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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
第1章 橄欖山
第2章 宣伝使
第3章 聖地夜
第4章 訪問客
第5章 至聖団
第2篇 聖地巡拝
第6章 偶像都
第7章 巡礼者
第8章 自動車
第9章 膝栗毛
第10章 追懐念
第3篇 花笑蝶舞
第11章 公憤私憤
第12章 誘惑
第13章 試練
第14章 荒武事
第15章 大相撲
第16章 天消地滅
第4篇 遠近不二
第17章 強請
第18章 新聞種
第19章 祭誤
第20章 福命
第21章 遍路
第22章 妖行
第5篇 山河異涯
第23章 暗着
第24章 妖蝕
第25章 地図面
第26章 置去
第27章 再転
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第64巻(卯の巻)上
> 第4篇 遠近不二 > 第19章 祭誤
<<< 新聞種
(B)
(N)
福命 >>>
第一九章
祭誤
(
さいご
)
〔一六四八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第4篇 遠近不二
よみ(新仮名遣い):
えんきんふじ
章:
第19章 祭誤
よみ(新仮名遣い):
さいご
通し章番号:
1648
口述日:
1923(大正12)年07月13日(旧05月30日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
(日の出島)小北山のユラリ教
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-24 12:22:48
OBC :
rm64a19
愛善世界社版:
218頁
八幡書店版:
第11輯 458頁
修補版:
校定版:
218頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
高城山
(
たかしろやま
)
の
峰
(
みね
)
つづき、
002
小北山
(
こぎたやま
)
の
松林
(
まつばやし
)
を
切
(
き
)
り
開
(
ひら
)
いて
沢山
(
たくさん
)
な
小宮
(
こみや
)
やチヤーチを
建
(
た
)
てたルートバハーの
脱走教
(
だつそうけう
)
があつた。
003
ここの
主人
(
しゆじん
)
を
虎嶋
(
とらしま
)
久之助
(
ひさのすけ
)
と
云
(
い
)
ひ、
004
女房
(
にようばう
)
は
虎嶋
(
とらしま
)
寅子
(
とらこ
)
と
云
(
い
)
ふ。
005
生
(
うま
)
れつき
自我心
(
じがしん
)
の
強
(
つよ
)
い
女
(
をんな
)
であつたが
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
けいとう
)
と
云
(
い
)
ふのを
奇貨
(
きくわ
)
としてユラリ
教
(
けう
)
と
云
(
い
)
ふ
変則
(
へんそく
)
的
(
てき
)
なる
教団
(
けうだん
)
をたてユラリ
彦
(
ひこの
)
命
(
みこと
)
を
祀
(
まつ
)
つて、
006
盛
(
さか
)
んにルートバハーの
教主
(
けうしゆ
)
ウヅンバラチヤンダーに
反抗
(
はんかう
)
的
(
てき
)
態度
(
たいど
)
をとつてゐる。
007
そして
自分
(
じぶん
)
は
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大弥勒
(
おほみろく
)
、
008
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
自称
(
じしよう
)
し、
009
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
皺枯声
(
しわがれごゑ
)
を
出
(
だ
)
して
濁
(
にご
)
つた
言霊
(
ことたま
)
で
四辺
(
あたり
)
の
空気
(
くうき
)
を
灰色
(
はひいろ
)
に
染
(
そめ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
010
ここへ
集
(
あつま
)
る
信徒
(
しんと
)
の
中
(
なか
)
には
随分
(
ずゐぶん
)
色々
(
いろいろ
)
な
変
(
かは
)
り
者
(
もの
)
があつて、
011
中
(
なか
)
にも
最
(
もつと
)
も
寅子
(
とらこ
)
の
信任
(
しんにん
)
を
得
(
え
)
たのは、
012
善
(
よし
)
も
悪
(
あし
)
きも
難波江
(
なにはえ
)
の
菖蒲
(
あやめ
)
のお
花
(
はな
)
と
云
(
い
)
ふ、
013
あまり
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
くない
背
(
せ
)
の
低
(
ひく
)
い
横太
(
よこぶと
)
い
年増婆
(
としまば
)
アさまである。
014
そして
寅子
(
とらこ
)
の
最
(
もつと
)
も
信任
(
しんにん
)
してゐるのは
守宮別
(
やもりわけ
)
と
云
(
い
)
ふ
海軍
(
かいぐん
)
の
士官
(
しくわん
)
上
(
あが
)
りの
外国語
(
ぐわいこくご
)
をよく
囀
(
さへづ
)
る
男
(
をとこ
)
であつた。
015
寅子
(
とらこ
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
自称
(
じしよう
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
守宮別
(
やもりわけ
)
と
共
(
とも
)
に
宅
(
うち
)
を
外
(
そと
)
にして
曲霊軍
(
きよくれいぐん
)
の
襷
(
たすき
)
を
掛
(
か
)
け、
016
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
を
隈
(
くま
)
なく
巡教
(
じゆんけう
)
し、
017
軍艦
(
ぐんかん
)
布教
(
ふけう
)
までやつてヤンチヤ
婆
(
ば
)
アさまの
名
(
な
)
を
売
(
う
)
つた、
018
したたか
者
(
もの
)
である。
019
守宮別
(
やもりわけ
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
腹
(
はら
)
を
合
(
あは
)
せ
如何
(
いか
)
にしても
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
のウヅンバラチヤンダーを
社会
(
しやくわい
)
の
廃物
(
はいぶつ
)
となし、
020
自分
(
じぶん
)
等
(
たち
)
がとつて
代
(
かは
)
らむと
苦心
(
くしん
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
021
守宮別
(
やもりわけ
)
は
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
反対
(
はんたい
)
運動
(
うんどう
)
を
開始
(
かいし
)
し、
022
終
(
つひ
)
には
六六六
(
ろくろくろく
)
の
獣
(
けだもの
)
を
使
(
つか
)
つてウヅンバラチヤンダーの
肉体
(
にくたい
)
の
自由
(
じいう
)
まで
奪
(
うば
)
つた
剛
(
がう
)
の
者
(
もの
)
である。
023
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
の
瘤
(
こぶ
)
として
居
(
ゐ
)
た
人物
(
じんぶつ
)
を、
024
うまく
圧倒
(
あつたふ
)
した
上
(
うへ
)
は、
025
もはや
天下
(
てんか
)
に
恐
(
おそ
)
るべきものなしと、
026
菖蒲
(
あやめ
)
のお
花
(
はな
)
を
筆頭
(
ひつとう
)
に
守宮別
(
やもりわけ
)
、
027
曲彦
(
まがひこ
)
、
028
木戸口
(
きどぐち
)
、
029
お
松
(
まつ
)
等
(
など
)
の
連中
(
れんちう
)
と
謀
(
はか
)
り
小北山
(
こぎたやま
)
に
拝殿
(
はいでん
)
を
建
(
た
)
て、
030
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
しますやうと
祈願
(
きぐわん
)
をこらして
居
(
ゐ
)
た。
031
さうして
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
へ
乗込
(
のりこ
)
んで
一切
(
いつさい
)
の
教権
(
けうけん
)
を
握
(
にぎ
)
らむと
聖地
(
せいち
)
の
古
(
ふる
)
い
役員
(
やくゐん
)
をたらし
込
(
こ
)
み、
032
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
へウヅンバラチヤンダーが
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たので、
033
肝
(
きも
)
をつぶしホウボウの
態
(
てい
)
にて
再
(
ふたた
)
び
小北山
(
こぎたやま
)
へ
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り
守宮別
(
やもりわけ
)
は
海外
(
かいぐわい
)
に
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し、
034
後
(
あと
)
に
寅子姫
(
とらこひめ
)
、
035
お
花
(
はな
)
、
036
曲彦
(
まがひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
第二
(
だいに
)
の
策戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
にとりかかつた。
037
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
を
書
(
か
)
いてルートバハーの
信者
(
しんじや
)
を
籠絡
(
ろうらく
)
し、
038
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
勢力
(
せいりよく
)
を
失墜
(
しつつゐ
)
せむものと
難波
(
なには
)
の
里
(
さと
)
の
高山某
(
たかやまぼう
)
に
軍用金
(
ぐんようきん
)
を
寄附
(
きふ
)
させ、
039
日出島
(
ひのでじま
)
全体
(
ぜんたい
)
の
神社
(
じんじや
)
仏閣
(
ぶつかく
)
を
巡回
(
じゆんくわい
)
し、
040
身魂調
(
みたましら
)
べと
称
(
しよう
)
し、
041
口碑
(
こうひ
)
伝説
(
でんせつ
)
を
探
(
さぐ
)
つていろいろの
因縁
(
いんねん
)
をつけ、
042
筆先
(
ふでさき
)
を
作
(
つく
)
つて
誠
(
まこと
)
しやかに
少数
(
せうすう
)
の
信徒
(
しんと
)
を
誤魔
(
ごま
)
かして
居
(
ゐ
)
る。
043
今日
(
けふ
)
は
春季
(
しゆんき
)
大祭
(
たいさい
)
の
為
(
ため
)
五六十
(
ごろくじふ
)
人
(
にん
)
の
信徒
(
しんと
)
が
集
(
あつま
)
つて
来
(
き
)
た。
044
祭典
(
さいてん
)
は
無事
(
ぶじ
)
に
済
(
す
)
んで
信者
(
しんじや
)
は
各
(
おのおの
)
家
(
いへ
)
に
帰
(
かへ
)
つた。
045
あとには
曲彦
(
まがひこ
)
、
046
寅子
(
とらこ
)
、
047
菖蒲
(
あやめ
)
のお
花
(
はな
)
、
048
久之助
(
ひさのすけ
)
、
049
高山彦
(
たかやまひこ
)
等
(
など
)
が
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
協議
(
けふぎ
)
を
凝
(
こら
)
して
居
(
ゐ
)
る。
050
曲彦
(
まがひこ
)
は
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いて、
051
曲彦
『
皆
(
みな
)
さま、
052
お
神徳
(
かげ
)
によりまして
春季
(
しゆんき
)
大祭
(
たいさい
)
も
無事
(
ぶじ
)
終了
(
しうれう
)
致
(
いた
)
し、
053
さしもに
広
(
ひろ
)
き
霊場
(
れいぢやう
)
も
立錐
(
りつすゐ
)
の
余地
(
よち
)
なき
迄
(
まで
)
に
信者
(
しんじや
)
が
集
(
あつ
)
まらず、
054
却
(
かへつ
)
て、
055
込
(
こ
)
みあはずお
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
きました。
056
之
(
これ
)
も
日頃
(
ひごろ
)
熱心
(
ねつしん
)
に
御
(
ご
)
布教
(
ふけう
)
して
下
(
くだ
)
さる
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
活動
(
くわつどう
)
の
結果
(
けつくわ
)
と
有難
(
ありがた
)
く
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
します。
057
就
(
つ
)
いては
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
058
吾々
(
われわれ
)
がかねて
計画
(
けいくわく
)
してゐた
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
059
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
御
(
ご
)
結婚
(
けつこん
)
もたうとう
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
乱
(
みだ
)
す
悪神
(
あくがみ
)
の
憑
(
うつ
)
つた
瑞
(
みづ
)
の
霊
(
みたま
)
の
為
(
ため
)
に
挙行
(
きよかう
)
されて
了
(
しま
)
ひ、
060
本当
(
ほんたう
)
に
苦辛
(
くしん
)
した
甲斐
(
かひ
)
もなく
誠
(
まこと
)
にお
目出度
(
めでた
)
う
御座
(
ござ
)
いませぬわい。
061
貴方
(
あなた
)
はいつもいつも
此
(
この
)
結婚
(
けつこん
)
は
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
には
指一本
(
ゆびいつぽん
)
さえさせぬ、
062
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
許
(
ゆる
)
して
天晴
(
あつぱ
)
れ
結婚
(
けつこん
)
をさし、
063
ルートバハーの
教
(
をしへ
)
を
立直
(
たてなほ
)
すと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
064
一体
(
いつたい
)
どうなつたので
御座
(
ござ
)
います』
065
寅子
(
とらこ
)
は、
066
虎嶋寅子
『ソレハ
神界
(
しんかい
)
の
都合
(
つがふ
)
によつてお
仕組
(
しぐみ
)
を
変
(
か
)
へたのだよ。
067
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
068
玉照姫
(
たまてるひめ
)
もたうとう
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
悪霊
(
あくれい
)
に
感染
(
かんせん
)
して
了
(
しま
)
ひ、
069
水晶魂
(
すゐしやうみたま
)
が
泥魂
(
どろみたま
)
になりかけました。
070
さあ
之
(
これ
)
から
吾々
(
われわれ
)
の
正念場
(
しやうねんば
)
だ。
071
グヅグヅしてゐては
駄目
(
だめ
)
ですよ。
072
もはや
期待
(
きたい
)
してゐた
玉照彦
(
たまてるひこ
)
様
(
さま
)
、
073
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
も
駄目
(
だめ
)
だから
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が、
074
もう
一働
(
ひとはたら
)
きやらねば
到底
(
たうてい
)
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぞや。
075
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
控
(
ひか
)
えは
何程
(
なんぼ
)
でもあるぞよ、
076
肝腎
(
かんじん
)
の
事
(
こと
)
は
系統
(
ひつぽう
)
にさしてあるぞよとお
筆
(
ふで
)
に
出
(
だ
)
してゐられませうがな。
077
その
系統
(
ひつぽう
)
は
誰
(
たれ
)
の
事
(
こと
)
だと
思
(
おも
)
ひますか。
078
金勝要
(
きんかつかねの
)
神
(
かみ
)
の
身魂
(
みたま
)
もサツパリ
駄目
(
だめ
)
だし、
079
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
居
(
を
)
らなくては、
080
もう
此
(
この
)
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
しは
出来
(
でき
)
ますまい。
081
艮
(
うしとらの
)
金神
(
こんじん
)
、
082
坤金神
(
ひつじさるのこんじん
)
、
083
金勝要
(
きんかつかねの
)
神
(
かみ
)
、
084
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
、
085
四魂
(
しこん
)
揃
(
そろ
)
ふて
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
さすぞよ、
086
とお
筆
(
ふで
)
に
出
(
で
)
てゐるでせう。
087
艮
(
うしとらの
)
金神
(
こんじん
)
の
御魂
(
みたま
)
はもはや
御
(
ご
)
昇天
(
しようてん
)
遊
(
あそ
)
ばし、
088
坤金神
(
ひつじさるのこんじん
)
の
生宮
(
いきみや
)
は
悪霊
(
あくれい
)
にワヤにされて
了
(
しま
)
ひ、
089
金勝要
(
きんかつかねの
)
神
(
かみ
)
は
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
い
神
(
かみ
)
で
役員
(
やくゐん
)
達
(
たち
)
に
祭
(
まつ
)
り
込
(
こ
)
まれて
慢心
(
まんしん
)
致
(
いた
)
し、
090
到底
(
たうてい
)
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
どころか、
091
ルートバハーの
維持
(
ゐぢ
)
も
出来
(
でき
)
ませぬ。
092
四魂
(
しこん
)
の
中
(
うち
)
、
093
三魂
(
さんこん
)
迄
(
まで
)
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たねば、
094
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
の
処
(
ところ
)
で
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
でクレンと
覆
(
かへ
)
すとお
筆
(
ふで
)
に
出
(
で
)
てゐるでせう。
095
それだから
此
(
こ
)
の
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
一厘
(
いちりん
)
のところで
掌
(
てのひら
)
をかへすのですよ。
096
宜
(
よろ
)
しいかな。
097
取違
(
とりちが
)
ひを
致
(
いた
)
しなさるなや』
098
曲彦
『それほど
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
霊
(
みたま
)
が
曇
(
くも
)
つとるのなら、
099
何故
(
なぜ
)
大祭
(
たいさい
)
毎
(
ごと
)
に
頼
(
たの
)
みさがして、
100
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
に
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
ふのですか。
101
チツと
矛盾
(
むじゆん
)
ぢやありませぬか』
102
寅子
『エー、
103
分
(
わか
)
らぬ
人
(
ひと
)
ぢやな。
104
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
さへ
詣
(
まゐ
)
らしておけばルートバハーの
信者
(
しんじや
)
が「ヤツパリ
小北山
(
こぎたやま
)
の
神殿
(
しんでん
)
は
因縁
(
いんねん
)
があるに
違
(
ちが
)
ひない。
105
あれだけ
悪
(
わる
)
く
云
(
い
)
はれても
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
が
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げに
行
(
ゆ
)
くから、
106
矢張
(
やつぱり
)
偉
(
えら
)
い
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だ」と
思
(
おも
)
はせる……
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
をしてるのだよ。
107
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
は
人間
(
にんげん
)
に
分
(
わか
)
りませぬよ。
108
神謀
(
しんぼう
)
鬼策
(
きさく
)
の
仕組
(
しぐみ
)
を
遊
(
あそ
)
ばすのが
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
御
(
ご
)
神策
(
しんさく
)
だよ』
109
曲彦
『ヤア、
110
それで
貴女
(
あなた
)
の
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
、
111
悪
(
あく
)
にかけたら
抜目
(
ぬけめ
)
のない、
112
やり
方
(
かた
)
が
分
(
わか
)
りましたよ。
113
ヘン
糞面白
(
くそおもしろ
)
くもない』
114
とあとは
小声
(
こごゑ
)
で
呟
(
つぶや
)
く。
115
寅子
『ヘン、
116
措
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
され、
117
私
(
わたし
)
が
悪
(
あく
)
に
見
(
み
)
えますかな。
118
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
は
悪
(
あく
)
に
見
(
み
)
えて
善
(
ぜん
)
を
遊
(
あそ
)
ばすのだよ。
119
何
(
なに
)
もかも
昔
(
むかし
)
からの
根本
(
こつぽん
)
の
因縁
(
いんねん
)
を
十万
(
じふまん
)
億土
(
おくど
)
のドン
底
(
ぞこ
)
まで
行
(
い
)
つて
調
(
しら
)
べて
来
(
き
)
た
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
120
何程
(
なにほど
)
お
前
(
まへ
)
さまは
賢
(
かしこ
)
うても
軍人
(
ぐんじん
)
上
(
あが
)
りぢやないか。
121
軍人
(
ぐんじん
)
が
神界
(
しんかい
)
の
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
りますかい。
122
お
前
(
まへ
)
さまは
早
(
はや
)
く
女子
(
によし
)
の
留守
(
るす
)
の
中
(
うち
)
に
拝殿
(
はいでん
)
を
建
(
た
)
て、
123
事務所
(
じむしよ
)
を
建
(
た
)
て、
124
そして
費用
(
ひよう
)
は
何
(
なん
)
ぼでも
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
愈
(
いよいよ
)
となれば、
125
スツタモンダと
云
(
い
)
つて
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
も
出
(
だ
)
さぬぢやないか、
126
そんな
事
(
こと
)
でゴテゴテ
云
(
い
)
ふ
資格
(
しかく
)
がありますかい。
127
スツ
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
りなさい』
128
曲彦
『ヤア、
129
どうも
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
には
楯
(
たて
)
つく
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬわい。
130
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
一寸先
(
いつすんさき
)
の
見
(
み
)
えぬ
人民
(
じんみん
)
ですから、
131
何
(
なん
)
と
口答
(
くちごた
)
へする
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
132
マア
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
ちませう』
133
寅子
『あ、
134
それが
宜
(
よ
)
いそれが
宜
(
よ
)
い、
135
何事
(
なにごと
)
も
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
申
(
まを
)
す
通
(
とほ
)
りに
致
(
いた
)
さねば
神界
(
しんかい
)
の
仕組
(
しぐみ
)
がおくれて
仕方
(
しかた
)
がない。
136
これ
久之助
(
ひさのすけ
)
さま、
137
お
前
(
まへ
)
さまも
私
(
わたし
)
のハズバンドなら、
138
少
(
すこ
)
しシツカリしなさらぬかい。
139
菖蒲
(
あやめ
)
さまも
何
(
なに
)
して
御座
(
ござ
)
る。
140
曲彦
(
まがひこ
)
にアンナ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はして
黙
(
だま
)
つてる
事
(
こと
)
がありますかいな』
141
菖蒲のお花
『
私
(
わたし
)
も
間
(
ま
)
がな
隙
(
すき
)
がな、
142
曲彦
(
まがひこ
)
さまに
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りますが、
143
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
若
(
わか
)
い
人
(
ひと
)
だから
到底
(
たうてい
)
婆
(
ばば
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さいませぬ。
144
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
寅子姫
(
とらこひめ
)
さま、
145
私
(
わたし
)
は
一
(
ひと
)
つ
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きましたが、
146
それが
本当
(
ほんたう
)
とすれば、
147
かうしてグヅグヅしてゐる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きますまい』
148
寅子
『お
前
(
まへ
)
さまの
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
と
云
(
い
)
ふのは
一体
(
いつたい
)
ドンナ
事
(
こと
)
かいな。
149
差支
(
さしつかへ
)
なくば
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
150
此方
(
こちら
)
にも
考
(
かんが
)
へがありますから』
151
お花
『それなら
申
(
まを
)
しませうが、
152
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
のお
筆
(
ふで
)
に
西
(
にし
)
と
東
(
ひがし
)
にお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てて
神
(
かみ
)
がうつりて
守護
(
しゆご
)
を
致
(
いた
)
すぞよと
出
(
で
)
て
居
(
を
)
りませう。
153
東
(
ひがし
)
と
西
(
にし
)
のお
宮
(
みや
)
とは、
154
あなた
一体
(
いつたい
)
どこの
事
(
こと
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
りますか』
155
寅子
『オツホヽヽヽヽ、
156
お
花
(
はな
)
さま、
157
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なに
)
を
恍
(
とぼ
)
けてゐるのだい。
158
東
(
ひがし
)
のお
宮
(
みや
)
といふのは
小北山
(
こぎたやま
)
の
神殿
(
しんでん
)
ぢやないか。
159
人間
(
にんげん
)
の
初
(
はじま
)
り、
160
五穀
(
ごこく
)
の
初
(
はじま
)
りは
所謂
(
いはゆる
)
此
(
この
)
小北山
(
こぎたやま
)
ですよ。
161
そして
西
(
にし
)
のお
宮
(
みや
)
と
云
(
い
)
ふのは
聖地
(
せいち
)
の
桶伏山
(
をけぶせやま
)
ぢやありませぬか。
162
桶伏山
(
をけふせやま
)
の
神殿
(
しんでん
)
はあの
通
(
とほ
)
り
叩
(
たた
)
きつぶされましたが、
163
東
(
ひがし
)
のお
宮
(
みや
)
は
旭日
(
きよくじつ
)
昇天
(
しようてん
)
の
勢
(
いきほ
)
ひで
誰一人
(
たれひとり
)
指一本
(
ゆびいつぽん
)
支
(
さ
)
へるものがないぢやありませぬか。
164
これを
見
(
み
)
ても
神徳
(
しんとく
)
があるかないか
分
(
わか
)
るぢやありませぬか。
165
ルートバハーの
信者
(
しんじや
)
は
馬鹿
(
ばか
)
だから
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
為
(
ため
)
に
騙
(
だま
)
され、
166
壊
(
こは
)
された
宮
(
みや
)
の
跡
(
あと
)
へ
集
(
あつ
)
まつて、
167
壊
(
こは
)
たれる
宮
(
みや
)
の
為
(
ため
)
に
168
過
(
す
)
ぎ
去
(
さ
)
りし
偉大
(
ゐだい
)
のために
169
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
地
(
ち
)
に
伏
(
ふ
)
して
泣
(
な
)
く
170
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
171
なぞと、
172
憐
(
あは
)
れつぽい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
吠面
(
ほえづら
)
かわいてゐるぢやありませぬか。
173
それを
見
(
み
)
ても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
居
(
を
)
られるか、
174
居
(
を
)
られないか
分
(
わか
)
るでせう。
175
善
(
ぜん
)
の
道
(
みち
)
の
分
(
わか
)
るのはおそいと
神
(
かみ
)
は
云
(
い
)
はれますが、
176
今
(
いま
)
は
此
(
この
)
小北山
(
こぎたやま
)
はルートバハーの
信者
(
しんじや
)
からは
馬鹿
(
ばか
)
にされて
居
(
を
)
りますが、
177
今
(
いま
)
に
金色
(
こんじき
)
燦爛
(
さんらん
)
たるお
宮
(
みや
)
が
建
(
た
)
つて
桶伏山
(
をけぶせやま
)
尻
(
けつ
)
でも
喰
(
くら
)
へと
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
になるのですよ。
178
それだからお
前
(
まへ
)
さま
等
(
たち
)
しつかりなされと
云
(
い
)
ふのですよ。
179
イツヒヽヽヽヽ』
180
お花
『
寅子
(
とらこ
)
さま、
181
西
(
にし
)
と
東
(
ひがし
)
にお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てると
云
(
い
)
ふのはチツと
見当
(
けんたう
)
違
(
ちが
)
ひぢやありませぬか。
182
私
(
わたし
)
は
桶伏山
(
をけぶせやま
)
の
御
(
ご
)
神殿
(
しんでん
)
こそ
東
(
ひがし
)
のお
宮
(
みや
)
と
思
(
おも
)
ひます。
183
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
はそんな
小
(
ちひ
)
さいものぢやありますまい』
184
寅子
『ホヽヽヽヽ、
185
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
のおでましになるのが
東
(
ひがし
)
、
186
お
隠
(
かく
)
れになる
方
(
はう
)
を
西
(
にし
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つてるぢやありませぬか。
187
小北山
(
こぎたやま
)
が
西
(
にし
)
ぢやと
思
(
おも
)
ひますか。
188
貴女
(
あなた
)
も
分
(
わか
)
らぬ
方
(
かた
)
だな。
189
お
前
(
まへ
)
も
桶伏山
(
をけふせやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
蟄居
(
ちつきよ
)
してゐたので、
190
女子
(
によし
)
の
悪霊
(
あくれい
)
に
憑
(
うつ
)
られてソロソロ
恍
(
とぼ
)
けかけましたね。
191
ウツフヽヽヽヽ』
192
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
洋服姿
(
やうふくすがた
)
の
守宮別
(
やもりわけ
)
が
忙
(
いそ
)
がしげに
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
たるを
見
(
み
)
て
一同
(
いちどう
)
は
嬉
(
うれ
)
しさうに、
193
一同
『ヤア、
194
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
195
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
196
外国
(
ぐわいこく
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
はどうで
御座
(
ござ
)
りましたな。
197
定
(
さだ
)
めし
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
も
行渡
(
ゆきわた
)
つて
居
(
ゐ
)
るでせうな』
198
守宮別
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
酒
(
さけ
)
を
一杯
(
いつぱい
)
出
(
だ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
199
お
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
きもつて、
200
守宮別
(
やもりわけ
)
がゆつくり
物語
(
ものがた
)
りを
致
(
いた
)
しませう』
201
(
大正一二・七・一三
旧五・三〇
北村隆光
録)
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