
ゐ
)
る
058
時
(
とき
)
しもあれや
中天
(
ちうてん
)
を
059
照
(
て
)
らして
来
(
きた
)
る
大火団
(
だいくわだん
)
060
二人
(
ふたり
)
が
前
(
まへ
)
に
顛落
(
てんらく
)
し
061
火花
(
ひばな
)
を
四方
(
しはう
)
に
散乱
(
さんらん
)
し
062
暫
(
しばら
)
く
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれて
063
四辺
(
あたり
)
も
見
(
み
)
えずなりにけり
064
二人
(
ふたり
)
は
益々
(
ますます
)
怪
(
あや
)
しみて
065
きつと
目
(
め
)
をすゑ
眺
(
なが
)
め
入
(
い
)
る
066
忽
(
たちま
)
ち
一柱
(
ひとり
)
の
神人
(
しんじん
)
が
067
容貌
(
ようばう
)
衣服
(
いふく
)
を
輝
(
かがや
)
かし
068
治国別
(
はるくにわけ
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
069
我
(
われ
)
は
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神
(
かみ
)
070
不思議
(
ふしぎ
)
な
処
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
ひました
071
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御言
(
みこと
)
もて
072
今
(
いま
)
は
媒介
(
ばいかい
)
天人
(
てんにん
)
と
073
重
(
おも
)
き
使命
(
しめい
)
を
任
(
ま
)
けられぬ
074
いざ
之
(
これ
)
よりは
天国
(
てんごく
)
を
075
巡覧
(
じゆんらん
)
召
(
め
)
され
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
076
汝
(
なれ
)
が
命
(
みこと
)
を
案内
(
あない
)
せむ
077
又
(
また
)
竜公
(
たつこう
)
は
証覚
(
しようかく
)
の
078
まだ
開
(
ひら
)
けざる
身
(
み
)
なれども
079
特
(
とく
)
にお
供
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
すべし
080
之
(
これ
)
を
被
(
かぶ
)
れと
云
(
い
)
ひながら
081
懐中
(
くわいちう
)
探
(
さぐ
)
り
被面布
(
ひめんぷ
)
を
082
とり
出
(
だ
)
し
竜公
(
たつこう
)
にかけ
給
(
たま
)
ふ
083
此処
(
ここ
)
に
二人
(
ふたり
)
は
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
084
最下
(
さいか
)
天国
(
てんごく
)
の
其
(
その
)
一部
(
いちぶ
)
085
巡覧
(
じゆんらん
)
し
終
(
を
)
へ
中間
(
ちうかん
)
の
086
天国
(
てんごく
)
さして
昇
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
087
木花姫
(
このはなひめ
)
の
現
(
あら
)
はれて
088
種々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
両人
(
りやうにん
)
が
089
心
(
こころ
)
を
戒
(
いまし
)
め
給
(
たま
)
ひつつ
090
珍彦館
(
うづひこやかた
)
に
導
(
みちび
)
きて
091
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
経綸
(
けいりん
)
の
092
其
(
その
)
大略
(
たいりやく
)
を
示
(
しめ
)
すべく
093
此処
(
ここ
)
に
言霊別
(
ことたまわけ
)
の
神
(
かみ
)
094
治国別
(
はるくにわけ
)
の
徒弟
(
とてい
)
なる
095
五三公
(
いそこう
)
さまと
現
(
あら
)
はれて
096
又
(
また
)
もや
尊
(
たふと
)
き
教訓
(
けうくん
)
を
097
授
(
さづ
)
け
給
(
たま
)
ひし
尊
(
たふと
)
さよ
098
之
(
これ
)
より
二人
(
ふたり
)
は
五三公
(
いそこう
)
の
099
案内
(
あない
)
につれて
天国
(
てんごく
)
の
100
各団体
(
かくだんたい
)
を
巡歴
(
じゆんれき
)
し
101
最高一
(
さいかういち
)
の
天国
(
てんごく
)
や
102
霊国
(
れいごく
)
までも
巡拝
(
じゆんぱい
)
し
103
月
(
つき
)
の
御神
(
みかみ
)
や
日
(
ひ
)
の
御神
(
みかみ
)
104
其
(
その
)
他
(
ほか
)
百
(
もも
)
のエンゼルに
105
清
(
きよ
)
き
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
へられ
106
智慧
(
ちゑ
)
証覚
(
しようかく
)
を
拝受
(
はいじゆ
)
して
107
再
(
ふたた
)
びもとの
肉体
(
にくたい
)
に
108
かへり
来
(
きた
)
りてバラモンの
109
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
を
悉
(
ことごと
)
く
110
言向和
(
ことむけやは
)
す
物語
(
ものがたり
)
111
語
(
かた
)
るにつけて
面白
(
おもしろ
)
く
112
益々
(
ますます
)
深
(
ふか
)
く
真
(
しん
)
に
入
(
い
)
り
113
其
(
その
)
妙奥
(
めうおう
)
に
達
(
たつ
)
すべく
114
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
115
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る。
116
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
117
お
民
(
たみ
)
、
118
アーク、
119
タールの
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
一
(
いち
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
酔
(
よひ
)
をさまし、
120
何
(
なに
)
喰
(
く
)
はぬ
顔
(
かほ
)
してランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
前
(
まへ
)
にヌツと
顔
(
かほ
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
した。
121
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
常
(
つね
)
にないニコニコとした
笑顔
(
ゑがほ
)
を
見
(
み
)
せ、
122
ランチ
『ヤア
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
御
(
お
)
歴々
(
れきれき
)
、
123
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
で
御
(
お
)
目出度
(
めでた
)
う。
124
何
(
なに
)
か
御用
(
ごよう
)
で
厶
(
ござ
)
るかな』
125
と
脱線振
(
だつせんぶり
)
を
発揮
(
はつき
)
してゐる。
126
察
(
さつ
)
するにランチは
珍客
(
ちんきやく
)
に
余程
(
よほど
)
同情
(
どうじやう
)
ある
待遇
(
たいぐう
)
をされ、
127
精神
(
せいしん
)
の
一部
(
いちぶ
)
に
狂
(
くる
)
ひを
生
(
しやう
)
じて
居
(
ゐ
)
たと
見
(
み
)
える。
128
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
亦
(
また
)
平素
(
へいそ
)
から
少
(
すこ
)
しく
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
に
欠陥
(
けつかん
)
のある
男
(
をとこ
)
だが、
129
今
(
いま
)
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
てニコニコ
笑
(
わら
)
ひながら、
130
蠑螈別
『モシ
将軍殿
(
しやうぐんどの
)
、
131
昨夜
(
さくや
)
は
嘸
(
さぞ
)
御
(
お
)
疲
(
つか
)
れでしただらう。
132
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します。
133
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
異性
(
いせい
)
が
居
(
を
)
らなくては
威勢
(
いせい
)
の
悪
(
わる
)
いものですよ。
134
空
(
そら
)
を
飛
(
と
)
ぶ
小雀
(
こすずめ
)
だつて、
135
蝶々
(
てふてふ
)
だつて、
136
蜻蛉
(
とんぼ
)
だつて、
137
蝉
(
せみ
)
だつて、
138
土窠蜂
(
どかばち
)
だつて、
139
矢張
(
やつぱ
)
り
男女
(
だんぢよ
)
同棲
(
どうせい
)
して
天与
(
てんよ
)
の
真楽
(
しんらく
)
を
楽
(
たの
)
しんで
居
(
ゐ
)
るのですからな。
140
昔
(
むかし
)
の
世間
(
せけん
)
に
暗
(
くら
)
い
軍人
(
ぐんじん
)
は、
141
陣中
(
ぢんちう
)
に
女
(
をんな
)
は
一切
(
いつさい
)
無用
(
むよう
)
だなどと
云
(
い
)
つて
我慢
(
がまん
)
をしたものですが、
142
最早
(
もはや
)
今日
(
こんにち
)
となつては
軍人
(
ぐんじん
)
も
一種
(
いつしゆ
)
の
商売
(
しやうばい
)
ですから、
143
女
(
をんな
)
がなくちややりきれませぬわい。
144
ウツフヽヽヽ、
145
モシ
将軍
(
しやうぐん
)
さま、
146
大変
(
たいへん
)
な
爽快
(
さうくわい
)
な
面持
(
おももち
)
で
厶
(
ござ
)
りますな』
147
ランチ
『ハイ、
148
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
双方
(
さうはう
)
から
速射砲
(
そくしやはう
)
的
(
てき
)
に
襲撃
(
しふげき
)
を
受
(
う
)
けたものですから、
149
耳
(
みみ
)
はひツかかれる、
150
頬
(
ほほ
)
は
抓
(
つめ
)
られる、
151
腕
(
うで
)
は
左右
(
さいう
)
からぬける
程
(
ほど
)
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
られるものだから、
152
イヤもう
きつい
迷惑
(
めいわく
)
を
致
(
いた
)
しました。
153
エツヘヽヽヽ、
154
其
(
その
)
為
(
た
)
め
全身
(
ぜんしん
)
の
細胞
(
さいばう
)
や
繊維
(
せんゐ
)
が
稍
(
やや
)
倦怠
(
けんたい
)
気分
(
きぶん
)
となり、
155
各部
(
かくぶ
)
に
同盟
(
どうめい
)
罷工
(
ひこう
)
をやつたと
見
(
み
)
えて、
156
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
に
足
(
あし
)
が
動
(
うご
)
かなくなりました』
157
蠑螈別
『
足
(
あし
)
ばかりぢやありますまい。
158
腰部
(
えうぶ
)
は
如何
(
いかが
)
です、
159
腰部
(
えうぶ
)
は
天国
(
てんごく
)
に
於
(
お
)
ける
夫婦
(
ふうふ
)
の
愛
(
あい
)
と
相応
(
さうおう
)
する
最要部
(
さいえうぶ
)
で
厶
(
ござ
)
りますからな』
160
ランチ
『
成程
(
なるほど
)
、
161
夜前
(
やぜん
)
はあまり
乱痴気
(
らんちき
)
将軍
(
しやうぐん
)
をやつたものだから、
162
少々
(
せうせう
)
ばかり
今日
(
けふ
)
は
二日酔
(
ふつかよ
)
ひの
気味
(
きみ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
163
それに
就
(
つ
)
いても
可憐
(
かはい
)
さうなのは
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
だ』
164
蠑螈別
『あの
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
は
一人
(
ひとり
)
づつ
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
のお
相手
(
あひて
)
になさつたのぢやありませぬか』
165
ランチ
『イヤ、
166
それがさうぢやて、
167
……
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
には
二人
(
ふたり
)
ながらランチ ランチと
云
(
い
)
ひやがつて……エヘヽヽヽヽ
此
(
この
)
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
を
双方
(
さうはう
)
から
襲撃
(
しふげき
)
し、
168
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
千万
(
せんばん
)
にも
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
には
目
(
め
)
もくれないのだ。
169
そこで
此
(
この
)
ランチが
聊
(
いささ
)
か
同情
(
どうじやう
)
の
念
(
ねん
)
を
以
(
もつ
)
て
片彦
(
かたひこ
)
に
靡
(
なび
)
かせむと、
170
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
と
心
(
こころ
)
を
揉
(
も
)
んだでもないし、
171
揉
(
も
)
まぬでもなかつたが、
172
矢張
(
やつぱり
)
恋愛
(
れんあい
)
と
云
(
い
)
ふものは
合縁
(
あひえん
)
奇縁
(
きえん
)
で
仕方
(
しかた
)
のないものだ。
173
凡
(
すべ
)
て
恋愛
(
れんあい
)
は
一方
(
いつぱう
)
に
偏重
(
へんちよう
)
する
性質
(
せいしつ
)
のものだから、
174
大変
(
たいへん
)
に
都合
(
つがふ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
もあるが、
175
然
(
しか
)
しそこが
男子
(
だんし
)
に
取
(
と
)
つて
非常
(
ひじやう
)
に
妙味
(
めうみ
)
のある
所
(
ところ
)
だ。
176
イツヒヽヽヽ』
177
蠑螈別
『さうして
片彦
(
かたひこ
)
さまは
如何
(
どう
)
なつたのですか』
178
ランチ
『ウン、
179
片彦
(
かたひこ
)
は
歯
(
は
)
ぎしりを
噛
(
か
)
んで
怒
(
いか
)
り
出
(
だ
)
し、
180
歯
(
は
)
をガタガタ
云
(
い
)
はせ、
181
ガタガタ
慄
(
ぶる
)
ひをして
到頭
(
たうとう
)
ガタ
彦
(
ひこ
)
となつて
了
(
しま
)
つた。
182
何
(
ど
)
うも
斯
(
か
)
うガタピシヤになつては
陣中
(
ぢんちう
)
の
平和
(
へいわ
)
が
保
(
たも
)
たれないので、
183
聊
(
いささ
)
か
困
(
こま
)
つてるのですよ。
184
斯
(
か
)
うなつて
来
(
く
)
ると、
185
此
(
この
)
ランチを
女
(
をんな
)
にチヤホヤされる
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
に
生
(
う
)
んでくれた
親
(
おや
)
が
怨
(
うら
)
めしい
様
(
やう
)
に、
186
根
(
ね
)
つから
厶
(
ござ
)
らぬわい、
187
エツヘヽヽヽ。
188
そこで
一
(
ひと
)
つ
蠑螈別
(
いもりわけ
)
殿
(
どの
)
に
相談
(
さうだん
)
がある。
189
聞
(
き
)
いては
下
(
くだ
)
されますまいかな』
190
蠑螈別
『
其
(
その
)
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
とは
何事
(
なにごと
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
191
ランチ
『
外
(
ほか
)
でもござらぬ、
192
其方
(
そなた
)
の
最愛
(
さいあい
)
のお
民
(
たみ
)
さまを
暫
(
しばら
)
く
此
(
この
)
ランチに
自由
(
じいう
)
にさして
頂
(
いただ
)
きたいのだ』
193
お
民
(
たみ
)
は、
194
お民
『アレ、
195
まアー』
196
と
袖
(
そで
)
に
顔
(
かほ
)
を
隠
(
かく
)
す。
197
蠑螈別
『コリヤお
民
(
たみ
)
、
198
何
(
なん
)
だ
其
(
その
)
スタイルは……
細
(
ほそ
)
い
目
(
め
)
をしやがつて………「アレ、
199
マア」
等
(
など
)
とランチ
将軍
(
しやうぐん
)
に
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
つてゐるのか』
200
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
201
お
民
(
たみ
)
は
泣声
(
なきごゑ
)
になり、
202
お民
『コレ、
203
モシ
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
204
お
情
(
なさけ
)
ない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな。
205
貴方
(
あなた
)
はまだ
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
が
分
(
わか
)
らないのですか』
206
蠑螈別
『ウン、
207
分
(
わか
)
らぬでもない、
208
が
然
(
しか
)
しあまり
妙
(
めう
)
な
素振
(
そぶり
)
をすると、
209
俺
(
おれ
)
も
聊
(
いささ
)
か
気
(
き
)
にならない
事
(
こと
)
はないからなあ』
210
ランチ
『
実
(
じつ
)
は
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
211
其
(
その
)
お
民
(
たみ
)
さまを
貸
(
か
)
して
頂
(
いただ
)
きたいと
云
(
い
)
ふのは、
212
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
綺麗
(
きれい
)
サツパリとやつて
貰
(
もら
)
ひたいのだ。
213
それでなければ
軍規
(
ぐんき
)
の
統一
(
とういつ
)
が
保
(
たも
)
たれないので、
214
此
(
この
)
ランチが
折入
(
をりい
)
つてお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
すのだ』
215
蠑螈別
『これは
怪
(
け
)
しからぬ。
216
何事
(
なにごと
)
かと
思
(
おも
)
へば
吾々
(
われわれ
)
の
女房
(
にようばう
)
を
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
与
(
あた
)
へよなどとは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
のお
言葉
(
ことば
)
で
厶
(
ござ
)
る。
217
さう
蕪
(
かぶら
)
か
大根
(
だいこん
)
の
様
(
やう
)
にチヤクチヤクと
人
(
ひと
)
に
与
(
や
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますか。
218
拙者
(
せつしや
)
は
命
(
いのち
)
がけの
芸当
(
げいたう
)
をやつて、
219
漸
(
やうや
)
くお
民
(
たみ
)
を
此処
(
ここ
)
まで
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
した
所
(
ところ
)
、
220
左様
(
さやう
)
なお
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くとは
意外
(
いぐわい
)
千万
(
せんばん
)
だ。
221
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
に
長居
(
ながゐ
)
は
恐
(
おそ
)
れだ。
222
オイ、
223
お
民
(
たみ
)
、
224
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
うここを
帰
(
かへ
)
らう』
225
お民
『ハイ、
226
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
んす。
227
それなら
何卒
(
どうぞ
)
こんな
恐
(
おそ
)
ろしい
処
(
ところ
)
は
嫌
(
いや
)
になりましたから、
228
貴方
(
あなた
)
の
好
(
す
)
きな
処
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
229
然
(
しか
)
し
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
230
ここを
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
るとなれば
忽
(
たちま
)
ち
困
(
こま
)
るのはお
金
(
かね
)
でせう。
231
貴方
(
あなた
)
がエキスさまの
手
(
て
)
を
通
(
とほ
)
してランチさまにお
渡
(
わた
)
しなさつた
五千
(
ごせん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
をスツカリ
返
(
かへ
)
して
貰
(
もら
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
232
それを
路銀
(
ろぎん
)
にして
二人
(
ふたり
)
が
睦
(
むつま
)
じう
暮
(
く
)
らさうぢやありませぬか』
233
蠑螈別
『ウン、
234
然
(
しか
)
し
男
(
をとこ
)
が
一旦
(
いつたん
)
出
(
だ
)
したものを
返
(
かへ
)
してくれなんて、
235
そんな
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な
事
(
こと
)
が
云
(
い
)
はれようか』
236
お民
『エーエ、
237
お
前
(
まへ
)
さまはそれだからいつも
駄目
(
だめ
)
だと
云
(
い
)
ふのよ。
238
此
(
この
)
先
(
さき
)
ここを
立
(
た
)
ち
出
(
で
)
て
乞食
(
こじき
)
でもする
積
(
つも
)
りで
御座
(
ござ
)
んすかい』
239
蠑螈別
『
成行
(
なりゆき
)
なら
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
240
あの
金
(
かね
)
だつて
俺
(
おれ
)
が
働
(
はたら
)
いて
造
(
つく
)
つた
金
(
かね
)
ぢやなし、
241
お
寅婆
(
とらばば
)
が
信者
(
しんじや
)
をチヨロまかして
貯
(
た
)
めた
金
(
かね
)
を
何々
(
なになに
)
して
来
(
き
)
たのだから、
242
そんな
執着心
(
しふちやくしん
)
は
持
(
も
)
つものぢやない。
243
サア
行
(
ゆ
)
かう』
244
とお
民
(
たみ
)
の
手
(
て
)
をとり
引
(
ひ
)
き
立
(
た
)
てようとする。
245
お
民
(
たみ
)
は
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
にふり、
246
金切
(
かなき
)
り
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
247
お民
『イエイエ
此
(
この
)
陣営
(
ぢんえい
)
に
置
(
お
)
いて
貰
(
もら
)
ふのならばお
金
(
かね
)
は
必要
(
ひつえう
)
はありませぬが、
248
忽
(
たちま
)
ち
今日
(
けふ
)
から
乞食
(
こじき
)
をせねばなりませぬ。
249
なんぼ
私
(
わたし
)
だつて、
250
貴方
(
あなた
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
乞食
(
こじき
)
する
位
(
くらゐ
)
なら
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
のお
妾
(
めかけ
)
にでもなりますわ。
251
ほんに
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
人
(
ひと
)
だな。
252
エー
口惜
(
くや
)
しい、
253
オーン オーン オーン』
254
蠑螈別
『あゝ、
255
それなら
仕方
(
しかた
)
がない。
256
ランチさま、
257
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
をここに
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
258
其
(
その
)
代
(
かは
)
りにお
民
(
たみ
)
を
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
渡
(
わた
)
す
事
(
こと
)
だけはお
断
(
ことわ
)
りを
申
(
まを
)
します』
259
ランチ
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はウラナイ
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまは、
260
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
妖術
(
えうじゆつ
)
を
使
(
つか
)
ひ、
261
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
でさへも、
262
ウラナイ
教
(
けう
)
に
一指
(
いつし
)
をも
染得
(
そめえ
)
ざるは
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
あるためだと
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
、
263
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
より
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
れば、
264
見
(
み
)
かけ
倒
(
だふ
)
しの
芸
(
げい
)
なし
猿
(
ざる
)
、
265
女
(
をんな
)
に
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うして
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふばかりが
芸当
(
げいたう
)
で、
266
何一
(
なにひと
)
つ
取柄
(
とりえ
)
が
厶
(
ござ
)
らぬ。
267
もはや
此
(
この
)
陣中
(
ぢんちう
)
に
於
(
おい
)
てはお
前
(
まへ
)
さまの
如
(
ごと
)
き
偽豪傑
(
にせがうけつ
)
はチツトも
必要
(
ひつえう
)
は
厶
(
ござ
)
らぬ。
268
然
(
しか
)
しながら
其方
(
そなた
)
の
連
(
つ
)
れ
添
(
そ
)
うて
厶
(
ござ
)
るお
民
(
たみ
)
は
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
女
(
をんな
)
、
269
加
(
くは
)
ふるに
十人並
(
じふにんなみ
)
優
(
すぐ
)
れた
美人
(
びじん
)
と
云
(
い
)
ひ、
270
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
女房
(
にようばう
)
には
最
(
もつと
)
も
適当
(
てきたう
)
と
認
(
みと
)
めるによつて、
271
お
民
(
たみ
)
をここに
残
(
のこ
)
し、
272
とつと
と
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
され』
273
蠑螈別
『これは
怪
(
け
)
しからぬ。
274
一旦
(
いつたん
)
貴方
(
あなた
)
の
幕僚
(
ばくれう
)
と
任命
(
にんめい
)
をされた
以上
(
いじやう
)
は、
275
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
理由
(
りいう
)
によつて
立去
(
たちさ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
276
万一
(
まんいち
)
たつて
立去
(
たちさ
)
れと
仰有
(
おつしや
)
るならば、
277
之
(
これ
)
から
拙者
(
せつしや
)
の
法力
(
ほふりき
)
を
以
(
もつ
)
て
此
(
この
)
陣営
(
ぢんえい
)
をメチヤメチヤに
破壊
(
はくわい
)
し、
278
其方
(
そなた
)
の
生命
(
いのち
)
を
刃
(
やいば
)
を
用
(
もち
)
ゐずして
奪
(
と
)
つて
見
(
み
)
ませう』
279
ランチ
『アハヽヽヽヽ、
280
何
(
なん
)
とえらい
勢
(
いきほひ
)
で
厶
(
ござ
)
るな。
281
見
(
み
)
ると
聞
(
き
)
くとは
大違
(
おほちが
)
ひ、
282
今迄
(
いままで
)
ならば
其
(
その
)
嚇
(
おど
)
しは
利
(
き
)
くだらうが、
283
もはや
今日
(
こんにち
)
となつては
内兜
(
うちかぶと
)
を
見透
(
みすか
)
した
此
(
この
)
方
(
はう
)
、
284
そんな
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
は、
285
いつかな いつかな
喰
(
く
)
ひませぬぞや。
286
何
(
なん
)
なつと
業力
(
ごふりき
)
を
出
(
だ
)
してランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
息
(
いき
)
の
根
(
ね
)
をとめて
御覧
(
ごらん
)
、
287
それが
出来
(
でき
)
れば
拙者
(
せつしや
)
の
役目
(
やくめ
)
をお
譲
(
ゆづ
)
り
申
(
まを
)
す
約束
(
やくそく
)
を
今
(
いま
)
からしてもよろしい。
288
マサカ
其
(
その
)
神力
(
しんりき
)
は
厶
(
ござ
)
るまい。
289
現在
(
げんざい
)
お
民
(
たみ
)
に
秋風
(
あきかぜ
)
を
吹
(
ふ
)
かされて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
な
今
(
いま
)
の
体裁
(
ていさい
)
、
290
これお
民
(
たみ
)
殿
(
どの
)
、
291
今
(
いま
)
其方
(
そなた
)
は
蠑螈別
(
いもりわけ
)
と
乞食
(
こじき
)
する
位
(
くらゐ
)
なら
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
のお
妾
(
めかけ
)
になると
云
(
い
)
つたな。
292
ウツフヽヽ
出来
(
でか
)
した
出来
(
でか
)
した
天晴
(
あつぱれ
)
天晴
(
あつぱれ
)
、
293
女丈夫
(
ぢよぢやうふ
)
の
亀鑑
(
きかん
)
、
294
貞女
(
ていぢよ
)
の
鑑
(
かがみ
)
、
295
名
(
な
)
を
末代
(
まつだい
)
に
伝
(
つた
)
ふであらう』
296
と
脱線
(
だつせん
)
だらけの
業託
(
ごふたく
)
を
吐
(
は
)
いてゐる。
297
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
躍気
(
やくき
)
となり、
298
蠑螈別
『
然
(
しか
)
らば
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
法力
(
ほふりき
)
によつて
此
(
この
)
陣中
(
ぢんちう
)
をたたき
破
(
やぶ
)
り、
299
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ながらランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
息
(
いき
)
の
根
(
ね
)
をとめてくれむ。
300
後
(
あと
)
で
後悔
(
こうくわい
)
召
(
め
)
さるな』
301
と
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
ち、
302
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
へ
行
(
い
)
つて
大自在天
(
だいじざいてん
)
の
前
(
まへ
)
に
数珠
(
じゆず
)
をもみながらキチンと
端坐
(
たんざ
)
し、
303
先
(
ま
)
づバラモン
大自在天
(
だいじざいてん
)
を
念
(
ねん
)
じ、
304
次
(
つぎ
)
に
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
305
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
殿
(
どの
)
、
306
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
称
(
とな
)
へ
終
(
をは
)
り、
307
ソロソロ
得意
(
とくい
)
の
観音経
(
くわんのんきやう
)
を
誦
(
しよう
)
じ
初
(
はじ
)
めた。
308
蠑螈別
『
真
(
しん
)
観
(
くわん
)
清
(
しやう
)
浄
(
じやう
)
観
(
くわん
)
309
広
(
くわう
)
大
(
だい
)
智
(
ち
)
慧
(
ゑ
)
観
(
くわん
)
310
悲
(
ひ
)
観
(
くわん
)
及
(
ぎう
)
慈
(
じ
)
観
(
くわん
)
311
常
(
じやう
)
願
(
ぐわん
)
常
(
じやう
)
瞻
(
せん
)
仰
(
ごう
)
312
無
(
む
)
垢
(
く
)
清
(
しやう
)
浄
(
じやう
)
光
(
くわう
)
313
慧
(
ゑ
)
日
(
にち
)
破
(
は
)
諸
(
せう
)
闇
(
あん
)
314
能
(
のう
)
伏
(
ふく
)
災
(
さい
)
風
(
ふう
)
火
(
くわ
)
315
普
(
ふ
)
明
(
みやう
)
照
(
せう
)
世
(
せ
)
間
(
けん
)
316
悲
(
ひ
)
体
(
たい
)
戒
(
かい
)
雷
(
らい
)
震
(
しん
)
317
慈
(
じ
)
意
(
い
)
妙
(
めう
)
大
(
だい
)
雲
(
うん
)
318
樹
(
じゆ
)
甘
(
かん
)
露
(
ろ
)
法
(
ほふ
)
雨
(
う
)
319
滅
(
めつ
)
除
(
ぢよ
)
煩
(
ぼん
)
悩
(
なう
)
炎
(
えん
)
320
諍
(
ぜう
)
証
(
しよう
)
経
(
きやう
)
官
(
くわん
)
処
(
しよ
)
321
怖
(
ふ
)
畏
(
ゐ
)
軍
(
ぐん
)
陣
(
ぢん
)
中
(
ぢう
)
322
念
(
ねん
)
彼
(
ぴ
)
観
(
くわん
)
音
(
のん
)
力
(
りき
)
323
衆
(
しう
)
怨
(
をん
)
悉
(
しつ
)
退
(
たい
)
散
(
さん
)
324
妙
(
めう
)
音
(
おん
)
観
(
くわん
)
世
(
ぜ
)
音
(
おん
)
325
梵
(
ぼん
)
音
(
おん
)
海
(
かい
)
潮
(
てう
)
音
(
おん
)
326
勝
(
しよう
)
彼
(
ひ
)
世
(
せ
)
間
(
けん
)
音
(
おん
)
327
是
(
ぜ
)
故
(
こ
)
須
(
しゆ
)
常
(
じやう
)
念
(
ねん
)
328
念
(
ねん
)
々
(
ねん
)
勿
(
もつ
)
生
(
しやう
)
疑
(
ぎ
)
329
観
(
くわん
)
世
(
ぜ
)
音
(
おん
)
浄
(
じやう
)
聖
(
しやう
)
330
於
(
お
)
苦
(
く
)
悩
(
なう
)
死
(
し
)
厄
(
やく
)
331
能
(
のう
)
為
(
ゐ
)
作
(
さ
)
依
(
え
)
怙
(
こ
)
』
332
かく
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
しながら
観音
(
くわんのん
)
を
念
(
ねん
)
じてゐる。
333
されど
観音
(
くわんのん
)
の
感応
(
かんのう
)
はありさうもなく、
334
仏
(
ぶつ
)
が
法
(
ほふ
)
とも
尻喰
(
けつくら
)
へ
観音
(
くわんのん
)
とも
仏
(
ほとけ
)
が
云
(
い
)
はぬので、
335
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
業
(
ごふ
)
を
煮
(
に
)
やし、
336
蠑螈別
『エー、
337
仏
(
ほとけ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
338
立派
(
りつぱ
)
な
能書
(
のうが
)
きばかり
並
(
なら
)
べよつて、
339
マサカの
時
(
とき
)
はチツとも
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬものぢやな。
340
もう
之
(
これ
)
から
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
は
拝
(
をが
)
んでやらぬわい。
341
之
(
これ
)
からはこつちから
尻喰
(
けつくら
)
へ
観音
(
くわんのん
)
ぢや』
342
とブツブツ
呟
(
つぶや
)
いて
居
(
ゐ
)
る
其
(
その
)
可笑
(
をか
)
しさ。
343
猫
(
ねこ
)
が
折角
(
せつかく
)
くはへた
松魚節
(
かつをぶし
)
を
犬
(
いぬ
)
にふんだくられた
時
(
とき
)
の
様
(
やう
)
な
不足
(
ふそく
)
さうな
面
(
つら
)
をして
洟
(
はな
)
をすすつてゐる。
344
(
大正一二・一・一二
旧一一・一一・二六
[
※
第1章から第7章の口述日は、版によって相違がある。詳細はオニペディアの「霊界物語第48巻の諸本相違点」を見よ
]
北村隆光
録)
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