霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 子宝(こだから)〔一三八七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第1篇 神授の継嗣 よみ(新仮名遣い):しんじゅのけいし
章:第1章 子宝 よみ(新仮名遣い):こだから 通し章番号:1387
口述日:1923(大正12)年02月21日(旧01月6日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ビク国は治国別一行に助けられて復興をなしつつあった。叛将ベルツとシエールは国法により重刑に処すべきところ、治国別らの斡旋により大赦が行われ、両人は百日の閉門を申し付けられた。
刹帝利ビクトリヤ王は世が治まるにつけて、前途の事を思い嗣子がないことに胸を痛めていた。実際にはビクトリヤ王には前王妃ビクトリヤ姫との間に五男一女があった。それぞれアール、イース、ウエルス、エリナン、オークス、ダイヤ姫といった。
ある夜の夢に五人の男子が自分を放逐して国を分割する、という恐ろしいありさまを見たので、ビクトリヤ姫に男子を殺そうと謀った。ビクトリヤ姫は自分の子に危険を告げ、五人の男子を城から逃がした。その後、ダイヤが生まれたのである。
五人は照国ケ岳の山谷に逃れ、猟師となって命を保っていた。最後に生まれた王女ダイヤは兄たちの存在を知らずに育ったが、あるとき母から兄たちが生きていることを聞いた。そして十歳になった夜に密かに城を抜け出して照国ケ岳の谷間にやってきた。
兄たちが猟師となって隠れ住んでいる洞窟の入り口で、ダイヤは兄のオークスと出会った。オークスはダイヤの話を聞いて、自分の妹が訪ねてきたことを確信したが、兄弟は自分たちの生存を隠すため、洞窟にたどり着いた者は決して生きて返さないきまりになっていた。
オークスは、兄たちがきまりにこだわって、妹に危害を加えることを心配した。ダイヤは、兄たちに会えるのであれば命を取られても本望だと答えたが、オークスに促されて、皆が帰ってくるまでつづらの中に隠れることになった。
オークスは妹が訪ねて来たが追い返したと言って、兄たちの気持ちを探った。兄たちは、妹を帰さずに兄弟六人が一つになって仲良く暮らし、非情な父親が亡くなった後に復帰して国を治めるという目的をいつか果たしたいものだ、と心中を吐露した。オークスはやっと安心して、実際は妹を追い返しておらず、つづらに隠しておいたことを明かした。こうして、それ以来兄妹六人はさびしい山住まいを続けていた。
さて、ベルツの乱が治まったビクトリヤ城では、刹帝利の奥の間にヒルナ姫、治国別、タルマン、キュービット、エクスが小酒宴を開きながら四方山話にふけっていた。
その席で世継ぎの話が出た。治国別は、ビクトリヤ王に五男一女がいたことを知っており、もし子供たちが帰ってきたらどうするつもりか、王の意中を尋ねた。
ビクトリヤ王は、悪魔に魅入られて悪夢を見たせいで子供たちを殺そうと図ったことを告白したが、一方で城から逃げ出した子供たちがいつ自分を滅ぼしにやってくるかもしれない、と日々悩み苦しんでいることを明かした。
治国別は、ビクトリヤ王の子供たちは今はみじめな生活をしているが、国を思う温良な王子たちであり、王が改心して招きよせればきっと孝養を尽くしてくれるだろう、ビクトリヤ王を諭した。
治国別のきっぱりとした言葉に、ビクトリヤ王は半ば不安ながら一切を任せることになった。その場にいた重臣たちも賛成し、治国別に王子たちの帰還を頼み込んだ。
治国別は自分の館に帰ると、松彦、竜彦、万公と相談の上、六人の王子・王女を迎える計画をはかった。松彦、竜彦、万公の三人は治国別の命により、ビクトル山を越えて照国ケ岳の山谷を目指して出立して行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-03-28 16:35:30 OBC :rm5401
愛善世界社版:11頁 八幡書店版:第9輯 623頁 修補版: 校定版:9頁 普及版:4頁 初版: ページ備考:
001叛将(はんしやう)ベルツに(あら)されし
002()るかげもなきビクトリヤ
003(わう)住家(すみか)(やうや)くに
004治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)
005(その)一行(いつかう)(たす)けられ
006九死(きうし)(うち)一生(いつしやう)
007()たる心地(ここち)初夏(しよか)(そら)
008(ちり)(あくた)根底(ねそこ)より
009()(はら)はれて太平(たいへい)
010(ふたた)御代(みよ)となりにけり
011ヒルナの(ひめ)(また)(もと)
012(くらゐ)居直(ゐなほ)忠実(まめやか)
013アーチヂュークに(つか)へつつ
014(かみ)(まつ)りて城内(じやうない)
015()ふも(さら)なり国中(くになか)
016いと(やす)らけく(たひら)けく
017(をさ)まりしこそ芽出(めで)たけれ。
018 叛将(はんしやう)のベルツ(および)シエール(その)(ほか)一派(いつぱ)国法(こくはふ)(したが)ひ、019反逆罪(はんぎやくざい)として重刑(ぢうけい)(しよ)すべき(ところ)なりしが、020治国別(はるくにわけ)021松彦(まつひこ)022竜彦(たつひこ)023万公(まんこう)斡旋(あつせん)()り、024大赦(たいしや)(おこな)ひ、025両人(りやうにん)百箇(ひやくか)(にち)閉門(へいもん)申付(まをしつ)けられ、026門口(もんぐち)()(にん)守衛(しゆゑい)をして厳重(げんぢう)(まも)らしむる(こと)となつた。
027 刹帝利(せつていり)太公(たいこう))は追々(おひおひ)老齢(らうれい)(およ)び、028()(をさ)まるにつけて、029前途(さき)(こと)(おも)()し、030嗣子(しし)一人(ひとり)()きに(むね)(いた)めて()た。031ビクトリヤ(わう)はアーチ・ダッチェス(太公妃(たいこうひ))との(あひだ)五男(ごなん)一女(いちぢよ)があつた。032アール、033イース、034ウエルス、035エリナン、036オークス、037ダイヤ(ぢよ)といふ子供(こども)があつたが、038(わう)(ある)()(ゆめ)に……()(にん)(をとこ)()自分(じぶん)放逐(はうちく)し、039ビクの(くに)五分(ごぶん)して(おのおの)()()かし、040国内(こくない)(みだ)した……といふ(おそ)ろしい(ゆめ)()たので、041ビクトリヤ(ひめ)(むか)ひ、042深夜(しんや)ソツと()(にん)実子(じつし)(ころ)さむ(こと)(はか)つた。043そして……今度(こんど)(はら)にある()(をとこ)であつたならば、044それも(ころ)して(しま)ふ、045もし(をんな)であつたならば(たす)けよう……とまで()つた。046ビクトリヤ(ひめ)(これ)()いて(おほい)(おどろ)きつつも、047ワザと素知(そし)らぬ(かほ)をして、048……何程(なにほど)(いさ)めても()()したら(あと)()かぬ気象(きしやう)のビクトリヤ(わう)は、049到底(たうてい)()(にん)()(たす)けることはせまい、050そして(また)自分(じぶん)(はら)出来(でき)()(をとこ)であつたら如何(どう)しようか……と大変(たいへん)心配(しんぱい)をしてゐた。051(しか)(なが)らワザと素知(そし)らぬ(かほ)をして、052(むね)万斛(ばんこく)(なみだ)(たた)へてゐた。053それからソツと()(にん)(をとこ)()(ちち)決心(けつしん)(ささや)き、054……(いち)()(はや)()(もつ)(のが)れよ……と(めい)じたのである。055()(にん)兄弟(きやうだい)(おほい)(おどろ)いて、056ビクトリヤ(ひめ)よりいろいろの(もの)(あた)へられ、057()(じやう)じて、058城内(じやうない)()()でビクトル(ざん)峰続(みねつづ)き、059照国(てるくに)(だけ)山谷(さんこく)(あな)穿(うが)(なん)()け、060猟師(れふし)となつて生命(いのち)(たも)つてゐたのである。061ビクトリヤ(ひめ)(つき)()ちて()(おと)した、062(あわて)調(しら)べて()れば(をんな)()であつた。063ヤツと安心(あんしん)して、064ダイヤといふ()()けた。065ダイヤ(ひめ)(しち)(さい)になつた(とき)066(はは)(むか)つて、067自分(じぶん)兄弟(きやうだい)のない(こと)(なげ)いた。068そこでビクトリヤ(ひめ)()(にん)(あに)があつて照国(てるくに)(だけ)猟師(れふし)となり(かく)れて()ることをソツと物語(ものがた)つた。069ダイヤ(ひめ)(これ)()くより()(にん)(あに)()ひたくて仕方(しかた)がなく、070(じつ)(さい)になりし(をり)(よる)(ひそか)(しろ)()()し、071繊弱(かよわ)(あし)(みね)をつたつて、072照国(てるくに)(だけ)谷間(たにま)(やうや)辿(たど)()いた。073()つて()れば、074()なり(おほ)きな土窟(どくつ)があつて、075(けだもの)(かは)(など)()してあつた。076(あに)()(にん)猟夫(かりうど)()不在(ふざい)であつたが、077五人目(ごにんめ)(あに)オークスが一人(ひとり)(ばん)をしてゐた。078発覚(はつかく)(おそ)れて、079如何(いか)なる人間(にんげん)此処(ここ)()(もの)は、080一人(ひとり)も、081打殺(うちころ)して(かへ)さない(こと)()(にん)()めてゐたのである。082そこへダイヤがヘトヘトになつてやつて()たので、083オークスは()をギヨロつかせ(なが)ら、
084オークス『お(まへ)何処(どこ)から()(もの)だ』
085(たづ)ねた。086ダイヤは(なみだ)()(なが)ら、
087ダイヤ『ハイ、088(わたし)はビクトリヤ(わう)(むすめ)ダイヤと(まを)します。089(かあ)さまに(うけたま)はれば、090……父上(ちちうへ)秘密(ひみつ)で、091(じふ)(ねん)(ばか)(まへ)から、092(この)照国山(てるくにやま)()(にん)(にい)さまが猟師(れふし)をして(かく)れてゐられる。093(とう)さまも(とし)よりだから国替(くにがへ)をしられたら(かへ)つて()い……と()つて(かく)してあると仰有(おつしや)いましたので、094(わたし)(にい)さまに()ひたくて()ひたくて仕方(しかた)がありませぬので、095両親(りやうしん)(かく)れて(たづ)ねて(まゐ)りました』
096()つて、097ワツと(ばか)りに()()した。098オークスはよくよくダイヤの(かほ)調(しら)べてみると、099どこともなしに自分(じぶん)(あに)()(ところ)がある、100(また)(はは)にも()てゐる。101(しか)(なが)()(にん)(あに)(かへ)つて()たら(なん)()ふであらうか、102仮令(たとへ)(おや)兄弟(きやうだい)(いへど)(いのち)()ると()めた以上(いじやう)は、103(この)可憐(かれん)(いもうと)(ころ)しはしようまいか……と大変(たいへん)心配(しんぱい)をし、104(こゑ)(くも)らせ(なが)ら、
105オークス『お(まへ)如何(いか)にも(いもうと)間違(まちが)ひはない、106よう()てくれた。107頑固(ぐわんこ)一片(いつぺん)父王(ちちわう)(ゆめ)()たと()つて、108吾々(われわれ)()(にん)兄弟(きやうだい)(ころ)さうとなさつたのだ。109それを(はは)(なさ)けに()つて(いのち)(だけ)(たも)つてゐるのだが、110(とう)さまはまだ達者(たつしや)にしてゐられるかな』
111(たづ)ねて()た。112ダイヤは(なみだ)(なが)ら、
113ダイヤ『ハイ、114(とう)さまは(きは)めて()達者(たつしや)(ござ)います。115そしてお(かあ)さまは(わたし)(なな)つの(とし)(にい)さま(たち)(こと)()になつて、116それが(もと)病気(びやうき)にかかり、117()くなつて(しま)はれました。118(あと)へヒルナ(ひめ)といふ小間使(こまづかひ)がお(とう)さまの(きさき)となつて、119今年(ことし)(いち)(ねん)になります。120(わたし)はお(かあ)さまは()くなる、121(にい)さまはゐられないし、122城内(じやうない)()()がしませぬので、123(あと)(した)うて(まゐ)りました。124モウ城内(じやうない)へは(かへ)りたくありませぬから、125何卒(どうぞ)此処(ここ)何時(いつ)(まで)もおいて(くだ)さいませ』
126両手(りやうて)(あは)せて、127(なみだ)(とも)(たの)()る。
128オークス『ああそれはよう(たづ)ねて()てくれた。129(しか)(なが)(あに)(かへ)(まで)130(まへ)(この)葛籠(つづら)(なか)(かく)れてゐてくれ、131そして(あに)(はら)()いた(うへ)132(もし)(たす)けるというたら、133公然(こうぜん)兄妹(きやうだい)名乗(なのり)をさすなり、134(たた)(ころ)すといつたら、135()(どく)(なが)らお(まへ)(この)葛籠(つづら)()れておいて、136(あに)()つた(あと)で、137()()(おく)つてやるから……』
138ダイヤ『何分(なにぶん)(よろ)しく(たの)みます、139(にい)さまに()うて(ころ)されても満足(まんぞく)(ござ)います』
140唏嘘(しやくり)()く。
141オークス『モウ兄貴(あにき)(かへ)時分(じぶん)だから、142サ、143(これ)(はい)つてくれ』
144葛籠(つづら)(なか)へダイヤを()れて素知(そし)らぬ(かほ)をしてゐた。145そこへ(あに)のアール、146イース、147ウエルス、148エリナンの()(にん)(うさぎ)(たぬき)捕獲(ほくわく)してイソイソと(かへ)つて()た。149オークスは()(むか)へ、
150オークス『(にい)さま、151今日(けふ)大変(たいへん)(はや)(ござ)いましたな』
152アール『ウン、153(この)(とほ)(うさぎ)(たぬき)都合(つがふ)()()れたので、154今日(けふ)(なん)だか()()いて、155(まへ)()異状(ゐじやう)出来(でき)たやうな()がしてならないので、156(いそ)いで(かへ)つて()たのだ』
157()(なが)ら、158足装束(あししやうぞく)(しま)ひ、159(ひろ)(あな)(なか)這入(はい)つて(こし)()ろした。
160アール『(おれ)不在中(るすちう)(かは)つた(こと)はなかつたかなア、161どうも()()いて仕方(しかた)がなかつたのだ』
162オークス『ああさうで(ござ)いましたか、163(じつ)(ところ)(いもうと)(たづ)ねて()ました。164けれ(ども)吾々(われわれ)規約(きやく)(したが)つて(たた)(ころ)さうと(おも)うたが、165(あま)不愍(ふびん)なので、166化者(ばけもの)真似(まね)をして()(かへ)してやりました』
167()つて、168(あに)意見(いけん)(さぐ)つてみた。
169アール『吾々(われわれ)(いもうと)があるとは、170ハテ合点(がてん)()かぬ、171さうすると自分(じぶん)()(あと)で、172両親(りやうしん)(あひだ)出来(でき)()であらうかな』
173オークス『(はは)吾々(われわれ)逃出(にげだ)(とき)(はら)んで()つた、174それが出産(しゆつさん)したのが(をんな)で、175ダイヤと()(いもうと)なんですよ』
176アール『お(まへ)はなぜそんな(もの)()(かへ)すのだ、177(おれ)一遍(いつぺん)()つてみたいのだが、178ハテ(こま)つた(こと)をしたなア』
179イース『モシ(ちち)にこんな(ところ)(さと)られたら、180沢山(たくさん)軍勢(ぐんぜい)()れて、181(また)()めに()るか()れない。182()なす(くらゐ)なら、183なぜ可愛相(かあいさう)でも(ころ)さなかつたか』
184アール『ヤ、185(ころ)すには(およ)ばぬが、186何故(なぜ)(いもうと)(とど)めておかぬのか、187城内(じやうない)様子(やうす)(わか)るであらうに、188何時(いつ)(まで)(ちち)長生(ながいき)する(はず)もなし、189(かあ)さまさへ達者(たつしや)であれば、190吾々(われわれ)(あと)(かへ)つて、191ビクの(くに)(をさ)める(こと)出来(でき)るのだが、192(いもうと)(かへ)つたとすれば、193コレヤ大変(たいへん)(こと)(おこ)つて()る、194(いち)()(はや)くここを()()り、195どつかへ()(かく)さねばなるまいぞ』
196心配相(しんぱいさう)()ふ。
197オークス『(いもうと)言葉(ことば)()れば、198(かあ)さまは(さん)(ねん)以前(いぜん)()くなり、199(とう)さまは(きは)めて壮健(さうけん)で、200ヒルナ(ひめ)といふ腰元(こしもと)をアーチ・ダッチェースとなし、201大変(たいへん)元気(げんき)だといふ(こと)だから、202吾々(われわれ)兄弟(きやうだい)(のぞ)みは到底(たうてい)(たつ)しますまい』
203 ()(にん)(あに)慈愛(じあい)(ふか)(はは)()くなつたと()いて、204(いち)()(こゑ)()げて号泣(がうきふ)した。
205オークス『(にい)さま、206モシ(いもうと)此処(ここ)(たづ)ねて()たならば、207貴方(あなた)大切(だいじ)にしてやりますか、208(ただし)(ころ)(かんが)へですか』
209()(にん)(あに)(かほ)(のぞ)いた、210()(にん)(こゑ)(そろ)へて、
211四人(いもうと)(うら)みもないのだから、212()うなれば兄妹(きやうだい)(ろく)(にん)何処(どこ)(まで)(ひと)つになつて、213(なか)よう()らし、214時節(じせつ)()つて目的(もくてき)成就(じやうじゆ)させやうだないか』
215 (この)言葉(ことば)にオークスはヤツと安心(あんしん)し、
216オークス『(じつ)(この)葛籠(つづら)(なか)(いもうと)(かく)しておいたのです』
217()つたので、218(ただ)ちにアールは葛籠(つづら)(ひら)き、219(いもうと)(いたは)り、220(そと)()して()(にん)がよつてたかつて、221(かしら)()で、222(せな)()で、223兄弟(きやうだい)(ろく)(にん)しがみ()いて(うれ)(なみだ)にくれてゐた。224そして兄妹(きやうだい)此処(ここ)(さび)しい山住居(やまずまゐ)(つづ)けてゐたのである。
225 さて刹帝利(せつていり)(おく)()にはヒルナ(ひめ)226治国別(はるくにわけ)227タルマン、228キユービツト、229エクスが小酒宴(こざかもり)(ひら)(なが)ら、230四方山(よもやま)(はなし)(ふけ)つてゐた。231キユービツトは治国別(はるくにわけ)(むか)ひ、
232左守(さもり)三五(あななひ)(かみ)(さま)のお(かげ)233貴師(あなた)(がた)()尽力(じんりよく)()りまして、234叛将(はんしやう)ベルツも(やうや)降服(かうふく)(いた)し、235あの(とほ)閉門(へいもん)申付(まをしつ)けられ、236あ、237これで一安心(ひとあんしん)(いた)しましたが、238刹帝利(せつていり)(さま)()老齢(らうれい)(こと)なり、239()世継(よつぎ)がないので大変(たいへん)心配(しんぱい)(いた)して()られます。240(なん)とかして()(さづ)かる(はふ)(ござ)いますまいかなア』
241心配相(しんぱいさう)(たづ)ねた。242治国別(はるくにわけ)此処(ここ)ぞと、243(ひざ)(すす)め、
244治国(はるくに)刹帝利(せつていり)(さま)には、245アール、246イース、247ウエルス、248エリナン、249オークス、250ダイヤ(さま)といふ五男(ごなん)一女(いちぢよ)があるぢやありませぬか。251(その)(かた)(れい)(あつ)くしてお()(かへ)りになれば、252立派(りつぱ)()世継(よつぎ)出来(でき)るでせう』
253左守(さもり)『ハイ、254(おほせ)(ごと)(ろく)(にん)のお子様(こさま)(ござ)いましたが、255(いま)(その)行衛(ゆくゑ)(わか)りませぬので、256(じつ)(ところ)刹帝利(せつていり)(さま)もお(とし)()つて()(こひ)しうなり、257(こころ)(ひそか)にお(たづ)ねになつて()ります。258(しか)(なが)ら、259どうしても(その)子様(こさま)行衛(ゆくゑ)()れず、260仮令(たとへ)行衛(ゆくゑ)()れても()(かへ)(あそ)ばすことは(ござ)いますまい』
261治国(はるくに)刹帝利(せつていり)殿(どの)262拙者(せつしや)(ろく)(にん)のお子様(こさま)貴方(あなた)にお(わた)(まを)せば、263貴方(あなた)如何(どう)なさいますか。264(むかし)のやうな(かんが)へを(おこ)して、265(みな)(ころ)して(しま)心算(つもり)ですか』
266 刹帝利(せつていり)(なみだ)(ぬぐ)(なが)ら、
267刹帝利(じつ)(ところ)悪魔(あくま)魅入(みい)られ、268(わる)(ゆめ)(いつ)週間(しうかん)(つづ)けてみましたので、269(かたき)(わが)()となつて(うま)れて()たものと(しん)じ、270()(にん)男子(だんし)一人(ひとり)(のこ)らず打殺(うちころ)さうと、271残酷(ざんこく)(かんが)へを(おこ)しましたが、272それをどう(さと)つたものか、273(よる)(あひだ)城内(じやうない)逃出(にげだ)して(しま)ひ、274どつかに(ひそ)んで計画(けいくわく)をなし、275何時(いつ)自分(じぶん)(ほろ)ぼしに()るか()れないと(おも)うて、276()()(ろく)()(こと)(ござ)いませぬ』
277治国(はるくに)『それは貴方(あなた)()心得違(こころえちが)ひといふもの、278貴方(あなた)のお子様(こさま)(じつ)温良(をんりやう)(かた)で、279(いま)はみじめな生活(せいくわつ)をし(なが)らも、280(くに)(おも)ひ、281王家(わうけ)(おも)ひ、282(すこ)しも(うら)んではゐられませぬよ。283貴方(あなた)(いま)改心(かいしん)して、284(ろく)(にん)のお子様(こさま)城内(じやうない)へお(まね)きになれば、285キツと孝養(かうやう)(つく)されるでせう』
286刹帝(せつてい)『まだ(この)()()きて()るでせうか。287(ただし)()きて(なに)(わる)(こと)(たく)んで()りは(いた)しますまいか……と心配(しんぱい)でなりませぬ』
288治国(はるくに)(けつ)して()心配(しんぱい)なさいますな。289(わたし)引受(ひきう)けませう』
290刹帝(せつてい)治国別(はるくにわけ)(さま)のお言葉(ことば)なれば、291(けつ)して間違(まちがひ)はありますまい。292何卒(どうぞ)(この)()()ります(もの)なれば、293一度(いちど)()はして(いただ)()いもので(ござ)います』
294治国(はるくに)(よろ)しい、295二三(にさん)(にち)(わたし)にお(まか)(くだ)さい。296キツとお()はせ(いた)しませう』
297 刹帝利(せつていり)(なかば)(よろこ)び、298(なかば)不安(ふあん)(てい)(なが)ら、299(ほか)ならぬ治国別(はるくにわけ)言葉(ことば)(ちから)とし、300一切(いつさい)(まか)して(しま)つた。301左守(さもり)302右守(うもり)(はじ)めタルマン、303ヒルナ(ひめ)一同(いちどう)(かしら)()げ、304治国別(はるくにわけ)に、
305何分(なにぶん)(よろ)しく(たの)みます』
306(なみだ)(とも)(たの)()る。307治国別(はるくにわけ)自分(じぶん)(あた)へられた(うつく)しい(やかた)(かへ)り、308松彦(まつひこ)309竜彦(たつひこ)310万公(まんこう)相談(さうだん)(うへ)311(ろく)(にん)子女(しぢよ)(むか)(かへ)(こと)(はか)つた。
312 (ここ)(さん)(にん)治国別(はるくにわけ)(めい)()つて、313ビクトル(さん)()え、314照国(てるくに)(だけ)山谷(さんこく)()して旅装(りよさう)(ととの)へ、315(ろく)(にん)子女(しぢよ)(むか)ふべく、316草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)()(かた)め、317奉迎(ほうげい)といふ(おのおの)手旗(てばた)(かざ)(なが)ら、318(たれ)にも()らさず(ひそか)(たづ)()(こと)となりぬ。
319大正一二・二・二一 旧一・六 於竜宮館 松村真澄録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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