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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第55巻(午の巻)
序文
総説歌
第1篇 奇縁万情
第1章 心転
第2章 道謡
第3章 万民
第4章 真異
第5章 飯の灰
第6章 洗濯使
第2篇 縁三寵望
第7章 朝餉
第8章 放棄
第9章 三婚
第10章 鬼涙
第3篇 玉置長蛇
第11章 経愕
第12章 霊婚
第13章 蘇歌
第14章 春陽
第15章 公盗
第16章 幽貝
第4篇 法念舞詩
第17章 万巌
第18章 音頭
第19章 清滝
第20章 万面
第21章 嬉涙
第22章 比丘
余白歌
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(B)
(N)
幽貝 >>>
第一五章
公盗
(
こうたう
)
〔一四二三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
篇:
第3篇 玉置長蛇
よみ(新仮名遣い):
たまきちょうだ
章:
第15章 公盗
よみ(新仮名遣い):
こうとう
通し章番号:
1423
口述日:
1923(大正12)年03月04日(旧01月17日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
鬼春別以下三人のバラモン組は、宣伝使と俗人の中間的立場である比丘となり、長髪を剃り落され、黒衣を仕立てて金剛杖をつきながら、照国山のビクトル山の谷あいに山伏の修業をなすべく、軍用に使っていたほら貝を吹き立てながら出立していった。
鬼春別は治道居士、久米彦は道貫居士、スパールは素道居士、エミシは求道居士という戒名が与えられた。新米の比丘たちは、治国別け一行や玉置村の人々と別れの歌を交わし、進んで行った。
一同は北の森の祠で野宿をすることになった。夜分、祠の後ろから人声がするのを聞きつけて、治道居士は耳をすませた。聞けば、解散したバラモン軍の兵士たちが、今後の身の振り方を相談しているところだった。盗賊になって一旗揚げようとする三人に反対し、二人が国へ帰ると言って逃げて行った。
治道居士はやにわに数珠をつまぐりながら声も涼しく経文を唱え始めた。三人の元兵士のなり立て盗賊たちは、声をたよりに治道居士を取り囲むと、ベル、シヤル、ヘルと名乗り、金品持ち物を出すようにと凄んだ。
治道居士は、衣類を渡すのは困るから、金をやる代わりに国へ帰って正業に就くようにと諭した。ベルは、帰りの旅費や国へ帰って商売をする元手を計算すると、一人千三百両は要ると治道居士に強要した。
治道居士は、そんな端数ではなく三人まとめて五千両やるから手を出せと言った。ベルは恐る恐る手を出したが、治道居士にぐっと掴まれてしまい、悲鳴を上げている。
治道居士は、約束した以上は金はやると安堵し、おもしろいことが起きていると他の居士たちを起こした。道貫は、実は寝ているふりをして様子をうかがっていたと笑い、自分も千両を与えた。
ベル、シヤル、ヘルの三人は、六千両を三等分し、居士たちにお礼を述べて去って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-05-27 02:10:58
OBC :
rm5515
愛善世界社版:
188頁
八幡書店版:
第10輯 103頁
修補版:
校定版:
198頁
普及版:
83頁
初版:
ページ備考:
001
鬼春別
(
おにはるわけ
)
以下
(
いか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
のバラモン
組
(
ぐみ
)
は
治国別
(
はるくにわけ
)
に
許
(
ゆる
)
されて、
002
宣伝使
(
せんでんし
)
と
俗人
(
ぞくじん
)
との
中間
(
ちうかん
)
的
(
てき
)
比丘
(
びく
)
となりスツパリと
長髪
(
ちやうはつ
)
を
剃
(
そ
)
りおとされ、
003
テームスの
心遣
(
こころづか
)
ひに
依
(
よ
)
つて、
004
黒衣
(
くろごろも
)
を
仕立
(
した
)
てて
着
(
き
)
せられ、
005
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
006
照国山
(
てるくにやま
)
ビクトル
山
(
さん
)
の
谷間
(
たにあひ
)
に
山伏
(
やまぶし
)
の
修業
(
しうげふ
)
をなすべく、
007
軍用
(
ぐんよう
)
に
使
(
つか
)
つた
法螺
(
ほら
)
の
貝
(
かひ
)
をブウブウと
吹立
(
ふきた
)
て
乍
(
なが
)
ら、
008
道々
(
みちみち
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
009
鬼春別
(
おにはるわけ
)
には
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
010
久米彦
(
くめひこ
)
には
道貫
(
だうくわん
)
居士
(
こじ
)
、
011
スパールには
素道
(
そだう
)
居士
(
こじ
)
、
012
エミシには
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
といふ
戒名
(
かいみやう
)
を
与
(
あた
)
へた。
013
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は
今
(
いま
)
や
治国別
(
はるくにわけ
)
、
014
テームス
其
(
その
)
他
(
た
)
一同
(
いちどう
)
に
別
(
わか
)
れを
告
(
つ
)
げむとして
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
んだ。
015
治道
(
ちだう
)
『
皇神
(
すめかみ
)
の
授
(
さづ
)
け
給
(
たま
)
ひし
霊魂
(
みたま
)
をば
016
治
(
をさ
)
めむとして
教
(
のり
)
の
道
(
みち
)
ゆく。
017
いざさらば
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
よテームスよ
018
安
(
やす
)
くましませ
千代
(
ちよ
)
に
八千代
(
やちよ
)
に』
019
治国別
(
はるくにわけ
)
『
大神
(
おほかみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
を
踏
(
ふ
)
みしめて
020
安
(
やす
)
く
行
(
ゆ
)
きませ
清
(
きよ
)
めの
滝
(
たき
)
へ』
021
道貫
(
だうくわん
)
『
玉鉾
(
たまほこ
)
の
道
(
みち
)
の
誠
(
まこと
)
を
貫
(
つらぬ
)
きて
022
神
(
かみ
)
の
御楯
(
みたて
)
と
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ。
023
神司
(
かむづかさ
)
此
(
この
)
家
(
や
)
の
主
(
あるじ
)
諸共
(
もろとも
)
に
024
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を』
025
テームス『
三五
(
あななひ
)
の
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
目醒
(
めざ
)
めたる
026
人
(
ひと
)
こそ
神
(
かみ
)
の
幸
(
さち
)
を
受
(
う
)
けなむ』
027
素道
(
そだう
)
『
惟神
(
かむながら
)
元
(
もと
)
の
心
(
こころ
)
に
立返
(
たちかへ
)
り
028
救
(
すく
)
ひの
道
(
みち
)
を
進
(
すす
)
みゆくかな。
029
猪倉
(
ゐのくら
)
の
山
(
やま
)
にこもりし
曲神
(
まがかみ
)
も
030
神
(
かみ
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
てら
)
されて
行
(
ゆ
)
く』
031
松彦
(
まつひこ
)
『
皇神
(
すめかみ
)
の
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
たる
君
(
きみ
)
こそは
032
安
(
やす
)
く
行
(
ゆ
)
きませ
神
(
かみ
)
のまにまに』
033
求道
(
きうだう
)
『
朝夕
(
あさゆふ
)
に
誠
(
まこと
)
の
教
(
のり
)
を
求
(
もと
)
めつつ
034
今日
(
けふ
)
は
嬉
(
うれ
)
しき
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
く。
035
諸人
(
もろびと
)
よ
安
(
やす
)
くましませ
吾
(
われ
)
去
(
さ
)
りし
036
あとにも
神
(
かみ
)
を
崇
(
あが
)
めまつりて』
037
竜彦
(
たつひこ
)
『
皇神
(
すめかみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
受
(
う
)
けてテームスの
038
館
(
やかた
)
を
出
(
い
)
づる
人
(
ひと
)
ぞ
尊
(
たふと
)
き』
039
万公
(
まんこう
)
『いざさらば
四柱
(
よはしら
)
の
君
(
きみ
)
健
(
すこやか
)
に
040
身
(
み
)
を
守
(
まも
)
りつつ
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へよ』
041
道晴別
(
みちはるわけ
)
『
惟神
(
かむながら
)
神
(
かみ
)
の
正道
(
まさみち
)
わけゆけば
042
醜
(
しこ
)
の
曲津
(
まがつ
)
もさわらざらまし』
043
シーナ『
君
(
きみ
)
行
(
ゆ
)
かばあとに
残
(
のこ
)
りし
吾々
(
われわれ
)
は
044
淋
(
さび
)
しさに
鳴
(
な
)
く
時鳥
(
ほととぎす
)
かな。
045
さり
乍
(
なが
)
ら
治国別
(
はるくにわけ
)
がましまさば
046
安
(
やす
)
く
出
(
い
)
でませ
心
(
こころ
)
残
(
のこ
)
さで』
047
スミエル『
益良夫
(
ますらを
)
が
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
を
立直
(
たてなほ
)
し
048
鞭
(
むち
)
うち
進
(
すす
)
む
今日
(
けふ
)
ぞ
勇
(
いさ
)
まし』
049
スガール『
時
(
とき
)
めきし
軍
(
いくさ
)
の
君
(
きみ
)
も
三五
(
あななひ
)
の
050
神
(
かみ
)
の
軍
(
いくさ
)
に
仕
(
つか
)
へ
玉
(
たま
)
ひぬ』
051
アヅモス『
皇神
(
すめかみ
)
の
縁
(
えにし
)
の
糸
(
いと
)
に
結
(
むす
)
ばれし
052
親
(
した
)
しき
友
(
とも
)
を
送
(
おく
)
る
今日
(
けふ
)
哉
(
かな
)
』
053
アーシス『テームスの
館
(
やかた
)
に
残
(
のこ
)
る
吾
(
わが
)
身
(
み
)
こそ
054
君
(
きみ
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
を
惜
(
をし
)
みつつ
泣
(
な
)
く』
055
お
民
(
たみ
)
『
国民
(
くにたみ
)
を
天津
(
あまつ
)
御国
(
みくに
)
に
救
(
すく
)
ふべく
056
出
(
い
)
でます
今日
(
けふ
)
の
姿
(
すがた
)
雄々
(
をを
)
しき』
057
治道
(
ちだう
)
『
有難
(
ありがた
)
し
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
の
真心
(
まごころ
)
は
058
幾千代
(
いくちよ
)
迄
(
まで
)
も
忘
(
わす
)
れざらまし』
059
と
互
(
たがひ
)
に
歌
(
うた
)
もて
応答
(
おうたふ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
060
円頂
(
ゑんちやう
)
緇衣
(
しえ
)
の
四人
(
よにん
)
連
(
づ
)
れ
法螺貝
(
ほらがひ
)
をブウブウ
吹
(
ふ
)
きたて、
061
山野
(
さんや
)
の
空気
(
くうき
)
を
清
(
きよ
)
め
乍
(
なが
)
ら、
062
別
(
わか
)
れを
惜
(
を
)
しみ
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
063
三千
(
さんぜん
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
を
引率
(
いんそつ
)
し
064
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
に
屯
(
たむろ
)
して
065
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひし
将軍
(
しやうぐん
)
も
066
忽
(
たちま
)
ち
悔悟
(
くわいご
)
の
花
(
はな
)
開
(
ひら
)
き
067
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
嬉
(
うれ
)
しみて
068
治国別
(
はるくにわけ
)
に
服
(
まつろ
)
ひつ
069
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男女
(
なんによ
)
を
恙
(
つつが
)
なく
070
テームス
館
(
やかた
)
に
送
(
おく
)
りつけ
071
至玄
(
しげん
)
至妙
(
しめう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
072
心
(
こころ
)
に
深
(
ふか
)
く
刻
(
きざ
)
みこみ
073
昨日
(
きのふ
)
に
変
(
かは
)
る
修験者
(
しうげんじや
)
074
山伏姿
(
やまぶしすがた
)
となり
変
(
かは
)
り
075
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
を
力
(
ちから
)
とし
076
細
(
ほそ
)
き
野道
(
のみち
)
を
辿
(
たど
)
りつつ
077
世間心
(
せけんごころ
)
や
自愛心
(
じあいしん
)
078
秋
(
あき
)
の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
凩
(
こがらし
)
に
079
散
(
ち
)
りて
跡
(
あと
)
なき
真心
(
まごころ
)
の
080
衣
(
ころも
)
の
袖
(
そで
)
を
科戸辺
(
しなどべ
)
の
081
風
(
かぜ
)
にフワフワいぢらせつ
082
大
(
おほ
)
法螺貝
(
ほらがひ
)
を
吹
(
ふ
)
き
乍
(
なが
)
ら
083
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
んで
北
(
きた
)
の
森
(
もり
)
084
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
085
暫
(
しば
)
し
息
(
いき
)
をば
休
(
やす
)
めける
086
日
(
ひ
)
はズツポリと
暮
(
く
)
れ
果
(
は
)
てて
087
咫尺
(
しせき
)
弁
(
べん
)
ぜぬ
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
088
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はここに
一夜
(
いちや
)
をば
089
明
(
あか
)
さむものと
蓑
(
みの
)
を
布
(
し
)
き
090
まどろむ
折
(
をり
)
しも
古
(
ふる
)
ぼけた
091
祠
(
ほこら
)
の
後
(
うしろ
)
に
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
092
耳
(
みみ
)
にとめたる
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
093
ハテ
訝
(
いぶ
)
かしと
窺
(
うかが
)
へば
094
濁
(
にご
)
りを
帯
(
お
)
びた
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
095
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
五
(
いつ
)
つ
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る。
096
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は、
097
他愛
(
たあい
)
もなく
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
寝
(
ね
)
てゐるのを、
098
寝息
(
ねいき
)
にて
悟
(
さと
)
り
乍
(
なが
)
ら、
099
自分
(
じぶん
)
は
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
怪
(
あや
)
しき
声
(
こゑ
)
に
眠
(
ねむ
)
られず、
100
耳
(
みみ
)
をすまして
聞
(
き
)
いてゐた。
101
祠
(
ほこら
)
の
後
(
うしろ
)
からはだんだん
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
だした。
102
甲
(
かふ
)
『オイ、
103
サツパリ
約
(
つ
)
まらぬぢやないか、
104
エエン、
105
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
106
折角
(
せつかく
)
俺
(
おれ
)
は
軍曹
(
ぐんさう
)
にまでなつたと
思
(
おも
)
へば、
107
肝心
(
かんじん
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
腰抜
(
こしぬけ
)
だから、
108
あの
通
(
とほ
)
り
惨
(
みじ
)
めな
態
(
ざま
)
になり、
109
三五教
(
あななひけう
)
にスツパリと
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、
110
チツと
許
(
ばか
)
りの
涙金
(
なみだきん
)
位
(
ぐらゐ
)
貰
(
もら
)
つたつて、
111
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
妻子
(
さいし
)
を
養
(
やしな
)
ふ
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
112
これからどう
身
(
み
)
の
振方
(
ふりかた
)
を
考
(
かんが
)
へたらよからうかな』
113
乙
(
おつ
)
『
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
斬
(
き
)
り
取
(
と
)
り
強盗
(
がうたう
)
の
軍国
(
ぐんこく
)
主義
(
しゆぎ
)
に
育
(
そだ
)
てられて
来
(
き
)
たものだから、
114
今更
(
いまさら
)
外
(
ほか
)
の
職業
(
しよくげう
)
につかうと
云
(
い
)
つたつて、
115
何
(
なん
)
にも
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
116
泥棒
(
どろばう
)
になるのも、
117
バラモン
軍
(
ぐん
)
の
兵士
(
へいし
)
になるのも、
118
名
(
な
)
こそ
違
(
ちが
)
へ
大小
(
だいせう
)
の
区別
(
くべつ
)
がある
丈
(
だけ
)
だ。
119
追剥
(
おひは
)
ぎをして
人
(
ひと
)
を
裸
(
はだか
)
にするのも、
120
沢山
(
たくさん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
率
(
つ
)
れて
敵国
(
てきこく
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
し、
121
他人
(
たにん
)
の
国
(
くに
)
を
併呑
(
へいどん
)
するのもヤツパリ
泥棒
(
どろばう
)
だ。
122
幸
(
さいはひ
)
に
斯
(
か
)
うして
軍刀
(
ぐんたう
)
を
持
(
も
)
つてゐるのだから、
123
一
(
ひと
)
つ
馬賊団
(
ばぞくだん
)
でも
組織
(
そしき
)
して
大
(
おほい
)
に
発展
(
はつてん
)
せうぢやないか』
124
丙
(
へい
)
『オイ
両人
(
りやうにん
)
、
125
そんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ふものぢやない。
126
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
が
下
(
くだ
)
さつた
此
(
この
)
金
(
かね
)
を
倹約
(
しまつ
)
して
帰
(
かへ
)
れば、
127
国許
(
くにもと
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
何
(
なに
)
か
一
(
ひと
)
つの
生産
(
せいさん
)
事業
(
じげふ
)
を
起
(
おこ
)
すとか、
128
真面目
(
まじめ
)
な
商売
(
しやうばい
)
をして、
129
両親
(
りやうしん
)
や
妻子
(
さいし
)
を
喜
(
よろこ
)
ばした
方
(
はう
)
が
何程
(
なにほど
)
可
(
い
)
いか
知
(
し
)
れぬぞ。
130
将軍
(
しやうぐん
)
でさへも
改心
(
かいしん
)
をなさつたのだから、
131
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
之
(
これ
)
を
機会
(
きくわい
)
に
善心
(
ぜんしん
)
に
立返
(
たちかへ
)
らうぢやないか』
132
乙
(
おつ
)
『ヘン
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふない。
133
詐偽
(
さぎ
)
本位
(
ほんゐ
)
の
産業
(
さんげふ
)
や
算盤持
(
そろばんも
)
てば
人
(
ひと
)
を
騙
(
だま
)
さうとする
商売
(
しやうばい
)
が、
134
それが
何
(
なに
)
尊
(
たふと
)
いのだ。
135
産業
(
さんげふ
)
立国
(
りつこく
)
とか
云
(
い
)
つて、
136
ゼントルメンとやらが、
137
盛
(
さかん
)
に
議論
(
ぎろん
)
をしてるやうだが、
138
ヤツパリ
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
も
体
(
てい
)
のよい
泥棒
(
どろばう
)
だ。
139
大会社
(
だいぐわいしや
)
だつて、
140
大商人
(
だいしやうにん
)
だつて、
141
皆
(
みな
)
詐偽
(
さぎ
)
と
泥坊
(
どろばう
)
の
体
(
てい
)
のいい
奴
(
やつ
)
だ。
142
寧
(
むし
)
ろ
陰悪
(
いんあく
)
主義
(
しゆぎ
)
の
実行者
(
じつかうしや
)
だ。
143
泥棒
(
どろばう
)
様
(
さま
)
は
堂々
(
だうだう
)
たる
陽悪
(
やうあく
)
を
行
(
おこな
)
ふのだから、
144
同
(
おな
)
じ
罪悪
(
ざいあく
)
といつても
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いてるぢやないか。
145
善
(
ぜん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
誑
(
たぶら
)
かし、
146
私利
(
しり
)
私欲
(
しよく
)
を
企
(
たく
)
む
位
(
くらゐ
)
、
147
陰険
(
いんけん
)
な
卑怯
(
ひけふ
)
な
悪魔
(
あくま
)
はないぢやないか』
148
丙
(
へい
)
『さう
云
(
い
)
へばさうかも
知
(
し
)
れぬなア、
149
そんなら
俺
(
おれ
)
も
損者
(
そんじや
)
三友
(
さんいう
)
といふ
事
(
こと
)
があるが、
150
損
(
そん
)
か
得
(
とく
)
か
知
(
し
)
らぬが、
151
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
交際
(
つきあい
)
上
(
じやう
)
、
152
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
に
共鳴
(
きようめい
)
して、
153
泥棒
(
どろばう
)
会社
(
くわいしや
)
の
重役
(
ぢうやく
)
にでもならうかなア』
154
乙
(
おつ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
155
吾々
(
われわれ
)
は
益友
(
えきいう
)
だ。
156
益者
(
えきしや
)
三友
(
さんいう
)
だ。
157
オイ、
158
丁
(
てい
)
、
159
戊
(
ぼう
)
、
160
汝
(
きさま
)
は
何
(
ど
)
うだ。
161
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
意見
(
いけん
)
に
共鳴
(
きようめい
)
するか。
162
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より
泥棒
(
どろばう
)
の
開業
(
かいげふ
)
だ。
163
汝
(
きさま
)
不服
(
ふふく
)
とあれば
泥棒
(
どろばう
)
の
初商
(
はつあきな
)
ひに、
164
持物
(
もちもの
)
一切
(
いつさい
)
を
剥
(
は
)
ぎ
取
(
と
)
つてやるから
有難
(
ありがた
)
く
思
(
おも
)
へ』
165
丁
(
てい
)
『そ、
166
そ、
167
そんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふものでない、
168
泥棒
(
どろばう
)
をしたい
者
(
もの
)
は
親
(
おや
)
や
子
(
こ
)
のある
者
(
もの
)
のすることぢやない。
169
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
親
(
おや
)
もあれば
子
(
こ
)
もあるのだから、
170
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
儘
(
まま
)
に
助
(
たす
)
けてくれ。
171
なア
戊
(
ぼう
)
、
172
お
前
(
まへ
)
もさうだらう』
173
戊
(
ぼう
)
『ウン、
174
私
(
わし
)
も
老母
(
らうぼ
)
が
一人
(
ひとり
)
残
(
のこ
)
つてるのだから、
175
親
(
おや
)
一人
(
ひとり
)
子
(
こ
)
一人
(
ひとり
)
だ。
176
「
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
バラモン
大神
(
おほかみ
)
に……
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
が
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
になりますやうに、
177
人
(
ひと
)
の
物
(
もの
)
が
欲
(
ほ
)
しいといふやうな
根性
(
こんじやう
)
になりませぬやうに……と
祈
(
いの
)
つてるから、
178
悪
(
わる
)
い
心
(
こころ
)
は
出
(
だ
)
してくれな」と
家
(
うち
)
を
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
に
俺
(
おれ
)
の
袖
(
そで
)
にすがつて
意見
(
いけん
)
したのだから、
179
これ
丈
(
だけ
)
は
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りたいなア』
180
乙
(
おつ
)
『アハハハハ、
181
腰抜
(
こしぬけ
)
だな。
182
そんなら
今日
(
けふ
)
は
開業祝
(
かいげふいはひ
)
に、
183
汝
(
きさま
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
は
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
てやる。
184
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
懐
(
ふところ
)
に
持
(
も
)
つてゐる
金
(
かね
)
を
半分
(
はんぶん
)
許
(
ばか
)
り
此方
(
こちら
)
へよこせ。
185
大難
(
だいなん
)
を
小難
(
せうなん
)
にまつりかへてやるのだから……』
186
甲
(
かふ
)
『オイ
乙
(
おつ
)
、
187
此奴
(
こいつ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
兄弟
(
きやうだい
)
同様
(
どうやう
)
にしてゐたのだから、
188
スツパリと
許
(
ゆる
)
してやれ、
189
又
(
また
)
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
れば
沢山
(
たくさん
)
人
(
ひと
)
が
通
(
とほ
)
るから、
190
幾
(
いく
)
らでも
商売
(
しやうばい
)
は
出来
(
でき
)
るからのう』
191
乙
(
おつ
)
『オイ、
192
丁
(
てい
)
、
193
戊
(
ぼう
)
両人
(
りやうにん
)
、
194
今日
(
けふ
)
は
見逃
(
みのが
)
してやる。
195
汝
(
きさま
)
に
軍刀
(
ぐんたう
)
を
持
(
も
)
たしておくと、
196
気違
(
きちが
)
ひに
刃物
(
はもの
)
を
持
(
も
)
たしたやうなものだ。
197
なまじひ、
198
道徳
(
だうとく
)
に
捉
(
とら
)
はれて、
199
天下
(
てんか
)
の
為
(
ため
)
に
害悪
(
がいあく
)
を
除
(
のぞ
)
くのだなどと、
200
気
(
き
)
が
狂
(
くる
)
ひ、
201
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
寝首
(
ねくび
)
をかくかも
知
(
し
)
れないから、
202
軍刀
(
ぐんたう
)
を
此方
(
こちら
)
へよこせ』
203
丁
(
てい
)
戊
(
ぼう
)
『これは
故郷
(
こきやう
)
へ
土産
(
みやげ
)
に
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
り、
204
家
(
いへ
)
の
宝
(
たから
)
とするのだから、
205
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
首
(
くび
)
を
狙
(
ねら
)
ふ
気遣
(
きづか
)
ひはない。
206
何卒
(
どうぞ
)
、
207
スツパリと
今日
(
けふ
)
は
見逃
(
みのが
)
してくれ』
208
乙
(
おつ
)
『エ、
209
そんなら、
210
汝
(
きさま
)
と
俺
(
おれ
)
とは
今日
(
けふ
)
から
国交
(
こくかう
)
断絶
(
だんぜつ
)
だ。
211
サ、
212
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
公使館
(
こうしくわん
)
を
引上
(
ひきあ
)
げるのだ。
213
シーツ シーツ シーツ』
214
丁
(
てい
)
『
居留民
(
きよりうみん
)
は
何
(
ど
)
う
致
(
いた
)
しませうかな』
215
乙
(
おつ
)
『エー、
216
キヨル(
居留
(
きよりう
)
)キヨルせずに、
217
早
(
はや
)
く
退却
(
たいきやく
)
せぬかい、
218
汝
(
きさま
)
は
最早
(
もはや
)
敵国
(
てきこく
)
の
人民
(
じんみん
)
だ。
219
シーツ シーツ シーツ』
220
丁戊
(
ていぼう
)
は
暗
(
やみ
)
の
道
(
みち
)
を
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に、
221
星影
(
ほしかげ
)
を
力
(
ちから
)
にし
乍
(
なが
)
ら、
222
命
(
いのち
)
カラガラ
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
223
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は
此
(
この
)
囁
(
ささや
)
きを
聞
(
き
)
いて、
224
数珠
(
じゆず
)
をつまぐり
乍
(
なが
)
ら
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく、
225
治道
(
ちだう
)
『
或
(
わく
)
被
(
ひ
)
悪
(
あく
)
人
(
にん
)
逐
(
ちく
)
堕
(
だ
)
落
(
らく
)
金
(
こん
)
剛
(
がう
)
山
(
せん
)
念
(
ねん
)
彼
(
ぴ
)
観
(
くわん
)
音
(
のん
)
力
(
りき
)
不
(
ふ
)
能
(
のう
)
損
(
そん
)
一
(
いち
)
毛
(
まう
)
226
或
(
わく
)
値
(
ち
)
怨
(
をん
)
賊
(
ぞく
)
繞
(
ねう
)
各
(
かく
)
執
(
しふ
)
刀
(
たう
)
加
(
か
)
害
(
がい
)
念
(
ね
)
彼
(
んぴ
)
観
(
くわん
)
音
(
のん
)
力
(
りき
)
咸
(
げん
)
即
(
そく
)
起
(
き
)
慈
(
じ
)
心
(
しん
)
[
※
底本では漢文に返り点が付いているが、ここでは省略した。これは観音経の一部。訓読文は「或は悪人に逐はれて、金剛山より墜落せんに、彼の観音の力を念ずれば、一毛をも損すること能はず。或は怨賊の遶(めぐ)るに値(あ)ひ。各々刀を執つて害を加へられんに、彼の観音の力を念ずれば、咸(み)な即ち慈心を起さむ」釈宗演・述『観音経講話』大正7年、261頁より(https://dl.ndl.go.jp/pid/943693/1/145)
]
』
227
と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
念
(
ねん
)
じ
出
(
だ
)
した。
228
甲
(
かふ
)
『オイ、
229
何
(
なん
)
だか
気
(
き
)
にくわぬ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふぢやないか。
230
観音
(
くわんのん
)
の
力
(
ちから
)
を
念
(
ねん
)
じたら、
231
賊
(
ぞく
)
が
忽
(
たちま
)
ち
改心
(
かいしん
)
すると
云
(
い
)
つてゐやがるやうだ。
232
オイ
何
(
なん
)
だか
幸先
(
さいさき
)
を
折
(
を
)
られたやうで、
233
余
(
あま
)
り
気持
(
きもち
)
が
宜
(
よ
)
うないぢやないか、
234
チツとコラ、
235
思案
(
しあん
)
をしなほさななるまいぞ』
236
乙
(
おつ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
237
念彼
(
ねんぴ
)
観音力
(
くわんのんりき
)
もあつたものかい。
238
そんなこた、
239
屁
(
へ
)
でもないワイ。
240
尻喰
(
けつくら
)
へ
観音力
(
くわんのんりき
)
だ。
241
そんな
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
で、
242
生存
(
せいぞん
)
競争
(
きやうそう
)
の
泥棒
(
どろばう
)
社会
(
しやくわい
)
に
紳士
(
しんし
)
として
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るか、
243
馬鹿
(
ばか
)
だなア。
244
どこの
糞坊主
(
くそばうず
)
か
知
(
し
)
らぬが、
245
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
怖
(
こは
)
さに
慄
(
ふる
)
ひ
上
(
あが
)
つて、
246
仕様
(
しやう
)
もない
無形
(
むけい
)
無声
(
むせい
)
の
観音
(
くわんのん
)
を
拝
(
をが
)
んだつて、
247
天教山
(
てんけうざん
)
の
木花姫
(
このはなひめ
)
はメツタに
降臨
(
かうりん
)
遊
(
あそ
)
ばす
気遣
(
きづか
)
ひはないワ。
248
サア、
249
幸
(
さいはひ
)
いい
鳥
(
とり
)
が
来
(
き
)
よつたのだから、
250
彼奴
(
あいつ
)
だつて、
251
チツと
位
(
ぐらゐ
)
旅費
(
りよひ
)
は
持
(
も
)
つてるだらう。
252
商売初
(
しやうばいはじ
)
めだ。
253
コリヤ、
254
甲
(
かふ
)
、
255
丙
(
へい
)
、
256
チツと
勉強
(
べんきやう
)
せぬかい。
257
ああ
大商店
(
だいしやうてん
)
の
主人
(
しゆじん
)
になると、
258
気
(
き
)
の
揉
(
も
)
める
事
(
こと
)
だワイ。
259
人
(
ひと
)
を
使
(
つか
)
へば
苦
(
く
)
を
使
(
つか
)
ふ。
260
命掛
(
いのちがけ
)
の
商売
(
しやうばい
)
をせうと
思
(
おも
)
へば、
261
どうしても
乾分
(
こぶん
)
に
確
(
しつか
)
りした
奴
(
やつ
)
がゐなくちや
駄目
(
だめ
)
だ』
262
と
小声
(
こごゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
263
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
声
(
こゑ
)
を
目当
(
めあて
)
に
近
(
ちか
)
より
行
(
ゆ
)
く。
264
始
(
はじ
)
めての
泥棒
(
どろばう
)
の
事
(
こと
)
とて、
265
強
(
つよ
)
い
事
(
こと
)
を
口
(
くち
)
で
云
(
い
)
つてゐても、
266
何処
(
どこ
)
ともなしに
手足
(
てあし
)
がワナワナと
慄
(
ふる
)
へてゐた。
267
甲
(
かふ
)
丙
(
へい
)
両人
(
りやうにん
)
も
同
(
おな
)
じく
慄
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
乙
(
おつ
)
の
後
(
うしろ
)
に
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
268
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
には
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
き
鼾
(
いびき
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
269
乙
(
おつ
)
『コココラ、
270
キキキサマは、
271
ドドドドコの
奴
(
やつ
)
ぢやい。
272
ササ
最前
(
さいぜん
)
から、
273
観音
(
くわんのん
)
を、
274
拝
(
をが
)
んでゐよつたが、
275
そんな
事
(
こと
)
で、
276
ビクつくやうな
泥棒
(
どろばう
)
さまぢやないぞ。
277
サア、
278
持物
(
もちもの
)
一切
(
いつさい
)
を、
279
綺麗
(
きれい
)
、
280
サツパリと、
281
此処
(
ここ
)
で
脱
(
ぬ
)
いで……
下
(
くだ
)
さいませぬか……ウン、
282
違
(
ちが
)
ふ
違
(
ちが
)
ふ、
283
脱
(
ぬ
)
いで、
284
渡
(
わた
)
さぬかい。
285
厭
(
いや
)
ぢやなんぞと
吐
(
ぬか
)
すが
最後
(
さいご
)
、
286
汝
(
きさま
)
の
素
(
そ
)
ツ
首
(
くび
)
ひつつかまへ、
287
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
をチヨン
切
(
ぎ
)
つて
炊
(
た
)
いて
食
(
く
)
て
了
(
しま
)
うてやるぞ。
288
俺
(
おれ
)
を
何方
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
てる。
289
バラモン
教
(
けう
)
に
於
(
おい
)
て
驍名
(
げうめい
)
かくれなき
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
部下
(
ぶか
)
ベル、
290
シャル、
291
ヘル
三
(
さん
)
人
(
にん
)
だ。
292
サ、
293
綺麗
(
きれい
)
サツパリと
脱
(
ぬ
)
いだり
脱
(
ぬ
)
いだり。
294
コラ、
295
シャル、
296
ヘル、
297
汝
(
きさま
)
もチツと
加勢
(
かせい
)
を
致
(
いた
)
さぬかい……
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
場合
(
ばあひ
)
だぞ。
298
親方
(
おやかた
)
許
(
ばか
)
りに
働
(
はたら
)
かすといふ
事
(
こと
)
があるか』
299
ヘル『さうだから、
300
こんな
商売
(
しやうばい
)
は
止
(
や
)
めといふのだよ』
301
ベル『
乗
(
の
)
りかけた
舟
(
ふね
)
だ。
302
今
(
いま
)
となつて
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
にやめられるかい。
303
鬼春別
(
おにはるわけ
)
様
(
さま
)
の
顔
(
かほ
)
に
泥
(
どろ
)
を
塗
(
ぬ
)
るやうなものだ。
304
鬼春別
(
おにはるわけ
)
様
(
さま
)
は
堂々
(
だうだう
)
と
三千
(
さんぜん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
引率
(
いんそつ
)
して、
305
強盗
(
がうたう
)
強姦
(
がうかん
)
放火
(
つけび
)
まで
遊
(
あそ
)
ばしたでないか。
306
運
(
うん
)
がよければ
人
(
ひと
)
の
国
(
くに
)
まで
占領
(
せんりやう
)
せうと
云
(
い
)
ふ
大泥棒
(
おほどろばう
)
さまだ。
307
それの
乾児
(
こぶん
)
たる
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が、
308
そんな
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
でどうならうかい』
309
ヘル『それでも、
310
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
、
311
国家
(
こくか
)
の
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
ふ
為
(
ため
)
に、
312
敵
(
てき
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼすべくお
出
(
い
)
でになつたのだ。
313
つまり
云
(
い
)
へば
天下
(
てんか
)
公共
(
こうきよう
)
の
為
(
ため
)
の
泥棒
(
どろばう
)
だ。
314
一身
(
いつしん
)
一家
(
いつか
)
の
利害
(
りがい
)
の
為
(
ため
)
になさるのぢやないから、
315
一概
(
いちがい
)
には
云
(
い
)
へまいぞ。
316
そんな
事
(
こと
)
思
(
おも
)
うてると、
317
却
(
かへつ
)
て
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
の
顔
(
かほ
)
に
泥
(
どろ
)
を
塗
(
ぬ
)
るやうなものだぞ』
318
ベル『エー、
319
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
だな。
320
コリヤ
修験者
(
しうげんじや
)
……か
何
(
なに
)
か
知
(
し
)
らぬが、
321
くたばつたとみえて、
322
念彼
(
ねんぴ
)
観音力
(
くわんのんりき
)
もほざかぬやうになつたでないか。
323
サア、
324
とつとと
持物
(
もちもの
)
を
渡
(
わた
)
したり
渡
(
わた
)
したり』
325
治道
(
ちだう
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
治道
(
ちだう
)
と
申
(
まを
)
す
修験者
(
しうげんじや
)
で
厶
(
ござ
)
る。
326
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
衣類
(
いるゐ
)
を
渡
(
わた
)
す
訳
(
わけ
)
にはいかぬ。
327
ここに
金
(
かね
)
があるから、
328
之
(
これ
)
を
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
遣
(
つか
)
はす。
329
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
国元
(
くにもと
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
330
泥棒
(
どろばう
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて、
331
正業
(
せいげふ
)
についたが
宜
(
よ
)
からうぞ』
332
ベル『ヤア、
333
此奴
(
こいつ
)
、
334
中々
(
なかなか
)
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひやがるワイ、
335
オイ
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
や
二百金
(
にひやくきん
)
の
目腐
(
めくさ
)
れ
金
(
がね
)
で、
336
遠
(
とほ
)
い
道
(
みち
)
を
歩
(
ある
)
いて
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
れば、
337
後
(
あと
)
にや
何
(
なん
)
にも
残
(
のこ
)
らない。
338
一体
(
いつたい
)
幾
(
いく
)
ら
渡
(
わた
)
すといふのだい』
339
治道
(
ちだう
)
『これつきり、
340
泥棒
(
どろばう
)
をせないといふのならば、
341
相当
(
さうたう
)
に
金
(
かね
)
を
渡
(
わた
)
してやらぬ
事
(
こと
)
はない。
342
幾
(
いく
)
らくれと
云
(
い
)
ふのだ』
343
ベル『ウーン、
344
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つてくれ。
345
一
(
ひと
)
つ
計算
(
けいさん
)
をせぬと
分
(
わか
)
らぬワイ。
346
……これからハルナの
近在
(
きんざい
)
まで
帰
(
かへ
)
る
迄
(
まで
)
には、
347
何程
(
なにほど
)
倹約
(
けんやく
)
致
(
いた
)
しても
一人前
(
いちにんまへ
)
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
が
入
(
い
)
る。
348
それから
母者人
(
ははじやびと
)
の
土産
(
みやげ
)
に
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
、
349
女房
(
にようばう
)
の
土産
(
みやげ
)
に
二百
(
にひやく
)
両
(
りやう
)
、
350
子供
(
こども
)
の
土産
(
みやげ
)
に
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
、
351
都合
(
つがふ
)
五百
(
ごひやく
)
両
(
りやう
)
だ。
352
併
(
しか
)
しそれでは
無一文
(
むいちもん
)
で
商売
(
しやうばい
)
は
出来
(
でき
)
ない。
353
何程
(
なにほど
)
ちつぽけな
八百屋
(
やほや
)
店
(
みせ
)
を
出
(
だ
)
しても、
354
八百屋
(
はつぴやくや
)
だから
八百
(
はつぴやく
)
両
(
りやう
)
はいる。
355
さうすると
一人前
(
ひとりまへ
)
千三百
(
せんさんびやく
)
両
(
りやう
)
、
356
都合
(
つがふ
)
三千
(
さんぜん
)
九百
(
きうひやく
)
両
(
りやう
)
だ。
357
そこへ
千
(
せん
)
円
(
ゑん
)
は
着物代
(
きものだい
)
として
此方
(
こちら
)
へ
綺麗
(
きれい
)
サツパリと
渡
(
わた
)
せばよし、
358
四
(
し
)
の
五
(
ご
)
の
吐
(
ぬか
)
すと
命
(
いのち
)
も
共
(
とも
)
にバラして
了
(
しま
)
ふぞ。
359
バラすのはバラモンの
特色
(
とくしよく
)
だ』
360
ヘル『モシモシ
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
、
361
余
(
あま
)
り
厚
(
あつ
)
かましう
申
(
まを
)
しますけれど、
362
此奴
(
こいつ
)
は
云
(
い
)
ひかけたら
聞
(
き
)
かぬ
奴
(
やつ
)
ですから、
363
何卒
(
どうぞ
)
半分
(
はんぶん
)
でも
宜
(
よろ
)
しいから
恵
(
めぐ
)
んで
下
(
くだ
)
さいますまいかな。
364
のうシャル、
365
皆
(
みな
)
貰
(
もら
)
ふのは
余
(
あま
)
り
厚
(
あつ
)
かましいぢやないか』
366
ベル『エー、
367
傍
(
そば
)
から
茶々
(
ちやちや
)
を
入
(
い
)
れやがつて、
368
主人
(
しゆじん
)
の
商売
(
しやうばい
)
を
番頭
(
ばんとう
)
が
邪魔
(
じやま
)
するといふ
事
(
こと
)
があるか、
369
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
奴
(
やつ
)
だなア』
370
治道
(
ちだう
)
『
四千
(
しせん
)
九百
(
くひやく
)
円
(
ゑん
)
は
四
(
し
)
と
九
(
く
)
がついて、
371
面白
(
おもしろ
)
くない。
372
ドツと
張込
(
はりこ
)
んで
五千
(
ごせん
)
両
(
りやう
)
やるから、
373
之
(
これ
)
を
持
(
も
)
つて
早
(
はや
)
く
国許
(
くにもと
)
へ
帰
(
かへ
)
り
正業
(
せいげふ
)
に
就
(
つ
)
いたが
可
(
い
)
いぞ。
374
そして
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
375
久米彦
(
くめひこ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
のカーネルは、
376
何
(
いづ
)
れも
三五教
(
あななひけう
)
の
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
帰順
(
きじゆん
)
したのだから、
377
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
も
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
つたら
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
信仰
(
しんかう
)
し、
378
仮
(
か
)
りにも
人
(
ひと
)
の
物
(
もの
)
を
盗
(
ぬす
)
んだり、
379
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
のやうな
殺伐
(
さつばつ
)
な
事
(
こと
)
はキツとするでないぞ。
380
サ、
381
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
せ、
382
此処
(
ここ
)
に
五千
(
ごせん
)
両
(
りやう
)
の
包
(
つつ
)
みがある、
383
検
(
あらた
)
めて
受取
(
うけと
)
つたがよからうぞ』
384
ベルは
怖
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
385
声
(
こゑ
)
を
知
(
し
)
るべに
手
(
て
)
をニユツと
出
(
だ
)
した。
386
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
治道
(
ちだう
)
は、
387
其
(
その
)
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つた。
388
ベル『アイタタタタ、
389
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
390
大変
(
たいへん
)
手
(
て
)
の
利
(
き
)
いた
奴
(
やつ
)
だ。
391
チツと
来
(
き
)
て
加勢
(
かせい
)
をしてくれぬかい、
392
中々
(
なかなか
)
金
(
かね
)
をくれさうにないぞ』
393
治道
(
ちだう
)
『アハハハハ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
394
泥棒
(
どろばう
)
の
失敗
(
しつぱい
)
も
又
(
また
)
旅情
(
りよじやう
)
を
慰
(
なぐさ
)
むるには
一興
(
いつきよう
)
だ。
395
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
俺
(
おれ
)
も
男
(
をとこ
)
だ。
396
五千
(
ごせん
)
両
(
りやう
)
恵
(
めぐ
)
んでやると
云
(
い
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
397
メツタに
後
(
あと
)
へは
引
(
ひ
)
かぬ。
398
道貫
(
だうくわん
)
、
399
素道
(
そだう
)
、
400
求道殿
(
きうだうどの
)
、
401
貴方
(
あなた
)
もいいかげんに
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
ましなさい。
402
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
を
)
りますよ』
403
道貫
(
だうくわん
)
『ハハハハ、
404
イヤ
最前
(
さいぜん
)
から、
405
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
鼾
(
いびき
)
をかいて
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
りました。
406
随分
(
ずいぶん
)
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
ですな。
407
三千
(
さんぜん
)
人
(
にん
)
の
中
(
なか
)
では、
408
こんな
奴
(
やつ
)
もタマには
出来
(
でき
)
るでせう。
409
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴方
(
あなた
)
は
五千
(
ごせん
)
両
(
りやう
)
やりますか、
410
然
(
しか
)
らば
私
(
わたし
)
も
一千
(
いつせん
)
両
(
りやう
)
やりませう』
411
ベル『イヤ、
412
何処
(
どこ
)
の
何方
(
どなた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
413
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります。
414
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
姓名
(
せいめい
)
をお
聞
(
き
)
かせ
下
(
くだ
)
さいませ』
415
治道
(
ちだう
)
『ウン、
416
俺
(
おれ
)
は
治道
(
ちだう
)
といふ
修験者
(
しうげんじや
)
だ。
417
お
前
(
まへ
)
に
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
やらうといふは
道貫
(
だうくわん
)
といふ
男
(
をとこ
)
だ。
418
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
国許
(
くにもと
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
正業
(
せいげふ
)
に
就
(
つ
)
いたがよからうぞ』
419
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』と
幾度
(
いくたび
)
も
礼
(
れい
)
を
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
420
ベル、
421
シャル、
422
ヘルの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
423
六千
(
ろくせん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
二千
(
にせん
)
両
(
りやう
)
づつ
分配
(
ぶんぱい
)
し、
424
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
を
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
立去
(
たちさ
)
りにける。
425
(
大正一二・三・四
旧一・一七
於竜宮館
松村真澄
録)
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(B)
(N)
幽貝 >>>
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