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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第54巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 神授の継嗣
第1章 子宝
第2章 日出前
第3章 懸引
第4章 理妻
第5章 万違
第6章 執念
第2篇 恋愛無涯
第7章 婚談
第8章 祝莚
第9章 花祝
第10章 万亀柱
第3篇 猪倉城寨
第11章 道晴別
第12章 妖瞑酒
第13章 岩情
第14章 暗窟
第4篇 関所の玉石
第15章 愚恋
第16章 百円
第17章 火救団
第5篇 神光増進
第18章 真信
第19章 流調
第20章 建替
第21章 鼻向
第22章 凱旋
附録 神文
余白歌
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
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第54巻(巳の巻)
> 第3篇 猪倉城寨 > 第14章 暗窟
<<< 岩情
(B)
(N)
愚恋 >>>
第一四章
暗窟
(
あんくつ
)
〔一四〇〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
篇:
第3篇 猪倉城寨
よみ(新仮名遣い):
いのくらじょうさい
章:
第14章 暗窟
よみ(新仮名遣い):
あんくつ
通し章番号:
1400
口述日:
1923(大正12)年02月22日(旧01月7日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
久米彦は何食わぬ顔で戻ってきて、鬼春別に、スミエルとスガールは暗窟に放り込んで殺したと報告した。鬼春別は、二人の女は久米彦の部屋にいるだろうと言いだして、訪問したいと言いだした。
鬼春別は久米彦と言い争いになったが、鬼春別は上官の権限で捜索すると言って久米彦の居間に進んでしまった。聞き耳を立てていたが、外からは姉妹の声が聞こえなかった。久米彦は鬼春別けに追いついて、鬼春別を非難し、二人はまたも言い争いになった。
そこへ士官のマルタがやってきて、三千の兵士たちが狂乱の態となってしまったことを報告しにやってきた。両将軍はあわてて岩窟の入り口に駆け出した。兵士たちは八九分どおり裸になって訳のわからないことをさえずりながら、建物を壊している。
両将軍が大喝すると、兵士たちは我先にと群がり来って将軍たちに乱暴狼藉をなしたため、鬼春別と久米彦はほとんど息の根も絶え絶えになってしまった。
道晴別とシーナはこの騒ぎにまぎれて岩窟に入り込み、スミエルとスガールを探して歩いた。ようやく妖瞑酒の効き目が醒めた兵士たちは我に返って将軍たちを助け起こし、介抱した。道晴別とシーナはスミエルとスガールがいる部屋を探り当てて門扉を叩き割った。
しかし二人を助けて室内から逃げ出そうとするとき、前後左右から集まってきたバラモン軍に捕縛され、四人は別々に暗い岩窟の中に落とし込まれてしまった。
久米彦は姉妹を逃がそうとした二人の軍人を三五教の間者と疑ったが、鬼春別はこれだけ厳重な砦に間者が入ってきたところで何もできないだろうと一笑に付した。
一同は、スミエルとスガールを閉じ込めてから兵士たちの狂態が回復したことから、二人は猪倉山に巣食うという妖怪妖幻坊一派の化身ではないかと疑い、また陣中に女を引き入れたことを大自在天がこういう形で戒めたのだろうと、互いに軍規軍律を気を付け合ってこの要害を守ることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-04-12 18:08:56
OBC :
rm5414
愛善世界社版:
169頁
八幡書店版:
第9輯 681頁
修補版:
校定版:
170頁
普及版:
78頁
初版:
ページ備考:
001
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み、
002
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
色
(
いろ
)
を
浮
(
うか
)
べて
何
(
なに
)
か
思案
(
しあん
)
に
沈
(
しづ
)
んでゐる。
003
そこへ
潔
(
いさぎよ
)
くやつて
来
(
き
)
たのは
久米彦
(
くめひこ
)
であつた。
004
久米
(
くめ
)
『
将軍殿
(
しやうぐんどの
)
将軍殿
(
しやうぐんどの
)
』
005
と
呼
(
よ
)
ぶ
声
(
こゑ
)
にハツと
気
(
き
)
がつき、
006
鬼春
(
おにはる
)
『ヤア
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
、
007
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
つたかな』
008
久米
(
くめ
)
『いやもう、
009
何
(
ど
)
うにも、
010
斯
(
か
)
うにも
仕方
(
しかた
)
のない
阿婆摺
(
あばず
)
れ
女
(
をんな
)
で
実
(
じつ
)
に
手古摺
(
てこず
)
りました。
011
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
最
(
もつと
)
も
深
(
ふか
)
い
暗窟
(
あんくつ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みました。
012
定
(
さだ
)
めて
今頃
(
いまごろ
)
は
斃
(
くたば
)
つて
居
(
ゐ
)
るでせう』
013
鬼春
(
おにはる
)
『それは
惜
(
をし
)
い
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
したものだ。
014
そして
姉
(
あね
)
のスミエルは
如何
(
いかが
)
なさつたか』
015
久米
(
くめ
)
『
彼奴
(
あいつ
)
も
荒縄
(
あらなは
)
で
括
(
くく
)
つて
暗窟
(
あんくつ
)
に
一緒
(
いつしよ
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みました。
016
扨
(
さて
)
も
扨
(
さて
)
も
心地
(
ここち
)
のよい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いましたワイ。
017
アハハハハ』
018
鬼春
(
おにはる
)
『ヤア、
019
それは
惜
(
をし
)
い
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
したものだ。
020
然
(
しか
)
しここでは
何
(
なん
)
だか
気持
(
きもち
)
が
悪
(
わる
)
い。
021
一度
(
いちど
)
貴殿
(
きでん
)
の
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
へ
伺
(
うかが
)
はうと
思
(
おも
)
つてゐた
所
(
ところ
)
だ。
022
之
(
これ
)
から
何
(
なに
)
かの
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
があるから
貴殿
(
きでん
)
の
室
(
しつ
)
まで
参
(
まゐ
)
りませう』
023
久米彦
(
くめひこ
)
は
自分
(
じぶん
)
の
室
(
しつ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
姉妹
(
しまい
)
を
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
き
乍
(
なが
)
ら、
024
暗
(
くら
)
き
陥穽
(
おとしあな
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んで
殺
(
ころ
)
して
了
(
しま
)
つたと
詐
(
いつは
)
つたのだから、
025
鬼春別
(
おにはるわけ
)
に
来
(
こ
)
られては
忽
(
たちま
)
ち
露顕
(
ろけん
)
の
惧
(
おそれ
)
がある。
026
はて
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たワイ……と
思
(
おも
)
うたが
流石
(
さすが
)
は
曲物
(
くせもの
)
、
027
故意
(
わざ
)
と
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
028
久米
(
くめ
)
『
吾々
(
われわれ
)
の
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
の
穢
(
むさ
)
くるしい
家
(
うち
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さるのは、
029
実
(
じつ
)
に
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
ります。
030
何
(
ど
)
うか
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
で
伺
(
うかが
)
はして
貰
(
もら
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまいかな』
031
鬼春
(
おにはる
)
『いや
拙者
(
せつしや
)
の
居間
(
ゐま
)
は
男
(
をとこ
)
ばかりで、
032
何
(
なに
)
かにつけて
不都合
(
ふつがふ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
033
貴殿
(
きでん
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
参
(
まゐ
)
れば
女手
(
をんなで
)
が
二人
(
ふたり
)
も
揃
(
そろ
)
うてゐるのだから、
034
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
都合
(
つがふ
)
が
好
(
よ
)
いと
存
(
ぞん
)
じ、
035
それで
貴殿
(
きでん
)
の
居間
(
ゐま
)
を
拝借
(
はいしやく
)
しようと
申
(
まを
)
したのだ』
036
久米彦
(
くめひこ
)
はハツと
顔
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
らめ、
037
……
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
二人
(
ふたり
)
が
隠
(
かく
)
してあるのを
悟
(
さと
)
つたのかな、
038
こいつア
大変
(
たいへん
)
だ……と
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせ
乍
(
なが
)
ら
故意
(
わざ
)
と
空恍
(
そらとぼ
)
けて、
039
久米
(
くめ
)
『ハハハハハ
将軍殿
(
しやうぐんどの
)
は
随分
(
ずいぶん
)
疑
(
うたがひ
)
の
深
(
ふか
)
い
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
るな。
040
吾々
(
われわれ
)
もバラモン
軍
(
ぐん
)
の
統率者
(
とうそつしや
)
、
041
左様
(
さやう
)
な
卑怯
(
ひけふ
)
な
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
しませぬ。
042
何卒
(
どうぞ
)
人格
(
じんかく
)
を
見損
(
みそこな
)
はない
様
(
やう
)
にして
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
いものですな』
043
鬼春
(
おにはる
)
『ハハハハハ
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
貴殿
(
きでん
)
の
人格
(
じんかく
)
を
見損
(
みそこな
)
つてゐたのだ。
044
今日
(
こんにち
)
愈
(
いよいよ
)
人格
(
じんかく
)
の
程度
(
ていど
)
が
分
(
わか
)
つたので
厶
(
ござ
)
る。
045
さう
仰
(
おほ
)
せらるるなれば
拙者
(
せつしや
)
の
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らすために、
046
一度
(
いちど
)
貴殿
(
きでん
)
の
居間
(
ゐま
)
を
明
(
あ
)
けて
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
ひませう』
047
久米
(
くめ
)
『
拙者
(
せつしや
)
の
居間
(
ゐま
)
は
拙者
(
せつしや
)
の
権利
(
けんり
)
の
中
(
うち
)
で
厶
(
ござ
)
る。
048
如何
(
いか
)
に
上官
(
じやうくわん
)
だつて
捜索
(
そうさく
)
する
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまい。
049
こればかりは
平
(
ひら
)
にお
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
します』
050
鬼春
(
おにはる
)
『いや、
051
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
はれても
拙者
(
せつしや
)
の
権利
(
けんり
)
を
以
(
もつ
)
て
室内
(
しつない
)
捜索
(
そうさく
)
を
致
(
いた
)
す』
052
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らスタスタと
隧道
(
すゐだう
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
久米彦
(
くめひこ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
053
久米彦
(
くめひこ
)
は……
今
(
いま
)
露顕
(
あらは
)
れたが
最後
(
さいご
)
、
054
一悶錯
(
ひともんさく
)
が
起
(
おこ
)
るか、
055
但
(
ただし
)
は
自分
(
じぶん
)
は
首
(
くび
)
にならねばなるまい。
056
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
057
鬼春別
(
おにはるわけ
)
を
後
(
うしろ
)
から
一思
(
ひとおも
)
ひにやつつけて
了
(
しま
)
はうか。
058
いやいや
将軍
(
しやうぐん
)
にも
股肱
(
ここう
)
の
家来
(
けらい
)
が
沢山
(
たくさん
)
ある。
059
うつかり
手出
(
てだ
)
しも
出来
(
でき
)
まい、
060
ぢやと
云
(
い
)
つて
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
を
覗
(
のぞ
)
かれたが
最後
(
さいご
)
、
061
忽
(
たちま
)
ち
露顕
(
ろけん
)
するのだ。
062
はて、
063
如何
(
どう
)
したら
宜
(
よ
)
からうか……と
刻々
(
こくこく
)
に
迫
(
せま
)
る
胸
(
むね
)
の
苦
(
くるし
)
みを
抑
(
おさ
)
へて、
064
見
(
み
)
え
隠
(
かく
)
れに
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
065
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
已
(
すで
)
に
已
(
すで
)
にドアーの
入口
(
いりぐち
)
に
着
(
つ
)
いた。
066
そしてドアーに
耳
(
みみ
)
を
寄
(
よ
)
せて
中
(
なか
)
の
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へてゐる。
067
スミエル、
068
スガールの
姉妹
(
おとどひ
)
は、
069
そんな
事
(
こと
)
とは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
070
両親
(
りやうしん
)
のことや、
071
自分
(
じぶん
)
の
身
(
み
)
の
不運
(
ふうん
)
を
歎
(
なげ
)
いて
涙
(
なみだ
)
に
袖
(
そで
)
を
霑
(
うるほ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
072
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
盤古
(
ばんこ
)
大神
(
だいじん
)
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
へ、
073
助
(
たす
)
け
玉
(
たま
)
へと
祈
(
いの
)
つてゐる。
074
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
鍵
(
かぎ
)
を
持
(
も
)
つてゐないので、
075
開
(
あ
)
けて
這入
(
はい
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
076
又
(
また
)
部下
(
ぶか
)
に
命
(
めい
)
じて
開
(
あ
)
けさしては
却
(
かへつ
)
て
自分
(
じぶん
)
の
人格
(
じんかく
)
や
声望
(
せいばう
)
を
落
(
おと
)
す
虞
(
おそ
)
れがあるので、
077
恋
(
こひ
)
の
奴
(
やつこ
)
となつた
彼
(
かれ
)
は、
078
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
室内
(
しつない
)
の
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
いてゐる。
079
されど
何
(
なん
)
だかワンワンと
響
(
ひび
)
きがするばかりで
少
(
すこ
)
しも
聞
(
き
)
きとれなかつた。
080
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
漸
(
やうや
)
くここに
現
(
あら
)
はれ、
081
久米
(
くめ
)
『
鬼春別
(
おにはるわけ
)
様
(
さま
)
、
082
拙者
(
せつしや
)
の
室内
(
しつない
)
には
何
(
なに
)
か
怪
(
あや
)
しきものが
居
(
ゐ
)
る
様子
(
やうす
)
ですかな』
083
鬼春
(
おにはる
)
『
確
(
たしか
)
に
怪
(
あや
)
しう
厶
(
ござ
)
る。
084
さア
早
(
はや
)
く
鍵
(
かぎ
)
を
出
(
だ
)
してここをお
開
(
あ
)
け
召
(
め
)
され。
085
さすれば
貴殿
(
きでん
)
の
疑
(
うたがひ
)
も
晴
(
は
)
れ、
086
両人
(
りやうにん
)
の
間
(
あひだ
)
の
確執
(
かくしつ
)
も
解
(
と
)
けて
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
らう』
087
久米
(
くめ
)
『なるほど、
088
それは
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
089
生憎
(
あいにく
)
鍵
(
かぎ
)
を
落
(
おと
)
しましたので、
090
這入
(
はい
)
る
訳
(
わけ
)
にもゆきませぬ』
091
鬼春
(
おにはる
)
『
鍵
(
かぎ
)
がなくても
叩
(
たた
)
き
破
(
やぶ
)
れば
宜
(
よ
)
いのだ。
092
金鎚
(
かなづち
)
か
何
(
なに
)
か
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
なさい』
093
久米
(
くめ
)
『
之
(
これ
)
は
怪
(
け
)
しからぬ。
094
拙者
(
せつしや
)
の
居間
(
ゐま
)
を
金鎚
(
かなづち
)
を
以
(
もつ
)
て
叩
(
たた
)
き
破
(
やぶ
)
るとは、
095
決
(
けつ
)
して
武士
(
ぶし
)
の
取
(
と
)
るべき
道
(
みち
)
では
厶
(
ござ
)
るまい。
096
いざ
戦場
(
せんぢやう
)
と
云
(
い
)
ふ
場合
(
ばあひ
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
097
平常
(
へいじやう
)
に
於
(
おい
)
て
他人
(
ひと
)
の
居室
(
ゐま
)
を
叩
(
たた
)
き
破
(
やぶ
)
るとは
実
(
じつ
)
に
乱暴
(
らんばう
)
狼藉
(
ろうぜき
)
と
申
(
まを
)
すもの、
098
之
(
これ
)
ばかりは
如何
(
いか
)
に
上官
(
じやうくわん
)
の
命
(
めい
)
とても、
099
久米彦
(
くめひこ
)
承知
(
しようち
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
100
鬼春
(
おにはる
)
『さうすると、
101
ヤツパリ
疑
(
うたが
)
はしい
物臭
(
ものぐさ
)
い
事
(
こと
)
をしてゐられると
見
(
み
)
える。
102
拙者
(
せつしや
)
の
命令
(
めいれい
)
をお
肯
(
き
)
きなくば、
103
只今
(
ただいま
)
より
上官
(
じやうくわん
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
以
(
もつ
)
て
将軍職
(
しやうぐんしよく
)
を
免
(
めん
)
じますから
其
(
その
)
覚悟
(
かくご
)
をなさい』
104
久米
(
くめ
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
決
(
けつ
)
して
貴殿
(
きでん
)
の
命令
(
めいれい
)
によつて
将軍
(
しやうぐん
)
になつたのでは
厶
(
ござ
)
らぬ、
105
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
より
命
(
めい
)
を
受
(
う
)
けて
将軍
(
しやうぐん
)
に
任
(
にん
)
ぜられたのだから、
106
いかいお
世話
(
せわ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
107
公務
(
こうむ
)
上
(
じやう
)
の
事
(
こと
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
108
私行
(
しかう
)
上
(
じやう
)
に
迄
(
まで
)
上官
(
じやうくわん
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
す
理由
(
りいう
)
はありますまい。
109
久米彦
(
くめひこ
)
、
110
断
(
だん
)
じて
此
(
この
)
室内
(
しつない
)
は
開
(
あ
)
けさせませぬ』
111
かく
両人
(
りやうにん
)
が
争
(
あらそ
)
ふ
所
(
ところ
)
へ、
112
慌
(
あわ
)
ただしく
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
たのはカーネルのマルタであつた。
113
マルタ『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
114
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
しました』
115
鬼春
(
おにはる
)
『
大変
(
たいへん
)
とは
何
(
なん
)
だ』
116
マルタ『ハイ、
117
三千
(
さんぜん
)
の
兵士
(
へいし
)
、
118
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
真裸体
(
まつぱだか
)
となり、
119
何
(
なん
)
だか
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しまして
事務所
(
じむしよ
)
を
叩
(
たた
)
き
破
(
やぶ
)
り
槍剣
(
さうけん
)
を
捨
(
す
)
て
石
(
いし
)
を
投
(
な
)
げ
乱暴
(
らんばう
)
狼藉
(
ろうぜき
)
に
及
(
およ
)
んでゐます。
120
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してゐれば
此
(
この
)
室内
(
しつない
)
にも
入
(
はい
)
るかも
知
(
し
)
れませぬから
何卒
(
なにとぞ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
によりまして
御
(
ご
)
鎮圧
(
ちんあつ
)
を
願
(
ねが
)
ひます、
121
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
力
(
ちから
)
には
及
(
およ
)
びませぬ。
122
思
(
おも
)
ふに
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
が
魔法
(
まはふ
)
を
使
(
つか
)
つて
吾
(
わが
)
軍
(
ぐん
)
を
悩
(
なや
)
ますものと
考
(
かんが
)
へます』
123
此
(
この
)
注進
(
ちうしん
)
に
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
124
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
私行
(
しかう
)
上
(
じやう
)
の
争論
(
いさかひ
)
はケロリと
忘
(
わす
)
れ、
125
一目散
(
いちもくさん
)
に
岩窟
(
いはや
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
126
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば
三千
(
さんぜん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
は
八九分
(
はちくぶ
)
通
(
どほ
)
り
真裸体
(
まつぱだか
)
となり、
127
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
をガヤガヤ
囀
(
さへづ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
128
半永久
(
はんえいきう
)
的
(
てき
)
の
建物
(
たてもの
)
を
小口
(
こぐち
)
から、
129
メリメリメリ バチバチバチと
叩
(
たた
)
き
潰
(
つぶ
)
してゐる。
130
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
大喝
(
たいかつ
)
一声
(
いつせい
)
『コラツ』と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
大勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだ。
131
妖瞑酒
(
えうめいしゆ
)
に
侵
(
をか
)
された
一同
(
いちどう
)
は
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより
吾先
(
われさき
)
にと
群
(
むら
)
がり
来
(
きた
)
り、
132
『ヨイシヨ ヨイシヨ』と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
胴上
(
どうあ
)
げをしたり、
133
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げたり、
134
あらむ
限
(
かぎ
)
りの
乱暴
(
らんばう
)
狼藉
(
ろうぜき
)
をなし、
135
遂
(
つひ
)
に
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
に
身体中
(
からだぢう
)
を
踏
(
ふ
)
み
蹂
(
にじ
)
られ、
136
殆
(
ほと
)
んど
息
(
いき
)
の
根
(
ね
)
も
絶
(
た
)
えむばかりになつてゐた。
137
そこへチュウニック
姿
(
すがた
)
のデク、
138
シーナの
両人
(
りやうにん
)
は
厳
(
いかめ
)
しく
剣
(
けん
)
を
吊
(
つ
)
り
乍
(
なが
)
ら
悠々
(
いういう
)
として
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
139
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく
岩窟内
(
がんくつない
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
140
スミエル、
141
スガール
両人
(
りやうにん
)
の
所在
(
ありか
)
は
何処
(
いづこ
)
ぞと
探
(
さが
)
してゐる。
142
岩窟内
(
がんくつない
)
に
潜
(
ひそ
)
んでゐた
数多
(
あまた
)
のバラモン
軍
(
ぐん
)
は
二人
(
ふたり
)
の
服装
(
ふくさう
)
を
見
(
み
)
て
別
(
べつ
)
に
怪
(
あや
)
しみもせず、
143
各
(
おのおの
)
軍務
(
ぐんむ
)
に
従事
(
じゆうじ
)
してゐる。
144
又
(
また
)
もや
真裸体
(
まつぱだか
)
の
半狂乱
(
はんきやうらん
)
軍
(
ぐん
)
はドヤドヤと
岩窟内
(
がんくつない
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
145
当
(
あた
)
るを
幸
(
さいは
)
ひ
暴狂
(
あれくる
)
ふ。
146
漸
(
やうや
)
くにして
妖瞑酒
(
えうめいしゆ
)
の
酔
(
よ
)
ひも
醒
(
さ
)
め、
147
一同
(
いちどう
)
の
軍人
(
ぐんじん
)
は
正気
(
しやうき
)
に
復
(
ふく
)
し、
148
捨
(
す
)
てた
剣
(
けん
)
を
拾
(
ひろ
)
い
上
(
あ
)
げたり、
149
谷川
(
たにがは
)
に
流
(
なが
)
した
衣類
(
いるゐ
)
の
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
に
掛
(
かか
)
つてゐるのを
拾
(
ひろ
)
ひあげ、
150
日光
(
につくわう
)
に
干
(
ほ
)
し
乾
(
かわ
)
かし
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
を
助
(
たす
)
けて
元
(
もと
)
の
居間
(
ゐま
)
に
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
けた。
151
一
(
いち
)
時
(
じ
)
妖瞑酒
(
えうめいしゆ
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
狂態
(
きやうたい
)
を
演
(
えん
)
じた
数多
(
あまた
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
も
愈
(
いよいよ
)
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めて
一層
(
いつそう
)
軍規
(
ぐんき
)
を
厳重
(
げんぢう
)
にする
事
(
こと
)
となつた。
152
道晴別
(
みちはるわけ
)
のデク、
153
及
(
およ
)
びシーナは
漸
(
やうや
)
くにしてスミエル、
154
スガールの
所在
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
り、
155
門扉
(
もんぴ
)
を
叩
(
たた
)
き
割
(
わ
)
つて
中
(
なか
)
に
押
(
お
)
し
入
(
い
)
り、
156
両人
(
りやうにん
)
を
助
(
たす
)
けて
室内
(
しつない
)
を
遁
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうとする
時
(
とき
)
、
157
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
の
隧道
(
すゐだう
)
より
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
つたバラモン
軍
(
ぐん
)
に
脆
(
もろ
)
くも
縛
(
しば
)
られ、
158
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
別々
(
べつべつ
)
に
暗
(
くら
)
い
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
落
(
おと
)
し
込
(
こ
)
まれて
了
(
しま
)
つた。
159
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
160
久米彦
(
くめひこ
)
を
初
(
はじ
)
めスパール、
161
エミシ、
162
シヤム、
163
マルタの
幹部
(
かんぶ
)
連
(
れん
)
は、
164
岩窟内
(
いはやない
)
の
最
(
もつとも
)
広
(
ひろ
)
き
将軍
(
しやうぐん
)
事務室
(
じむしつ
)
に
集
(
あつま
)
つて、
165
今度
(
こんど
)
の
変事
(
へんじ
)
に
就
(
つ
)
き
種々
(
しゆじゆ
)
と
其
(
その
)
原因
(
げんいん
)
を
調
(
しら
)
べてゐる。
166
鬼春
(
おにはる
)
『
三千
(
さんぜん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
が
殆
(
ほとん
)
ど
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
迄
(
まで
)
真裸体
(
まつぱだか
)
になり、
167
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
狂態
(
きやうたい
)
を
演
(
えん
)
じたのは
決
(
けつ
)
して
普通
(
ふつう
)
の
事
(
こと
)
ではあるまい。
168
之
(
これ
)
には
何
(
なに
)
かの
原因
(
げんいん
)
があるだらう。
169
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
よく
調査
(
てうさ
)
をして、
170
再
(
ふたた
)
びかかる
不始末
(
ふしまつ
)
がない
様
(
やう
)
に
注意
(
ちうい
)
して
呉
(
く
)
れたがよからうぞ』
171
スパール『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
172
何
(
なん
)
とも
合点
(
がつてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
ばかり、
173
大方
(
おほかた
)
三五教
(
あななひけう
)
の
治国別
(
はるくにわけ
)
一派
(
いつぱ
)
が、
174
妖術
(
えうじゆつ
)
でも
使
(
つか
)
つて
吾
(
わが
)
軍営
(
ぐんえい
)
を
攪乱
(
かくらん
)
させ、
175
将軍
(
しやうぐん
)
を
生捕
(
いけどり
)
にする
計劃
(
けいくわく
)
ではあるまいかと
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
ります』
176
エミシ『
初
(
はじ
)
めの
間
(
うち
)
は
僅
(
わづ
)
かの
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
発狂者
(
はつきやうしや
)
でありましたが、
177
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
伝染
(
でんせん
)
してあの
様
(
やう
)
になつたのです。
178
三五教
(
あななひけう
)
には
妖術
(
えうじゆつ
)
等
(
など
)
はありませぬ。
179
恐
(
おそ
)
らく
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
住
(
す
)
む
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
一味
(
いちみ
)
がなせしもので
厶
(
ござ
)
りませう。
180
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
にバラモン
神
(
がみ
)
を
祀
(
まつ
)
り
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らさねば、
181
又
(
また
)
斯様
(
かやう
)
の
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ては
危険
(
きけん
)
ですからな』
182
久米
(
くめ
)
『あの
怪
(
あや
)
しき
二人
(
ふたり
)
の
軍人
(
ぐんじん
)
、
183
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じて
置
(
お
)
いた
奴
(
やつ
)
、
184
もしや
三五教
(
あななひけう
)
の
間諜
(
まはしもの
)
では
厶
(
ござ
)
るまいか』
185
鬼春
(
おにはる
)
『ハハハハハ、
186
これだけ
沢山
(
たくさん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
めた
所
(
ところ
)
へ、
187
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
の
間諜
(
まはしもの
)
が
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
で
何
(
なに
)
が
出来
(
でき
)
るものか。
188
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
察
(
さつ
)
する
所
(
ところ
)
によれば、
189
玉木村
(
たまきむら
)
の
豪農
(
がうのう
)
テームスの
家
(
いへ
)
から
攫
(
さら
)
つて
来
(
き
)
たと
云
(
い
)
ふスミエル、
190
スガールの
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
こそ
怪
(
あや
)
しきものだと
思
(
おも
)
ふ。
191
その
証拠
(
しようこ
)
には
彼
(
かれ
)
を
牢獄
(
らうごく
)
へぶち
込
(
こ
)
んだ
最後
(
さいご
)
、
192
味方
(
みかた
)
の
兵士
(
へいし
)
の
狂態
(
きやうたい
)
が
恢復
(
くわいふく
)
したではないか』
193
エミシ『
成程
(
なるほど
)
、
194
さう
承
(
うけたま
)
はればさうに
間違
(
まちが
)
ひは
厶
(
ござ
)
りませぬ。
195
陣中
(
ぢんちう
)
に
女
(
をんな
)
を
引入
(
ひきい
)
れる
如
(
ごと
)
きは
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
はざる
所
(
ところ
)
なれば、
196
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
が
戒
(
いまし
)
めの
為
(
た
)
めに、
197
ああ
云
(
い
)
ふ
手続
(
てつづ
)
きを
採
(
と
)
り
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
に
気
(
き
)
をつけて
下
(
くだ
)
さつたのかも
知
(
し
)
れませぬ。
198
それについても、
199
あの
二人
(
ふたり
)
の
兵士
(
へいし
)
は
吾
(
わが
)
軍
(
ぐん
)
の
服装
(
ふくさう
)
をして
居
(
を
)
りますれど、
200
あれも
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しいものです。
201
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
主
(
ぬし
)
が
化
(
ばけ
)
てゐるのかも
分
(
わか
)
りますまい』
202
鬼春
(
おにはる
)
『
決
(
けつ
)
して
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
に
相手
(
あひて
)
になつてはならぬぞ。
203
ああして
押込
(
おしこ
)
めて
置
(
お
)
けば、
204
再
(
ふたた
)
び
悪戯
(
いたづら
)
は
致
(
いた
)
しますまい。
205
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る。
206
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
い』
207
久米
(
くめ
)
『
成程
(
なるほど
)
、
208
どう
考
(
かんが
)
へても
合点
(
がつてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
る。
209
将軍
(
しやうぐん
)
の
仰
(
おほ
)
せの
如
(
ごと
)
く
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
はいらはぬ
事
(
こと
)
と
致
(
いた
)
して、
210
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
軍隊
(
ぐんたい
)
の
緊粛
(
きんしゆく
)
を
図
(
はか
)
り、
211
如何
(
いか
)
なる
敵
(
てき
)
が
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
るとも、
212
天与
(
てんよ
)
の
要害
(
えうがい
)
を
扼
(
やく
)
し
之
(
これ
)
だけの
味方
(
みかた
)
があれば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですから、
213
軍隊
(
ぐんたい
)
一般
(
いつぱん
)
に
注意
(
ちうい
)
を
与
(
あた
)
ふる
事
(
こと
)
と
致
(
いた
)
しませう』
214
さていろいろと
積
(
つ
)
んだり
崩
(
くづ
)
したり、
215
ラートの
結果
(
けつくわ
)
互
(
たがひ
)
に
相戒
(
あひいまし
)
めて
変
(
かは
)
つたものが
来
(
き
)
たら
近
(
ちか
)
づけない
事
(
こと
)
に
定
(
き
)
めて
一先
(
ひとま
)
づ
会議
(
くわいぎ
)
を
閉
(
と
)
ぢた。
216
それより
互
(
たがひ
)
に
相戒
(
あひいまし
)
め
軍規
(
ぐんき
)
を
厳粛
(
げんしゆく
)
に
此
(
この
)
要害
(
えうがい
)
を
上下
(
しようか
)
一致
(
いつち
)
の
上
(
うへ
)
死守
(
ししゆ
)
する
事
(
こと
)
となつた。
217
(
大正一二・二・二二
旧一・七
於竜宮館
北村隆光
録)
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(N)
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