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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第80巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 忍ケ丘
第1章 独り旅
第2章 行倒
第3章 復活
第4章 姉妹婆
第5章 三つ盃
第6章 秋野の旅
第2篇 秋夜の月
第7章 月見ケ丘
第8章 月と闇
第9章 露の路
第10章 五乙女
第11章 火炎山
第12章 夜見還
第13章 樹下の囁き
第14章 報哭婆
第15章 憤死
第3篇 天地変遷
第16章 火の湖
第17章 水火垣
第18章 大挙出発
第19章 笑譏怒泣
第20章 復命
第21章 青木ケ原
第22章 迎への鳥船
第23章 野火の壮観
余白歌
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>
天祥地瑞(第73~81巻)
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第80巻(未の巻)
> 第2篇 秋夜の月 > 第10章 五乙女
<<< 露の路
(B)
(N)
火炎山 >>>
第一〇章
五乙女
(
いつをとめ
)
〔二〇一四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
篇:
第2篇 秋夜の月
よみ(新仮名遣い):
しゅうやのつき
章:
第10章 五乙女
よみ(新仮名遣い):
いつおとめ
通し章番号:
2014
口述日:
1934(昭和9)年07月27日(旧06月16日)
口述場所:
関東別院南風閣
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8010
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 340頁
修補版:
校定版:
186頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
一行
(
いつかう
)
は
森蔭
(
もりかげ
)
の
小
(
ささ
)
やかなる
家
(
いへ
)
に
立寄
(
たちよ
)
り
見
(
み
)
れば、
002
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
、
003
笑
(
ゑみ
)
を
満面
(
まんめん
)
に
浮
(
うか
)
べて
一行
(
いつかう
)
を
迎
(
むか
)
へ
入
(
い
)
れ、
004
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れを
此
(
こ
)
の
破家
(
あばらや
)
に
休
(
やす
)
ませ
給
(
たま
)
へと
勧
(
すす
)
める。
005
此
(
この
)
女
(
をんな
)
の
名
(
な
)
は、
006
秋風
(
あきかぜ
)
、
007
野分
(
のわき
)
、
008
夕霧
(
ゆふぎり
)
、
009
朝霧
(
あさぎり
)
、
010
秋雨
(
あきさめ
)
といふ。
011
『
秋
(
あき
)
ながら
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れに
汗
(
あせ
)
出
(
い
)
でぬ
012
この
破家
(
あばらや
)
に
休
(
やす
)
ませ
給
(
たま
)
へ。
013
松
(
まつ
)
のひびき
萩
(
はぎ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
のさやさやに
014
響
(
ひび
)
きてさむき
秋
(
あき
)
なりにけり。
015
秋風
(
あきかぜ
)
の
吹
(
ふ
)
き
通
(
とほ
)
るなる
此
(
この
)
館
(
たち
)
に
016
暫
(
しば
)
しは
汗
(
あせ
)
をぬぐはせ
給
(
たま
)
へ』
017
秋男
(
あきを
)
はこれに
答
(
こた
)
へて、
018
『
秋
(
あき
)
されば
涼
(
すず
)
しきものを
汗
(
あせ
)
ばみぬ
019
この
森蔭
(
もりかげ
)
に
休
(
やす
)
らひ
行
(
ゆ
)
かむか。
020
一時
(
ひととき
)
をこれの
館
(
やかた
)
に
休
(
やす
)
らひて
021
吾
(
われ
)
は
力
(
ちから
)
を
養
(
やしな
)
はむとぞ
思
(
おも
)
ふ。
022
願
(
ねが
)
はくば
只
(
ただ
)
一時
(
ひととき
)
の
休
(
やす
)
らひを
023
これの
館
(
やかた
)
に
清
(
きよ
)
く
許
(
ゆる
)
せよ』
024
といひながら
一行
(
いつかう
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
025
柴
(
しば
)
の
戸
(
と
)
をくぐりて
奥
(
おく
)
に
入
(
い
)
るや、
026
表
(
おもて
)
より
見
(
み
)
たる
破家
(
あばらや
)
に
引替
(
ひきか
)
へて、
027
美
(
うる
)
はしき
広
(
ひろ
)
き
居間
(
ゐま
)
、
028
幾
(
いく
)
つともなく
並
(
なら
)
び
居
(
ゐ
)
たりしに、
029
『
思
(
おも
)
ひきやこの
破家
(
あばらや
)
に
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
030
美
(
うつく
)
しき
広
(
ひろ
)
き
居間
(
ゐま
)
のあるとは。
031
暫
(
しばら
)
くをこれの
館
(
やかた
)
に
休
(
やす
)
らひつ
032
勇
(
いさ
)
み
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
に
進
(
すす
)
まむ』
033
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
034
『
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
け
坂
(
さか
)
を
辿
(
たど
)
りて
吾
(
わが
)
足
(
あし
)
は
035
軽
(
かろ
)
き
疲
(
つか
)
れを
覚
(
おぼ
)
えけるかな。
036
この
家
(
いへ
)
に
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めて
魂
(
たましひ
)
を
037
よび
生
(
い
)
かしつつ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くべし。
038
不思議
(
ふしぎ
)
なる
館
(
やかた
)
なるかも
表
(
おもて
)
とは
039
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
の
居間
(
ゐま
)
の
数々
(
かずかず
)
。
040
もしやもし
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アのたくらみに
041
かかりしものかと
案
(
あん
)
じらるるも』
042
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
043
『
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
の
館
(
やかた
)
なりしは
幸
(
さいは
)
ひよ
044
幸
(
さいは
)
ひ
真昼
(
まひる
)
のことにありせば。
045
此
(
この
)
家
(
いへ
)
に
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アがひそむなら
046
生命
(
いのち
)
かぎりに
戦
(
たたか
)
ひて
見
(
み
)
む。
047
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
表
(
おもて
)
に
乙女
(
をとめ
)
五柱
(
いつはしら
)
048
立
(
た
)
てるも
一
(
ひと
)
つの
不思議
(
ふしぎ
)
なりけり。
049
鬼婆
(
おにばば
)
の
潜
(
ひそ
)
める
館
(
やかた
)
と
思
(
おも
)
はれず
050
斯
(
か
)
かる
優
(
やさ
)
しき
乙女
(
をとめ
)
住
(
す
)
むやを』
051
梅
(
うめ
)
は
小首
(
こくび
)
を
傾
(
かたむ
)
けながら
歌
(
うた
)
ふ。
052
『
悪神
(
あくがみ
)
の
罠
(
わな
)
に
入
(
い
)
りしか
何
(
なん
)
となく
053
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
は
落着
(
おちつ
)
かぬかも。
054
八十
(
やそ
)
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
の
住家
(
すみか
)
と
知
(
し
)
るならば
055
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
戦
(
たたか
)
ひて
見
(
み
)
む。
056
悪神
(
あくがみ
)
は
優
(
やさ
)
しき
乙女
(
をとめ
)
と
見
(
み
)
せかけて
057
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
生命
(
いのち
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
居
(
ゐ
)
るにや。
058
不思議
(
ふしぎ
)
なる
事
(
こと
)
ばかりなり
此
(
この
)
家
(
いへ
)
は
059
窓
(
まど
)
もあらずに
下
(
した
)
に
明
(
あか
)
るし』
060
桜
(
さくら
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
061
『
疑
(
うたが
)
へば
限
(
かぎ
)
りなからむ
此
(
この
)
家
(
いへ
)
を
062
吾
(
われ
)
は
曲津
(
まがつ
)
の
住家
(
すみか
)
と
思
(
おも
)
はず。
063
破家
(
あばらや
)
の
表
(
おもて
)
に
乙女
(
をとめ
)
あらはれて
064
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へて
吾
(
われ
)
を
迎
(
むか
)
へし。
065
皇神
(
すめかみ
)
の
御言
(
みこと
)
かがふり
出
(
い
)
でで
行
(
ゆ
)
く
066
この
旅立
(
たびだち
)
にさやる
曲津
(
まが
)
なし』
067
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
居
(
ゐ
)
る
折
(
をり
)
しも、
068
秋風
(
あきかぜ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
は
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
069
盆
(
ぼん
)
に
茶
(
ちや
)
を
汲
(
く
)
みながら、
070
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
高
(
たか
)
く
差上
(
さしあ
)
げ、
071
破家
(
あばらや
)
に
憩
(
いこ
)
はせ
給
(
たま
)
ふ
客人
(
まらうど
)
に
心
(
こころ
)
ばかりの
茶
(
ちや
)
を
奉
(
たてまつ
)
る。
072
『これの
茶
(
ちや
)
は
泉
(
いづみ
)
の
山
(
やま
)
の
高畑
(
たかはた
)
に
073
栄
(
さか
)
えて
甘
(
あま
)
き
薬
(
くすり
)
なりけり。
074
それ
故
(
ゆゑ
)
に
普
(
あまね
)
く
人
(
ひと
)
は
泉茶
(
いづみちや
)
と
075
称
(
とな
)
へて
朝夕
(
あさゆふ
)
楽
(
たの
)
しみ
飲
(
の
)
むなり。
076
これの
茶
(
ちや
)
を
召上
(
めしあが
)
りませ
長旅
(
ながたび
)
の
077
疲
(
つか
)
れは
頓
(
とみ
)
に
休
(
やす
)
まるべきを』
078
秋男
(
あきを
)
は
怪
(
あや
)
しみながら、
079
『
何処
(
どこ
)
となくこの
茶
(
ちや
)
の
香
(
かを
)
りは
怪
(
あや
)
しけれ
080
暫
(
しばら
)
く
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
ちてすすらむ』
081
秋風
(
あきかぜ
)
は
稍
(
やや
)
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へながら、
082
『
不思議
(
ふしぎ
)
なることを
宣
(
の
)
らすよこれの
茶
(
ちや
)
は
083
泉
(
いづみ
)
の
茶
(
ちや
)
にて
人
(
ひと
)
の
生命
(
いのち
)
よ』
084
秋男
(
あきを
)
は
答
(
こた
)
ふ。
085
『
何
(
なん
)
となく
吾
(
われ
)
は
生命
(
いのち
)
の
惜
(
を
)
しさ
故
(
ゆゑ
)
086
見知
(
みし
)
らぬ
茶湯
(
ちやゆ
)
は
飲
(
の
)
みたくはなし』
087
野分
(
のわき
)
といふ
乙女
(
をとめ
)
は
涼
(
すず
)
しき
声
(
こゑ
)
にて、
088
『
客人
(
まらうど
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
真心
(
まごころ
)
疑
(
うたが
)
ひて
089
清
(
きよ
)
き
優
(
やさ
)
しき
心
(
こころ
)
を
受
(
う
)
けずや。
090
朝
(
あさ
)
に
夕
(
ゆふ
)
に
清
(
きよ
)
めすまして
作
(
つく
)
りたる
091
これの
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
に
毒
(
どく
)
のあるべき』
092
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
093
『
乙女
(
をとめ
)
等
(
ら
)
の
清
(
きよ
)
き
心
(
こころ
)
を
受
(
う
)
けぬには
094
吾
(
われ
)
あらねども
暫
(
しば
)
しを
待
(
ま
)
たせよ。
095
あつき
湯
(
ゆ
)
は
吾
(
われ
)
は
好
(
この
)
まず
舌
(
した
)
やかむ
096
ぬるむを
待
(
ま
)
ちて
吾
(
われ
)
は
飲
(
の
)
むべし』
097
夕霧
(
ゆふぎり
)
は
後
(
あと
)
よりのび
上
(
あが
)
りながら、
098
『
乙女
(
をとめ
)
等
(
ら
)
の
清
(
きよ
)
き
心
(
こころ
)
を
疑
(
うたが
)
ひて
099
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
誠
(
まこと
)
をうけ
給
(
たま
)
はずや。
100
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
茶湯
(
ちやゆ
)
と
思
(
おも
)
ひて
客人
(
まらうど
)
は
101
ためらひ
給
(
たま
)
ふと
思
(
おも
)
へば
怨
(
うら
)
めし。
102
萩
(
はぎ
)
桔梗
(
ききやう
)
匂
(
にほ
)
へる
秋
(
あき
)
の
山裾
(
やますそ
)
に
103
館
(
やかた
)
造
(
つく
)
りて
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
を
待
(
ま
)
ちしよ。
104
吾
(
われ
)
こそは
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
に
仕
(
つか
)
へたる
105
五乙女
(
いつをとめ
)
にて
怪
(
あや
)
しきものならず』
106
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
107
『
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
の
乙女
(
をとめ
)
か
知
(
し
)
らねども
108
汝
(
なれ
)
が
面
(
おもて
)
にあやしきふしあり。
109
折々
(
をりをり
)
に
乙女
(
をとめ
)
の
耳
(
みみ
)
は
動
(
うご
)
くなり
110
まさしく
狐狸
(
こり
)
の
化身
(
けしん
)
と
思
(
おも
)
ふ。
111
茶
(
ちや
)
の
色
(
いろ
)
は
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
変
(
かは
)
り
行
(
ゆ
)
きて
112
墨
(
すみ
)
の
如
(
ごと
)
くになりにけらしな。
113
此
(
この
)
茶
(
ちや
)
こそ
水奔草
(
すゐほんさう
)
にてつくりたる
114
生命
(
いのち
)
を
奪
(
うば
)
ふ
毒湯
(
どくゆ
)
なるべし』
115
朝霧
(
あさぎり
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
116
『
斯
(
か
)
くなれば
最早
(
もはや
)
詮
(
せん
)
なし
吾々
(
われわれ
)
は
117
乙女
(
をとめ
)
と
見
(
み
)
ゆれど
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
なり』
118
秋雨
(
あきさめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
119
『
客人
(
まらうど
)
に
看破
(
みやぶ
)
られたるその
上
(
うへ
)
は
120
最早
(
もはや
)
詮
(
せん
)
なし
覚悟
(
かくご
)
召
(
め
)
されよ。
121
破家
(
あばらや
)
と
見
(
み
)
ゆれど
永遠
(
とは
)
の
巌窟
(
がんくつ
)
よ
122
最早
(
もはや
)
逃
(
のが
)
れる
道
(
みち
)
はあるまじ』
123
梅
(
うめ
)
は
声
(
こゑ
)
もあらあらしく
歌
(
うた
)
ふ。
124
『
吾
(
われ
)
とても
汝
(
なれ
)
が
謀計
(
たくみ
)
を
知
(
し
)
りし
故
(
ゆゑ
)
125
これの
巌窟
(
いはや
)
を
破
(
やぶ
)
らむと
来
(
き
)
つる。
126
乙女子
(
をとめご
)
の
姿
(
さま
)
を
装
(
よそほ
)
ひ
鬼婆
(
おにばば
)
の
127
命
(
めい
)
に
従
(
したが
)
ひ
謀
(
はか
)
る
曲
(
くせ
)
もの』
128
桜
(
さくら
)
は
怒
(
いか
)
りながら、
129
『コリヤ
曲津
(
まがつ
)
もうかうなれば
是非
(
ぜひ
)
もなし
130
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
飽
(
あ
)
くまで
放
(
はふ
)
らむ』
131
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
132
『
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
曲津
(
まがつ
)
の
巌窟
(
いはや
)
と
知
(
し
)
りしゆゑ
133
殊更
(
わざと
)
に
此処
(
ここ
)
に
誘
(
さそ
)
はれ
入
(
い
)
りぬ。
134
乙女子
(
をとめご
)
と
見
(
み
)
ゆるは
何
(
いづ
)
れも
水奔鬼
(
すゐほんき
)
の
135
生命
(
いのち
)
奪
(
うば
)
ふと
待
(
ま
)
てる
奴
(
やつ
)
なり。
136
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
に
水奔草
(
すゐほんさう
)
を
飲
(
の
)
まされて
137
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
は
鬼
(
おに
)
となりしものなり。
138
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
心
(
こころ
)
鎮
(
しづ
)
めて
聞
(
き
)
けよかし
139
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アに
怨
(
うら
)
み
持
(
も
)
たずや』
140
秋風
(
あきかぜ
)
は
稍
(
やや
)
顔
(
かほ
)
を
曇
(
くも
)
らせて、
141
『
客人
(
まらうど
)
の
言葉
(
ことば
)
は
宜
(
うべ
)
よ
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
142
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アに
謀
(
はか
)
られにけり。
143
この
辺
(
あた
)
りは
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
縄張
(
なはばり
)
よ
144
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
彼
(
かれ
)
に
頤使
(
いし
)
さるるもの。
145
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
とられし
悔
(
くや
)
しさに
146
人
(
ひと
)
を
艱
(
なや
)
むる
鬼
(
おに
)
とはなりぬ。
147
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
る
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
も
悉
(
ことごと
)
く
148
吾
(
われ
)
と
等
(
ひと
)
しき
運命
(
うんめい
)
たどりし。
149
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アは
傷
(
きず
)
つきて
150
休
(
やす
)
らひ
居
(
を
)
りぬ
亡
(
ほろ
)
ぼし
給
(
たま
)
へ。
151
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
をきため
給
(
たま
)
はば
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
亦
(
また
)
152
君
(
きみ
)
に
力
(
ちから
)
を
添
(
そ
)
へ
奉
(
まつ
)
るべし。
153
力強
(
ちからづよ
)
き
鬼婆
(
おにばば
)
ながら
昨夜
(
さくや
)
より
154
不快
(
ふくわい
)
なりとて
呻吟
(
うめ
)
き
居
(
ゐ
)
るなり』
155
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
156
『
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
に
打出
(
うちだ
)
され
157
婆
(
ばば
)
はいたでに
悩
(
なや
)
むなるらむ。
158
面白
(
おもしろ
)
し
斯
(
か
)
くも
秘密
(
ひみつ
)
を
聞
(
き
)
く
上
(
うへ
)
は
159
乙女
(
をとめ
)
に
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
力
(
ちから
)
を
添
(
そ
)
へむ。
160
面白
(
おもしろ
)
き
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くかな
鬼婆
(
おにばば
)
は
161
これの
館
(
やかた
)
に
呻吟
(
うめ
)
き
居
(
ゐ
)
るとは。
162
斯
(
か
)
くならば
力
(
ちから
)
の
限
(
かぎ
)
り
声
(
こゑ
)
かぎり
163
生言霊
(
いくことたま
)
に
攻
(
せ
)
め
艱
(
なや
)
まさむ』
164
茲
(
ここ
)
に
秋男
(
あきを
)
の
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
と
五柱
(
いつはしら
)
の
乙女
(
をとめ
)
、
165
互
(
たがひ
)
に
堅
(
かた
)
き
握手
(
あくしゆ
)
を
交
(
か
)
はし、
166
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
の
潜
(
ひそ
)
める
居間
(
ゐま
)
を
四方
(
しはう
)
より
取巻
(
とりま
)
き、
167
天地
(
てんち
)
も
破
(
やぶ
)
るるばかりに
大音声
(
だいおんじやう
)
を
発
(
はつ
)
し、
168
『
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
169
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
八千万
(
やちよろづ
)
の
神
(
かみ
)
170
此
(
これ
)
の
館
(
やかた
)
に
潜
(
ひそ
)
みたる
171
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
なる
水奔鬼
(
すゐほんき
)
を
172
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
にくまもなく
173
亡
(
ほろ
)
ぼし
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
174
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
力
(
ちから
)
あれ
175
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
光
(
ひかり
)
あれ
176
アオウエイ
177
カコクケキ』
178
と
次々
(
つぎつぎ
)
に
七十五
(
しちじふご
)
声
(
せい
)
の
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
れば
179
さすがの
水奔鬼
(
すゐほんき
)
も
堪
(
たま
)
りかね
180
狭
(
せま
)
き
室内
(
しつない
)
を
右往
(
うわう
)
左往
(
さわう
)
に
荒
(
あ
)
れ
狂
(
くる
)
ひ
181
悲鳴
(
ひめい
)
を
挙
(
あ
)
げて
又
(
また
)
もや
再
(
ふたた
)
び
起上
(
おきあが
)
り
182
死物狂
(
しにものぐる
)
ひの
形相
(
ぎやうさう
)
凄
(
すさま
)
じく
183
秋男
(
あきを
)
に
向
(
むか
)
つて
飛
(
と
)
びかかるを
184
ものをも
言
(
い
)
はず
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
め
185
婆
(
ばば
)
の
横面
(
よこづら
)
を
打
(
う
)
ちすゑ
打
(
う
)
ちすゑきためければ
186
さしもの
婆
(
ばば
)
も
痛
(
いた
)
さに
堪
(
た
)
へ
兼
(
か
)
ねてや
187
窓
(
まど
)
の
戸
(
と
)
にはかに
押開
(
おしあ
)
けて
188
忽
(
たちま
)
ち
巌窟内
(
がんくつない
)
を
飛出
(
とびいだ
)
し
189
怪
(
あや
)
しき
雲気
(
うんき
)
を
吐
(
は
)
きながら
190
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
大空
(
おほぞら
)
さして
191
血煙
(
ちけむり
)
の
雨
(
あめ
)
を
降
(
ふ
)
らせつつ
192
跡白雲
(
あとしらくも
)
と
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
きぬ
193
ああ
惟神
(
かむながら
)
言霊
(
ことたま
)
の
194
厳
(
いづ
)
の
力
(
ちから
)
ぞ
畏
(
かしこ
)
けれ
195
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
水奔鬼
(
すゐほんき
)
は
196
斯
(
か
)
くして
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
197
醜
(
しこ
)
の
巌窟
(
がんくつ
)
に
残
(
のこ
)
し
置
(
お
)
き
198
第二
(
だいに
)
の
作戦
(
さくせん
)
に
移
(
うつ
)
らむと
199
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
きしこそ
恐
(
おそ
)
ろしき。
200
五乙女
(
いつをとめ
)
は
満面
(
まんめん
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へ、
201
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
202
「ウオウオ」と
叫
(
さけ
)
びつつ、
203
手
(
て
)
の
舞
(
ま
)
ひ
足
(
あし
)
の
踏
(
ふ
)
む
所
(
ところ
)
を
知
(
し
)
らぬばかりなりける。
204
秋風
(
あきかぜ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
205
『
吾
(
われ
)
こそは
泉ケ丘
(
いづみがをか
)
に
生
(
うま
)
れたる
206
国津神
(
くにつかみ
)
等
(
ら
)
の
娘
(
むすめ
)
なりけり。
207
四柱
(
よはしら
)
の
乙女
(
をとめ
)
も
同
(
おな
)
じ
里
(
さと
)
の
子
(
こ
)
よ
208
この
鬼婆
(
おにばば
)
に
謀
(
はか
)
られしもの。
209
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
茶
(
ちや
)
を
飲
(
の
)
まされて
吾々
(
われわれ
)
は
210
水奔鬼
(
すゐほんき
)
とはなりにけらしな。
211
客人
(
まらうど
)
に
此
(
この
)
茶
(
ちや
)
をささげ
吾
(
われ
)
と
共
(
とも
)
に
212
力
(
ちから
)
協
(
あは
)
すと
勧
(
すす
)
めけるかな。
213
思
(
おも
)
へば
春
(
はる
)
の
初
(
はじ
)
めなり
214
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
等
(
ら
)
は
215
泉
(
いづみ
)
の
里
(
さと
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
216
高光山
(
たかみつやま
)
に
詣
(
まう
)
でむと
217
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
折
(
をり
)
もあれ
218
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れに
咽喉
(
のど
)
かわき
219
苦
(
くる
)
しむ
折
(
をり
)
しも
森蔭
(
もりかげ
)
の
220
一
(
ひと
)
つの
小
(
ちひ
)
さき
家
(
いへ
)
を
見
(
み
)
て
221
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
等
(
ら
)
は
222
立寄
(
たちよ
)
り
見
(
み
)
れば
白髪
(
はくはつ
)
の
223
一人
(
ひとり
)
の
婆
(
ば
)
さんが
住
(
すま
)
ひ
居
(
ゐ
)
て
224
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
渋茶
(
しぶちや
)
を
召
(
あ
)
がれよと
225
手招
(
てまね
)
きしたる
嬉
(
うれ
)
しさに
226
暫
(
しばら
)
く
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めつつ
227
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
茶
(
ちや
)
と
知
(
し
)
らず
228
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
一度
(
いちど
)
に
飲
(
の
)
み
乾
(
ほ
)
しぬ
229
俄
(
にはか
)
に
頭
(
あたま
)
は
痛
(
いた
)
み
出
(
だ
)
し
230
手足
(
てあし
)
身体
(
しんたい
)
腫
(
は
)
れ
上
(
あが
)
り
231
身動
(
みうご
)
きならぬ
状態
(
さま
)
を
見
(
み
)
て
232
婆
(
ばば
)
はニツコと
打
(
う
)
ち
笑
(
わら
)
ひ
233
吾
(
わが
)
計略
(
けいりやく
)
にかかりしよ
234
汝
(
なんぢ
)
乙女
(
をとめ
)
の
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
235
生命
(
いのち
)
は
最早
(
もはや
)
今日
(
けふ
)
かぎり
236
葭原
(
よしはら
)
の
国津神
(
くにつかみ
)
等
(
ら
)
の
生命
(
せいめい
)
を
237
残
(
のこ
)
らず
取
(
と
)
りて
幽界
(
いうかい
)
の
238
真正
(
まこと
)
の
鬼
(
おに
)
となせよかし
239
吾
(
われ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
反
(
そむ
)
きなば
240
茨
(
いばら
)
の
鞭
(
むち
)
を
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げて
241
汝
(
なんぢ
)
が
全身
(
ぜんしん
)
打
(
う
)
ち
破
(
やぶ
)
り
242
つらき
目
(
め
)
見
(
み
)
せて
呉
(
く
)
れむずと
243
威
(
おど
)
しの
言葉
(
ことば
)
に
怖
(
お
)
ぢ
恐
(
おそ
)
れ
244
彼
(
かれ
)
が
教
(
をし
)
ふるままにして
245
悲
(
かな
)
しき
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
り
来
(
き
)
ぬ
246
秋男
(
あきを
)
の
君
(
きみ
)
は
現世
(
うつしよ
)
の
247
人
(
ひと
)
にしあれば
言霊
(
ことたま
)
の
248
力
(
ちから
)
は
強
(
つよ
)
し
吾々
(
われわれ
)
は
249
精霊界
(
せいれいかい
)
にある
身
(
み
)
なれば
250
其
(
その
)
言霊
(
ことたま
)
に
力
(
ちから
)
あるべき
251
言霊
(
ことたま
)
の
光
(
ひかり
)
は
出
(
い
)
でず
苦
(
くる
)
しみぬ
252
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
にて
泣
(
な
)
くばかり
253
救
(
すく
)
はせ
給
(
たま
)
へ
水上
(
みなかみ
)
の
254
山
(
やま
)
に
輝
(
かがや
)
く
巌
(
いは
)
ケ
根
(
ね
)
の
255
御子
(
みこ
)
とあれます
秋男神
(
あきをがみ
)
の
256
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
257
五人
(
ごにん
)
乙女
(
をとめ
)
は
鬼婆
(
おにばば
)
の
258
頤使
(
いし
)
に
甘
(
あま
)
んじ
仕
(
つか
)
へつつ
259
強
(
つよ
)
き
身魂
(
みたま
)
の
来訪
(
らいはう
)
を
260
待
(
ま
)
ちに
待
(
ま
)
ちたる
甲斐
(
かひ
)
ありて
261
恨
(
うら
)
みを
晴
(
は
)
らす
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
262
ああたのもしや
心地
(
ここち
)
よや
263
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
264
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
一行
(
いつかう
)
悉
(
ことごと
)
く
265
艱
(
なや
)
まし
呉
(
く
)
れむと
計画
(
たく
)
みしを
266
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アは
逆
(
さか
)
しらに
267
生言霊
(
いくことたま
)
に
打出
(
うちだ
)
され
268
生命
(
いのち
)
からがら
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り
269
一間
(
ひとま
)
に
呻吟
(
うめ
)
き
居
(
ゐ
)
たりしゆ
270
此
(
この
)
時
(
とき
)
こそは
幸
(
さいは
)
ひと
271
五人
(
ごにん
)
乙女
(
をとめ
)
は
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ
272
仇
(
あだ
)
を
打
(
う
)
たむと
思
(
おも
)
へども
273
素
(
もと
)
より
乙女
(
をとめ
)
の
力
(
ちから
)
には
274
手向
(
てむか
)
ふ
由
(
よし
)
もなかりけり
275
かかる
処
(
ところ
)
へ
現身
(
うつそみ
)
の
276
身体
(
からたま
)
もたす
汝
(
なれ
)
一行
(
いつかう
)
277
来
(
きた
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しさに
278
毒
(
どく
)
と
知
(
し
)
りつつ
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
279
湯
(
ゆ
)
を
勧
(
すす
)
めむとしたりけり
280
必
(
かなら
)
ず
怒
(
いか
)
らせ
給
(
たま
)
ふなかれ
281
君
(
きみ
)
を
力
(
ちから
)
と
思
(
おも
)
ふが
故
(
ゆゑ
)
に
282
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
と
共
(
とも
)
に
幽界
(
かくりよ
)
に
283
現
(
あら
)
はれまして
鬼婆
(
おにばば
)
を
284
討
(
う
)
ち
罰
(
きた
)
めつつ
霊界
(
れいかい
)
の
285
禍
(
わざは
)
ひ
除
(
のぞ
)
くと
思
(
おも
)
へばなり
286
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
へ
秋男神
(
あきをがみ
)
287
御供
(
みとも
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
288
真心
(
まごころ
)
あらはし
詫
(
わ
)
び
奉
(
まつ
)
る
289
外
(
ほか
)
の
乙女
(
をとめ
)
も
同
(
おな
)
じ
心
(
こころ
)
の
捨小舟
(
すてをぶね
)
290
取
(
と
)
りつく
島
(
しま
)
もなかりしが
291
今日
(
けふ
)
の
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
の
喜
(
よろこ
)
びに
292
蘇
(
よみがへ
)
りけりあら
尊
(
たふと
)
293
偏
(
ひとへ
)
に
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
294
是
(
これ
)
より
君
(
きみ
)
は
言霊
(
ことたま
)
の
295
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
うたひつつ
296
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
に
進
(
すす
)
みませ
297
譏
(
そし
)
り
婆
(
ば
)
さんの
第一
(
だいいち
)
に
298
恐
(
おそ
)
れて
忌
(
い
)
むは
言霊
(
ことたま
)
よ
299
吾
(
われ
)
は
後
(
あと
)
より
蔭
(
かげ
)
ながら
300
君
(
きみ
)
の
出
(
い
)
で
立
(
た
)
ち
送
(
おく
)
りつつ
301
一臂
(
いつぴ
)
の
力
(
ちから
)
を
添
(
そ
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ
302
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ』
303
と
言
(
い
)
ひながら、
304
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
は
白煙
(
はくえん
)
となりて
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せにけり。
305
よくよく
見
(
み
)
れば、
306
森蔭
(
もりかげ
)
の
雑草
(
ざつさう
)
の
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
る
中
(
なか
)
に
一行
(
いつかう
)
は
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
してうづくまり
居
(
ゐ
)
つ。
307
破家
(
あばらや
)
の
蔭
(
かげ
)
も
巌窟
(
いはや
)
も
跡形
(
あとかた
)
なく、
308
小鳥
(
ことり
)
の
囀
(
さへづ
)
り、
309
虫
(
むし
)
の
啼
(
な
)
く
音
(
ね
)
ばかりなりける。
310
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
311
『
不思議
(
ふしぎ
)
なる
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
しより
鬼婆
(
おにばば
)
の
312
悩
(
なや
)
める
状態
(
さま
)
を
覚
(
さと
)
らひにけり。
313
破家
(
あばらや
)
も
巌窟
(
いはや
)
も
全
(
まつた
)
く
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
314
野辺
(
のべ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
さやかなり』
315
(
昭和九・七・二七
旧六・一六
於関東別院南風閣
森良仁
謹録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
火炎山 >>>
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