霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 誘惑(いうわく)〔一六四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上 篇:第3篇 花笑蝶舞 よみ(新仮名遣い):かしょうちょうぶ
章:第12章 誘惑 よみ(新仮名遣い):ゆうわく 通し章番号:1641
口述日:1923(大正12)年07月12日(旧05月29日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台:橄欖山の山頂 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-11-25 18:33:00 文字数:6197 OBC :rm64a12
愛善世界社版:133頁 八幡書店版:第11輯 426頁 修補版: 校定版:133頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001 ブラバーサは蒼空(さうくう)の月(つき)を眺(なが)め乍(なが)ら只一人(ただひとり)シヨンボリと立(た)つてゐる。002そこへスタスタやつて来(き)た女(をんな)は、003一(いつ)ケ月(げつ)以前(いぜん)から真心(まごころ)をこめて聖地(せいち)の案内(あんない)をしてくれたマリヤであつた。
004マリヤ『聖師(せいし)様(さま)、005あなたお一人(ひとり)で御座(ござ)りますか。006妾(わたし)は又(また)サロメ様(さま)と御(ご)一緒(いつしよ)かと思(おも)つてゐました』
007ブラバーサ『あゝ貴女(あなた)はマリヤ様(さま)で御座(ござ)りましたか。008貴女(あなた)もお一人(ひとり)で夜分(やぶん)によくお出(いで)になりましたな』
009マリヤ『ハイ、010あなたのお後(あと)を慕(した)つて御(ご)迷惑(めいわく)とは存(ぞん)じ乍(なが)らコロニーをソツと脱(ぬ)け出(だ)して参(まゐ)りましたのですよ。011折角(せつかく)サロメ様(さま)とシツポリ話(はな)さうと思(おも)つて御座(ござ)る所(ところ)へ、012エライ邪魔者(じやまもの)が参(まゐ)りまして、013お気(き)を揉(も)ませます。014月(つき)に村雲(むらくも)、015花(はな)に嵐(あらし)とやら、016世(よ)の中(なか)は思(おも)ふ様(やう)に行(ゆ)かないもので御座(ござ)いますよ。017ホヽヽヽヽ』
018ブラバーサ『これは又(また)、019妙(めう)なお言葉(ことば)を承(うけたま)はります。020サロメ様(さま)も時々(ときどき)当山(たうざん)へお参(まゐ)りになり、021私(わたし)も二三回(にさんくわい)此(この)山上(さんじやう)で偶然(ぐうぜん)お目(め)にかかりましたが、022別(べつ)にサロメ様(さま)と内密(ないみつ)で話(はな)さねばならぬやうな訳(わけ)もありませぬから、023何卒(どうぞ)気(き)をもみて下(くだ)さいますな。024私(わたし)は貴女(あなた)の御(ご)親切(しんせつ)な態度(たいど)に満心(まんしん)の感謝(かんしや)を捧(ささ)げて居(を)ります』
025マリヤ『聖師(せいし)は嘘(うそ)を仰有(おつしや)らぬもの、026其(その)お言葉(ことば)に間違(まちがひ)なくば妾(わたし)も安心(あんしん)致(いた)しました。027時(とき)に一(ひと)つお願(ねが)ひし度(た)い事(こと)が御座(ござ)いますが、028聞(き)いて貰(もら)ふ訳(わけ)には行(ゆ)きませぬか。029此(この)間(あひだ)差上(さしあ)げました手紙(てがみ)はお読(よみ)下(くだ)さつたでせうな』
030ブラバーサ『成(な)る程(ほど)二三(にさん)日(にち)以前(いぜん)にアラブが貴女(あなた)からの手紙(てがみ)だと云(い)つてカトリックの僧院(そうゐん)迄(まで)届(とど)けて呉(く)れましたが、031その儘(まま)、032まだ開封(かいふう)もせずに懐(ふところ)に持(も)つて居(を)ります』
033マリヤ『貴方(あなた)は私(わたし)の真心(まごころ)がお分(わか)りにならぬのでせう。034いやお嫌(きら)ひ遊(あそ)ばすのでせう。035海洋(かいやう)万里(ばんり)を越(こ)えて遥々(はるばる)聖地(せいち)にお越(こ)し遊(あそ)ばし、036清(きよ)きお身体(からだ)に黴菌(ばいきん)が附着(ふちやく)した様(やう)に思召(おぼしめ)して、037穢(きたな)い女(をんな)の手紙(てがみ)なんか、038読(よ)まないと云(い)ふ御(ご)精神(せいしん)でせう。039それならそれで宜(よろ)しい、040妾(わたし)は一(ひと)つ考(かんが)へねばなりませぬから、041読(よ)んで貰(もら)はない手紙(てがみ)なら、042貴方(あなた)に差上(さしあ)げても無駄(むだ)ですから返(かへ)して下(くだ)さい』
043ブラバーサ『マリヤさまさう立腹(りつぷく)して貰(もら)つちや困(こま)りますよ。044別(べつ)にそんな考(かんが)へがあつたのぢやありませぬ。045あまり聖地(せいち)の研究(けんきう)に没頭(ぼつとう)してゐましたので遂(つひ)失念(しつねん)して居(を)つたのです』
046マリヤ『妾(わたし)の手紙(てがみ)を忘(わす)れられる位(くらゐ)なら妾(わたし)等(など)は念頭(ねんとう)に無(な)いのでせうな、047アヽ悔(くや)しい!』
048ブラバーサ『マリヤさま、049どうして貴女(あなた)を忘(わす)れませう。050エルサレムの停車場(ていしやぢやう)へ着(つ)くと匆々(さうさう)、051あの街道(かいだう)で貴女(あなた)にお目(め)にかかり、052見知(みし)らぬ異郷(いきやう)の空(そら)で思(おも)はぬ貴女(あなた)とお会(あ)ひした、053あの時(とき)の印象(いんしやう)は一生(いつしやう)私(わたし)は忘(わす)れませぬ。054どうぞ悪(わる)くは思(おも)つて下(くだ)さいますな』
055マリヤ『貴方(あなた)は聖地(せいち)巡覧(じゆんらん)の折(をり)、056どこ迄(まで)も妾(わたし)を愛(あい)すると仰有(おつしや)つたぢやありませぬか。057妾(わたし)はその温(あたた)かいお言葉(ことば)が骨身(ほねみ)に浸(し)み渡(わた)り、058もはや今日(けふ)となつては恋(こひ)の曲物(くせもの)に捕(とら)はれ、059どうする事(こと)も出来(でき)ませぬ。060妾(わたし)の命(いのち)は貴方(あなた)の掌中(しやうちう)に握(にぎ)られたも同様(どうやう)で御座(ござ)ります。061何卒(どうぞ)その手紙(てがみ)を月影(つきかげ)に照(て)らし一度(いちど)読(よ)んで下(くだ)さいませ。062そしてキツパリと御(ご)返事(へんじ)を承(うけたま)はり度(た)いもので御座(ござ)ります』
063ブラバーサ『左様(さやう)ならば折角(せつかく)の御(お)思召(ぼしめし)、064お言葉(ことば)に従(したが)ふか、065従(したが)はぬかは後(のち)の問題(もんだい)として、066兎(と)も角(かく)もここで拝見(はいけん)しませう』
067と懐(ふところ)より信書(しんしよ)を取(と)り出(だ)し、068封(ふう)押(お)し切(き)つて、069胸(むね)轟(とどろ)かせ乍(なが)ら読(よ)み初(はじ)めた………………
070一(ひとつ)、071吾(わが)最(もつと)も敬愛(けいあい)するルートバハーの聖師(せいし)ブラバーサ様(さま)に一書(いつしよ)を差上(さしあ)げ、072切(せつ)なる妾(わらは)が心(こころ)の丈(たけ)を告白(こくはく)致(いた)します。073聖師(せいし)様(さま)、074あなたは全世界(ぜんせかい)の人類(じんるゐ)や凡(すべ)てのものの為(ため)に朝(あさ)な夕(ゆふ)なにお苦(くる)しみ遊(あそ)ばすのは実(じつ)に尊(たふと)く感謝(かんしや)に堪(た)へませぬ。075そこへ又(また)妾(わたし)のやうな大罪人(だいざいにん)がお近(ちか)づきになりまして益々(ますます)お苦(くる)しみを増(まし)なさる事(こと)を深(ふか)く謝罪(しやざい)致(いた)します。076妾(わたし)は初(はじ)めてお目(め)にかかつてより云(い)ふに云(い)はれぬ愛(あい)の情動(じやうだう)にからまれ、077日夜(にちや)苦悶(くもん)を続(つづ)けて居(を)ります。078此(この)苦(くる)しみを免(まぬが)れむと朝夕(あさゆふ)神(かみ)様(さま)に祈(いの)り、079大(だい)勇猛心(ゆうまうしん)を発揮(はつき)し自(みづか)ら心(こころ)を警(いまし)め、080幾度(いくたび)か鞭(むち)をうつてもうつても粉(こ)にして砕(くだ)いても、081此(この)猛烈(まうれつ)な情熱(じやうねつ)の煩悩火(ぼんなうくわ)は弱(よわ)い女(をんな)の意志(いし)では消(け)す事(こと)が出来(でき)ませぬ。082妾(わたし)は煩悶(はんもん)苦悩(くなう)の淵(ふち)に沈(しづ)み、083心(こころ)の鬼(おに)に責(せめ)られて居(を)ります。084あゝ此(この)妾(わたし)の霊肉共(れいにくとも)に救(すく)うて下(くだ)さるものは誰人(たれびと)で御座(ござ)りませうか。085聖師(せいし)様(さま)の尊(たふと)い温(あたた)かい愛(あい)より外(ほか)には何物(なにもの)もありませぬ。086妾(わたし)はどこ迄(まで)も聖師(せいし)様(さま)の愛情(あいじやう)の籠(こ)もつた、087寛(ゆた)かな御懐(みふところ)に抱(いだ)かれ度(た)いので御座(ござ)ります。088身(み)も魂(たましひ)も全部(ぜんぶ)を捧(ささ)げ奉(まつ)つて、089さうして暫(しばら)く無意識(むいしき)状態(じやうたい)になつて眠(ねむ)つて見(み)たう御座(ござ)ります。090聖師(せいし)様(さま)は、091はしたない賤(いや)しき女(をんな)と思召(おぼしめ)さるるでせうが、092貴方(あなた)に抱(いだ)かるるのは妾(わたし)の生命(いのち)を生(い)かし、093妾(わたし)をして間(ま)もなく、094美(うつく)しい芽(め)を吹(ふ)き大活動(だいくわつどう)をさして下(くだ)さる準備(じゆんび)となるのではありますまいか。095妾(わたし)の霊(れい)も体(たい)も恋(こひ)の焔(ほのほ)の為(ため)に疲(つか)れきつて居(を)ります。096もはや玉(たま)の緒(を)の火(ひ)の消(き)えむばかりになりました。097大慈(だいじ)大悲(だいひ)の神(かみ)の教(をしへ)を伝(つた)ふる聖師(せいし)様(さま)、098妾(わたし)と云(い)ふものを、099どうか、100も一度(いちど)甦(よみがへ)らせて下(くだ)さいませ。101あまり人(ひと)の来(こ)ない閑寂(かんじやく)な処(ところ)で、102シンミリと聖師(せいし)様(さま)の温(あたた)かい愛(あい)の御手(みて)に抱(だ)きしめて復活(ふくくわつ)せしめて下(くだ)さいませ。103万一(まんいち)それがために仮令(たとへ)幾万(いくまん)の敵(てき)を受(う)けるとも、104幾万(いくまん)人(にん)の罵詈(ばり)嘲笑(てうせう)を受(う)くるとも決(けつ)して恐(おそ)るるものではありませぬ。105之(これ)も神(かみ)様(さま)の何(なに)か一(ひと)つの御旨(みむね)だと信(しん)じます。106そして妾(わたし)を生(い)かして働(はたら)かしめて下(くだ)さる事(こと)は聖師(せいし)様(さま)が天下(てんか)に活躍(くわつやく)して下(くだ)さる事(こと)になるのではありますまいか。107聖師(せいし)様(さま)の苦(くるし)みは妾(わたし)の苦(くるし)みであると共(とも)に妾(わたし)の苦(くるし)みは聖師(せいし)様(さま)の苦(くるし)みであるに相違(さうゐ)ありませぬ。108可憐(かれん)なる女(をんな)の一人(ひとり)を生(い)かさうと殺(ころ)さうと、109お心(こころ)一(ひと)つにあるので御座(ござ)りますから。110又(また)妾(わたし)の死(し)は師(し)の君(きみ)の死(し)でなくてはなりませぬ。111エルサレムの停車場(ていしやぢやう)で海洋(かいやう)万里(ばんり)を隔(へだ)てた男女(だんぢよ)がお目(め)にかかつたのは実(じつ)に不可思議(ふかしぎ)な何者(なにもの)かが両人(りやうにん)の間(あひだ)に結(むす)びついて、112どうしても一体(いつたい)とならねばならぬやうな、113前世(ぜんせ)からの約束(やくそく)だと信(しん)じます。114妾(わたし)は貴方(あなた)と妾(わたし)と息(いき)を合(あは)せて神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)する事(こと)を以(もつ)て、115全(まつた)く神(かみ)様(さま)の御(ご)経綸(けいりん)だと固(かた)く信(しん)じて居(を)ります。116弥勒(みろく)の神政(しんせい)建設(けんせつ)の為(ため)ならば神(かみ)様(さま)の御旨(みむね)とある以上(いじやう)、117如何(いか)なる事(こと)にても従(したが)ひまつらねばなりますまい。118妾(わたし)が師(し)の君(きみ)を恋愛(れんあい)する事(こと)は決(けつ)して決(けつ)して罪悪(ざいあく)だとは考(かんが)へられませぬ。119何卒(どうぞ)絶対(ぜつたい)の愛(あい)を以(もつ)て妾(わたし)を愛(あい)して下(くだ)さいませ。120決(けつ)して永久(えいきう)の愛(あい)を要求(えうきう)するのでは御座(ござ)りませぬ。121もはや妾(わたし)の霊肉(れいにく)ともに一変(いつぺん)すべき時機(じき)が近(ちか)づいたのです。122仮令(たとへ)一(いつ)分間(ぷんかん)でも貴方(あなた)の温(あたた)かき懐(ふところ)に抱(いだ)かれさへすれば善(よ)いので御座(ござ)ります。123妾(わたし)は身命(しんめい)を神国(しんこく)成就(じやうじゆ)のために師(し)の君様(きみさま)へ差上(さしあ)げて居(ゐ)るので御座(ござ)ります。124何卒(どうぞ)色(いろ)よい返事(へんじ)を至急(しきふ)に願(ねが)ひ度(た)いもので御座(ござ)ります。
125 あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)   マリヤより
126 師(し)の君様(きみさま)へ
127 ブラバーサは一巡(いちじゆん)読(よ)み了(を)はり、128ハツと吐息(といき)をつき無言(むごん)のまま双手(もろて)を組(く)んで俯向(うつむ)いて居(ゐ)る。
129マリヤ『師(し)の君様(きみさま)、130可憐(かれん)な妾(わたし)の心(こころ)、131妾(わたし)の願(ねがひ)をキツと聞(き)いて下(くだ)さるでせうな』
132ブラバーサ『貴方(あなた)の真心(まごころ)はよく諒解(りようかい)致(いた)しました。133併(しか)し乍(なが)ら一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)の制度(せいど)のやかましいルートバハーの教(をしへ)を奉(ほう)ずる宣伝使(せんでんし)として、134何程(なにほど)貴女(あなた)が熱烈(ねつれつ)に愛(あい)して下(くだ)さらうとも恋愛(れんあい)関係(くわんけい)を結(むす)ぶ訳(わけ)には参(まゐ)りませぬ、135どうぞこればかりは見直(みなほ)し宣直(のりなほ)し下(くだ)さいませ』
136マリヤ『さう仰有(おつしや)いますと、137貴方(あなた)は妾(わたし)を見殺(みごろ)しにせうと仰有(おつしや)るのですか。138一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)の制度(せいど)も亦(また)人倫(じんりん)の大本(たいほん)もよく存(ぞん)じて居(を)ります。139併(しか)し乍(なが)ら、140それは理性(りせい)的(てき)の見解(けんかい)で御座(ござ)りまして、141愛(あい)の情動(じやうだう)はそんな規則張(きそくば)つたものぢや御座(ござ)りませぬ。142恋(こひ)にやつれ息(いき)もたえだえになつて居(ゐ)る此(この)女(をんな)をして悶死(もんし)せしめ玉(たま)ふので御座(ござ)りますか。143貴方(あなた)に会(あ)ひさへしなければ妾(わたし)はこんな煩悶(はんもん)苦悩(くなう)は起(おこ)らないので御座(ござ)ります。144貴方(あなた)は妾(わたし)を日出島(ひのでじま)から亡(ほろ)ぼしにお越(こ)しなさつた悪魔(あくま)だと思(おも)ひますわ。145神(かみ)様(さま)は吾々(われわれ)に恋愛(れんあい)と云(い)ふ貴重(きちよう)なものを与(あた)へて下(くだ)さつたのです。146もし此(この)恋愛(れんあい)を自由(じいう)に働(はたら)かす事(こと)が出来(でき)なければ、147日夜(にちや)神(かみ)に仕(つか)へる妾(わたし)にどうして此(こ)んな考(かんが)へを起(おこ)さしめられたでせうか。148そんな事(こと)仰有(おつしや)らず一滴(いつてき)同情(どうじやう)の涙(なみだ)あらば、149妾(わたし)の願(ねがひ)を叶(かな)へさして下(くだ)さいませ。150決(けつ)して乱倫(らんりん)乱行(らんぎやう)の罪(つみ)にもなりますまい。151貴方(あなた)の奥(おく)さまにして頂(いただ)きたいとは申(まを)しませぬ。152今(いま)ここで貴方(あなた)に素気(すげ)なく刎(は)ねられたが最後(さいご)、153妾(わたし)はガリラヤの海(うみ)を最後(さいご)の場所(ばしよ)と致(いた)します。154さすれば貴方(あなた)の名誉(めいよ)でもありますまい。155それ故(ゆゑ)妾(わたし)の死(し)は貴方(あなた)の死(し)ではあるまいかと此(この)手紙(てがみ)に記(しる)したので御座(ござ)ります』
156 ブラバーサは双手(もろて)を組(く)み吐息(といき)をつき乍(なが)ら、
157ブラバーサ『あゝ、158誘惑(いうわく)の魔(ま)の手(て)はどこ迄(まで)も廻(まは)つてゐるものだな。159岩石(がんせき)に等(ひと)しき固(かた)き男(をとこ)の心(こころ)も僅(わづ)か女(をんな)一人(ひとり)の心(こころ)に打砕(うちくだ)かれむとするのか。160寸善(すんぜん)尺魔(しやくま)の世(よ)の中(なか)とはよく云(い)つたものだ。161あゝどうしたら、162宜(よ)からうかな』
163と小声(こごゑ)に呟(つぶや)き乍(なが)ら深(ふか)き思(おも)ひに沈(しづ)む。164マリヤは飛鳥(ひてう)の如(ごと)くブラバーサに背後(はいご)より喰(くら)ひつき満身(まんしん)の力(ちから)をこめて抱(だ)きしめた。165ブラバーサは驚(おどろ)き乍(なが)ら心(こころ)の中(うち)に思(おも)ふやう、
166ブラバーサ『あゝ仕方(しかた)がない、167此(この)通(とほ)り猛烈(まうれつ)な恋(こひ)におちた女(をんな)を素気(すげ)なく振(ふ)り放(はな)せばキツと過(あやま)ちがあるだらう。168天則(てんそく)違反(ゐはん)か知(し)らねども暫(しばら)く彼女(かれ)の云(い)ふ通(とほ)り任(まか)せおき、169徐(おもむろ)に道理(だうり)を説(と)き目(め)を覚(さ)ましてやらねばなるまい』
170と心(こころ)に頷(うな)づき乍(なが)ら言葉(ことば)を改(あらた)めて、
171ブラバーサ『いや、172マリヤ様(さま)、173よくそこ迄(まで)思(おも)つて下(くだ)さいます。174実(じつ)に感謝(かんしや)に堪(た)へませぬ。175併(しか)し乍(なが)ら私(わたし)はここに参(まゐ)りましてから、176一(いつ)ケ月(げつ)に足(た)りませぬ。177私(わたし)はあと七十(しちじふ)日(にち)の間(あひだ)身体(からだ)を清潔(せいけつ)にして或(ある)使命(しめい)は果(はた)さねばなりませぬから百(ひやく)日(にち)の行(ぎやう)を済(す)ます迄(まで)、178何卒(どうぞ)御(ご)猶予(いうよ)を願(ねが)ひます』
179マリヤ『ソンナ気休(きやす)めを云(い)つて妾(わたし)をお騙(だま)しなさるのぢやありませぬか。180その場(ば)逃(のが)れの言(い)ひ訳(わけ)とより思(おも)へませぬ。181どうか的確(てきかく)なお言葉(ことば)を賜(たま)はりたいもので御座(ござ)ります』
182 ブラバーサは吐息(といき)をつき乍(なが)ら永(なが)い沈黙(ちんもく)に陥(おちい)つた。183マリヤも暫(しばら)く無言(むごん)の儘(まま)打慄(うちふる)ふてゐたが、184思(おも)ひきつたやうに口(くち)を開(ひら)いてブラバーサの手(て)を固(かた)く握(にぎ)り、
185マリヤ『妾(わたし)は貴方(あなた)に初(はじ)めてお目(め)にかかつてから今日(けふ)で殆(ほとん)ど一(いつ)ケ月(げつ)、186どうしたものかセリバシー生活(せいくわつ)をやつて来(き)た身(み)であり乍(なが)ら、187その時(とき)から恋(こひ)におち、188此(この)一月(ひとつき)の間(あひだ)も殆(ほとん)ど千(せん)年(ねん)のやうに長(なが)きを感(かん)じました。189妾(わたし)のあまり永(なが)い沈黙(ちんもく)の恋(こひ)は妾(わたし)の頭脳(づなう)を腐(くさ)らし破(やぶ)つて了(しま)ひました。190そして妾(わたし)は今(いま)恋(こひ)の煩悶(はんもん)苦悩(くなう)を味(あぢ)はつてゐます。191私(わたし)は之(これ)を何時迄(いつまで)も秘密(ひみつ)として葬(はうむ)り去(さ)る事(こと)が出来(でき)ないのです。192何卒(どうぞ)一人(ひとり)の女(をんな)を救(すく)ふと思(おも)つて妾(わたし)の恋(こひ)を諒解(りやうかい)して下(くだ)さい。193此(この)猛烈(まうれつ)な恋愛(れんあい)を笑(わら)ふなら笑(わら)つて下(くだ)さい。194又(また)誹(そし)るなら誹(そし)つて下(くだ)さい。195もはや妾(わたし)は恋(こひ)に悩(なや)む狂人(きちがひ)です。196妾(わたし)の目(め)に浮(う)かぶものは山川(さんせん)草木(さうもく)一切(いつさい)が恋(こひ)しい師(し)の君(きみ)のお姿(すがた)になつて見(み)えるのですもの、197狂(くる)つてるのかも知(し)れませぬ。198あゝ苦(くる)しい、199こんな不思議(ふしぎ)な恋(こひ)を誰(たれ)がさせたので御座(ござ)いませうか。200エルサレムの町(まち)でお目(め)にかかつてから妾(わたし)はスツカリ恋(こひ)の捕虜(とりこ)となつて了(しま)ひました。201妾(わたし)は神(かみ)様(さま)から与(あた)へられた恋(こひ)だと思(おも)つて居(を)ります。202恋(こひ)を与(あた)へられた時(とき)は思(おも)ひきり恋(こひ)を味(あぢ)はひつつ生(いき)るもので御座(ござ)いませう。203妾(わたし)が師(し)の君(きみ)を恋(こ)ふる事(こと)は決(けつ)して不合理(ふがふり)でも不道徳(ふだうとく)でも御座(ござ)いますまい。204神(かみ)様(さま)の御旨(みむね)だと信(しん)ぜられてなりませぬ。205厳粛(げんしゆく)な神聖(しんせい)な恋(こひ)が変(かは)つて博愛(はくあい)となつた時(とき)は、206尊(たふと)さと偉大(ゐだい)さと美(うつく)しさとを知(し)る事(こと)が出来(でき)ませう。207ルートバハーの御教(みをしへ)の人類愛(じんるゐあい)は斯様(かやう)な意味(いみ)を云(い)ふのではありますまいか。208人類愛(じんるゐあい)そのものを愛(あい)するの愛(あい)、209それは神(かみ)様(さま)の愛(あい)で、210即(すなは)ち自分(じぶん)を見出(みいだ)す為(た)めの愛(あい)であり、211自分(じぶん)自身(じしん)を建設(けんせつ)すべき天国(てんごく)に昇(のぼ)るべき愛(あい)の初(はじ)めであり終(をは)りでありませう。212師(し)の君(きみ)が妾(わたし)を理解(りかい)して下(くだ)さらぬ事(こと)は実(じつ)に絶大(ぜつだい)なる悲(かな)しみで御座(ござ)います。213妾(わたし)もアメリカンコロニーに籍(せき)をおき、214救世主(きうせいしゆ)の再臨(さいりん)を待(ま)ち、215全世界(ぜんせかい)救済(きうさい)の使命(しめい)を持(も)ち乍(なが)ら、216どうして戯(たはむ)れの恋(こひ)に浮(う)かれて居(を)れませうか。217妾(わたし)は師(し)の君(きみ)の手(て)によつて新(あらた)に生(うま)れなくてはならないのです。218霊肉(れいにく)ともに復活(ふくくわつ)せねばならぬのです。219師(し)の君(きみ)と愛(あい)し愛(あい)され、220貴方(あなた)と結(むす)ぶ事(こと)によつて新(あらた)に力(ちから)を与(あた)へらるるので御座(ござ)ります。221もし此(この)妾(わたし)の恋愛(れんあい)が不合理(ふがふり)だと仰有(おつしや)るのならば貴方(あなた)の神力(しんりき)で取去(とりさ)つて下(くだ)さいませ。222とは云(い)ふものの一度(いちど)恋(こ)ひ慕(した)ふた師(し)の君(きみ)の温(あたたか)い御(おん)顔(かんばせ)とそのやさしいお言葉(ことば)は妾(わたし)の全身(ぜんしん)に流(なが)れて血(ち)となつて居(を)ります』
223ブラバーサ『私(わたし)は厳粛(げんしゆく)なる神(かみ)様(さま)の御(ご)命令(めいれい)を頂(いただ)き神聖(しんせい)にして犯(をか)すべからざる此(この)聖地(せいち)に於(おい)て恋愛(れんあい)問題(もんだい)にぶつかるとは夢(ゆめ)にも思(おも)ひませぬでした。224然(しか)し愛(あい)の情動(じやうどう)は何(いづ)れの国(くに)の人(ひと)も変(かは)らないものと見(み)えますなア。225貴女(あなた)の御(ご)親切(しんせつ)を決(けつ)して葬(はうむ)り去(さ)るやうな勇気(ゆうき)も厶(ござ)いませぬ。226然(しか)し乍(なが)ら怪(あや)しき関係(くわんけい)を結(むす)ばなくても心(こころ)と心(こころ)と融(と)け合(あ)ひさへすれば、227それで恋愛(れんあい)は完全(くわんぜん)に保(たも)たれて行(ゆ)くぢやありませぬか。228凡(すべ)て霊主(れいしゆ)体従(たいじう)の教(をしへ)を奉(ほう)ずる吾々(われわれ)……然(しか)らば霊的(れいてき)の恋仲(こひなか)となりませう。229さあ何卒(どうぞ)その手(て)を放(はな)して下(くだ)さいませ』
230マリヤ『いえいえ妾(わたし)はいつ迄(まで)も師(し)の君様(きみさま)の愛(あい)の御手(みて)に昼(ひる)も夜(よる)も抱(だ)いて慰(なぐさ)めて欲(ほ)しいので御座(ござ)います。231いつも尊(たふと)い懐(ふところ)に抱(いだ)かれ微笑(ほほゑみ)つつ恋(こひ)を歌(うた)つて見(み)たいのです。232……あゝ妾(わたし)の恋(こひ)しい慕(した)はしい師(し)の君(きみ)の御(おん)上(うへ)に幸(さち)多(おほ)かれ……と』
233ブラバーサ『御(ご)親切(しんせつ)は有難(ありがた)う御座(ござ)いますが、234何卒(どうぞ)百(ひやく)日(にち)の行(ぎやう)が済(す)む迄(まで)は触(さは)らないで下(くだ)さい。235怪(あや)しい考(かんが)へが起(おこ)つては修行(しうぎやう)の邪魔(じやま)になりますからな』
236マリヤ『貴方(あなた)の御(ご)身辺(しんぺん)に危(あぶな)い事(こと)が迫(せま)つて来(き)た事(こと)がお分(わか)りになりませぬか。237妾(わたし)はそれが心配(しんぱい)でならないのです。238それ故(ゆゑ)アメリカンコロニーの牛耳(ぎうじ)を握(にぎ)る妾(わたし)と締結(ていけつ)して下(くだ)さるのならば貴方(あなた)の危難(きなん)を逃(のが)れるのは当然(たうぜん)ですよ。239ユダヤ人(じん)は同化(どうくわ)し難(がた)い人種(じんしゆ)ですからな』
240ブラバーサ『何(なに)か私(わたし)の身(み)の上(うへ)について危険(きけん)が迫(せま)つて居(ゐ)るのですか。241仮令(たとへ)如何(いか)なる敵(てき)が来(き)ても神(かみ)様(さま)にお任(まか)せした私(わたし)、242左様(さやう)な事(こと)に驚(おどろ)く事(こと)はありませぬから、243先(ま)づ安心(あんしん)して下(くだ)さい』
244マリヤ『貴方(あなた)は、245さう楽観(らくくわん)して居(を)られますが、246貴方(あなた)の周囲(しうゐ)には沢山(たくさん)の悪魔(あくま)が取囲(とりかこ)んで居(を)りますよ。247今(いま)妾(わたし)は師(し)の君(きみ)の言葉(ことば)に従(したが)ひ恋愛(れんあい)を思(おも)ひきり路傍(ろばう)相逢(あひあ)ふ人(ひと)の如(ごと)き態度(たいど)を採(と)らうと思(おも)つても、248それが出来(でき)ないのです。249貴方(あなた)のお身(み)の上(うへ)を思(おも)へば涙(なみだ)が出(で)てたまりませぬ。250それで貴方(あなた)の側(そば)を離(はな)れたくはありませぬ』
251ブラバーサ『マリヤさま、252そんな事(こと)云(い)つて強迫(きやうはく)するのぢやありませぬか。253随分(ずゐぶん)悪辣(あくらつ)な手段(しゆだん)を廻(めぐ)らして恋(こひ)の欲望(よくばう)を遂(と)げむとなさるのではあるまいかと思(おも)はれてなりませぬわ』
254マリヤ『いえいえどうしてどうして誠(まこと)の神(かみ)様(さま)の教(をしへ)を信(しん)ずるピユリタンの一人(ひとり)として嘘(うそ)偽(いつは)りが申(まを)されませうか。255神(かみ)様(さま)の冥罰(めいばつ)が恐(おそ)ろしう御座(ござ)います。256妾(わたし)は師(し)の君様(きみさま)の身辺(しんぺん)を守(まも)るため仮令(たとへ)恋(こひ)せなくても離(はな)れ度(た)くはないのです。257此(この)エルサレムの町(まち)へ貴方(あなた)がおいでになつてから、258日(ひ)の出島(でじま)の聖師(せいし)々々(せいし)と云(い)つて貴方(あなた)に帰順(きじゆん)する人(ひと)が沢山(たくさん)出来(でき)ましたが、259真(しん)に貴方(あなた)を愛(あい)する人(ひと)が果(はた)して幾人(いくにん)ありませうか。260凡(すべ)ての人(ひと)が師(し)の君(きみ)に対(たい)して力(ちから)一杯(いつぱい)敬(けい)して居(ゐ)るやうですが、261然(しか)し妾(わたし)は案(あん)ぜられてならないのです。262また此方(こちら)へおいでになつてから間(ま)もなく、263土地(とち)人情(にんじやう)もお分(わか)りになつてゐないのですからな』
264ブラバーサ『然(しか)らば貴女(あなた)の御(ご)意見(いけん)に任(まか)します。265どうなつとして下(くだ)さいませ。266然(しか)し乍(なが)らここ七十(しちじふ)日(にち)の間(あひだ)は特(とく)に猶予(いうよ)を願(ねが)ひ度(た)いので御座(ござ)います。267貴女(あなた)の要求(えうきう)を容(い)れました上(うへ)は相対(さうたい)的(てき)に私(わたし)の要求(えうきう)も容(い)れて貰(もら)はねばなりませぬからな』
268マリヤ『どうも仕方(しかた)がありませぬ。269然(しか)らば隠忍(いんにん)致(いた)します。270どうぞ注意(ちうい)をして外(ほか)の女(をんな)に相手(あひて)にならぬやうに願(ねが)ひます。271サロメさまにお会(あ)ひになつても言葉(ことば)をお交(かは)しになつちやいけませぬよ。272貴方(あなた)のお身(み)の上(うへ)に危険(きけん)が、273そのため襲来(しふらい)してはなりませぬからな』
274ブラバーサ『ハヽヽヽヽ最前(さいぜん)からマリヤさまが私(わたし)の身辺(しんぺん)に悪魔(あくま)が狙(ねら)つてゐる、275危険(きけん)が襲(おそ)ふてゐると仰有(おつしや)つたのは、276分(わか)りました。277いや随分(ずゐぶん)抜(ぬ)け目(め)のない……貴女(あなた)も女(をんな)ですな、278アツハヽヽヽ』
279マリヤ『エツヘヽヽヽ何(なん)なつと勝手(かつて)に仰有(おつしや)いましな。280然(しか)し呉々(くれぐれ)もお気(き)をつけなさいませや。281さあ之(これ)から妾(わたし)と一緒(いつしよ)に帰(かへ)りませう』
282ブラバーサ『ソンナラ私(わたし)はお山(やま)を一(ひと)まはりして帰(かへ)りますから貴女(あなた)は一足先(ひとあしさき)にお帰(かへ)り下(くだ)さい。283七十(しちじふ)日(にち)さへ経(た)てば夜(よる)も昼(ひる)も駱駝(らくだ)のやうに二人(ふたり)連(づれ)で歩(ある)かして頂(いただ)きませう。284アハヽヽヽ』
285マリヤ『お気(き)に入(い)らないものはお先(さき)へ帰(かへ)りませう。286夜(よ)が明(あ)けるまでお待(ま)ちなさいませ。287夜鷹(よたか)でも参(まゐ)りませうから』
288と捨台詞(すてぜりふ)を残(のこ)し橄欖山(かんらんざん)を下(くだ)り行(ゆ)く。
289 後(あと)見送(みおく)つてブラバーサは吐息(といき)をつき乍(なが)ら胸(むね)を撫(な)で下(お)ろし、
290ブラバーサ『あゝ困(こま)つたものだな。291どうして此(この)難関(なんくわん)を切(き)り抜(ぬ)けやうか。292これも大方(おほかた)神(かみ)様(さま)のお試(ため)しだらう。293あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)、294国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)、295何卒(なにとぞ)悪魔(あくま)の誘惑(いうわく)に陥(おちい)らぬやう御(ご)守護(しゆご)を願(ねが)ひ奉(たてまつ)ります。296心(こころ)の弱(よわ)き私(わたくし)に対(たい)し絶対力(ぜつたいりよく)をお授(さづ)け下(くだ)さいませ』
297と両手(りやうて)を合(あは)せて天地(てんち)に向(む)かつて拝謝(はいしや)し乍(なが)ら橄欖山(かんらんざん)の頂(いただき)を隈(くま)なく逍遥(せうえう)し初(はじ)めた。298古(ふる)ぼけた小(ちひ)さい祠(ほこら)の前(まへ)に一(ひと)つの影(かげ)が蠢(うごめ)いてゐる。299月(つき)は薄雲(はくうん)の帳(とばり)を被(かぶ)つて昼(ひる)ともなく夜(よる)ともなく一種(いつしゆ)異様(いやう)の光(ひかり)を地上(ちじやう)に投(な)げて居(ゐ)る。
300(大正一二・七・一二 旧五・二九 北村隆光録)
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