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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第54巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 神授の継嗣
第1章 子宝
第2章 日出前
第3章 懸引
第4章 理妻
第5章 万違
第6章 執念
第2篇 恋愛無涯
第7章 婚談
第8章 祝莚
第9章 花祝
第10章 万亀柱
第3篇 猪倉城寨
第11章 道晴別
第12章 妖瞑酒
第13章 岩情
第14章 暗窟
第4篇 関所の玉石
第15章 愚恋
第16章 百円
第17章 火救団
第5篇 神光増進
第18章 真信
第19章 流調
第20章 建替
第21章 鼻向
第22章 凱旋
附録 神文
余白歌
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(B)
(N)
附録 神文 >>>
第二二章
凱旋
(
がいせん
)
〔一四〇八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
篇:
第5篇 神光増進
よみ(新仮名遣い):
しんこうぞうしん
章:
第22章 凱旋
よみ(新仮名遣い):
がいせん
通し章番号:
1408
口述日:
1923(大正12)年02月23日(旧01月8日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
テームス家の門番はバラモン軍が来たのではないかと警戒して門を開けないので、治国別はやむを得ず大音声で歌いだした。門番は主人に治国別と名乗る宣伝使が門前にやってきたことを伝えた。
テームスは門までやってきて治国別と言葉を交わし、本物だと確信した。門を開いて治国別一行を奥の間に招き入れた。テームスは、道晴別と名乗る宣伝使が番頭のシーナと共に、娘たちを救出に猪倉山に向かったが、未だに帰ってこないことを伝えた。
治国別はその件で立ち寄ったことをテームス夫婦に伝え、一行を救い出してくることを約束して日が暮れるころに猪倉山の山頂目指して出立した。
夜陰にまぎれて治国別一行が岩窟に紛れ込むと、鬼春別と久米彦が言い争っている。久米彦は、落とし穴に4人を落とすときに体に鉄板をめぐらしておき生かしておいたことを明かし、妹のスガールを自分の妻とするよう鬼春別と争っている。
先にスガールを助け出そうと隧道に飛び出した久米彦は、治国別一行と鉢合わせた。何者かと問うた久米彦に、治国別は堂々と名乗り出て、四人が落とし込まれている落とし穴の場所は、すでに霊眼で確認済みであることを明かした。
竜彦はたちまち四人を救い上げて鎮魂を施したので、みな息を吹き返した。鬼春別と久米彦は恐れをなして土下座し、震え慄きながら罪を謝した。
治国別は二人の将軍をはじめバラモン軍の将校たちにいろいろと誠の教えを説き諭し、かつ鬼春別、久米彦、スパール、エミシに一人ずつ怪我人を背負わせ、凱歌を奏しながら玉木村のテームスの家を目指して帰って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-04-21 22:16:35
OBC :
rm5422
愛善世界社版:
276頁
八幡書店版:
第9輯 718頁
修補版:
校定版:
282頁
普及版:
123頁
初版:
ページ備考:
001
頻
(
しき
)
りに
門戸
(
もんこ
)
を
叩
(
たた
)
く
声
(
こゑ
)
にテームスの
僕
(
しもべ
)
二人
(
ふたり
)
は
又
(
また
)
バラモンの
雑兵
(
ざふひやう
)
が、
002
何
(
なに
)
か
徴発
(
ちようはつ
)
に
来
(
き
)
よつたに
違
(
ちが
)
ひない、
003
うつかり
開
(
あ
)
けてはならぬと、
004
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
005
何程
(
なにほど
)
叩
(
たた
)
いてもウンともスンとも
云
(
い
)
はずに、
006
閂
(
かんぬき
)
のした
大門
(
おほもん
)
を
御
(
ご
)
叮嚀
(
ていねい
)
に
中
(
なか
)
から
支
(
ささ
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
007
治国別
(
はるくにわけ
)
は
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
邸内
(
ていない
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
大音声
(
だいおんじやう
)
にて
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
008
治国別
(
はるくにわけ
)
『
高天原
(
たかあまはら
)
に
現
(
あ
)
れませる
009
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
は
御心
(
みこころ
)
を
010
千々
(
ちぢ
)
に
悩
(
なや
)
ませたまひつつ
011
天地
(
てんち
)
を
造
(
つく
)
りたまひしが
012
天足
(
あだる
)
の
彦
(
ひこ
)
や
胞場姫
(
えばひめ
)
の
013
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
背
(
そむ
)
きしゆ
014
其
(
その
)
罪咎
(
つみとが
)
は
邪気
(
じやき
)
となり
015
凝
(
こ
)
り
固
(
かた
)
まりて
鬼
(
おに
)
となり
016
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
017
百
(
もも
)
の
魔物
(
まもの
)
となり
果
(
は
)
てて
018
地上
(
ちじやう
)
に
住
(
す
)
める
人々
(
ひとびと
)
の
019
霊
(
みたま
)
を
曇
(
くも
)
らせ
汚
(
けが
)
しつつ
020
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
子
(
こ
)
と
生
(
うま
)
れたる
021
尊
(
たふと
)
き
人
(
ひと
)
の
体
(
からだ
)
をば
022
曲津
(
まがつ
)
の
住処
(
すみか
)
となしにけり
023
バラモン
教
(
けう
)
の
神柱
(
かむばしら
)
024
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
曲神
(
まがかみ
)
の
025
頤使
(
いし
)
に
従
(
したが
)
ひ
産土
(
うぶすな
)
の
026
珍
(
うづ
)
の
聖地
(
せいち
)
に
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る
027
バラモン
教
(
けう
)
の
大軍
(
たいぐん
)
は
028
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
要害
(
えうがい
)
で
029
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
030
治国別
(
はるくにわけ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
031
打
(
う
)
ちやぶられて
遁走
(
とんそう
)
し
032
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
やビクトルの
033
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
陣
(
ぢん
)
をはり
034
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
のありだけを
035
尽
(
つく
)
しゐたりし
折
(
をり
)
もあれ
036
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
037
治国別
(
はるくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
が
038
又
(
また
)
もや
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれて
039
醜
(
しこ
)
の
軍
(
いくさ
)
を
追
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らし
040
ビクの
国家
(
こくか
)
を
救
(
すく
)
ひたり
041
鬼春別
(
おにはるわけ
)
や
久米彦
(
くめひこ
)
は
042
三千
(
さんぜん
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
を
従
(
したが
)
へて
043
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
散
(
ち
)
りて
044
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
045
住所
(
すみか
)
を
構
(
かま
)
へ
遠近
(
をちこち
)
の
046
人家
(
じんか
)
を
掠
(
かす
)
め
人
(
ひと
)
を
取
(
と
)
り
047
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
振舞
(
ふるまひ
)
を
048
為
(
な
)
せしと
聞
(
き
)
くより
吾々
(
われわれ
)
は
049
世人
(
よびと
)
の
害
(
がい
)
を
除
(
のぞ
)
かむと
050
木花姫
(
このはなひめ
)
の
神勅
(
みこと
)
もて
051
此
(
この
)
家
(
や
)
の
娘
(
むすめ
)
両人
(
りやうにん
)
や
052
道晴別
(
みちはるわけ
)
を
救
(
すく
)
はむと
053
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
急
(
いそ
)
ぎ
来
(
き
)
つれども
054
間抜
(
まぬけ
)
きつたる
門番
(
もんばん
)
が
055
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
敵
(
てき
)
とあやまりて
056
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
拒
(
こば
)
みつつ
057
開門
(
かいもん
)
せざるぞうたてけれ
058
此
(
この
)
家
(
や
)
の
主
(
あるじ
)
テームスよ
059
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
060
治国別
(
はるくにわけ
)
に
相違
(
さうゐ
)
ない
061
唯
(
ただ
)
一息
(
ひといき
)
も
速
(
すみや
)
かに
062
この
門
(
もん
)
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
へかし
063
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
064
神
(
かみ
)
に
盟
(
ちか
)
ひて
偽
(
いつは
)
りの
065
なき
言霊
(
ことたま
)
を
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
ふ』
066
この
歌
(
うた
)
に
二人
(
ふたり
)
の
門番
(
もんばん
)
は
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
067
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
の
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれ
乍
(
なが
)
ら、
068
一人
(
ひとり
)
は
門
(
もん
)
を
守
(
まも
)
らせ
置
(
お
)
き、
069
一人
(
ひとり
)
はテームスの
居間
(
ゐま
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
070
テームス、
071
ベリシナ
夫婦
(
ふうふ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
道晴別
(
みちはるわけ
)
が、
072
番頭
(
ばんとう
)
のシーナと
共
(
とも
)
に
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さむと
勢込
(
いきほひこ
)
んで
行
(
い
)
つてから
今日
(
けふ
)
で
三日目
(
みつかめ
)
になるのに、
073
何
(
なん
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
もないので
頻
(
しき
)
りに
神
(
かみ
)
を
念
(
ねん
)
じたり、
074
神籤
(
みくじ
)
を
引
(
ひ
)
いたりして
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
ゐ
)
た。
075
其処
(
そこ
)
へ
慌
(
あわ
)
ただしく
門番
(
もんばん
)
のビクが
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
076
ビク『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあげ
)
ます。
077
表門
(
をもてもん
)
に
当
(
あた
)
つて
敵
(
てき
)
か
味方
(
みかた
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
078
三五教
(
あななひけう
)
だとか
治国別
(
はるくにわけ
)
だとか、
079
此処
(
ここ
)
の
娘
(
むすめ
)
を
助
(
たす
)
けに
来
(
き
)
たとか
云
(
い
)
つて
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
歌
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
ますが、
080
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
しませうか。
081
うつかり
開
(
あ
)
けて
又
(
また
)
もやバラモンの
奴
(
やつ
)
だと
大変
(
たいへん
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
082
拒
(
こば
)
むだけ
拒
(
こば
)
むで
見
(
み
)
ましたが、
083
私
(
わたし
)
ではとんと
善悪
(
ぜんあく
)
が
分
(
わか
)
りませぬ。
084
どうぞ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
085
貴方
(
あなた
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
ながらお
調
(
しら
)
べ
下
(
くだ
)
さいますまいか』
086
テームス『
何
(
なに
)
、
087
三五教
(
あななひけう
)
の
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
が
見
(
み
)
えたと
仰有
(
おつしや
)
るか、
088
それは
間違
(
まちが
)
ひはあるまい。
089
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
門口
(
かどぐち
)
迄
(
まで
)
行
(
い
)
つて
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よう』
090
とビクを
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
て、
091
大刀
(
だいたう
)
を
腰
(
こし
)
に
挟
(
はさ
)
み、
092
すたすたと
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
大音声
(
だいおんじやう
)
にて、
093
テームス『
唯今
(
ただいま
)
吾
(
わが
)
門前
(
もんぜん
)
に
佇
(
たたず
)
み
歌
(
うた
)
はせたまふ
御仁
(
ごじん
)
はいづくの
何人
(
なにびと
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
094
御名
(
みな
)
を
聞
(
き
)
かせて
下
(
くだ
)
さらば、
095
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
開
(
あ
)
けるで
厶
(
ござ
)
りませう』
096
万公
(
まんこう
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きつけ
大声
(
おほごゑ
)
にて、
097
万公
(
まんこう
)
『
吾
(
われ
)
こそは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
治国別
(
はるくにわけ
)
の
家来
(
けらい
)
万公
(
まんこう
)
で
厶
(
ござ
)
る。
098
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
門
(
もん
)
をお
開
(
あ
)
けなされ』
099
治国
(
はるくに
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
治国別
(
はるくにわけ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
100
決
(
けつ
)
して
怪
(
あや
)
しき
者
(
もの
)
では
厶
(
ござ
)
らぬ。
101
木花姫
(
このはなひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
に
依
(
よ
)
り、
102
拙者
(
せつしや
)
の
徒弟
(
とてい
)
道晴別
(
みちはるわけ
)
が、
103
当家
(
たうけ
)
の
二人
(
ふたり
)
の
娘御
(
むすめご
)
をバラモン
軍
(
ぐん
)
に
攫
(
さら
)
はれ
給
(
たま
)
うたのを
取
(
と
)
り
還
(
かへ
)
さむため
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
に
向
(
むか
)
ひし
様子
(
やうす
)
、
104
拙者
(
せつしや
)
は
一同
(
いちどう
)
の
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
はむ
為
(
ため
)
、
105
取
(
と
)
るものも
取
(
と
)
り
敢
(
あへ
)
ず
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
つたもので
厶
(
ござ
)
る。
106
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
門
(
もん
)
をお
開
(
あ
)
けなされ』
107
テームスは
門内
(
もんない
)
より
治国別
(
はるくにわけ
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
108
どこともなしに
威厳
(
ゐげん
)
のある
言葉
(
ことば
)
、
109
さうしてどうしても
偽
(
いつは
)
りとは
思
(
おも
)
へないので、
110
静
(
しづか
)
に
閂
(
かんぬき
)
をはづし、
111
門扉
(
もんぴ
)
をパツと
開
(
ひら
)
き、
112
怖々
(
こはごは
)
覗
(
のぞ
)
けば
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
立
(
た
)
つてゐる。
113
テームスは
打
(
う
)
ち
喜
(
よろこ
)
び
叮嚀
(
ていねい
)
に
辞儀
(
じぎ
)
をしながら、
114
テームス『
是
(
こ
)
れは
是
(
こ
)
れはお
慕
(
した
)
ひ
申
(
まをし
)
て
居
(
を
)
りました
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
115
誠
(
まこと
)
に
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
116
サア
何卒
(
どうぞ
)
お
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
117
治国
(
はるくに
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
118
然
(
しか
)
らば
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう』
119
と
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
大門
(
おほもん
)
を
潜
(
くぐ
)
り
入
(
い
)
る。
120
テームス『これビク、
121
何時
(
なんどき
)
バラモンの
奴
(
やつ
)
が
来
(
く
)
るかも
知
(
し
)
れぬから
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
確
(
しつか
)
り
閉
(
と
)
ぢて
置
(
お
)
くのだ。
122
さうしてお
前
(
まへ
)
はここを
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ』
123
と
言
(
い
)
ひつけ
一行
(
いつかう
)
の
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
奥
(
おく
)
に
導
(
みちび
)
き
行
(
ゆ
)
く。
124
治国別
(
はるくにわけ
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
請
(
しやう
)
ぜられ、
125
茶
(
ちや
)
を
薦
(
すす
)
められながら
挨拶
(
あいさつ
)
もそこそこにして、
126
治国
(
はるくに
)
『
承
(
うけたま
)
はれば
当家
(
たうけ
)
のお
嬢様
(
ぢやうさま
)
はお
二人
(
ふたり
)
迄
(
まで
)
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
のバラモンの
巣窟
(
さうくつ
)
に
拐
(
かどわか
)
されてお
出
(
いで
)
になつたさうですな』
127
テームス『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
128
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
三日前
(
みつかまへ
)
に
治国別
(
はるくにわけ
)
の
徒弟
(
とてい
)
だと
仰有
(
おつしや
)
つて、
129
道晴別
(
みちはるわけ
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
がお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さつて、
130
番頭
(
ばんとう
)
のシーナと
共
(
とも
)
に
軍服姿
(
ぐんぷくすがた
)
に
身
(
み
)
を
窶
(
やつ
)
し、
131
二人
(
ふたり
)
を
取
(
と
)
り
返
(
かへ
)
して
来
(
く
)
ると
言
(
い
)
つてお
出
(
いで
)
なさつたきり、
132
今
(
いま
)
に
何
(
なん
)
の
便
(
たよ
)
りも
厶
(
ござ
)
いませぬので、
133
夫婦
(
ふうふ
)
の
者
(
もの
)
が
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
134
何卒
(
どうぞ
)
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
によつて
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さるわけには
参
(
まゐ
)
りますまいかな』
135
治国
(
はるくに
)
『アア
其
(
その
)
事
(
こと
)
について
急
(
いそ
)
ぎ
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います。
136
余
(
あま
)
り
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
れば、
137
何
(
なん
)
だか
深
(
ふか
)
い
陥穽
(
おとしあな
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれて
居
(
ゐ
)
るさうですから、
138
命
(
いのち
)
が
危
(
あやふ
)
う
厶
(
ござ
)
いませう。
139
拙者
(
せつしや
)
はこれより
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ、
140
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
し
敵
(
てき
)
を
帰順
(
きじゆん
)
させ、
141
四
(
よ
)
人
(
にん
)
を
立派
(
りつぱ
)
に
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
して
帰
(
かへ
)
る
心算
(
つもり
)
です。
142
私
(
わたし
)
に
確信
(
かくしん
)
が
厶
(
ござ
)
いますれば
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なされますな』
143
テームス、
144
ベリシナの
両人
(
りやうにん
)
は、
145
テームス、ベリシナ
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
146
と
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
涙
(
なみだ
)
に
声
(
こゑ
)
も
得
(
え
)
あげず
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
147
これより
治国別
(
はるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
はテームスの
門
(
もん
)
を
出
(
い
)
で
足
(
あし
)
にまかせて、
148
日
(
ひ
)
の
西山
(
せいざん
)
に
舂
(
うすづ
)
き
給
(
たま
)
ふ
頃
(
ころ
)
、
149
足
(
あし
)
を
速
(
はや
)
めて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
150
谷
(
たに
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え
岩間
(
いはま
)
を
伝
(
つた
)
ひ、
151
漸
(
やうや
)
くにして、
152
昼
(
ひる
)
猶
(
な
)
ほ
暗
(
くら
)
き
森林
(
しんりん
)
を
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
守
(
まも
)
られて
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ
闇
(
やみ
)
の
道
(
みち
)
、
153
却
(
かへつ
)
てこれ
幸
(
さいはひ
)
と
息
(
いき
)
を
凝
(
こ
)
らしながら
漸
(
やうや
)
くにして
岩窟
(
がんくつ
)
の
前
(
まへ
)
に
辿
(
たど
)
りついた。
154
夜分
(
やぶん
)
の
事
(
こと
)
とて、
155
数多
(
あまた
)
の
兵士
(
へいし
)
は
何
(
いづ
)
れも
武装
(
ぶさう
)
を
解
(
と
)
きテントの
中
(
なか
)
や
仮小屋
(
かりごや
)
の
中
(
なか
)
に
転
(
ころ
)
がつて
居
(
ゐ
)
た。
156
馬
(
うま
)
は
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
の
木
(
き
)
に
繋
(
つな
)
がれ
盛
(
さかん
)
に
嘶
(
いなな
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
157
治国別
(
はるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は
其処辺
(
そこら
)
に
脱
(
ぬ
)
ぎ
捨
(
す
)
てある
軍服
(
ぐんぷく
)
を
手早
(
てばや
)
く
闇
(
やみ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ
身
(
み
)
につけ、
158
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をしながら、
159
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ、
160
四辺
(
あたり
)
に
気
(
き
)
をつけ、
161
長
(
なが
)
き
隧道
(
すいだう
)
を
辿
(
たど
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
162
不思議
(
ふしぎ
)
にもこの
時
(
とき
)
計
(
ばか
)
り
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
守
(
まも
)
りで
暗夜
(
あんや
)
の
道
(
みち
)
がよく
目
(
め
)
についたのである。
163
傍
(
かたはら
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
に
何
(
なん
)
だか
人声
(
ひとごゑ
)
がするので、
164
岩壁
(
がんぺき
)
に
耳
(
みみ
)
を
当
(
あ
)
て
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
ると、
165
鬼春別
(
おにはるわけ
)
が
久米彦
(
くめひこ
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
幕僚
(
ばくれう
)
を
集
(
あつ
)
めて、
166
ひそびそ
相談会
(
さうだんくわい
)
を
開
(
ひら
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
167
鬼春
(
おにはる
)
『
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
、
168
折角
(
せつかく
)
の
美人
(
びじん
)
を
無雑作
(
むざふさ
)
にあのやうな
所
(
ところ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
むと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか、
169
何
(
なん
)
とかして
助
(
たす
)
けやうが
無
(
な
)
いものかなア』
170
久米
(
くめ
)
『
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
でせう。
171
今日
(
けふ
)
で
二日目
(
ふつかめ
)
ですから
屹度
(
きつと
)
死
(
し
)
んでゐるでせう』
172
鬼春
(
おにはる
)
『
貴殿
(
きでん
)
にも
似合
(
にあは
)
ぬ
残酷
(
ざんこく
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すぢやないか。
173
貴殿
(
きでん
)
は、
174
カルナ
姫
(
ひめ
)
に
説
(
と
)
き
立
(
た
)
てられ
未来
(
みらい
)
が
怖
(
おそ
)
ろしいと
云
(
い
)
うて、
175
ビクトリヤ
王
(
わう
)
迄
(
まで
)
も
救
(
すく
)
うて、
176
置
(
お
)
いた
身
(
み
)
でありながら、
177
人
(
ひと
)
の
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
るやうな、
178
なぜ
残酷
(
ざんこく
)
の
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
さるるのか』
179
久米
(
くめ
)
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
体
(
からだ
)
の
周囲
(
ぐるり
)
に
鉄板
(
てつぱん
)
を
廻
(
まは
)
して
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みましたから、
180
怪我
(
けが
)
は
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますまい。
181
さうしてその
鉄板
(
てつぱん
)
は
桶
(
をけ
)
のやうになつて
居
(
を
)
り、
182
太
(
ふと
)
い
綱
(
つな
)
が
通
(
とほ
)
してあります。
183
何程
(
なにほど
)
深
(
ふか
)
い
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
でも
綱
(
つな
)
さへ
手操
(
たぐ
)
れば
容易
(
ようい
)
に
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ます。
184
幸
(
さいは
)
ひ
此処
(
ここ
)
には
岩
(
いは
)
より
湧
(
わ
)
き
出
(
で
)
る
起死
(
きし
)
回生
(
くわいせい
)
の
薬
(
くすり
)
がありますから、
185
これを
含
(
ふく
)
ますれば
二日
(
ふつか
)
や
三日
(
みつか
)
息
(
いき
)
が
絶
(
た
)
へて
居
(
ゐ
)
ても
回復
(
くわいふく
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
でせう』
186
鬼春
(
おにはる
)
『
何
(
なん
)
と
貴殿
(
きでん
)
も
腹
(
はら
)
が
悪
(
わる
)
いぢやないか。
187
よもや
貴殿
(
きでん
)
が
左様
(
さやう
)
な
殺伐
(
さつばつ
)
な
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
すまいと
睨
(
にら
)
んで
置
(
お
)
いたのだ。
188
サア
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し
此処
(
ここ
)
へ
連
(
つ
)
れて
厶
(
ござ
)
れ』
189
久米
(
くめ
)
『それに
先
(
さき
)
だつて
将軍
(
しやうぐん
)
に
一
(
ひと
)
つ
相談
(
さうだん
)
が
厶
(
ござ
)
ります。
190
外
(
ほか
)
でも
厶
(
ござ
)
らぬが、
191
きつとスガールを
拙者
(
せつしや
)
にお
渡
(
わた
)
し
下
(
くだ
)
さるでせうなア』
192
鬼春
(
おにはる
)
『アハハハハ
又
(
また
)
しても
左様
(
さやう
)
な
我慢
(
がまん
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものではありませぬぞ。
193
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
はスミエルで
暫
(
しばら
)
く
御
(
ご
)
辛抱
(
しんばう
)
なされ、
194
スガールは
拙者
(
せつしや
)
が
世話
(
せわ
)
を
致
(
いた
)
すで
厶
(
ござ
)
らう。
195
オイ、
196
スパール
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
早
(
はや
)
く、
197
男
(
をとこ
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
女
(
をんな
)
二人
(
ふたり
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し、
198
スミエルは
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
の
居間
(
ゐま
)
に
送
(
おく
)
り
置
(
お
)
き、
199
スガールの
方
(
はう
)
を
此方
(
こなた
)
に
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
い。
200
鬼春別
(
おにはるわけ
)
が
手
(
て
)
づから
気付
(
きつけ
)
を
遣
(
つか
)
はし
呼
(
よ
)
び
生
(
い
)
けてやらう』
201
スパールは、
202
スパール
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
203
とドアを
押
(
お
)
し
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さうとするのを
久米彦
(
くめひこ
)
はグツと
襟
(
えり
)
を
掴
(
つか
)
み、
204
久米
(
くめ
)
『アハハハハ
拙者
(
せつしや
)
が
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
いたる
以上
(
いじやう
)
は、
205
これだけ
沢山
(
たくさん
)
の
陥穽
(
おとしあな
)
貴殿
(
きでん
)
が
何程
(
なにほど
)
気張
(
きば
)
つた
所
(
ところ
)
で、
206
見当
(
みあた
)
ることは
厶
(
ござ
)
らぬ。
207
やつぱり
拙者
(
せつしや
)
が
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んだのだから
拙者
(
せつしや
)
が
行
(
ゆ
)
かねば
駄目
(
だめ
)
だ。
208
まづ
気
(
き
)
を
落付
(
おちつ
)
けなされ、
209
そのかはり
先
(
ま
)
づスガールは
屹度
(
きつと
)
拙者
(
せつしや
)
がお
預
(
あづか
)
り
申
(
まを
)
す』
210
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
気
(
き
)
を
焦
(
いら
)
ち、
211
鬼春
(
おにはる
)
『オイ、
212
スパール、
213
久米彦
(
くめひこ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くに
及
(
およ
)
ばぬ。
214
サア
早
(
はや
)
く
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
して
来
(
こ
)
い。
215
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
スパールの
襟
(
えり
)
を
放
(
はな
)
しておやりなさい。
216
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
をお
聞
(
きき
)
なさらぬか』
217
久米
(
くめ
)
『
然
(
しか
)
らば
拙者
(
せつしや
)
が
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げて
参
(
まゐ
)
りませう。
218
オイ、
219
エミシ
某
(
それがし
)
に
続
(
つづ
)
け』
220
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
221
ドアを
押
(
お
)
し
開
(
あ
)
け
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した。
222
隧道
(
すいだう
)
の
所々
(
しよしよ
)
には
肥松
(
こえまつ
)
を
焚
(
た
)
き
乍
(
なが
)
ら
明
(
あかり
)
をとつてある。
223
パツと
写
(
うつ
)
つた
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
顔
(
かほ
)
、
224
久米彦
(
くめひこ
)
は
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし、
225
久米
(
くめ
)
『ヤア
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
番兵
(
ばんへい
)
ではないか、
226
最前
(
さいぜん
)
から
吾々
(
われわれ
)
の
話
(
はなし
)
を
立
(
た
)
ち
聞
(
ぎ
)
き
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つたのだな。
227
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
の
奴
(
やつ
)
だ。
228
サア
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
彼方
(
あちら
)
に
立去
(
たちさ
)
れ』
229
治国
(
はるくに
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
治国別
(
はるくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
で
厶
(
ござ
)
る。
230
拙者
(
せつしや
)
の
徒弟
(
とてい
)
道晴別
(
みちはるわけ
)
を
初
(
はじ
)
めシーナ、
231
及
(
および
)
スミエル、
232
スガールが
大変
(
たいへん
)
なお
世話
(
せわ
)
になつたさうだ。
233
一言
(
ひとこと
)
お
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
さなくてはならないと
思
(
おも
)
ひ、
234
態々
(
わざわざ
)
お
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
しましたのだ。
235
アハハハハハ』
236
久米
(
くめ
)
『イヤ、
237
これはこれは
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか。
238
何卒
(
どうぞ
)
言霊
(
ことたま
)
は
一寸
(
ちよつと
)
暫
(
しばら
)
くお
見合
(
みあは
)
せを
願
(
ねが
)
ひます。
239
唯今
(
ただいま
)
直
(
すぐ
)
にお
渡
(
わた
)
し
申
(
まを
)
しますから、
240
一寸
(
ちよつと
)
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
241
治国
(
はるくに
)
『イヤイヤ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
入
(
い
)
り
申
(
まを
)
さぬ。
242
拙者
(
せつしや
)
が
自
(
みづか
)
ら
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さねばならぬ
義務
(
ぎむ
)
が
厶
(
ござ
)
る。
243
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
はマア
悠
(
ゆつく
)
りと
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
をなされませ。
244
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
所在
(
ありか
)
はビクトル
山
(
さん
)
から
既
(
すで
)
に
霊眼
(
れいがん
)
で
見
(
み
)
て
置
(
お
)
きました』
245
久米
(
くめ
)
『イヤどうも
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
の
慧眼
(
けいがん
)
には
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
246
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
りバラモンの
将軍職
(
しやうぐんしよく
)
をやめますから、
247
どうぞ
命
(
いのち
)
計
(
ばか
)
りは
御
(
ご
)
救助
(
きうじよ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
248
万公
(
まんこう
)
『
先生
(
せんせい
)
、
249
こんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
又
(
また
)
計略
(
けいりやく
)
にかけるのですよ。
250
四
(
よ
)
人
(
にん
)
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みやがつた
穴
(
あな
)
へ
鬼春別
(
おにはるわけ
)
も
久米彦
(
くめひこ
)
も
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでやりませうか、
251
アハハハハ、
252
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
253
エヘン。
254
どんなものだ、
255
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
256
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
、
257
この
万公
(
まんこう
)
が
現
(
あら
)
はれた
以上
(
いじやう
)
は
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
だぞ』
258
松彦
(
まつひこ
)
『
万公
(
まんこう
)
、
259
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
260
お
前
(
まへ
)
は
篏口令
(
かんこうれい
)
を
布
(
し
)
かれて
居
(
ゐ
)
るぢやないか』
261
万公
(
まんこう
)
『
万公
(
まんこう
)
末代
(
まつだい
)
云
(
い
)
はない
心算
(
つもり
)
だつたが、
262
あまり
むかづく
のでつい
口
(
くち
)
が
辷
(
すべ
)
りました。
263
それよりも
早
(
はや
)
く
四
(
よ
)
人
(
にん
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さうぢやありませぬか……これや
久米彦
(
くめひこ
)
、
264
貴様
(
きさま
)
が
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んだのだから
貴様
(
きさま
)
が
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
して
来
(
こ
)
い。
265
万一
(
まんいち
)
一人
(
ひとり
)
でも
命
(
いのち
)
がなくなつて
居
(
ゐ
)
たら、
266
先生
(
せんせい
)
が
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
267
この
万公
(
まんこう
)
が
承知
(
しようち
)
せぬぞ。
268
ヘン
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
やがる、
269
将軍
(
しやうぐん
)
も
何
(
なに
)
もあつたものか。
270
先生
(
せんせい
)
の
前
(
まへ
)
に
来
(
き
)
たら
猫
(
ねこ
)
に
出会
(
であ
)
うた
鼠
(
ねづみ
)
のやうな
塩梅
(
あんばい
)
式
(
しき
)
ぢやないか。
271
醜態
(
ざま
)
を
見
(
み
)
やがれ、
272
イヒヒヒヒ』
273
松彦
(
まつひこ
)
『
万公
(
まんこう
)
さま
又
(
また
)
忘
(
わす
)
れたのか、
274
エエ
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
早
(
はや
)
く
案内
(
あんない
)
なされ』
275
万公
(
まんこう
)
『これや
早
(
はや
)
く
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
さぬか、
276
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
るのか、
277
そして
鬼春別
(
おにはるわけ
)
はどこに
居
(
を
)
るのか』
278
と
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
をかる
糞喰
(
くそくら
)
ひ
狐
(
ぎつね
)
のやうに
無暗
(
むやみ
)
矢鱈
(
やたら
)
に
噪
(
はしや
)
いで
居
(
ゐ
)
る。
279
竜彦
(
たつひこ
)
は
此
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
天眼通
(
てんがんつう
)
により
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
り、
280
手早
(
てばや
)
く
一人
(
ひとり
)
々々
(
ひとり
)
を
穴
(
あな
)
の
底
(
そこ
)
から
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げ、
281
鎮魂
(
ちんこん
)
を
施
(
ほどこ
)
し、
282
漸
(
やうや
)
く
四
(
よ
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
きかへさせた。
283
茲
(
ここ
)
に
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
284
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
土下座
(
どげざ
)
をしながら、
285
慄
(
ふる
)
ひ
慄
(
ふる
)
ひ
治国別
(
はるくにわけ
)
に
罪
(
つみ
)
を
謝
(
しや
)
した。
286
治国別
(
はるくにわけ
)
はいろいろと
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し、
287
且
(
か
)
つ
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
288
久米彦
(
くめひこ
)
、
289
スパール、
290
エミシの
高級
(
かうきふ
)
武官
(
ぶくわん
)
に
一人
(
ひとり
)
づつ
態
(
わざ
)
と
背負
(
せお
)
はしめ、
291
凱歌
(
がいか
)
を
奏
(
そう
)
しつつ
一先
(
ひとま
)
づ
玉木村
(
たまきむら
)
のテームスの
家
(
いへ
)
をさして
神恩
(
しんおん
)
を
感謝
(
かんしや
)
しながら
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
292
(
大正一二・二・二三
旧一・八
於竜宮館
加藤明子
録)
293
(昭和一〇・六・一三 王仁校正)
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