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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第48巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 変現乱痴
第1章 聖言
第2章 武乱泥
第3章 観音経
第4章 雪雑寝
第5章 鞘当
第6章 狂転
第2篇 幽冥摸索
第7章 六道の辻
第8章 亡者苦雑
第9章 罪人橋
第3篇 愛善信真
第10章 天国の富
第11章 霊陽山
第12章 西王母
第13章 月照山
第14章 至愛
第4篇 福音輝陣
第15章 金玉の辻
第16章 途上の変
第17章 甦生
第18章 冥歌
第19章 兵舎の囁
第20章 心の鬼
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第48巻(亥の巻)
> 第4篇 福音輝陣 > 第19章 兵舎の囁
<<< 冥歌
(B)
(N)
心の鬼 >>>
第一九章
兵舎
(
へいしや
)
の
囁
(
ささやき
)
〔一二七三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻
篇:
第4篇 福音輝陣
よみ(新仮名遣い):
ふくいんきじん
章:
第19章 兵舎の囁
よみ(新仮名遣い):
へいしゃのささやき
通し章番号:
1273
口述日:
1923(大正12)年01月14日(旧11月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年10月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
コー、ワク、エムの三人の守衛たちは一室に集まって、ランチ将軍たちの蘇生の祝い酒に舌鼓をうちながら雑談にふけっている。
ランチ将軍と片彦将軍が幽冥旅行の末、三五教に改心して軍隊を解散するという噂について、コーは憤慨し自分がバラモン軍を指揮して三五教を攻撃すると息巻くが、エムがなだめている。そこへ上官のテルンスがやってきて、三人の噂は本当かと問いただした。三人は、余計な疑いを抱かれてはと心配し、あいまいな返事をした。
テルンスは、必ず真実を白状させると言い残して去って行った。エムとワクは、コーが余計なことをいうからだと責め立てた。コーは二人に自分が言ったことを言いつけられてはたいへんと剣を取って二人に切りつけた。
コーは雪の中、石につまずいて転んだところをエムとワクは必死に逃げ、テルンスの官舎に逃げ込んだ。そして、コーがランチ・片彦が三五教に転身した後は自分がバラモン軍を指揮してあくまで斎苑館に攻めこむと息巻いていることを注進した。
それを聞くとテルンスはコーを褒め、武士は人殺しと戦利品収納が商売だと説き始めた。それを聞いてエムとワクは疑問を呈した。テルンスはやにわに刀を抜くと二人を切り殺した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-06-04 13:42:58
OBC :
rm4819
愛善世界社版:
271頁
八幡書店版:
第8輯 688頁
修補版:
校定版:
283頁
普及版:
135頁
初版:
ページ備考:
001
コー、
002
ワク、
003
エム
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
連
(
れん
)
は
陣営
(
ぢんえい
)
の
一室
(
いつしつ
)
に
集
(
あつ
)
まつて、
004
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
以下
(
いか
)
蘇生
(
そせい
)
の
祝酒
(
いはひざけ
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
をうちながら
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
005
コー『オイ、
006
チツと
怪体
(
けたい
)
ぢやないか。
007
エヽーン、
008
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
にしてゐよる。
009
俺
(
おれ
)
やモウこんな
事
(
こと
)
と
知
(
し
)
つたら、
010
こんな
処
(
ところ
)
までついて
来
(
く
)
るのぢやなかつたに、
011
えらい
番狂
(
ばんくる
)
はせだ』
012
ワク『オイ、
013
コー、
014
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふのぢやい。
015
テンと
貴様
(
きさま
)
の
仰有
(
おつしや
)
ることは
耳
(
みみ
)
に
疎通
(
そつう
)
せぬぢやないか』
016
コー
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
017
テンと
意味
(
いみ
)
が
疎通
(
そつう
)
せぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たのだ。
018
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
019
ランチ、
020
片彦
(
かたひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
女
(
をんな
)
の
取
(
と
)
り
合
(
あ
)
ひをして、
021
終
(
しま
)
ひにや
生命
(
いのち
)
のとりあひ
迄
(
まで
)
やつたぢやないか。
022
さうして
其
(
その
)
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふのはドテライお
化
(
ばけ
)
さまだ。
023
しようもない、
024
生
(
い
)
きたり
死
(
し
)
んだりしよつて、
025
亡者
(
まうじや
)
ばつかり
沢山
(
たくさん
)
にモジヤモジヤと
本営
(
ほんえい
)
に
集
(
あつ
)
まり、
026
亡者会
(
まうじやくわい
)
を
開
(
ひら
)
き
其
(
その
)
祝
(
いはひ
)
ぢやと
云
(
い
)
つて……
糞面白
(
くそおもしろ
)
くもない。
027
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
味
(
あぢ
)
なくもない
酒
(
さけ
)
を
滅多
(
めつた
)
矢鱈
(
やたら
)
に
強
(
し
)
ひよるぢやないか。
028
俺
(
おれ
)
やむかつくの、
029
むかつかないのつて、
030
亡者
(
まうじや
)
の
酒
(
さけ
)
と
思
(
おも
)
へや、
031
此
(
この
)
サケ
如何
(
どう
)
なるかと
思
(
おも
)
つて、
032
気
(
き
)
が
揉
(
も
)
めて
仕方
(
しかた
)
がないのぢや。
033
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ、
034
あの
金
(
かね
)
を
呉
(
く
)
れやがつた
蠑螈別
(
いもりわけ
)
やお
民
(
たみ
)
や
治国別
(
はるくにわけ
)
、
035
竜公
(
たつこう
)
、
036
其
(
その
)
他
(
ほか
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
副官
(
ふくくわん
)
、
037
〆
(
し
)
めて
八
(
はち
)
人
(
にん
)
も
天
(
あめ
)
の
八衢
(
やちまた
)
とか
幽冥界
(
いうめいかい
)
とかへ
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
て
俄
(
にはか
)
に
弱気
(
よわき
)
になり、
038
モウ
明日
(
あす
)
から
剣
(
けん
)
は
持
(
も
)
つ
事
(
こと
)
ならぬとか、
039
戦
(
いくさ
)
はやめだとか、
040
戦
(
いくさ
)
するよりも
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
拝
(
をが
)
めとか、
041
幽霊
(
いうれい
)
みた
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すぢやないか。
042
俺
(
おれ
)
やモウ、
043
それがムカムカするのだ。
044
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
行
(
い
)
つて
天晴
(
あつぱれ
)
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
現
(
あら
)
はし、
045
一国
(
いつこく
)
の
宰相
(
さいしやう
)
にでもならうと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つたのに、
046
サツパリ
源助
(
げんすけ
)
だ。
047
ワク、
048
貴様
(
きさま
)
は
之
(
これ
)
でも
何
(
なん
)
ともないか、
049
エヽーン』
050
ワク
『
智勇
(
ちゆう
)
兼備
(
けんび
)
のランチ
将軍
(
しやうぐん
)
さまだ。
051
それに
片彦
(
かたひこ
)
さまの
様
(
やう
)
な
豪傑
(
がうけつ
)
がついて
厶
(
ござ
)
るのだから、
052
吾々
(
われわれ
)
の
燕雀
(
えんじやく
)
は、
053
そんな
事
(
こと
)
に
口嘴
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れるものぢやない。
054
それよりも
結構
(
けつこう
)
なお
酒
(
さけ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
したのだから、
055
おとなしう
呑
(
の
)
んで
寝
(
ね
)
たがよからうぞ』
056
コー
『これが
如何
(
どう
)
して
寝
(
ね
)
られるかい。
057
武装
(
ぶさう
)
撤廃
(
てつぱい
)
だとか
軍備
(
ぐんび
)
廃止
(
はいし
)
だとか、
058
余
(
あま
)
り
胸
(
むね
)
のよくない
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
くぢやないか。
059
吾々
(
われわれ
)
一兵卒
(
いつぺいそつ
)
と
雖
(
いへど
)
も
之
(
これ
)
が
黙許
(
もくきよ
)
せられるか。
060
貴様
(
きさま
)
も
余程
(
よつぽど
)
腰抜
(
こしぬ
)
けだな』
061
ワク
『さうぢやないよ、
062
浄海
(
じやうかい
)
入道
(
にふだう
)
の
法衣
(
ほふえ
)
みた
様
(
やう
)
なものだ。
063
表面
(
うはべ
)
に
法衣
(
ほふい
)
を
着
(
き
)
て
裏面
(
うらべ
)
に
甲冑
(
かつちう
)
を
装
(
よそほ
)
うて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
な
有様
(
ありさま
)
だ。
064
あゝ
云
(
い
)
ふ
三五教
(
あななひけう
)
の
治国別
(
はるくにわけ
)
を
陥穽
(
かんせい
)
を
入
(
い
)
れて
殺
(
ころ
)
し
損
(
そこ
)
ねたり、
065
却
(
かへつ
)
て
自分
(
じぶん
)
が
死
(
し
)
ぬ
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
にあひ
給
(
たま
)
ひ、
066
治国別
(
はるくにわけ
)
や
其
(
その
)
他
(
ほか
)
の
者
(
もの
)
に
油断
(
ゆだん
)
させるために、
067
軍隊
(
ぐんたい
)
一般
(
いつぱん
)
にあの
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
をお
触
(
ふ
)
れになつたのだよ。
068
貴様
(
きさま
)
は
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
だからな』
069
コー
『それなら
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いてる。
070
如何
(
どう
)
やら、
071
それらしくないぞ。
072
最前
(
さいぜん
)
もテルンスが
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
たが、
073
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
並
(
ならび
)
に
副官
(
ふくくわん
)
迄
(
まで
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
三五
(
あななひ
)
のお
経
(
きやう
)
を
唱
(
とな
)
へ、
074
之
(
これ
)
から
軍隊
(
ぐんたい
)
を
解散
(
かいさん
)
するか、
075
但
(
ただし
)
は
一般
(
いつぱん
)
を
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
にするかと
云
(
い
)
ふ
了簡
(
れうけん
)
らしいぞ』
076
ワク
『そんな
事
(
こと
)
があつたら
俺
(
おれ
)
だつて
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にや
済
(
す
)
ますものか。
077
忽
(
たちま
)
ちハルナの
都
(
みやこ
)
に
注進
(
ちゆうしん
)
して、
078
お
褒
(
ほ
)
めを
頂
(
いただ
)
き、
079
マア
将軍
(
しやうぐん
)
の
後釜
(
あとがま
)
にでもなるのだな。
080
其
(
その
)
時
(
とき
)
や
貴様
(
きさま
)
も
秘書官
(
ひしよくわん
)
位
(
くらゐ
)
にしてやるわ。
081
さうして
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
の
相当
(
さうたう
)
の、
082
二三万
(
にさんまん
)
の
人口
(
じんこう
)
ある
刹帝利
(
せつていり
)
に
使
(
つか
)
つてやるから、
083
マア
楽
(
たのし
)
んで
待
(
ま
)
つたがよからう』
084
コー
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
085
果
(
はた
)
してランチ
将軍
(
しやうぐん
)
が
三五教
(
あななひけう
)
に
恍
(
とぼ
)
けよつたなら、
086
俺
(
おれ
)
が
全軍
(
ぜんぐん
)
の
指揮官
(
しきくわん
)
となり
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
し、
087
七千
(
しちせん
)
余
(
よ
)
ケ
国
(
こく
)
の
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
を
少
(
すくな
)
くも
五分
(
ごぶ
)
の
一
(
いち
)
位
(
くらゐ
)
頂戴
(
ちやうだい
)
し、
088
貴様
(
きさま
)
を
其
(
その
)
中
(
なか
)
の
一番
(
いちばん
)
小
(
ちひ
)
さい
国
(
くに
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
に
使
(
つか
)
はぬ
事
(
こと
)
もない。
089
それも
貴様
(
きさま
)
の
心
(
こころ
)
の
持
(
も
)
ち
様
(
やう
)
一
(
ひと
)
つだ。
090
アヽ
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ふと
腹立
(
はらだち
)
も
何処
(
どこ
)
かへ
消滅
(
せうめつ
)
して
了
(
しま
)
つた。
091
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
や
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
が
三五教
(
あななひけう
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
すれば、
092
却
(
かへつ
)
て
吾々
(
われわれ
)
の
栄進
(
えいしん
)
の
道
(
みち
)
が
開
(
ひら
)
くと
云
(
い
)
ふものだ。
093
かう
思
(
おも
)
へば
腹立
(
はらだち
)
処
(
どころ
)
か、
094
双手
(
さうしゆ
)
を
挙
(
あ
)
げて
賛成
(
さんせい
)
すべきものだ』
095
エム『
何
(
なん
)
と
俄
(
にはか
)
に
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
直
(
なほ
)
つたぢやないか。
096
然
(
しか
)
しさう
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思惑通
(
おもわくどほ
)
りに
行
(
い
)
くものぢやないよ。
097
あれだけ
武名
(
ぶめい
)
高
(
たか
)
き
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
だつて、
098
あの
通
(
とほ
)
り
治国別
(
はるくにわけ
)
に
敗北
(
はいぼく
)
したのだからな。
099
マア、
100
そんな
空想
(
くうさう
)
は
止
(
や
)
めにして、
101
もう
少
(
すこ
)
しばかりお
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
き、
102
果
(
はた
)
して
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
が
三五教
(
あななひけう
)
になられるか、
103
但
(
ただし
)
は
治国別
(
はるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
を
征伐
(
せいばつ
)
なさる
御
(
ご
)
計略
(
けいりやく
)
か、
104
トツクリと
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
待
(
ま
)
つて
調
(
しら
)
べた
上
(
うへ
)
でなけりや、
105
ウツカリした
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
将軍
(
しやうぐん
)
の
耳
(
みみ
)
にでも
這入
(
はい
)
つたら
大変
(
たいへん
)
だぞ』
106
かかる
所
(
ところ
)
へ
見廻
(
みまは
)
りに
来
(
き
)
たのは、
107
陣中
(
ぢんちう
)
にても
稍
(
やや
)
相当
(
さうたう
)
の
位置
(
ゐち
)
を
持
(
も
)
つてるテルンスであつた。
108
テルンスはツカツカと
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
109
テルンス
『オイ、
110
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つてゐたか』
111
コー『ハイ、
112
いえ
別
(
べつ
)
に
何
(
なん
)
にも
云
(
い
)
つた
覚
(
おぼ
)
えは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
113
治国別
(
はるくにわけ
)
を
一
(
ひと
)
つ
計略
(
けいりやく
)
にかけて
亡
(
な
)
き
者
(
もの
)
にすれば
結構
(
けつこう
)
だと
云
(
い
)
つたのです。
114
それより
外
(
ほか
)
は
何
(
なに
)
も
云
(
い
)
ひませぬ。
115
のうワク、
116
エムさうだろ』
117
テルンス
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
118
貴様
(
きさま
)
はハルナの
都
(
みやこ
)
へ
注進
(
ちゆうしん
)
するとか、
119
全軍
(
ぜんぐん
)
の
指揮官
(
しきくわん
)
になるとか、
120
大
(
だい
)
それた
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
したぢやないか』
121
コー
『ウン、
122
そりや
申
(
まを
)
しました。
123
然
(
しか
)
し
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
で
一寸
(
ちよつと
)
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
いてみたのですよ。
124
よう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
125
テルンスと
云
(
い
)
ふ
上官
(
じやうくわん
)
があるのに、
126
貴方
(
あなた
)
を
差措
(
さしお
)
いてそんな
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますかな。
127
何卒
(
なにとぞ
)
冷静
(
れいせい
)
にお
考
(
かんが
)
へ
下
(
くだ
)
さい』
128
テルンス
『おい、
129
ワク、
130
エム、
131
コーが
今
(
いま
)
云
(
い
)
つてる
事
(
こと
)
は
本当
(
ほんたう
)
か、
132
嘘
(
うそ
)
か、
133
如何
(
どう
)
だ』
134
ワク『ヘー、
135
嘘
(
うそ
)
らしうもあり、
136
本当
(
ほんたう
)
らしうも
厶
(
ござ
)
います。
137
十分
(
じふぶん
)
に
酩酊
(
めいてい
)
して
居
(
を
)
つたものですから、
138
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つたか
満足
(
まんぞく
)
に
聞
(
きこ
)
えませず、
139
私
(
わたくし
)
だつて
酒
(
さけ
)
が
云
(
い
)
つたのだから、
140
肝腎
(
かんじん
)
の
御
(
ご
)
本人
(
ほんにん
)
は
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
りや
知
(
し
)
りませぬ。
141
何卒
(
なにとぞ
)
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
てやつて
下
(
くだ
)
さい』
142
テルンス
『コリヤ
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
詐
(
いつは
)
りを
申
(
まを
)
しちやならないぞ。
143
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はないか』
144
ワク
『
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うて
居
(
ゐ
)
ましたから、
145
酔
(
よ
)
うて
居
(
を
)
つて
何
(
なん
)
の
覚
(
おぼ
)
えもないと
云
(
い
)
ふのです。
146
それが
事実
(
じじつ
)
ですもの』
147
テルンス
『ヨシ、
148
知
(
し
)
らぬなら
知
(
し
)
らぬでよい。
149
明日
(
あす
)
は
締木
(
しめき
)
にかけてでも
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
さす。
150
何程
(
なにほど
)
弁解
(
べんかい
)
致
(
いた
)
しても
此
(
この
)
方
(
はう
)
はシツカリ
証拠
(
しようこ
)
が
押
(
おさ
)
へてあるのだ』
151
と
云
(
い
)
ひながら
戸
(
と
)
をピシヤツと
荒
(
あら
)
く
閉
(
し
)
め、
152
又
(
また
)
次
(
つぎ
)
の
兵舎
(
へいしや
)
に
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
153
後
(
あと
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
小声
(
こごゑ
)
になり、
154
ワク『それ
見
(
み
)
よ、
155
コーの
奴
(
やつ
)
め、
156
仕様
(
しやう
)
もない
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬ
)
かすから
俺
(
おれ
)
迄
(
まで
)
も
疑
(
うたが
)
はれて
了
(
しま
)
ふのだ。
157
俺
(
おれ
)
とエムとが
貴様
(
きさま
)
の
云
(
い
)
つてる
事
(
こと
)
を
本当
(
ほんたう
)
に
証明
(
しようめい
)
しようものなら、
158
お
前
(
まへ
)
の
生命
(
いのち
)
はないのだぞ。
159
なあエム、
160
俺
(
おれ
)
だとて、
161
隠
(
かく
)
されるだけは
隠
(
かく
)
してやるけど、
162
痛
(
いた
)
い
目
(
め
)
や
辛
(
つら
)
い
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ふのなら、
163
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてやらう。
164
それが
自利
(
じり
)
上
(
じやう
)
、
165
否
(
いな
)
吾
(
わが
)
身
(
み
)
保全
(
ほぜん
)
の
上
(
うへ
)
に
於
(
おい
)
て
最
(
もつと
)
も
利巧
(
りかう
)
のやり
方
(
かた
)
だ』
166
エム
『さうとも、
167
俺
(
おれ
)
だとて、
168
痛
(
いた
)
い
目
(
め
)
や
苦
(
くる
)
しい
目
(
め
)
までしてコーの
保護
(
ほご
)
してやつた
所
(
ところ
)
で
別
(
べつ
)
に
喜
(
よろこ
)
ぶでもなし、
169
何時
(
いつ
)
も
組頭顔
(
くみがしらがほ
)
をしやがつて
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
頭抑
(
あたまおさ
)
へに
抑
(
おさ
)
へやがるから、
170
いい
敵討
(
かたきう
)
ちの
時
(
とき
)
が
到来
(
たうらい
)
したのだよ。
171
こらコー、
172
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたか』
173
と
稍
(
やや
)
巻舌
(
まきじた
)
になりながら
後前
(
あとさき
)
を
見
(
み
)
ずに
喋
(
しやべ
)
り
出
(
だ
)
した。
174
コーは
二人
(
ふたり
)
に
素破抜
(
すつぱぬ
)
かれちや
大変
(
たいへん
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
175
傍
(
かたはら
)
の
剣
(
けん
)
を
執
(
と
)
るより
早
(
はや
)
く
二人
(
ふたり
)
に
向
(
むか
)
つて
斬
(
き
)
りつけた。
176
二人
(
ふたり
)
は
手早
(
てばや
)
く
身
(
み
)
を
躱
(
かは
)
し、
177
コーの
両足
(
りやうあし
)
をグツとさらへて
仰向
(
あふむ
)
けにドタンと
倒
(
たふ
)
した。
178
コーは
大
(
おほ
)
いに
怒
(
いか
)
り、
179
コー
『
己
(
おの
)
れ、
180
両人
(
りやうにん
)
、
181
もはや
了簡
(
れうけん
)
はならぬ。
182
もう
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
死物狂
(
しにものぐる
)
ひだ、
183
覚悟
(
かくご
)
をせよ』
184
と
大刀
(
だいたう
)
を
提
(
ひつさ
)
げ
斬
(
き
)
つてかかる。
185
ワク、
186
エムの
両人
(
りやうにん
)
は
表
(
おもて
)
にバラバラと
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
187
雪道
(
ゆきみち
)
を
転
(
こ
)
け
惑
(
まど
)
ふ。
188
コーは
狂気
(
きやうき
)
になつて
追駆
(
おつか
)
け
廻
(
まは
)
る。
189
忽
(
たちま
)
ちコーは
雪
(
ゆき
)
に
包
(
つつ
)
まれた
捨石
(
すていし
)
に
膝頭
(
ひざがしら
)
を
打
(
う
)
ち、
190
コー
『アイタツタ』
191
と
云
(
い
)
つたきり
目
(
め
)
を
廻
(
まは
)
し、
192
抜刀
(
ぬきみ
)
の
儘
(
まま
)
雪
(
ゆき
)
の
上
(
うへ
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
193
エム、
194
ワクの
両人
(
りやうにん
)
は
狼狽
(
うろた
)
へてテルンスの
営舎
(
えいしや
)
へ
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
き、
195
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませながら、
196
ワク『テヽヽヽテルンス
様
(
さま
)
、
197
何卒
(
どうぞ
)
タヽヽヽ
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ』
198
と
云
(
い
)
ひながらエムと
共
(
とも
)
に
転
(
ころ
)
げ
込
(
こ
)
んだ。
199
テルンスは
二人
(
ふたり
)
の
慌
(
あわただ
)
しき
勢
(
いきほひ
)
に
不審
(
ふしん
)
を
抱
(
いだ
)
き、
200
テルンス
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
はワク、
201
エムの
両人
(
りやうにん
)
ぢやないか。
202
何
(
なに
)
を
騒々
(
さうざう
)
しく
夜中
(
よなか
)
にやつて
来
(
く
)
るのだ。
203
何
(
なに
)
か
変事
(
へんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
したのか』
204
ワク『タヽヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
が
出来
(
でき
)
ました。
205
コーの
奴
(
やつ
)
、
206
喋
(
しやべ
)
つた
事
(
こと
)
を
貴方
(
あなた
)
に
素破
(
すつぱ
)
ぬくと
申
(
まを
)
したら、
207
怒
(
おこ
)
つて
大刀
(
だいたう
)
を
振上
(
ふりあ
)
げ、
208
ソレ…そこに
追駆
(
おつか
)
けて
来
(
き
)
ます。
209
いつもなら
私
(
わたし
)
はあんな
奴
(
やつ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
や
五
(
ご
)
人
(
にん
)
恐
(
おそ
)
れはしませぬが、
210
何分
(
なにぶん
)
足
(
あし
)
も
充分
(
じうぶん
)
運
(
はこ
)
べぬやうに
酩酊
(
めいてい
)
してるものですから、
211
如何
(
どう
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ませぬ。
212
何卒
(
どうぞ
)
彼奴
(
あいつ
)
を
掴
(
つか
)
まへて
下
(
くだ
)
さい』
213
テルンス
『アー、
214
さうか、
215
コーは
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
つた』
216
エム『ヘー、
217
ハルナの
都
(
みやこ
)
へランチ
将軍
(
しやうぐん
)
、
218
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
三五教
(
あななひけう
)
に
惚
(
とぼ
)
けた
事
(
こと
)
を
早馬
(
はやうま
)
に
乗
(
の
)
つて
注進
(
ちゆうしん
)
し、
219
自分
(
じぶん
)
が
全軍
(
ぜんぐん
)
の
指揮官
(
しきくわん
)
になり、
220
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
になるとか
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
りましたよ。
221
私
(
わたくし
)
とワクとは、
222
もしもそんな
事
(
こと
)
になつたら、
223
テルンスさまを
将軍
(
しやうぐん
)
に
仰
(
あふ
)
ぐと
云
(
い
)
ひましたら、
224
大変
(
たいへん
)
に
怒
(
いか
)
つて
大刀
(
だいたう
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
き
私
(
わたし
)
を
殺
(
ころ
)
しにかかつたのです。
225
あんな
悪人
(
あくにん
)
はお
為
(
ため
)
になりませぬ。
226
何卒
(
どうぞ
)
捕手
(
とりて
)
を
出
(
だ
)
して
捕
(
つかま
)
へて
下
(
くだ
)
さい』
227
と
虚実
(
きよじつ
)
交々
(
こもごも
)
まぜて
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てた。
228
テルンス
『
何
(
なに
)
、
229
コーが
左様
(
さやう
)
の
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
つたか。
230
中々
(
なかなか
)
以
(
もつ
)
て
気骨
(
きこつ
)
のある
奴
(
やつ
)
だ。
231
大
(
おほい
)
に
見込
(
みこ
)
みがある。
232
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
之
(
これ
)
からコーを
拙者
(
せつしや
)
の
命令
(
めいれい
)
だと
云
(
い
)
つて
呼
(
よ
)
んで
来
(
こ
)
い。
233
相談
(
さうだん
)
し
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
があるから』
234
ワク『オヽヽオイ、
235
エム、
236
お
前
(
まへ
)
行
(
い
)
つて
来
(
こ
)
い。
237
俺
(
おれ
)
や
足
(
あし
)
がチツとも
動
(
うご
)
かないわ』
238
エム
『
俺
(
おれ
)
だつて
酒
(
さけ
)
に
足
(
あし
)
を
取
(
と
)
られてゐるのだから、
239
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
けぬぢやないか』
240
テルンス
『
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
けぬと
申
(
まを
)
すか、
241
此処
(
ここ
)
まで
如何
(
どう
)
して
来
(
き
)
たのだ』
242
エム『ハイ、
243
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
を
転
(
ころ
)
げて
来
(
き
)
ました』
244
テルンス
『
然
(
しか
)
らば
転
(
ころ
)
げて
呼
(
よ
)
んで
来
(
こ
)
い。
245
それで
結構
(
けつこう
)
だ』
246
エム
『へー、
247
それだけは
何卒
(
なにとぞ
)
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませな』
248
テルンス
『イヤ、
249
ならぬ。
250
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
だ』
251
エム
『
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
252
あんな
危険
(
きけん
)
の
奴
(
やつ
)
の
所
(
ところ
)
へ
行
(
ゆ
)
かうものなら、
253
私
(
わたくし
)
の
首
(
くび
)
がなくなります』
254
テルンス
『
首
(
くび
)
がなくなつた
所
(
ところ
)
で
別
(
べつ
)
に
俺
(
おれ
)
の
損害
(
そんがい
)
になるでもなし、
255
構
(
かま
)
はぬぢやないか。
256
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
の
小童
(
こわつぱ
)
武者
(
むしや
)
の
一人
(
ひとり
)
位
(
くらゐ
)
死
(
し
)
んでも
何
(
なに
)
かい。
257
武士
(
ぶし
)
は
戦場
(
せんぢやう
)
に
屍
(
かばね
)
を
曝
(
さら
)
すが
名誉
(
めいよ
)
だ』
258
エム
『オイ、
259
ワク、
260
貴様
(
きさま
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
御用
(
ごよう
)
に
行
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れないか』
261
ワク
『アイタヽヽ
俄
(
にはか
)
に
腰
(
こし
)
が
痛
(
いた
)
くなつた。
262
オイ、
263
エム、
264
一
(
ひと
)
つ
撫
(
な
)
でてくれ。
265
息
(
いき
)
がつまりさうだ。
266
アー、
267
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い』
268
テルンス
『アハヽヽヽ、
269
ナマクラの
奴
(
やつ
)
ばつかりだな、
270
卑怯者
(
ひけふもの
)
奴
(
め
)
が。
271
何
(
なん
)
のために
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
を
飼
(
か
)
うてあるのだ。
272
マサカの
時
(
とき
)
に
生命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てさす
為
(
ため
)
に、
273
高
(
たか
)
いパンを
食
(
く
)
はしておいてあるぢやないか』
274
エム『まるで
鶏
(
にはとり
)
か
豚
(
ぶた
)
を
飼
(
か
)
ふ
様
(
やう
)
に
仰有
(
おつしや
)
いますな。
275
そりやあまりです。
276
チツとは
情
(
なさけ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へて
下
(
くだ
)
さいませ』
277
テルンス
『
馬鹿
(
ばか
)
申
(
まを
)
せ。
278
慈悲
(
じひ
)
や
情
(
なさけ
)
に
構
(
かま
)
つて
居
(
を
)
つて、
279
こんな
人殺
(
ひとごろ
)
し
商売
(
しやうばい
)
が
出来
(
でき
)
るか。
280
残忍
(
ざんにん
)
の
上
(
うへ
)
にも
残忍性
(
ざんにんせい
)
を
発揮
(
はつき
)
するために、
281
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
剣術
(
けんじゆつ
)
をやつたり
柔術
(
じうじゆつ
)
を
稽古
(
けいこ
)
してるぢやないか』
282
エム
『それは
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
保護
(
ほご
)
する
為
(
ため
)
の
稽古
(
けいこ
)
ぢやありませぬか』
283
テルンス
『
馬鹿
(
ばか
)
申
(
まを
)
せ、
284
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
保護
(
ほご
)
する
為
(
ため
)
なら、
285
こんなに
沢山
(
たくさん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
がかたまる
必要
(
ひつえう
)
がないぢやないか。
286
かく
迄
(
まで
)
大部隊
(
だいぶたい
)
を
引率
(
いんそつ
)
して
将軍
(
しやうぐん
)
がお
出
(
い
)
でたのは
敵
(
てき
)
を
鏖
(
みなごろ
)
しにするためだ。
287
その
為
(
ため
)
に
槍
(
やり
)
や
剣
(
けん
)
を
持
(
も
)
たしてあるのだ。
288
槍
(
やり
)
や
剣
(
けん
)
は
決
(
けつ
)
して
猪
(
しし
)
や
狸
(
たぬき
)
を
斬
(
き
)
るためぢやないぞ。
289
人斬
(
ひとき
)
り
庖丁
(
ばうちやう
)
と
云
(
い
)
つて
人
(
ひと
)
を
斬
(
き
)
るためだ。
290
そんな
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
らずに
武士
(
ぶし
)
の
本分
(
ほんぶん
)
が
尽
(
つく
)
せるものか』
291
エム
『それでも、
292
軍人
(
ぐんじん
)
は
平和
(
へいわ
)
の
守
(
まも
)
り
神
(
がみ
)
と
云
(
い
)
ふぢやありませぬか』
293
テルンス
『
或
(
ある
)
時
(
とき
)
は
平和
(
へいわ
)
の
守
(
まも
)
り
神
(
がみ
)
となり、
294
或
(
ある
)
時
(
とき
)
は
天下
(
てんか
)
の
攪乱者
(
かくらんしや
)
となり、
295
血河
(
けつか
)
屍山
(
しざん
)
を
築
(
きづ
)
き、
296
以
(
もつ
)
て
敵国
(
てきこく
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
297
戦利品
(
せんりひん
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
収納
(
しうなふ
)
するのが
武士
(
ぶし
)
の
本領
(
ほんりやう
)
だ』
298
エム
『まるで
強盗
(
がうたう
)
みた
様
(
やう
)
なものですな』
299
テルンス
『
貴様
(
きさま
)
は
余程
(
よほど
)
よい
頓馬
(
とんま
)
だな。
300
軍隊
(
ぐんたい
)
の
必要
(
ひつえう
)
とならば
人家
(
じんか
)
も
焼
(
や
)
かねばならず、
301
人命
(
じんめい
)
もとらねばならず、
302
米麦
(
べいばく
)
、
303
金銭
(
きんせん
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
304
豚
(
ぶた
)
鶏
(
とり
)
、
305
大根
(
だいこん
)
蕪
(
かぶら
)
、
306
凡
(
すべ
)
て
必要品
(
ひつえうひん
)
は
無断
(
むだん
)
徴集
(
ちようしふ
)
するのだ。
307
それでなくては、
308
何
(
なん
)
で
軍隊
(
ぐんたい
)
の
維持
(
ゐぢ
)
が
保
(
たも
)
たれるか』
309
エム
『おい、
310
ワク、
311
テルンスさまの
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
あ、
312
チツと
道理
(
だうり
)
に
叶
(
かな
)
はぬぢやないか。
313
二
(
ふた
)
つ
目
(
め
)
には、
314
斬
(
き
)
るの、
315
盗
(
ぬす
)
むのと、
316
そんな
武士
(
ぶし
)
があるものだらうかな』
317
ワク
『そら、
318
さうだな』
319
テルンスは
抜
(
ぬ
)
く
手
(
て
)
も
見
(
み
)
せず
雪
(
ゆき
)
にひらめく
氷
(
こほり
)
の
刃
(
やいば
)
、
320
忽
(
たちま
)
ちエムの
首
(
くび
)
を
薙
(
な
)
ぎ
落
(
おと
)
し、
321
返
(
かへ
)
す
刀
(
かたな
)
にワクの
頭
(
かうべ
)
を
無残
(
むざん
)
にも
斬
(
き
)
り
落
(
おと
)
し、
322
雪
(
ゆき
)
の
庭
(
には
)
は
忽
(
たちま
)
ち
紅
(
くれなゐ
)
に
化
(
くわ
)
した。
323
(
大正一二・一・一四
旧一一・一一・二八
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
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