霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 冥歌(めいか)〔一二七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻 篇:第4篇 福音輝陣 よみ(新仮名遣い):ふくいんきじん
章:第18章 冥歌 よみ(新仮名遣い):めいか 通し章番号:1272
口述日:1923(大正12)年01月14日(旧11月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
浮木の森の陣営では、幽冥旅行無事終了の祝宴が開かれ、バラモン軍と三五教の和睦の宴も兼ねられた。三五教の大神を祭り、感謝祈願の祝詞を奏上した上で、広い居間に一同は円陣を作り、山海の珍味を集めて歌い舞った。
治国別はと竜公は、天界を讃える歌を歌った。ランチと片彦は、幽冥界のありさまを歌い、自らの罪を懺悔し三五教の宣伝使たちに救われた感謝を歌って戒めを示した。松彦とお寅はこれまでの経緯を歌い、浮木の森の陣営で人事不省となっていたランチ一同を介抱したときの様子を歌った。
お民は万公に歌を強いられ、おどけて自分が幽霊となって蠑螈別を怨む歌を歌い、また万公に取り憑くようにおどかして万公の肝を冷やし、一同の笑いを取った。
夜も更けたので、ランチは宴をお開きとし、一同は上機嫌で今に帰り寝に就いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-06-01 12:42:35 文字数:5222 OBC :rm4818
愛善世界社版:252頁 八幡書店版:第8輯 682頁 修補版: 校定版:263頁 普及版:128頁 初版: ページ備考:
001 浮木(うきき)の森(もり)の陣営(ぢんえい)には主客(しゆきやく)打(う)ち解(と)けて、002幽冥(いうめい)旅行(りよかう)無事(ぶじ)終了(しうれう)の祝宴(しゆくえん)が開(ひら)かれた。003而(しか)して又(また)敵味方(てきみかた)和睦(わぼく)の宴(えん)を兼(か)ねられたのは云(い)ふまでもない。004ランチ、005片彦(かたひこ)両将軍(りやうしやうぐん)を初(はじ)め、006治国別(はるくにわけ)は正座(しやうざ)に直(なほ)り、007アーク、008タール、009エキス、010蠑螈別(いもりわけ)、011お民(たみ)、012お寅(とら)、013竜公(たつこう)、014万公(まんこう)、015松彦(まつひこ)、016アク、017タク、018テク、019ガリヤ、020ケースの面々(めんめん)、021可(か)なり広(ひろ)き居間(ゐま)に円陣(ゑんぢん)を作(つく)り、022山海(さんかい)の珍味(ちんみ)を集(あつ)めて、023土手(どて)を切(き)らして歌(うた)ひ舞(ま)うた。024勿論(もちろん)それ以前(いぜん)に、025三五教(あななひけう)の大神(おほかみ)を祭(まつ)り、026感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し了(をは)つた事(こと)は断(ことわ)つておく。
027 治国別(はるくにわけ)は声調(せいてう)ゆるやかに歌(うた)ふ。
028治国別『高天原(たかあまはら)は何処(いづく)なる
029清(きよ)き尊(たふと)き神(かみ)の国(くに)
030栄(さか)えの花(はな)の永久(とこしへ)に
031咲(さ)きみち匂(にほ)ふ神(かみ)の国(くに)』
032竜公(たつこう)『高天原(たかあまはら)は何処(いづく)なる
033八重(やへ)棚雲(たなぐも)をかき分(わ)けて
034清(きよ)き尊(たふと)き神人(しんじん)の
035常磐(ときは)堅磐(かきは)にのぼりゆき
036無限(むげん)の歓喜(くわんき)に打(う)たれつつ
037喜(よろこ)びゑらぎ遊(あそ)ぶ国(くに)』
038治国(はるくに)『高天原(たかあまはら)の神国(しんこく)は
039愛(あい)の善徳(ぜんとく)充(み)ち充(み)ちて
040住(す)む天人(てんにん)は悉(ことごと)く
041神(かみ)の恵(めぐみ)に包(つつ)まれつ
042日々(にちにち)の業務(げふむ)を謹(つつし)みて
043神(かみ)の御国(みくに)の御(おん)為(ため)に
044心(こころ)を一(ひと)つに固(かた)めつつ
045円満(ゑんまん)具足(ぐそく)の団体(だんたい)を
046ますます清(きよ)く麗(うるは)しく
047開(ひら)き進(すす)むる天人(てんにん)の
048喜(よろこ)び勇(いさ)み住(す)まふ国(くに)』
049竜公(たつこう)『高天原(たかあまはら)の霊国(れいごく)は
050月(つき)の御神(みかみ)の永久(とこしへ)に
051鎮(しづ)まりいます瑞(みづ)の国(くに)
052山川(やまかは)清(きよ)く野(の)は茂(しげ)り
053春(はる)と夏(なつ)とのうららかな
054景色(けしき)に充(み)てる珍(うづ)の国(くに)
055百(もも)の木(こ)の実(み)はよく実(みの)り
056名(な)さへ分(わか)らぬ百鳥(ももどり)は
057常世(とこよ)の春(はる)を祝(いは)ひつつ
058喜(よろこ)びゑらぎ遊(あそ)ぶ国(くに)
059顔面(かんばせ)清(きよ)く照(て)りわたる
060姿(すがた)優(やさ)しくニコニコと
061憂(うれ)ひを知(し)らぬ神(かみ)の国(くに)
062人(ひと)と生(うま)れし吾々(われわれ)は
063此(この)世(よ)に生(い)きて大神(おほかみ)の
064道(みち)の御(おん)為(ため)世(よ)の為(ため)に
065心(こころ)を研(みが)き身(み)を尽(つく)し
066霊肉(れいにく)分離(ぶんり)の其(その)後(のち)は
067天(あめ)の八衢(やちまた)関所(せきしよ)をば
068越(こ)えずに直(すぐ)に天国(てんごく)へ
069上(のぼ)る御霊(みたま)に進(すす)むべく
070今(いま)より心(こころ)を研(みが)くべし
071神(かみ)は吾(われ)等(ら)と倶(とも)にあり
072人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
073いかでか神(かみ)に帰(かへ)らざらむ
074あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
075御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
076ランチ『根底(ねそこ)の国(くに)は醜(しこ)の国(くに)
077八十(やそ)の曲津(まがつ)や醜魂(しこたま)の
078ウヨウヨ群(むら)がり住(す)まふ国(くに)
079塵(ちり)や芥(あくた)に汚(けが)されて
080鼻(はな)つくばかり臭(くさ)い国(くに)
081常世(とこよ)の暗(やみ)の前後(まへうし)ろ
082足元(あしもと)さへも見(み)えぬ国(くに)
083暗(くら)き隧道(すゐだう)下(くだ)りゆき
084頭(あたま)を岩(いは)に打(う)ちつけて
085血潮(ちしほ)は流(なが)れ滝(たき)の如(ごと)
086苦(くるし)み痛(いた)む醜(しこ)の国(くに)
087危(あやふ)き橋(はし)の細長(ほそなが)く
088深谷川(ふかたにがは)に架(か)けられて
089身(み)を切(き)る計(ばか)りの寒風(かんぷう)が
090いや永久(とこしへ)に吹(ふ)きまくる
091冷(つめ)たき寒(さむ)き醜(しこ)の国(くに)
092ガリガリ亡者(まうじや)の此処(ここ)彼処(かしこ)
093秋(あき)の夕(ゆふべ)の虫(むし)の如(ごと)
094悲(かな)しみ歎(なげ)き聞(きこ)え来(く)る
095胸(むね)の塞(ふさ)がる暗(やみ)の国(くに)
096あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
097吾(われ)等(ら)は神(かみ)の御光(みひかり)に
098照(て)らされここに救(すく)はれて
099再(ふたた)び此(この)世(よ)の人(ひと)となり
100月日(つきひ)の光(ひかり)を委曲(まつぶさ)に
101拝(はい)する身(み)とはなりにけり
102思(おも)へば思(おも)へば天地(あめつち)の
103神(かみ)の恵(めぐみ)は何時(いつ)の世(よ)か
104かよわき人(ひと)の身(み)を以(もつ)て
105酬(むく)いまつらむ時(とき)やある
106心(こころ)を尽(つく)し身(み)を尽(つく)し
107如何(いか)なる悩(なや)みに遇(あ)ふとても
108神(かみ)の尊(たふと)き御恵(みめぐみ)に
109比(くら)べまつれば吾々(われわれ)が
110尽(つく)す誠(まこと)は九牛(きうぎう)の
111一毛(いちまう)だにも及(およ)ぶまじ
112許(ゆる)させ給(たま)へ惟神(かむながら)
113神(かみ)の御前(みまへ)にわびまつる』
114片彦(かたひこ)『中有界(ちううかい)の八衢(やちまた)に
115知(し)らず知(し)らずに迷(まよ)ひ込(こ)み
116此(この)世(よ)に生(うま)れて今日(けふ)までも
117体主(たいしゆ)霊従(れいじう)の悪業(あくごふ)を
118尽(つく)せし事(こと)を一々(いちいち)に
119伊吹戸主(いぶきどぬし)の門番(もんばん)に
120スツパぬかれた其(その)時(とき)は
121身(み)も世(よ)もあらぬ思(おも)ひして
122穴(あな)があるなら逸早(いちはや)く
123消(き)えたきやうな心持(こころもち)
124何(なん)とも云(い)へぬ苦(くる)しさに
125根底(ねそこ)の国(くに)に墜(おと)されて
126汚穢(をえ)の臭気(しうき)に充(みた)されし
127暗(くら)き岩穴(いはあな)腰(こし)屈(かが)め
128足(あし)を傷(きず)つけ頭(あたま)打(う)ち
129漸(やうや)く橋(はし)の袂(たもと)まで
130来(きた)りて見(み)れば沢山(たくさん)の
131冥官(めいくわん)達(たち)が立並(たちなら)び
132コハイ顔(かほ)して睨(にら)みつけ
133叱(しか)り飛(と)ばした恐(おそ)ろしさ
134それさへあるに四方(しはう)より
135骨(ほね)と皮(かは)とに窶(やつ)れたる
136ガリガリ亡者(まうじや)が蜂(はち)の巣(す)を
137つついた如(ごと)く現(あら)はれて
138吾(われ)等(ら)の体(からだ)に喰(くら)ひつき
139手足(てあし)にまとひし厭(いや)らしさ
140吹来(ふきく)る風(かぜ)は腥(なまぐさ)く
141自然(しぜん)に鼻(はな)のゆがむよな
142臭気(しうき)は四辺(あたり)を吹(ふ)きまくる
143如何(いか)なる深(ふか)き罪(つみ)あるも
144かやうな所(とこ)におとすとは
145大国彦(おほくにひこ)の神(かみ)様(さま)も
146聞(きこ)えませぬと心中(しんちう)に
147恨(うら)みし事(こと)も幾度(いくたび)か
148呼(よ)べど叫(さけ)べど祈(いの)れども
149何(なん)の証(しるし)も荒涙(あらなみだ)
150苦(くるし)み悶(もだ)ゆる折(をり)もあれ
151幽(かす)かに聞(きこ)ゆる宣伝歌(せんでんか)
152聞(き)くより我利(がり)々々(がり)亡者(まうじや)たち
153煙(けむり)の如(ごと)く消(き)え失(う)せぬ
154鬼(おに)のやうなる面(つら)さげた
155冥官(めいくわん)共(ども)もチクチクと
156姿(すがた)を隠(かく)し漸(やうや)くに
157四辺(あたり)は少(すこ)しく明(あか)くなり
158あゝ嬉(うれ)しやと思(おも)ふ折(をり)
159許(ゆる)しの雲(くも)に打乗(うちの)りて
160悠々(いういう)下(くだ)る女神(めがみ)あり
161女神(めがみ)は二人(ふたり)の侍女(じぢよ)を連(つ)れ
162吾(われ)等(ら)が前(まへ)に現(あら)はれて
163いとも優(やさ)しき御(おん)声(こゑ)に
164汝(なんぢ)はランチ将軍(しやうぐん)か
165お前(まへ)は片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)か
166高天原(たかあまはら)の最奥(さいあう)の
167日(ひ)の若宮(わかみや)に現(あ)れませる
168皇(すめ)大神(おほかみ)の御言(みこと)もて
169汝(なんぢ)が苦念(くねん)を助(たす)けむと
170下(くだ)り来(きた)れる紫(むらさき)の
171姫(ひめ)の命(みこと)のエンゼルと
172宣(の)らせ給(たま)ひし嬉(うれ)しさよ
173地獄(ぢごく)に仏(ほとけ)といふ事(こと)は
174かかる事(こと)をや云(い)ふならむ
175甦(よみがへ)りたる心地(ここち)して
176ハツと頭(かしら)をさぐる折(をり)
177紫姫(むらさきひめ)は淑(しとやか)に
178神(かみ)の御言(みこと)を宣(の)り給(たま)ひ
179金勝要(きんかつかねの)大神(おほかみ)の
180御心(みこころ)伺(うかが)ひ奉(まつ)らむと
181侍女(じぢよ)を伴(ともな)ひ雲(くも)に乗(の)り
182北方(ほつぱう)の空(そら)をいういうと
183渡(わた)りて姿(すがた)を隠(かく)しまし
184間(ま)もなく来(きた)る宣伝使(せんでんし)
185治国別(はるくにわけ)や竜公(たつこう)や
186松彦司(まつひこつかさ)其(その)他(ほか)の
187真人(まさびと)たちに救(すく)はれて
188再(ふたた)び此(この)世(よ)の明(あか)りをば
189拝(をが)みし時(とき)の嬉(うれ)しさよ
190此(この)大恩(だいおん)に酬(むく)うべく
191吾(われ)は之(これ)より真心(まごころ)を
192神(かみ)の御(おん)為(ため)道(みち)の為(ため)
193世人(よびと)の為(ため)に捧(ささ)げつつ
194常世(とこよ)の暗(やみ)の現界(げんかい)を
195一日(ひとひ)も早(はや)く大神(おほかみ)の
196珍(うづ)の光(ひかり)に照(て)らすべく
197治国別(はるくにわけ)に従(したが)ひて
198月(つき)の御国(みくに)はまだ愚(おろ)か
199百八十(ももやそ)国(くに)の果(はて)までも
200お道(みち)の為(ため)に雨露(あめつゆ)を
201冒(をか)して仕(つか)へ奉(まつ)るべし
202あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
203神(かみ)の御前(みまへ)に真心(まごころ)を
204捧(ささ)げて祈(いの)り奉(たてまつ)る』
205松彦(まつひこ)『バラモン軍(ぐん)の秘書官(ひしよくわん)と
206仕(つか)へまつりて河鹿山(かじかやま)
207数多(あまた)の軍勢(ぐんぜい)と諸共(もろとも)に
208進(すす)む折(をり)しも三五(あななひ)の
209神徳(しんとく)無限(むげん)の宣伝使(せんでんし)
210治国別(はるくにわけ)の一行(いつかう)に
211珍(うづ)の言霊(ことたま)打出(うちだ)され
212総隊(そうたい)崩(くづ)れ逃出(にげいだ)す
213其(その)みじめさに憤慨(ふんがい)し
214吾(われ)は竜公(たつこう)と諸共(もろとも)に
215懐谷(ふところだに)に身(み)を隠(かく)し
216善後(ぜんご)の策(さく)を講(かう)じつつ
217逃(に)げ遅(おく)れたる馬(うま)ともに
218トボトボ坂(さか)を降(くだ)りつつ
219祠(ほこら)の森(もり)に来(き)てみれば
220三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
221二人(ふたり)の家来(けらい)が頑張(ぐわんば)つて
222見張(みは)りしてゐる恐(おそ)ろしさ
223漸(やうや)く此(この)場(ば)のゴミにごし
224不思議(ふしぎ)の縁(えん)で兄弟(きやうだい)の
225目出度(めでた)く対面(たいめん)相済(あひす)ませ
226治国別(はるくにわけ)に従(したが)ひて
227野中(のなか)の森(もり)に来(き)て見(み)れば
228忽(たちま)ちドロンと消(き)え給(たま)ふ
229後(あと)に残(のこ)りし吾々(われわれ)は
230数人(すうにん)連(づ)れにて小北山(こぎたやま)
231ユラリの彦(ひこ)の神殿(しんでん)に
232進(すす)みて蠑螈別(いもりわけ)さまや
233お寅(とら)婆(ば)さまに出会(しゆつくわい)し
234妻(つま)と娘(むすめ)に巡(めぐ)り会(あ)ひ
235漸(やうや)くここに来(き)て見(み)れば
236前後(ぜんご)左右(さいう)に人(ひと)の声(こゑ)
237小山(こやま)の如(ごと)く集(あつ)まりて
238ウヨウヨウヨと騒(さわ)ぎゐる
239われを忘(わす)れて陣中(ぢんちう)に
240一行(いつかう)と共(とも)に走(はし)り入(い)り
241河辺(かはべ)に立(た)ちて眺(なが)むれば
242ここに四(よ)人(にん)の川(かは)はまり
243コリヤ大変(たいへん)と進(すす)みより
244数多(あまた)の軍兵(ぐんぴよう)にかつがせて
245物見櫓(ものみやぐら)の下(した)の間(ま)に
246四(よ)人(にん)を運(はこ)び惟神(かむながら)
247神(かみ)の授(さづ)けし言霊(ことたま)を
248声(こゑ)淑(しとや)かに宣(の)りつれば
249神(かみ)の恵(めぐみ)は目(ま)のあたり
250四(よ)人(にん)一度(いちど)に甦(よみがへ)り
251目(め)を開(ひら)きたる嬉(うれ)しさよ
252今(いま)まで捜(さが)し索(もと)めたる
253治国別(はるくにわけ)の師(し)の君(きみ)も
254竜公(たつこう)も此処(ここ)に現(あら)はれて
255互(たがひ)に手(て)に手(て)を握(にぎ)り合(あ)ひ
256無事(ぶじ)を祝(しゆく)せし嬉(うれ)しさは
257天(あま)の岩戸(いはと)の開(ひら)きたる
258百神(ももがみ)たちのゑらぎ声(ごゑ)
259それにも勝(まさ)る思(おも)ひなり
260あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
261神(かみ)の光(ひかり)の現(あら)はれて
262バラモン教(けう)の宣伝使(せんでんし)
263軍(いくさ)の思(おも)ひも今(いま)は早(はや)
264矛(ほこ)逆(さか)しまに立直(たてなほ)し
265剣(つるぎ)を扇子(せんす)に持(も)ちかへて
266神(かみ)の御前(みまへ)を伏拝(ふしをが)む
267目出度(めでた)き仕儀(しぎ)となりにけり
268これぞ全(まつた)く素盞嗚(すさのを)の
269神(かみ)の尊(みこと)の御(ご)威徳(ゐとく)が
270表(あら)はれ給(たま)ひし証(しるし)なり
271謹(つつ)み敬(ゐやま)ひ皇神(すめかみ)の
272御稜威(みいづ)を感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
273あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
274御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
275お寅(とら)『小北(こぎた)の山(やま)に現(あら)はれし
276其(その)名(な)も高(たか)きウラナイの
277教主(けうしゆ)の君(きみ)の蠑螈別(いもりわけ)
278其(その)お身分(みぶん)に似(に)もやらず
279信者(しんじや)の娘(むすめ)を唆(そそのか)し
280臍繰金(へそくりがね)をまき上(あ)げて
281おまけにお寅(とら)の頭(あたま)まで
282叩(たた)いて逃(に)げる強(がう)の者(もの)
283憎(につく)き奴(やつ)と思(おも)ひつめ
284一度(いちど)は腹(はら)が立(た)つたれど
285金剛杖(こんがうづゑ)に叩(たた)かれた
286其(その)為(ため)私(わたし)は神徳(しんとく)を
287腕(うで)もたわわに頂(いただ)いて
288スツカリ迷(まよ)ひの夢(ゆめ)も醒(さ)め
289三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
290此上(こよ)なく信(しん)じ奉(たてまつ)り
291松彦司(まつひこつかさ)に従(したが)ひて
292浮木(うきき)の森(もり)に来(き)てみれば
293右往(うわう)左往(さわう)と人(ひと)の影(かげ)
294只事(ただごと)ならじと近寄(ちかよ)りて
295よくよく見(み)ればお民(たみ)さま
296大地(だいち)に蛙(かはづ)を投(な)げたよに
297早縡切(はやことき)れてゐなさつた
298コリヤ大変(たいへん)と万公(まんこう)や
299アク、テク、タクの一同(いちどう)は
300人工(じんこう)呼吸(こきふ)を施(ほどこ)して
301天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し
302祈(いの)り奉(まつ)ればアラ不思議(ふしぎ)
303神徳(しんとく)忽(たちま)ち現(あら)はれて
304息(いき)ふき返(かへ)した嬉(うれ)しさよ
305之(これ)も全(まつた)く神(かみ)様(さま)の
306吾(われ)等(ら)を導(みちび)き給(たま)ふべく
307計(はか)り給(たま)ひし御業(みわざ)ぞと
308尊(たふと)み敬(ゐやま)ひ今(いま)ここに
309無事(ぶじ)の対面(たいめん)遂(と)げながら
310以前(いぜん)の恨(うらみ)を打忘(うちわす)れ
311一切(いつさい)万事(ばんじ)神(かみ)様(さま)に
312御(お)任(まか)せ申(まを)した気楽(きらく)さよ
313いざ之(これ)よりは吾々(われわれ)も
314心(こころ)の腹帯(はらおび)締(し)め直(なほ)し
315魔神(まがみ)の猛(たけ)ぶ荒野原(あらのはら)
316よぎりて神(かみ)の御(おん)為(ため)に
317力限(ちからかぎ)りに仕(つか)ふべし
318あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
319天地(てんち)を造(つく)り給(たま)ひたる
320皇(すめ)大神(おほかみ)よ大神(おほかみ)よ
321お寅(とら)が微衷(びちう)を愍(あはれ)みて
322此(この)大業(たいげふ)を詳細(まつぶさ)に
323遂(と)げさせ給(たま)へと願(ね)ぎまつる』
324万公(まんこう)『ヤア皆(みな)さま、325幽冥組(いうめいぐみ)も元気(げんき)恢復(くわいふく)し、326言霊車(ことたまぐるま)の運転(うんてん)も随分(ずいぶん)盛(さかん)なものでした。327之(これ)から一(ひと)つお民(たみ)如来(によらい)さまに、328何(なに)か面白(おもしろ)い歌(うた)を歌(うた)つて頂(いただ)きませうか、329ナアお民(たみ)さま、330あなたも随分(ずいぶん)○○の道(みち)にかけては、331剛(がう)の者(もの)だからなア』
332お民『ホヽヽヽヽ、333私(わたし)は余(あま)り慢心(まんしん)して高(たか)い所(ところ)まで上(あが)り、334神罰(しんばつ)を被(かうむ)つて、335階段(かいだん)から顛落(てんらく)し、336サツパリ幽冥(いうめい)旅行(りよかう)を致(いた)しました。337其(その)時(とき)後頭部(こうとうぶ)をシタタカ打(う)つたと見(み)え、338何(なん)だか頭(あたま)が変(へん)になつて、339到底(たうてい)歌(うた)なんか出(で)ませぬ、340何卒(どうぞ)御免(ごめん)下(くだ)さいませ』
341万公『コレコレお民(たみ)さま、342吾々(われわれ)はお前(まへ)さまの命(いのち)の救(すく)ひ主(ぬし)だ。343チツとは恩(おん)にきせるぢやないけれど、344歌(うた)位(くらゐ)歌(うた)つてくれたつて、345余(あま)り罰(ばち)が当(あた)りもせまいぞや。346蠑螈別(いもりわけ)さまの前(まへ)だつて、347さうテラすものぢやないワ。348歌(うた)つたり歌(うた)つたり』
349お民『エヽさういはれちや仕方(しかた)がありませぬ、350何(いづ)れ死(しに)ぞこなひですから、351生命(いのち)のあるやうな歌(うた)は歌(うた)へませぬ、352何(なん)でも宜(よろ)しいか』
353万公『何(なん)でも宜(よろ)しい、354お前(まへ)さまの声(こゑ)さへ聞(き)けばそれで満足(まんぞく)だ。355チツとは幽霊(いうれい)気分(きぶん)が交(まじ)つても差支(さしつかへ)ありませぬ。356現界(げんかい)の歌(うた)は随分(ずいぶん)聞(き)いてるが、357幽界(いうかい)の歌(うた)はまだ聞(き)いた事(こと)がないから、358チト位(くらゐ)、359いやらしてもいいから、360幽界(いうかい)で覚(おぼ)えて来(き)た事(こと)を歌(うた)つて下(くだ)さいな』
361お民『ハイ、362お恥(はづ)かしう厶(ござ)いますが、363それなら歌(うた)はして貰(もら)ひませう』
364と云(い)ひながら、365両手(りやうて)をニユツと突(つ)き出(だ)し、366掌(てのひら)をベロリとさげ、367舌(した)を出(だ)したり入(い)れたりしながら、368一口(ひとくち)言(い)つては踊(をど)る其(その)可笑(をか)しさ、369一同(いちどう)は思(おも)はず吹出(ふきだ)し、370俄(にはか)に興(きよう)を添(そ)へた。
371お民『あゝ恨(うら)めしや恨(うら)めしや
372私(わたし)は蠑螈別(いもりわけ)さまの
373悪性(あくしやう)男(をとこ)に騙(だま)されて
374浮木(うきき)の森(もり)まではるばると
375心(こころ)ならずもついて来(き)たワイな
376ヒユーヒユードロドロ ヒユー、ドロドロ
377恨(うら)めしや…………
378恨(うら)めしわいな足(あし)の裏(うら)に
379おまんまがひつついてウラ飯(めし)い
380こんな所(ところ)につくよりも
381なぜに表(おもて)の鼻(はな)の先(さき)
382天晴(あつぱれ)ついては下(くだ)されぬ
383そしたら私(わたし)と蠑螈別(いもりわけ)さまは
384誰(たれ)憚(はばか)らずママになる
385と思(おも)うてゐたのは今(いま)までだ
386冥土(めいど)の旅(たび)をやつてから
387白鬼(しろおに)さまに頼(たの)まれて
388審判(さばき)の役(やく)となつたわいな
389ホツホツホツ ホヽヽヽ
390あた厭(いや)らしい声(こゑ)がする
391此奴(こいつ)ア不思議(ふしぎ)とよく見(み)れば
392蠑螈別(いもりわけ)の副守(ふくしゆ)さま
393化物(ばけもの)みたよな女(をんな)をば
394沢山(たくさん)背(せな)に負(お)ひながら
395エチエチエチと走(はし)りゆく
396後姿(うしろすがた)を眺(なが)むれば
397青赤白(あをあかしろ)や萠黄(もえぎ)なす
398さも厭(いや)らしい鬼(おに)の顔(かほ)
399アーアこんな男(をとこ)とは
400私(わたし)は夢(ゆめ)にも知(し)らなんだ
401お寅(とら)婆(ば)さまはさぞやさぞ
402これ程(ほど)沢山(たくさん)曲鬼(まがおに)の
403憑(つ)いた男(をとこ)をさらはれて
404ホンに仕合(しあは)せなお方(かた)だと
405天(あめ)の八衢(やちまた)の関所(せきしよ)から
406打驚(うちおどろ)いてみてゐましたよ
407ヒユーヒユー ドロドロ ヒユー、ドロドロ
408ホヽヽホツホ、ホーホーホー
409ハテ恨(うら)めしやアな、恨(うら)めしや
410私(わたし)はこれから蠑螈別(いもりわけ)の
411後(あと)には従(つ)いて行(ゆ)きませぬ
412石塔(せきたふ)の横(よこ)から細(ほそ)い手(て)を
413ニユツと前(まへ)の方(はう)へ突(つ)き出(だ)して
414万公(まんこう)さまの首筋(くびすぢ)を
415冷(つめ)たい手々(てて)にてグツと掴(つか)み
416キヤツといはさにやおきませぬ
417ホヽヽヽホツホ恨(うら)めしや
418ヒヽヽヽヒツヒ気味(きみ)がよいや
419こんな女子(をなご)に睨(にら)まれたが最後(さいご)の錠(ぢやう)
420観念(くわんねん)なされや万公(まんこう)さま
421メツタに助(たす)かりつこはない程(ほど)に
422イヒヽヽヒツヒ、イヒヽヽヽ』
423万公『コリヤお民(たみ)……ドン、424やめてくれ、425何(なに)を云(い)ふのだ、426アタ厭(いや)らしい』
427お民『それだつて、428冥土(めいど)土産(みやげ)に唄(うた)へと云(い)つたぢやありませぬか、429私(わたし)が修業(しうげふ)して来(き)たのは、430こんなものですよ、431ホツホヽヽヽ』
432万公『エヽ気味(きみ)の悪(わる)い、433首筋(くびすぢ)がゾクゾクし出(だ)した。434コレお寅(とら)さま、435一杯(いつぱい)ついでくれ、436そしてお民(たみ)さまを暫(しばら)く、437あつちの方(はう)へ送(おく)つて行(い)つて下(くだ)さい……本当(ほんたう)に飲(の)んだ酒(さけ)がしゆんで了(しま)つたやうだ』
438松彦(まつひこ)『万公(まんこう)さまお民(たみ)幽霊(いうれい)におどされて
439ブルブル震(ふる)ひ汗(あせ)をかくなり』
440万公(まんこう)『われとてもお民(たみ)位(くらゐ)は恐(おそ)れねど
441あの言霊(ことたま)が気(き)にくはぬなり』
442お民(たみ)『万公(まんこう)さま恐(おそ)ろしいないとは云(い)はれまい
443其(その)顔色(かほいろ)はホヽヽヽヽヽヽ』
444万公(まんこう)『またしても厭(いや)らし声(こゑ)を出(だ)しよるな
445早(はや)く此(この)場(ば)を立(た)つてゆけかし』
446お民(たみ)『立(た)ちたくは山々(やまやま)なれど肝腎(かんじん)の
447蠑螈別(いもりわけ)がおもひ切(き)られず』
448万公(まんこう)『何(なに)吐(ぬか)す貴様(きさま)は口(くち)と心(こころ)とが
449裏表(うらおもて)故(ゆゑ)うらめしといふ……のだらう』
450お民(たみ)『本当(ほんたう)に恨(うら)めし人(ひと)は蠑螈別(いもりわけ)
451表(おもて)にめすは万公(まんこう)さまなり』
452万公(まんこう)『気(き)にくはぬお民(たみ)の奴(やつ)よ一時(いつとき)も
453頼(たの)みぢや程(ほど)に退(の)いてくれかし』
454お民(たみ)『幽霊(いうれい)に一旦(いつたん)なつた私(わし)ぢやもの
455お前(まへ)の首(くび)を抜(ぬ)かにや離(はな)れぬ』
456お寅(とら)『万公(まんこう)さま、コレお民(たみ)さま、お互(たがひ)に
457心得(こころえ)なされ、ここは陣中(ぢんちう)』
458蠑螈(いもり)『お民(たみ)といひお寅(とら)といつて騒(さわ)ぐとも
459高姫司(たかひめつかさ)にまさる者(もの)なし』
460お寅(とら)『さうだらう高姫(たかひめ)さまは若(わか)い故(ゆゑ)
461お民(たみ)さままで厭(いや)になるのだ。
462なアお民(たみ)、お前(まへ)の年(とし)はまだ二十(はたち)
463五十婆(ごじふば)さまを若(わか)う見(み)るとは。
464それ故(ゆゑ)に夢(ゆめ)の蠑螈別(いもりわけ)さまと
465人(ひと)が言(い)ふのも無理(むり)であるまい』
466ランチ『ヤア皆(みな)さま、467面白(おもしろ)く祝(いは)はして頂(いただ)きました。468最早(もはや)夜(よ)も更(ふ)けましたなれば、469御(お)寝(やす)み下(くだ)さいませ。470又(また)明日(みやうにち)ゆつくりと尊(たふと)き御(お)話(はなし)を伺(うかが)はして頂(いただ)きませう』
471 此(この)挨拶(あいさつ)に一同(いちどう)は上機嫌(じやうきげん)で各(かく)居間(ゐま)に帰(かへ)り、472寝(しん)に就(つ)いた。
473(大正一二・一・一四 旧一一・一一・二八 松村真澄録)
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