霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 暗着(あんちやく)〔一六五二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上 篇:第5篇 山河異涯 よみ(新仮名遣い):さんがいがい
章:第23章 暗着 よみ(新仮名遣い):あんちゃく 通し章番号:1652
口述日:1923(大正12)年07月13日(旧05月30日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台:橄欖山の山頂 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-12-08 15:38:04 文字数:4848 OBC :rm64a23
愛善世界社版:251頁 八幡書店版:第11輯 471頁 修補版: 校定版:253頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001名利(めいり)の欲(よく)に捉(とら)はれし
002男女(なんによ)四人(よたり)の醜魂(しこたま)は
003うろたへ騒(さわ)ぎ小北山(こぎたやま)
004後(あと)に見(み)すてて汽車(きしや)の窓(まど)
005勢(いきほ)ひ込(こ)んで乗込(のりこ)めば
006轍(わだち)の音(おと)も轟々(ごうごう)と
007大地(だいち)をビリビリふるはせて
008何(なん)の当途(あてど)も嵐山(あらしやま)
009花園(はなぞの)二条(にでう)京都駅(きやうとえき)
010西(にし)へ西(にし)へと向日町(むかふまち)
011上(のぼ)る山崎(やまざき)高槻(たかつき)や
012大阪駅(おほさかえき)も乗越(のりこ)えて
013出(い)でゆく先(さき)は広島(ひろしま)や
014馬関(ばくわん)の関(せき)に立向(たちむか)ひ
015転覆丸(てんぷくまる)に身(み)を乗(の)せて
016漸(やうや)く釜山(ふざん)に上陸(じやうりく)し
017京城(けいじやう)平壌(へいぜう)鴨緑(あふりよく)の
018橋(はし)を渡(わた)つて満洲(まんしう)の
019広軌(くわうき)鉄道(てつだう)スクスクと
020夜(よ)を日(ひ)についで進(すす)み行(ゆ)く
021二十(にじふ)余(よ)日(にち)の汽車(きしや)の上(うへ)
022漸(やうや)く聖地(せいち)に安着(あんちやく)し
023音(おと)に名高(なだか)きエルサレム
024市中(しちう)をウロウロ迂路(うろ)付(つ)きつ
025一目散(いちもくさん)に橄欖(かんらん)の
026山(やま)を目(め)がけて駆上(かけあが)り
027四辺(あたり)の景色(けしき)を見(み)まはして
028胸(むね)を躍(をど)らせ呆(あき)れゐる。
029 お寅(とら)はほつと息(いき)をつぎ、
030お寅『アヽヤレヤレ、031ヤツトの事(こと)で、032八千(はつせん)哩(マイル)の水陸(すゐりく)を渡(わた)り、033目的(もくてき)地点(ちてん)へ達(たつ)しました。034何(なん)とマア桶伏山(をけぶせやま)によく似(に)た所(ところ)ですな。035併(しか)し乍(なが)ら山(やま)の具合(ぐあひ)と云(い)ひ木(き)の具合(ぐあひ)と云(い)ひ、036どうも日(ひ)の出島(でじま)の桶伏山(をけふせやま)とはどこ共(とも)なしに物淋(ものさび)しいやうな気(き)がするではありませぬか。037又(また)外国(ぐわいこく)身魂(みたま)を盛(さか)んに教育(けういく)せうと思(おも)つて、038大(おほ)きな学校(がくかう)を建(た)ててゐるだありませぬか。039練瓦(れんぐわ)や石(いし)をたたんで、040此(この)結構(けつこう)な霊場(れいぢやう)をワヤにする奴(やつ)は、041何処(どこ)の四(よ)つ足(あし)人種(じんしゆ)だらうかなア』
042 守宮別(やもりわけ)は迷惑顔(めいわくがほ)にて、
043守宮別『コレコレお寅(とら)さま、044さう大(おほ)きな声(こゑ)で云(い)ふものぢやありませぬよ。045あれはシオン大学(だいがく)と云(い)つて、046世界(せかい)の学者(がくしや)を集(あつ)めて、047世界(せかい)の思想界(しさうかい)を改良(かいりやう)しやうといふ所(ところ)ですよ。048つまり日(ひ)の出(での)守護(しゆご)にせうと云(い)つて、049ユダヤの学者(がくしや)や世界(せかい)の博士(はかせ)等(たち)が寄(よ)つて経営(けいえい)してるのですよ。050日(ひ)の出島(でじま)なら何(なに)を云(い)つて居(を)つても笑(わら)ひませぬが、051言葉(ことば)の通(つう)じない斯様(かやう)な所(ところ)へ来(き)て仕様(しやう)もない事(こと)を云(い)つては困(こま)りますからな。052あなたは外国語(ぐわいこくご)が分(わか)らぬのだから、053何事(なにごと)も私(わたし)の言(い)ふやうにして下(くだ)さい』
054お寅『ヘン、055外国語(ぐわいこくご)が、056何(なに)夫程(それほど)有難(ありがた)いのだい。057変性(へんじやう)男子(なんし)さまは此(この)世(よ)の中(なか)をイロハ四十八(しじふはち)文字(もじ)で何(なに)もかも治(をさ)めると仰有(おつしや)つたのぢやありませぬか。058之(これ)から外国人(ぐわいこくじん)に改心(かいしん)さしてイロハ四十八(しじふはち)文字(もじ)の日(ひ)の出島(でじま)の言葉(ことば)を覚(おぼ)えさしたら可(い)いだありませぬか。059それ丈(だけ)の権威(けんゐ)がなくて何(ど)うして三千(さんぜん)世界(せかい)の日(ひ)の出神(でのかみ)となれますか。060お前(まへ)さまも余程(よほど)分(わか)らぬことを云(い)ふぢやありませぬか。061オホヽヽヽ』
062守宮別『又(また)はしやがれるのかなア。063併(しか)し何(なん)ぼはしやいでも、064外国人(ぐわいこくじん)に日本語(にほんご)の分(わか)る人(ひと)が少(すくな)いからマア結構(けつこう)だ。065サア是(これ)からシオン大学(だいがく)の建築(けんちく)工事(こうじ)でも見(み)せて貰(もら)ひませうかい』
066お寅『コレ守宮別(やもりわけ)さま、067そんな気楽(きらく)なことをいつてる時(とき)だありますまい。068早(はや)く、069桶伏山(をけぶせやま)からソツと隠(かく)れて来(き)てゐるといふブラバーサの所在(ありか)を捜(さが)し、070談判(だんぱん)せねば思惑(おもわく)が立(た)ちませぬぞや』
071 かく話(はな)す所(ところ)へシオン大学(だいがく)の創立者(さうりつしや)たるスバール博士(はかせ)が、072ステツキをつき乍(なが)らやつて来(き)た。073守宮別(やもりわけ)は得意(とくい)の英語(えいご)で何(なん)だかペラペラと話(はな)しかけた。074博士(はかせ)も極(きは)めて愉快気(ゆくわいげ)に守宮別(やもりわけ)と握手(あくしゆ)し乍(なが)ら半時(はんとき)ばかり話(はな)してゐた。075其(その)要点(えうてん)は……守宮別(やもりわけ)が日(ひ)の出島(でじま)から救世主(きうせいしゆ)日(ひ)の出神(でのかみ)を送(おく)つて来(き)たといふ大体(だいたい)の話(はなし)であつた。076スバール博士(はかせ)は真面目(まじめ)に聞(き)いてゐたが、077しまひには吹出(ふきいだ)してニタツと笑(わら)ひ袂(たもと)を別(わか)つたのである。078守宮別(やもりわけ)は此(この)博士(はかせ)に認(みと)められなければ日(ひ)の出神(でのかみ)もダメだと思(おも)つたが、079そ知(し)らぬ面(つら)して平気(へいき)を装(よそほ)ふてゐた。080お寅(とら)はスバール博士(はかせ)の姿(すがた)が見(み)えなくなつたのを幸(さいは)ひ、081又(また)もや喋(しやべ)り出(だ)したり。
082お寅『コレ、083守宮別(やもりわけ)さま、084チーチク、085パーパーと雀(すずめ)のよなことをいつてゐたが、086一体(いつたい)何(なに)をいつてゐたのだい。087日(ひ)の出神(でのかみ)の救世主(きうせいしゆ)が御(ご)降臨(かうりん)だといふことをお前(まへ)さまは言(い)はなかつたのかい』
088守宮別『ソンナことに如才(じよさい)がありますか。089その為(ため)にはるばる来(き)たのではありませぬか。090確(たしか)に云(い)ひましたよ。091あの方(かた)はスバール博士(はかせ)といふて世界(せかい)で有名(いうめい)な学者(がくしや)ですよ。092あの人(ひと)さへ分(わか)れば世界中(せかいぢう)の人間(にんげん)があなたを救世主(きうせいしゆ)と認(みと)めてくれますよ』
093お寅『何(なん)とマア神(かみ)様(さま)のお仕組(しぐみ)と云(い)ふものは偉(えら)いものだなア。094ここへ着(つ)くが早(はや)いか、095スバール博士(はかせ)に会(あ)ふて日(ひ)の出神(でのかみ)を認(みと)めて貰(もら)ふとは本当(ほんたう)に神(かみ)さまも偉(えら)いワイ。096ヘン、097ブラバーサなんて、098抜(ぬけ)がけの功名(こうみやう)をせうと思(おも)つて先(さき)へ来(き)乍(なが)ら、099何処(どこ)の隅(すみ)に居(ゐ)るかとも云(い)はれてゐないとみえて、100橄欖山(かんらんざん)に姿(すがた)も見(み)えぬぢやないか。101どつかへ消滅(せうめつ)したと見(み)える。102オホヽヽヽあた気味(きみ)の可(よ)い、103だから日(ひ)の出神(でのかみ)に従(したが)へ……といふのだ。104コレ曲彦(まがひこ)さま、105お花(はな)さま、106御(ご)神力(しんりき)が分(わか)りましたかな』
107曲彦『今(いま)来(き)たばかりで根(ね)つから何(なに)も分(わか)りませぬ』
108お寅『エヽ、109何(なん)といふ盲(めくら)だいな。110お花(はな)さま、111お前(まへ)は分(わか)つただらうな』
112お花『何(なに)を云(い)ふても英語(えいご)を知(し)らないものだから不便(ふべん)で御座(ござ)いますワイ』
113お寅『そこが御(ご)神力(しんりき)でいくのだよ。114イロハ四十八(しじふはち)文字(もじ)さへ使(つか)へば三千(さんぜん)世界(せかい)に通用(つうよう)するのだからな』
115曲彦『曲彦(まがひこ)が考(かんが)へると、116現(げん)に此処(ここ)では日(ひ)の出島(でじま)の言葉(ことば)が通用(つうよう)せぬぢやありませぬか。117イロハ四十八(しじふはち)文字(もじ)も可(い)い加減(かげん)なものですな』
118お寅『コレ、119守宮別(やもりわけ)さま、120二人(ふたり)の分(わか)らずやに、121今(いま)の博士(はかせ)のことをトツクリと合点(がつてん)の行(ゆ)くやうに言(い)ふて上(あ)げて下(くだ)さい。122さうするとチツとは、123目(め)がさめるでせうから、124今(いま)あの博士(はかせ)が去(い)んだから、125やがて旗(はた)を立(た)てて大勢(おほぜい)で迎(むか)へに来(く)るだらう。126エヘヽヽヽ』
127守宮別『コレお寅(とら)さま、128ダメですよ。129さう今(いま)から喜(よろこ)んで貰(もら)ふと困(こま)りますがな』
130お寅『エヽ?何(なに)がダメだい。131三千(さんぜん)世界(せかい)の救世主(きうせいしゆ)が現(あら)はれて来(き)てるだないか。132世界(せかい)の学者(がくしや)ともあるものが、133ソンナことが分(わか)らぬと云(い)ふことがあるものか。134お前(まへ)はそんなこと云(い)つていちやつかすのだらう、135本当(ほんたう)のこと云(い)つて下(くだ)さいな』
136守宮別『本当(ほんたう)の事(こと)云(い)つたら、137あなたビツクリしますよ。138サア当山(たうざん)を下(くだ)つて、139どつかのホテルへ這入(はい)りませう』
140お寅『そして博士(はかせ)は何(なん)と云(い)つたのだい』
141守宮別『モウ云(い)ひますまい。142偽(にせ)予言者(よげんしや)、143偽(にせ)救世主(きうせいしゆ)が沢山(たくさん)に来(く)る世(よ)の中(なか)だから、144お前(まへ)さまも可(い)い加減(かげん)に目(め)を醒(さ)ませと云(い)ひました。145何(ど)うもあの博士(はかせ)の云(い)ふことには真理(しんり)があるやうです。146こんな所(ところ)迄(まで)来(き)て恥(はぢ)を掻(か)きました。147何(なに)しろ日(ひ)の出神(でのかみ)は偽(にせ)救世主(きうせいしゆ)ですからなア』
148お寅『エヽ馬鹿(ばか)にしなさるな。149お前(まへ)さまの云(い)ひ様(やう)が悪(わる)いからだ。150チーパーチーパーと小鳥(ことり)の鳴(な)く様(やう)なこと云(い)つて、151何(なに)分(わか)るものか。152なぜモツと分(わか)る様(やう)に仰有(おつしや)らぬのだい。153本当(ほんたう)に仕方(しかた)のない人(ひと)だなア』
154守宮別『何(ど)つかでウヰスキーでも一杯(いつぱい)やらぬと元気(げんき)が出(で)ませぬワ。155一遍(いつぺん)エルサレムの町(まち)迄(まで)行(ゆ)きませう、156そこでゆつくり話(はな)しませう』
157お寅『一寸(ちよつと)待(ま)つて下(くだ)さい、158何処(どこ)ぞ此処(ここ)らにブラバーサが潜伏(せんぷく)して居(ゐ)るか知(し)れぬから、159一遍(いつぺん)彼奴(あいつ)に会(あ)うて面(つら)の皮(かは)をヒンむいてやらむことにや仕方(しかた)がない。160何(なん)でも彼奴(あいつ)がシオン大学(だいがく)の博士(はかせ)等(ら)に会(あ)うて邪魔(じやま)をして居(ゐ)るに違(ちがひ)ない。161サアサア曲彦(まがひこ)さま、162お花(はな)さま、163此(この)山(やま)を小口(こぐち)から捜(さが)すのだよ』
164守宮別『お寅(とら)さま、165ブラバーサだつて、166コンナ山(やま)ばかりに居(を)り相(さう)なことはない。167朝(あさ)とか晩(ばん)とかに一遍(いつぺん)づつ参(まゐ)る位(くらゐ)でせう。168キツと何(ど)つかの宿(やど)に居(を)るに違(ちがひ)ありませぬワ』
169お寅『折角(せつかく)此処(ここ)迄(まで)来(き)たのだから、170ソンナラ此処(ここ)で一(ひと)つ日(ひ)の出神(でのかみ)さまを御(ご)祈願(きぐわん)して、171歌(うた)でも詠(よ)んで、172それからエルサレム迄(まで)一先(ひとま)づ行(ゆ)くことにしませう』
173曲彦『モシお寅(とら)さま、174日(ひ)の出神(でのかみ)を拝(をが)めと云(い)ひなさるが、175日(ひ)の出神(でのかみ)は貴女(あなた)とは違(ちが)ひましたかいな』
176お寅『エー合点(がつてん)の悪(わる)い、177日(ひ)の出神(でのかみ)と云(い)へば底津(そこつ)岩根(いはね)の大弥勒(おほみろく)さまを拝(をが)めと云(い)ふことだがな。178一(いち)を聞(き)いたら十(じふ)を悟(さと)るのが大和(やまと)魂(だましひ)ですよ。179何(なに)から何(なに)迄(まで)教(をし)へてやらねばならぬといふのは、180困(こま)つた男(をとこ)を連(つ)れて来(き)たものだなア』
181曲彦『それでもお寅(とら)さまの選(より)によつた水晶魂(すゐしやうみたま)が来(き)たのだもの、182さう小言(こごと)を云(い)つて貰(もら)ひますまいか。183アタ阿呆(あはう)らしい、184こんな遠(とほ)い所(ところ)迄(まで)ついて来(き)て、185いきなり小言(こごと)を聞(き)かうとは夢(ゆめ)にも思(おも)ひませぬワイ、186なアお花(はな)さま、187本当(ほんたう)にバカらしいぢやありませぬか。188歌(うた)もロクによむ気(き)になりませぬがな』
189お花『コレ曲彦(まがひこ)さま、190ここへ来(き)た上(うへ)はモウ仕方(しかた)がない、191守宮別(やもりわけ)さまとお寅(とら)さまの仰有(おつしや)る通(とほ)りにするのだよ。192言葉(ことば)も分(わか)らず、193神徳(しんとく)の足(た)らぬ者(もの)は何(なん)と云(い)つたつてダメだらう……神力(しんりき)の高(たか)いお寅(とら)さまと外国語(ぐわいこくご)の分(わか)つた守宮別(やもりわけ)さまに絶対(ぜつたい)服従(ふくじゆう)するより途(みち)がありませぬワイ』
194守宮別『何(なん)と云(い)つても此処(ここ)へ来(く)れば此(この)守宮別(やもりわけ)さまの天下(てんか)だ。195お寅(とら)さまもチツと我(が)を折(を)つて私(わたし)の云(い)ふことを聞(き)きなされ。196イロハ四十八(しじふはち)文字(もじ)も此処(ここ)へ来(き)ては余(あま)り権威(けんゐ)がありますまいがな。197アハヽヽヽ』
198お寅『これ丈(だけ)立派(りつぱ)な日(ひ)の出神(でのかみ)が日(ひ)の出島(でじま)から御(ご)降臨(かうりん)になつてゐるのに、199分(わか)らぬ奴(やつ)ばかりとみえて、200一人(ひとり)も歓迎(くわんげい)に来(こ)ぬぢやないか。201コレ守宮(やもり)さま、202お前(まへ)さまの談判(だんぱん)が悪(わる)いからだ。203モ一遍(いつぺん)宣直(のりなほ)して来(き)なさい。204それが厭(いや)ならブラバーサを捜(さが)して、205彼奴(あいつ)を博士(はかせ)の前(まへ)であやまらすが宜(よろ)しい。206さうすりや一遍(いつぺん)に信用(しんよう)が回復(くわいふく)しますぞや』
207お寅(とら)『海山(うみやま)をはるばる越(こ)えて来(き)て見(み)れば
208聞(き)きしに違(たが)ふ橄欖(かんらん)の山(やま)』
209お花(はな)『思(おも)ひきや長(なが)い鉄路(てつろ)を渡(わた)り来(き)て
210山(やま)の上(うへ)にて小言(こごと)聞(き)くとは』
211お寅『コレお花(はな)さま、212何(なん)といふ不足(ふそく)らしい歌(うた)をいふのだい。213宣(の)り直(なほ)しなさい』
214お花『ハイハイ、215宣直(のりなほ)さうと云(い)つたつて、216乗車(じやうしや)切符(きつぷ)もなし、217何(ど)うするのですかい』
218お寅『エー合点(がつてん)の悪(わる)い、219歌(うた)を言(い)ひ直(なほ)しなさいと云(い)ふのだがなア』
220お花(はな)『果(は)てしなき海山(うみやま)越(こ)えてこがれたる
221聖地(せいち)にやうやうつきの空(そら)かな』
222お寅『又(また)ソンナことを言(い)ひなさる、223つきの空(そら)なぞと私(わたし)は月(つき)は嫌(きら)ひだと何時(いつ)も云(い)ふぢやないか。224丸(まる)くなつたり虧(か)けたり、225細(ほそ)くなつたり、226出(で)たり出(で)なかつたりするやうな、227変性(へんじやう)女子(によし)的(てき)の月(つき)のことをいつて下(くだ)さるな。228何(なん)で日(ひ)の出神(でのかみ)を歌(うた)ひなさらぬか。229コレ曲彦(まがひこ)さま、230お前(まへ)一(ひと)つ歌(うた)つて御覧(ごらん)……』
231曲彦(まがひこ)『日(ひ)の出島(でじま)あとに見(み)すてて火(ひ)の車(くるま)
232乗(の)りて来(き)たのは橄欖(かんらん)の山(やま)』
233お寅『ソリヤ何(なん)ぢやいなア。234ソンナ腰抜歌(こしぬけうた)がありますか』
235曲彦『それでも私(わたし)は力(ちから)一(いち)パイ、236知恵(ちゑ)を絞(しぼ)り出(だ)してよんだのだから、237余(あま)り笑(わら)ふて貰(もら)ひますまいかい』
238お寅『エー、239下手(へた)でも上手(じやうず)でもよい。240日(ひ)の出神(でのかみ)のことを歌(うた)ふのだよ』
241 曲彦(まがひこ)は、
242曲彦『日(ひ)出(い)づる国(くに)の御空(みそら)を立出(たちで)たる
243お寅(とら)婆(ば)さまは目(め)から日(ひ)の出(で)の神(かみ)となる』
244お寅『何(なん)といふバカだらうかな。245エーエー仕方(しかた)がない、246何事(なにごと)も人(ひと)を力(ちから)にするな、247杖(つゑ)につくなと神(かみ)様(さま)が仰有(おつしや)つた筈(はず)だ。248ドレ私(わたし)が自(みづか)ら詠(よ)んでみませう……
249烏羽玉(うばたま)の暗(やみ)をてらしてさし上(のぼ)る
250日(ひ)の出神(でのかみ)の光(ひかり)尊(たふと)し
251と、252かういふのだよ』
253曲彦『あなたのいふ日(ひ)の出神(でのかみ)さまは日天(につてん)さまのこつちや御座(ござ)いませぬか、254チツと可笑(をか)しいぢや御座(ござ)いませぬかい』
255お寅(とら)『コラ曲彦(まがひこ)、256よく聞(き)きなさい。257此(この)世界(せかい)は元(もと)は一天(いつてん)さまがお造(つく)り遊(あそ)ばしたのだ。258そして一天(いつてん)様(さま)のお子様(こさま)に日天(につてん)月天(ぐわつてん)とあるのだ。259それを御(ご)三体(さんたい)の大神(おほかみ)といふのだ。260併(しか)し月天(ぐわつてん)さまといふのは盈虧(みちかけ)のあるお月様(つきさま)だないよ。261月天(ぐわつてん)が行(ゆ)きましたかな。262次(つぎ)が鍾馗(しようき)さまの霊(みたま)、263其(その)次(つぎ)が東方朔(とうはうさく)の身魂(みたま)、264此(この)五(いつ)つを合(あは)せて此(この)世(よ)を五苦楽(ごくらく)といふのだ。265大(だい)の字(じ)の端々(はしばし)に○(まる)をつけて御覧(ごらん)なさい、266ヤツパリ五(いつ)つになりませうがな』
267曲彦『末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の大神(おほかみ)さまやユラリ彦(ひこ)さま、268ミロク成就(じやうじゆ)の大神(おほかみ)さまは何(ど)うなつたのですか。269東方朔(とうはうさく)なことを仰有(おつしや)いますな。270それでも正気(しやうき)で仰有(おつしや)るのですか。271日天(につてん)月天(ぐわつてん)が行(ゆ)きませぬワイ。272オツホヽヽヽ』
273お寅『日(ひ)の出島(でじま)の言葉(ことば)とは此処(ここ)の言葉(ことば)は違(ちが)ふから名(な)を変(か)へたのだよ。274英語(えいご)を使(つか)ふ国(くに)へ来(き)たら英語(えいご)で言(い)はなならぬからなア』
275曲彦『ヘーエ、276それでも英語(えいご)ですかいな、277曲彦(まがひこ)には合点(がてん)が承知(しようち)しませぬワ』
278お寅『エーエ、279ゴテゴテいひなさるな、280サア一(ひと)つ守宮別(やもりわけ)さまも歌(うた)ひなさい』
281守宮別『私(わたし)は英語(えいご)で一(ひと)つ歌(うた)つてみませう。282極簡単(ごくかんたん)によく分(わか)るやうにいひますから、283気(き)をつけて聞(き)いて下(くだ)さいや……
284ヂヤパニース、285セウホクザンノ、286ヤンチヤアバーサン、287オー、288トラワー、289キンモーキウビニー、290ダー、291マサレテー、292ウミヤマヲコエ、293ココマデヤツテキタノワー、294カワイ、295ソー、296ダゾヨー、297オレモ、298スバールハカセニアウテ、299ニセモノトイフコトガワカリタノダゾヨ、300ソレデアイソガツーキターダカラ、301ハライセニサケデモノンデヤロート、302オモツテイルノダー、303アータ、304アホラシ、305バカニ、306シラレ、307タゾヨ、308イヒ、309イヒヽヽヽヽ、310あゝ英語(えいご)の歌(うた)も一寸(ちよつと)六(む)つかしいワイ』
311お寅『コレ、312守宮(やもり)さま、313人(ひと)が知(し)らぬかと思(おも)ふて何(なん)といふ悪口(わるくち)をいふのだい。314ヘン、315そんな英語(えいご)位(くらゐ)分(わか)つて居(を)りますぞや。316私(わたし)だつてその位(くらゐ)の英語(えいご)は立派(りつぱ)に使(つか)つてみせますぞや。317お前(まへ)さまはヤケになつて酒(さけ)を呑(の)むと云(い)つただらう。318呑(の)むと云(い)つたつて、319お金(かね)がなければ呑(の)めますまい。320チヤンと私(わたし)が懐(ふところ)にしめこみてゐるのだから、321一合(いちがふ)づつ呑(の)まして上(あ)げやう。322お前(まへ)さまに酒(さけ)を呑(の)ますと、323泥(どろ)に酔(よ)ふた鮒(ふな)の様(やう)になつてチツとも間(ま)に合(あ)はぬからなア…………エー気分(きぶん)が悪(わる)うなつて来(き)た。324兎(と)も角(かく)エルサレムの何(ど)つかで宿(やど)をとることにせうかい………皆(みな)さま、325ついて来(き)なされや』
326と肩(かた)や尻(しり)をプリンプリンとふり乍(なが)ら不機嫌(ふきげん)な面(かほ)して山(やま)を降(くだ)り行(ゆ)く。
327(大正一二・七・一三 旧五・三〇 松村真澄録)
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