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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
第1章 橄欖山
第2章 宣伝使
第3章 聖地夜
第4章 訪問客
第5章 至聖団
第2篇 聖地巡拝
第6章 偶像都
第7章 巡礼者
第8章 自動車
第9章 膝栗毛
第10章 追懐念
第3篇 花笑蝶舞
第11章 公憤私憤
第12章 誘惑
第13章 試練
第14章 荒武事
第15章 大相撲
第16章 天消地滅
第4篇 遠近不二
第17章 強請
第18章 新聞種
第19章 祭誤
第20章 福命
第21章 遍路
第22章 妖行
第5篇 山河異涯
第23章 暗着
第24章 妖蝕
第25章 地図面
第26章 置去
第27章 再転
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第64巻(卯の巻)上
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<<< 大相撲
(B)
(N)
強請 >>>
第一六章
天消
(
てんせう
)
地滅
(
ちめつ
)
〔一六四五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第3篇 花笑蝶舞
よみ(新仮名遣い):
かしょうちょうぶ
章:
第16章 天消地滅
よみ(新仮名遣い):
てんしょうちめつ
通し章番号:
1645
口述日:
1923(大正12)年07月12日(旧05月29日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
橄欖山の山頂
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-12-02 13:44:06
OBC :
rm64a16
愛善世界社版:
185頁
八幡書店版:
第11輯 447頁
修補版:
校定版:
185頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
マリヤ
『
晴
(
は
)
れもせず
曇
(
くも
)
りも
果
(
は
)
てぬ
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
002
月
(
つき
)
の
御空
(
みそら
)
に
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
する
003
行先
(
ゆくさき
)
は
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
する
所
(
ところ
)
まで
004
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
あてに
旅立
(
たびだ
)
つ
法
(
のり
)
の
道
(
みち
)
005
父母
(
ちちはは
)
の
愛
(
あい
)
にも
勝
(
まさ
)
る
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
006
○
007
ほんに
可愛
(
いと
)
しいあの
人
(
ひと
)
の
008
恋
(
こひ
)
しなつかし
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
009
涙
(
なみだ
)
で
別
(
わか
)
れた
其
(
その
)
夜
(
よ
)
から
010
どこにどうして
御座
(
ござ
)
るかと
011
寝
(
ね
)
た
間
(
ま
)
も
忘
(
わす
)
れず
居
(
を
)
つたのに
012
なんぼなんでも
余
(
あんま
)
りな
013
今更
(
いまさら
)
切
(
き
)
れとは
何
(
なに
)
かいな
014
情
(
なさけ
)
ないやら
悔
(
くや
)
しいやら
015
無情
(
つれな
)
いお
方
(
かた
)
になりました
016
ほんにいとしい
彼方
(
あのかた
)
と
017
思
(
おも
)
へば
泣
(
な
)
いても
泣
(
な
)
き
切
(
き
)
れず
018
諦
(
あきら
)
められぬこの
手紙
(
てがみ
)
019
いとしいとしと
思
(
おも
)
ふ
程
(
ほど
)
020
憎
(
にく
)
い
言葉
(
ことば
)
のあの
人
(
ひと
)
が
021
妾
(
わたし
)
はほんとに
懐
(
なつ
)
かしい』
022
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
をウロついて
居
(
ゐ
)
る
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
がある。
023
これはアメリカンコロニーの
牛耳
(
ぎうじ
)
を
取
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
るマリヤであつた。
024
ブラバーサはマリヤの
女難
(
ぢよなん
)
を
避
(
さ
)
けむ
為
(
ため
)
、
025
逸早
(
いちはや
)
くも
僧院
(
そうゐん
)
ホテルを
立
(
た
)
ち
出
(
いで
)
てシオン
山
(
ざん
)
の
渓谷
(
けいこく
)
に
草庵
(
さうあん
)
を
結
(
むす
)
び
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
たのである。
026
マリヤは
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
歌
(
うた
)
つて
恋
(
こひ
)
に
憔
(
やつ
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
027
ブラバーサの
後
(
あと
)
を
探
(
さが
)
して
居
(
ゐ
)
るのである。
028
かかる
所
(
ところ
)
へ
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みから
優
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
歌
(
うた
)
ひ
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
029
サロメ
『
緑
(
みどり
)
の
風
(
かぜ
)
に
花
(
はな
)
は
散
(
ち
)
り
030
逝
(
ゆ
)
く
春
(
はる
)
の
宵
(
よひ
)
歎
(
なげ
)
きつつ
031
己
(
おのれ
)
が
心
(
こころ
)
に
夏
(
なつ
)
は
来
(
き
)
ぬ
032
夕
(
ゆふべ
)
胡蝶
(
こてふ
)
の
床
(
とこ
)
に
臥
(
ふ
)
し
033
晨
(
あした
)
輝
(
かがや
)
く
花
(
はな
)
思
(
おも
)
ふ
034
悩
(
なや
)
ましの
夢
(
ゆめ
)
今
(
いま
)
さめぬ
035
現実
(
げんじつ
)
の
月
(
つき
)
空
(
そら
)
高
(
たか
)
く
036
青葉
(
あをば
)
は
光
(
ひか
)
る
橄欖
(
かんらん
)
の
山
(
やま
)
に
037
せめて
憩
(
いこ
)
はむ
吾
(
わ
)
が
心
(
こころ
)
』
038
と
歌
(
うた
)
ひつつ
静々
(
しづしづ
)
朧
(
おぼろ
)
の
月夜
(
つきよ
)
に
浮
(
う
)
いたやうに
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのはサロメであつた。
039
折々
(
をりをり
)
両人
(
りやうにん
)
は
此
(
この
)
山上
(
さんじやう
)
で
月下
(
げつか
)
に
出会
(
でくは
)
すのである。
040
されど
互
(
たがひ
)
に
余
(
あま
)
り
心易
(
こころやす
)
くもせず、
041
又
(
また
)
沁々
(
しみじみ
)
と
話
(
はな
)
した
事
(
こと
)
もない。
042
双方
(
さうはう
)
とも
期
(
き
)
せずして
同情
(
どうじやう
)
の
念
(
ねん
)
にかられ、
043
何物
(
なにもの
)
にか
惹
(
ひ
)
かるる
如
(
ごと
)
く
二人
(
ふたり
)
は
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
にもハツキリ
顔
(
かほ
)
の
分
(
わか
)
る
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
近
(
ちか
)
づいた。
044
マリヤ『
行
(
ゆく
)
水
(
みづ
)
の
帰
(
かへ
)
らむよしもなし
045
散
(
ち
)
る
花
(
はな
)
を
止
(
とど
)
めむよしもなし』
046
サロメ『
桜
(
さくら
)
の
花
(
はな
)
の
盛
(
さか
)
りこそ
047
君
(
きみ
)
と
睦
(
むつ
)
みし
月日
(
つきひ
)
なり
048
月
(
つき
)
は
幾度
(
いくたび
)
かはれども
049
日
(
ひ
)
は
幾日
(
いくにち
)
か
重
(
かさ
)
なれど
050
君
(
きみ
)
に
遇
(
あ
)
ふべきよしもない』
051
マリヤ『
涙
(
なみだ
)
の
中
(
うち
)
に
夏
(
なつ
)
は
来
(
き
)
ぬ
052
夜
(
よ
)
毎
(
ごと
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
螢
(
ほたる
)
こそ
053
こがるる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
似
(
に
)
たるかな』
054
サロメ『
今
(
いま
)
は
悲
(
かな
)
しき
思
(
おも
)
ひ
出
(
で
)
の
055
夜
(
よ
)
毎
(
ごと
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
螢
(
ほたる
)
こそ
056
焦
(
こが
)
るる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
似
(
に
)
たるかな』
057
かく
両人
(
りやうにん
)
は
意気
(
いき
)
投合
(
とうがふ
)
して
何
(
いづ
)
れも
恋
(
こひ
)
の
敗者
(
はいしや
)
となりし
述懐
(
じゆつくわい
)
を
打明
(
うちあ
)
け
歌
(
うた
)
つた。
058
是
(
これ
)
よりマリヤ、
059
サロメの
両人
(
りやうにん
)
は
姉妹
(
しまい
)
の
如
(
ごと
)
く
親
(
した
)
しくなり、
060
互
(
たがひ
)
に
心胸
(
しんきよう
)
を
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
けて
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
ふ
事
(
こと
)
となつた。
061
サロメ
『マリヤ
様
(
さま
)
、
062
貴女
(
あなた
)
の
今
(
いま
)
のお
歌
(
うた
)
によりまして
妾
(
わたし
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
とソツクリだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
悟
(
さと
)
りました。
063
ほんたうに
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
ふやうにならないもので
御座
(
ござ
)
いますなア』
064
マリヤ
『ハイ、
065
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
066
もはや
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
嫌
(
いや
)
になつて
参
(
まゐ
)
りました。
067
思
(
おも
)
ひ
込
(
こ
)
んだ
男
(
をとこ
)
に
捨
(
す
)
てられ、
068
もはや
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
069
オリオン
星座
(
せいざ
)
よりキリストが
現
(
あら
)
はれたまふとも
人間
(
にんげん
)
として
恋
(
こひ
)
に
破
(
やぶ
)
れた
以上
(
いじやう
)
は、
070
もはや
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
071
キリストの
再臨
(
さいりん
)
なんか
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬわ』
072
と
半狂乱
(
はんきやうらん
)
の
如
(
ごと
)
くになつて
居
(
ゐ
)
る。
073
サロメ
『あなたは
永
(
なが
)
らく
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けなさつたのも、
074
キリスト
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
つ
為
(
ため
)
では
無
(
な
)
かつたのですか』
075
マリヤ
『
妾
(
わたし
)
の
待望
(
たいばう
)
して
居
(
ゐ
)
るキリストは
左様
(
さやう
)
な
高遠
(
かうゑん
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
076
妾
(
わたし
)
の
愛
(
あい
)
の
欲望
(
よくばう
)
を
満
(
みた
)
して
下
(
くだ
)
さる
愛情
(
あいじやう
)
の
深
(
ふか
)
い
清
(
きよ
)
らかな
男子
(
をとこ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
077
妾
(
わたし
)
の
一身
(
いつしん
)
に
取
(
と
)
つてキリストと
仰
(
あふ
)
ぐのは
日出
(
ひので
)
の
島
(
しま
)
からお
出
(
いで
)
になつた、
078
ブラバーサ
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
います』
079
サロメ
『
妾
(
わたし
)
だつてキリストの
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですよ。
080
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
を
満
(
みた
)
して
呉
(
く
)
れる
愛情
(
あいじやう
)
の
深
(
ふか
)
い
方
(
かた
)
があれば、
081
其
(
その
)
方
(
かた
)
こそ
妾
(
わたし
)
に
対
(
たい
)
して
本当
(
ほんたう
)
のキリストで
御座
(
ござ
)
いますわ。
082
乾
(
かわ
)
き
切
(
き
)
つたる
魂
(
たましひ
)
に
清泉
(
せいせん
)
の
水
(
みづ
)
を
与
(
あた
)
へ、
083
朽果
(
くちは
)
てむとする
心
(
こころ
)
に
生命
(
せいめい
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さる
方
(
かた
)
が
所謂
(
いはゆる
)
キリストですわ。
084
さうしてブラバーサ
様
(
さま
)
は
何処
(
どちら
)
へお
出
(
いで
)
になつたか
分
(
わか
)
らないのですか』
085
マリヤ
『ハイ
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
行
(
ぎやう
)
をすると
云
(
い
)
つて
聖地
(
せいち
)
を
巡覧
(
じゆんらん
)
遊
(
あそ
)
ばして
居
(
を
)
られましたが、
086
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
も
立
(
た
)
たない
中
(
うち
)
にお
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつたのですよ。
087
あの
方
(
かた
)
は
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
つて
来
(
き
)
たと
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
られましたから、
088
竹取
(
たけとり
)
物語
(
ものがたり
)
の
香具耶
(
かぐや
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のやうにオリオン
星座
(
せいざ
)
へでもお
帰
(
かへ
)
りになつたのではあるまいかと、
089
毎晩
(
まいばん
)
々々
(
まいばん
)
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで
其
(
その
)
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るので
御座
(
ござ
)
いますよ。
090
本当
(
ほんたう
)
にあの
方
(
かた
)
は
普通
(
ふつう
)
の
人
(
ひと
)
ではありませぬ、
091
きつと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
ですわ』
092
サロメ
『
何程
(
なにほど
)
これと
目星
(
めぼし
)
をつけた
男
(
をとこ
)
でも、
093
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
では
仕方
(
しかた
)
無
(
な
)
いではありませぬか。
094
どれ
程
(
ほど
)
あなたがモウ
一度
(
いちど
)
下
(
くだ
)
つて
ほし
ほしと
毎日
(
まいにち
)
天
(
てん
)
を
仰
(
あふ
)
いで
居
(
ゐ
)
たつて
駄目
(
だめ
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
095
そんな
遠
(
とほ
)
い
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
を
望
(
のぞ
)
むよりも
間近
(
まぢか
)
にオリオン
星座
(
せいざ
)
があるではありませぬか。
096
この
地
(
ち
)
も
天
(
てん
)
に
輝
(
かがや
)
く
星
(
ほし
)
の
一
(
ひと
)
つでせう。
097
ドンと
四股
(
しこ
)
を
踏
(
ふ
)
んでも
直
(
す
)
ぐと
答
(
こた
)
へて
呉
(
く
)
れるのは
地球
(
ちきう
)
と
云
(
い
)
ふこの
星
(
ほし
)
ぢやありませぬか。
098
きつと
此
(
この
)
星
(
ほし
)
の
中
(
なか
)
に
貴女
(
あなた
)
の
恋人
(
こひびと
)
は
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
ませう。
099
どこ
迄
(
まで
)
も
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
してユダヤ
婦人
(
ふじん
)
の
体面
(
たいめん
)
を
保
(
たも
)
つて
貰
(
もら
)
はねば、
100
妾
(
わたし
)
だつて
世界
(
せかい
)
へ
合
(
あ
)
はす
顔
(
かほ
)
がありませぬわ。
101
妾
(
わたし
)
も
一旦
(
いつたん
)
相思
(
さうし
)
の
恋人
(
こひびと
)
が
御座
(
ござ
)
いましたが、
102
花
(
はな
)
はいつ
迄
(
まで
)
も
梢
(
こずゑ
)
に
留
(
とど
)
まらぬが
如
(
ごと
)
く、
103
夜
(
よる
)
の
嵐
(
あらし
)
に
吹
(
ふ
)
かれ、
104
たうとう
生木
(
なまき
)
を
裂
(
さ
)
くやうな
悲惨
(
ひさん
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ひ、
105
それからと
云
(
い
)
ふものは
恋
(
こひ
)
に
狂
(
くる
)
ふて、
106
この
霊地
(
れいち
)
にお
参
(
まゐ
)
りするのをせめてもの
心
(
こころ
)
慰
(
なぐさ
)
めとして
居
(
を
)
るので
御座
(
ござ
)
います。
107
貴女
(
あなた
)
の
恋人
(
こひびと
)
と
仰有
(
おつしや
)
るブラバーサ
様
(
さま
)
は、
108
三四回
(
さんしくわい
)
も
此
(
この
)
お
山
(
やま
)
でお
目
(
め
)
にかかりましたが、
109
ほんとに
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
様
(
やう
)
なお
方
(
かた
)
でした。
110
妾
(
わたし
)
だつて
貴女
(
あなた
)
の
恋人
(
こひびと
)
でなければキツト
捕虜
(
ほりよ
)
にして
居
(
ゐ
)
るのですけれども、
111
人
(
ひと
)
の
恋人
(
こひびと
)
を
取
(
と
)
つたと
云
(
い
)
はれてはユダヤ
婦人
(
ふじん
)
の
体面
(
たいめん
)
にかかると
思
(
おも
)
ふて、
112
どれだけ
恋
(
こひ
)
の
悪魔
(
あくま
)
と
戦
(
たたか
)
つたか
知
(
し
)
れはしませぬわ。
113
自分
(
じぶん
)
の
好
(
す
)
く
人
(
ひと
)
、
114
又
(
また
)
人
(
ひと
)
が
好
(
す
)
くと
云
(
い
)
ひまして、
115
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
は
誰
(
たれ
)
にも
好
(
す
)
かれるものですなア。
116
さうかと
云
(
い
)
つて
今後
(
こんご
)
ブラバーサ
様
(
さま
)
を
発見
(
はつけん
)
しても、
117
決
(
けつ
)
して
妾
(
わたし
)
は
指一本
(
ゆびいつぽん
)
さえない
事
(
こと
)
を
誓
(
ちか
)
つておきますから
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
118
マリヤ
『あなたの
恋人
(
こひびと
)
と
仰
(
おほ
)
せらるるのはヤコブ
様
(
さま
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
119
薄々
(
うすうす
)
噂
(
うはさ
)
に
承
(
うけたま
)
はつて
居
(
を
)
りました』
120
サロメ
『ヤコブ
様
(
さま
)
と
妾
(
わたし
)
の
中
(
なか
)
には
何
(
なん
)
の
障壁
(
しやうへき
)
もなく、
121
極
(
きは
)
めて
円満
(
ゑんまん
)
に
清
(
きよ
)
い
仲
(
なか
)
で
御座
(
ござ
)
いましたが
無理解
(
むりかい
)
な
両親
(
りやうしん
)
が
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
つて
引
(
ひ
)
き
分
(
わ
)
けてしまつたので
御座
(
ござ
)
います。
122
かうなつて
別
(
わか
)
れると
妙
(
めう
)
なもので
恋
(
こひ
)
の
意地
(
いぢ
)
が
募
(
つの
)
り、
123
どこ
迄
(
まで
)
も
添
(
そ
)
ひ
遂
(
と
)
げねばおかないと
云
(
い
)
ふ
敵愾心
(
てきがいしん
)
が
起
(
おこ
)
つて
来
(
き
)
たのですよ。
124
貴女
(
あなた
)
もユダヤ
婦人
(
ふじん
)
としてどこまでも
奮闘
(
ふんとう
)
なさいませ。
125
妾
(
わたし
)
も
此
(
この
)
儘
(
まま
)
泣
(
な
)
き
寝入
(
ねい
)
るのでは
御座
(
ござ
)
いませぬからなア。
126
かうして
二人
(
ふたり
)
も
失恋
(
しつれん
)
の
女
(
をんな
)
が、
127
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
に
出遇
(
であ
)
はすと
云
(
い
)
ふのも
何
(
なに
)
かの
因縁
(
いんねん
)
で
御座
(
ござ
)
いませうよ』
128
マリヤ
『サロメ
様
(
さま
)
、
129
妾
(
わたし
)
は
夜
(
よ
)
も
更
(
ふ
)
けましたから、
130
今晩
(
こんばん
)
はこれで
帰
(
かへ
)
らうと
思
(
おも
)
ひます。
131
コロニーのスバツフオード
様
(
さま
)
が
余
(
あま
)
り
遅
(
おそ
)
くなると
大変
(
たいへん
)
矢釜
(
やかま
)
しく
仰有
(
おつしや
)
いますから、
132
又
(
また
)
明日
(
あす
)
ここで
貴女
(
あなた
)
と
楽
(
たの
)
しくお
目
(
め
)
にかかりませう』
133
サロメ
『
左様
(
さやう
)
ならば
一歩先
(
ひとあしさき
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
134
妾
(
わたし
)
はもう
暫
(
しばら
)
く
祈願
(
きぐわん
)
してお
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
る
事
(
こと
)
と
致
(
いた
)
しませう』
135
と
別
(
わか
)
れをつげ、
136
サロメはシオン
大学
(
だいがく
)
の
基礎
(
きそ
)
工事
(
こうじ
)
の
施
(
ほどこ
)
してある
傍
(
かたはら
)
の
作事場
(
さくじば
)
に
行
(
い
)
つて
腰
(
こし
)
を
下
(
お
)
ろし、
137
暫
(
しばら
)
く
身体
(
からだ
)
をやすめ、
138
再
(
ふたた
)
び
祈願
(
きぐわん
)
にかかつて
居
(
ゐ
)
た。
139
シオンの
谷
(
たに
)
に
恋
(
こひ
)
の
鋭鋒
(
えいほう
)
をさけて
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
たブラバーサは、
140
もはや
夜
(
よ
)
も
深更
(
しんかう
)
になつたればマリヤがよもや
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
る
筈
(
はず
)
は
無
(
な
)
からうと
高
(
たか
)
を
括
(
くく
)
り
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
に
於
(
おい
)
てキリストの
無事
(
ぶじ
)
再臨
(
さいりん
)
を
祈
(
いの
)
るべく
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
141
作事場
(
さくじば
)
の
中
(
なか
)
に
優
(
やさ
)
しい
女
(
をんな
)
の
祈
(
いの
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
142
ブラバーサはもしやあの
声
(
こゑ
)
はマリヤであるまいか、
143
もしマリヤであつたら
又
(
また
)
とつつかまへられて
五月蠅
(
うるさ
)
い
事
(
こと
)
であらう、
144
併
(
しか
)
しあれだけ
慕
(
した
)
ふて
来
(
く
)
る
女
(
をんな
)
をむげに
捨
(
す
)
てるのも
残酷
(
ざんこく
)
のやうであり、
145
さればとて
彼
(
かれ
)
の
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
へば
罪悪
(
ざいあく
)
を
犯
(
をか
)
したやうな
心持
(
こころもち
)
がするなり、
146
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
からは
叱
(
しか
)
られ、
147
吁
(
あゝ
)
どうしたらよからう、
148
辛
(
つら
)
い
事
(
こと
)
だな。
149
マテマテ
世界
(
せかい
)
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふのも
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
救
(
すく
)
ふのも
救
(
すく
)
ひに
二
(
ふた
)
つはない、
150
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにして
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
を
助
(
たす
)
けたつて
最善
(
さいぜん
)
の
行方
(
やりかた
)
で
無
(
な
)
いかも
知
(
し
)
れない。
151
吁
(
あゝ
)
、
152
私
(
わたし
)
は
自己愛
(
じこあい
)
に
陥
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
たのかも
知
(
し
)
れない、
153
仮令
(
たとへ
)
あの
女
(
をんな
)
を
助
(
たす
)
けるために
地獄
(
ぢごく
)
に
陥
(
お
)
ちてもあの
女
(
をんな
)
を
助
(
たす
)
けるが
赤心
(
まごころ
)
だ。
154
エーもうかうなれば
善
(
ぜん
)
も
悪
(
あく
)
もない、
155
シオンの
谷
(
たに
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
女
(
をんな
)
に
罪
(
つみ
)
を
作
(
つく
)
らせるよりも
自分
(
じぶん
)
が
罪人
(
ざいにん
)
となつて、
156
マリヤを
助
(
たす
)
けてやらう、
157
それが
男子
(
だんし
)
たるものの
本分
(
ほんぶん
)
だ。
158
自分
(
じぶん
)
が
居
(
ゐ
)
なくても、
159
又
(
また
)
失敗
(
しくじ
)
つてもウヅンバラチヤンダーの
再臨
(
さいりん
)
の
邪魔
(
じやま
)
にはなるまい。
160
キリストは
万民
(
ばんみん
)
のために
十字架
(
じふじか
)
に、
161
おかかりなされたのだ。
162
国
(
くに
)
に
残
(
のこ
)
した
妻
(
つま
)
には
済
(
す
)
まないが、
163
妻
(
つま
)
だつて
宣伝使
(
せんでんし
)
の
妻
(
つま
)
だ。
164
その
位
(
くらゐ
)
の
犠牲
(
ぎせい
)
は
忍
(
しの
)
ぶだらう、
165
エーもう
構
(
かま
)
はぬ、
166
これだけ
熱烈
(
ねつれつ
)
の
女
(
をんな
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにするのも
余
(
あま
)
り
善
(
ぜん
)
ではあるまいと
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
問
(
と
)
ひつ
答
(
こた
)
へつ
思案
(
しあん
)
を
定
(
さだ
)
め、
167
作事
(
さくじ
)
小屋
(
ごや
)
の
中
(
なか
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
168
ブラバーサは
斯
(
か
)
く
決心
(
けつしん
)
をきめた
上
(
うへ
)
は、
169
もはや
宇宙間
(
うちうかん
)
に
何者
(
なにもの
)
も
無
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
つた。
170
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
にマリヤの
姿
(
すがた
)
が
唯一
(
ただひと
)
つあるのみである。
171
今迄
(
いままで
)
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
た
山鳩
(
やまばと
)
の
声
(
こゑ
)
も
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
も
無
(
な
)
く、
172
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
何処
(
どこ
)
かへ
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
ひ、
173
天
(
てん
)
もなく
地
(
ち
)
もなく
心
(
こころ
)
にうつるものはマリヤの
姿
(
すがた
)
のみとなつて
了
(
しま
)
つた。
174
それ
故
(
ゆゑ
)
サロメの
姿
(
すがた
)
がすつかりマリヤと
見
(
み
)
えて
了
(
しま
)
つて、
175
どうしても
他
(
た
)
の
人
(
ひと
)
と
考
(
かんが
)
へ
直
(
なほ
)
す
暇
(
ひま
)
は
微塵
(
みぢん
)
も
無
(
な
)
かつた。
176
一方
(
いつぱう
)
サロメはヤコブの
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
祈願
(
きぐわん
)
をこらして
居
(
ゐ
)
たが、
177
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
思
(
おも
)
ふやう、
178
サロメ
『たとへ
両親
(
りやうしん
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
はうとも、
179
世間
(
せけん
)
の
人
(
ひと
)
が
堕落
(
だらく
)
女
(
をんな
)
と
譏
(
そし
)
らうとも、
180
そんな
事
(
こと
)
に
構
(
かま
)
ふものか。
181
自分
(
じぶん
)
の
恋
(
こひ
)
を
自分
(
じぶん
)
が
味
(
あぢ
)
はふに
何
(
ど
)
の
構
(
かま
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか。
182
あの
人
(
ひと
)
の
為
(
ため
)
には
天
(
てん
)
も
無
(
な
)
く
地
(
ち
)
も
無
(
な
)
い。
183
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
をすべて
葬
(
はうむ
)
り
去
(
さ
)
つても
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
を
生
(
いか
)
すものはヤコブさまより
無
(
な
)
いのだ、
184
地位
(
ちゐ
)
や、
185
名誉
(
めいよ
)
が
何
(
なん
)
になる、
186
貴族
(
きぞく
)
の
生
(
うまれ
)
が
何
(
なん
)
だ。
187
鳥
(
とり
)
や
獣
(
けもの
)
でも
自由
(
じいう
)
に
恋
(
こひ
)
を
味
(
あぢ
)
はつて
居
(
ゐ
)
る。
188
万物
(
ばんぶつ
)
の
霊長
(
れいちやう
)
たる
人間
(
にんげん
)
が
恋
(
こひ
)
を
味
(
あぢ
)
はふに
何
(
なん
)
の
不道理
(
ふだうり
)
があらう
筈
(
はず
)
がない。
189
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
けても
捜
(
さが
)
し
出
(
だ
)
し、
190
ヤコブ
様
(
さま
)
を
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
して、
191
地位
(
ちゐ
)
や
名誉
(
めいよ
)
を
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
して
今迄
(
いままで
)
のお
詫
(
わび
)
をせう。
192
妾
(
わたし
)
の
意志
(
いし
)
が
弱
(
よわ
)
かつた
為
(
ため
)
ヤコブ
様
(
さま
)
に
思
(
おも
)
はぬ
歎
(
なげき
)
をかけた……。
193
ヤコブ
様
(
さま
)
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
194
仮令
(
たとへ
)
地獄
(
ぢごく
)
に
堕
(
お
)
ちた
所
(
ところ
)
で
貴方
(
あなた
)
との
約束
(
やくそく
)
を
実行
(
じつかう
)
致
(
いた
)
しませう。
195
それが
女
(
をんな
)
の
本領
(
ほんりやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますから……』
196
と
傍
(
かたはら
)
に
人
(
ひと
)
無
(
な
)
きを
幸
(
さいは
)
ひ、
197
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らず
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
198
ブラバーサは、
199
サロメがヤコブのことを
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのを
聞
(
き
)
いてゐながら、
200
やつぱりマリヤとしか
思
(
おも
)
へなかつた。
201
二人
(
ふたり
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
一所
(
いつしよ
)
に
集
(
あつ
)
まつて
互
(
たがひ
)
にかたく
抱
(
だ
)
き
締
(
し
)
めた。
202
そして
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
も、
203
橄欖山
(
かんらんざん
)
も
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
もどこかへ
消滅
(
せうめつ
)
したやうな
無我
(
むが
)
の
域
(
ゐき
)
に
入
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
204
暫
(
しばら
)
くあつてサロメは、
205
ホツト
気
(
き
)
がついたやうに、
206
サロメ
『あゝヤコブ
様
(
さま
)
、
207
ヨウ
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
208
妾
(
わたし
)
の
一念
(
いちねん
)
が
貴方
(
あなた
)
の
魂
(
たましひ
)
に
通
(
つう
)
じたので
御座
(
ござ
)
りませう。
209
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
身
(
み
)
も
魂
(
たま
)
もあなたに
捧
(
ささ
)
げまして
決
(
けつ
)
して
外
(
ほか
)
へは
心
(
こころ
)
を
散
(
ち
)
らしませぬから
可愛
(
かあい
)
がつて
下
(
くだ
)
さいませ』
210
ブラバーサはヤコブと
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて
大
(
おほい
)
に
怒
(
いか
)
り、
211
ブラバーサ
『こりや
不貞腐
(
ふていくさ
)
れのマリヤ
奴
(
め
)
、
212
よう
私
(
わたし
)
を
翻弄
(
ほんろう
)
して
呉
(
く
)
れたなア。
213
お
前
(
まへ
)
の
熱愛
(
ねつあい
)
して
居
(
ゐ
)
るヤコブの
代理
(
だいり
)
に
己
(
おれ
)
を
使
(
つか
)
ふとは、
214
馬鹿
(
ばか
)
にするのも
程
(
ほど
)
があるではないか。
215
己
(
おれ
)
はマリヤより
外
(
ほか
)
に
愛
(
あい
)
する
女
(
をんな
)
は
無
(
な
)
いのだと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのにエヽ
汚
(
けが
)
らはしい、
216
勝手
(
かつて
)
にどうなとしたがよからう。
217
俺
(
おれ
)
もこれで
胸
(
むね
)
の
迷
(
まよ
)
ひが
取
(
と
)
れた。
218
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
219
サロメはやつぱり
現
(
うつつ
)
になつてブラバーサをヤコブと
思
(
おも
)
ひつめて
居
(
ゐ
)
た。
220
マリヤより
愛
(
あい
)
する
女
(
をんな
)
が
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
ふのを
聞
(
き
)
いて、
221
サロメ
『エヽ
悪性
(
あくしやう
)
男
(
をとこ
)
のヤコブ
奴
(
め
)
、
222
ようもようも
此
(
この
)
サロメを
馬鹿
(
ばか
)
にしよつたなア。
223
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てた
此
(
この
)
体
(
からだ
)
、
224
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
破
(
やぶ
)
れかぶれ
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたがよからう』
225
と
護身用
(
ごしんよう
)
の
短刀
(
たんたう
)
を
抜
(
ぬ
)
いて
切
(
き
)
つてかかる。
226
ブラバーサはマリヤ
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つたと
作事
(
さくじ
)
小屋
(
ごや
)
のぐるりを
逃
(
に
)
げ
廻
(
まは
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
227
かかる
所
(
ところ
)
へ
疑
(
うたが
)
ひ
深
(
ぶか
)
いマリヤは、
228
サロメがアンナ
事
(
こと
)
をいつて、
229
ブラバーサを
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るのでなからうかと、
230
中途
(
ちうと
)
より
引返
(
ひきかへ
)
し
来
(
きた
)
り、
231
此
(
この
)
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
打驚
(
うちおどろ
)
き、
232
マリヤ
『もしサロメ
様
(
さま
)
、
233
マア
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
234
と
腕
(
うで
)
に
食
(
くら
)
ひつく。
235
サロメは
夜叉
(
やしや
)
の
如
(
ごと
)
くに
怒
(
いか
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
236
サロメ
『エヽ
恋
(
こひ
)
の
敵
(
かたき
)
マリヤ
奴
(
め
)
、
237
ヤコブを
取
(
と
)
りよつた
恨
(
うらみ
)
だ、
238
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ』
239
と
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ。
240
其処
(
そこ
)
へ
又
(
また
)
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
たのはサロメの
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふてやつて
来
(
き
)
た
失恋
(
しつれん
)
男
(
をとこ
)
のヤコブであつた。
241
ヤコブは
大声
(
おほごゑ
)
をあげて、
242
ヤコブ
『これこれサロメさまお
気
(
き
)
が
狂
(
くる
)
ふたのか
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
243
私
(
わたし
)
はヤコブで
御座
(
ござ
)
います』
244
サロメは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
勢
(
いきほひ
)
抜
(
ぬ
)
け
茫然
(
ばうぜん
)
として
短刀
(
たんたう
)
を
握
(
にぎ
)
つたまま
衝立
(
つつた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
245
月
(
つき
)
は
皎々
(
かうかう
)
として
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
を
照
(
て
)
らし
初
(
はじ
)
めた。
246
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
顔
(
かほ
)
は
一度
(
いちど
)
にハツキリして
来
(
き
)
た。
247
マリヤは
慄
(
ふる
)
ふて
居
(
ゐ
)
るブラバーサの
手
(
て
)
を
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
り、
248
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つてゐらしたの。
249
妾
(
わたし
)
どの
位
(
くらゐ
)
たづねて
居
(
ゐ
)
たのか
分
(
わか
)
りませぬのよ』
250
ブラバーサ
『ウンお
前
(
まへ
)
がマリヤであつたか。
251
夜中
(
やちう
)
の
事
(
こと
)
とて
甚
(
えら
)
い
人違
(
ひとちが
)
ひをしたものだ。
252
あの
活劇
(
くわつげき
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたであらうなア』
253
マリヤは、
254
マリヤ
『ホヽヽヽヽ』
255
サロメも、
256
サロメ
『ホヽヽヽヽ』
257
ヤコブ
『
何
(
なん
)
だ
人違
(
ひとちが
)
ひか、
258
サア、
259
サロメさま、
260
ヤコブはどこ
迄
(
まで
)
も
貴女
(
あなた
)
と
離
(
はな
)
れませぬから
覚悟
(
かくご
)
して
下
(
くだ
)
さい、
261
命
(
いのち
)
がけですよ』
262
サロメ
『
妾
(
わたし
)
だつて
命
(
いのち
)
がけですわ。
263
ブラバーサ
様
(
さま
)
があなたに
見
(
み
)
えたので
甚
(
えら
)
い
間違
(
まちが
)
ひを
致
(
いた
)
しました。
264
マア
無事
(
ぶじ
)
で
怪我
(
けが
)
が
無
(
な
)
くて
何
(
なに
)
より
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
265
皆様
(
みなさま
)
茲
(
ここ
)
で
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
感謝
(
かんしや
)
を
致
(
いた
)
しませう』
266
と
男女
(
だんぢよ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
地上
(
ちじやう
)
に
端座
(
たんざ
)
し、
267
恋
(
こひ
)
の
成功
(
せいこう
)
を
感謝
(
かんしや
)
した。
268
ヨルダン
川
(
がは
)
の
流
(
なが
)
れも
峰
(
みね
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
も
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
も
漸
(
やうや
)
く
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
開展
(
かいてん
)
して
来
(
き
)
た。
269
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
270
(
大正一二・七・一二
旧五・二九
加藤明子
録)
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