高天原に発生する樹木は、仏説にあるように金、銀、瑪瑙、硨磲、瑠璃、玻璃、水晶などの七宝をもって飾られたごとくに美しい。神社、殿堂、その他住宅も内部に入ると愛善の徳と信真の光明に相応して驚くばかりに壮観で美麗である。
天国の団体はたいてい高いところに住居を占めている。その場所は自然界の山岳の頂上に掃除している。霊国の団体は少し低いところ、丘陵のようなところに住居を定めている。
霊国の天人は信の徳を主とし、愛の徳を従としている。智慧と証覚を磨き、宇宙の真理をよく悟り、次いで神の愛をよくその身に体し、天国の宣伝使として各団体に派遣される者が多いため、最高ならず最低ならず、中間の場所に位置を占めることになっているのである。
天人の中で団体的に生活を営まず、珍彦のように家々別々に住居を構えているのは、天人中においてももっとも智慧証覚にすぐれているため、光明が輝きわたり、惟神的に中心人物となるがゆえである。
また霊界においては時間空間の観念はなく、ただ情動の変化があるのみである。治国別と竜公が浮木の森で深い落とし穴に墜落し、人事不省となって霊界を巡覧したのはよほど長い旅行のようであるが、現界の時間でほんど二時間以内の間失神状態にあったのみである。
治国別と竜公は五三公に導かれて霊陽山の中央まで登りつめた。このとき五三公はまばゆい小さな火団となって空中に姿を隠してしまった。二人はそれに気づかず、天国の荘厳をうつつになってほめたたえていた。
二人は大神に感謝を述べ、天津祝詞と天の数歌を唱えた。あたりを見ると五三公の姿がないことに気が付いた。二人は自分たちの情動に慢心があったのではないかと省み、神様へのお詫びをするほかないと話し合っていた。
すると足下の土から片彦将軍が頭を突き出して現れた。そして二人に対して、ここは天国の霊陽山ではなく、バラモン教の聖場大雲山であり、悪神の力を使って二人をたばかって連れてきたのだと高笑いした。
片彦は家来に命じて二人を取り巻き、三五教を棄ててバラモン教に降参するように迫った。思案に暮れていた治国別は顔を上げて高笑いし、自分の神霊は万劫末代大神に信従するのみであり、これ以外に返答はないと言い放った。
竜公もまた片彦の脅しに屈せず、ここは第二天国の神聖な場所だと一喝し、音吐朗々と神言を奏上し始めた。治国別もそれに合わせた。
片彦は部下を集めて二人を金棒で粉砕せしめようとしたが、二人が神言を奏上し終わり「惟神霊幸倍坐世」と唱えると、片彦たちの姿は消えて四辺に芳香が薫じ、嚠喨とした音楽がしきりに聞こえてきた。
二人はここはやはり第二天国であり、片彦は悪魔の襲来でなく、神様のお試しだったのであろうと納得した。そこへ麗しい神人が現れて近寄り、二人が第二天国の試験に合格したことを告げた。そして、最奥天国の巡覧修行へと二人を案内した。この神人は言霊別命であった。