霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 心転(しんてん)〔一四〇九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第1篇 奇縁万情 よみ(新仮名遣い):きえんばんじょう
章:第1章 心転 よみ(新仮名遣い):しんてん 通し章番号:1409
口述日:1923(大正12)年02月26日(旧01月11日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
鬼春別と久米彦は、女を争って競争の真っ最中に三五教の宣伝使・治国別一行に踏み込まれ、驚いて降参し、捕えていた四人の男女を背負って玉木村のテームス館まで謝罪を兼ねて送り届けることになった。
鬼春別は士官を呼んで、自分たちが前非を悔いて三五教に帰順し、普通の信者となって神のため世のために働く決意を固めたことを伝えた。この旨は軍隊全般に伝達され、兵士たちは各々本国に帰り、正道に付くよう勧告された。
兵士たちはこの通達に一様に驚いたが、元より上官の言いなりの集団であり、大黒主のために三五教に対してもう一戦しようという気概のある者は一人もいなかった。
治国別は数多の軍人たちが解散の命を受けて素直に帰ってゆくのを見て、三五教の大神、バラモン神、盤古神王の守護を感謝した。治国別一行は、鬼春別ら元将軍・副官四人と、囚われていたスミエル、スガール姉妹、シーナ、道晴別を加えて、玉木村への道を降って行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3566 OBC :rm5501
愛善世界社版:9頁 八幡書店版:第10輯 37頁 修補版: 校定版:9頁 普及版:3頁 初版: ページ備考:
001仰(あふ)げば高(たか)し久方(ひさかた)の
002高天原(たかあまはら)に現(あ)れませる
003天地(てんち)の造主(つくりぬし)とます
004大国常立(おほくにとこたち)大御神(おほみかみ)
005瑞(みづ)の御霊(みたま)を分(わ)け玉(たま)ひ
006霊国(れいごく)にては月(つき)の神(かみ)
007天国(てんごく)にては日(ひ)の神(かみ)と
008現(あら)はれまして天地(あめつち)の
009百(もも)の霊(みたま)を悉(ことごと)く
010荘厳(さうごん)無比(むひ)の天界(てんかい)に
011助(たす)けむものと御心(みこころ)を
012配(くば)らせ玉(たま)ひ三五(あななひ)の
013教(をしへ)を天地(てんち)に拡充(くわくじゆう)し
014百(もも)の神々(かみがみ)選(え)り出(だ)して
015三千(さんぜん)世界(せかい)の宣伝使(せんでんし)
016代表神(だいへうしん)となし玉(たま)ふ
017百(もも)の司(つかさ)を統一(とういつ)し
018黄金山(わうごんざん)や四尾山(よつをやま)
019コーカス山(ざん)やウブスナの
020斎苑(いそ)の館(やかた)に神柱(かむばしら)
021堅磐(かきは)に常磐(ときは)に立(た)て玉(たま)ひ
022世人(よびと)を導(みちび)き玉(たま)ひつつ
023天国(てんごく)浄土(じやうど)を地(ち)の上(うへ)に
024築(きづ)かせ玉(たま)ふ尊(たふと)さよ
025三千(さんぜん)世界(せかい)の梅(うめ)の花(はな)
026一度(いちど)に開(ひら)く常磐木(ときはぎ)の
027松(まつ)の緑(みどり)もスクスクと
028天(てん)に向(むか)つて伸(の)びて行(ゆ)く
029厳(いづ)の御霊(みたま)や瑞御霊(みづみたま)
030三五(さんご)の月(つき)は大空(おほぞら)に
031丸(まる)き姿(すがた)を現(あら)はして
032下界(げかい)を覗(のぞ)き玉(たま)ふ夜半(よは)
033猪倉山(ゐのくらやま)の渓谷(けいこく)を
034右(みぎ)へ飛(と)び越(こ)え左(ひだり)へ渡(わた)り
035バラモン教(けう)の曲軍(まがいくさ)
036三千(さんぜん)余(よ)騎(き)の屯(たむろ)せる
037岩窟(がんくつ)さして登(のぼ)り行(ゆ)く
038ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
039神(かみ)の力(ちから)を身(み)に受(う)けて
040醜(しこ)の雲霧(くもきり)悉(ことごと)く
041治国別(はるくにわけ)の一行(いつかう)が
042昼(ひる)尚(なほ)暗(くら)き松林(まつばやし)
043心(こころ)も清(きよ)き松彦(まつひこ)や
044聖地(せいち)を後(あと)に竜彦(たつひこ)の
045司(つかさ)と共(とも)にスタスタと
046辿(たど)りて登(のぼ)る夜(よる)の道(みち)
047万公司(まんこうつかさ)は肩肱(かたひぢ)を
048張(は)つて先頭(せんとう)に立(た)ち乍(なが)ら
049尾(を)の上(へ)を渡(わた)る風(かぜ)の如(ごと)
050谷(たに)の流(なが)れの速(はや)き如(ごと)
051習(なら)ひ覚(おぼ)えし宣伝歌(せんでんか)
052四辺(あたり)の山彦(やまびこ)威喝(ゐかつ)して
053勢込(いきほひこ)んで登(のぼ)り行(ゆ)く
054鬼春別(おにはるわけ)や久米彦(くめひこ)の
055軍(いくさ)の君(きみ)に捉(とら)はれて
056岩窟(いはや)の中(なか)の陥穽(おとしあな)
057聞(き)くも悲惨(ひさん)な境遇(きやうぐう)に
058おかれし四(よ)人(にん)の肉体(にくたい)を
059救(すく)ひ出(いだ)すは此(この)時(とき)と
060岩(いは)の根(ね)木(き)の根(ね)踏(ふ)みさくみ
061漸(やうや)く岩窟(いはや)に辿(たど)り着(つ)き
062治国別(はるくにわけ)と諸共(もろとも)に
063神(かみ)の力(ちから)に守(まも)られて
064軍(いくさ)の君(きみ)を言向(ことむ)けつ
065四(よ)人(にん)を救(すく)ひスタスタと
066猪倉山(ゐのくらやま)を駆(か)け下(くだ)り
067玉木(たまき)の村(むら)のテームスが
068館(やかた)を指(さ)して帰(かへ)り行(ゆ)く
069五十五(ごじふご)巻(くわん)の物語(ものがたり)
070天津(あまつ)日(ひ)の神(かみ)中空(ちうくう)に
071輝(かがや)き玉(たま)へど風(かぜ)寒(さむ)き
072竜宮館(りうぐうやかた)に横(よこ)たはり
073十一(じふいち)日(にち)の四(よ)つ時(どき)に
074四角(しかく)な火鉢(ひばち)を横(よこ)におき
075焜爐(こんろ)のゴトゴト沸(たぎ)る音(おと)
076いと面白(おもしろ)く聞(き)き乍(なが)ら
077四角(しかく)の炬燵(こたつ)に潜(もぐ)りこみ
078四角(しかく)な座布団(ざぶとん)積(つ)み重(かさ)ね
079枕(まくら)となして述(の)べて行(ゆ)く
080吾(あが)言霊(ことたま)の発射(はつしや)をば
081万年筆(まんねんひつ)を手(て)に握(にぎ)り
082四角(しかく)な机(つくゑ)に寄(よ)りかかり
083只(ただ)一言(ひとこと)も洩(も)らさじと
084手具脛(てぐすね)ひいて松村(まつむら)氏(し)
085心(こころ)真澄(ますみ)の空(そら)清(きよ)く
086いとスクスクと記(しる)し行(ゆ)く
087五六七(みろく)の神(かみ)の物語(ものがたり)
088いよいよ茲(ここ)につけとむる
089ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
090御霊(みたま)の恩頼(ふゆ)を賜(たま)へかし
091花(はな)咲(さ)き鳥(とり)は君ケ代(きみがよ)の
092栄(さか)えを唄(うた)ふ春(はる)過(す)ぎて
093青葉(あをば)もそよぐ初夏(しよか)の風(かぜ)
094川(かは)の流(なが)れも泡(あわ)立(た)ちて
095ライオン河(がは)に上(のぼ)る鮎(あゆ)
096小鮒(こぶな)や鰻(うなぎ)鯰(なまず)まで
097ピンピンシヤンと溌(は)ね乍(なが)ら
098一瀉(いつしや)千里(せんり)に遡(さかのぼ)る
099瑞(みづ)の御霊(みたま)の物語(ものがたり)
100今(いま)より三十五万(さんじふごまん)年(ねん)
101三五教(あななひけう)の神人(かみびと)の
102舎身(しやしん)苦行(くぎやう)の有様(ありさま)を
103述(の)べゆく今日(けふ)こそ楽(たの)しけれ
104旭(あさひ)は照(て)る共(とも)曇(くも)る共(とも)
105月(つき)は盈(み)つ共(とも)虧(か)くる共(とも)
106仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)む共(とも)
107吾(あが)言霊(ことたま)の寿(ことぶき)は
108幾万(いくまん)年(ねん)の末(すゑ)までも
109堅磐(かきは)常磐(ときは)に失(う)せざらむ
110此(この)世(よ)を救(すく)ふ生神(いきがみ)の
111貴(うづ)の言霊(ことたま)滔々(たうたう)と
112千代(ちよ)に八千代(やちよ)に流(なが)れゆく
113其(その)水上(みなかみ)の一滴(ひとしづく)
114万年筆(まんねんひつ)の切先(きつさき)に
115滴(したた)る露(つゆ)の御(おん)恵(めぐみ)
116渇(かわ)き果(は)てたる霊(みたま)をば
117霑(うるほ)ひ活(い)かす物語(ものがたり)
118守(まも)らせ玉(たま)へ惟神(かむながら)
119御稜威(みいづ)も高(たか)き大八洲(おほやしま)彦(ひこ)
120神(かみ)の命(みこと)の御(おん)前(まへ)に
121畏(かしこ)み畏(かしこ)み願(ね)ぎまつる。
122 敗軍(はいぐん)の大将(たいしやう)、123退却(たいきやく)の名人(めいじん)、124色情狂(しきじやうきやう)に等(ひと)しき鬼春別(おにはるわけ)、125久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)は、126今度(こんど)こそは如何(いか)なる敵(てき)の襲来(しふらい)も恐(おそ)るる事(こと)なき金城(きんじやう)鉄壁(てつぺき)と、127心(こころ)を許(ゆる)し、128猪倉山(ゐのくらやま)の岩窟(がんくつ)に、129玉木(たまき)の村(むら)の豪農(がうのう)テームスの娘(むすめ)、130スミエル、131スガールの二女(にぢよ)を誘拐(いうかい)し、132権威(けんゐ)に任(まか)せ、133獣欲(じうよく)劣情(れつじやう)を発揮(はつき)せむと軍務(ぐんむ)を打忘(うちわす)れ、134両将軍(りやうしやうぐん)は互(たがひ)に恋(こひ)を争(あらそ)ひつつ、135心(こころ)を悩(なや)ませ、136競争(きやうそう)の真最中(まつさいちう)、137三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)道晴別(みちはるわけ)に踏(ふ)み込(こ)まれ、138周章(しうしやう)狼狽(らうばい)の結果(けつくわ)奇計(きけい)を以(もつ)て四(よ)人(にん)の男女(だんぢよ)を深(ふか)き陥穽(おとしあな)に投込(なげこ)み、139又(また)もや何(いづ)れかの婦女(ふぢよ)を誘拐(いうかい)し、140恋(こひ)の欲望(よくばう)を達(たつ)せむと、141心(こころ)を悩(なや)ます折(をり)もあれ、142治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)に、143夜中(やちう)踏(ふ)み込(こ)まれ、144二度(にど)ビツクリの結果(けつくわ)、145いよいよ前非(ぜんぴ)を悔(く)い丸腰(まるごし)となつて、146治国別(はるくにわけ)に謝罪(しやざい)をなし、147卑怯(ひけふ)未練(みれん)にも山寨(さんさい)を捨(す)てて、148四(よ)人(にん)の男女(だんぢよ)を負(お)ひ、149玉木村(たまきむら)のテームスが館(やかた)に、150恐(おそ)る恐(おそ)る謝罪(しやざい)を兼(かね)て行(ゆ)く事(こと)となつた。
151 治国別(はるくにわけ)は鬼春別(おにはるわけ)久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)に向(むか)ひ、
152治国(はるくに)『ゼネラルの御(ご)威勢(ゐせい)、153御(ご)芳名(はうめい)は予(かね)て承(うけたま)はつて居(を)りましたが、154親(した)しくお目(め)にかかるのは今日(けふ)が初(はじ)めてで厶(ござ)います。155先(ま)づ先(ま)づ御(ご)両所(りやうしよ)共(とも)、156御(ご)壮健(さうけん)にてお目出度(めでた)う厶(ござ)います。157斯(か)くなる上(うへ)は四海(しかい)同胞(どうはう)、158元(もと)より拙者(せつしや)とゼネラルとの間(あひだ)に於(おい)て、159何(なん)の怨恨(えんこん)もなければ面倒(めんだう)なる経緯(いきさつ)もありませぬ。160同(おな)じ天地(てんち)の間(あひだ)に生(せい)を享(う)けたる神(かみ)の御子(みこ)、161どうか、162今後(こんご)は宜(よろ)しく互(たがひ)に御(ご)懇親(こんしん)を願(ねが)ひたう厶(ござ)います。163敵(てき)なきに軍隊(ぐんたい)を動(うご)かし、164或(あるひ)は小(ちひ)さき欲望(よくばう)の為(ため)、165一人(ひとり)の暴虐者(ぼうぎやくしや)の為(ため)に従僕(じゆうぼく)となつて、166豺狼(さいらう)に等(ひと)しき戦(たたかひ)に従(したが)ふは、167人間(にんげん)として之(これ)以上(いじやう)の悲惨事(ひさんじ)はありますまい。168人生(じんせい)僅(わづ)か三百(さんびやく)年(ねん)、169此(この)短(みじか)き生命(せいめい)の間(うち)に、170不老(ふらう)不死(ふし)なる第二(だいに)の霊界(れいかい)に於(お)ける生涯(しやうがい)の為(ため)に、171遺憾(ゐかん)なき準備(じゆんび)をしておかねば、172人間(にんげん)として現世(げんせ)に生(うま)れ来(きた)りし本分(ほんぶん)を永遠(ゑいゑん)に保持(ほぢ)する事(こと)は出来(でき)ますまい。173人(ひと)は遷善(せんぜん)改過(かいくわ)の神性(しんしやう)を惟神(かむながら)的(てき)に、174神(かみ)より賦与(ふよ)されて居(を)りますから、175今(いま)此(この)時(とき)に於(おい)て懺悔(ざんげ)の生活(せいくわつ)に入(い)り、176神(かみ)の御子(みこ)たる本分(ほんぶん)を発揮(はつき)されむ事(こと)を希望(きばう)致(いた)します』
177鬼春(おにはる)『ハイ有難(ありがた)う厶(ござ)います。178今日(こんにち)となつて吾々(われわれ)も始(はじ)めて天地(てんち)開明(かいめい)の気分(きぶん)になりました。179尊(たふと)き有難(ありがた)き神(かみ)の慈光(じくわう)に照(て)らされて、180今(いま)迄(まで)為(な)し来(きた)りし暴虐(ばうぎやく)無道(ぶだう)の行動(かうどう)が、181俄(にはか)に恐(おそ)ろしくなり、182広(ひろ)い天地(てんち)に身(み)の置(お)き所(どころ)なき苦(くるし)みに悶(もだ)えて居(を)ります。183一日(いちじつ)も早(はや)く悔(く)い改(あらた)め、184誠(まこと)の道(みち)に立帰(たちかへ)りたう厶(ござ)ります。185何分(なにぶん)宜(よろ)しく御(ご)指導(しだう)を御(お)願(ねがひ)致(いた)します』
186久米(くめ)『治国別(はるくにわけ)の神司(かむつかさ)様(さま)を始(はじ)め、187御(ご)一同(いちどう)様(さま)に謹(つつし)んで、188鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)同様(どうやう)に、189吾(わが)身(み)を御(ご)指導(しだう)下(くだ)さらむ事(こと)を懇願(こんぐわん)致(いた)します。190実(じつ)に只今(ただいま)の拙者(せつしや)の心(こころ)は闇(やみ)を離(はな)れて旭(あさひ)に向(むか)つた様(やう)な気分(きぶん)になりました。191そして神(かみ)様(さま)の神力(しんりき)に打(う)たれて、192身(み)の置(お)き所(どころ)もなき程(ほど)恥(はづか)しく苦(くる)しくなつてきました。193何卒(なにとぞ)三五(あななひ)の尊(たふと)き教(をしへ)を御(ご)指導(しだう)あらむ事(こと)を、194謹(つつし)んでお願(ねがひ)致(いた)します』
195万公(まんこう)『モシ先生(せんせい)、196眉毛(まゆげ)に唾(つば)をつけてお聞(き)きなさいませや、197第二(だいに)の高姫(たかひめ)かも知(し)れませぬぞや。198……怖(こは)さ苦(くる)しさの改心(かいしん)は何(なん)にもならぬぞよ。199心(こころ)から発根(ほつこん)の改心(かいしん)でなければ、200すぐに後(あと)へ戻(もど)るから、201何程(なにほど)うまい事(こと)を申(まを)しても、202メツタに乗(の)るではないぞよ……とお筆先(ふでさき)に出(で)て居(を)りますぞや。203万公(まんこう)が一寸(ちよつと)御(ご)注意(ちゆうい)を致(いた)します』
204竜公(たつこう)『コリヤ万公(まんこう)、205お前(まへ)の分(わか)る事(こと)ぢやない。206黙(だま)つて控(ひか)えて居(ゐ)なさい』
207万公(まんこう)『ヘン、208偉相(えらさう)に仰有(おつしや)いますなア。209夢(ゆめ)の内(うち)に第一(だいいち)天国(てんごく)を探険(たんけん)したと思(おも)うて、210さう威張(ゐば)るものぢやありませぬぞや』
211治国(はるくに)『ゼネラル様(さま)、212然(しか)らば之(これ)より四(よ)人(にん)の男女(だんぢよ)が少(すこ)し許(ばか)り負傷(ふしやう)して居(を)りますれば、213兎(と)も角(かく)玉木村(たまきむら)のテームス館(やかた)迄(まで)送(おく)らねばなりますまい、214貴方(あなた)も一緒(いつしよ)に参(まゐ)りませう』
215鬼春(おにはる)『ハイ、216是非(ぜひ)お供(とも)をさして頂(いただ)きませう。217付(つ)いては四(よ)人(にん)を負傷(ふしやう)さしましたのも、218全(まつた)く吾々(われわれ)で厶(ござ)いますから、219此(この)山阪(やまさか)を背(せ)に負(お)ひ申(まを)して送(おく)らして貰(もら)ひませう』
220治国(はるくに)『左様(さやう)な事(こと)をなさらいでも、221貴方(あなた)の家来(けらい)も沢山(たくさん)あるでせう』
222鬼春(おにはる)『イエイエ何程(なにほど)家来(けらい)があつても、223家来(けらい)の知(し)つた事(こと)ではありませぬ。224又(また)今日(こんにち)只(ただ)今(いま)改心(かいしん)を致(いた)しました上(うへ)は、225一(いち)人(にん)の家来(けらい)も持(も)ちませぬ。226何卒(どうぞ)罪亡(つみほろ)ぼしに、227道晴別(みちはるわけ)様(さま)の馬(うま)となつて背(せ)に乗(の)せ、228送(おく)り届(とど)けさして貰(もら)ひませう。229之(これ)がせめてもの拙者(せつしや)の罪亡(つみほろ)ぼし、230枉(ま)げてお許(ゆる)しを願(ねが)ひます』
231治国(はるくに)『然(しか)らばお望(のぞ)みに任(まか)しませう』
232久米(くめ)『拙者(せつしや)はシーナさまを背(せ)に負(お)ひ、233お供(とも)を致(いた)しませう』
234万公(まんこう)『拙者(せつしや)はスガールさまを背(せ)に負(お)うてお送(おく)り致(いた)しませう』
235久米(くめ)『ヤ、236滅相(めつさう)な、237スガールさまはエミシに負(お)はせませう』
238鬼春(おにはる)『オイ、239スパール、240お前(まへ)も責任(せきにん)がないとは言(い)へぬ。241何卒(どうぞ)スミエルさまを背(せ)に負(お)うてお送(おく)り申(まを)すやうにしてくれ』
242万公(まんこう)『モシ先生(せんせい)、243何程(なにほど)改心(かいしん)したと云(い)つても、244こんな半獣(はんじう)的(てき)豪傑(がうけつ)に女(をんな)を渡(わた)すのは剣呑(けんのん)です。245一人(ひとり)は背(せ)に負(お)ひ、246一人(ひとり)は拙者(せつしや)が手(て)を曳(ひ)いて、247送(おく)りますから、248婦人部(ふじんぶ)は此(この)万公(まんこう)に御(ご)委任(ゐにん)を願(ねが)ひます。249油断(ゆだん)のならぬ男(をとこ)許(ばか)りですからなア』
250治国(はるくに)『アハハハ、251万公(まんこう)なら、252尚(なほ)剣呑(けんのん)だ。253兎(と)も角(かく)鬼春別(おにはるわけ)様(さま)の御(ご)意見(いけん)に任(まか)す事(こと)にする』
254万公(まんこう)『ヘーエ、255さうですかなア、256……コレ松彦(まつひこ)さま、257貴方(あなた)何(ど)う考(かんが)へますか、258どうもマ一(ひと)つ此(この)万公(まんこう)は油断(ゆだん)がならないやうな気(き)がしますがなア』
259松彦(まつひこ)『さうだ、260万公(まんこう)位(くらゐ)油断(ゆだん)のならぬ男(をとこ)はないだらう、261アハハハ』
262 鬼春別(おにはるわけ)はシヤム、263マルタのカーネルを招(よ)んで自分(じぶん)が愈(いよいよ)前非(ぜんぴ)を後悔(こうくわい)し、264三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)し、265普通(ふつう)の信者(しんじや)となつて、266神(かみ)の為(ため)世(よ)の為(ため)に相当(さうたう)の働(はたら)きをなし、267世(よ)に隠(かく)るる事(こと)を告(つ)げ、268軍隊(ぐんたい)一般(いつぱん)に向(むか)つて其(その)由(よし)を伝達(でんたつ)せしめ、269且(か)つ何(いづ)れも本国(ほんごく)に帰(かへ)つて、270正道(せいだう)につき各(おのおの)其(その)家業(かげふ)を励(はげ)むべき事(こと)を伝達(でんたつ)せしめた。271三千(さんぜん)の軍隊(ぐんたい)は案(あん)に相違(さうゐ)の命令(めいれい)に呆(あき)れ果(は)て、272喜(よろこ)んで帰(かへ)るものもあり、273又(また)ブツブツ小言(こごと)を云(い)つて自由(じいう)自在(じざい)に本国(ほんごく)へは帰(かへ)らず、274思(おも)ひ思(おも)ひの事業(じげふ)を考(かんが)へ、275身(み)の振方(ふりかた)を定(さだ)むるもあり、276種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)の方向(はうかう)に向(むか)つて別(わか)れ行(ゆ)く事(こと)となつた。277されど素(もと)より烏合(うがふ)の衆(しう)のみなれば残党(ざんたう)を集(あつ)めて、278今(いま)一戦(ひといくさ)を起(おこ)し、279バラモンの教主(けうしゆ)大黒主(おほくろぬし)の為(ため)に一肌(ひとはだ)脱(ぬ)がむとする勇者(ゆうしや)も出(で)なかつたのは、280天下(てんか)の為(ため)に幸(さいはひ)である。
281 治国別(はるくにわけ)は先(ま)づ第一(だいいち)に岩窟(がんくつ)を出(い)で、282数多(あまた)の軍人(ぐんじん)が各(かく)解散(かいさん)の命(めい)を受(う)けて、283一言(ひとこと)も呟(つぶや)かず抵抗(ていかう)もせず素直(すなほ)に帰(かへ)り行(ゆ)くを見(み)て、284全(まつた)く大神(おほかみ)の御(ご)神力(しんりき)と、285大地(だいち)に静座(せいざ)し、286三五教(あななひけう)を守(まも)り玉(たま)ふ大神(おほかみ)を始(はじ)め、287バラモン神(しん)及(および)盤古(ばんこ)神王(しんわう)の厚(あつ)き守護(しゆご)を感謝(かんしや)し、288愈(いよいよ)猪倉山(ゐのくらやま)を一行(いつかう)十二(じふに)人(にん)降(くだ)り行(ゆ)く。
289(大正一二・二・二六 旧一・一一 於竜宮館 松村真澄録)
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