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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第48巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 変現乱痴
第1章 聖言
第2章 武乱泥
第3章 観音経
第4章 雪雑寝
第5章 鞘当
第6章 狂転
第2篇 幽冥摸索
第7章 六道の辻
第8章 亡者苦雑
第9章 罪人橋
第3篇 愛善信真
第10章 天国の富
第11章 霊陽山
第12章 西王母
第13章 月照山
第14章 至愛
第4篇 福音輝陣
第15章 金玉の辻
第16章 途上の変
第17章 甦生
第18章 冥歌
第19章 兵舎の囁
第20章 心の鬼
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舎身活躍(第37~48巻)
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第48巻(亥の巻)
> 第4篇 福音輝陣 > 第15章 金玉の辻
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(B)
(N)
途上の変 >>>
第一五章
金玉
(
きんたま
)
の
辻
(
つじ
)
〔一二六九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻
篇:
第4篇 福音輝陣
よみ(新仮名遣い):
ふくいんきじん
章:
第15章 金玉の辻
よみ(新仮名遣い):
きんたまのつじ
通し章番号:
1269
口述日:
1923(大正12)年01月14日(旧11月28日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年10月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
治国別と玉依別(竜公)は、八衢を逍遥しながら四つ辻の辻堂の前に差し掛かった。二人はあたりの様子から、娑婆が近くなってきたことを知り、伊吹戸主神様の忠告を思い返しながら雑談にふけっている。
そこへ蠑螈別とエキスの精霊が酔っ払ってやってきた。いずれも肉体に帰ることができる精霊であるので、互いに意思疎通ができた。蠑螈別は、お民がここを通らなかったかと治国別と竜公に尋ねた。
蠑螈別は竜公が知らないと答えると、お民を隠しているに違いないと言いがかりをつけてきた。エキスはもうお民やお寅にかかわるのはこりごりだと辟易している。
蠑螈別が治国別を殴ったので、蠑螈別と竜公は喧嘩になり、蠑螈別の助太刀にはいったエキスも合せて三人とも金玉を握り合って目を回し、その場に倒れてしまった。治国別はあわてて天の数歌を上げ、鎮魂を施した。竜公は息を吹き返し、蠑螈別とエキスは起き上がると、雲を霞と逃げてしまった。
二人の耳には、アークとタールが呼ばわる声が聞こえてきた。にわかにぱっと明るくなったと思うと、治国別と竜公の身は、浮木の森の陣営のランチ将軍の居間に横たわっていた。枕元にはアークとタールが心配そうな顔をして控えていた。
アークとタールは、二人がランチと片彦の計略にかかったことに気が付き、ランチが留守の間に縄梯子を下ろして二人を引き上げ、介抱していた。四人は互いに無事を祝し、大神の前に端座して祝詞を奏上した。
治国別は蠑螈別の身の上が気にかかって探しに行き、雪が人間の形に積もって高くなっているところを発見した。治国別と竜公は、雪の中から倒れていた蠑螈別とエキスを助け出した。
治国別はさらに、ランチ、片彦両将軍をはじめお民の身の上が気にかかると、物見やぐらに向かった。蠑螈別もお民の身の上が心配だと聞いて、治国別たちと一緒に向かった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-05-30 16:31:29
OBC :
rm4815
愛善世界社版:
213頁
八幡書店版:
第8輯 668頁
修補版:
校定版:
221頁
普及版:
112頁
初版:
ページ備考:
001
治国別
(
はるくにわけ
)
、
002
玉依別
(
たまよりわけ
)
は
八衢
(
やちまた
)
をブラリブラリと
逍遥
(
せうえう
)
しながら
或
(
ある
)
四辻
(
よつつじ
)
の
辻堂
(
つじだう
)
の
前
(
まへ
)
に
差掛
(
さしかか
)
つた。
003
玉依別
『
治国別
(
はるくにわけ
)
さま、
004
どうやら
玉依別
(
たまよりわけ
)
の
称号
(
しやうがう
)
も
断末魔
(
だんまつま
)
が
近付
(
ちかづ
)
いたやうです。
005
ここは
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
十町
(
じつちやう
)
許
(
ばか
)
り
手前
(
てまへ
)
の
破
(
やぶ
)
れ
堂
(
だう
)
ぢやありませぬか、
006
どうも
記憶
(
きおく
)
に
残
(
のこ
)
つてゐるやうです』
007
治国別
『
成程
(
なるほど
)
、
008
川
(
かは
)
の
水音
(
みづおと
)
迄
(
まで
)
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
009
何
(
なん
)
とはなしに
娑婆
(
しやば
)
近
(
ちか
)
くなつた
様
(
やう
)
だ』
010
玉依別
『
伊吹戸主
(
いぶきどぬし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にキツウ
釘
(
くぎ
)
をさされて
来
(
き
)
ました。
011
本当
(
ほんたう
)
に
吾々
(
われわれ
)
も
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら、
012
鼻
(
はな
)
ばかり
高
(
たか
)
くなつて
居
(
を
)
つたと
見
(
み
)
えますな。
013
柔
(
やはら
)
かく
厳
(
きび
)
しくカツンとやられた
時
(
とき
)
の
恥
(
はづ
)
かしさ、
014
苦
(
くる
)
しさ、
015
今
(
いま
)
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しても
冷汗
(
ひやあせ
)
が
出
(
で
)
ますワ』
016
治国別
『
余
(
あま
)
りお
喋
(
しやべ
)
りが
過
(
す
)
ぎたからだ。
017
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
ご
)
神諭
(
しんゆ
)
にも……
何
(
なん
)
にも
知
(
し
)
らずに
途中
(
とちう
)
の
鼻高
(
はなだか
)
が、
018
鼻
(
はな
)
ばかり
高
(
たか
)
うして
偉
(
えら
)
さうに
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
るが、
019
余
(
あま
)
り
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
うて
上
(
うへ
)
も
見
(
み
)
えず、
020
鼻
(
はな
)
が
目
(
め
)
の
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
して、
021
足許
(
あしもと
)
は
尚
(
なほ
)
見
(
み
)
えず、
022
先
(
さき
)
も
見
(
み
)
えず、
023
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものであるぞよ。
024
神
(
かみ
)
が
鼻
(
はな
)
を
捻折
(
ねぢを
)
りて
改心
(
かいしん
)
さした
上
(
うへ
)
、
025
誠
(
まこと
)
の
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かしてやるぞよ……とお
示
(
しめ
)
しになつてゐるが、
026
今
(
いま
)
伊吹戸主
(
いぶきどぬしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
説教
(
せつけう
)
を
聞
(
き
)
かされて、
027
実
(
じつ
)
に
御
(
ご
)
神諭
(
しんゆ
)
の
尊
(
たふと
)
い
事
(
こと
)
を、
028
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
悟
(
さと
)
つたよ』
029
玉依別
『ハ、
030
さうですな。
031
之
(
これ
)
から
現界
(
げんかい
)
へ
帰
(
かへ
)
つたら、
032
科学
(
くわがく
)
的
(
てき
)
霊学
(
れいがく
)
研究
(
けんきう
)
などと
偉
(
えら
)
さうにホラを
吹
(
ふ
)
いてゐる
途中
(
とちう
)
の
鼻高
(
はなだか
)
の
鼻
(
はな
)
つパチを
捻折
(
ねぢを
)
つてやらぬ
事
(
こと
)
には、
033
到底
(
たうてい
)
霊界
(
れいかい
)
の
片鱗
(
へんりん
)
も
宇宙
(
うちう
)
の
真相
(
しんさう
)
もヨウ
分
(
わ
)
けず、
034
亡者然
(
まうじやぜん
)
と
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
ゐ
)
る
始末
(
しまつ
)
に
了
(
を
)
へぬ
奴
(
やつ
)
を、
035
鼻
(
はな
)
を
捻折
(
ねぢを
)
つて
助
(
たす
)
けてやりませうかな』
036
治国別
『アハヽヽヽ、
037
自分
(
じぶん
)
の
顔
(
かほ
)
は
見
(
み
)
えませぬか、
038
玉依別
(
たまよりわけ
)
さま、
039
お
前
(
まへ
)
さまの
鼻
(
はな
)
は
随分
(
ずいぶん
)
高
(
たか
)
うなりましたよ』
040
玉依別
『ヤア、
041
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
霊界
(
れいかい
)
ぢやと
見
(
み
)
えて、
042
想念
(
さうねん
)
の
延長
(
えんちやう
)
を
来
(
きた
)
し、
043
鼻
(
はな
)
迄
(
まで
)
延長
(
えんちやう
)
してゐました、
044
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
に
折
(
を
)
つて
貰
(
もら
)
つて、
045
これで
満足
(
まんぞく
)
な
顔
(
かほ
)
になりました。
046
アヽ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
047
治国別
『
伊吹戸主
(
いぶきどぬしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
諭
(
さと
)
しを
忘
(
わす
)
れちやなりませぬよ』
048
玉依別
『モシ
忘
(
わす
)
れたら、
049
貴方
(
あなた
)
気
(
き
)
をつけて
下
(
くだ
)
さいや。
050
又
(
また
)
潜在
(
せんざい
)
意識
(
いしき
)
とか、
051
潜在
(
せんざい
)
神格
(
しんかく
)
となつて、
052
心内
(
しんない
)
深
(
ふか
)
く
潜伏
(
せんぷく
)
致
(
いた
)
しました
時
(
とき
)
にや、
053
副守
(
ふくしゆ
)
が
跋扈
(
ばつこ
)
して、
054
又
(
また
)
脱線
(
だつせん
)
をするかも
知
(
し
)
れませぬから、
055
どうぞ
其
(
その
)
都度
(
つど
)
々々
(
つど
)
、
056
御
(
ご
)
忠告
(
ちうこく
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
057
治国別
『ハツハヽヽ、
058
玉依別
(
たまよりわけ
)
さま、
059
私
(
わたし
)
も
何時
(
いつ
)
忘
(
わす
)
れるか
知
(
し
)
れないから、
060
互
(
たがひ
)
に
気
(
き
)
をつけ
合
(
あ
)
ふ
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう』
061
玉依別
『
貴方
(
あなた
)
も
私
(
わたくし
)
も
一時
(
いつとき
)
に
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
つたら
何
(
ど
)
うなりますか』
062
治国別
『
今
(
いま
)
から
忘
(
わす
)
れる
事
(
こと
)
ばかり
考
(
かんが
)
へなくても
宜
(
よろ
)
しい。
063
忘
(
わす
)
れてよい
事
(
こと
)
は
忘
(
わす
)
れ、
064
忘
(
わす
)
れてならない
事
(
こと
)
は
忘
(
わす
)
れない
様
(
やう
)
に
努
(
つと
)
めるのですな』
065
かく
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ、
066
ヅブ
六
(
ろく
)
に
酔
(
よ
)
うてヒヨロリ ヒヨロリとやつて
来
(
き
)
たのは
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
067
エキス
両人
(
りやうにん
)
の
精霊
(
せいれい
)
であつた。
068
肉体
(
にくたい
)
のある
精霊
(
せいれい
)
は、
069
肉体
(
にくたい
)
のなき
精霊
(
せいれい
)
に
言葉
(
ことば
)
をかけられる
時
(
とき
)
は、
070
直
(
ただち
)
に
煙
(
けむり
)
の
如
(
ごと
)
く
消失
(
せうしつ
)
するものだが、
071
四
(
よ
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
肉体
(
にくたい
)
に
帰
(
かへ
)
り
得
(
う
)
べき
精霊
(
せいれい
)
の
事
(
こと
)
とて、
072
どちらも
元気
(
げんき
)
がよい。
073
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
辻堂
(
つじだう
)
に
休
(
やす
)
んでゐる
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
074
蠑螈別
『モシ、
075
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
076
一寸
(
ちよつと
)
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
します、
077
二十歳
(
はたち
)
許
(
ばか
)
りの
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
が、
078
ここを
通過
(
つうくわ
)
致
(
いた
)
しませなんだかな』
079
玉依
(
たまより
)
『ウン、
080
ねつから
女
(
をんな
)
らしい
方
(
かた
)
には、
081
牝猫
(
めんねこ
)
一匹
(
いつぴき
)
会
(
あ
)
ひませぬよ』
082
蠑螈別
『ナヽ
何
(
なん
)
だ、
083
会
(
あ
)
はぬと
申
(
まを
)
すか、
084
大方
(
おほかた
)
其
(
その
)
方
(
はう
)
が
誘拐
(
かどわか
)
して
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るのだろ。
085
此
(
この
)
街道
(
かいだう
)
は
男
(
をとこ
)
も
女
(
をんな
)
も
通
(
とほ
)
る
所
(
ところ
)
だ。
086
エヽン、
087
ゴテゴテぬかさずに
白状
(
はくじやう
)
せぬか。
088
なア、
089
エキス、
090
お
前
(
まへ
)
の
鑑定
(
かんてい
)
は
何
(
ど
)
う
思
(
おも
)
ふ』
091
エキス
『
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
092
女
(
をんな
)
はモウ
懲々
(
こりごり
)
だ、
093
お
民
(
たみ
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふものぢやない。
094
お
民
(
たみ
)
の
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くと、
095
すぐにお
寅婆
(
とらばば
)
を
聯想
(
れんさう
)
する。
096
あんな
鬼婆
(
おにばば
)
が
又
(
また
)
もや、
097
やつて
来
(
き
)
て
鼻
(
はな
)
でも
捻
(
ね
)
ぢよつたら、
098
今度
(
こんど
)
はモウ、
099
サツパリだ。
100
言
(
い
)
ふな
言
(
い
)
ふな、
101
女
(
をんな
)
の
一疋
(
いつぴき
)
やそこら、
102
何
(
なん
)
だい』
103
蠑螈別
『
貴様
(
きさま
)
にや
情交
(
じやうかう
)
上
(
じやう
)
の
関係
(
くわんけい
)
がないから、
104
そんな
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
して
居
(
を
)
らりようが、
105
当
(
たう
)
の
御
(
ご
)
亭主
(
ていしゆ
)
たる
俺
(
おれ
)
には
又
(
また
)
特別
(
とくべつ
)
の
悲痛
(
ひつう
)
があるのだ。
106
恋知
(
こひし
)
らずの
木狂漢
(
ぼくきやうかん
)
に
英雄
(
えいゆう
)
の
心事
(
しんじ
)
が
分
(
わか
)
つてたまらうかい、
107
エヽーン、
108
大切
(
たいせつ
)
なる
情婦
(
じやうふ
)
を
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
色魔
(
しきま
)
にチヨロまかされ、
109
其
(
その
)
上
(
うへ
)
色白
(
いろじろ
)
の
青瓢箪
(
あをべうたん
)
男
(
をとこ
)
に
自由
(
じいう
)
にされ、
110
どうしてこれが
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
らりようか。
111
お
民
(
たみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
112
とうと
途中
(
とちう
)
で
逃
(
に
)
げて
了
(
しま
)
ひよつた。
113
キツと
喋
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せて、
114
どつかで
会
(
あ
)
うて
けつ
かるに
違
(
ちがひ
)
ない、
115
俺
(
おれ
)
はどこまでも
彼奴
(
あいつ
)
の
所在
(
ありか
)
を
突
(
つ
)
き
止
(
と
)
め、
116
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
やらなくちや
虫
(
むし
)
がいえねえのだ。
117
……ヤア
貴様
(
きさま
)
は
治国別
(
はるくにわけ
)
ぢやないか。
118
こんな
所
(
ところ
)
へお
民
(
たみ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うて
来
(
き
)
よつたのかな。
119
貴様
(
きさま
)
もヤツパリ
同穴
(
どうけつ
)
の
貉
(
むじな
)
だらう、
120
サア
所在
(
ありか
)
を
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
せ』
121
と
臭
(
くさ
)
い
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
きかけながら、
122
治国別
(
はるくにわけ
)
の
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
123
目
(
め
)
を
縦
(
たて
)
にして
睨
(
にら
)
みつけた。
124
治国別
(
はるくにわけ
)
は
迷惑
(
めいわく
)
さうな
顔
(
かほ
)
をしながら、
125
治国別
『
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
126
見当違
(
けんたうちがひ
)
も
程
(
ほど
)
がありますよ』
127
蠑螈別
『ナーニ、
128
見当違
(
けんたうちがひ
)
だと、
129
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ、
130
俺
(
おれ
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
で、
131
貴様
(
きさま
)
がお
民
(
たみ
)
をそそのかして
居
(
ゐ
)
ることを
遠隔
(
ゑんかく
)
透視
(
とうし
)
したのだ。
132
そして
囁
(
ささや
)
いて
居
(
を
)
つた
事
(
こと
)
をも
天耳通
(
てんじつう
)
でチヤンと
調
(
しら
)
べてある。
133
サア
何処
(
どこ
)
へかくした、
134
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
せ』
135
治国別
『アハヽヽヽ、
136
それ
程
(
ほど
)
よく
天眼通
(
てんがんつう
)
が
利
(
き
)
くならば、
137
お
民
(
たみ
)
さまの
所在
(
ありか
)
は
一目
(
ひとめ
)
で
分
(
わか
)
りさうなものですなア』
138
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
言葉
(
ことば
)
につまり、
139
酒
(
さけ
)
の
酔機嫌
(
よひきげん
)
で、
140
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めて
治国別
(
はるくにわけ
)
の
横面
(
よこづら
)
を
続
(
つづ
)
けざまに
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つなぐつた。
141
治国別
(
はるくにわけ
)
は
頭
(
あたま
)
をかかへて
抵抗
(
ていかう
)
もせず、
142
『
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』を
奏上
(
そうじやう
)
しながら、
143
しやがんでゐる。
144
玉依別
(
たまよりわけ
)
はグツと
癪
(
しやく
)
に
障
(
さは
)
り、
145
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
後
(
うしろ
)
に
廻
(
まは
)
り、
146
睾玉
(
きんたま
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つて、
147
後
(
うしろ
)
へ
引
(
ひ
)
いた。
148
此
(
この
)
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て、
149
エキスは
又
(
また
)
もや
玉依別
(
たまよりわけ
)
の
睾丸
(
きんたま
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
150
後
(
うしろ
)
へ
引
(
ひ
)
いた
途端
(
とたん
)
に
足
(
あし
)
が
前
(
まへ
)
に
辷
(
すべ
)
り、
151
ドンと
握
(
にぎ
)
つたまま
仰向
(
あふむ
)
けに
倒
(
たふ
)
れた。
152
将棋倒
(
しやうぎだふ
)
しにズルズルと
玉依別
(
たまよりわけ
)
、
153
蠑螈別
(
いもりわけ
)
といふ
順
(
じゆん
)
に
三
(
み
)
つ
重
(
がさ
)
ねとなつた。
154
エキスは
玉依別
(
たまよりわけ
)
の
大
(
おほ
)
きな
尻
(
けつ
)
に
睾丸
(
きんたま
)
をグツと
押
(
おさ
)
へられ、
155
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
睾丸
(
きんたま
)
を
痛
(
いた
)
めて、
156
舌
(
した
)
をかみ
出
(
だ
)
し、
157
目
(
め
)
を
眩
(
まか
)
して
了
(
しま
)
ひ、
158
三人揃
(
さんにんそろ
)
うて
三
(
さん
)
きん
交替
(
かうたい
)
の
睾丸
(
きんたま
)
の
江戸
(
えど
)
登城
(
とじやう
)
をやつて
了
(
しま
)
つた。
159
治国別
(
はるくにわけ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
手
(
て
)
を
無理
(
むり
)
に
放
(
はな
)
し、
160
一人
(
ひとり
)
々々
(
ひとり
)
地上
(
ちじやう
)
に
横臥
(
わうぐわ
)
させ、
161
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
数歌
(
かずうた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
162
鎮魂
(
ちんこん
)
を
以
(
もつ
)
て
神霊
(
しんれい
)
注射
(
ちうしや
)
を
試
(
こころ
)
みた。
163
玉依別
(
たまよりわけ
)
は
第一着
(
だいいちちやく
)
に
息
(
いき
)
を
吹返
(
ふきかへ
)
し、
164
玉依別
『アイタヽヽ、
165
アー
偉
(
えら
)
い
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はしよつた。
166
ヤ、
167
先生
(
せんせい
)
、
168
よう
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいました。
169
私
(
わたし
)
は
又
(
また
)
第一
(
だいいち
)
天国
(
てんごく
)
へただ
一人
(
ひとり
)
上
(
のぼ
)
りかけて
居
(
を
)
りましたら、
170
貴方
(
あなた
)
のお
声
(
こゑ
)
で
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
が
聞
(
きこ
)
え
出
(
だ
)
しましたので、
171
後
(
あと
)
ふり
返
(
かへ
)
り
見
(
み
)
れば、
172
貴方
(
あなた
)
の
身体
(
からだ
)
より
霊光
(
れいくわう
)
が
発射
(
はつしや
)
し、
173
其
(
その
)
光
(
ひかり
)
に
包
(
つつ
)
まれたと
思
(
おも
)
へば
気
(
き
)
がつきました。
174
精霊界
(
せいれいかい
)
へ
来
(
き
)
てもヤツパリ
目
(
め
)
をまかしたり、
175
霊体
(
れいたい
)
脱離
(
だつり
)
したりするものと
見
(
み
)
えますなア』
176
治国別
『アヽさうと
見
(
み
)
えるなア、
177
不思議
(
ふしぎ
)
なものだ。
178
併
(
しか
)
し
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまとエキスさまが、
179
睾丸
(
きんたま
)
を
損
(
そこ
)
ねてまだ
気
(
き
)
がつかない。
180
早
(
はや
)
く
助
(
たす
)
けてやらねばならぬ。
181
玉依別
(
たまよりわけ
)
さま、
182
一
(
ひと
)
つ
貴方
(
あなた
)
、
183
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
願
(
ねが
)
つて
復活
(
ふくくわつ
)
さしてやつて
下
(
くだ
)
さい』
184
玉依別
『
成程
(
なるほど
)
、
185
揃
(
そろ
)
ひも
揃
(
そろ
)
うて
睾丸
(
かうぐわん
)
病者
(
びやうしや
)
ばかりですな。
186
一
(
ひと
)
つ
願
(
ねが
)
つて
見
(
み
)
ませうか。
187
併
(
しか
)
し
先生
(
せんせい
)
、
188
此奴
(
こいつ
)
ア、
189
貴方
(
あなた
)
の
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
を
擲
(
なぐ
)
つた
悪人
(
あくにん
)
ですから、
190
放
(
ほ
)
つといてやりませうかい』
191
治国別
『
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
は
人
(
ひと
)
を
救
(
すく
)
ふのが
勤
(
つと
)
めだ。
192
霊界
(
れいかい
)
へ
来
(
き
)
てそんな
心
(
こころ
)
では
可
(
い
)
けませぬぞ。
193
天国
(
てんごく
)
には
恨
(
うらみ
)
もなければ
憎
(
にく
)
みもない、
194
只
(
ただ
)
愛
(
あい
)
あるのみですよ』
195
玉依別
『そらさうです、
196
併
(
しか
)
しここは
天国
(
てんごく
)
ぢやありませぬぞえ。
197
中有界
(
ちううかい
)
ですから、
198
善
(
ぜん
)
も
居
(
を
)
れば
悪
(
あく
)
も
居
(
を
)
ります。
199
悪人
(
あくにん
)
は
悪人
(
あくにん
)
で
懲
(
こら
)
してやるが
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
ですよ』
200
治国別
『ソリヤいけませぬ。
201
貴方
(
あなた
)
は
仮令
(
たとへ
)
身
(
み
)
は
中有界
(
ちううかい
)
に
居
(
を
)
るとも、
202
其
(
その
)
内分
(
ないぶん
)
には
最高
(
さいかう
)
天国
(
てんごく
)
が
開
(
ひら
)
けてゐるぢやありませぬか。
203
其
(
その
)
心
(
こころ
)
を
以
(
もつ
)
て
御
(
お
)
助
(
たす
)
けなさい』
204
玉依別
『
伊吹戸主
(
いぶきどぬしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
中有界
(
ちううかい
)
は
中有界
(
ちううかい
)
、
205
現界
(
げんかい
)
は
現界
(
げんかい
)
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
を
守
(
まも
)
れ、
206
妄
(
みだ
)
りに
天界
(
てんかい
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を、
207
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
人間
(
にんげん
)
に
示
(
しめ
)
すと、
208
却
(
かへつ
)
て
神
(
かみ
)
を
冒涜
(
ばうとく
)
する……と
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか』
209
治国別
『ハツハヽヽ、
210
益々
(
ますます
)
分
(
わか
)
らぬやうになりますねえ』
211
玉依別
『さうでせうとも、
212
すでに
竜公
(
たつこう
)
に
還元
(
くわんげん
)
の
間際
(
まぎは
)
ですからなア。
213
大
(
おほい
)
に
愛善
(
あいぜん
)
と
証覚
(
しようかく
)
が
衰
(
おとろ
)
へました。
214
否
(
いな
)
内分
(
ないぶん
)
が
塞
(
ふさ
)
がりましたやうです』
215
かく
言
(
い
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
216
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
217
エキスはムクムクと
起上
(
おきあが
)
り、
218
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
を
睨
(
にら
)
みながら、
219
怖
(
こは
)
さうに
後向
(
うしろむ
)
けに
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
し、
220
五六間
(
ごろくけん
)
の
距離
(
きより
)
を
保
(
たも
)
つた
時
(
とき
)
、
221
何
(
なに
)
を
思
(
おも
)
うたか、
222
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
223
玉依別
『ハツハヽヽ、
224
とうとう
吾々
(
われわれ
)
の
霊光
(
れいくわう
)
に
打
(
う
)
たれ、
225
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せよつたな、
226
ヤツパリ
吾々
(
われわれ
)
はどことはなしに
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
が
備
(
そな
)
はつたとみえるワイ、
227
あゝ
愉快
(
ゆくわい
)
々々
(
ゆくわい
)
』
228
治国別
『
玉依別
(
たまよりわけ
)
さま、
229
先方
(
むかふ
)
の
方
(
はう
)
から
何
(
なん
)
だか、
230
人声
(
ひとごゑ
)
がするぢやないか』
231
玉依別
(
たまよりわけ
)
は
耳
(
みみ
)
をすませ、
232
玉依別
『いかにも、
233
あれはアーク、
234
タールの
声
(
こゑ
)
ですよ、
235
こんな
所
(
ところ
)
へ
彼奴
(
あいつ
)
も
亦
(
また
)
迷
(
まよ
)
つて
来
(
き
)
よつたのですかなア』
236
二人
(
ふたり
)
の
声
(
こゑ
)
は
益々
(
ますます
)
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
237
俄
(
にはか
)
にパツと
際立
(
きはだ
)
つて
明
(
あか
)
くなつたと
思
(
おも
)
へば、
238
治国別
(
はるくにわけ
)
、
239
竜公
(
たつこう
)
の
身
(
み
)
は
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
のランチ
将軍
(
しやうぐん
)
が
居間
(
ゐま
)
に
横
(
よこ
)
たはつてゐた。
240
さうして
枕許
(
まくらもと
)
にはアーク、
241
タールの
両人
(
りやうにん
)
が
心配
(
しんぱい
)
さうな
顔
(
かほ
)
をして
坐
(
すわ
)
つてゐた。
242
治国
(
はるくに
)
『あゝ、
243
アークさま、
244
タールさま、
245
此処
(
ここ
)
はどこだなア』
246
アーク『
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
、
247
確
(
しつか
)
りなさいませ。
248
貴方
(
あなた
)
は
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
等
(
ら
)
の
企
(
たく
)
みの
罠
(
わな
)
に
陥
(
おちい
)
り、
249
暗
(
くら
)
い
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
で、
250
一旦
(
いつたん
)
亡
(
な
)
くなつてゐられたのですよ。
251
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
がランチ
将軍
(
しやうぐん
)
、
252
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
253
漸
(
やうや
)
く
縄梯子
(
なはばしご
)
を
吊
(
つ
)
りおろし、
254
此処
(
ここ
)
までお
二人
(
ふたり
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
持
(
も
)
ち
運
(
はこ
)
び、
255
いろいろと
介抱
(
かいほう
)
を
致
(
いた
)
しましたら、
256
漸
(
やうや
)
くお
気
(
き
)
がついたのです』
257
竜公
(
たつこう
)
『ヤア
有難
(
ありがた
)
い、
258
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
睾丸握
(
きんたまにぎり
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
から、
259
こんな
所
(
ところ
)
へ
帰
(
かへ
)
つたのだらうな、
260
アイタ、
261
ヤツパリ
睾丸
(
きんたま
)
が
痛
(
いた
)
いワイ』
262
と
顔
(
かほ
)
をしかめてゐる。
263
さて
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
互
(
たがひ
)
に
無事
(
ぶじ
)
を
祝
(
しゆく
)
し、
264
大神
(
おほかみ
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
して、
265
例
(
かた
)
の
如
(
ごと
)
く
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
266
終
(
をは
)
つて
治国別
(
はるくにわけ
)
は、
267
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
が
気
(
き
)
に
掛
(
かか
)
り、
268
四
(
よ
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に
陣内
(
ぢんない
)
を
隈
(
くま
)
なく
探
(
さぐ
)
り、
269
漸
(
やうや
)
く
酒房
(
さかぐら
)
の
前
(
まへ
)
に
行
(
い
)
つた。
270
雪
(
ゆき
)
は
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
以上
(
いじやう
)
も
降
(
ふ
)
り
積
(
つ
)
もり、
271
二人
(
ふたり
)
の
寝
(
ね
)
てゐる
所
(
ところ
)
は
際立
(
きはだ
)
つて
高
(
たか
)
くなつてゐる。
272
アーク、
273
タールの
両人
(
りやうにん
)
は
態
(
わざ
)
とに
治国別
(
はるくにわけ
)
に
知
(
し
)
らさなかつた。
274
治国別
(
はるくにわけ
)
はこの
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
275
人間
(
にんげん
)
の
形
(
かたち
)
に
雪
(
ゆき
)
が
高
(
たか
)
くなつてゐるのを
見
(
み
)
て、
276
治国別
『アークさま、
277
あの
雪
(
ゆき
)
はチツと
変
(
へん
)
ぢやありませぬか、
278
丁度
(
ちやうど
)
人間
(
にんげん
)
が
寝
(
ね
)
てゐるやうに
高
(
たか
)
く
積
(
つも
)
つてゐるでせう』
279
アーク
『
彼奴
(
あいつ
)
あ、
280
ユキ
倒
(
だふ
)
れかも
知
(
し
)
れませぬよ』
281
竜公
(
たつこう
)
『こんな
所
(
ところ
)
に
行
(
ゆ
)
き
倒
(
だふ
)
れがあつてたまるかい。
282
行
(
ゆ
)
き
倒
(
だふ
)
れといふ
奴
(
やつ
)
ア、
283
道端
(
みちばた
)
で
乞食
(
こじき
)
が
野倒死
(
のたれじに
)
したのを
言
(
い
)
ふのだ』
284
アーク『それでも、
285
あこに
蠑螈別
(
いもりわけ
)
が
倒
(
たふ
)
れて
其
(
その
)
上
(
うへ
)
へ
雪
(
ゆき
)
が
積
(
つ
)
もつたら、
286
ヤツパリ
ユキ
倒
(
だふ
)
れだ……ウソと
思
(
おも
)
ふなら、
287
お
前
(
まへ
)
行
(
い
)
つて
調
(
しら
)
べて
来
(
こ
)
い。
288
彼奴
(
あいつ
)
アな、
289
食
(
く
)
ひしん
坊
(
ばう
)
だから、
290
酒盗
(
さけぬす
)
みに
行
(
ゆ
)
きよつて、
291
酒房
(
さかぐら
)
の
外
(
そと
)
で
酔
(
よ
)
ひつぶれてるのかも
知
(
し
)
れないよ』
292
竜公
(
たつこう
)
『
今
(
いま
)
幽界
(
いうかい
)
で
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
293
エキスの
両人
(
りやうにん
)
に
面会
(
めんくわい
)
し、
294
睾丸
(
きんたま
)
の
掴
(
つか
)
み
合
(
あ
)
ひをして
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
だ。
295
大方
(
おほかた
)
それから
考
(
かんが
)
へると、
296
最早
(
もはや
)
肉体
(
にくたい
)
は
冷
(
つめ
)
たくなつて、
297
現界
(
げんかい
)
の
人
(
ひと
)
ではないかも
知
(
し
)
れないよ』
298
タール『ナニ、
299
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
と
今
(
いま
)
一緒
(
いつしよ
)
に
倒
(
たふ
)
れた
所
(
ところ
)
だ、
300
彼奴
(
あいつ
)
ア
酒
(
さけ
)
の
量
(
りやう
)
が
多
(
おほ
)
いのでよく
寝
(
ね
)
てるのだ。
301
俄
(
にはか
)
にブチヤケるやうな
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
つて、
302
瞬間
(
またたくま
)
に
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
も
積
(
つも
)
つたのだ。
303
本当
(
ほんたう
)
に
不思議
(
ふしぎ
)
な
雪
(
ゆき
)
だつたよ。
304
何
(
なに
)
はともあれ、
305
竜公
(
たつこう
)
さま、
306
お
前
(
まへ
)
は
冥土
(
めいど
)
の
知己
(
ちき
)
だから、
307
一
(
ひと
)
つ
気
(
き
)
をつけてやり
給
(
たま
)
へ。
308
亡者
(
まうじや
)
卒業生
(
そつげふせい
)
だからなア、
309
亡者
(
まうじや
)
が
亡者
(
まうじや
)
に
対
(
たい
)
するのは、
310
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
によるものだからなア、
311
アツハツハヽヽ』
312
竜公
(
たつこう
)
は
足
(
あし
)
で
雪
(
ゆき
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
けて
見
(
み
)
ると、
313
蠑螈別
(
いもりわけ
)
はムクムクと
起上
(
おきあが
)
り、
314
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
に
胡坐
(
あぐら
)
をかき
目
(
め
)
をつぶつてゐる。
315
エキスも
亦
(
また
)
竜公
(
たつこう
)
に
足
(
あし
)
で
雪
(
ゆき
)
を
取除
(
とりのぞ
)
かれ、
316
頭
(
あたま
)
を
蹴
(
け
)
られた
途端
(
とたん
)
に
気
(
き
)
がつき、
317
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いだまま、
318
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
に
坐
(
すわ
)
つて、
319
口
(
くち
)
をムシヤ ムシヤ
動
(
うご
)
かしてゐる。
320
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
夢中
(
むちう
)
になつて
奴拍子
(
どびやうし
)
の
抜
(
ぬ
)
けた
声
(
こゑ
)
で、
321
蠑螈別
『
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
、
322
お
民
(
たみ
)
を
返
(
かへ
)
せ、
323
コラ
色白
(
いろじろ
)
の
小童
(
こわつぱ
)
、
324
俺
(
おれ
)
の
女
(
をんな
)
を
何
(
ど
)
うしよつた。
325
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
へ
出
(
だ
)
さぬか、
326
……ヤお
寅
(
とら
)
が
来
(
き
)
よつたな、
327
痛
(
いた
)
いわい
痛
(
いた
)
いわい……
睾丸
(
きんたま
)
を
引張
(
ひつぱ
)
りよつて、
328
イヽ
痛
(
いた
)
い、
329
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れる、
330
エキス、
331
コラ、
332
竜公
(
たつこう
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
引張
(
ひつぱ
)
つてくれ!』
333
などと
千切
(
ちぎ
)
れ
千切
(
ちぎ
)
れに
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
ててゐる。
334
エキスはエキスで
又
(
また
)
拍子抜
(
へうしぬ
)
けのした
声
(
こゑ
)
で、
335
エキス
『アヽヽア、
336
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い、
337
睾丸
(
きんたま
)
がツヽ
潰
(
つぶ
)
れる
潰
(
つぶ
)
れる』
338
と
喚
(
わめ
)
いてゐる。
339
アークは
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けながら、
340
アーク
『
何
(
なん
)
とマア
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
があるものだな。
341
竜公
(
たつこう
)
さまが
気
(
き
)
がつくが
早
(
はや
)
いか、
342
睾丸
(
きんたま
)
が
痛
(
いた
)
いといふかと
思
(
おも
)
へば、
343
蠑螈別
(
いもりわけ
)
が
又
(
また
)
睾丸
(
きんたま
)
々々
(
きんたま
)
といひ
出
(
だ
)
す、
344
エキスの
奴
(
やつ
)
までお
附合
(
つきあひ
)
に
睾丸
(
きんたま
)
々々
(
きんたま
)
とほざいてゐよる。
345
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い。
346
エヘヽヽヽ、
347
コラ
睾丸
(
きんたま
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
348
早
(
はや
)
う
起
(
お
)
きぬかい、
349
確
(
しつか
)
りせい』
350
と
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
鼻
(
はな
)
を
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
して
捻
(
ね
)
ぢた。
351
蠑螈別
『イヽヽヽ
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い、
352
又
(
また
)
してもお
寅
(
とら
)
の
奴
(
やつ
)
、
353
俺
(
おれ
)
の
鼻
(
はな
)
を
摘
(
つま
)
みやがつて……
許
(
ゆる
)
せ
許
(
ゆる
)
せ』
354
アーク
『ハツハヽヽ、
355
オイ、
356
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
357
俺
(
おれ
)
だ
俺
(
おれ
)
だ、
358
目
(
め
)
をあけぬかい。
359
どこだと
思
(
おも
)
つてゐるのだ』
360
蠑螈別
『
何処
(
どこ
)
でもないワイ、
361
辻堂
(
つじだう
)
の
前
(
まへ
)
だ。
362
早
(
はや
)
く
俺
(
おれ
)
を
浮木
(
うきき
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つてくれ』
363
アーク
『ここが
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
だ、
364
余
(
あま
)
り
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふものだから、
365
目
(
め
)
を
眩
(
まか
)
しよつたのだろ』
366
と
頬
(
ほほ
)
を
平手
(
ひらて
)
でピシヤピシヤと
擲
(
なぐ
)
る。
367
蠑螈別
(
いもりわけ
)
はハツと
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
き
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば、
368
エキスが
側
(
そば
)
に
真白気
(
まつしろけ
)
になつて
坐
(
すわ
)
つてゐる。
369
そして
治国別
(
はるくにわけ
)
、
370
竜公
(
たつこう
)
の
其処
(
そこ
)
に
立
(
た
)
つてゐるのを
見
(
み
)
て、
371
不思議
(
ふしぎ
)
さうに
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み、
372
蠑螈別
『ハテ ハテ』
373
と
云
(
い
)
ひながら、
374
穴
(
あな
)
のあく
程
(
ほど
)
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
を
覗
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
んだ。
375
治国
(
はるくに
)
『
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
376
エキスさま、
377
此処
(
ここ
)
は
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
ですよ。
378
私
(
わたし
)
も
暫
(
しばら
)
く
魂
(
たましひ
)
が
肉体
(
にくたい
)
を
放
(
はな
)
れ、
379
八衢
(
やちまた
)
旅行
(
りよかう
)
をやつて
来
(
き
)
ました。
380
お
前
(
まへ
)
さまも
八衢
(
やちまた
)
で
会
(
あ
)
ひましたね。
381
併
(
しか
)
しモウ
現界
(
げんかい
)
へ
帰
(
かへ
)
つたのですから、
382
安心
(
あんしん
)
なさいませ。
383
それよりもランチ
将軍
(
しやうぐん
)
、
384
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
初
(
はじ
)
めお
民
(
たみ
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
が、
385
どうも
気
(
き
)
にかかります。
386
物見櫓
(
ものみやぐら
)
の
方
(
はう
)
に
何
(
なに
)
か
変事
(
へんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
してゐるかも
知
(
し
)
れませぬ。
387
サア
参
(
まゐ
)
りませう』
388
蠑螈別
(
いもりわけ
)
はお
民
(
たみ
)
の
危急
(
ききふ
)
と
聞
(
き
)
いて、
389
酔
(
よひ
)
も
醒
(
さ
)
め、
390
本気
(
ほんき
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り、
391
陣営
(
ぢんえい
)
の
駒
(
こま
)
に
打
(
う
)
ち
乗
(
の
)
り、
392
治国別
(
はるくにわけ
)
、
393
竜公
(
たつこう
)
他
(
ほか
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
馬首
(
ばしゆ
)
を
揃
(
そろ
)
へてカツカツカツと
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
も
勇
(
いさ
)
ましく、
394
物見櫓
(
ものみやぐら
)
を
指
(
さ
)
して
雪
(
ゆき
)
に
馬足
(
ばそく
)
を
印
(
いん
)
しながら
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
395
(
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松村真澄
録)
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