霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 月照山(げつせうざん)〔一二六七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻 篇:第3篇 愛善信真 よみ(新仮名遣い):あいぜんしんしん
章:第13章 月照山 よみ(新仮名遣い):げっしょうざん 通し章番号:1267
口述日:1923(大正12)年01月13日(旧11月27日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
治国別、竜公が十二人のエンゼルに導かれて進み入った宮殿は、兜率天の前殿または前宮であった。最奥の御殿は大至聖所と称えられる大神の御居間である。大神の御居間には、いかなる徳高いエンゼルでも踏み入ることはできない。
日の若宮といい、証覚のもっともすぐれた天人がただはるかに大神の御姿を拝することができるのみである。大神は天人の諸団体の前に太陽として現れ給い、その徳に応じて和光同塵的に光を減じて現れるのである。
大至聖所における大神の御経綸とその御準備に至っては、いかなる証覚のすぐれた天人といえども明白にこれを意識することはできないのである。
高天原に置いては、大神を源泉とする善徳の程度によって差別が生じるのみである。大神はすべての天人を導き、おのおのその所に安んぜしめ、天人が愛と信と智慧と証覚を得てその生涯を楽しましめ給う。
言霊別命は奥殿深く進み、治国別と竜公が神界の都合によって天国巡覧の修業に上り来った由を奏上し、大神の許しを受けて盛大な酒宴を前殿において催すこととなった。
正面に言霊別命が正座し、並んで西王母が右に座を占め、治国別と竜公はそのそばに席を設けられた。十二人エンゼルは麗しき葡萄の酒を捧げた。そして麗しい桃の実を一つずつ載せて治国別と竜公の前に据えた。
西王母は、大神の血と肉にもたとえられる貴重な葡萄酒を治国別と竜公の杯に注いだ。この葡萄酒を飲むときは心のすべての汚れを払しょくし、広大な神力を授かり永遠の生命をつなぐことができる。
次に西王母は桃の実をすみやかにこの場で食すよう二人に促した。この桃の実は前園になったものであった。西王母は一言も発せずにこにことうれしげに二人の顔を眺めていた。十二人の天所は音楽を奏し歌を歌い、舞を舞った。
竜公は玉依別という神名を賜った。竜公は感謝の意を表そうとしたが、天国の光に打たれて一言も発することができなかった。西王母でさえ、大神の御側近き神殿においては謹慎し一言も発し給わないのである。
しばらくすると、天女の舞姫は二人の婦人を先に立ててこの場に現れた。治国別がよくよく見れば、婦人は一人は紫姫、一人はお玉の方であった。紫姫は玉照彦、お玉の方は玉照姫を抱いていた。二人は西王母の目配せで玉照彦を治国別に、玉照姫を竜公の懐に抱かせた。
しばらくすると天女二人が治国別と竜公の前に進み来たり、玉照彦と玉照姫を大事そうに抱き取ると、奥殿の大神の御殿に進んで行った。言霊別命は西王母に目礼をなし、二人を手招きして御殿を去って行った。
二人が玉照彦・玉照姫を懐に抱いたことには深い意味があったのだが、二人はまだそれを解し得なかった。いずれ判然とする時が来るであろう。読者は楽しんで発表の時機を待たれることを希望する次第である。
三人が表門に出ると、幾千人もの麗しい天人が、金色の旗を翻しながら三人を祝し出迎えた。治国別と竜公は夢ではないかと思いながら、天津祝詞を奏上しつつ天人の歓びの声に送られて言霊別命と共に進んで行った。
言霊別命は麗しい山上に二人を伴い、四方の風景を眺めながら腰を下ろして休息した。言霊別命は、ここは第一天国の楽園で聖陽山であると二人に説明した。そして自分の使命はこれで終わったと告げた。
今や生命の酒と天国の桃の実をいただいた二人は、天人の言語を明瞭に理解できるようになっているので、自由に天国団体を巡り、月の大神のまします霊国の月宮殿に参拝の後、帰還するようにと言い残すと大光団と化して姿を隠し給うた。
治国別と玉依別(竜公)は感謝の涙に袖をうるおした。これより二人は天国の諸団体を訪問し、天人より歓待を受け、霊国の月宮殿を目指して進んで行った。二人はさまざまの花咲き匂う霊国の大野ケ原に立っていた。
一人の宣伝使があたりに霊光を輝かせながら近づいて二人を呼び止め、自分は大八洲彦命であると名乗った。二人は月照彦神の前身である霊国宣伝使に出会い、感謝の涙に暮れ、大八洲彦命についていく。
大八洲彦命は月照山に二人を導き、この奥に月の大神様の月宮殿があると案内した。三人は七つの門をくぐって邸内深く進んで行った。大八洲彦命は殿内にて珍しい果実や酒で二人を饗応した。二人は食しつつ、天津祝詞を怠らなかった。
奥殿より金色燦爛たる御衣を着して現れた大神は、西王母であった。大八洲彦命は西王母にうやうやしく頭を下げ、治国別と玉依別両人が天国の修業を果たせたと報告し、感謝の念を述べた。大八洲彦命は、西王母を月の大神様と呼んだ。
西王母は二人をねぎらい、これから天の八衢に戻ってアーク、タールの両人が迎えに来るのを待て、と伝えた。そうすれば二人は元の肉体に帰り、素盞嗚尊の神業に参加できるであろうと言い残して別れを告げた。
二人はその後ろ姿を拝み、感慨無量の態であった。大八洲彦命もまた両人に別れを告げて姿を隠した。二人は祝詞を奏上しながら中間天国、下層天国と下りて行き、神業に参加すべく天の八衢指して帰って行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-05-28 12:01:29 OBC :rm4813
愛善世界社版:187頁 八幡書店版:第8輯 658頁 修補版: 校定版:194頁 普及版:98頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎著作集 > 第一巻 神と人間 > 『霊界物語』 抄 > 愛善信真
001 治国別(はるくにわけ)002竜公(たつこう)両人(りやうにん)は、003十二(じふに)(にん)のエンゼルに(みちび)かれ、004宮殿(きうでん)奥深(おくふか)(すす)()つた。005(しか)しこの宮殿(きうでん)都率天(とそつてん)前殿(ぜんでん)とも前宮(ぜんきう)とも(とな)へられ、006最奥(さいあう)御殿(ごてん)ではなかつた。007最奥(さいあう)御殿(ごてん)(だい)至聖所(しせいしよ)(とな)へられ、008大神(おほかみ)()居間(ゐま)である。009(この)居間(ゐま)は、010如何(いか)なる(とく)(たか)きエンゼルと(いへど)一歩(いつぽ)()()れる(こと)出来(でき)ない。011()若宮(わかみや)(とな)へられ、012大神(おほかみ)高天原(たかあまはら)太陽(たいやう)として御姿(みすがた)(げん)じたまふ(ところ)である。013(ゆゑ)証覚(しようかく)(もつと)(すぐ)れたる天人(てんにん)のみ、014(はるか)(その)姿(すがた)八咫(やた)(かがみ)(ごと)(はい)するを()るのみである。015(かみ)(すべ)円満(ゑんまん)(さう)にましますが(ゆゑ)に、016此処(ここ)にては太陽(たいやう)(あら)はれ(たま)ひ、017(その)御光(みひかり)自然界(しぜんかい)太陽(たいやう)幾百倍(いくひやくばい)とも()れない(ひかり)(はな)たせたまひ、018容易(ようい)(あふ)(はい)する(こと)出来(でき)ない。019(しか)大神(おほかみ)諸団体(しよだんたい)天人(てんにん)(まへ)太陽(たいやう)として(あら)はれ(たま)(とき)がある。020(その)(とき)和光(わくわう)同塵(どうぢん)(てき)態度(たいど)をもつて、021第一(だいいち)天国(てんごく)天人(てんにん)には地上(ちじやう)()ける太陽(たいやう)七倍(しちばい)(ひかり)をもつて(あら)はれたまひ、022第二(だいに)天国(てんごく)()りては五倍(ごばい)(ひかり)をもつて(あら)はれたまひ、023第三(だいさん)天国(てんごく)には二倍(にばい)(ひかり)をもつて(あら)はれたまふが(れい)のやうに(うけたま)はる。024これはほんの大要(たいえう)であつて、025各団体(かくだんたい)026各天人(かくてんにん)個々(ここ)善徳(ぜんとく)如何(いかん)によりて、027(その)(ひかり)強弱(きやうじやく)()があるのである。028(また)(とき)には一個(いつこ)天人(てんにん)となつて団体中(だんたいちう)(あら)はれ(たま)(とき)もある。029さうして最奥(さいあう)(だい)至聖所(しせいしよ)()ける大神(おほかみ)()経綸(けいりん)(その)()準備(じゆんび)(いた)りては、030如何(いか)なる証覚(しようかく)(すぐ)れたる天人(てんにん)(いへど)も、031明白(めいはく)(これ)意識(いしき)する(こと)出来(でき)ない。032(その)(ゆゑ)至貴(しき)至尊(しそん)にして至智(しち)至聖(しせい)なる大神(おほかみ)()神慮(しんりよ)天人(てんにん)思慮(しりよ)(およ)(ところ)(あら)ず、033証覚(しようかく)(たつ)せざる(ところ)なるが(ゆゑ)である。
034 高天原(たかあまはら)天界(てんかい)(おい)一切(いつさい)統合(とうがふ)するものは(すなは)善徳(ぜんとく)である。035(この)善徳(ぜんとく)性相(せいさう)程度(ていど)如何(いかん)によつて天界(てんかい)差別(さべつ)(しやう)ずるに(いた)るものである。036さうして(かく)(ごと)諸天人(しよてんにん)統合(とうがふ)するは、037(けつ)して天人(てんにん)自作(じさく)(こう)(あら)ずして善徳(ぜんとく)源泉(げんせん)たる大神(おほかみ)()所為(しよゐ)である。038大神(おほかみ)(すべ)ての天人(てんにん)(みちび)き、039(これ)和合(わがふ)し、040(これ)塩梅(あんばい)(また)(その)善徳(ぜんとく)(ぢゆう)する(かぎ)(これ)をして自由(じいう)行動(かうどう)せしめ(たま)ふのである。041()くて大神(おほかみ)天人(てんにん)をして(おのおの)(その)(ところ)(やす)んぜしめ、042(あい)(しん)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)()(その)生涯(しやうがい)(たの)しましめ(たま)ふのである。043(ゆゑ)大神(おほかみ)()(そば)へは容易(ようい)(すす)(こと)出来(でき)ない。044言霊別(ことたまわけの)(みこと)奥殿(おくでん)(ふか)(すす)(たま)ひ、045治国別(はるくにわけ)046竜公(たつこう)神界(しんかい)都合(つがふ)によりて(ある)機会(きくわい)により、047天国(てんごく)巡覧(じゆんらん)修業(しうげふ)(のぼ)(きた)りし(よし)奏上(そうじやう)し、048大神(おほかみ)(ゆる)しを()け、049(ここ)盛大(せいだい)なる酒宴(しゆえん)前殿(ぜんでん)(おい)(もよほ)さるる(こと)となつた。050()正面(しやうめん)には言霊別(ことたまわけの)(みこと)正座(せいざ)し、051相並(あひなら)んで西王母(せいわうぼ)(その)(みぎ)()()め、052治国別(はるくにわけ)053竜公(たつこう)(その)(そば)座席(ざせき)(まう)けられた。054さうして十二(じふに)(にん)のエンゼルは(うるは)しき葡萄(ぶだう)(さけ)雲脚机(うんきやくづくゑ)()せ、055(うやうや)しく目八分(めはちぶ)(ささ)げて()(にん)(まへ)(しづか)(これ)()ゑた。056(つぎ)には(うるは)しき(もも)()雲脚机(うんきやくづくゑ)(ひと)(ひと)()せ、057(ひと)つは治国別(はるくにわけ)(まへ)に、058(ひと)つは竜公(たつこう)(まへ)にキチンと()ゑられた。059西王母(せいわうぼ)玻璃(はり)(さかづき)()言霊別(ことたまわけの)(みこと)にさし、060葡萄酒(ぶだうしゆ)をなみなみとつぎ(たま)うた。061言霊別(ことたまわけの)(みこと)押頂(おしいただ)いて(これ)()み、062盃洗(はいせん)(みづ)(あら)ひ、063(ふところ)より(かみ)取出(とりいだ)し、064(さかづき)をよく()(きよ)治国別(はるくにわけ)にさした。065治国別(はるくにわけ)押頂(おしいただ)き、066西王母(せいわうぼ)より葡萄酒(ぶだうしゆ)(また)八分(はちぶ)ばかり()がれ、067幾度(いくど)押頂(おしいただ)いて(これ)()み、068(また)もや盃洗(はいせん)(すす)()(きよ)めて竜公(たつこう)(わた)した。069竜公(たつこう)(さかづき)押頂(おしいただ)き、070感謝(かんしや)(なみだ)()れて()る。071西王母(せいわうぼ)(ひざ)をにじり()せ、072竜公(たつこう)(さかづき)半分(はんぶん)ばかりつがせたまうた。073(これ)にて(さかづき)(をは)りをつげた。074一人(ひとり)天女(てんによ)徳利(とくり)(さかづき)雲脚机(うんきやくづくゑ)()ゑた(まま)目八分(めはちぶ)()ち、075(つぎ)()(はこ)んだ。076この葡萄酒(ぶだうしゆ)大神(おほかみ)()(にく)とにもたとふべき(もつと)貴重(きちよう)なる(たまもの)であつた。077この(さけ)()(とき)(こころ)(すべ)ての(けが)れを払拭(ふつしき)し、078広大(くわうだい)なる神力(しんりき)(さづ)かり、079()永遠(ゑいゑん)生命(せいめい)をつなぎ()るものである。080(つぎ)西王母(せいわうぼ)天女(てんによ)(はこ)(きた)りし二個(にこ)(もも)両人(りやうにん)(あた)へ、081(すみや)かに(この)()(おい)(しよく)すべき(こと)(めい)(たま)うた。082二人(ふたり)(めい)(まま)押頂(おしいただ)き、083(その)風味(ふうみ)驚喜(きやうき)しつつ(しづ)かに腹中(ふくちう)(をさ)めて仕舞(しま)つた。084不思議(ふしぎ)にも(たね)米粒(こめつぶ)(ごと)(ちひ)さく、085いつとはなしに(たね)もろとも咽喉(のど)(とほ)つて仕舞(しま)つたのである。086この桃実(もものみ)前園(ぜんゑん)(みの)りしものにして、087三千(さんぜん)(ねん)(よはひ)(たも)つと()目出度(めでた)神果(しんくわ)である。088西王母(せいわうぼ)一言(いちごん)言葉(ことば)(はつ)したまはず、089ニコニコとしながら二人(ふたり)(かほ)(うれ)しげに(なが)()たまうた。090十二(じふに)天女(てんによ)(ふえ)091太鼓(たいこ)092(つづみ)093羯鼓(かつこ)094(その)(ほか)種々(いろいろ)楽器(がくき)吹奏(すゐそう)し、095面白(おもしろ)(うた)(さはや)かな(こゑ)にて(うた)ひ、096(その)(うち)(もつと)(わか)()ゆる()(にん)天女(てんによ)長袖(ちやうしう)(しとやか)胡蝶(こてふ)(まひ)()(をは)り、097一同(いちどう)辞儀(じぎ)をなし、098衣摺(きぬず)れの(おと)サヤサヤと(つぎ)()姿(すがた)(かく)した。099さうして竜公(たつこう)は、100玉依別(たまよりわけ)()神名(しんめい)(たま)ひ、101(よろこ)(いさ)(こと)一方(ひとかた)ならず、102何事(なにごと)(うた)(うた)つて、103感謝(かんしや)()(へう)せむとしたが、104天国(てんごく)(ひかり)()たれ、105(これ)(また)一言(ひとこと)(はつ)()なかつた。
106 西王母(せいわうぼ)がこの二人(ふたり)(むか)つて(この)宴席(えんせき)(おい)一言(ひとこと)言葉(ことば)(はつ)したまはなかつたのは、107(おそ)(おほ)大神(おほかみ)のお側近(そばちか)前殿(ぜんでん)であつたから、108遠慮(ゑんりよ)をせられたのである。109西王母(せいわうぼ)(ごと)(たふと)証覚(しようかく)(かみ)さへ謹慎(きんしん)(へう)し、110一言(いちごん)(はつ)したまはざる(くらゐ)なれば、111言霊別(ことたまわけの)(みこと)(また)沈黙(ちんもく)(まも)り、112治国別(はるくにわけ)113玉依別(たまよりわけ)は、114一言(いちごん)(はつ)せむにも(はつ)()なかつたのである。
115 (しばら)くあつて以前(いぜん)舞姫(まひひめ)は、116二人(ふたり)(うるは)しき婦人(ふじん)(さき)()(この)()(あら)はれて()た。117治国別(はるくにわけ)(その)二人(ふたり)(をんな)何処(どこ)ともなく見覚(みおぼ)えのあるやうな(かん)がしたので、118(しき)りに(くび)(かた)げよく()れば、119豈計(あにはか)らむや、120(さき)()つた(をんな)紫姫(むらさきひめ)であつた。121さうして紫姫(むらさきひめ)は、122玉照彦(たまてるひこ)(うれ)しげに(ふところ)(いだ)き、123何事(なにごと)玉照彦(たまてるひこ)(むか)つて(かほ)表情(へうじやう)をもつて(ささや)きつつ西王母(せいわうぼ)左側(ひだりがは)()()めた。124一人(ひとり)(をんな)をよく()れば、125(たま)(かた)であつた。126(たま)(かた)玉照姫(たまてるひめ)(ふところ)()き、127(おな)じく何事(なにごと)表情(へうじやう)をもつて玉照姫(たまてるひめ)(ささや)きながら静々(しづしづ)西王母(せいわうぼ)右側(みぎがは)()をしめた。128治国別(はるくにわけ)129玉依別(たまよりわけ)両人(りやうにん)はハツと(おどろ)(おも)はず()らずアヽと()つたが、130(その)()言葉(ことば)()げなかつた。131西王母(せいわうぼ)紫姫(むらさきひめ)132(たま)(かた)目配(めくば)せし(たま)うた。133紫姫(むらさきひめ)はスツと()つて治国別(はるくにわけ)(まへ)()をしめ、134()()はれぬ笑顔(ゑがほ)(つく)りながら玉照彦(たまてるひこ)治国別(はるくにわけ)(ふところ)()かせた。135(また)(たま)(かた)はスツと()つて玉依別(たまよりわけ)(まへ)(すす)みより、136(うれ)しげに笑顔(ゑがほ)(つく)り、137玉照姫(たまてるひめ)玉依別(たまよりわけ)(いだ)かしめ、138二人(ふたり)静々(しづしづ)西王母(せいわうぼ)左右(さいう)にかへつた。139(しばら)くすると天女(てんによ)二人(ふたり)140治国別(はるくにわけ)141玉依別(たまよりわけ)(まへ)(あら)はれ、142一人(ひとり)玉照彦(たまてるひこ)を、143一人(ひとり)玉照姫(たまてるひめ)大事(だいじ)さうに(かか)へ、144奥殿(おくでん)大神(おほかみ)御殿(ごてん)をさして足音(あしおと)(しの)ばせながら(しづか)(すす)()つた。145言霊別(ことたまわけの)(みこと)西王母(せいわうぼ)目礼(もくれい)をなし、146二人(ふたり)手招(てまね)きしながら(この)御殿(ごてん)()でて()く。147二人(ふたり)(おな)じく西王母(せいわうぼ)目礼(もくれい)をなし、148言霊別(ことたまわけ)(あと)(したが)前殿(ぜんでん)()でて()く。149それより中門(ちうもん)(くぐ)表門(おもてもん)()た。
150 (ちなみ)(この)前殿(ぜんでん)(おい)て、151玉照彦(たまてるひこ)152玉照姫(たまてるひめ)(いだ)かせたまひたるは、153(ふか)意味(いみ)のおはする(こと)ならむも、154二人(ふたり)(その)(なん)()たるかを(かい)()なかつた。155(しか)(いづ)れは(その)意味(いみ)判然(はんぜん)する(とき)()るであらう。156読者(どくしや)(たの)しんで発表(はつぺう)時機(じき)()たれむ(こと)希望(きばう)する次第(しだい)である。
157 (さん)(にん)表門(おもてもん)()た。158幾千(いくせん)(にん)とも()れぬ(うるは)しき天人(てんにん)は、159(おのおの)(うるは)しき金色(こんじき)(はた)神風(しんぷう)(ひるが)へしながら、160言霊別(ことたまわけの)(みこと)(ほか)二人(ふたり)前途(ぜんと)(しゆく)する(ごと)()えた。161二人(ふたり)(ゆめ)ではないかと(おも)ひながら、162(うるは)しき樹木(じゆもく)花卉(くわき)(みち)両側(りやうがは)(しげ)れる金砂(きんしや)()きつめたる(ごと)坦々(たんたん)たる大道(だいだう)を、163天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)しながら、164数多(あまた)天人(てんにん)(よろこ)びの(こゑ)(おく)られて、165何処(いづく)ともなく、166言霊別(ことたまわけの)(みこと)(とも)(すす)()くのであつた。
167 言霊別(ことたまわけの)(みこと)は、168とある(うるは)しき山上(さんじやう)二人(ふたり)(ともな)ひ、169四方(よも)風景(ふうけい)(なが)めながら、170此処(ここ)(こし)(おろ)休息(きうそく)をした。171二人(ふたり)(おな)じく(そば)(こし)(おろ)し、172天国(てんごく)荘厳(そうごん)()たれて唖然(あぜん)たるばかりであつた。
173言霊(ことたま)治国別(はるくにわけ)さま、174玉依別(たまよりわけ)さま、175大変(たいへん)貴方(あなた)はお(かげ)(いただ)きましたなア、176(いは)(まを)します』
177治国(はるくに)(なん)ともお(れい)(まを)(やう)(ござ)いませぬ。178大神(おほかみ)(さま)貴方(あなた)(おん)()(とほ)し、179吾々(われわれ)(ごと)きものに()かる(たふと)神庭(みには)(みちび)きたまひ、180結構(けつこう)賜物(たまもの)まで(いただ)きまして、181(なん)とも()感謝(かんしや)(じやう)()へませぬ』
182玉依(たまより)(わたくし)色々(いろいろ)()神徳(しんとく)(いただ)いた(うへ)183神名(しんめい)まで(たま)はりまして、184(じつ)(なん)(まを)してよろしいやら、185(わが)任務(にんむ)益々(ますます)重大(ぢゆうだい)なるを(さと)りました。186これと(まを)すも(まつた)大神(おほかみ)(さま)()仁慈(じんじ)187貴神(あなた)(さま)()()りなし、188(まこと)感謝(かんしや)()へませぬ』
189言霊別拙者(せつしや)大神(おほかみ)(さま)(めい)()りてお取次(とりつぎ)(いた)したばかり、190感謝(かんしや)()けては(こま)ります。191(すべ)天国(てんごく)のものは何事(なにごと)(みな)(かみ)(さま)()所為(しよゐ)(しん)じて()りますれば、192感謝(かんしや)などせられては(じつ)(こま)ります。193貴方(あなた)(がた)感謝(かんしや)言葉(ことば)()けるのは、194(えう)するに(かみ)(さま)()神徳(しんとく)(わたくし)する(こと)になります。195何卒(なにとぞ)(この)()如何(いか)なる(こと)ありとも、196(わたくし)(たい)して感謝(かんしや)言葉(ことば)()つて(くだ)さるな。197(これ)ばかりは(かた)(ねが)つて()きます。198どうぞ(かみ)(さま)感謝(かんしや)して(くだ)さいませ』
199治国(はるくに)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います、200キツと今後(こんご)心得(こころえ)ませう』
201()ひながら両手(りやうて)(あは)せ、202(ここ)両人(りやうにん)紫微宮(しびきう)(はう)(むか)つて感謝(かんしや)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)した。
203言霊別此処(ここ)第一(だいいち)天国(てんごく)楽園(らくゑん)で、204聖陽山(せいやうざん)(まを)します。205(みな)さま、206被面布(ひめんぷ)をお()りなさいませ。207最早(もはや)此処(ここ)(まで)(まゐ)りました以上(いじやう)は、208()りになつても()(わか)ります。209貴方(あなた)前殿(ぜんでん)(おい)生命(いのち)(さけ)(あた)へられ、210(くは)ふるに結構(けつこう)(もも)()(まで)(あた)へられ(たま)うたのですから、211もはや最高(さいかう)天国(てんごく)諸団体(しよだんたい)()巡覧(じゆんらん)になつても()(くら)むやうな(こと)もなく、212(また)(すべ)ての天人(てんにん)言語(げんご)明瞭(めいれう)(わか)ります。213(わたくし)はこれにて貴方(あなた)(がた)(たい)する今回(こんくわい)使命(しめい)(をは)りました。214どうぞ自由(じいう)天国(てんごく)団体(だんたい)をお(めぐ)(あそ)ばし、215(つき)大神(おほかみ)のまします霊国(れいごく)月宮殿(げつきうでん)()参拝(さんぱい)(うへ)216()帰顕(きけん)あらむ(こと)(のぞ)みます、217さらば』
218()ひながら、219(また)もや大光団(だいくわうだん)(くわ)して、220(てん)一方(いつぱう)(その)英姿(えいし)(かく)させたまうた。221二人(ふたり)(その)(うしろ)(なが)め、222(しばら)()(をが)()たりしが、223治国別(はるくにわけ)玉依別(たまよりわけ)(むか)ひ、
224治国別『ヤア玉依別(たまよりわけ)殿(どの)225(じつ)結構(けつこう)(こと)では(ござ)らぬか。226言霊別(ことたまわけの)(みこと)(さま)(むかし)(かみ)(さま)(うけたま)はつて()たが、227現在(げんざい)(わが)(まへ)(あら)はれて、228種々(しゆじゆ)結構(けつこう)教訓(けうくん)()れたまひ、229(また)もや五三公(いそこう)となつて()(くだ)し、230(われ)()(みちび)きたまひし(その)(たふと)さ、231有難(ありがた)さ、232治国別(はるくにわけ)はもはや感謝(かんしや)言葉(ことば)さへ()なくなりましたよ』
233玉依別(竜公)(おほ)せの(ごと)結構(けつこう)()(みちび)きに(あづ)かり、234こんな(うれ)しい(こと)(また)(ござ)いますまい。235アヽ(かみ)(さま)236この(よろこ)びと(さか)えをして永遠(ゑいゑん)(われ)()(のぞ)ませたまへ、237惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
238治国別惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
239()()感謝(かんしや)(なみだ)(そで)(うるほ)して()た。240(これ)より二人(ふたり)天国(てんごく)諸団体(しよだんたい)一々(いちいち)訪問(はうもん)し、241各団体(かくだんたい)天人(てんにん)より意外(いぐわい)優遇(いうぐう)()け、242感謝(かんしや)()ちた境涯(きやうがい)(おく)りながら、243(これ)より霊国(れいごく)月宮殿(げつきうでん)(まう)でむと聖陽山(せいやうざん)()()え、244霊国(れいごく)中心(ちうしん)目当(めあて)道々(みちみち)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)しながら(すす)()く。
245 局面(きよくめん)(たちま)一変(いつぺん)して(むらさき)246(あか)247()248(しろ)さまざまの(はな)()(にほ)大野(おほの)(はら)二人(ふたり)()つて()た。
249玉依別(竜公)『モシ治国別(はるくにわけ)さま、250見渡(みわた)(かぎ)際限(さいげん)なき百花(ひやくくわ)爛漫(らんまん)たる大原野(だいげんや)251これが所謂(いはゆる)霊国(れいごく)(ござ)いませうかなア』
252治国別『サア、253霊国(れいごく)らしう(ござ)いますなア。254誰人(たれ)天人(てんにん)()つて(たづ)ねたいものです』
255(はな)(をり)しも、256一人(ひとり)宣伝使(せんでんし)257霊光(れいくわう)四辺(あたり)(かがや)かせながら(うしろ)より足早(あしばや)に、258オーイオーイと(こゑ)かけ(すす)(きた)る。259二人(ふたり)()()まり、260宣伝使(せんでんし)(わが)(そば)(ちか)づくを()つて()た。
261宣伝使(大八洲彦命)(わたくし)大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)(まを)霊国(れいごく)宣伝使(せんでんし)(ござ)います。262貴方(あなた)治国別(はるくにわけ)263玉依別(たまよりわけ)のお二方(ふたかた)では(ござ)いませぬか』
264 二人(ふたり)はハツと大地(だいち)(しやが)み、
265治国別、玉依別『ハイ、266(おほ)せの(とほ)り、267治国別(はるくにわけ)268玉依別(たまよりわけ)両人(りやうにん)(ござ)います。269貴方(あなた)吾々(われわれ)日頃(ひごろ)(した)ひまつる月照彦(つきてるひこ)(さま)前身(ぜんしん)270大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)(さま)(ござ)いましたか、271(ぞん)ぜぬ(こと)とて(いか)失礼(しつれい)(いた)しました。272何卒(なにとぞ)不都合(ふつがふ)(だん)(ゆる)しを(ねが)ひます』
273(うれ)(なみだ)()れながら(こた)へた。274大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)両人(りやうにん)(したが)へ、275スタスタと(ひがし)()して(すす)()くその(あし)(はや)さ。276二人(ふたり)(おく)れじと一生(いつしやう)懸命(けんめい)にチヨコチヨコ(ばし)りになつて()いて()く。277何時(いつ)()にやら小高(こだか)丘陵(きうりよう)(うへ)()いて()た。278大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)二人(ふたり)(むか)ひ、
279大八洲彦命此処(ここ)霊国一(れいごくいち)名山(めいざん)280月照山(げつせうざん)(まを)します。281(この)(やま)御存(ごぞん)じの(とほ)(じつ)平坦(へいたん)場所(ばしよ)(ござ)います。282(これ)より(わたくし)(おく)へお(すす)みになれば、283(つき)大神(おほかみ)(さま)宮殿(きうでん)なる月宮殿(げつきうでん)()立派(りつぱ)御殿(ごてん)(ござ)います。284サア、285一足(ひとあし)です、286(いそ)ぎませう』
287(また)もや(いそ)(あゆ)()した。288二人(ふたり)(やうや)くにして七宝(しつぽう)をもつて(かざ)られたる(もん)(まへ)辿(たど)りついた。289数多(あまた)(うるは)しき天人(てんにん)大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)帰館(きくわん)()(むか)へ、290音楽(おんがく)(うた)をもつて歓迎(くわんげい)()(へう)するのであつた。291大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)諸天人(しよてんにん)一々(いちいち)挨拶(あいさつ)(かへ)しながら、292(なな)つの(もん)(くぐ)つて邸内(ていない)(ふか)(すす)()る。293二人(ふたり)(あと)(したが)(いきほひ)よく数多(あまた)天人(てんにん)会釈(ゑしやく)しながら、294月宮殿(げつきうでん)さして(いそ)()く。
295 大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)二人(ふたり)(みちび)き、296殿内(でんない)(ふか)(すす)み、297数多(あまた)天女(てんによ)(めい)じ、298(めづ)らしき果実(このみ)(さけ)などを饗応(きやうおう)し、299歌舞(かぶ)音曲(おんきよく)諸天人(しよてんにん)(そう)せしめ、300(その)旅情(りよじやう)(なぐさ)めた。301二人(ふたり)感謝(かんしや)(なみだ)(むせ)びつつ、302大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)(めい)のまにまに(めづ)らしき飲食(おんじき)(きつ)しつつ、303口中(こうちう)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(おこた)らなかつた。304奥殿(おくでん)より金色(きんしよく)燦爛(さんらん)たる御衣(ぎよい)(ちやく)し、305(うるは)しき容貌(ようばう)()()はれぬ(ゑみ)(たた)へ、306(この)()(あら)はれ(たま)うた大神(おほかみ)は、307最前(さいぜん)紫微宮(しびきう)(おい)て、308桃園(たうゑん)案内(あんない)をされた西王母(せいわうぼ)であつた。309西王母(せいわうぼ)(うしろ)には巨大(きよだい)なる月光(げつくわう)(かげ)(ごと)くつき(したが)(かがや)いて()た。310大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)(うやうや)しく(あたま)()げ、311王母(わうぼ)(むか)ひ、
312大八洲彦命『お(かげ)によりまして、313治国別(はるくにわけ)314玉依別(たまよりわけ)両人(りやうにん)(やうや)天国(てんごく)修業(しうげふ)(はた)しました。315これ(まつた)大神(おほかみ)(さま)御恵(みめぐみ)と、316両人(りやうにん)にかはり、317(あつ)(おん)(れい)申上(まをしあ)げます』
318(うやうや)しく奏上(そうじやう)した。319二人(ふたり)はハツとばかり(あたま)()げ、320(かしこ)まり()る。321西王母(せいわうぼ)両人(りやうにん)側近(そばちか)(すす)(たま)ひ、322左手(ゆんで)治国別(はるくにわけ)323右手(めて)玉依別(たまよりわけ)()(かた)(にぎ)り、324(なみだ)(おと)させ(たま)ひ、
325西王母(なんぢ)()両人(りやうにん)326()くも神命(しんめい)(おも)んじ天国(てんごく)霊国(れいごく)巡見(じゆんけん)(まつた)うせしよ。327(その)熱誠(ねつせい)感賞(かんしやう)するに(あま)りあり。328(なんぢ)()二人(ふたり)(これ)より(あめ)八衢(やちまた)(むか)つて(かへ)()け、329(なんぢ)(をし)()330アーク、331タールの両人(りやうにん)が、332キツと(むか)へに()るであらう。333さすれば(なんぢ)()両人(りやうにん)(もと)肉体(にくたい)(かへ)り、334素盞嗚(すさのをの)(みこと)神業(しんげふ)参加(さんか)()るであらう。335名残(なごり)()きざれど、336これにて訣別(けつべつ)するであらう』
337(おん)(こゑ)までも()湿(しめ)り、338振返(ふりかへ)振返(ふりかへ)奥殿(おくでん)()して(かへ)(たま)ふ。339二人(ふたり)はハツと後姿(うしろすがた)伏拝(ふしをが)み、340感慨(かんがい)無量(むりやう)(てい)であつた。341大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)両人(りやうにん)(むか)ひ、
342大八洲彦命『サラバ、343拙者(せつしや)はこれにてお(わか)(まを)さむ。344神業(しんげふ)のため随分(ずいぶん)()精励(せいれい)あれ』
345()()て、346(また)もや鮮麗(せんれい)なる(ひかり)となつて、347(その)姿(すがた)東天(とうてん)(かく)した。348これより二人(ふたり)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)しながら、349中間(ちうかん)天国(てんごく)()え、350下層(かそう)天国(てんごく)をも()()え、351神業(しんげふ)参加(さんか)すべく(あめ)八衢(やちまた)()して(かへ)()く。
352大正一二・一・一三 旧一一・一一・二七 加藤明子録)
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