霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
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Onido AI研究室
」
> 第16章 天消地滅
<<< 大相撲
(B)
(N)
強請 >>>
第一六章
天消
(
てんせう
)
地滅
(
ちめつ
)
〔一六四五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第3篇 花笑蝶舞
よみ(新仮名遣い):
かしょうちょうぶ
章:
第16章 天消地滅
よみ(新仮名遣い):
てんしょうちめつ
通し章番号:
1645
口述日:
1923(大正12)年07月12日(旧05月29日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
橄欖山の山頂
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-12-02 13:44:06
OBC :
rm64a16
愛善世界社版:
185頁
八幡書店版:
第11輯 447頁
修補版:
校定版:
185頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
マリヤ
『
晴
(
は
)
れもせず
曇
(
くも
)
りも
果
(
は
)
てぬ
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
002
月
(
つき
)
の
御空
(
みそら
)
に
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
する
003
行先
(
ゆくさき
)
は
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
する
所
(
ところ
)
まで
004
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
あてに
旅立
(
たびだ
)
つ
法
(
のり
)
の
道
(
みち
)
005
父母
(
ちちはは
)
の
愛
(
あい
)
にも
勝
(
まさ
)
る
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
006
○
007
ほんに
可愛
(
いと
)
しいあの
人
(
ひと
)
の
008
恋
(
こひ
)
しなつかし
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
009
涙
(
なみだ
)
で
別
(
わか
)
れた
其
(
その
)
夜
(
よ
)
から
010
どこにどうして
御座
(
ござ
)
るかと
011
寝
(
ね
)
た
間
(
ま
)
も
忘
(
わす
)
れず
居
(
を
)
つたのに
012
なんぼなんでも
余
(
あんま
)
りな
013
今更
(
いまさら
)
切
(
き
)
れとは
何
(
なに
)
かいな
014
情
(
なさけ
)
ないやら
悔
(
くや
)
しいやら
015
無情
(
つれな
)
いお
方
(
かた
)
になりました
016
ほんにいとしい
彼方
(
あのかた
)
と
017
思
(
おも
)
へば
泣
(
な
)
いても
泣
(
な
)
き
切
(
き
)
れず
018
諦
(
あきら
)
められぬこの
手紙
(
てがみ
)
019
いとしいとしと
思
(
おも
)
ふ
程
(
ほど
)
020
憎
(
にく
)
い
言葉
(
ことば
)
のあの
人
(
ひと
)
が
021
妾
(
わたし
)
はほんとに
懐
(
なつ
)
かしい』
022
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
をウロついて
居
(
ゐ
)
る
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
がある。
023
これはアメリカンコロニーの
牛耳
(
ぎうじ
)
を
取
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
るマリヤであつた。
024
ブラバーサはマリヤの
女難
(
ぢよなん
)
を
避
(
さ
)
けむ
為
(
ため
)
、
025
逸早
(
いちはや
)
くも
僧院
(
そうゐん
)
ホテルを
立
(
た
)
ち
出
(
いで
)
てシオン
山
(
ざん
)
の
渓谷
(
けいこく
)
に
草庵
(
さうあん
)
を
結
(
むす
)
び
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
たのである。
026
マリヤは
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
歌
(
うた
)
つて
恋
(
こひ
)
に
憔
(
やつ
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
027
ブラバーサの
後
(
あと
)
を
探
(
さが
)
して
居
(
ゐ
)
るのである。
028
かかる
所
(
ところ
)
へ
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みから
優
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
歌
(
うた
)
ひ
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
029
サロメ
『
緑
(
みどり
)
の
風
(
かぜ
)
に
花
(
はな
)
は
散
(
ち
)
り
030
逝
(
ゆ
)
く
春
(
はる
)
の
宵
(
よひ
)
歎
(
なげ
)
きつつ
031
己
(
おのれ
)
が
心
(
こころ
)
に
夏
(
なつ
)
は
来
(
き
)
ぬ
032
夕
(
ゆふべ
)
胡蝶
(
こてふ
)
の
床
(
とこ
)
に
臥
(
ふ
)
し
033
晨
(
あした
)
輝
(
かがや
)
く
花
(
はな
)
思
(
おも
)
ふ
034
悩
(
なや
)
ましの
夢
(
ゆめ
)
今
(
いま
)
さめぬ
035
現実
(
げんじつ
)
の
月
(
つき
)
空
(
そら
)
高
(
たか
)
く
036
青葉
(
あをば
)
は
光
(
ひか
)
る
橄欖
(
かんらん
)
の
山
(
やま
)
に
037
せめて
憩
(
いこ
)
はむ
吾
(
わ
)
が
心
(
こころ
)
』
038
と
歌
(
うた
)
ひつつ
静々
(
しづしづ
)
朧
(
おぼろ
)
の
月夜
(
つきよ
)
に
浮
(
う
)
いたやうに
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのはサロメであつた。
039
折々
(
をりをり
)
両人
(
りやうにん
)
は
此
(
この
)
山上
(
さんじやう
)
で
月下
(
げつか
)
に
出会
(
でくは
)
すのである。
040
されど
互
(
たがひ
)
に
余
(
あま
)
り
心易
(
こころやす
)
くもせず、
041
又
(
また
)
沁々
(
しみじみ
)
と
話
(
はな
)
した
事
(
こと
)
もない。
042
双方
(
さうはう
)
とも
期
(
き
)
せずして
同情
(
どうじやう
)
の
念
(
ねん
)
にかられ、
043
何物
(
なにもの
)
にか
惹
(
ひ
)
かるる
如
(
ごと
)
く
二人
(
ふたり
)
は
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
にもハツキリ
顔
(
かほ
)
の
分
(
わか
)
る
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
近
(
ちか
)
づいた。
044
マリヤ『
行
(
ゆく
)
水
(
みづ
)
の
帰
(
かへ
)
らむよしもなし
045
散
(
ち
)
る
花
(
はな
)
を
止
(
とど
)
めむよしもなし』
046
サロメ『
桜
(
さくら
)
の
花
(
はな
)
の
盛
(
さか
)
りこそ
047
君
(
きみ
)
と
睦
(
むつ
)
みし
月日
(
つきひ
)
なり
048
月
(
つき
)
は
幾度
(
いくたび
)
かはれども
049
日
(
ひ
)
は
幾日
(
いくにち
)
か
重
(
かさ
)
なれど
050
君
(
きみ
)
に
遇
(
あ
)
ふべきよしもない』
051
マリヤ『
涙
(
なみだ
)
の
中
(
うち
)
に
夏
(
なつ
)
は
来
(
き
)
ぬ
052
夜
(
よ
)
毎
(
ごと
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
螢
(
ほたる
)
こそ
053
こがるる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
似
(
に
)
たるかな』
054
サロメ『
今
(
いま
)
は
悲
(
かな
)
しき
思
(
おも
)
ひ
出
(
で
)
の
055
夜
(
よ
)
毎
(
ごと
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
螢
(
ほたる
)
こそ
056
焦
(
こが
)
るる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
似
(
に
)
たるかな』
057
かく
両人
(
りやうにん
)
は
意気
(
いき
)
投合
(
とうがふ
)
して
何
(
いづ
)
れも
恋
(
こひ
)
の
敗者
(
はいしや
)
となりし
述懐
(
じゆつくわい
)
を
打明
(
うちあ
)
け
歌
(
うた
)
つた。
058
是
(
これ
)
よりマリヤ、
059
サロメの
両人
(
りやうにん
)
は
姉妹
(
しまい
)
の
如
(
ごと
)
く
親
(
した
)
しくなり、
060
互
(
たがひ
)
に
心胸
(
しんきよう
)
を
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
けて
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
ふ
事
(
こと
)
となつた。
061
サロメ
『マリヤ
様
(
さま
)
、
062
貴女
(
あなた
)
の
今
(
いま
)
のお
歌
(
うた
)
によりまして
妾
(
わたし
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
とソツクリだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
悟
(
さと
)
りました。
063
ほんたうに
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
ふやうにならないもので
御座
(
ござ
)
いますなア』
064
マリヤ
『ハイ、
065
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
066
もはや
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
嫌
(
いや
)
になつて
参
(
まゐ
)
りました。
067
思
(
おも
)
ひ
込
(
こ
)
んだ
男
(
をとこ
)
に
捨
(
す
)
てられ、
068
もはや
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
069
オリオン
星座
(
せいざ
)
よりキリストが
現
(
あら
)
はれたまふとも
人間
(
にんげん
)
として
恋
(
こひ
)
に
破
(
やぶ
)
れた
以上
(
いじやう
)
は、
070
もはや
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
071
キリストの
再臨
(
さいりん
)
なんか
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬわ』
072
と
半狂乱
(
はんきやうらん
)
の
如
(
ごと
)
くになつて
居
(
ゐ
)
る。
073
サロメ
『あなたは
永
(
なが
)
らく
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けなさつたのも、
074
キリスト
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
つ
為
(
ため
)
では
無
(
な
)
かつたのですか』
075
マリヤ
『
妾
(
わたし
)
の
待望
(
たいばう
)
して
居
(
ゐ
)
るキリストは
左様
(
さやう
)
な
高遠
(
かうゑん
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
076
妾
(
わたし
)
の
愛
(
あい
)
の
欲望
(
よくばう
)
を
満
(
みた
)
して
下
(
くだ
)
さる
愛情
(
あいじやう
)
の
深
(
ふか
)
い
清
(
きよ
)
らかな
男子
(
をとこ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
077
妾
(
わたし
)
の
一身
(
いつしん
)
に
取
(
と
)
つてキリストと
仰
(
あふ
)
ぐのは
日出
(
ひので
)
の
島
(
しま
)
からお
出
(
いで
)
になつた、
078
ブラバーサ
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
います』
079
サロメ
『
妾
(
わたし
)
だつてキリストの
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですよ。
080
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
を
満
(
みた
)
して
呉
(
く
)
れる
愛情
(
あいじやう
)
の
深
(
ふか
)
い
方
(
かた
)
があれば、
081
其
(
その
)
方
(
かた
)
こそ
妾
(
わたし
)
に
対
(
たい
)
して
本当
(
ほんたう
)
のキリストで
御座
(
ござ
)
いますわ。
082
乾
(
かわ
)
き
切
(
き
)
つたる
魂
(
たましひ
)
に
清泉
(
せいせん
)
の
水
(
みづ
)
を
与
(
あた
)
へ、
083
朽果
(
くちは
)
てむとする
心
(
こころ
)
に
生命
(
せいめい
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さる
方
(
かた
)
が
所謂
(
いはゆる
)
キリストですわ。
084
さうしてブラバーサ
様
(
さま
)
は
何処
(
どちら
)
へお
出
(
いで
)
になつたか
分
(
わか
)
らないのですか』
085
マリヤ
『ハイ
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
行
(
ぎやう
)
をすると
云
(
い
)
つて
聖地
(
せいち
)
を
巡覧
(
じゆんらん
)
遊
(
あそ
)
ばして
居
(
を
)
られましたが、
086
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
も
立
(
た
)
たない
中
(
うち
)
にお
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつたのですよ。
087
あの
方
(
かた
)
は
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
つて
来
(
き
)
たと
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
られましたから、
088
竹取
(
たけとり
)
物語
(
ものがたり
)
の
香具耶
(
かぐや
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のやうにオリオン
星座
(
せいざ
)
へでもお
帰
(
かへ
)
りになつたのではあるまいかと、
089
毎晩
(
まいばん
)
々々
(
まいばん
)
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで
其
(
その
)
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るので
御座
(
ござ
)
いますよ。
090
本当
(
ほんたう
)
にあの
方
(
かた
)
は
普通
(
ふつう
)
の
人
(
ひと
)
ではありませぬ、
091
きつと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
ですわ』
092
サロメ
『
何程
(
なにほど
)
これと
目星
(
めぼし
)
をつけた
男
(
をとこ
)
でも、
093
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
では
仕方
(
しかた
)
無
(
な
)
いではありませぬか。
094
どれ
程
(
ほど
)
あなたがモウ
一度
(
いちど
)
下
(
くだ
)
つて
ほし
ほしと
毎日
(
まいにち
)
天
(
てん
)
を
仰
(
あふ
)
いで
居
(
ゐ
)
たつて
駄目
(
だめ
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
095
そんな
遠
(
とほ
)
い
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
を
望
(
のぞ
)
むよりも
間近
(
まぢか
)
にオリオン
星座
(
せいざ
)
があるではありませぬか。
096
この
地
(
ち
)
も
天
(
てん
)
に
輝
(
かがや
)
く
星
(
ほし
)
の
一
(
ひと
)
つでせう。
097
ドンと
四股
(
しこ
)
を
踏
(
ふ
)
んでも
直
(
す
)
ぐと
答
(
こた
)
へて
呉
(
く
)
れるのは
地球
(
ちきう
)
と
云
(
い
)
ふこの
星
(
ほし
)
ぢやありませぬか。
098
きつと
此
(
この
)
星
(
ほし
)
の
中
(
なか
)
に
貴女
(
あなた
)
の
恋人
(
こひびと
)
は
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
ませう。
099
どこ
迄
(
まで
)
も
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
してユダヤ
婦人
(
ふじん
)
の
体面
(
たいめん
)
を
保
(
たも
)
つて
貰
(
もら
)
はねば、
100
妾
(
わたし
)
だつて
世界
(
せかい
)
へ
合
(
あ
)
はす
顔
(
かほ
)
がありませぬわ。
101
妾
(
わたし
)
も
一旦
(
いつたん
)
相思
(
さうし
)
の
恋人
(
こひびと
)
が
御座
(
ござ
)
いましたが、
102
花
(
はな
)
はいつ
迄
(
まで
)
も
梢
(
こずゑ
)
に
留
(
とど
)
まらぬが
如
(
ごと
)
く、
103
夜
(
よる
)
の
嵐
(
あらし
)
に
吹
(
ふ
)
かれ、
104
たうとう
生木
(
なまき
)
を
裂
(
さ
)
くやうな
悲惨
(
ひさん
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ひ、
105
それからと
云
(
い
)
ふものは
恋
(
こひ
)
に
狂
(
くる
)
ふて、
106
この
霊地
(
れいち
)
にお
参
(
まゐ
)
りするのをせめてもの
心
(
こころ
)
慰
(
なぐさ
)
めとして
居
(
を
)
るので
御座
(
ござ
)
います。
107
貴女
(
あなた
)
の
恋人
(
こひびと
)
と
仰有
(
おつしや
)
るブラバーサ
様
(
さま
)
は、
108
三四回
(
さんしくわい
)
も
此
(
この
)
お
山
(
やま
)
でお
目
(
め
)
にかかりましたが、
109
ほんとに
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
様
(
やう
)
なお
方
(
かた
)
でした。
110
妾
(
わたし
)
だつて
貴女
(
あなた
)
の
恋人
(
こひびと
)
でなければキツト
捕虜
(
ほりよ
)
にして
居
(
ゐ
)
るのですけれども、
111
人
(
ひと
)
の
恋人
(
こひびと
)
を
取
(
と
)
つたと
云
(
い
)
はれてはユダヤ
婦人
(
ふじん
)
の
体面
(
たいめん
)
にかかると
思
(
おも
)
ふて、
112
どれだけ
恋
(
こひ
)
の
悪魔
(
あくま
)
と
戦
(
たたか
)
つたか
知
(
し
)
れはしませぬわ。
113
自分
(
じぶん
)
の
好
(
す
)
く
人
(
ひと
)
、
114
又
(
また
)
人
(
ひと
)
が
好
(
す
)
くと
云
(
い
)
ひまして、
115
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
は
誰
(
たれ
)
にも
好
(
す
)
かれるものですなア。
116
さうかと
云
(
い
)
つて
今後
(
こんご
)
ブラバーサ
様
(
さま
)
を
発見
(
はつけん
)
しても、
117
決
(
けつ
)
して
妾
(
わたし
)
は
指一本
(
ゆびいつぽん
)
さえない
事
(
こと
)
を
誓
(
ちか
)
つておきますから
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
118
マリヤ
『あなたの
恋人
(
こひびと
)
と
仰
(
おほ
)
せらるるのはヤコブ
様
(
さま
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
119
薄々
(
うすうす
)
噂
(
うはさ
)
に
承
(
うけたま
)
はつて
居
(
を
)
りました』
120
サロメ
『ヤコブ
様
(
さま
)
と
妾
(
わたし
)
の
中
(
なか
)
には
何
(
なん
)
の
障壁
(
しやうへき
)
もなく、
121
極
(
きは
)
めて
円満
(
ゑんまん
)
に
清
(
きよ
)
い
仲
(
なか
)
で
御座
(
ござ
)
いましたが
無理解
(
むりかい
)
な
両親
(
りやうしん
)
が
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
つて
引
(
ひ
)
き
分
(
わ
)
けてしまつたので
御座
(
ござ
)
います。
122
かうなつて
別
(
わか
)
れると
妙
(
めう
)
なもので
恋
(
こひ
)
の
意地
(
いぢ
)
が
募
(
つの
)
り、
123
どこ
迄
(
まで
)
も
添
(
そ
)
ひ
遂
(
と
)
げねばおかないと
云
(
い
)
ふ
敵愾心
(
てきがいしん
)
が
起
(
おこ
)
つて
来
(
き
)
たのですよ。
124
貴女
(
あなた
)
もユダヤ
婦人
(
ふじん
)
としてどこまでも
奮闘
(
ふんとう
)
なさいませ。
125
妾
(
わたし
)
も
此
(
この
)
儘
(
まま
)
泣
(
な
)
き
寝入
(
ねい
)
るのでは
御座
(
ござ
)
いませぬからなア。
126
かうして
二人
(
ふたり
)
も
失恋
(
しつれん
)
の
女
(
をんな
)
が、
127
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
に
出遇
(
であ
)
はすと
云
(
い
)
ふのも
何
(
なに
)
かの
因縁
(
いんねん
)
で
御座
(
ござ
)
いませうよ』
128
マリヤ
『サロメ
様
(
さま
)
、
129
妾
(
わたし
)
は
夜
(
よ
)
も
更
(
ふ
)
けましたから、
130
今晩
(
こんばん
)
はこれで
帰
(
かへ
)
らうと
思
(
おも
)
ひます。
131
コロニーのスバツフオード
様
(
さま
)
が
余
(
あま
)
り
遅
(
おそ
)
くなると
大変
(
たいへん
)
矢釜
(
やかま
)
しく
仰有
(
おつしや
)
いますから、
132
又
(
また
)
明日
(
あす
)
ここで
貴女
(
あなた
)
と
楽
(
たの
)
しくお
目
(
め
)
にかかりませう』
133
サロメ
『
左様
(
さやう
)
ならば
一歩先
(
ひとあしさき
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
134
妾
(
わたし
)
はもう
暫
(
しばら
)
く
祈願
(
きぐわん
)
してお
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
る
事
(
こと
)
と
致
(
いた
)
しませう』
135
と
別
(
わか
)
れをつげ、
136
サロメはシオン
大学
(
だいがく
)
の
基礎
(
きそ
)
工事
(
こうじ
)
の
施
(
ほどこ
)
してある
傍
(
かたはら
)
の
作事場
(
さくじば
)
に
行
(
い
)
つて
腰
(
こし
)
を
下
(
お
)
ろし、
137
暫
(
しばら
)
く
身体
(
からだ
)
をやすめ、
138
再
(
ふたた
)
び
祈願
(
きぐわん
)
にかかつて
居
(
ゐ
)
た。
139
シオンの
谷
(
たに
)
に
恋
(
こひ
)
の
鋭鋒
(
えいほう
)
をさけて
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
たブラバーサは、
140
もはや
夜
(
よ
)
も
深更
(
しんかう
)
になつたればマリヤがよもや
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
る
筈
(
はず
)
は
無
(
な
)
からうと
高
(
たか
)
を
括
(
くく
)
り
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
に
於
(
おい
)
てキリストの
無事
(
ぶじ
)
再臨
(
さいりん
)
を
祈
(
いの
)
るべく
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
141
作事場
(
さくじば
)
の
中
(
なか
)
に
優
(
やさ
)
しい
女
(
をんな
)
の
祈
(
いの
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
142
ブラバーサはもしやあの
声
(
こゑ
)
はマリヤであるまいか、
143
もしマリヤであつたら
又
(
また
)
とつつかまへられて
五月蠅
(
うるさ
)
い
事
(
こと
)
であらう、
144
併
(
しか
)
しあれだけ
慕
(
した
)
ふて
来
(
く
)
る
女
(
をんな
)
をむげに
捨
(
す
)
てるのも
残酷
(
ざんこく
)
のやうであり、
145
さればとて
彼
(
かれ
)
の
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
へば
罪悪
(
ざいあく
)
を
犯
(
をか
)
したやうな
心持
(
こころもち
)
がするなり、
146
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
からは
叱
(
しか
)
られ、
147
吁
(
あゝ
)
どうしたらよからう、
148
辛
(
つら
)
い
事
(
こと
)
だな。
149
マテマテ
世界
(
せかい
)
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふのも
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
救
(
すく
)
ふのも
救
(
すく
)
ひに
二
(
ふた
)
つはない、
150
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにして
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
を
助
(
たす
)
けたつて
最善
(
さいぜん
)
の
行方
(
やりかた
)
で
無
(
な
)
いかも
知
(
し
)
れない。
151
吁
(
あゝ
)
、
152
私
(
わたし
)
は
自己愛
(
じこあい
)
に
陥
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
たのかも
知
(
し
)
れない、
153
仮令
(
たとへ
)
あの
女
(
をんな
)
を
助
(
たす
)
けるために
地獄
(
ぢごく
)
に
陥
(
お
)
ちてもあの
女
(
をんな
)
を
助
(
たす
)
けるが
赤心
(
まごころ
)
だ。
154
エーもうかうなれば
善
(
ぜん
)
も
悪
(
あく
)
もない、
155
シオンの
谷
(
たに
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
女
(
をんな
)
に
罪
(
つみ
)
を
作
(
つく
)
らせるよりも
自分
(
じぶん
)
が
罪人
(
ざいにん
)
となつて、
156
マリヤを
助
(
たす
)
けてやらう、
157
それが
男子
(
だんし
)
たるものの
本分
(
ほんぶん
)
だ。
158
自分
(
じぶん
)
が
居
(
ゐ
)
なくても、
159
又
(
また
)
失敗
(
しくじ
)
つてもウヅンバラチヤンダーの
再臨
(
さいりん
)
の
邪魔
(
じやま
)
にはなるまい。
160
キリストは
万民
(
ばんみん
)
のために
十字架
(
じふじか
)
に、
161
おかかりなされたのだ。
162
国
(
くに
)
に
残
(
のこ
)
した
妻
(
つま
)
には
済
(
す
)
まないが、
163
妻
(
つま
)
だつて
宣伝使
(
せんでんし
)
の
妻
(
つま
)
だ。
164
その
位
(
くらゐ
)
の
犠牲
(
ぎせい
)
は
忍
(
しの
)
ぶだらう、
165
エーもう
構
(
かま
)
はぬ、
166
これだけ
熱烈
(
ねつれつ
)
の
女
(
をんな
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにするのも
余
(
あま
)
り
善
(
ぜん
)
ではあるまいと
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
問
(
と
)
ひつ
答
(
こた
)
へつ
思案
(
しあん
)
を
定
(
さだ
)
め、
167
作事
(
さくじ
)
小屋
(
ごや
)
の
中
(
なか
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
168
ブラバーサは
斯
(
か
)
く
決心
(
けつしん
)
をきめた
上
(
うへ
)
は、
169
もはや
宇宙間
(
うちうかん
)
に
何者
(
なにもの
)
も
無
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
つた。
170
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
にマリヤの
姿
(
すがた
)
が
唯一
(
ただひと
)
つあるのみである。
171
今迄
(
いままで
)
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
た
山鳩
(
やまばと
)
の
声
(
こゑ
)
も
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
も
無
(
な
)
く、
172
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
何処
(
どこ
)
かへ
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
ひ、
173
天
(
てん
)
もなく
地
(
ち
)
もなく
心
(
こころ
)
にうつるものはマリヤの
姿
(
すがた
)
のみとなつて
了
(
しま
)
つた。
174
それ
故
(
ゆゑ
)
サロメの
姿
(
すがた
)
がすつかりマリヤと
見
(
み
)
えて
了
(
しま
)
つて、
175
どうしても
他
(
た
)
の
人
(
ひと
)
と
考
(
かんが
)
へ
直
(
なほ
)
す
暇
(
ひま
)
は
微塵
(
みぢん
)
も
無
(
な
)
かつた。
176
一方
(
いつぱう
)
サロメはヤコブの
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
祈願
(
きぐわん
)
をこらして
居
(
ゐ
)
たが、
177
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
思
(
おも
)
ふやう、
178
サロメ
『たとへ
両親
(
りやうしん
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
はうとも、
179
世間
(
せけん
)
の
人
(
ひと
)
が
堕落
(
だらく
)
女
(
をんな
)
と
譏
(
そし
)
らうとも、
180
そんな
事
(
こと
)
に
構
(
かま
)
ふものか。
181
自分
(
じぶん
)
の
恋
(
こひ
)
を
自分
(
じぶん
)
が
味
(
あぢ
)
はふに
何
(
ど
)
の
構
(
かま
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか。
182
あの
人
(
ひと
)
の
為
(
ため
)
には
天
(
てん
)
も
無
(
な
)
く
地
(
ち
)
も
無
(
な
)
い。
183
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
をすべて
葬
(
はうむ
)
り
去
(
さ
)
つても
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
を
生
(
いか
)
すものはヤコブさまより
無
(
な
)
いのだ、
184
地位
(
ちゐ
)
や、
185
名誉
(
めいよ
)
が
何
(
なん
)
になる、
186
貴族
(
きぞく
)
の
生
(
うまれ
)
が
何
(
なん
)
だ。
187
鳥
(
とり
)
や
獣
(
けもの
)
でも
自由
(
じいう
)
に
恋
(
こひ
)
を
味
(
あぢ
)
はつて
居
(
ゐ
)
る。
188
万物
(
ばんぶつ
)
の
霊長
(
れいちやう
)
たる
人間
(
にんげん
)
が
恋
(
こひ
)
を
味
(
あぢ
)
はふに
何
(
なん
)
の
不道理
(
ふだうり
)
があらう
筈
(
はず
)
がない。
189
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
けても
捜
(
さが
)
し
出
(
だ
)
し、
190
ヤコブ
様
(
さま
)
を
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
して、
191
地位
(
ちゐ
)
や
名誉
(
めいよ
)
を
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
して
今迄
(
いままで
)
のお
詫
(
わび
)
をせう。
192
妾
(
わたし
)
の
意志
(
いし
)
が
弱
(
よわ
)
かつた
為
(
ため
)
ヤコブ
様
(
さま
)
に
思
(
おも
)
はぬ
歎
(
なげき
)
をかけた……。
193
ヤコブ
様
(
さま
)
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
194
仮令
(
たとへ
)
地獄
(
ぢごく
)
に
堕
(
お
)
ちた
所
(
ところ
)
で
貴方
(
あなた
)
との
約束
(
やくそく
)
を
実行
(
じつかう
)
致
(
いた
)
しませう。
195
それが
女
(
をんな
)
の
本領
(
ほんりやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますから……』
196
と
傍
(
かたはら
)
に
人
(
ひと
)
無
(
な
)
きを
幸
(
さいは
)
ひ、
197
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らず
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
198
ブラバーサは、
199
サロメがヤコブのことを
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのを
聞
(
き
)
いてゐながら、
200
やつぱりマリヤとしか
思
(
おも
)
へなかつた。
201
二人
(
ふたり
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
一所
(
いつしよ
)
に
集
(
あつ
)
まつて
互
(
たがひ
)
にかたく
抱
(
だ
)
き
締
(
し
)
めた。
202
そして
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
も、
203
橄欖山
(
かんらんざん
)
も
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
もどこかへ
消滅
(
せうめつ
)
したやうな
無我
(
むが
)
の
域
(
ゐき
)
に
入
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
204
暫
(
しばら
)
くあつてサロメは、
205
ホツト
気
(
き
)
がついたやうに、
206
サロメ
『あゝヤコブ
様
(
さま
)
、
207
ヨウ
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
208
妾
(
わたし
)
の
一念
(
いちねん
)
が
貴方
(
あなた
)
の
魂
(
たましひ
)
に
通
(
つう
)
じたので
御座
(
ござ
)
りませう。
209
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
身
(
み
)
も
魂
(
たま
)
もあなたに
捧
(
ささ
)
げまして
決
(
けつ
)
して
外
(
ほか
)
へは
心
(
こころ
)
を
散
(
ち
)
らしませぬから
可愛
(
かあい
)
がつて
下
(
くだ
)
さいませ』
210
ブラバーサはヤコブと
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて
大
(
おほい
)
に
怒
(
いか
)
り、
211
ブラバーサ
『こりや
不貞腐
(
ふていくさ
)
れのマリヤ
奴
(
め
)
、
212
よう
私
(
わたし
)
を
翻弄
(
ほんろう
)
して
呉
(
く
)
れたなア。
213
お
前
(
まへ
)
の
熱愛
(
ねつあい
)
して
居
(
ゐ
)
るヤコブの
代理
(
だいり
)
に
己
(
おれ
)
を
使
(
つか
)
ふとは、
214
馬鹿
(
ばか
)
にするのも
程
(
ほど
)
があるではないか。
215
己
(
おれ
)
はマリヤより
外
(
ほか
)
に
愛
(
あい
)
する
女
(
をんな
)
は
無
(
な
)
いのだと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのにエヽ
汚
(
けが
)
らはしい、
216
勝手
(
かつて
)
にどうなとしたがよからう。
217
俺
(
おれ
)
もこれで
胸
(
むね
)
の
迷
(
まよ
)
ひが
取
(
と
)
れた。
218
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
219
サロメはやつぱり
現
(
うつつ
)
になつてブラバーサをヤコブと
思
(
おも
)
ひつめて
居
(
ゐ
)
た。
220
マリヤより
愛
(
あい
)
する
女
(
をんな
)
が
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
ふのを
聞
(
き
)
いて、
221
サロメ
『エヽ
悪性
(
あくしやう
)
男
(
をとこ
)
のヤコブ
奴
(
め
)
、
222
ようもようも
此
(
この
)
サロメを
馬鹿
(
ばか
)
にしよつたなア。
223
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てた
此
(
この
)
体
(
からだ
)
、
224
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
破
(
やぶ
)
れかぶれ
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたがよからう』
225
と
護身用
(
ごしんよう
)
の
短刀
(
たんたう
)
を
抜
(
ぬ
)
いて
切
(
き
)
つてかかる。
226
ブラバーサはマリヤ
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つたと
作事
(
さくじ
)
小屋
(
ごや
)
のぐるりを
逃
(
に
)
げ
廻
(
まは
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
227
かかる
所
(
ところ
)
へ
疑
(
うたが
)
ひ
深
(
ぶか
)
いマリヤは、
228
サロメがアンナ
事
(
こと
)
をいつて、
229
ブラバーサを
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るのでなからうかと、
230
中途
(
ちうと
)
より
引返
(
ひきかへ
)
し
来
(
きた
)
り、
231
此
(
この
)
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
打驚
(
うちおどろ
)
き、
232
マリヤ
『もしサロメ
様
(
さま
)
、
233
マア
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
234
と
腕
(
うで
)
に
食
(
くら
)
ひつく。
235
サロメは
夜叉
(
やしや
)
の
如
(
ごと
)
くに
怒
(
いか
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
236
サロメ
『エヽ
恋
(
こひ
)
の
敵
(
かたき
)
マリヤ
奴
(
め
)
、
237
ヤコブを
取
(
と
)
りよつた
恨
(
うらみ
)
だ、
238
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ』
239
と
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ。
240
其処
(
そこ
)
へ
又
(
また
)
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
たのはサロメの
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふてやつて
来
(
き
)
た
失恋
(
しつれん
)
男
(
をとこ
)
のヤコブであつた。
241
ヤコブは
大声
(
おほごゑ
)
をあげて、
242
ヤコブ
『これこれサロメさまお
気
(
き
)
が
狂
(
くる
)
ふたのか
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
243
私
(
わたし
)
はヤコブで
御座
(
ござ
)
います』
244
サロメは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
勢
(
いきほひ
)
抜
(
ぬ
)
け
茫然
(
ばうぜん
)
として
短刀
(
たんたう
)
を
握
(
にぎ
)
つたまま
衝立
(
つつた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
245
月
(
つき
)
は
皎々
(
かうかう
)
として
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
を
照
(
て
)
らし
初
(
はじ
)
めた。
246
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
顔
(
かほ
)
は
一度
(
いちど
)
にハツキリして
来
(
き
)
た。
247
マリヤは
慄
(
ふる
)
ふて
居
(
ゐ
)
るブラバーサの
手
(
て
)
を
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
り、
248
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つてゐらしたの。
249
妾
(
わたし
)
どの
位
(
くらゐ
)
たづねて
居
(
ゐ
)
たのか
分
(
わか
)
りませぬのよ』
250
ブラバーサ
『ウンお
前
(
まへ
)
がマリヤであつたか。
251
夜中
(
やちう
)
の
事
(
こと
)
とて
甚
(
えら
)
い
人違
(
ひとちが
)
ひをしたものだ。
252
あの
活劇
(
くわつげき
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたであらうなア』
253
マリヤは、
254
マリヤ
『ホヽヽヽヽ』
255
サロメも、
256
サロメ
『ホヽヽヽヽ』
257
ヤコブ
『
何
(
なん
)
だ
人違
(
ひとちが
)
ひか、
258
サア、
259
サロメさま、
260
ヤコブはどこ
迄
(
まで
)
も
貴女
(
あなた
)
と
離
(
はな
)
れませぬから
覚悟
(
かくご
)
して
下
(
くだ
)
さい、
261
命
(
いのち
)
がけですよ』
262
サロメ
『
妾
(
わたし
)
だつて
命
(
いのち
)
がけですわ。
263
ブラバーサ
様
(
さま
)
があなたに
見
(
み
)
えたので
甚
(
えら
)
い
間違
(
まちが
)
ひを
致
(
いた
)
しました。
264
マア
無事
(
ぶじ
)
で
怪我
(
けが
)
が
無
(
な
)
くて
何
(
なに
)
より
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
265
皆様
(
みなさま
)
茲
(
ここ
)
で
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
感謝
(
かんしや
)
を
致
(
いた
)
しませう』
266
と
男女
(
だんぢよ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
地上
(
ちじやう
)
に
端座
(
たんざ
)
し、
267
恋
(
こひ
)
の
成功
(
せいこう
)
を
感謝
(
かんしや
)
した。
268
ヨルダン
川
(
がは
)
の
流
(
なが
)
れも
峰
(
みね
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
も
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
も
漸
(
やうや
)
く
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
開展
(
かいてん
)
して
来
(
き
)
た。
269
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
270
(
大正一二・七・一二
旧五・二九
加藤明子
録)
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(N)
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> 第16章 天消地滅
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