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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
第1章 橄欖山
第2章 宣伝使
第3章 聖地夜
第4章 訪問客
第5章 至聖団
第2篇 聖地巡拝
第6章 偶像都
第7章 巡礼者
第8章 自動車
第9章 膝栗毛
第10章 追懐念
第3篇 花笑蝶舞
第11章 公憤私憤
第12章 誘惑
第13章 試練
第14章 荒武事
第15章 大相撲
第16章 天消地滅
第4篇 遠近不二
第17章 強請
第18章 新聞種
第19章 祭誤
第20章 福命
第21章 遍路
第22章 妖行
第5篇 山河異涯
第23章 暗着
第24章 妖蝕
第25章 地図面
第26章 置去
第27章 再転
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第64巻(卯の巻)上
> 第3篇 花笑蝶舞 > 第11章 公憤私憤
<<< 追懐念
(B)
(N)
誘惑 >>>
第一一章
公憤
(
こうふん
)
私憤
(
しふん
)
〔一六四〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第3篇 花笑蝶舞
よみ(新仮名遣い):
かしょうちょうぶ
章:
第11章 公憤私憤
よみ(新仮名遣い):
こうふんしふん
通し章番号:
1640
口述日:
1923(大正12)年07月12日(旧05月29日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
橄欖山の山頂
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-24 11:55:41
OBC :
rm64a11
愛善世界社版:
121頁
八幡書店版:
第11輯 422頁
修補版:
校定版:
121頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
夏風
(
なつかぜ
)
に
青葉
(
あをば
)
のそよぐ
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
のアラブが
立
(
た
)
つて
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
002
キドロンの
谷
(
たに
)
からは
白
(
しろ
)
い
煙
(
けぶり
)
のやうな
雲
(
くも
)
がしづしづと
橄欖山
(
かんらんざん
)
上
(
じやう
)
目
(
め
)
がけて
襲
(
おそ
)
うて
来
(
く
)
る。
003
ユダヤ
人
(
じん
)
の
計画
(
けいくわく
)
したシオン
大学
(
だいがく
)
の
基礎
(
きそ
)
工事
(
こうじ
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
落成
(
らくせい
)
に
近付
(
ちかづ
)
き、
004
樵夫
(
きこり
)
や
大工
(
だいく
)
や
手伝
(
てつだひ
)
が
幾十
(
いくじふ
)
人
(
にん
)
となく
忙
(
いそが
)
しげに
活動
(
くわつどう
)
を
為
(
な
)
し
居
(
ゐ
)
たり。
005
アラブはテク、
006
トンク、
007
ツーロと
云
(
い
)
ふ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
である。
008
テク『オイ、
009
吾々
(
われわれ
)
は
回々教
(
フイフイけう
)
のピユリタンとして
朝夕
(
あさゆふ
)
忠実
(
ちうじつ
)
に
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へ、
010
そして
僅
(
わづか
)
の
賃金
(
ちんぎん
)
を
貰
(
もら
)
つて
異教徒
(
いけうと
)
の
頤使
(
いし
)
に
甘
(
あま
)
んじ、
011
駱駝
(
らくだ
)
のやうにこき
使
(
つか
)
はれてゐるのも、
012
余
(
あま
)
り
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かぬぢやないか。
013
たうとうユダヤ
人
(
じん
)
奴
(
め
)
、
014
パレスチナの
本国
(
ほんごく
)
を
取返
(
とりかへ
)
し、
015
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
を
吾物顔
(
わがものがほ
)
に
振舞
(
ふるま
)
ひ、
016
おれ
達
(
たち
)
の
仲間
(
なかま
)
を
見
(
み
)
ると、
017
丸
(
まる
)
で
奴隷
(
どれい
)
の
様
(
やう
)
に
虐待
(
ぎやくたい
)
するだないか、
018
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
に
働
(
はたら
)
いて、
019
ユダヤ
人
(
じん
)
は
一弗
(
いちドル
)
の
俸給
(
ほうきふ
)
を
貰
(
もら
)
ひ、
020
おれ
達
(
たち
)
は
半弗
(
はんドル
)
よりくれやがらぬのだから……
本当
(
ほんたう
)
に
亡国
(
ばうこく
)
の
民
(
たみ
)
になりたくないものだなア』
021
ツーロ『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
仕方
(
しかた
)
がないサ。
022
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
の
強
(
つよ
)
い
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
の
弱
(
よわ
)
い
時節
(
じせつ
)
だからなア。
023
ユダヤ
人
(
じん
)
だつて、
024
二千
(
にせん
)
六百
(
ろくぴやく
)
年
(
ねん
)
が
間
(
あひだ
)
、
025
亡国
(
ばうこく
)
の
民
(
たみ
)
として
今迄
(
いままで
)
苦
(
くるし
)
んで
来
(
き
)
たのだから
仕方
(
しかた
)
がないよ。
026
チツとは
威張
(
ゐば
)
らしてやつてもよかろ。
027
なア、
028
トンク』
029
トンク『
彼奴
(
あいつ
)
ア、
030
世界
(
せかい
)
統一
(
とういつ
)
を
夢
(
ゆめ
)
みてゐやがつたのだが、
031
到頭
(
たうとう
)
時節
(
じせつ
)
が
到来
(
たうらい
)
して
神
(
かみ
)
の
選
(
えら
)
まれたパレスチナの
本国
(
ほんごく
)
を
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れたのだから、
032
何
(
なん
)
といつても
世界
(
せかい
)
の
覇者
(
はしや
)
だ。
033
長
(
なが
)
い
物
(
もの
)
に
巻
(
ま
)
かれ……と
云
(
い
)
ふのだから、
034
おれ
達
(
たち
)
の
身
(
み
)
の
安全
(
あんぜん
)
を
計
(
ばか
)
らうと
思
(
おも
)
へばマア
辛抱
(
しんばう
)
するのだな。
035
半分
(
はんぶん
)
でも
月給
(
げつきふ
)
くれるのはまだしも
得
(
とく
)
だよ、
036
贅沢
(
ぜいたく
)
さへしなけりや、
037
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
行
(
ゆ
)
けるのだからなア。
038
さう
不平
(
ふへい
)
を
云
(
い
)
ふものだないワ、
039
何事
(
なにごと
)
も
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
いで
暮
(
くらし
)
さへすれば
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
無事
(
ぶじ
)
泰平
(
たいへい
)
だ。
040
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
働
(
はたら
)
くと
思
(
おも
)
へば
何程
(
なにほど
)
月給
(
げつきふ
)
が
安
(
やす
)
くても
待遇
(
たいぐう
)
に
差別
(
さべつ
)
があつても
構
(
かま
)
はぬぢやないか。
041
それを
忍
(
しの
)
ぶのが
回々教
(
フイフイけう
)
のピユリタンたる
務
(
つと
)
めだからなア』
042
テク『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
043
おれは
不平
(
ふへい
)
でたまらないワ。
044
おれは
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
の
生活
(
せいくわつ
)
が
何
(
ど
)
うだのかうだのと
云
(
い
)
つて、
045
ソンナケチなことをボヤクのだない、
046
アラブ
一党
(
いつたう
)
の
為
(
ため
)
に
此
(
この
)
差別
(
さべつ
)
的
(
てき
)
待遇
(
たいぐう
)
を
憤慨
(
ふんがい
)
するのだ。
047
不平
(
ふへい
)
にも
色々
(
いろいろ
)
の
色合
(
いろあひ
)
があつて、
048
公憤
(
こうふん
)
と
私憤
(
しふん
)
がある。
049
おれたちのは
決
(
けつ
)
して
私憤
(
しふん
)
ではない
天下
(
てんか
)
の
公憤
(
こうふん
)
だよ』
050
ツーロ『
何程
(
なんぼ
)
公憤
(
こうふん
)
だと
云
(
い
)
つても、
051
蚯蚓
(
みみづ
)
が
土中
(
どちう
)
でないてるよなもので、
052
何
(
なん
)
の
影響
(
えいきやう
)
も
及
(
およ
)
ぼすまい、
053
おれ
達
(
たち
)
だつてテクの
言
(
ことば
)
位
(
ぐらゐ
)
には
興奮
(
こうふん
)
し、
054
大
(
おほい
)
にアラブの
為
(
ため
)
に
気焔
(
きえん
)
を
吐
(
は
)
く
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
は
行
(
ゆ
)
かない。
055
何事
(
なにごと
)
も
時節
(
じせつ
)
だからなア』
056
テク『
貴様
(
きさま
)
はそれだから、
057
何時迄
(
いつまで
)
もラクダの
尻叩
(
けつたた
)
き
計
(
ばか
)
りして
居
(
を
)
らねばならぬのだ。
058
公憤
(
こうふん
)
のないやうな
人間
(
にんげん
)
は
最早
(
もはや
)
人間
(
にんげん
)
の
資格
(
しかく
)
がないのだ』
059
ツーロ『ヘン、
060
汝
(
おまへ
)
のは
余
(
あま
)
り
公憤
(
こうふん
)
でもあるまいぢやないか。
061
大体
(
だいたい
)
の
問題
(
もんだい
)
が
僅
(
わづか
)
半弗
(
はんドル
)
の
喰違
(
くひちが
)
ひから
起
(
おこ
)
つたのだらう、
062
そんな
所
(
ところ
)
へ
公憤
(
こうふん
)
を
使
(
つか
)
つて
貰
(
もら
)
つちや、
063
公憤
(
こうふん
)
が
落涙
(
らくるい
)
するだらう。
064
抑
(
そもそ
)
も
公憤
(
こうふん
)
とは
社会
(
しやくわい
)
とか
団体
(
だんたい
)
とか、
065
国家
(
こくか
)
とか
云
(
い
)
ふ
大問題
(
だいもんだい
)
に
対
(
たい
)
して、
066
自分
(
じぶん
)
の
主張
(
しゆちやう
)
を
充
(
み
)
たすに
到
(
いた
)
らない
場合
(
ばあひ
)
に
起
(
おこ
)
す
意気
(
いき
)
の
発動
(
はつどう
)
であつて、
067
極
(
きは
)
めて
愉快
(
ゆくわい
)
な
面白
(
おもしろ
)
い
男性
(
だんせい
)
的
(
てき
)
気分
(
きぶん
)
を
有
(
いう
)
したものでなくてはなるまい。
068
自己
(
じこ
)
の
欲望
(
よくばう
)
を
満
(
み
)
たすに
足
(
た
)
りないと
云
(
い
)
つて、
069
発動
(
はつどう
)
する
所
(
ところ
)
の
感情
(
かんじやう
)
の
動作
(
どうさ
)
といふものは
所謂
(
いはゆる
)
私憤
(
しふん
)
だ。
070
そんな
女性
(
ぢよせい
)
的
(
てき
)
気分
(
きぶん
)
に
充
(
み
)
たされたことを
云
(
い
)
ふと、
071
ユダヤ
人
(
じん
)
が
聞
(
き
)
いたら
馬鹿
(
ばか
)
にするぞ。
072
国家
(
こくか
)
社会
(
しやくわい
)
を
憂慮
(
いうりよ
)
する
念
(
ねん
)
最
(
もつと
)
も
強
(
つよ
)
しと
雖
(
いへど
)
も、
073
時代
(
じだい
)
は
其
(
その
)
意志
(
いし
)
を
容
(
い
)
れてくれず、
074
感慨
(
かんがい
)
措
(
お
)
く
能
(
あた
)
はずして
切腹
(
せつぷく
)
する
如
(
ごと
)
き、
075
或
(
あるひ
)
は
社会
(
しやくわい
)
を
思
(
おも
)
ふの
情
(
じやう
)
急激
(
きふげき
)
にして
刻苦
(
こくく
)
勉励
(
べんれい
)
能
(
よ
)
く
其
(
その
)
用
(
よう
)
をなし、
076
社会
(
しやくわい
)
に
尽
(
つく
)
す
如
(
ごと
)
き、
077
時
(
とき
)
に
自分
(
じぶん
)
が
他人
(
たにん
)
に
冷笑
(
れいせう
)
されて
大
(
おほい
)
に
憤慨
(
ふんがい
)
する
所
(
ところ
)
あり、
078
日夜
(
にちや
)
自分
(
じぶん
)
の
向上
(
こうじやう
)
に
勉励
(
べんれい
)
して、
079
以
(
もつ
)
て
能
(
よ
)
く
社会
(
しやくわい
)
的
(
てき
)
立場
(
たちば
)
を
作
(
つく
)
る
如
(
ごと
)
き、
080
此
(
これ
)
等
(
ら
)
は
皆
(
みな
)
公憤
(
こうふん
)
に
属
(
ぞく
)
するもので
男
(
をとこ
)
らしい
面白
(
おもしろ
)
い
不平
(
ふへい
)
だ。
081
天
(
てん
)
の
配剤
(
はいざい
)
其
(
その
)
妙
(
めう
)
を
得
(
え
)
ず
嬶
(
かかあ
)
の
待遇
(
たいぐう
)
其
(
その
)
当
(
たう
)
を
得
(
え
)
ざるに
憤激
(
ふんげき
)
し、
082
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
飛出
(
とびだ
)
し、
083
青楼
(
せいろう
)
に
上
(
のぼ
)
つて、
084
酒
(
さけ
)
と
女
(
をんな
)
で
其
(
その
)
不平
(
ふへい
)
を
忘
(
わす
)
れむとする
如
(
ごと
)
き、
085
又
(
また
)
夕食
(
ゆふしよく
)
の
膳部
(
ぜんぶ
)
がお
粗末
(
そまつ
)
だといつて、
086
膳
(
ぜん
)
を
投
(
な
)
げたり、
087
茶碗
(
ちやわん
)
を
破壊
(
はくわい
)
する
如
(
ごと
)
き、
088
或
(
あるひ
)
は
自分
(
じぶん
)
のズボラを
棚
(
たな
)
に
上
(
あ
)
げ
他人
(
ひと
)
の
賃金
(
ちんぎん
)
の
多
(
おほ
)
きに
反感
(
はんかん
)
を
抱
(
いだ
)
き
不平
(
ふへい
)
を
起
(
おこ
)
す
如
(
ごと
)
き、
089
又
(
また
)
は
主人
(
しゆじん
)
の
乱倫
(
らんりん
)
に
不平
(
ふへい
)
を
起
(
おこ
)
し、
090
妻君
(
さいくん
)
が
役者狂
(
やくしやぐるひ
)
をする
如
(
ごと
)
き、
091
又
(
また
)
妻君
(
さいくん
)
の
乱行
(
らんぎやう
)
に
主人
(
しゆじん
)
が
自暴
(
じばう
)
自棄
(
じき
)
となり、
092
芸者買
(
げいしやがひ
)
をなすが
如
(
ごと
)
き、
093
或
(
あるひ
)
は
世人
(
せじん
)
に
冷笑
(
れいせう
)
嘲罵
(
てうば
)
されて
不平
(
ふへい
)
のやり
所
(
どころ
)
なく、
094
自宅
(
うち
)
へ
帰
(
かへ
)
つて、
095
嬶
(
かかあ
)
の
頭
(
あたま
)
や
窓硝子
(
まどがらす
)
を
叩
(
たた
)
きわるが
如
(
ごと
)
きは、
096
皆
(
みな
)
私憤
(
しふん
)
に
属
(
ぞく
)
するものだ。
097
それよりも
怒
(
おこ
)
るなら、
098
ドツトはり
込
(
こ
)
んで
天地
(
てんち
)
の
怒
(
いか
)
りを
発
(
はつ
)
したら
何
(
ど
)
うだ。
099
汝
(
おまへ
)
のやうにホイト
坊主
(
ばうず
)
が
貰
(
もら
)
ひ
酒
(
ざけ
)
をこぼしたやうに、
100
あはれつぽい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
涙
(
なみだ
)
交
(
まじ
)
りにボヤいてをるやうなことでどうならうかい。
101
卑屈
(
ひくつ
)
極
(
きは
)
まる
行動
(
かうどう
)
だ。
102
それだからおれ
達
(
たち
)
は
時勢
(
じせい
)
を
見
(
み
)
るの
明
(
めい
)
があるから、
103
ここ
暫
(
しばら
)
くは
隠忍
(
いんにん
)
してゐるのだ。
104
何
(
いづ
)
れ
日出島
(
ひのでじま
)
から
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
降臨
(
かうりん
)
になれば、
105
上下
(
じやうか
)
運否
(
うんぷ
)
のなき
様
(
やう
)
桝
(
ます
)
かけ
引
(
ひき
)
ならして、
106
おれ
達
(
たち
)
迄
(
まで
)
も
安心
(
あんしん
)
さして
下
(
くだ
)
さるのだからなア』
107
テク
『
実際
(
じつさい
)
そんな
事
(
こと
)
があるだらうか。
108
おれ
達
(
たち
)
はキリストの
再臨
(
さいりん
)
を、
109
聖書
(
せいしよ
)
に
仍
(
よ
)
つて
先祖
(
せんぞ
)
代々
(
だいだい
)
から
待
(
ま
)
ちあぐみ、
110
到頭
(
たうとう
)
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
で
年
(
とし
)
をよらして
了
(
しま
)
つたのだが、
111
これ
丈
(
だけ
)
の
不公平
(
ふこうへい
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がなぜ
公憤
(
こうふん
)
を
起
(
おこ
)
して、
112
早
(
はや
)
く
平等
(
べうどう
)
な
愛
(
あい
)
の
世界
(
せかい
)
にして
下
(
くだ
)
さらぬのだらう……と
私
(
ひそ
)
かに
公憤
(
こうふん
)
をもらして
居
(
を
)
つたのだ』
113
トンク『アハヽヽヽ』
114
ツーロ『
私
(
ひそ
)
かの
公憤
(
こうふん
)
が
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れるワイ。
115
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
天道
(
てんだう
)
様
(
さま
)
の
不平
(
ふへい
)
といふのは、
116
暴風
(
ばうふう
)
を
起
(
おこ
)
し、
117
豪雨
(
がうう
)
を
降
(
ふ
)
らして
大洪水
(
だいこうずゐ
)
とし、
118
地
(
ち
)
の
不平
(
ふへい
)
は
地震
(
ぢしん
)
を
起
(
おこ
)
して、
119
山川
(
さんせん
)
草木
(
さうもく
)
を
転覆
(
てんぷく
)
させ、
120
悪人
(
あくにん
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼし、
121
大掃除
(
おほさうぢ
)
をなさるのが、
122
天地
(
てんち
)
の
公憤
(
こうふん
)
だ、
123
汝
(
きさま
)
の
公憤
(
こうふん
)
とは
大分
(
だいぶ
)
違
(
ちが
)
うだろ。
124
窓硝子
(
まどがらす
)
の
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
位
(
ぐらゐ
)
壊
(
め
)
いでみた
所
(
ところ
)
で、
125
余
(
あま
)
り
世界
(
せかい
)
の
改造
(
かいざう
)
も
出来
(
でき
)
ぬぢやないか』
126
テク『
一体
(
いつたい
)
此
(
この
)
シオン
大学
(
だいがく
)
とか
云
(
い
)
ふのは
何
(
なに
)
をするのだらうな。
127
又
(
また
)
してもユダヤ
人
(
じん
)
が
頭
(
あたま
)
をもちやげて、
128
おれ
達
(
たち
)
を
圧迫
(
あつぱく
)
する
機関
(
きくわん
)
だあるまいか。
129
それだとすれば、
130
世界
(
せかい
)
人類
(
じんるゐ
)
の
為
(
ため
)
におれ
達
(
たち
)
は
節義
(
せつぎ
)
を
重
(
おも
)
んじ、
131
仮令
(
たとへ
)
半日
(
はんにち
)
でも
人足
(
にんそく
)
に
使
(
つか
)
はれる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬだないか、
132
鷹
(
たか
)
は
飢
(
うゑ
)
ても
穂
(
ほ
)
をつまぬといふからなア』
133
ツーロ『
世界
(
せかい
)
の
所在
(
あらゆる
)
哲学者
(
てつがくしや
)
を
集
(
あつ
)
めて
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
基礎
(
きそ
)
を
固
(
かた
)
めるのだ。
134
此
(
この
)
シオンの
国
(
くに
)
は
太陽
(
たいやう
)
の
天
(
てん
)
に
冲
(
ちう
)
した
真下
(
ました
)
に
当
(
あた
)
る
霊国
(
れいごく
)
だから、
135
云
(
い
)
はば
時計
(
とけい
)
の
竜頭
(
りうづ
)
のやうなものだ。
136
茲
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
て
世界
(
せかい
)
を
支配
(
しはい
)
するのは
最
(
もつと
)
も
天地
(
てんち
)
の
経綸
(
けいりん
)
上
(
じやう
)
適当
(
てきたう
)
の
場所
(
ばしよ
)
だから、
137
さう
心配
(
しんぱい
)
するには
及
(
およ
)
ばないよ、
138
おれ
達
(
たち
)
だつて、
139
やつぱり
其
(
その
)
恩恵
(
おんけい
)
に
浴
(
よく
)
する
時
(
とき
)
が
来
(
く
)
るのだから、
140
辛抱
(
しんばう
)
せい、
141
回々教
(
フイフイけう
)
だとか
基督教
(
キリストけう
)
だとか
猶太教
(
ユダヤけう
)
だとか、
142
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
に
障壁
(
しやうへき
)
を
設
(
まう
)
けてひがむから
妙
(
めう
)
な
不平
(
ふへい
)
が
起
(
おこ
)
るのだ。
143
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
唯一柱
(
ただひとはしら
)
よりないのだ。
144
人間
(
にんげん
)
を
相手
(
あひて
)
にする
必要
(
ひつえう
)
はない。
145
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
だからなア』
146
テク『それでも
余
(
あま
)
りユダヤ
人
(
じん
)
がイバリちらすだないか。
147
それが
俺
(
おれ
)
は
気
(
き
)
にくはないのだ。
148
チツタ
不平
(
ふへい
)
も
起
(
おこ
)
らうかい』
149
ツーロ『ユダヤ
人
(
じん
)
にも
種々
(
いろいろ
)
あつて、
150
ポンポンぬかす
奴
(
やつ
)
ア、
151
カスピンのコンマ
以下
(
いか
)
の
代物
(
しろもの
)
だよ。
152
丁度
(
ちやうど
)
おれ
達
(
たち
)
と
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
な
境遇
(
きやうぐう
)
にゐる
劣等
(
れつとう
)
人種
(
じんしゆ
)
が
威張
(
ゐば
)
るのだ。
153
あんな
者
(
もの
)
を
数
(
かず
)
に
入
(
い
)
れて
不平
(
ふへい
)
をもらすやうな
馬鹿
(
ばか
)
があるかい。
154
キリスト
再臨
(
さいりん
)
の
近付
(
ちかづ
)
いた
今日
(
こんにち
)
、
155
そんな
偏狭
(
へんけふ
)
な
心
(
こころ
)
はスツカリ
放擲
(
はうてき
)
して
天空
(
てんくう
)
海濶
(
かいくわつ
)
日月
(
じつげつ
)
と
心
(
こころ
)
を
斉
(
ひと
)
しうする
襟度
(
きんど
)
にならぬか。
156
アラブの
為
(
ため
)
にいい
面汚
(
つらよご
)
しだぞ。
157
所
(
ところ
)
は
世界
(
せかい
)
の
中心地
(
ちうしんち
)
、
158
エルサレムの
橄欖山
(
かんらんざん
)
上
(
じやう
)
に
身
(
み
)
をおき
乍
(
なが
)
ら
不平
(
ふへい
)
を
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
がどこにあるかい。
159
のうトンク』
160
トンク『ウン、
161
そらさうだ。
162
人
(
ひと
)
は
何事
(
なにごと
)
も
思
(
おも
)
ひ
様
(
やう
)
が
肝腎
(
かんじん
)
だ。
163
おれ
達
(
たち
)
のやうな
労働者
(
らうどうしや
)
は
労働者
(
らうどうしや
)
らしくして
居
(
を
)
つたらいいのだ、
164
紳士
(
しんし
)
の
真似
(
まね
)
をせうたつて、
165
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ないからな、
166
あの
紳士
(
しんし
)
だつて、
167
元
(
もと
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
と
同様
(
どうやう
)
労働者
(
らうどうしや
)
だつたのだ、
168
精神
(
せいしん
)
的
(
てき
)
労働
(
らうどう
)
をやるか、
169
肉体
(
にくたい
)
的
(
てき
)
労働
(
らうどう
)
をやるか
丈
(
だけ
)
の
違
(
ちが
)
ひだ。
170
仮令
(
たとへ
)
アラブでも
紳士
(
しんし
)
紳商
(
しんせう
)
となればユダヤ
人
(
じん
)
を
頤
(
あご
)
で
使
(
つか
)
ふことが
出来
(
でき
)
るからなア』
171
テク『
俺
(
おれ
)
は
紳士
(
しんし
)
なんか
大嫌
(
だいきら
)
ひだ。
172
本物
(
ほんもの
)
の
紳士
(
しんし
)
は
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
には
一人
(
ひとり
)
もない。
173
皆
(
みな
)
我利
(
がり
)
々々
(
がり
)
紳士
(
しんし
)
ばかりだよ。
174
虚偽
(
きよぎ
)
的
(
てき
)
生活
(
せいくわつ
)
に
甘
(
あま
)
んじて
紳士
(
しんし
)
なんて
云
(
い
)
つてる
奴
(
やつ
)
の
面
(
つら
)
を
見
(
み
)
るとなぐり
度
(
た
)
くなつてくるワ、
175
先
(
ま
)
づ
今日
(
こんにち
)
紳士
(
しんし
)
といふ
奴
(
やつ
)
は
第一
(
だいいち
)
、
176
美装
(
びさう
)
をなすこと、
177
第二
(
だいに
)
、
178
大
(
だい
)
建造物
(
けんざうぶつ
)
に
住居
(
ぢうきよ
)
すること、
179
第三
(
だいさん
)
、
180
一箇所
(
いつかしよ
)
以上
(
いじやう
)
の
別荘
(
べつさう
)
を
有
(
いう
)
すること、
181
第四
(
だいし
)
、
182
妾宅
(
せふたく
)
を
設
(
まう
)
くる
事
(
こと
)
、
183
第五
(
だいご
)
、
184
物見
(
ものみ
)
遊山
(
ゆさん
)
のしげきこと、
185
第六
(
だいろく
)
、
186
一切
(
いつさい
)
の
労働
(
らうどう
)
を
禁
(
きん
)
じ、
187
茶
(
ちや
)
一
(
ひと
)
つ
自分
(
じぶん
)
の
手
(
て
)
より
汲
(
く
)
まぬこと、
188
第七
(
だいしち
)
、
189
一
(
いち
)
日
(
にち
)
に
何回
(
なんくわい
)
となく
宴会
(
えんくわい
)
に
列
(
れつ
)
して、
190
妖婦
(
えうふ
)
を
枕頭
(
ちんとう
)
に
侍
(
はべ
)
らし、
191
妖婦
(
えうふ
)
の
膝
(
ひざ
)
を
枕
(
まくら
)
に
痛飲
(
つういん
)
馬食
(
ばしよく
)
して、
192
其
(
その
)
胃袋
(
ゐぶくろ
)
に
差支
(
さしつか
)
へなき
程度
(
ていど
)
のものたること……
此
(
この
)
位
(
くらゐ
)
のものだ。
193
どこに
紳士
(
しんし
)
の
本領
(
ほんりやう
)
があるかい』
194
ツーロ『そりや
汝
(
きさま
)
の
云
(
い
)
ふ
紳士
(
しんし
)
と、
195
俺
(
おれ
)
の
云
(
い
)
ふ
紳士
(
しんし
)
とは
大
(
おほい
)
に
趣
(
おもむき
)
が
違
(
ちが
)
ふ。
196
俺
(
おれ
)
の
云
(
い
)
ふ
紳士
(
しんし
)
は……
第一
(
だいいち
)
、
197
人格
(
じんかく
)
の
最
(
もつと
)
も
高
(
たか
)
きこと、
198
第二
(
だいに
)
、
199
慈悲心
(
じひしん
)
に
富
(
と
)
めること、
200
第三
(
だいさん
)
、
201
礼儀
(
れいぎ
)
を
守
(
まも
)
ること、
202
第四
(
だいし
)
、
203
政治欲
(
せいぢよく
)
を
断
(
た
)
ち
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
に
私財
(
しざい
)
を
擲
(
なげう
)
つて
貢献
(
こうけん
)
すること、
204
第五
(
だいご
)
、
205
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
の
制
(
せい
)
を
遵奉
(
じゆんぽう
)
すること、
206
第六
(
だいろく
)
、
207
沢山
(
たくさん
)
な
住宅
(
ぢうたく
)
を
有
(
も
)
ち
無料
(
むれう
)
にて
他人
(
ひと
)
に
自由
(
じいう
)
に
使用
(
しよう
)
せしむること、
208
第七
(
だいしち
)
、
209
神
(
かみ
)
を
信
(
しん
)
じ、
210
家内
(
かない
)
睦
(
むつま
)
じく
感謝
(
かんしや
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
ること……マアこんなものだ。
211
これを
称
(
しよう
)
して
紳士
(
しんし
)
といふのだ』
212
トンク『そんな
紳士
(
しんし
)
が
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
一人
(
ひとり
)
でも
半分
(
はんぶん
)
でもあるだらうかな』
213
ツーロ『ないから
尊
(
たふと
)
いのだ。
214
ダイヤモンドだつて
金
(
きん
)
だつて、
215
ヨルダン
河
(
がは
)
の
砂礫
(
しやれき
)
のやうにそこらにごろついてあつてみよ、
216
誰
(
たれ
)
だつて
貴重品
(
きちようひん
)
扱
(
あつか
)
ひはしてくれないよ。
217
無
(
な
)
いから
尊
(
たふと
)
いよ、
218
太陽
(
たいやう
)
だつて
一
(
ひと
)
つだから
皆
(
みな
)
が
拝
(
をが
)
むのだよ。
219
あの
星
(
ほし
)
みい、
220
誰
(
たれ
)
も
一
(
ひと
)
つホシイといふ
奴
(
やつ
)
がないだないか』
221
テク『オイ、
222
ツーロ、
223
ソンナ ツーロくせぬことをいふない。
224
それよりも
現代
(
げんだい
)
の
紳士
(
しんし
)
を
標準
(
へうじゆん
)
として
考
(
かんが
)
へるのが
適確
(
てきかく
)
だ、
225
其
(
その
)
紳士
(
しんし
)
といふ
奴
(
やつ
)
を、
226
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
労働
(
らうどう
)
総同盟
(
そうどうめい
)
でも
起
(
おこ
)
して、
227
警告
(
けいこく
)
を
与
(
あた
)
へ
改良
(
かいりやう
)
さしてやるのだなア。
228
今日
(
こんにち
)
の
紳士
(
しんし
)
の
資格
(
しかく
)
を
考
(
かんが
)
へてみると、
229
妾宅
(
せふたく
)
の
数
(
かず
)
如何
(
いかん
)
に
仍
(
よ
)
つて、
230
紳士
(
しんし
)
仲間
(
なかま
)
の
等級
(
とうきふ
)
に
差別
(
さべつ
)
を
生
(
しやう
)
じ、
231
宴会
(
えんくわい
)
の
度数
(
どすう
)
と
妖婦
(
えうふ
)
相識
(
さうしき
)
の
数
(
すう
)
如何
(
いかん
)
は
人気
(
にんき
)
に
大
(
だい
)
なる
関係
(
くわんけい
)
を
及
(
およ
)
ぼすのだ。
232
これが
今日
(
こんにち
)
の
所謂
(
いはゆる
)
紳士
(
しんし
)
規定
(
きてい
)
だ。
233
何
(
なん
)
と
不道理
(
ふだうり
)
な
見解
(
けんかい
)
だないか。
234
今日
(
こんにち
)
の
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
が
健康
(
けんかう
)
状態
(
じやうたい
)
は
日夜
(
にちや
)
刻々
(
こくこく
)
に
害
(
がい
)
されつつあるのだ。
235
殊
(
こと
)
に
性欲
(
せいよく
)
の
随時
(
ずいじ
)
随所
(
ずいしよ
)
でみたさるるその
半面
(
はんめん
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
236
幾多
(
いくた
)
の
忌
(
いま
)
はしい
病毒
(
びやうどく
)
の
為
(
ため
)
に
睾丸内
(
かうぐわんない
)
に
発生
(
はつせい
)
する
精虫
(
せいちう
)
は
追々
(
おひおひ
)
と
減殺
(
げんさつ
)
され、
237
子孫
(
しそん
)
は
漸次
(
ぜんじ
)
減少
(
げんせう
)
するに
至
(
いた
)
るの
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
いてゐるのだ。
238
彼奴
(
きやつ
)
等
(
ら
)
の
乱淫
(
らんいん
)
乱行
(
らんかう
)
は
益々
(
ますます
)
民力
(
みんりよく
)
を
減殺
(
げんさつ
)
せしむるのみならず、
239
家庭
(
かてい
)
の
妻女
(
さいぢよ
)
は
其
(
その
)
反動
(
はんどう
)
で、
240
狂気
(
きやうき
)
的
(
てき
)
に
異性
(
いせい
)
の
男子
(
だんし
)
を
求
(
もと
)
め、
241
性欲
(
せいよく
)
の
満足
(
まんぞく
)
と
反感
(
はんかん
)
の
慰安
(
ゐあん
)
に
家
(
うち
)
を
外
(
よそ
)
にして
飛出
(
とびだ
)
し、
242
役者
(
やくしや
)
部屋
(
べや
)
へ
這
(
は
)
ひ
込
(
こ
)
むのだ。
243
紳士
(
しんし
)
の
家庭
(
かてい
)
の
妻女
(
さいぢよ
)
といふものに
婦徳
(
ふとく
)
や
貞節
(
ていせつ
)
は
薬
(
くすり
)
にしたくも
無
(
な
)
い
位
(
くらゐ
)
だ。
244
そして
冷
(
つめた
)
い
深窓
(
しんそう
)
に、
245
男
(
をとこ
)
も
女
(
をんな
)
も
呻吟
(
しんぎん
)
してゐるのだ。
246
体質
(
たいしつ
)
の
貧弱
(
ひんじやく
)
なる
彼奴
(
きやつ
)
等
(
ら
)
の
子孫
(
しそん
)
は
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つて
何事
(
なにごと
)
もなすの
力
(
ちから
)
なく、
247
遂
(
つひ
)
には
子孫
(
しそん
)
が
滅亡
(
めつぼう
)
するより
途
(
みち
)
は
無
(
な
)
い。
248
だと
云
(
い
)
つて
之
(
これ
)
も
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
だから
仕方
(
しかた
)
があるまい。
249
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
彼奴
(
きやつ
)
等
(
ら
)
が
目
(
め
)
をさまし、
250
共同
(
きようどう
)
の
友
(
とも
)
や
同族
(
どうぞく
)
の
友
(
とも
)
と
共
(
とも
)
に
働
(
はたら
)
くの
妙味
(
めうみ
)
を
見出
(
みいだ
)
し、
251
貧民
(
ひんみん
)
と
共
(
とも
)
に
今迄
(
いままで
)
の
態度
(
たいど
)
を
改
(
あらた
)
めて
社会
(
しやくわい
)
に
活動
(
くわつどう
)
する
様
(
やう
)
にならなくちや、
252
彼奴
(
きやつ
)
等
(
ら
)
も
最早
(
もはや
)
世
(
よ
)
の
終
(
をは
)
りだ。
253
いつ
迄
(
まで
)
も
世
(
よ
)
は
持切
(
もちき
)
りにはさせぬと、
254
どこやらの
神
(
かみ
)
さまが
仰有
(
おつしや
)
つたからなア』
255
トンク『オイ、
256
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
はまだ
時間
(
じかん
)
が
来
(
き
)
てゐないのに、
257
此
(
この
)
木
(
き
)
の
小蔭
(
こかげ
)
でさぼつてゐるのだから、
258
ユダヤ
人
(
じん
)
と
同
(
おな
)
じよに
月給
(
げつきふ
)
をくれないといつて
不平
(
ふへい
)
を
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
に
行
(
ゆ
)
かない。
259
ユダヤ
人
(
じん
)
は
勤勉
(
きんべん
)
だから、
260
仕事
(
しごと
)
の
能率
(
のうりつ
)
が
倍
(
ばい
)
以上
(
いじやう
)
になるのだから、
261
汝
(
きさま
)
たちのやうに
俸給
(
ほうきふ
)
の
額
(
たか
)
のみで
不平
(
ふへい
)
を
云
(
い
)
つたつて
駄目
(
だめ
)
だ。
262
サア、
263
チツト
働
(
はたら
)
かう。
264
土木
(
どぼく
)
監督
(
かんとく
)
に
見付
(
みつか
)
つたら
大変
(
たいへん
)
だぞ』
265
テク『エヽ
仕方
(
しかた
)
がないなア、
266
食
(
く
)
はぬが
悲
(
かな
)
しさかい』
267
とスコツプを
手
(
て
)
に
提
(
さ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
268
作事場
(
さくじば
)
の
方
(
はう
)
へ
厭
(
いや
)
相
(
さう
)
に
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
269
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
く
暮
(
く
)
れ
果
(
は
)
て、
270
労働
(
らうどう
)
終結
(
しうけつ
)
のラツパが
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
峰
(
みね
)
に
轟
(
とどろ
)
いて
来
(
き
)
た。
271
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はスコツプをかたげた
儘
(
まま
)
逸早
(
いちはや
)
く
団子石
(
だんごいし
)
のゴロゴロした
坂路
(
さかみち
)
を
嬉
(
うれ
)
しさうに
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
272
数多
(
あまた
)
の
大工
(
だいく
)
や
手伝
(
てつだひ
)
人足
(
にんそく
)
は、
273
単縦陣
(
たんじうぢん
)
を
張
(
は
)
つて
黒蟻
(
くろあり
)
のやうに
各
(
かく
)
家路
(
いへぢ
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
274
此
(
これ
)
等
(
ら
)
の
連中
(
れんちう
)
は
皆
(
みな
)
エルサレムの
街
(
まち
)
に
寄宿
(
きしゆく
)
してゐる。
2741
ユダヤ
人
(
じん
)
が
大多数
(
だいたすう
)
を
占
(
し
)
めてゐた。
275
そこへ
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をついて
上
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
る
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
があつた。
276
これは
日出島
(
ひのでのしま
)
から
遥々
(
はるばる
)
聖地
(
せいち
)
へ、
277
キリスト
再臨
(
さいりん
)
の
先駆
(
せんく
)
としてやつて
来
(
き
)
た、
278
ルートバハーの
宣伝使
(
せんでんし
)
ブラバーサであつた。
279
ブラバーサは
山上
(
さんじやう
)
の
最
(
もつと
)
も
見
(
み
)
はらしよき
地点
(
ちてん
)
に
停立
(
ていりつ
)
し、
280
居柄
(
をりから
)
輝
(
かがや
)
く
八日
(
やうか
)
の
月
(
つき
)
を
眺
(
なが
)
め、
281
ブラバーサ
『
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば、
月
(
つき
)
は
真空
(
まそら
)
を
稍
(
やや
)
過
(
す
)
ぎて
282
あたり
輝
(
かがや
)
く
星
(
ほし
)
のかずかず
283
たまさかの
月
(
つき
)
の
夜
(
よ
)
なればこもりゐの
284
たへ
難
(
がた
)
くして
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
りぬ』
285
かく
歌
(
うた
)
ひて、
286
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
にエルサレムの
街
(
まち
)
を
見
(
み
)
おろし
乍
(
なが
)
ら
懐郷
(
くわいきやう
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られてゐる。
287
そこへ
慌
(
あわた
)
だしく
上
(
のぼ
)
り
来
(
き
)
たる
一
(
ひと
)
つの
影
(
かげ
)
がある。
288
果
(
はた
)
して
何人
(
なにびと
)
ならむか。
289
(
大正一二・七・一二
旧五・二九
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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