霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 百円(ひやくゑん)〔一四〇二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第4篇 関所の玉石 よみ(新仮名遣い):せきしょのぎょくせき
章:第16章 百円 よみ(新仮名遣い):ひゃくえん 通し章番号:1402
口述日:1923(大正12)年02月23日(旧01月8日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
次に妖仙という医者の爺がやってきた。赤の守衛に見立て違いや薬の押し売りを責められたが、これも理屈をこねて自分が正しいを言い張り、白の守衛に審判庭に引き込まれてしまった。
続いて、人尾威四郎と名乗る弁護士がやってきた。赤の守衛は、小作人を扇動して騒ぎを起こし、逮捕された者の弁護を請け負うという人尾の罪を責めたが、人尾は自分が霊界の裁判官の目を覚ましてやると言って堂々と審判庭に入って行く。
次にやってきた要助という男は、女にだまされて父親の金を貢ぎ、父親に追いかけられてライオン川に投身したという。守衛は、要助の寿命はまだ残っていたが、父親が引き上げた要助の身体を埋葬してしまったので、要助に中有界で四十年ほどの修業を命じた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-04-14 16:25:28 OBC :rm5416
愛善世界社版:195頁 八幡書店版:第9輯 691頁 修補版: 校定版:197頁 普及版:91頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎著作集 > 第二巻「変革と平和」 > 第三部 『霊界物語』の思想 > 百円
001(ふところ)(さむ)きが(ゆゑ)藪医者(やぶいしや)
002(くすり)にまでも(かぜ)ひかせけり
003(病井妖仙)『あああ、004どつかそこらに(かん)ばしい病人(びやうにん)がないかと(さが)してみたが、005()たれ、006行倒(ゆきだふ)(ばか)りで、007()つから(かね)をくれさうな(やつ)もなし、008こんな(ところ)(まよ)つて()た。009これだから、010(うち)(かか)(さけ)()むな(さけ)()むなといつも()ひよるのだけれど、011医者(いしや)養生(やうじやう)()らずといつて、012どうも節制(せつせい)(まも)れないものだ。013(あま)(この)(ごろ)世界(せかい)人間(にんげん)(かしこ)うなつて、014衛生(ゑいせい)とか運動(うんどう)とかに注意(ちうい)をし()したので、015何奴(どいつ)此奴(こいつ)壮健(さうけん)になり、016妖仙(えうせん)さまの(ふところ)益々(ますます)()衰弱(すゐじやく)(あそ)ばす、017(こま)つたことだなア。018去年(きよねん)仕入(しい)れた(くすり)(かぜ)()く、019だと()つて、020ヤツパリ(もと)がかかつてゐるのだから、021病人(びやうにん)(のま)して(かね)にせなくちや会計(くわいけい)()たず、022()ましても()ましても(なほ)らぬものだから、023彼奴(あいつ)(たけ)()だ、024藪医(やぶい)竹庵(ちくあん)だ、025仕様(しやう)もない(うはさ)()てられ門前(もんぜん)雀羅(じやくら)()つて、026(じつ)(みじめ)なものだ、027どこぞ()患者(くわんじや)があれば、028(ひと)()つつかまへたいものだなア』
029独言(ひとりご)ちつつ、030八衢(やちまた)(もん)(くぐ)らうとする茶瓶爺(ちやびんおやぢ)があつた。
031(あか)『コレヤコレヤ一寸(ちよつと)()て、032(その)(はう)何者(なにもの)だ』
033()(病井妖仙)『ハイ、034拙者(せつしや)仁術(じんじゆつ)(もつ)家業(かげふ)(いた)国手(こくしゆ)(ござ)る。035(なん)(よう)(ござ)るかな。036病気(びやうき)とあらば拙者(せつしや)(みやく)をみてやらうかな』
037(あか)(おれ)至極(しごく)健全(けんぜん)だ、038医者(いしや)なんかに(よう)はない』
039()(病井妖仙)『ああさうかな、040さうすれば(わたし)(よう)のない(ひと)だ。041(わたし)親密(しんみつ)交際(かうさい)をする(もの)病家(びやうか)(ばか)りだ。042(この)(ごろ)(なん)だか三五教(あななひけう)とかいふ邪教(じやけう)蔓延(まんえん)して何奴(どいつ)此奴(こいつ)病気(びやうき)(なほ)し、043非常(ひじやう)商売(しやうばい)妨害(ばうがい)(いた)すので(いささ)(こま)つてゐるのだ。044ああ医者(いしや)もモウ()(すゑ)かなア』
045(あか)(その)(はう)姓名(せいめい)(なん)(まを)すか』
046()(病井妖仙)『ハイ病井(やまい)妖仙(えうせん)とも()藪医(やぶい)竹庵(ちくあん)とも(まを)します』
047(あか)『どちらも(その)(はう)綽名(あだな)だな、048本名(ほんみやう)(なん)といふか』
049妖仙(えうせん)『あまり商売(しやうばい)(いそが)しいので、050本名(ほんみやう)(わす)れました。051(たれ)(かれ)(わたし)(まへ)では、052先生(せんせい)々々(せんせい)といひますから、053マア先生(せんせい)本名(ほんみやう)(ござ)いませうかい』
054(あか)(その)(はう)一生(いつしやう)(あひだ)病人(びやうにん)(いく)(たす)けたか』
055妖仙(えうせん)(たす)けたのも沢山(たくさん)(ござ)いますが、056寿命(じゆみやう)のない(もの)は、057(かみ)さまだつて、058医者(いしや)だつて(かな)ひませぬから……(しか)(なが)医者(いしや)南瓜(かぼちや)はひねたが()いと(まを)しまして、059一人前(いちにんまへ)医者(いしや)にならうと(おも)へば、060どうしても経験(けいけん)(じやう)(せん)(にん)(ぐらゐ)(ころ)さなくちやなりませぬからなア』
061(あか)(きさま)本当(ほんたう)診察(しんさつ)しても、062病気(びやうき)原因(げんいん)医療法(いれうはふ)徹底(てつてい)(てき)(わか)つて()るのか』
063妖仙(えうせん)人間(にんげん)分際(ぶんざい)として、064(わか)(さう)(こと)はありませぬが、065()(かく)先人(せんじん)(つく)つておいた医書(いしよ)(くび)(ぴき)して(くすり)調合(てうがふ)(いた)します。066そして問診(もんしん)()つて、067介抱人(かいほうにん)家族(かぞく)(もの)(やまひ)経過(けいくわ)()き、068食欲(しよくよく)有無(うむ)()(ただ)し、069(また)望診(ばうしん)()つて、070病人(びやうにん)様子(やうす)(のぞ)み、071(かほ)黄色(きいろ)病人(びやうにん)黄疸(わうだん)断定(だんてい)し、072(あか)(やつ)(さけ)(よひ)断定(だんてい)し、073()相当(さうたう)(くすり)(あた)へます。074(その)(うへ)血液(けつえき)循環(じゆんかん)様子(やうす)や、075呼吸器(こきふき)076神経(しんけい)系統(けいとう)などを、077念入(ねんい)りに調(しら)べる(ため)078打診(だしん)079聴診(ちやうしん)080触診(しよくしん)など、081所在(あらゆる)手段(しゆだん)(つく)し、082どうしても(わか)らない(とき)は、083()加減(かげん)()をつけて、084マア胡魔化(ごまくわ)すのですな。085沢山(たくさん)医者(いしや)()りますが、086実際(じつさい)病気(びやうき)をつかんだ医者(いしや)は、087(おそ)らくは一人(ひとり)もありますまい。088()(なか)はマアこんなものですよ』
089(あか)不届(ふとどき)藪医者(やぶいしや)()090(その)(はう)薬違(くすりちがひ)によつて、091あるべき(いのち)()てたる(もの)幾人(いくにん)あるか(わか)らぬぞ、092人殺(ひとごろし)大罪人(だいざいにん)()
093妖仙(えうせん)医者(いしや)(ひと)(ころ)しても、094(べつ)法律(はふりつ)には()れませぬよ。095それが医者(いしや)特権(とくけん)です。096普通(ふつう)人間(にんげん)(ひと)(ころ)せば、097(たちま)死刑(しけい)処分(しよぶん)()けねばなりますまい。098医者(いしや)堕胎(だたい)をしようが手足(てあし)()らうが、099堕胎罪(だたいざい)にもならず、100傷害罪(しやうがいざい)にもならず、101一種(いつしゆ)特権(とくけん)階級(かいきふ)だから、102(まへ)さま()大罪人(だいざいにん)()ばはりをされる(はず)がない、103(かま)うて(くだ)さるな。104ヘン、105(まへ)さまは(かほ)(あか)い、106チツと逆上(のぼ)せて(ござ)るな。107チツと(ふる)いけれどセメンエンでも()げませうか。108陳皮(ちんぴ)茯苓(ぶくりやう)109ケンチアナ(まつ)に、110アマ仁油(にんゆ)111重曹(ぢうさう)牡蠣(ぼれい)112(なん)なら一服(いつぷく)()(あが)つたら()うだい』
113(あか)『バカツ、114(きさま)医者(いしや)押売(おしうり)(いた)すのか』
115妖仙(えうせん)『さうですとも、116生存(せいぞん)競争(きやうそう)(はげ)しき()(なか)117医者(いしや)だと()つて、118ジツとして()れば(たれ)()ませぬ。119大新聞(だいしんぶん)広告(くわうこく)をしたり、120記者(きしや)提灯(ちやうちん)(もた)せたり、121(かね)()して博士(はかせ)称号(しやうがう)()つたり、122種々(いろいろ)雑多(ざつた)体裁(ていさい)(かざ)()てなくては、123乞食(こじき)だつて()(にぎ)つてくれといふ(もの)がありませぬワ』
124(あか)(この)帳面(ちやうめん)に、125よく調(しら)べてみると、126(その)(はう)葡萄酒(ぶだうしゆ)(みづ)()ぜて、127大変(たいへん)高貴(かうき)(くすり)だと(まを)し、128病人(びやうにん)にのませ、129非常(ひじやう)にボツた(こと)があらうな』
130妖仙(えうせん)『そらさうですとも、131(しか)(なが)(わたし)(たち)のボルのは一服(いつぷく)五銭(ごせん)十銭(じつせん)(ちひ)さくボツて()くのです。132一口(ひとくち)(せん)(ゑん)(まん)(ゑん)とボツてゐる(やつ)は、133世界(せかい)(いく)らあるか()れませぬよ。134四百四(しひやくし)(びやう)(うち)でも(なほ)(やまひ)もあれば、135どうしても(なほ)らない(やまひ)がありますが、136それでも病人(びやうにん)(くすり)をくれといへばやらぬ(わけ)にも()かず、137(また)此方(こちら)もボルことが出来(でき)ぬから、138あかぬとは()りつつ、139葡萄酒(ぶだうしゆ)(みづ)をまぜて慰安(ゐあん)(ため)()ましてをります。140(これ)所謂(いはゆる)医者(いしや)(まさ)(つく)すべき道徳律(だうとくりつ)ですから、141さう貴方(あなた)のやうに一口(ひとくち)(けな)すものぢやありませぬ』
142(あか)()(かく)難物(なんぶつ)だ。143到底(たうてい)モルヒネ注射(ちうしや)(ぐらゐ)では()がつくまいが、144(いま)荒料理(あられうり)をしてやるから、145マア(おく)()つて順番(じゆんばん)()(まで)()つてゐるが()いワ』
146妖仙(えうせん)貴方(あなた)(いま)147荒料理(あられうり)をしてやると()つたが、148それは外科(げくわ)(てき)大手術(だいしゆじゆつ)(こと)でせう。149貴方(あなた)医者(いしや)鑑札(かんさつ)()つてゐますか。150そんな(こと)をなさると医師法(いしはふ)違反(ゐはん)告発(こくはつ)しますぞ。151サ、152(なん)といふ姓名(せいめい)だ、153()かして(もら)ひませう。154此方(こちら)にも(かんが)へがあるから、155(まへ)(たち)のやうな素人(しろうと)(おれ)(たち)縄張(なはばり)()らされては、156到底(たうてい)157医者(いしや)として()つていけるものぢやない。158鎮魂(ちんこん)だの、159祈祷(きたう)だの、160心理(しんり)療法(れうはふ)だのと、161(この)(ごろ)(おれ)(たち)(てき)沢山(たくさん)(あらは)れて、162商売(しやうばい)妨害(ばうがい)をするから、163全国(ぜんこく)医師(いし)大会(たいくわい)(ひら)いて、164政府(せいふ)抗議(かうぎ)申込(まをしこ)(かれ)()(ともがら)殲滅(せんめつ)せむと、165筍会議(たけのこくわいぎ)()めてあるのだ。166それに素人(しろうと)のお(まへ)が、167大手術(だいしゆじゆつ)医者(いしや)(わし)(むか)つて、168してやらうなどとは、169法治国(はふちこく)人民(じんみん)として、170(じつ)()しからぬものだ。171サア、172()()かしなさい』
173(ふところ)から手帳(てちやう)()し、174鉛筆(えんぴつ)(ねぶ)つて、175姓名(せいめい)()()めようとしてゐる。176(しろ)守衛(しゆゑい)妖仙(えうせん)(うで)をグツと(にぎ)り、177(いや)がるのを無理(むり)無体(むたい)引張(ひつぱ)つて、178門内(もんない)(かく)れた。
179 ()のクルリとした、180(はな)(かど)のある、181腮鬚(あごひげ)(いつ)(しやく)(ばか)()やした一癖(ひとくせ)(あり)さうな(をとこ)182(この)街道(かいだう)(おれ)のものだといふやうな調子(てうし)で、183大手(おほて)()つてのそりのそりとやつて()る。184(あか)守衛(しゆゑい)は、
185(あか)『オイ(しばら)()て、186取調(とりしら)べる(こと)がある』
187呶鳴(どな)つた(こゑ)に、188()(をとこ)(たち)どまり、189(いや)らしい()(あか)(かほ)()めつけ(なが)ら、
190(をとこ)(人尾)(なん)だ、191天下(てんか)大道(だいだう)自由(じいう)濶歩(かつぽ)するのは吾々(われわれ)自由(じいう)権利(けんり)だ、192()てとは(なん)だ。193他人(たにん)権利(けんり)妨害(ばうがい)し、194仮令(たとへ)一刻(いつこく)でも暇取(ひまど)らせるならば、195それ(だけ)損害(そんがい)賠償(ばいしやう)請求(せいきう)するぞ。196(その)(はう)人間(にんげん)権利(けんり)義務(ぎむ)といふ(こと)(わきま)へてるか、197エエン』
198(あか)『ここは八衢(やちまた)関所(せきしよ)だ。199(きさま)生前(せいぜん)のメモアルを(しら)べ、200天国(てんごく)へやるか、201地獄(ぢごく)(おと)すか、202……といふ分水嶺(ぶんすゐれい)だ。203(きさま)のネームは(なん)といふか』
204(をとこ)(人尾)拙者(せつしや)人尾(ひとを)威四郎(おどしらう)といふ有名(いうめい)弁護士(べんごし)だ。205そして特許(とくきよ)弁理士(べんりし)()ねてゐるのだ。206これでも法科(はふくわ)大学(だいがく)卒業生(そつげふせい)だ。207守衛(しゆゑい)分際(ぶんざい)として吾々(われわれ)取調(とりしら)べる権能(けんのう)がどこにあるツ』
208(あか)『いかにも(きさま)人間(にんげん)生血(いきち)(しぼ)悪党(あくたう)だ。209随分(ずいぶん)(かね)()(しぼ)()つたものだなア』
210人尾(ひとを)(ひと)(うれ)ひの(なみだ)(しづ)み、211(くび)もまはらぬやうになつてゐる(ところ)を、212(いささ)慰安(ゐあん)(あた)へるのが拙者(せつしや)職掌(しよくしやう)だ。213(その)報酬(はうしう)として労金(らうきん)請求(せいきう)するのは商売(しやうばい)(じやう)権利(けんり)ぢやないか、214請求(せいきう)すべき(もの)請求(せいきう)したのが(なに)(わる)い』
215(あか)(その)(はう)(はじめ)からの弁護士(べんごし)ではあるまい。216(いま)人尾(ひとを)威四郎(おどしらう)(まを)してゐるが、217以前(いぜん)二股(ふたまた)検事(けんじ)()つて、218随分(ずいぶん)悪辣(あくらつ)(こと)(いた)した(もの)だなア。219無謀(むぼう)検挙(けんきよ)(いた)して、220失敗(しくじ)つた揚句(あげく)221()むを()弁護士(べんごし)になつたであらう』
222人尾(ひとを)(かま)つて(くだ)さるな、223自由(じいう)権利(けんり)だ。224(まへ)吾々(われわれ)(はづかし)める(つも)りか、225ヨーシ現行(げんかう)法律(はふりつ)()つて誹毀罪(ひきざい)(うつた)へてやる。226事実(じじつ)有無(うむ)(くわん)せず、227(ひと)悪事(あくじ)非難(ひなん)(いた)した(もの)は、228新刑法(しんけいはふ)条項(でうかう)(てら)相当(さうたう)処分(しよぶん)がある(はず)だ。229(しか)(なが)(その)(はう)出様(でやう)によつては取消(とりけ)さない(こと)もない、230賠償金(ばいしやうきん)(いく)()すか』
231(あか)馬鹿(ばか)()へ、232ここは霊界(れいかい)だ。233霊界(れいかい)現界(げんかい)法律(はふりつ)()つて()ても通用(つうよう)(いた)さぬぞ。234(その)(はう)(すこ)しくボレ(さう)大事件(だいじけん)(のこ)らず有名(いうめい)弁護士(べんごし)()られて(しま)ひ、235糊口(ここう)(きう)し、236小作人(こさくにん)煽動(せんどう)し、237労働者(らうどうしや)(おだ)てあげて、238沢山(たくさん)入監者(にふかんしや)(つく)り、239自分(じぶん)弁護(べんご)得意先(とくいさき)製造(せいざう)(いた)す、240しれ(もの)であらうがな』
241人尾(ひとを)成程(なるほど)242それに間違(まちが)ひはない。243(しか)(なが)煽動(せんどう)する(もの)(わる)いのぢやない、244(その)煽動(せんどう)にのる(やつ)(わる)いのだ。245拙者(せつしや)拙者(せつしや)として商売(しやうばい)繁昌(はんじやう)(ため)所在(あらゆる)手段(しゆだん)(つく)し、246活動(くわつどう)してゐるのだ。247(この)権利(けんり)侵害(しんがい)する(もの)は、248何程(なにほど)霊界(れいかい)だつてあらう(はず)がない。249(わけ)(わか)らぬ(こと)をいはずにスツ()んだがよからう。250八衢(やちまた)関所(せきしよ)()(うへ)(さだ)めて審判所(しんぱんしよ)もあるだらう。251ヨシ、252裁判(さいばん)はお()のものだ。253これから滔々(たうたう)弁論(べんろん)をまくし()判官(はんぐわん)()()ましてやらう。254第一審(だいいつしん)でいけなければ第二審(だいにしん)255第二審(だいにしん)()かなければ第三審(だいさんしん)256美事(みごと)()つてみせよう。257そして天国(てんごく)永住権(えいぢうけん)獲得(くわくとく)し、258人生(じんせい)特有(とくいう)権利(けんり)遺憾(ゐかん)なく発揮(はつき)する心段(つもり)だ、259オツホン』
260()(なが)ら、261反身(そりみ)になつて(みづか)(もん)(くぐ)り、262のそりのそりと(すす)()く。263(あと)二人(ふたり)守衛(しゆゑい)(かほ)見合(みあは)せ、
264(しろ)彼奴(あいつ)アどしても地獄墜(ぢごくお)ちですなア、265法律家(はふりつか)といふ(もの)(じつ)(あぢはひ)のない(もの)ですなア』
266(あか)冷酷(れいこく)無残(むざん)(けだもの)とは彼奴(あいつ)()(こと)だ。267法律(はふりつ)にのみ精神(せいしん)傾注(けいちう)してゐる現界(げんかい)(やつ)は、268(くち)では権利(けんり)義務(ぎむ)(さけ)(なが)ら、269(ひと)権利(けんり)侵害(しんがい)し、270義務(ぎむ)()みたたくる(くらゐ)(なん)とも(おも)つてゐない。271厚顔(こうがん)無恥(むち)精神(せいしん)病者(びやうしや)(ばか)りだから、272可哀相(かあいさう)なものだ。273あああ()いかげんに守衛(しゆゑい)もお(ひま)(いただ)かねば(たま)らなくなつてきた。274(しか)(なが)自分(じぶん)(いへど)も、275天国(てんごく)()資格(しかく)もなし、276(ほか)(これ)といふ(げい)もないのだから、277ヤツパリ(いや)守衛(しゆゑい)(つと)めねばならないのかなア』
278 ()(はな)(ところ)へ、279(また)もや向方(むかふ)(かた)より、280三十(さんじふ)恰好(かつかう)のハイカラ(をとこ)がそそり「そそり」とは浮かれ騒いで歌う歌のこと。そそり節。そそり歌。(うた)(なが)ら、281千鳥足(ちどりあし)にて大道(だいだう)(せま)しとやつて()る。
 
282(要助)(ふゆ)()
283 うす()をうけて(ただ)一人(ひとり)
284 (わか)らぬ(ところ)彷徨(さまよ)(きた)る。
285 (ふゆ)()
286 (そら)にふるうて()りわたる
287 (からす)皺枯声(しわがれごゑ)がする。
288 (なん)となく
289 あとの(こころ)(さび)しさよ
290 (いま)()になき恋人(こひびと)(おも)へば。
291 なれそめて
292 (きみ)におびえぬ(とり)ありと
293 (かな)しき(こと)()ける(ふみ)
294 島田(しまだ)つぶして丸髷(まるまげ)()うて
295 (うれ)しやお(みや)礼参(れいまゐ)り……と、
 
296あああ()うた()うた、297一体(いつたい)ここはどこだい。298(なん)だか無粋(ぶすゐ)(やつ)山門(さんもん)仁王然(にわうぜん)()つてゐやがるぢやないか。
299 二世(にせ)三世(さんせ)()うでもよいが
300  せめて一夜(いちや)(えん)なりと………とけつかるわい。301ウーエ、302(なん)(さび)しい街道(かいだう)だな。303ソロソロ(よひ)()()したやうだ。304こんな(ところ)()められちや、305やり()れない。306モウ(しばら)持続(ぢぞく)する(ため)(うた)でも(うた)つて(さわ)いでやらうかな、307……
308 (なん)とするかと狸寝(たぬきね)すれば
309  (した)()したり(わら)つたり……と、
310アハハハハ、311(とく)(やつ)312(この)(あひだ)(ばん)馬鹿(ばか)にしてゐやがる、
313 浮気(うはき)()いても()になる(ひと)
314  出雲参(いづもまゐ)りを(たれ)とした……か、
315 二世(にせ)(ちぎ)つたあなたの(まへ)
316  ()れて()になる三味(しやみ)(いと)
317 ()れた()れたは世間(せけん)(うはさ)
318  (みづ)(うきぐさ)()()れぬ………と(なん)()つても、319(とく)はお(とく)だ、320要助(えうすけ)さまには、321(たれ)(なん)()つても……()れはせぬ……と(ぬか)すんだから、322(たい)したものだ』
323袖懐(そでふところ)をし(なが)ら、324ドンと(もん)行当(ゆきあた)り、325(あたま)がフラフラした拍子(ひやうし)にバツタリ此処(ここ)(たふ)れた。326守衛(しゆゑい)背中(せなか)(ちから)(かぎ)りに()()(つづ)(うち)()つた。327要助(えうすけ)はハツと()がつき、328(さけ)(よひ)()め、329真青(まつさを)(かほ)になり、330二人(ふたり)(かほ)をギロギロと見詰(みつ)めてゐる。
331(あか)(その)(はう)何者(なにもの)だ』
332要助(えうすけ)『ヘヘ、333(わたし)有名(いうめい)好色(かうしよく)男子(だんし)要助(えうすけ)(まを)します。334(わたし)をお()()めになつて、335(なに)要助(えうすけ)(ござ)いますかな。336(あま)りお(とく)にならぬ(こと)はお(たづ)ねなさらぬが(よろ)しい。337(とく)(へん)じてお(そん)となつては(たがひ)迷惑(めいわく)ですからな』
338(あか)(その)(とく)といふのは何処(どこ)(をんな)だ』
339要助(えうすけ)『エヘヘヘ、340一寸(ちよつと)申上(まをしあ)(にく)(ござ)いますが、341ベコ(すけ)女房(にようばう)(ござ)います』
342(あか)『ベコ(すけ)女房(にようばう)に、343(その)(はう)関係(くわんけい)をしたのか』
344要助(えうすけ)関係(くわんけい)があるといへばあります。345()いと()へばない(やう)なものですが……』
346(あか)(その)(はう)はお(とく)肱鉄(ひぢてつ)をかまされたぢやないか。347そして沢山(たくさん)(かね)()られただらう』
348要助(えうすけ)『ヘエ、349(じつ)(ところ)はエー、350(とく)要求(えうきう)(おう)じ、351(おやぢ)貯金(ちよきん)(ひつ)ぱり()し、352饂飩屋(うどんや)資本金(もとで)にするといふものですから、353(ひやく)(りやう)(ばか)()してやりました。354そして(さけ)一杯(いつぱい)すすめられ、355()(ふり)をしてみて()りますと、356(とく)(やつ)357(した)()したり、358(わたし)(はう)()て、359イインをしたり、360(わら)つたりしてをるのですよ、361……(なに)をするかと狸寝(たぬきね)すれば、362(した)()したり(わら)つたり……、363マアこんな調子(てうし)でした、364何分(なにぶん)にもお(とく)にはレコがあるものですから、365どうしても要助(えうすけ)完全(くわんぜん)意志(いし)疎通(そつう)する(こと)出来(でき)ませぬので、366()()いたり、367仕方(しかた)をしたり、368それはそれは苦心(くしん)をして()りますよ。369(しか)しまだ一度(いちど)姦通(かんつう)などはして()りませぬから、370二人(ふたり)(なか)潔白(けつぱく)なものです』
371(あか)仮令(たとへ)肉体(にくたい)(うへ)姦通(かんつう)はしなくても、372(すで)(すで)(こころ)姦通(かんつう)したぢやないか』
373要助(えうすけ)『サ、374()れが判然(はつきり)(わか)りませぬので、375(わたし)(はう)では、376(こころ)(すで)姦通(かんつう)せむとして()りますが、377トツクリ(はなし)をする()がないものですから、378(むか)ふの意志(いし)十分(じふぶん)(わか)りませぬ。379出刃(でば)()れるとか、380菜刀(ながたな)()れるとか、381今日(けふ)(かね)()れたとか、382饂飩(うどん)原料(げんれう)()れたとか、383仕舞(しま)ひの(はて)にや……()れた()れたは世間(せけん)(うはさ)384(みづ)(うきぐさ)()()れぬ……などと(うた)つてるものですから、385実際(じつさい)(わたし)(こと)()つてるのか、386商売(しやうばい)(こと)()つてるのか、387まだスツカリ判断(はんだん)がつかないのです。388そした(ところ)389(うち)(おやぢ)()が、390(わたし)貯金(ちよきん)引張出(ひつぱりだ)饂飩屋(うどんや)のお(とく)にやつたと()(こと)()いて、391(おこ)るの(おこ)らぬのつて、392矢庭(やには)手斧(てをの)(ふり)かざし……コーラ極道伜(ごくだうせがれ)()……と(おに)のやうな(かほ)して(おひ)かけて()るものですから、393()むを()ずライオン(がは)投身(とうしん)をしたと(おも)へば、394ヤツパリ(ゆめ)だつたか、395こんな(ところ)()(まよ)うて()ました。396何分(なにぶん)(さけ)のまはつてる最中(さいちう)()ひかけられたものですから、397どこをどう(とほ)つて()たのか、398(かは)へはまつたのが本当(ほんたう)か、399テンと(わけ)(わか)りませぬワ』
400 (あか)生死簿(せいしぼ)()(なが)ら、
401(あか)『ヤ、402(その)(はう)はまだ四十(しじふ)(ねん)(ばか)(いのち)(のこ)つてゐる。403(しか)(なが)(その)(はう)肉宮(にくみや)(おやぢ)(かは)から引上(ひきあ)げて、404(この)極道(ごくだう)()」と()つて、405矢庭(やには)(つち)(なか)()()んで(しま)ひよつたので、406最早(もはや)(かへ)(こと)出来(でき)まい。407()(どく)(なが)四十(しじふ)(ねん)(ばか)り、408(この)中有界(ちううかい)修業(しうげふ)(いた)したがよからう』
409要助(えうすけ)『ハイ、410ソリヤ仕方(しかた)がありませぬ。411(しか)しお(とく)何処(どこ)()りますか、412一寸(ちよつと)()らせて(くだ)さいな。413(べつ)(むか)ふに思召(おぼしめし)のないのに、414無理(むり)要求(えうきう)(おう)じてくれとは(まを)しませぬ。415(ただ)(ひやく)(ゑん)(かね)()した(ため)に、416こんな顛末(てんまつ)になつたといふ(こと)(だけ)()つてやりたう(ござ)いますから、
417 (ひやく)(ゑん)逆縁(ぎやくえん))も、418もらさで(すく)(ぐわん)なれば
419  (みちび)(たま)弥陀(みだ)浄土(じやうど)へ……
420といふ、421どこやらの観音(くわんおん)(さま)の、422詠歌(えいか)(ござ)いましたなア、423あの(ひやく)(ゑん)さへ(わたし)()(かへ)されば、424極楽(ごくらく)浄土(じやうど)(すく)うて(くだ)さるでせうから、425(はた)してここが冥土(めいど)とあれば、426仮令(たとへ)幽霊(いうれい)になつてでもあの(かね)をお(とく)から取返(とりかへ)し、427極楽行(ごくらくゆき)がしたう(ござ)いますからなア』
428 (あか)は、
429赤の守衛『エエ八釜(やかま)しい、430そちらへ()けツ』
431(ちから)(まか)して突飛(つきと)ばせば、432要助(えうすけ)(ほそ)くなつて、433東北(とうほく)(はう)()がけて()げて()く。
434大正一二・二・二三 旧一・八 於竜宮館 松村真澄録)

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