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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第54巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 神授の継嗣
第1章 子宝
第2章 日出前
第3章 懸引
第4章 理妻
第5章 万違
第6章 執念
第2篇 恋愛無涯
第7章 婚談
第8章 祝莚
第9章 花祝
第10章 万亀柱
第3篇 猪倉城寨
第11章 道晴別
第12章 妖瞑酒
第13章 岩情
第14章 暗窟
第4篇 関所の玉石
第15章 愚恋
第16章 百円
第17章 火救団
第5篇 神光増進
第18章 真信
第19章 流調
第20章 建替
第21章 鼻向
第22章 凱旋
附録 神文
余白歌
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真善美愛(第49~60巻)
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第54巻(巳の巻)
> 第3篇 猪倉城寨 > 第11章 道晴別
<<< 万亀柱
(B)
(N)
妖瞑酒 >>>
第一一章
道晴別
(
みちはるわけ
)
〔一三九七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
篇:
第3篇 猪倉城寨
よみ(新仮名遣い):
いのくらじょうさい
章:
第11章 道晴別
よみ(新仮名遣い):
みちはるわけ
通し章番号:
1397
口述日:
1923(大正12)年02月22日(旧01月7日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
治国別の従者となった晴彦は、玉国別を助けて河鹿峠の神殿造営に携わった。神殿が完成した暁に名を道晴別と賜り、治国別を追って、ビクトル山を通過し、シメジ峠にやってきた。
すると山道で、玉木村(フサの国)の豪農の僕たち三人連れに出会った。彼らが言うには、猪倉山にこのごろ砦を構えたバラモン軍の鬼春別将軍が主人の娘姉妹をさらっていったので、三五教の宣伝使に救助を依頼するべくビクトル山に行く途中だと言う。
道晴別はビクトル山は通過してしまったので、師匠や兄弟弟子たちと行き違いになったかもしれないと考えたが、玉木村の話を聞いて宣伝使として見過ごすことはできず、まずは一人でこの件を受諾することにした。
道晴別は僕たちに案内されて玉木村に向かった。その途中、玉木村の娘たちをさらったバラモン軍の二人の士官、フエルとベットが山道を張っていた。玉木村の者が、ビクトル山の治国別に応援を頼みに行かないように警戒していたのである。
フエルとベットは、道晴別が歌う宣伝歌の声が耳に入るとやにわに怖気づいてしまった。上官のフエルが逃げようとしたので、ベットは捕まえて逃げ出さないようにもみあっているところへ、道晴別たちがやってきた。
二人は道晴別の言霊で霊縛され、尋問を受けた。玉木村の僕の一人が、ベットが娘をさらいに来たバラモン軍の士官だと報告した。ベットとフエルはうまくごまかして逃げようとしたが、道晴別は霊縛したまま二人を玉木村まで連行した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-04-10 15:00:00
OBC :
rm5411
愛善世界社版:
129頁
八幡書店版:
第9輯 666頁
修補版:
校定版:
129頁
普及版:
58頁
初版:
ページ備考:
001
道晴別
(
みちはるわけ
)
『
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
002
神言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
みウブスナの
003
貴
(
うづ
)
の
聖地
(
せいち
)
を
立出
(
たちい
)
でて
004
治国別
(
はるくにわけ
)
の
従者
(
とも
)
となり
005
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
打越
(
うちこ
)
えて
006
魔神
(
まがみ
)
のたけぶ
山口
(
やまぐち
)
の
007
森
(
もり
)
に
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かす
折
(
をり
)
008
忽
(
たちま
)
ち
丑
(
うし
)
の
時
(
とき
)
参
(
まゐ
)
り
009
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
の
出現
(
しゆつげん
)
と
010
怪
(
あや
)
しみゐたる
折
(
をり
)
もあれ
011
松彦司
(
まつひこつかさ
)
の
胆力
(
たんりよく
)
に
012
よくよく
見
(
み
)
れば
妹
(
いもうと
)
の
013
思
(
おも
)
ひ
掛
(
がけ
)
なき
楓姫
(
かへでひめ
)
014
やれ
嬉
(
うれ
)
しやと
兄妹
(
きやうだい
)
の
015
名乗
(
なのり
)
を
上
(
あ
)
ぐる
時
(
とき
)
もあれ
016
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
幸
(
さち
)
はひて
017
二人
(
ふたり
)
の
親
(
おや
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
018
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り
019
玉国別
(
たまくにわけ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
020
瑞
(
みづ
)
の
御舎
(
みあらか
)
建
(
た
)
て
了
(
をは
)
り
021
道晴別
(
みちはるわけ
)
と
名
(
な
)
を
賜
(
たま
)
ひ
022
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
023
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
りけり
024
流
(
なが
)
れも
清
(
きよ
)
きライオンの
025
広
(
ひろ
)
き
河瀬
(
かはせ
)
を
横切
(
よこぎ
)
りて
026
ビクトル
山
(
さん
)
を
右手
(
めて
)
に
見
(
み
)
つ
027
草
(
くさ
)
青々
(
あをあを
)
と
生
(
お
)
ひしげる
028
野路
(
のぢ
)
を
渉
(
わた
)
りて
今
(
いま
)
ここに
029
シメジ
峠
(
たうげ
)
に
着
(
つ
)
きにけり
030
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
031
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
は
如何
(
いか
)
にして
032
いづくの
果
(
はて
)
にましますか
033
心
(
こころ
)
も
急
(
いそ
)
ぐ
一人旅
(
ひとりたび
)
034
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
大御神
(
おほみかみ
)
035
会
(
あ
)
はさせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
036
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
祈
(
ね
)
ぎまつる』
037
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
038
シメジ
峠
(
たうげ
)
の
登
(
のぼ
)
り
口
(
ぐち
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
き
)
たのは
道晴別
(
みちはるわけ
)
である。
039
道晴別
(
みちはるわけ
)
はシメジ
峠
(
たうげ
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
眺
(
なが
)
めて、
040
暫
(
しば
)
し
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めてゐた。
041
降
(
ふ
)
りみ、
042
降
(
ふ
)
らずみ、
043
五月雨
(
さみだれ
)
の
空
(
そら
)
低
(
ひく
)
うして、
044
時鳥
(
ほととぎす
)
の
声
(
こゑ
)
は
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
の
森林
(
しんりん
)
より
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
045
山
(
やま
)
も
野
(
の
)
も
一面
(
いちめん
)
に
緑
(
みどり
)
の
新装
(
しんさう
)
を
凝
(
こ
)
らし、
046
何
(
なん
)
とはなく
蒸
(
む
)
し
暑
(
あつ
)
く、
047
上着
(
うはぎ
)
が
邪魔
(
じやま
)
になる
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
になつて
来
(
き
)
た。
048
道晴別
(
みちはるわけ
)
は
急阪
(
きふはん
)
を
打仰
(
うちあふ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
049
道晴
(
みちはる
)
『ああ
何
(
なん
)
ときつい
阪
(
さか
)
だらう。
050
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
を
始
(
はじ
)
め、
051
松彦
(
まつひこ
)
、
052
竜彦
(
たつひこ
)
、
053
万公
(
まんこう
)
は
最早
(
もはや
)
此処
(
ここ
)
を
通
(
とほ
)
られたであらうか、
054
此
(
この
)
道端
(
みちばた
)
の
岩石
(
がんせき
)
が
物
(
もの
)
言
(
い
)
ふものならば
知
(
し
)
らしてくれるだらうに、
055
ああ
仕方
(
しかた
)
がない。
056
先
(
ま
)
づ
此
(
この
)
岩上
(
がんじやう
)
に
端座
(
たんざ
)
して
瞑想
(
めいさう
)
に
耽
(
ふけ
)
り、
057
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
が
通
(
とほ
)
られたか
通
(
とほ
)
られないか
伺
(
うかが
)
つてみよう。
058
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らまだ
自分
(
じぶん
)
は
魂
(
みたま
)
が
研
(
みが
)
けてゐないから、
059
ハツキリした
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
らぬ、
060
困
(
こま
)
つたものだなア』
061
と
呟
(
つぶや
)
いてゐる。
062
そこへ
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
が
急
(
せ
)
はし
相
(
さう
)
にスタスタと
坂
(
さか
)
を
降
(
くだ
)
つて
来
(
く
)
る。
063
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
岩上
(
がんじやう
)
の
道晴別
(
みちはるわけ
)
を
見
(
み
)
て、
064
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『
一寸
(
ちよつと
)
物
(
もの
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
します。
065
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
066
道晴
(
みちはる
)
『ハイ、
067
拙者
(
せつしや
)
はお
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
068
道晴別
(
みちはるわけ
)
と
申
(
まを
)
す
宣伝使
(
せんでんし
)
で
厶
(
ござ
)
います。
069
何
(
なん
)
ぞ
御用
(
ごよう
)
で
厶
(
ござ
)
るかな』
070
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『かやうな
所
(
ところ
)
でお
話
(
はなし
)
申上
(
まをしあ
)
げても
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
071
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はビクトル
山
(
さん
)
に
尊
(
たふと
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
が
現
(
あら
)
はれ、
072
人民
(
じんみん
)
の
苦
(
くるし
)
みをお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さるといふ
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はり、
073
主人
(
しゆじん
)
の
命令
(
めいれい
)
に
仍
(
よ
)
つて、
074
其
(
その
)
お
方
(
かた
)
にお
目
(
め
)
にかかりたいと、
075
吾々
(
われわれ
)
僕
(
しもべ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
危険
(
きけん
)
を
冒
(
をか
)
して、
076
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
りました』
077
道晴
(
みちはる
)
『ビクトル
山
(
さん
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がゐるといふ
話
(
はなし
)
がありますかな、
078
はてなア』
079
と
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み、
080
道晴
(
みちはる
)
『ああ
失策
(
しま
)
つた、
081
こんな
事
(
こと
)
なら、
082
一寸
(
ちよつと
)
道寄
(
みちよ
)
りをして
来
(
き
)
たらよかつたに、
083
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
がまだ
後
(
あと
)
にゐられたかも
知
(
し
)
れない。
084
余
(
あま
)
り
遅
(
おく
)
れたと
思
(
おも
)
うて
急
(
いそ
)
いで
来
(
き
)
たものだから、
085
大方
(
おほかた
)
行過
(
ゆきす
)
ぎたのだなア』
086
と
私
(
ひそ
)
かに
小声
(
こごゑ
)
で
囁
(
ささや
)
いてゐる。
087
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『
貴方
(
あなた
)
は、
088
さうすると、
089
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
ご
)
一行
(
いつかう
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか、
090
何
(
なん
)
でも
四
(
よ
)
人
(
にん
)
許
(
ばか
)
りゐられるといふ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますが』
091
道晴
(
みちはる
)
『ああ
其
(
その
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
方
(
かた
)
は、
092
私
(
わたし
)
の
師匠
(
ししやう
)
なり
友人
(
いうじん
)
だ。
093
ビクトル
山
(
さん
)
に
確
(
たしか
)
にゐられるといふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つてゐるかな』
094
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『イエイエ、
095
もうお
立
(
た
)
ちになつたか、
096
まだゐられますか、
097
それが
判然
(
はつきり
)
分
(
わか
)
らないのです』
098
道晴
(
みちはる
)
『そして
宣伝使
(
せんでんし
)
に
会
(
あ
)
ひに
行
(
ゆ
)
くとは、
099
如何
(
いか
)
なる
御用
(
ごよう
)
があるのかな』
100
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『ハイ
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
101
私
(
わたし
)
は
玉木村
(
たまきむら
)
の
豪農
(
がうのう
)
の
僕
(
しもべ
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
102
二人
(
ふたり
)
のお
嬢
(
ぢやう
)
さまが
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
山寨
(
さんさい
)
に
巣
(
す
)
を
構
(
かま
)
へてゐる、
103
鬼春別
(
おにはるわけ
)
とか
云
(
い
)
ふバラモンのゼネラルの
部下
(
ぶか
)
に
攫
(
とら
)
はれ
遊
(
あそ
)
ばし、
104
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
はいろいろ
雑多
(
ざつた
)
とお
嬢
(
ぢやう
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
案
(
あん
)
じ、
105
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
も
水行
(
すいぎやう
)
をして、
106
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねがひ
)
遊
(
あそ
)
ばした
所
(
ところ
)
、
107
夢
(
ゆめ
)
のお
告
(
つげ
)
に、
108
ビクトル
山
(
さん
)
には
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
来
(
き
)
てゐられるから、
109
其
(
その
)
方
(
かた
)
にお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
せば、
110
キツと
取返
(
とりかへ
)
して
下
(
くだ
)
さるだらうとのお
言葉
(
ことば
)
、
111
それを
力
(
ちから
)
としてお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
さむと、
112
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います』
113
道晴
(
みちはる
)
『フーン、
114
それは
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
事
(
こと
)
だ。
115
宣伝使
(
せんでんし
)
として、
116
こんな
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
見遁
(
みのが
)
す
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
くまい。
117
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
主人
(
しゆじん
)
の
内
(
うち
)
へ
案内
(
あんない
)
してくれ、
118
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
でキツと
取返
(
とりかへ
)
して
上
(
あ
)
げるから』
119
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
120
定
(
さだ
)
めて
主人
(
しゆじん
)
も
喜
(
よろこ
)
ばれる
事
(
こと
)
でせう。
121
然
(
しか
)
らばお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
します。
122
之
(
これ
)
から
三
(
さん
)
里
(
り
)
許
(
ばか
)
り、
123
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
り
下
(
くだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたならば、
124
つい
近
(
ちか
)
くの
村
(
むら
)
で
厶
(
ござ
)
います。
125
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
そこ
迄
(
まで
)
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
126
主人
(
しゆじん
)
と
御緩
(
ごゆつく
)
り
話
(
はなし
)
をして
下
(
くだ
)
さいませ。
127
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
の
雑兵
(
ざふひやう
)
が
徘徊
(
はいくわい
)
を
致
(
いた
)
しますれば、
128
随分
(
ずいぶん
)
気
(
き
)
をつけて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ、
129
到底
(
たうてい
)
一人
(
ひとり
)
では
通
(
とほ
)
れない
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
130
かうして
三
(
さん
)
人
(
にん
)
で
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います。
131
ここへ
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
にも、
132
随分
(
ずいぶん
)
危険
(
きけん
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
うて
参
(
まゐ
)
りましたので
厶
(
ござ
)
います』
133
道晴別
(
みちはるわけ
)
は、
134
道晴
(
みちはる
)
『そんならお
前
(
まへ
)
の
主人
(
しゆじん
)
の
宅
(
たく
)
へ
行
(
ゆ
)
かう』
135
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
後前
(
あとさき
)
に
従
(
したが
)
へ、
136
胸突阪
(
むなつきざか
)
を
喘
(
あへ
)
ぎ
喘
(
あへ
)
ぎ
登
(
のぼ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
137
シメジ
峠
(
たうげ
)
の
山頂
(
さんちやう
)
に
稍
(
やや
)
平坦
(
へいたん
)
な
地点
(
ちてん
)
がある。
138
そこには
風
(
かぜ
)
に
揉
(
も
)
まれて、
139
枝振
(
えだぶり
)
のひねた
面白
(
おもしろ
)
いパインが
四五本
(
しごほん
)
並
(
なら
)
びゐたり。
140
チューニック
姿
(
すがた
)
の
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
、
141
一人
(
ひとり
)
はベツトと
云
(
い
)
ひ、
142
一人
(
ひとり
)
はフエルと
云
(
い
)
ふ。
143
小
(
ちひ
)
さい
石
(
いし
)
に
腰
(
こし
)
をかけて、
144
四方
(
よも
)
の
風景
(
ふうけい
)
を
見下
(
みおろ
)
し
乍
(
なが
)
ら
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐた。
145
ベツト『オイ、
146
随分
(
ずいぶん
)
に
此
(
この
)
地方
(
ちはう
)
は
絶景
(
ぜつけい
)
ぢやないか。
147
どの
山
(
やま
)
も、
148
この
山
(
やま
)
も、
149
あの
通
(
とほ
)
り
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
は
禿頭病
(
とくとうびやう
)
の
頭
(
あたま
)
のやうになつて、
150
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
青
(
あを
)
い
木
(
き
)
が、
151
点綴
(
てんてつ
)
してゐる
様
(
さま
)
は
丸
(
まる
)
で
絵
(
ゑ
)
を
見
(
み
)
る
様
(
やう
)
だ。
152
ライオン
河
(
がは
)
の
流
(
なが
)
れは
幽
(
かす
)
かに
帯
(
おび
)
を
曳
(
ひ
)
いたやうに
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
るが、
153
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
随分
(
ずいぶん
)
、
154
あこを
渡
(
わた
)
つた
時
(
とき
)
にや
苦労
(
くらう
)
をしたものだ』
155
フエル『
成程
(
なるほど
)
、
156
中途
(
ちうと
)
に
馬
(
うま
)
が
屁古垂
(
へこた
)
れて、
157
貴様
(
きさま
)
は
四五丁
(
しごちやう
)
許
(
ばか
)
り
押流
(
おしなが
)
され、
158
土人
(
どじん
)
に
助
(
たす
)
けられて
屁古垂
(
へこた
)
れた
時
(
とき
)
のザマは
今
(
いま
)
目
(
め
)
に
見
(
み
)
えるやうだ。
159
随分
(
ずいぶん
)
鼻
(
はな
)
をたらしやがつて、
160
濡
(
ぬ
)
れ
鼠
(
ねづみ
)
のやうになつて、
161
唇
(
くちびる
)
まで
紫色
(
むらさきいろ
)
に
染
(
そ
)
めて
居
(
を
)
つた
時
(
とき
)
のザマつて、
162
なかつたよ。
163
あの
時
(
とき
)
に
俺
(
おれ
)
がゐなかつたら、
164
貴様
(
きさま
)
は
土人
(
どじん
)
に
攫
(
さら
)
はれて、
165
嬲殺
(
なぶりごろ
)
しに
会
(
あ
)
うて
居
(
を
)
つたか
分
(
わか
)
らぬのだ。
166
無類
(
むるゐ
)
飛
(
と
)
び
切
(
き
)
りの
悪党
(
あくたう
)
だからなア』
167
ベツト『ヘン、
168
偉相
(
えらさう
)
に
云
(
い
)
ふない、
169
之
(
これ
)
でもバラモン
軍
(
ぐん
)
の、
170
グレジナアーだ。
171
第一
(
だいいち
)
玉木村
(
たまきむら
)
の
豪農
(
がうのう
)
の
娘
(
むすめ
)
スミエル、
172
スガールの
両人
(
りやうにん
)
を
甘
(
うま
)
くチヨロまかし、
173
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
本陣
(
ほんぢん
)
へ
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つたのも、
174
ヤツパリ
此
(
この
)
ベツトだから、
175
偉
(
えら
)
い
者
(
もの
)
だらう。
176
悪
(
あく
)
もここ
迄
(
まで
)
徹底
(
てつてい
)
せないと
貴様
(
きさま
)
のやうな
事
(
こと
)
では
到底
(
たうてい
)
軍人
(
ぐんじん
)
にはなれやしないぞ。
177
ゴテゴテ
申
(
まを
)
さずに
俺
(
おれ
)
の
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
するのだ。
178
又
(
また
)
俺
(
おれ
)
が
甘
(
うま
)
くゼネラルに
取持
(
とりも
)
つて
伍長
(
ごちやう
)
位
(
ぐらゐ
)
にはして
貰
(
もら
)
うてやるワイ』
179
フエル『ヘン、
180
馬鹿
(
ばか
)
にすない、
181
俺
(
おれ
)
はかうみえても
准士官
(
じゆんしくわん
)
だ、
182
少尉
(
せうゐ
)
候補生
(
こうほせい
)
だ。
183
汝
(
きさま
)
はまだ
軍曹
(
ぐんさう
)
ぢやないか、
184
俺
(
おれ
)
が
斯
(
か
)
う
化
(
ば
)
けて
居
(
ゐ
)
るのを
知
(
し
)
らぬのかい』
185
ベツト『ヘン、
186
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふない。
187
汝
(
きさま
)
の
肩章
(
けんしやう
)
を
見
(
み
)
れば
能
(
よ
)
く
分
(
わか
)
つてるぢやないか』
188
フエル『サア、
189
そこが
秘密
(
ひみつ
)
の
役
(
やく
)
を
仰
(
おほ
)
せつかつてゐる
丈
(
だけ
)
で、
190
エッボオーレッポの
印
(
しるし
)
が
書
(
か
)
いてあるのだ。
191
モウ
一月
(
ひとつき
)
もすれば、
192
立派
(
りつぱ
)
なユウンケルだ。
193
さうすれば、
194
汝
(
きさま
)
、
195
俺
(
おれ
)
が
腮
(
あご
)
で
使
(
つか
)
つてやるのだから、
196
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
機嫌
(
きげん
)
を
取
(
と
)
つておかぬと
出世
(
しゆつせ
)
の
妨
(
さまた
)
げになるぞ。
197
嘘
(
うそ
)
と
思
(
おも
)
ふなら
之
(
これ
)
をみい』
198
と
襟
(
えり
)
を
引
(
ひつ
)
くり
返
(
かへ
)
して
見
(
み
)
せた。
199
ベツトはよくよく
覗
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
ると、
200
ユウンケル
候補生
(
こうほせい
)
の
印
(
しるし
)
がついてゐる。
201
忽
(
たちま
)
ち
大地
(
だいち
)
に
平太張
(
へたば
)
り、
202
ベツト『これはこれは
上官
(
じやうくわん
)
とは
知
(
し
)
らず、
203
誠
(
まこと
)
に
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
しました』
204
フエル『アハハハハ、
205
往生
(
わうじやう
)
したか、
206
バラモン
軍
(
ぐん
)
のマーシヤル
閣下
(
かくか
)
より
内命
(
ないめい
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
を
)
るのだぞ。
207
併
(
しか
)
し
汝
(
きさま
)
が
部下
(
ぶか
)
と
共
(
とも
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
つた
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
は、
208
何時
(
なんどき
)
取返
(
とりかへ
)
しに
来
(
く
)
るか
知
(
し
)
れぬから、
209
ここに
番
(
ばん
)
をしてゐるのだ。
210
豪農
(
がうのう
)
テームスの
僕
(
しもべ
)
の
奴
(
やつ
)
が、
211
ビクトル
山
(
さん
)
に
居
(
を
)
る
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
報告
(
はうこく
)
に
行
(
ゆ
)
きよつたら、
212
夫
(
そ
)
れこそ
大変
(
たいへん
)
だから、
213
此
(
この
)
一筋道
(
ひとすぢみち
)
を
扼
(
やく
)
して、
214
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
此処
(
ここ
)
を
通
(
とほ
)
る
奴
(
やつ
)
は
取調
(
とりしら
)
べ、
215
怪
(
あや
)
しとみたならば、
216
首
(
くび
)
を
刎
(
は
)
ねるのだ。
217
此
(
この
)
頂上
(
ちやうじやう
)
に
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
居
(
を
)
れば、
218
仮令
(
たとへ
)
何万
(
なんまん
)
人
(
にん
)
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ても、
219
一度
(
いちど
)
にかかる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬのだから、
220
汝
(
きさま
)
は
交替兵
(
かうたいへい
)
の
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
神妙
(
しんめう
)
に
勤
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
るのだぞ』
221
ベツト『ハイ、
222
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
223
併
(
しか
)
しどうも
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
では、
224
心細
(
こころぼそ
)
う
厶
(
ござ
)
います。
225
代
(
かは
)
りが
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
、
226
ここに
暫
(
しばら
)
く
貴方
(
あなた
)
も
付合
(
つきあ
)
つて
貰
(
もら
)
ひますまいか、
227
どうやら
宣伝使
(
せんでんし
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
るやうですから……』
228
フエルは
幽
(
かす
)
かに
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
つたので、
229
早
(
はや
)
くも、
230
ベツトを
此処
(
ここ
)
におき
自分
(
じぶん
)
は
体
(
てい
)
よく
逃出
(
にげだ
)
す
考
(
かんが
)
へで、
231
こんな
命令
(
めいれい
)
を
下
(
くだ
)
してゐた。
232
宣伝歌
(
せんでんか
)
は
益々
(
ますます
)
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
233
フエル『オイ、
234
ベツト、
235
サア、
236
ここが
汝
(
きさま
)
の
手柄
(
てがら
)
の
現
(
あらは
)
れ
時
(
どき
)
だ。
237
俺
(
おれ
)
は
軍務
(
ぐんむ
)
の
都合
(
つがふ
)
に
仍
(
よ
)
つて、
238
ここを
退却
(
たいきやく
)
する、
239
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
むぞ』
240
ベツト『マア、
241
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
242
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
243
貴方
(
あなた
)
は
体
(
てい
)
よい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
逃
(
に
)
げるのぢやありませぬか。
244
何程
(
なにほど
)
軍務
(
ぐんむ
)
が
忙
(
いそが
)
しいと
云
(
い
)
つて、
245
眼前
(
がんぜん
)
に
敵
(
てき
)
を
控
(
ひか
)
へて、
246
大将
(
たいしやう
)
から
逃
(
に
)
げると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますか』
247
とグツと
後
(
うしろ
)
から、
248
フエルに
抱
(
だ
)
き
付
(
つ
)
き、
249
剛力
(
がうりき
)
に
任
(
まか
)
せて
動
(
うご
)
かさぬ、
250
フエルは
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうとすれ
共
(
ども
)
、
251
ビクともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬ。
252
逃
(
に
)
げやうとする、
253
逃
(
に
)
がそまいとする。
254
汗
(
あせ
)
みどろになつて
揉
(
も
)
みあうてゐる
所
(
ところ
)
へ、
255
漸
(
やうや
)
く
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
たのは
道晴別
(
みちはるわけ
)
であつた。
256
ベツト、
257
フエルは
道晴別
(
みちはるわけ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
258
おぢけづき、
259
手足
(
てあし
)
はワナワナ
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
し、
260
バタリと
地上
(
ちじやう
)
に
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
した。
261
道晴
(
みちはる
)
『お
前
(
まへ
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
の
兵士
(
へいし
)
と
見
(
み
)
えるが、
262
玉木村
(
たまきむら
)
の
豪農
(
がうのう
)
テームスの
娘
(
むすめ
)
、
263
スミエル、
264
スガールの
両人
(
りやうにん
)
を
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
山寨
(
さんさい
)
に
隠
(
かく
)
してゐると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
265
お
前
(
まへ
)
はそれを
知
(
し
)
つてゐるか』
266
ベツト『ヘーヘーヘー、
267
根
(
ね
)
つから
存
(
ぞん
)
じませぬ。
268
そんな
噂
(
うはさ
)
があつたやうにも
厶
(
ござ
)
いましたが、
269
よくよく
調
(
しら
)
べてみますると、
270
全
(
まつた
)
く……
嘘
(
うそ
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
271
私
(
わたし
)
はゼネラルの
従卒
(
じゆうそつ
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましたから、
272
何
(
なに
)
もかも
陣中
(
ぢんちう
)
の
事
(
こと
)
は
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
りますが、
273
女
(
をんな
)
なんかは
一人
(
ひとり
)
も
居
(
を
)
りませぬ』
274
甲
(
かふ
)
はベツトの
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
275
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『ああお
前
(
まへ
)
はお
嬢
(
ぢやう
)
さまを、
276
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
、
277
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
を
連
(
つ
)
れて
取
(
と
)
りに
来
(
き
)
た
大将
(
たいしやう
)
だなア……、
278
モシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
279
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
280
此奴
(
こいつ
)
が
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
つたのですから、
281
よくお
査
(
しら
)
べ
下
(
くだ
)
さいませ』
282
ベツト『エエ
滅相
(
めつさう
)
な、
283
私
(
わたし
)
に
似
(
に
)
た
顔
(
かほ
)
は
沢山
(
たくさん
)
居
(
を
)
りますから、
284
取違
(
とりちが
)
へて
貰
(
もら
)
つては
困
(
こま
)
ります。
285
コレ、
286
テームスさまの
内
(
うち
)
の
奴
(
やつこ
)
さま、
287
能
(
よ
)
く
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい。
288
似
(
に
)
た
所
(
ところ
)
があつても、
289
どつかに
違
(
ちが
)
つた
所
(
ところ
)
があるだらう。
290
お
前
(
まへ
)
は
余
(
あま
)
り
俄
(
にはか
)
の
事
(
こと
)
で
驚
(
おどろ
)
いたから
間違
(
まちが
)
つたのだらう。
291
テームスやベリシナが、
292
何卒
(
どうぞ
)
娘
(
むすめ
)
丈
(
だけ
)
は
堪
(
こら
)
へて
下
(
くだ
)
さい。
293
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
私
(
わたし
)
を……と
云
(
い
)
つた
時
(
とき
)
に、
294
顔
(
かほ
)
もあげずに
俯
(
うつむ
)
いて
居
(
を
)
つたぢやないか。
295
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
もさうだつたらう、
296
怖
(
こは
)
い
時
(
とき
)
の
目
(
め
)
でみたら、
297
キツと
見違
(
みちが
)
ひするものだ』
298
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『ハツハハハ、
299
私
(
わたし
)
の
主人
(
しゆじん
)
が
言
(
い
)
つた
言葉
(
ことば
)
や、
300
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
状況
(
じやうきやう
)
迄
(
まで
)
今
(
いま
)
言
(
い
)
つたでないか。
301
さうすればヤツパリお
前
(
まへ
)
に
違
(
ちが
)
ひない。
302
先生
(
せんせい
)
、
303
此奴
(
こいつ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
304
何卒
(
どうぞ
)
一
(
ひと
)
つドテライ
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はして、
305
お
嬢
(
ぢやう
)
さまを
取返
(
とりかへ
)
すやうに
命
(
めい
)
じて
下
(
くだ
)
さいませ』
306
道晴
(
みちはる
)
『ウン、
307
よし、
308
オイ、
309
ベツト、
310
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はぬと、
311
此方
(
こちら
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるぞ』
312
ベツト『エー、
313
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
314
此処
(
ここ
)
に
厶
(
ござ
)
るフエルさまの
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
りまして、
315
ホンの
機械
(
きかい
)
的
(
てき
)
に
動
(
うご
)
いたので
厶
(
ござ
)
います。
316
何卒
(
どうぞ
)
フエルさまに
談判
(
だんぱん
)
をして
下
(
くだ
)
さいませ。
317
今
(
いま
)
貴方
(
あなた
)
のお
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えたので、
318
此
(
この
)
フエルさまがビツクリして
逃
(
に
)
げようとした
所
(
ところ
)
を、
319
私
(
わたし
)
が
喰
(
く
)
ひ
止
(
と
)
めて、
320
貴方
(
あなた
)
に
突出
(
つきだ
)
さうと
思
(
おも
)
ひ、
321
今
(
いま
)
格闘
(
かくとう
)
してをつたのです。
322
言
(
い
)
はば
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
が
張本人
(
ちやうほんにん
)
ですから、
323
私
(
わたし
)
は
其
(
その
)
張本人
(
ちやうほんにん
)
を
捕
(
つか
)
まへた
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
に、
324
何卒
(
どうぞ
)
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
325
フエル『コリヤ、
326
ベツト、
327
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふな、
328
俺
(
おれ
)
が
何時
(
いつ
)
そんな
命令
(
めいれい
)
をしたか』
329
ベツト『ヘヘヘヘヘ、
330
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
いますワイ、
331
モシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
332
此
(
この
)
フエルは
普通兵
(
ふつうへい
)
の
肩章
(
けんしやう
)
をかけて
居
(
を
)
りまするが、
333
此奴
(
こいつ
)
ア
悪
(
あく
)
の
証拠
(
しようこ
)
にや、
334
襟裏
(
えりうら
)
にユウンケル
候補生
(
こうほせい
)
の
印
(
しるし
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
ります。
335
それをお
調
(
しら
)
べになつたら
一番
(
いちばん
)
よう
分
(
わか
)
ります。
336
私
(
わたし
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
軍曹
(
ぐんさう
)
ですから……』
337
道晴
(
みちはる
)
『どちらが
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か
知
(
し
)
らぬが、
338
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
自分
(
じぶん
)
の
罪
(
つみ
)
を
上官
(
じやうくわん
)
に
塗
(
ぬ
)
りつけようとする
所
(
ところ
)
から
考
(
かんが
)
へてみれば、
339
ヤツパリ
貴様
(
きさま
)
の
方
(
はう
)
が
悪
(
わる
)
い。
340
まて、
341
今
(
いま
)
言霊
(
ことたま
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
をやる、
342
悪
(
あく
)
の
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
は
言霊
(
ことたま
)
の
打
(
う
)
たれようがきついから、
343
直様
(
すぐさま
)
分
(
わか
)
るのだ』
344
甲
(
かふ
)
(シーナ)
『ハハハハハ、
345
其
(
その
)
ザマ
何
(
なん
)
だ。
346
夜
(
よる
)
の
夜中
(
よなか
)
に、
347
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
雑兵
(
ざふひやう
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
やがつて、
348
偉相
(
えらさう
)
に
威張
(
ゐばり
)
散
(
ち
)
らした
時
(
とき
)
の
権幕
(
けんまく
)
と、
349
今日
(
けふ
)
の
権幕
(
けんまく
)
とは、
350
まるで
鬼
(
おに
)
と
餓鬼
(
がき
)
と
程
(
ほど
)
違
(
ちが
)
ふぢやないか。
351
ザマ
見
(
み
)
やがれ。
352
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
現
(
あら
)
はれた
以上
(
いじやう
)
は、
353
仮令
(
たとへ
)
バラモンに
幾万
(
いくまん
)
の
敵
(
てき
)
が
居
(
を
)
らうと
屁
(
へ
)
のお
茶
(
ちや
)
だ、
354
エヘヘヘヘ、
355
よい
気味
(
きみ
)
だな』
356
道晴
(
みちはる
)
『オイ
甲
(
かふ
)
、
357
せうもない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものでない。
358
お
前
(
まへ
)
は
黙
(
だま
)
つてをれば
可
(
い
)
いのだ。
359
バラモン
軍
(
ぐん
)
のフエル
殿
(
どの
)
、
360
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
361
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
はお
達者
(
たつしや
)
で
厶
(
ござ
)
るかな』
362
フエル『ハイ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
363
極
(
きは
)
めて
壮健
(
さうけん
)
に
軍務
(
ぐんむ
)
にお
尽
(
つく
)
しになつて
居
(
を
)
ります』
364
道晴
(
みちはる
)
『さうか、
365
それや
実
(
じつ
)
にバラモン
軍
(
ぐん
)
の
為
(
ため
)
には
大慶
(
たいけい
)
だ。
366
併
(
しか
)
しモウ
斯
(
か
)
うなつては
隠
(
かく
)
しても
駄目
(
だめ
)
だから、
367
実地
(
じつち
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ひたい』
368
フエル『ハイ、
369
私
(
わたし
)
は
直接
(
ちよくせつ
)
其
(
その
)
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
つたのぢやありませぬが、
370
玉木村
(
たまきむら
)
の
豪農
(
がうのう
)
の
娘
(
むすめ
)
スミエル、
371
スガールといふ
美人
(
びじん
)
が
確
(
たしか
)
にゼネラルの
側
(
そば
)
に
居
(
を
)
りまする』
372
道晴
(
みちはる
)
『あ、
373
さうだらう、
374
よう
言
(
い
)
つてくれた。
375
併
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
は、
376
此
(
この
)
儘
(
まま
)
帰
(
かへ
)
してやるは
易
(
やす
)
いが、
377
又
(
また
)
すべての
計画
(
けいくわく
)
の
障害
(
しやうがい
)
になると
困
(
こま
)
るから、
378
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
379
玉木村
(
たまきむら
)
のテームスが
家
(
いへ
)
まで
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
てくれ』
380
フエル『ハイ、
381
ソレヤ
行
(
ゆ
)
かぬこた
厶
(
ござ
)
いませぬが、
382
それよりも
此処
(
ここ
)
を
見逃
(
みのが
)
して
下
(
くだ
)
さいますれば、
383
甘
(
うま
)
く
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
を
助
(
たす
)
け
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
ますがなア、
384
のう、
385
ベツト、
386
ここは
思案
(
しあん
)
の
仕所
(
しどころ
)
だ。
387
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
388
バラモン
軍
(
ぐん
)
を
脱退
(
だつたい
)
して、
389
三五
(
あななひ
)
のお
道
(
みち
)
へ
帰順
(
きじゆん
)
するお
土産
(
みやげ
)
として、
390
二人
(
ふたり
)
を
玉木村
(
たまきむら
)
へ
返
(
かへ
)
さうだないか』
391
ベツト『ヘーン、
392
そんな
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますかな』
393
フエルは
目
(
め
)
をグツと
睨
(
にら
)
み、
394
フエル
『
馬鹿
(
ばか
)
だなア、
395
何
(
なん
)
とか
彼
(
か
)
とか
云
(
い
)
つてここを
助
(
たす
)
かるのだ、
396
チと
気
(
き
)
をつけぬかい』
397
といふ
意味
(
いみ
)
を
目
(
め
)
で
知
(
し
)
らした。
398
ベツト『モシ
道晴別
(
みちはるわけ
)
様
(
さま
)
、
399
フエルの
大将
(
たいしやう
)
の
様子
(
やうす
)
を
御覧
(
ごらん
)
になれば、
400
どちらが
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か
判
(
わか
)
るでせう。
401
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
私
(
わたし
)
は
帰順
(
きじゆん
)
致
(
いた
)
します。
402
何卒
(
どうぞ
)
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いて
下
(
くだ
)
さい
御
(
ご
)
恩返
(
おんがへ
)
しを
致
(
いた
)
しますから……』
403
道晴
(
みちはる
)
『ハハハ、
404
今
(
いま
)
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いたら、
405
一目散
(
いちもくさん
)
に
逃出
(
にげだ
)
すだらう。
406
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
玉木村
(
たまきむら
)
へ
来
(
く
)
るがよい。
407
何程
(
なにほど
)
厭
(
いや
)
と
申
(
まを
)
しても、
408
神力
(
しんりき
)
に
仍
(
よ
)
つて
引張
(
ひつぱ
)
つて
行
(
ゆ
)
く、
409
どこなつと
行
(
ゆ
)
くなら
行
(
い
)
つてみよ』
410
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
411
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつこ
)
を
連
(
つ
)
れて、
412
シメジ
峠
(
たうげ
)
の
急阪
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
413
フエル、
414
ベツトは
綱
(
つな
)
をつけて
引張
(
ひつぱ
)
られるやうな
心地
(
ここち
)
し、
415
足元
(
あしもと
)
危
(
あやふ
)
く、
416
厭
(
いや
)
相
(
さう
)
に
自然
(
しぜん
)
的
(
てき
)
に
跟
(
つ
)
いてゆく。
417
漸
(
やうや
)
くにして
玉木村
(
たまきむら
)
の
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
原野
(
げんや
)
の
中央
(
まんなか
)
に、
418
老木
(
らうぼく
)
茂
(
しげ
)
る
一構
(
ひとかま
)
へがある。
419
ここがテームスの
屋敷
(
やしき
)
であつた。
420
道晴別
(
みちはるわけ
)
は
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
421
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつこ
)
に
案内
(
あんない
)
され、
422
フエル、
423
ベツトを
霊縛
(
れいばく
)
した
儘
(
まま
)
門内
(
もんない
)
に
招
(
まね
)
き
入
(
い
)
れられたり。
424
(
大正一二・二・二二
旧一・七
於竜宮館
松村真澄
録)
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