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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
第1章 橄欖山
第2章 宣伝使
第3章 聖地夜
第4章 訪問客
第5章 至聖団
第2篇 聖地巡拝
第6章 偶像都
第7章 巡礼者
第8章 自動車
第9章 膝栗毛
第10章 追懐念
第3篇 花笑蝶舞
第11章 公憤私憤
第12章 誘惑
第13章 試練
第14章 荒武事
第15章 大相撲
第16章 天消地滅
第4篇 遠近不二
第17章 強請
第18章 新聞種
第19章 祭誤
第20章 福命
第21章 遍路
第22章 妖行
第5篇 山河異涯
第23章 暗着
第24章 妖蝕
第25章 地図面
第26章 置去
第27章 再転
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第64巻(卯の巻)上
> 第5篇 山河異涯 > 第26章 置去
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(B)
(N)
再転 >>>
第二六章
置去
(
おきざり
)
〔一六五五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第5篇 山河異涯
よみ(新仮名遣い):
さんがいがい
章:
第26章 置去
よみ(新仮名遣い):
おきざり
通し章番号:
1655
口述日:
1923(大正12)年07月13日(旧05月30日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
ヨルダン河のほとり、バハイ教のチャーチ、僧院ホテル
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-11-26 00:30:07
OBC :
rm64a26
愛善世界社版:
284頁
八幡書店版:
第11輯 483頁
修補版:
校定版:
286頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
守宮別
(
やもりわけ
)
一行
(
いつかう
)
は、
002
路地
(
ろぢ
)
や
町
(
まち
)
はづれの
野路
(
のぢ
)
を
辿
(
たど
)
りながら、
003
漸
(
やうや
)
くにしてヨルダン
河
(
がは
)
の
辺
(
ほとり
)
につきぬ。
004
守宮別
『これお
寅
(
とら
)
さま、
005
あのやかましいヨルダン
河
(
がは
)
と
云
(
い
)
ふのは
此
(
この
)
河
(
かは
)
ですよ。
006
よく
見
(
み
)
ておきなさい』
007
お寅
『
何
(
なん
)
とまあ
汚
(
きたな
)
い
河
(
かは
)
だこと。
008
ヨルダン
河
(
がは
)
ヨルダン
河
(
がは
)
と
云
(
い
)
ふからもつと
広
(
ひろ
)
い
河
(
かは
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのに、
009
是
(
これ
)
では
小北山
(
こぎたやま
)
の
麓
(
ふもと
)
を
流
(
なが
)
るる
大井川
(
おほゐがは
)
の
傍
(
そば
)
へもよれませぬよ。
010
そして
大井川
(
おほゐがは
)
の
水
(
みづ
)
は
綺麗
(
きれい
)
だが、
011
この
水
(
みづ
)
とした
事
(
こと
)
が
話
(
はなし
)
にも
何
(
なん
)
にもなりませぬわ』
012
曲彦
(
まがひこ
)
は
小才
(
こさい
)
らしく、
013
曲彦
『
大井川
(
おほゐがは
)
は
大
(
おほ
)
きいから
大井川
(
おほゐがは
)
と
云
(
い
)
ふのですよ』
014
お寅
『これ
曲
(
まが
)
やん、
015
何
(
なに
)
を
つべこべ
とやかましく
云
(
い
)
ふのだえ。
016
ソンナラヨルダン
河
(
がは
)
の
訳
(
わけ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
ますか』
017
曲彦
『ヨルダン
河
(
がは
)
といつたら、
018
ヨハネがバプテスマをキリストに
施
(
ほどこ
)
した
所
(
ところ
)
ですよ。
019
それだからヨハネのヨの
字
(
じ
)
を
取
(
と
)
つてヨルダン
河
(
がは
)
といふのですよ』
020
守宮別
『アハヽヽヽ、
021
ヨルダン
河
(
がは
)
と
云
(
い
)
ふのは
訛
(
なま
)
りだ。
022
本当
(
ほんたう
)
はヨロダン
河
(
がは
)
と
云
(
い
)
ふのだよ。
023
かうして
守宮別
(
やもりわけ
)
がよろよろと
歩
(
ある
)
いて、
024
ダンダンとバハイ
教
(
けう
)
のチヤーチへ
進
(
すす
)
んで
往
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
ふ
河
(
かは
)
だ。
025
それだからヨロダン
河
(
がは
)
だ。
026
アヽ
何
(
なん
)
だか
酒
(
さけ
)
がさめて
来
(
き
)
よつたやうだ。
027
どこぞ、
028
ここらにコツプ
酒
(
ざけ
)
でも
売
(
う
)
つて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
はないかなア』
029
お寅
『エヽまたしてもまたしても
酒々
(
さけさけ
)
と
何
(
なん
)
ぢやいな。
030
又
(
また
)
用
(
よう
)
が
済
(
す
)
みたらとつくりと
飲
(
の
)
まして
上
(
あ
)
げるから
辛抱
(
しんばう
)
しなさい』
031
守宮別
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
032
女王
(
ぢよわう
)
さまの
命令
(
めいれい
)
を
遵奉
(
じゆんぽう
)
せうかなア。
033
何
(
なん
)
だ
鳥
(
とり
)
の
巣
(
す
)
か
何
(
なん
)
ぞのやうに、
034
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
家
(
いへ
)
を
建
(
た
)
てて
居
(
を
)
るわい。
035
あれは
天狗
(
てんぐ
)
の
家
(
いへ
)
かも
知
(
し
)
れないよ。
036
あまり
小北山
(
こぎたやま
)
の
天狗
(
てんぐ
)
が
沢山
(
たくさん
)
来
(
き
)
たものだから、
037
天狗
(
てんぐ
)
の
奴
(
やつ
)
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かしてあんな
家
(
いへ
)
迄
(
まで
)
建
(
た
)
てて
吾々
(
われわれ
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
して
居
(
を
)
るわい。
038
小北
(
こきた
)
の
山
(
やま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
039
万里
(
ばんり
)
の
波濤
(
はたう
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
040
聖地
(
せいち
)
をさしてやつて
来
(
く
)
る
041
あつちやこつちやで
頭
(
あたま
)
うち
042
天狗
(
てんぐ
)
の
鼻
(
はな
)
の
高姫
(
たかひめ
)
も
043
今
(
いま
)
はさつぱり
駄目
(
だめ
)
ぢやぞえ
044
同
(
おな
)
じ
仲間
(
なかま
)
の
天狗
(
てんぐ
)
奴
(
め
)
が
045
いささか
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
して
046
ヨルダン
河
(
がは
)
の
並木
(
なみき
)
の
枝
(
えだ
)
に
047
巣
(
す
)
をかけよつたに
相違
(
さうゐ
)
ない
048
ホンに
世界
(
せかい
)
に
鬼
(
おに
)
はない
049
天狗
(
てんぐ
)
ばかりの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ
050
ドツコイシヨドツコイシヨー。
051
些
(
ちつ
)
と
確
(
しつか
)
りせなくてはなるまい。
052
あすこに
家
(
いへ
)
がある。
053
あれが
大方
(
おほかた
)
バハイ
教
(
けう
)
のお
館
(
やかた
)
だらう。
054
これお
花
(
はな
)
さま、
055
今度
(
こんど
)
はお
前
(
まへ
)
の
番
(
ばん
)
だよ。
056
肝要
(
かんえう
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
に
喋
(
しやべ
)
らしておくと
品格
(
ひんかく
)
が
下
(
さが
)
るからな。
057
もしもし
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
、
058
いやお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさま、
059
今度
(
こんど
)
は
沈黙
(
ちんもく
)
を
守
(
まも
)
りなさい。
060
お
花
(
はな
)
さまと
曲彦
(
まがひこ
)
さまが
十分
(
じふぶん
)
奮闘
(
ふんとう
)
するのだな』
061
お寅
『これ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
062
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまなどと
云
(
い
)
ふて
貰
(
もら
)
ふまい。
063
徹頭
(
てつとう
)
徹尾
(
てつび
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
云
(
い
)
ふのだよ』
064
守宮別
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
065
あゝ
六ケ敷
(
むつかしい
)
事
(
こと
)
だなア』
066
と
云
(
い
)
ひながら
早
(
はや
)
くもチヤーチの
前
(
まへ
)
に
着
(
つ
)
いた。
067
団扇
(
うちは
)
を
片手
(
かたて
)
にもつて
絶世
(
ぜつせい
)
の
美人
(
びじん
)
が
門口
(
かどぐち
)
に
石竹
(
せきちく
)
の
花
(
はな
)
を
弄
(
いぢ
)
りながら
遊
(
あそ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
068
これは
有名
(
いうめい
)
のサロメ
姫
(
ひめ
)
であつた。
069
守宮別
(
やもりわけ
)
、
070
曲彦
(
まがひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は
艶麗
(
えんれい
)
な
女
(
をんな
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うし、
071
口
(
くち
)
をポカンと
開
(
あ
)
けて
涎
(
よだれ
)
をたらたらと
流
(
なが
)
し、
072
顔
(
かほ
)
の
括約筋
(
くわつやくきん
)
をすつかりほどいて
居
(
ゐ
)
る。
073
曲彦
(
まがひこ
)
はド
拍子
(
びやうし
)
のぬけた
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
で、
074
曲彦
『モシモシそれなる
御
(
お
)
女中
(
ぢよちう
)
、
075
貴女
(
あなた
)
は
有名
(
いうめい
)
なサロメさまぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか』
076
サロメ
『ハイ、
077
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
078
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
は
遠国
(
ゑんこく
)
のお
方
(
かた
)
と
見
(
み
)
えますが、
079
このサロメに
何
(
なに
)
か
御用
(
ごよう
)
でも
御座
(
ござ
)
いますかな』
080
お
花
(
はな
)
は
横柄
(
わうへい
)
な
面
(
つら
)
をして、
081
お花
『
御用
(
ごよう
)
があればこそ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
082
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
がお
前
(
まへ
)
さまを
遥々
(
はるばる
)
お
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さつたのです。
083
サア
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
なさい』
084
サロメ
『ハイ、
085
さうしてその
救世主
(
きうせいしゆ
)
はいつ
来
(
こ
)
られますかな』
086
お花
『それ、
087
ここにお
出
(
いで
)
で
御座
(
ござ
)
います、
088
此
(
この
)
方
(
かた
)
です』
089
サロメ
『ヘエ、
090
此
(
この
)
方
(
かた
)
が
救世主
(
きうせいしゆ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
091
何
(
なん
)
とマア
意外
(
いぐわい
)
のお
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア』
092
お
寅
(
とら
)
は
爰
(
ここ
)
ぞと
斗
(
ばか
)
りシヤシヤリ
出
(
い
)
で、
093
お寅
『
意外
(
いぐわい
)
でせうがな「
意外
(
いぐわい
)
の
時
(
とき
)
に
意外
(
いぐわい
)
の
人
(
ひと
)
が
現
(
あら
)
はれて
意外
(
いぐわい
)
の
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
すぞよ」と
昔
(
むかし
)
から
予言
(
よげん
)
が
御座
(
ござ
)
いませうがな。
094
その
予言
(
よげん
)
に
応
(
かな
)
はせむが
為
(
ため
)
に、
095
意外
(
いぐわい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
意外
(
いぐわい
)
に
貴女
(
あなた
)
を
訪問
(
はうもん
)
したのですよ。
096
時
(
とき
)
にサロメさま、
097
今日
(
けふ
)
新聞
(
しんぶん
)
を
拝見
(
はいけん
)
しましたが
淑女
(
しゆくぢよ
)
の
身分
(
みぶん
)
をして、
098
ド
倒
(
たふ
)
し
者
(
もの
)
の、
099
大
(
おほ
)
きな
目玉
(
めだま
)
の、
100
梟
(
ふくろ
)
のやうな
顔
(
かほ
)
をしたブラバーサとやらと、
101
聖劇
(
せいげき
)
を
遊
(
あそ
)
ばしたさうですね。
102
その
事
(
こと
)
について
御
(
ご
)
意中
(
いちう
)
を
承
(
うけたま
)
はりたいと
思
(
おも
)
つて
訪問
(
あが
)
つたのですよ。
103
そして
貴女
(
あなた
)
は、
104
本当
(
ほんたう
)
に
誰
(
たれ
)
が
救世主
(
きうせいしゆ
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つてお
出
(
いで
)
でせうね。
105
それが
分
(
わか
)
らぬやうでは、
106
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
此処
(
ここ
)
で
修業
(
しうげふ
)
して
居
(
ゐ
)
たつて
駄目
(
だめ
)
ですよ』
107
サロメ
『
此処
(
ここ
)
は
門口
(
かどぐち
)
ですから
奥
(
おく
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さい。
108
此処
(
ここ
)
にはバハーウラー
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふ
聖師
(
せいし
)
がお
出
(
いで
)
で
御座
(
ござ
)
います。
109
其
(
その
)
方
(
かた
)
にお
目
(
め
)
にかかつてとつくりお
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さいませ』
110
お寅
『お
前様
(
まへさま
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
此
(
この
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
を
認
(
みと
)
めますか。
111
お
認
(
みと
)
めなされば
入
(
はい
)
つてもよろしい。
112
それの
分
(
わか
)
らぬやうな
色盲
(
しきまう
)
なら
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
はさう
軽々
(
かるがる
)
と
這入
(
はい
)
りませぬぞや。
113
お
前
(
まへ
)
さまの
出
(
で
)
やうによつては
這入
(
はい
)
らぬ
事
(
こと
)
もない。
114
又
(
また
)
お
前
(
まへ
)
さまの
這入
(
はい
)
りやうによつては
出
(
で
)
ぬ
事
(
こと
)
もない』
115
サロメ
『ホヽヽヽヽ、
116
貴女
(
あなた
)
はどうかして
居
(
ゐ
)
ますね。
117
余
(
あま
)
り
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
陽気
(
やうき
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いますから
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なさいませ。
118
癲狂院
(
てんきやうゐん
)
迄
(
まで
)
は
随分
(
ずいぶん
)
遠
(
とほ
)
う
御座
(
ござ
)
いますからねえ』
119
お寅
『
癲狂院
(
てんきやうゐん
)
は
日出島
(
ひのでじま
)
では
一番
(
いちばん
)
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
で
御座
(
ござ
)
います。
120
日出島
(
ひのでじま
)
では
天教山
(
てんけうざん
)
と
申
(
まを
)
します。
121
その
結構
(
けつこう
)
な
高天原
(
たかあまはら
)
から
天降
(
あまくだ
)
つて
来
(
き
)
た
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ですからよく
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さい。
122
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
地球儀
(
ちきうぎ
)
そつくりの
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
だから……
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
にすると
云
(
い
)
ふ
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
だから
一目
(
ひとめ
)
御覧
(
ごらん
)
になつたら
分
(
わか
)
るでせう』
123
サロメは
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し、
124
サロメ
『オホヽヽヽヘヽヽヽヽ』
125
曲彦
(
まがひこ
)
は
耐
(
こら
)
へ
切
(
き
)
れないやうになつて、
126
曲彦
『
何
(
なん
)
とまあ
綺麗
(
きれい
)
な
別嬪
(
べつぴん
)
だなア。
127
まるで
天教山
(
てんけうざん
)
の
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
様
(
さま
)
のやうだ……
高姫
(
たかひめ
)
さまよりこの
方
(
かた
)
が
救世主
(
きうせいしゆ
)
のやうだ。
128
ナンボ
高姫
(
たかひめ
)
さまが
救世主
(
きうせいしゆ
)
でも
個人
(
こじん
)
としては
何
(
なん
)
の
関係
(
くわんけい
)
もない。
129
もしも
此
(
この
)
方
(
かた
)
が
曲彦
(
まがひこ
)
の
手
(
て
)
でも
握
(
にぎ
)
つて
下
(
くだ
)
さつたら
本当
(
ほんたう
)
に
救世主
(
きうせいしゆ
)
様
(
さま
)
だ。
130
私
(
わたし
)
は
蘇
(
よみがへ
)
るのだが』
131
お
花
(
はな
)
はムツとして
言
(
ことば
)
あらあらしく、
132
お花
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
不躾
(
ぶしつけ
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
133
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
さまの
教
(
をしへ
)
にソンナ
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
りますか。
134
些
(
ち
)
つと
窘
(
たしな
)
みなさい。
135
アタ
態
(
ざま
)
の
悪
(
わる
)
い……コレコレサロメさまとやら、
136
あのド
倒者
(
たふしもの
)
のブラバーサは
此
(
この
)
家
(
うち
)
に
居
(
を
)
りませうなア。
137
貴女
(
あなた
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
聖劇
(
せいげき
)
とやらをやつたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だから、
138
きつと
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るのでせう』
139
サロメ
『ホヽヽヽ
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います。
140
あのお
方
(
かた
)
はシオン
山
(
ざん
)
の
麓
(
ふもと
)
に
居
(
を
)
られます。
141
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
で
四五回
(
しごくわい
)
お
目
(
め
)
にかかつただけで
御座
(
ござ
)
いますわ。
142
どうかシオン
山
(
ざん
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいませ。
143
左様
(
さやう
)
なら』
144
とサロメは
煩
(
うる
)
さく
思
(
おも
)
つたか、
145
門内
(
もんない
)
に
入
(
い
)
り
中
(
なか
)
から
手早
(
てばや
)
く
閂
(
かんぬき
)
をかけて
了
(
しま
)
つた。
146
守宮別
『お
寅
(
とら
)
さま、
147
もう
帰
(
かへ
)
りませうかい。
148
どうしてもこいつはシオン
山
(
ざん
)
に
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
ますよ。
149
それよりも
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて、
150
守宮別
(
やもりわけ
)
はビールでもやらねば
体
(
からだ
)
がもてませぬわい』
151
お寅
『そりやさうかも
知
(
し
)
れませぬ。
152
サア
帰
(
かへ
)
りませう。
153
グヅグヅして
居
(
を
)
ると
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れます。
154
……
今日
(
けふ
)
はかういふておとなしく
帰
(
かへ
)
りそつと
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へに
来
(
く
)
るのだよ。
155
あのブラバーサの
極道
(
ごくだう
)
奴
(
め
)
、
156
きつと
此
(
この
)
家
(
や
)
に
隠
(
かく
)
れて
居
(
を
)
るに
相違
(
さうゐ
)
ない。
157
彼奴
(
あいつ
)
をとつつかまへてあの
女
(
をんな
)
の
前
(
まへ
)
でギウギウ
云
(
い
)
はせ、
158
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
救世主
(
きうせいしゆ
)
で
御座
(
ござ
)
いますと
証言
(
しようげん
)
させねばならぬ。
159
併
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
はもはや
遅
(
おそ
)
いから
一
(
いつ
)
たん
帰
(
かへ
)
り
確
(
しつか
)
りと
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
を
定
(
さだ
)
めて、
160
又
(
また
)
参
(
まゐ
)
りませう。
161
曲
(
まが
)
やん、
162
お
前
(
まへ
)
はその
叢
(
くさむら
)
の
中
(
なか
)
に
隠
(
かく
)
れて
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
るのだよ。
163
そして
様子
(
やうす
)
を
報告
(
はうこく
)
するのだよ』
164
曲彦
『お
寅
(
とら
)
さま、
165
そいつは
殺生
(
せつしやう
)
です。
166
私
(
わたし
)
だつて
一
(
いつ
)
たん
宿
(
やど
)
に
帰
(
かへ
)
り
晩餐
(
ばんさん
)
に
有付
(
ありつ
)
かねばやり
切
(
き
)
れないぢやありませぬか』
167
お寅
『エヽ
弱虫
(
よわむし
)
だなア、
168
仕方
(
しかた
)
がない、
169
ソンナラ
帰
(
かへ
)
りませう』
170
茲
(
ここ
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
日没
(
ひのくれ
)
頃
(
ごろ
)
僧院
(
そうゐん
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
171
お寅
『ヤレヤレ
辛
(
しん
)
どい
事
(
こと
)
だつた。
172
嫌
(
いや
)
な
洋食
(
やうしよく
)
の
晩餐
(
ばんさん
)
でも
食
(
た
)
べてゆつくり
相談
(
さうだん
)
しませう。
173
コレ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
174
ビールを
飲
(
の
)
むなとは
云
(
い
)
はないが、
175
せめて
半
(
はん
)
ダース
位
(
くらゐ
)
で
辛抱
(
しんばう
)
しなさい。
176
今朝
(
けさ
)
のやうに
二
(
に
)
ダースもやられると
貧弱
(
ひんじやく
)
の
私
(
わたし
)
の
懐
(
ふところ
)
が
乾
(
かわ
)
いて
了
(
しま
)
ひますよ』
177
守宮別
(
やもりわけ
)
は
手
(
て
)
を
打
(
う
)
つてボーイを
呼
(
よ
)
んだ。
178
ボーイはハイと
答
(
こた
)
へて
忽
(
たちま
)
ち
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれた。
179
守宮別
『
早
(
はや
)
く
晩餐
(
ばんさん
)
の
用意
(
ようい
)
をして
呉
(
く
)
れ。
180
そしてビールを
半
(
はん
)
ダース、
181
又
(
また
)
半
(
はん
)
ダース
持
(
も
)
つて
来
(
く
)
るのだよ』
182
ボーイ
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
183
然
(
しか
)
しビールは
高
(
たか
)
う
御座
(
ござ
)
いますから
今朝
(
けさ
)
の
勘定
(
かんぢやう
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
184
あの
勘定
(
かんぢやう
)
が
済
(
す
)
まなくては
後
(
あと
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
く
)
る
訳
(
わけ
)
には
行
(
い
)
きませぬ』
185
守宮別
『サア
勘定
(
かんぢやう
)
は
幾何
(
いくら
)
だな』
186
ボーイ
『ヘイ
些
(
ちつ
)
と
高
(
たか
)
う
御座
(
ござ
)
いますが、
187
あれは
二百
(
にひやく
)
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
から
貯
(
たくは
)
へてある
最
(
もつと
)
も
貴重
(
きちよう
)
な
高価
(
かうか
)
なもので
御座
(
ござ
)
いまして、
188
一本
(
いつぽん
)
が
百
(
ひやく
)
ポンドより
安価
(
やす
)
く
出来
(
でき
)
ませぬ。
189
どうか
二千
(
にせん
)
四百
(
よんひやく
)
ポンド
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
います』
190
守宮別
『
何
(
なん
)
と
高
(
たか
)
いものだなア。
191
道理
(
だうり
)
で
甘
(
うま
)
いと
思
(
おも
)
つた。
192
サアお
寅
(
とら
)
さま、
193
お
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
して
下
(
くだ
)
さい』
194
お寅
『
二千
(
にせん
)
四百
(
よんひやく
)
ポンドとは
二銭
(
にせん
)
を
四百
(
よんひやく
)
かな。
195
さうすると
八
(
はち
)
円
(
えん
)
になるぢやないか。
196
高
(
たか
)
いものだなア』
197
守宮別
『モシモシボーイさま、
198
冗談
(
じやうだん
)
いつちやいけませぬよ。
199
二千
(
にせん
)
四百
(
よんひやく
)
ポンドと
云
(
い
)
へば
二万
(
にまん
)
四千
(
よんせん
)
両
(
りやう
)
ぢやないか』
200
ボーイ
『ハイ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
201
お寅
『エーイ、
202
シヽ
知
(
し
)
らぬわいな。
203
ソンナ
金
(
かね
)
がどこに
御座
(
ござ
)
いますか。
204
お
前
(
まへ
)
さまもなぜ
先
(
さき
)
に
値
(
ね
)
を
聞
(
き
)
いて
飲
(
の
)
まぬのかいな。
205
もう
愛想
(
あいそ
)
がつきて
了
(
しま
)
つた。
206
二万
(
にまん
)
四千
(
よんせん
)
両
(
りやう
)
なんて
一
(
いつ
)
ぺんに
飲
(
の
)
んで
了
(
しま
)
ふものが
何処
(
どこ
)
にありますか』
207
守宮別
『それでもそれだけの
価値
(
ねうち
)
はありますよ。
208
お
蔭
(
かげ
)
で
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
位
(
ぐらゐ
)
寿命
(
じゆみやう
)
が
延
(
の
)
びますわ』
209
お寅
『ヘン
置
(
お
)
きなさい。
210
お
前
(
まへ
)
さまの
寿命
(
じゆみやう
)
位
(
くらゐ
)
延
(
の
)
びたつて
縮
(
ちぢ
)
んだつて
構
(
かま
)
ひますか。
211
なぜ
懐
(
ふところ
)
と
相談
(
さうだん
)
して
飲
(
の
)
みなさらぬのだえ』
212
守宮別
『
懐
(
ふところ
)
と
相談
(
さうだん
)
せうたつて
無一物
(
むいちぶつ
)
だ。
213
お
前
(
まへ
)
さまが
皆
(
みな
)
金
(
かね
)
は
握
(
にぎ
)
つて
居
(
を
)
るのだから
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか』
214
お寅
『アヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
215
そんなら
払
(
はら
)
つて
上
(
あ
)
げませう。
216
これこれボーイさま、
217
今直
(
います
)
ぐに
上
(
あ
)
げますから、
218
もう
半
(
はん
)
ダース
程
(
ほど
)
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
219
一寸
(
ちよつと
)
出
(
だ
)
すのが
大層
(
たいそう
)
だから、
220
その
間
(
あひだ
)
に
出
(
だ
)
しますからなア』
221
ボーイ
『ソンナラ
支配人
(
しはいにん
)
と
相談
(
さうだん
)
致
(
いた
)
して
見
(
み
)
ませう。
222
さうして
支配人
(
しはいにん
)
が
持
(
も
)
つて
往
(
い
)
つてもよいと
申
(
まを
)
しましたら
持
(
も
)
つて
参
(
まゐ
)
りませう』
223
とボーイは
階下
(
かいか
)
に
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
224
後
(
あと
)
にお
寅
(
とら
)
は
面
(
つら
)
膨
(
ふく
)
らし、
225
お寅
『これ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
226
余
(
あんま
)
りぢやないか。
227
私
(
わたし
)
に
恥
(
はぢ
)
を
掻
(
か
)
かすのか』
228
守宮別
『
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
自由
(
じいう
)
にする
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
ぢやありませぬか。
229
いつも
金
(
かね
)
位
(
ぐらゐ
)
何
(
なん
)
だと
仰有
(
おつしや
)
りますから、
230
張
(
は
)
りこみて
飲
(
の
)
んだのですよ』
231
お寅
『それだつて
勿体
(
もつたい
)
ないぢやないか。
232
なアお
花
(
はな
)
さま』
233
お花
『えらい
剥
(
は
)
ぐ
所
(
ところ
)
だなア。
234
私
(
わたし
)
吃驚
(
びつくり
)
致
(
いた
)
しました』
235
かく
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ、
236
ボーイはビールを
一
(
いち
)
ダースさげて
来
(
き
)
た。
237
ボーイ
『
今
(
いま
)
支配人
(
しはいにん
)
に
申
(
まを
)
しましたら「
滅多
(
めつた
)
にお
金
(
かね
)
に
差支
(
さしつか
)
へある
方
(
かた
)
ではなからうから」と
申
(
まを
)
しましたから
持
(
も
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
238
守宮別
『よしよしそこへ
置
(
お
)
いて
呉
(
く
)
れ』
239
ボーイ
『
又
(
また
)
御用
(
ごよう
)
がありましたら
呼
(
よ
)
んで
下
(
くだ
)
さい。
240
晩餐
(
ばんさん
)
の
用意
(
ようい
)
がありますから』
241
と
階段
(
かいだん
)
を
下
(
くだ
)
つて
往
(
ゆ
)
く。
242
守宮別
(
やもりわけ
)
は
一
(
いち
)
ダースのビールを
喉
(
のど
)
をグウグウ
鳴
(
な
)
らしながら
鯨
(
くぢら
)
が
潮
(
しほ
)
を
飲
(
の
)
むやうに
飲
(
の
)
み
干
(
ほ
)
し、
243
其
(
その
)
場
(
ば
)
にぐたりと
倒
(
たふ
)
れて
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
つた。
244
お寅
『これ
曲
(
まが
)
やん、
245
お
花
(
はな
)
さま、
246
二万
(
にまん
)
四千
(
よんせん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
はどうしても
無
(
な
)
い。
247
やうやく
懐
(
ふところ
)
に
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
しかない。
248
サア
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ては
大変
(
たいへん
)
だから
裏門
(
うらもん
)
からそつと
逃
(
に
)
げるのですよ』
249
曲彦
『
守宮別
(
やもりわけ
)
さまはどうするのですか』
250
お寅
『どうせうたつて
仕方
(
しかた
)
がないではないか。
251
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
ければ
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
にビールが
入
(
い
)
つて
居
(
を
)
るのだから
皆
(
みな
)
出
(
だ
)
すだらう。
252
お
花
(
はな
)
さまや
私
(
わたし
)
は
一滴
(
ひとしづく
)
も
飲
(
の
)
まぬのだから、
253
払
(
はら
)
ふ
義務
(
ぎむ
)
はない、
254
サアサア
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
にここを
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し、
255
シオン
山
(
ざん
)
のブラバーサの
所
(
ところ
)
へでも
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
かうではないか』
256
曲彦
『
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
さまが
食
(
く
)
ひ
逃
(
に
)
げを
遊
(
あそ
)
ばすのかなア』
257
お寅
『エヽどうでもよい。
258
嫌
(
いや
)
ならここに
居
(
を
)
りなさい』
259
と
云
(
い
)
ひながら
慌
(
あわ
)
てて
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
の
財布
(
さいふ
)
を
置忘
(
おきわす
)
れ、
260
裏口
(
うらぐち
)
から
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
261
守宮別
(
やもりわけ
)
は
夜中
(
よなか
)
時分
(
じぶん
)
に
目
(
め
)
をさまし
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば、
262
お
寅
(
とら
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えぬので
小便
(
こよう
)
にでも
行
(
い
)
つたのかと
思
(
おも
)
ふて
又
(
また
)
もやグウグウ
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
つた。
263
朝
(
あさ
)
になつても
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えないので、
264
手
(
て
)
を
打
(
う
)
つてボーイを
呼
(
よ
)
んだ。
265
ボーイはペコペコしながら
入
(
い
)
り
来
(
き
)
たり、
266
ボーイ
『お
客
(
きやく
)
さま
何
(
なに
)
か
御用
(
ごよう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
267
守宮別
『
私
(
わたし
)
の
連
(
つれ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はどこへ
行
(
い
)
つたかな』
268
ボーイ
『
昨夜
(
さくや
)
裏口
(
うらぐち
)
から
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
かれました。
269
こいつは
食逃
(
くひに
)
げではないかと
思
(
おも
)
ひましたが
三百
(
さんびやく
)
両
(
りやう
)
の
大金
(
たいきん
)
が
残
(
のこ
)
されて
居
(
ゐ
)
ましたから、
270
先
(
ま
)
づ
其
(
その
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
きました』
271
守宮別
『ハテ、
272
昨夜
(
さくや
)
のビールのお
金
(
かね
)
をどうして
払
(
はら
)
はうかなア』
273
ボーイ
『お
客
(
きやく
)
さま
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
274
夜前
(
やぜん
)
一本
(
いつぽん
)
が
百
(
ひやく
)
ポンドと
云
(
い
)
つたのは
洒落
(
しやれ
)
ですよ。
275
実
(
じつ
)
は
一本
(
いつぽん
)
が
半
(
はん
)
ドルですから、
276
どうぞ
十二
(
じふに
)
ドル
下
(
くだ
)
さいませ。
277
そして
昨夜
(
さくや
)
のと
一所
(
いつしよ
)
にして
一八
(
じふはち
)
ドル
下
(
くだ
)
さればそれですみますからな』
278
守宮別
『ハヽヽヽ
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だイ、
279
皆
(
みな
)
払
(
はら
)
つてやらう。
280
お
前
(
まへ
)
にもポチをやるから
何
(
なん
)
ぼでも
掴
(
つか
)
んで
往
(
ゆ
)
け。
281
サア
此
(
この
)
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
くなる
迄
(
まで
)
此処
(
ここ
)
に
宿
(
とま
)
るのだから
大切
(
たいせつ
)
に
世話
(
せわ
)
をするのだよ』
282
守宮別
(
やもりわけ
)
は
又
(
また
)
一夜
(
いちや
)
を
此処
(
ここ
)
に
明
(
あ
)
かし
宿
(
やど
)
の
勘定
(
かんぢやう
)
を
済
(
す
)
ませ、
283
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
所在
(
ありか
)
をたづねてブラリブラリとシオン
山
(
ざん
)
の
谷底
(
たにそこ
)
めがけて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
284
(
大正一二・七・一三
旧五・三〇
加藤明子
録)
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