霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第一九章 清滝(きよたき)〔一四二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第4篇 法念舞詩 よみ(新仮名遣い):ほうねんぶし
章:第19章 清滝 よみ(新仮名遣い):きよたき 通し章番号:1427
口述日:1923(大正12)年03月05日(旧01月18日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
元ビク国右守のベルツとその部下シエールは、反逆の罪で百日の閉門を申し付けられた怨みにより、照国岳の清めの滝に籠り、妖幻坊の魔法を習ってビクトリヤ城を転覆しようと水垢離を取っていた。
二人の前に妖沢坊と名乗る魔神が現れ、百日の間、蟹・イモリ・カエルのみを食して修業をしたら魔法を授けると託宣した。ベルツは三十日ばかりすると、毒に当たったか腹痛を起こして苦しみ出した。
シエールは主人の病気を治そうと滝に打たれていると、十一、二才の少女が現れて滝に飛び込んだ。シエールは、自分の祈りを聞き届けたエンゼルが現れたと勘違いして喜び、ベルツに報告に行った。ベルツも、その姿を見て天津乙女が助けに降ってきたを思い込んだ。
乙女はビクトリヤ王の娘・ダイヤ姫であり、父刹帝利の病気平癒の願掛けに来ていたのであった。そうとも知らず、ベルツとシエールは帰ろうとするダイヤ姫の前に出て、自分たちの大望を遂げさせて欲しいと、野心と計画の内容を話してしまった。
ダイヤ姫はベルツとシエールの企みを聞いて、名乗りを上げて正体を明かし、二人に改心を迫った。ベルツとシエールは、少女が仇と狙うビクトリヤ王の娘であると知って、姫を捕えてしまった。
二人は自分たちの企みや居場所を知ってしまった姫を害そうとしたが、姫の胆力と美貌を認めて、命が惜しければベルツの妻となってビク国簒奪の計画に参加するように口説いた。
ダイヤ姫はこれを拒絶し、ベルツとシエールは剣を引き抜いて姫に切りかかった。姫は剣をかわし、樫の大木を盾にして防いでいる。
そこへほら貝を吹きながら四人の山伏が観音経を称えながら登ってきた。ベルツとシエールは山伏の姿に驚いて、山頂をめがけて逃げて行った。山伏たちは治道、道貫、素道、求道の四人であった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-05-31 20:35:40 OBC :rm5519
愛善世界社版:248頁 八幡書店版:第10輯 123頁 修補版: 校定版:261頁 普及版:105頁 初版: ページ備考:
001火熱(くわねつ)(はげ)しき太陽(たいやう)
002天津(あまつ)御空(みそら)晃々(くわうくわう)
003照国岳(てるくにだけ)谷間(たにあひ)
004(たか)くかかれる大瀑布(だいばくふ)
005(きよ)めの(たき)片辺(かたほとり)
006(ちひ)さき(いほり)(むす)びつつ
007二人(ふたり)(をとこ)朝夕(あさゆふ)
008(はだか)となりて何事(なにごと)
009(こゑ)(かぎ)りに(いの)()る。
010 (この)両人(りやうにん)はベルツ、011シエールの主従(しゆじゆう)である。012左守(さもり)(かみ)(ならび)にタルマンの(ため)右守(うもり)(しよく)剥奪(はくだつ)され、013(ひやく)(にち)閉門(へいもん)申付(まをしつ)けられ、014(うら)骨髄(こつずい)(てつ)し、015妖幻坊(えうげんばう)魔法(まはふ)(なら)つて、016ビクトリヤ(じやう)転覆(てんぷく)し、017(ふたた)勢力(せいりよく)()(かへ)し、018自分(じぶん)刹帝利(せつていり)となり、019シエールを左守司(さもりのかみ)(にん)じ、020一国(いつこく)主権(しゆけん)(にぎ)らむと、021一心(いつしん)不乱(ふらん)水垢離(みづごり)をとつてゐたのである。022七日目(なぬかめ)(よる)023二人(ふたり)一生(いつしやう)懸命(けんめい)水垢離(みづごり)をとつてゐると、024山岳(さんがく)(くづ)るる(ばか)りの大音響(だいおんきやう)(とも)に、025白馬(はくば)(またが)り、026宙空(ちうくう)より(ひづめ)(おと)戞々(かつかつ)(くだ)つて()たのは緋衣(ひごろも)()坊主姿(ばうずすがた)なりける。027これは妖幻坊(えうげんばう)兄弟分(きやうだいぶん)(きこ)えたる妖沢坊(えうたくばう)といふ魔神(まがみ)なり。028妖沢坊(えうたくばう)二人(ふたり)(むか)ひ、
029妖沢(えうたく)(なんぢ)はビクの(くに)右守司(うもりのかみ)(つと)めたるベルツ(ならび)家令(かれい)のシエールであらう。030(なんぢ)(ねがひ)(すみやか)聞届(ききとど)()させむ。031()いては(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)水行(すいぎやう)をなし、032食物(しよくもつ)(この)谷川(たにがは)棲息(せいそく)する(かに)033蠑螈(いもり)034(かはづ)餌食(ゑじき)となし、035(その)()(もの)一切(いつさい)(くら)()からず。036()(あやま)つて()(しよく)()(とき)は、037(なんぢ)(ぎやう)(まつた)水泡(すゐほう)()すべし。038(また)(ひやく)(にち)修業中(しうぎやうちう)039(ひと)発見(はつけん)されたる(とき)折角(せつかく)修業(しうぎやう)無効(むかう)となるべし、040(かなら)用心(ようじん)(おこた)(なか)れ。041(この)荒行(あらぎやう)()めば、042(なんぢ)空中(くうちう)飛行(ひかう)(じゆつ)(さづ)け、043(かつ)千変(せんぺん)万化(ばんくわ)化身(けしん)(はふ)(をし)ゆべし、044ゆめゆめ(うたが)(なか)れ』
045(おごそ)かに(つた)へ、046山岳(さんがく)(ゆる)がし(なが)ら、047(ふたた)(こま)(かしら)立直(たてなほ)し、048空中(くうちう)(たか)姿(すがた)()した。049二人(ふたり)有難涙(ありがたなみだ)にくれて妖沢坊(えうたくばう)後姿(うしろすがた)合掌(がつしやう)し、050呪文(じゆもん)(とな)へてゐた。051三十(さんじふ)(にち)(ばか)修業(しうぎやう)をした(とき)052ベルツは(かはづ)053蠑螈(いもり)(どく)(あた)つたのか、054(にはか)腹痛(ふくつう)(おこ)し、055手足(てあし)藻掻(もが)き、056(あわ)()()しける。057シエールは一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、
058シエール『ウラル(ひこの)(みこと)妖沢坊(えうたくばう)(さま)059何卒(どうぞ)主人(しゆじん)病気(びやうき)をお(なほ)(くだ)さいませ』
060滝壺(たきつぼ)()たれて、061(また)もや一心(いつしん)不乱(ふらん)荒行(あらぎやう)にかかつてゐる。062ベルツは虚空(こくう)(つか)んで(くるし)(もだ)える。063(この)(てい)()てシエールは(いのち)(かぎ)りに滝壺(たきつぼ)()()み、064祈念(きねん)()らしてゐた。065そこへ十一二(じふいちに)(さい)(うる)はしき(をんな)066()(しげ)みを()けてスタスタと(のぼ)(きた)り、067(たちま)赤裸(まつぱだか)となつて滝壺(たきつぼ)飛込(とびこ)んだ。068シエールはエンゼルが自分(じぶん)(いの)りを()いて、069(たす)けに()()れたものと(おも)ひ、070一生(いつしやう)懸命(けんめい)乙女(をとめ)姿(すがた)伏拝(ふしをが)み、071感謝(かんしや)(なみだ)にくれてゐる。072乙女(をとめ)二人(ふたり)(をとこ)()もかけず、073滝壺(たきつぼ)飛込(とびこ)一心(いつしん)不乱(ふらん)に、
074乙女(をとめ)大国常立(おほくにとこたち)大神(おほかみ)075何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)076(ちち)病気(びやうき)(すく)はせ(たま)へ、077仮令(たとへ)(わが)()(いのち)()られませう(とも)078(すこ)しも(くる)しうは(ぞん)じませぬ。079(いま)(ちち)()くなつては、080(また)もや右守司(うもりのかみ)ベルツ主従(しゆじゆう)が、081如何(いか)なる(こと)(いた)すか()れませぬ。082ビクの(くに)一大事(いちだいじ)(ござ)います』
083神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、084(いの)(はじ)めた。085されど瀑布(ばくふ)轟々(がうがう)たる水音(みなおと)(さへぎ)られて、086乙女(をとめ)何事(なにごと)(ねが)()るやは、087両人(りやうにん)(みみ)()らなかつた。088シエールはベルツの(そば)(すす)()り、089(かしら)()(なが)ら、
090シエール『モシ旦那(だんな)(さま)091()安心(あんしん)なされませ。092(いま)(わたくし)妖沢坊(えうたくばう)をお(ねが)(いた)しましたら、093アレあの(とほ)り、094天女(てんによ)天降(あまくだ)られて、095貴方(あなた)病気(びやうき)平癒(へいゆ)(ため)滝壺(たきつぼ)にかかつて祈念(きねん)をして(くだ)さいます。096キツと()病気(びやうき)(なほ)瑞祥(ずゐしやう)(ござ)いませう。097(かなら)(かなら)()心配(しんぱい)(くだ)さいますな。098南無(なむ)妖沢坊(えうたくばう)大明神(だいみやうじん)(まも)(たま)(さきは)(たま)へ』
099涙交(なみだまじ)りに(ねが)ひゐる。100ベルツは不思議(ふしぎ)にも(この)言葉(ことば)()くより、101神経(しんけい)作用(さよう)()らね(ども)102(にはか)気分(きぶん)がよくなり、103(かしら)をあげて滝壺(たきつぼ)()れば、104(はな)(あざむ)(うる)はしき乙女(をとめ)滝壺(たきつぼ)()たれて、105(しろ)(からだ)(さら)(なが)ら、106一心(いつしん)不乱(ふらん)(ねん)じて()る。107ベルツは(わが)()苦痛(くつう)(わす)立上(たちあが)り、
108ベルツ『掛巻(かけまく)(かしこ)天津(あまつ)御国(みくに)より(くだ)らせ(たま)うた天津(あまつ)乙女(をとめ)(さま)109何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)拙者(せつしや)願望(ぐわんまう)()聞届(ききとど)(くだ)さいますやうに、110(これ)()いては(からだ)資本(しほん)(ござ)いますから、111(この)病気(びやうき)(いち)()(はや)全快(ぜんくわい)(いた)し、112(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)修業(しうぎやう)無事(ぶじ)(をは)ります(やう)113()(ねが)(まを)します』
114両手(りやうて)(あは)せて(たの)()る。115乙女(をとめ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、
116乙女(をとめ)(ちち)(やまひ)(なほ)させ(たま)へ』
117祈願(きぐわん)するのみであつた。118(やや)あつて乙女(をとめ)滝壺(たきつぼ)(あが)り、119身体(からだ)(みづ)()()り、120キチンと衣服(いふく)着替(きか)へた。121四辺(あたり)()れば二人(ふたり)(をとこ)(まはし)(ひと)つになつて、122一生(いつしやう)懸命(けんめい)滝壺(たきつぼ)(をが)んでゐる。123乙女(をとめ)はスタスタと(かへ)()かうとするを、124二人(ふたり)(あわ)てて行手(ゆくて)(ひざま)づき、
125ベルツ『天津(あまつ)乙女(をとめ)(さま)126如何(いかが)(ござ)いませうか、127妖沢坊(えうたくばう)(さま)命令(めいれい)()つて、128(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)荒行(あらぎやう)(いた)し、129大望(たいまう)(たつ)せむと(ねが)つて()りますが、130(かみ)(さま)のお(かげ)成就(じやうじゆ)するものとは(ぞん)じますが、131かやうに病気(びやうき)になつては、132如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ませぬ。133何卒(なにとぞ)()指図(さしづ)をお(ねが)(いた)します』
134乙女(をとめ)(その)(はう)願望(ぐわんまう)とは如何(いか)なる(こと)か、135(くは)しく陳述(ちんじゆつ)せよ』
136ベルツ『ハイ、137(わたし)はビクの(くに)右守司(うもりのかみ)ベルツと(まを)(もの)138(これ)なる(をとこ)家令(かれい)のシエールと(まを)(もの)(ござ)います。139ビクトリヤ城内(じやうない)には悪人(あくにん)はびこり、140左守司(さもりのかみ)一味(いちみ)(もの)141三五教(あななひけう)(あく)宣伝使(せんでんし)城内(じやうない)(ひき)ずり()み、142拙者(せつしや)軍職(ぐんしよく)()き、143専横(せんわう)(かぎ)りを(つく)()りますれば、144国家(こくか)害賊(がいぞく)(のぞ)(ため)に、145両人(りやうにん)此処(ここ)にて荒行(あらげう)(いた)して()(ところ)(ござ)います』
146乙女(をとめ)(なんぢ)(てき)()なすは左守(さもり)一人(ひとり)であるか』
147ベルツ『左守(さもり)(まを)すに(およ)ばず、148刹帝利(せつていり)老耄(おいぼれ)149(その)(ほか)アール、150ハルナ(など)悪人(あくにん)征伐(せいばつ)(いた)さねば到底(たうてい)天下(てんか)無事(ぶじ)(をさ)まりませぬ』
151乙女(をとめ)『ホホホホホ、152(その)(はう)(うはさ)()いた悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)のベルツ主従(しゆじゆう)であつたか。153左様(さやう)悪企(わるだく)みを(いた)(とも)154到底(たうてい)成功(せいこう)(のぞ)みはあるまい。155どうぢや(いま)(うち)()(あらた)めて真人間(まにんげん)になる()はないか』
156ベルツ『ヘー、157それは(なん)(ござ)います、158(けつ)して私欲(しよく)(ため)(いた)すのでは(ござ)いませぬ。159天下(てんか)公共(こうきよう)(ため)に、160(たみ)(くる)しみを(たす)くる慈愛心(じあいしん)より、161()犠牲(ぎせい)にして、162かかる荒行(あらぎやう)(いた)して()るので(ござ)います』
163シエール『天津(あまつ)乙女(をとめ)(さま)164何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)165吾々(われわれ)(みたま)をよくよくお(しら)(くだ)さいまして、166正邪(せいじや)()裁判(さいばん)(ねが)ひます』
167悪人(あくにん)自分(じぶん)のやつた(こと)(すこ)しも(あく)(おも)うて()ない。168天下(てんか)国家(こくか)(ため)最善(さいぜん)努力(どりよく)(つく)してゐると(かんが)へてゐるらしい。
169乙女(をとめ)(わらは)(なんぢ)()(ごと)天津(あまつ)乙女(をとめ)ではない。170ビクの(くに)刹帝利(せつていり)ビクトリヤ(わう)(むすめ)ダイヤ(ひめ)であるぞよ。171左様(さやう)悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)(たく)みを(いた)すよりも惟神(かむながら)本心(ほんしん)立返(たちかへ)り、172忠良(ちうりやう)なる臣民(しんみん)として、173国家(こくか)(つく)したら()うだ』
174ベルツ『ナニ、175(その)(はう)(てき)付狙(つけねら)ふビクトリヤ(わう)(むすめ)であつたか。176エー、177天津(あまつ)乙女(をとめ)見誤(みあやま)り、178(たふと)(あたま)をメツタ矢鱈(やたら)()げたのが残念(ざんねん)だ。179妖沢坊(えうたくばう)のお(しめ)しには、180(この)行中(ぎやうちう)人間(にんげん)見付(みつ)けられては、181折角(せつかく)荒行(あらぎやう)水泡(すいはう)()するとの(こと)であつた。182エー、183モウ(やぶ)れかぶれだ。184(わが)願望(ぐわんまう)(とど)かぬとあれば、185(かたき)片割(かたわ)れ、186嬲殺(なぶりごろし)(いた)して(うら)みを()らしてくれむ。187オイ、188シエール、189荒縄(あらなは)(もつ)(この)(をんな)(しば)()げよ』
190(きび)しく(めい)ずれば、191シエールは、
192シエール『ハイ(かしこ)まりました』
193棕櫚縄(しゆろなは)()つて、194後手(うしろで)(くく)り、195(かし)(えだ)(ひつ)かけて、196宙空(ちうくう)()()げる。197乙女(をとめ)(うで)もむしれむ(ばか)りの(いた)さを、198()をくひしばり()(ふさ)いで一言(ひとこと)(はつ)せず、199(こら)えて()る。
200 ベルツは(これ)(なが)めて心地(ここち)よげに打笑(うちわら)ひ、
201ベルツ『アハハハハ、202()ちつぺ()が、203こんな(ところ)(おれ)()行方(ゆくへ)嗅付(かぎつ)けてやつて()やがつたのだな、204此奴(こいつ)大変(たいへん)だ。205此奴(こいつ)()なせば、206キツと(あと)から左守(さもり)のハルナ()207軍隊(ぐんたい)(ひき)ゐて(おれ)(たち)召捕(めしとり)()算段(さんだん)であらう。208王女(わうぢよ)()として、209かやうな(ところ)()()るとは大胆(だいたん)至極(しごく)210(これ)には(なに)仔細(しさい)があるであらう。211一度(いちど)()(おろ)し、212拷問(がうもん)にかけて()はしてみよう、213サア(おろ)せ』
214厳命(げんめい)すれば、215シエールは(また)もや(つな)(ゆる)めて地上(ちじやう)(おろ)した。216ダイヤは(すで)()()かし()をくひしばつてゐる。
217シエール『ヤア、218チヨロ(くさ)い、219モウうたひあがつたとみえる。220モシ旦那(だんな)(さま)221此奴(こいつ)駄目(だめ)ですよ、222(もの)()ひませぬがなー』
223ベルツ『ナアニ、224(いま)()()かした(ところ)だから、225滝壺(たきつぼ)一遍(いつぺん)つつ()め。226(へび)(たた)(ころ)した(やつ)でさへも、227(みづ)()ければすぐに蘇生(いきかへ)るものだ。228サ、229(はや)()()んでみよ』
230 『ハイ』と(こた)へてシエールはダイヤ(ひめ)身体(からだ)引抱(ひつかか)へ、231(つな)(ほど)いて、232滝壺(たきつぼ)へザンブと(ばか)投込(なげこ)んだ。233ダイヤはハツと()がつき、234滝壺(たきつぼ)()(あが)り、235其処辺(そこら)をキヨロキヨロ見廻(みまは)し、236赤裸(まつぱだか)のまま()げむとするを、237シエールはグツと細腕(ほそうで)(にぎ)り、238以前(いぜん)(かし)根本(ねもと)引摺(ひきず)(きた)り、
239シエール『コリヤ、240ダイヤ(ひめ)241(をさな)(をんな)分際(ぶんざい)として、242斯様(かやう)(ところ)(ただ)一人(ひとり)修業(しうぎやう)()るとは大胆(だいたん)至極(しごく)243(これ)には(なに)仔細(しさい)があるであらう。244吾々(われわれ)両人(りやうにん)照国山(てるくにやま)に、245王家(わうけ)転覆(てんぷく)祈願(きぐわん)()らし()(こと)()ぎつけ、246やつてうせたのであらう。247サ、248逐一(ちくいち)白状(はくじやう)(いた)せ。249(つつ)(かく)すに(おい)ては、250(その)(はう)水責(みづぜめ)251火責(ひぜめ)252剣責(つるぎぜめ)(いた)すが、253それでも()いか』
254ダイヤ『無礼(ぶれい)千万(せんばん)な、255主人(しゆじん)(むすめ)(とら)へて左様(さやう)脅迫(けふはく)(いた)すといふ(こと)があるか。256チツと天地(てんち)道理(だうり)(かんが)へて()よ』
257ベルツ『エー、258(やかま)しい、259天地(てんち)道理(だうり)(かんが)へるやうな(もの)が、260ビクトリヤ(じやう)転覆(てんぷく)修業(しうぎやう)(いた)すものかい。261サ、262(はや)事実(じじつ)白状(はくじやう)(いた)せ。263(なに)(ねが)ひに()たのだ。264(その)(ねがひ)(すぢ)から第一(だいいち)()いてやらう』
265ダイヤ『(この)照国山(てるくにやま)(わらは)兄妹(きやうだい)(ろく)(にん)(なが)らく住居(ぢうきよ)してゐた馴染(なじみ)のある(ところ)だ。266(ちち)()病気(びやうき)平癒(へいゆ)させむが(ため)に、267(きよ)めの(たき)水垢離(みづごり)をとりに()たのだよ。268臣下(しんか)身分(みぶん)として主人(しゆじん)のする(こと)をゴテゴテいふ権利(けんり)があるか、269(ひか)えて()れ。270(とし)(わか)(とも)271ビクの(くに)刹帝利(せつていり)(むすめ)だ。272エエ(けが)らはしい、273一時(いつとき)(はや)くどつかへ姿(すがた)(かく)せ。274執拗(しつこう)(かへ)らぬに(おい)ては線香(せんかう)()てて(くす)べてやらうか』
275シエール『丸切(まるき)青大将(あをだいしやう)座敷(ざしき)這上(はひあが)つた(とき)のやうに()つてゐやがる。276こんな(あま)つちよに脅迫(けうはく)されて、277(この)荒男(あらをとこ)(かほ)()つものか、278地異(ちい)天変(てんぺん)もここ(まで)()けば極端(きよくたん)だ。279地震(ぢしん)ゴロゴロ(かみなり)ビリビリとやつて()たやうだ。280(しか)(なが)らどう(かんが)へても、281こんな(うつく)しい(をんな)をムザムザ(ころ)すのは勿体(もつたい)ない(やう)だ。282オイ、283ダイヤさま、284(もの)(ひと)相談(さうだん)だが、285何程(なにほど)(まへ)王女(わうぢよ)だといつても、286(くらゐ)(たか)いのは実地(じつち)(とき)()()ふものでない。287荒男(あらをとこ)二人(ふたり)格闘(かくとう)すれば、288到底(たうてい)(まへ)(ころ)されねばなるまい。289(へび)(かはづ)のやうなものだから、290(ここ)(ひと)思案(しあん)をし(なほ)して、291旦那(だんな)(さま)奥方(おくがた)となり、292ビクの(くに)女王(ぢよわう)となつて(くら)(かんが)へはないか』
293ダイヤ『悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)謀叛人(むほんにん)()294エエ(けが)らはしい、295(さが)りおらう』
296ベルツ『(なん)()つても(うつく)しい(もの)だ。297そしてこれ(だけ)胆力(たんりよく)があれば、298(この)(をんな)女房(にようばう)にすればどんな(こと)でも出来(でき)るだらう。299イヤ、300ダイヤ(ひめ)(さま)301(ここ)(ひと)つお(かんが)(なほ)しを(ねが)ひます。302左守(さもり)といふ(やつ)表面(へうめん)忠義(ちうぎ)らしく()せて()りますが、303(あれ)こそ心中(しんちう)(ふか)野心(やしん)包蔵(はうざう)する曲者(くせもの)(ござ)いますぞ。304刹帝利(せつていり)(さま)左守(さもり)(あやま)られ、305ビクの国家(こくか)(ぼう)()らうとして(ござ)る。306危険(きけん)至極(しごく)今日(こんにち)場合(ばあひ)307(しん)忠臣(ちうしん)(あら)はれて(ささ)へなくては、308万代(ばんだい)不易(ふえき)王家(わうけ)(つづ)きますまい……大忠(たいちう)不忠(ふちう)()たり、309大孝(たいかう)不孝(ふかう)()たり、310大信(たいしん)(いつは)りに()たり、311大善(だいぜん)大悪(だいあく)()たり……といふ(こと)がありませう。312表面(へうめん)大悪人(だいあくにん)見做(みな)されたる(この)ベルツ(ぐらゐ)313王家(わうけ)国家(こくか)(うれ)ひて()(もの)(ござ)いませぬぞ。314チツと冷静(れいせい)(むね)()()てて、315王家(わうけ)国家(こくか)(ため)にお(かんが)へを(ねが)()いものです。316よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。317貴女(あなた)父上(ちちうへ)左右(さいう)奸臣(かんしん)(あやま)られ、318大切(たいせつ)()(にん)王子(わうじ)(まで)悉皆(しつかい)(ころ)さうとなさつたぢやありませぬか。319何処(どこ)(くに)(おや)()(あい)せない(もの)がありませう。320(なに)(たから)だと()つても、321(わが)()(ぐらゐ)(たから)はない。322(その)(たから)(ころ)さうとなさるのだから、323(けつ)して(これ)はお父上(ちちうへ)(こころ)から()たのでは(ござ)いませぬ、324(みな)左守(さもり)やタルマンの()知恵(ぢゑ)(ござ)りまするぞ。325かやうな悪人(あくにん)重用(ぢうよう)するは(じつ)危険(きけん)千万(せんばん)(ござ)りまする。326貴方(あなた)はお(わか)いので、327城内(じやうない)様子(やうす)御存(ごぞん)(ござ)いますまいが、328それはそれはタルマン、329キユービツトの両人(りやうにん)天地(てんち)()れざる大悪人(だいあくにん)(ござ)いますよ。330何卒(どうか)(この)急場(きふば)(すく)(ため)に、331(さいはひ)貴方(あなた)王家(わうけ)のお血筋(ちすぢ)332(この)右守(うもり)夫婦(ふうふ)になり、333国家(こくか)大難(だいなん)未然(みぜん)(ふせ)ぐお(かんが)へはありませぬか』
334ダイヤ『エエつべこべと、335(なんぢ)邪智(じやち)侫弁(ねいべん)()(みみ)()たぬ、336(けが)らはしい。337王家(わうけ)がどうならうが、338国家(こくか)()うならうが、339(かま)つてくれな。340何事(なにごと)(てん)時節(じせつ)だ。341(なんぢ)()(ごと)有苗輩(いうぺうはい)関知(くわんち)する(ところ)でない。342(おほ)きにお世話(せわ)だ、343さがり()らう』
344厳然(げんぜん)として()(はな)つた。345ベルツ、346シエールは、
347ベルツ、シエール最早(もはや)駄目(だめ)だ、348両人(りやうにん)左右(さいう)より()つてかかつて、349可哀相(かあいさう)(なが)ら、350殺害(さつがい)しくれむ』
351大剣(たいけん)引抜(ひきぬ)き、352左右(さいう)より()つてかかるを、353ダイヤは()をかはし、354飛鳥(ひてう)(ごと)(やいば)(くぐ)り、355(かし)大木(たいぼく)木楯(こだて)()つて(ふせ)(たたか)ひゐる。
356 ()かる(ところ)へブウブウブウと法螺貝(ほらがひ)()(なが)ら、357()(にん)山伏(やまぶし)
358四人の山伏(しう)(じやう)()(こん)(やく)359()(りやう)()(ひつ)(しん)360(くわん)(のん)(めう)()(りき)361(のう)()()(けん)()362()(そく)(じん)(つう)(りき)363(くわう)(しゆう)()(はう)便(べん)364(じつ)(ぱう)(しよ)(こく)()365()(せつ)()(げん)(しん)366(しゆ)(じゆ)(しよ)(あく)(しゆ)367()(ごく)()(ちく)(しやう)368(せい)(らう)(びやう)()()369()(ぜん)(しつ)(りやう)(めつ)
370観音経(くわんのんきやう)(とな)(なが)(のぼ)つて()る。371ベルツ、372シエールの両人(りやうにん)()(にん)姿(すがた)(おどろ)いて、373ダイヤを()て、374着物(きもの)をかかへ、375山上(さんじやう)()がけて、376荊棘(けいきよく)(しげ)(なか)(くも)(かすみ)()げて()く。377(この)山伏(やまぶし)治道(ちだう)378道貫(だうくわん)379素道(そだう)380求道(きうだう)381()(にん)修験者(しうげんじや)なりけり。
382大正一二・三・五 旧一・一八 於竜宮館 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki