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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第80巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 忍ケ丘
第1章 独り旅
第2章 行倒
第3章 復活
第4章 姉妹婆
第5章 三つ盃
第6章 秋野の旅
第2篇 秋夜の月
第7章 月見ケ丘
第8章 月と闇
第9章 露の路
第10章 五乙女
第11章 火炎山
第12章 夜見還
第13章 樹下の囁き
第14章 報哭婆
第15章 憤死
第3篇 天地変遷
第16章 火の湖
第17章 水火垣
第18章 大挙出発
第19章 笑譏怒泣
第20章 復命
第21章 青木ケ原
第22章 迎への鳥船
第23章 野火の壮観
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>
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第80巻(未の巻)
> 第2篇 秋夜の月 > 第12章 夜見還
<<< 火炎山
(B)
(N)
樹下の囁き >>>
第一二章
夜見
(
よみ
)
還
(
がへり
)
〔二〇一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
篇:
第2篇 秋夜の月
よみ(新仮名遣い):
しゅうやのつき
章:
第12章 夜見還
よみ(新仮名遣い):
よみがえり
通し章番号:
2016
口述日:
1934(昭和9)年07月28日(旧06月17日)
口述場所:
関東別院南風閣
筆録者:
林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
四辺は暗く雲が立ち込め、風一つない蒸し暑い空気がみなぎる中、苦しみの中で葭草と水奔草が生い茂る荒野が原を進み行く一人の男があった。
笑い婆、謗り婆の計略によって穴に落とされ、命を奪われた秋男は、幽冥の中をさまよいながら、これまでの事件を述懐していた。
すると、血のような色をした濁水が流れる大川に行き当たった。秋男はどうやってこの川を渡ろうかと思案に暮れていた。
すると、傍らのよし草をそよがせて、痩せこけた老婆が杖をつきながら秋男の前に現れた。
婆は、自分は秋男の命を奪った笑い婆・謗り婆の姉妹、瘧婆であると名乗り、秋男の霊の生命を奪おうと襲い掛かってきた。
秋男は身体きわまってどうすることもできなくなったが、そこに松、竹、梅、桜の従者の精霊たちが助けに現れ、婆を取り囲んだ。
4人は一度に瘧婆に殴りかかったが、一同のこぶしが傷ついただけで、婆は平然とあざ笑っていた。
そこへ突如、空をどよもして進んできた一柱の火団が轟然と川辺に落下した。と、瘧婆の影は雲霧と消えて跡形もなく、よく見ると5人一同は、まだ落とし穴の底に横たわっているのみであった。
5人はまだ自分たちが生命があることに気づき、何とかして穴から脱出しようと思案した。そして、秋男が言霊歌を歌い終わると、地底は次第にふくれあがり、辺りの景色は以前の樹蔭に戻った。
秋男は天地の神の恵みに生き返ったことを感謝し、曲津の砦に攻め込む意気を歌った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8012
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 353頁
修補版:
校定版:
233頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
四辺
(
しへん
)
黯澹
(
あんたん
)
として
声
(
こゑ
)
もなく、
002
天
(
てん
)
低
(
ひく
)
う
妖雲
(
えううん
)
垂
(
た
)
れ
下
(
さが
)
りて
一陣
(
いちぢん
)
の
風
(
かぜ
)
もなし。
003
蒸
(
む
)
し
暑
(
あつ
)
き
事
(
こと
)
釜中
(
ふちう
)
を
行
(
ゆ
)
くが
如
(
ごと
)
く、
004
陰鬱
(
いんうつ
)
の
空気
(
くうき
)
漲
(
みなぎ
)
り、
005
全身
(
ぜんしん
)
脂汗
(
あぶらあせ
)
にじみ、
006
形容
(
けいよう
)
し
難
(
がた
)
き
苦
(
くる
)
しき
中
(
なか
)
を、
007
葭草
(
よしぐさ
)
と
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
る
荒野
(
あらの
)
ケ
原
(
はら
)
を
進
(
すす
)
みゆく
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
ありけり。
008
『ああいぶかしやいぶかしや
009
水上山
(
みなかみやま
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
010
幾夜
(
いくよ
)
を
重
(
かさ
)
ぬる
草枕
(
くさまくら
)
011
怪
(
あや
)
しき
事
(
こと
)
の
数々
(
かずかず
)
を
012
目撃
(
もくげき
)
しつつ
黄昏
(
たそがれ
)
に
013
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
まで
014
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
折
(
をり
)
もあれ
015
天
(
てん
)
に
冲
(
ちう
)
する
大噴火
(
だいふんくわ
)
016
忽
(
たちま
)
ちとどまり
暗黒
(
あんこく
)
の
017
幕
(
まく
)
は
四辺
(
しへん
)
を
包
(
つつ
)
むよと
018
見
(
み
)
るまもあらず
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
019
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
アの
水奔鬼
(
すゐほんき
)
020
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
をば
距
(
へだ
)
てつつ
021
怪
(
あや
)
しき
事
(
こと
)
の
数々
(
かずかず
)
に
022
笑
(
わら
)
ひ
罵
(
ののし
)
るにくらしさ
023
われ
等
(
ら
)
は
腹
(
はら
)
に
据
(
す
)
ゑかねて
024
闇
(
やみ
)
に
向
(
むか
)
つてつき
込
(
こ
)
めば
025
思
(
おも
)
ひがけなや
八千尋
(
やちひろ
)
の
026
地底
(
ちそこ
)
の
穴
(
あな
)
に
陥
(
おちい
)
りて
027
苦
(
くる
)
しみもだゆる
折
(
をり
)
もあれ
028
続
(
つづ
)
いて
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
む
松
(
まつ
)
、
竹
(
たけ
)
、
梅
(
うめ
)
029
桜
(
さくら
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
も
現世
(
うつしよ
)
の
030
生命
(
いのち
)
は
空
(
むな
)
しくなりにけり
031
此処
(
ここ
)
にも
怪
(
あや
)
しき
婆
(
ばば
)
の
声
(
こゑ
)
032
いぶかしさよと
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
033
わが
言霊
(
ことたま
)
はいち
早
(
はや
)
く
034
この
場
(
ば
)
を
去
(
さ
)
りしと
思
(
おも
)
ひきや
035
かかる
怪
(
あや
)
しき
大野原
(
おほのはら
)
036
悲
(
かな
)
しく
淋
(
さび
)
しく
一人
(
ひとり
)
ゆく
037
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
038
神
(
かみ
)
の
此
(
この
)
世
(
よ
)
にましまさば
039
わが
行
(
ゆ
)
く
先
(
さき
)
を
明
(
あき
)
らかに
040
天地
(
てんち
)
の
妖気
(
えうき
)
を
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
041
示
(
しめ
)
させ
給
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎまつる
042
天地
(
てんち
)
静
(
しづ
)
かに
風
(
かぜ
)
死
(
し
)
して
043
わが
身体
(
からたま
)
の
全部
(
ぜんぶ
)
より
044
熱湯
(
ねつたう
)
の
汗
(
あせ
)
はにじみ
出
(
い
)
で
045
痒
(
かゆ
)
さ
苦
(
くる
)
しさ
堪
(
た
)
へがたし
046
ここは
地獄
(
ぢごく
)
か
八衢
(
やちまた
)
か
047
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
ばかり
048
正
(
まさ
)
しく
幽冥
(
いうめい
)
の
道
(
みち
)
ならば
049
わが
弟
(
おとうと
)
に
出会
(
であ
)
ふならむ
050
冬男
(
ふゆを
)
恋
(
こひ
)
しや、なつかしや
051
精霊
(
みたま
)
となりて
生
(
い
)
くるなら
052
われの
悲
(
かな
)
しき
心根
(
こころね
)
を
053
思
(
おも
)
ひ
計
(
はか
)
りて
来
(
きた
)
れかし
054
汝
(
なんぢ
)
の
仇
(
あだ
)
を
討
(
う
)
たむとて
055
悪魔
(
あくま
)
の
婆
(
ばば
)
に
謀
(
はか
)
らはれ
056
尊
(
たふと
)
き
生命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てにけり
057
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
憎
(
にく
)
らしや
058
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アに
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
059
たとへ
幽界
(
かくりよ
)
なればとて
060
これの
悪魔
(
あくま
)
を
殲滅
(
せんめつ
)
し
061
精霊界
(
せいれいかい
)
を
悉
(
ことごと
)
く
062
清
(
きよ
)
め
澄
(
す
)
まして
天国
(
てんごく
)
の
063
貴
(
うづ
)
の
門戸
(
もんこ
)
となさしめむ
064
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
065
恩頼
(
みたまのふゆ
)
を
願
(
ね
)
ぎまつる
066
高光山
(
たかみつやま
)
は
遠
(
とほ
)
くとも
067
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
はさかしとも
068
如何
(
いか
)
でひるまむ
霊魂
(
たましひ
)
の
069
生命
(
いのち
)
のあらむ
其
(
その
)
限
(
かぎ
)
り
070
登
(
のぼ
)
らなおかぬ
大丈夫
(
ますらを
)
の
071
弥猛心
(
やたけごころ
)
をみそなはし
072
天地
(
てんち
)
に
神
(
かみ
)
のいますなら
073
わが
願
(
ね
)
ぎ
言
(
ごと
)
を
詳細
(
まつぶさ
)
に
074
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
さへと
願
(
ね
)
ぎまつる』
075
斯
(
か
)
くうたひつつ
前進
(
ぜんしん
)
すれば、
076
血
(
ち
)
の
如
(
ごと
)
き
色
(
いろ
)
を
為
(
な
)
せる
濁水
(
だくすゐ
)
の
流
(
なが
)
るる
大川
(
おほかは
)
につと
行
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
りたり。
077
秋男
(
あきを
)
は
如何
(
いか
)
にしてこの
濁水
(
だくすゐ
)
を
渡
(
わた
)
らむかと、
078
岸辺
(
きしべ
)
に
佇
(
たたず
)
み、
079
頭
(
かしら
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
080
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
081
太
(
ふと
)
き
溜息
(
ためいき
)
吐
(
は
)
きながら、
082
微
(
かすか
)
に
歌
(
うた
)
ふ。
083
『
幽界
(
いうかい
)
の
淋
(
さび
)
しき
道
(
みち
)
をたどり
来
(
き
)
て
084
血潮
(
ちしほ
)
流
(
なが
)
るる
川辺
(
かはべ
)
に
来
(
きた
)
りぬ。
085
滔々
(
たうたう
)
と
流
(
なが
)
るる
水
(
みづ
)
は
悉
(
ことごと
)
く
086
悪臭
(
あくしう
)
交
(
まじ
)
りて
胸
(
むね
)
ふさがりぬ。
087
汚
(
けが
)
れたる
此
(
こ
)
の
血
(
ち
)
の
川
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
らむと
088
われは
思
(
おも
)
はじ
如何
(
いか
)
になるとも。
089
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
の
宿世
(
すぐせ
)
思
(
おも
)
へば
悲
(
かな
)
しけれ
090
わがたつ
涙
(
なみだ
)
川
(
かは
)
と
流
(
なが
)
れつ』
091
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
092
傍
(
かたはら
)
の
葭草
(
よしぐさ
)
の
枯葉
(
かれは
)
をそよがせながら、
093
痩
(
や
)
せこけた
老婆
(
らうば
)
、
094
藜
(
あかざ
)
の
杖
(
つゑ
)
をつき
海老腰
(
えびごし
)
になりながら、
095
秋男
(
あきを
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
096
全身
(
ぜんしん
)
を
見上
(
みあ
)
げ
見下
(
みおろ
)
し、
097
「ゲラゲラ」と
打
(
う
)
ち
笑
(
わら
)
ひ、
098
『この
婆
(
ばば
)
はそちが
生命
(
いのち
)
を
奪
(
うば
)
ひたる
099
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
分
(
わ
)
けみたまぞや。
100
よくもまあ
迷
(
まよ
)
ひ
来
(
き
)
しよなこの
川
(
かは
)
は
101
膿血
(
うみち
)
と
痰
(
たん
)
の
集
(
あつま
)
りなるぞや』
102
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
103
『
思
(
おも
)
ひきや
紫微
(
しび
)
天界
(
てんかい
)
の
真秀良場
(
まほらば
)
の
104
この
葭草
(
よしぐさ
)
に
地獄
(
ぢごく
)
ありとは。
105
よしやよし
地獄
(
ぢごく
)
の
旅
(
たび
)
を
続
(
つづ
)
くるとも
106
われは
進
(
すす
)
まむ
高光山
(
たかみつやま
)
へ』
107
婆
(
ばば
)
アは
顎
(
あご
)
をしやくりながら、
108
『この
婆
(
ばば
)
は
瘧
(
おこり
)
と
申
(
まを
)
す
水奔鬼
(
すゐほんき
)
109
此処
(
ここ
)
に
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
なやめて
楽
(
たの
)
しむ。
110
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
は
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らずわが
為
(
た
)
めに
111
瘧
(
おこり
)
を
病
(
や
)
みて
死
(
し
)
ぬる
嬉
(
うれ
)
しさ。
112
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
精霊
(
せいれい
)
なれどこの
婆
(
ばば
)
の
113
恵
(
めぐ
)
みによりて
瘧
(
おこり
)
をふるへよ』
114
秋男
(
あきを
)
は
冷然
(
れいぜん
)
として、
115
『かくなればわれは
恐
(
おそ
)
れじ
瘧婆
(
おこりばば
)
の
116
霊
(
たま
)
の
生命
(
いのち
)
を
伐
(
き
)
り
放
(
はふ
)
るべし』
117
婆
(
ばば
)
アはこの
歌
(
うた
)
に
眼
(
め
)
を
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げ、
118
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし、
119
秋男
(
あきを
)
が
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
寄
(
よ
)
り
添
(
そ
)
ひ、
120
氷
(
こほり
)
の
如
(
ごと
)
き
冷
(
つめた
)
き
手
(
て
)
にて、
121
秋男
(
あきを
)
の
左右
(
さいう
)
の
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
122
憎々
(
にくにく
)
しげに、
123
『こりや
秋男
(
あきを
)
の
餓鬼
(
がき
)
、
124
俺
(
おれ
)
を
何方
(
どなた
)
と
心
(
こころ
)
得
(
え
)
てゐるか。
125
血
(
ち
)
の
川
(
かは
)
の
主
(
ぬし
)
、
126
水奔鬼
(
すゐほんき
)
の
瘧婆
(
おこりばば
)
アといふは
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
事
(
こと
)
だ。
127
さア、
128
これからは
其方
(
そち
)
の
霊
(
たま
)
の
生命
(
いのち
)
をとり、
129
血
(
ち
)
の
川
(
かは
)
に
水葬
(
すいさう
)
してやらう。
130
有難
(
ありがた
)
く
思
(
おも
)
へ』
131
秋男
(
あきを
)
は、
132
『
何
(
なに
)
をするか
氷
(
こほり
)
の
如
(
ごと
)
き
痩腕
(
やせうで
)
に
133
われの
両手
(
もろて
)
を
離
(
はな
)
さぬ
鬼婆
(
おにばば
)
。
134
鬼婆
(
おにばば
)
の
醜
(
みにく
)
き
姿
(
すがた
)
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
て
135
われは
吐
(
は
)
き
気
(
け
)
を
催
(
もよほ
)
しにけり』
136
婆
(
ばば
)
アは、
137
『
何
(
なに
)
をこしやくな、
138
俺
(
おれ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
吐気
(
はきけ
)
を
催
(
もよほ
)
すとはよくも
言
(
い
)
へたものだ。
139
やい
糞袋
(
くそぶくろ
)
、
140
痰壺
(
たんつぼ
)
、
141
小便
(
しよんべん
)
のタンク
奴
(
め
)
、
142
左様
(
さやう
)
な
太平楽
(
たいへいらく
)
を
聞
(
き
)
く
鬼
(
おに
)
さんぢやないぞ。
143
サアこれから
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
皮衣
(
かはごろも
)
をはぎ、
144
腕
(
うで
)
をぬき、
145
骨
(
ほね
)
を
引
(
ひ
)
き
切
(
き
)
り、
146
川瀬
(
かはせ
)
の
乱杭
(
らんぐひ
)
に
使
(
つか
)
つてやらうぞ。
147
それがせめても
貴様
(
きさま
)
にとつての
幸
(
さいは
)
ひ、
148
罪滅
(
つみほろぼ
)
しといふものだ。
149
ギヤハハハハー、
150
あのまあむづかしい、
151
青黒
(
あをぐろ
)
い、
152
悲
(
かな
)
しさうな
顔
(
かほ
)
わいのう、
153
イヒヒヒヒ』
154
秋男
(
あきを
)
は
進退
(
しんたい
)
これ
谷
(
きは
)
まりて
如何
(
いかん
)
ともする
術
(
すべ
)
なく、
155
途方
(
とはう
)
にくれたる
折
(
をり
)
もあれ、
156
松
(
まつ
)
、
157
竹
(
たけ
)
、
158
梅
(
うめ
)
、
159
桜
(
さくら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あらは
)
れ
来
(
きた
)
り、
160
秋男
(
あきを
)
が
瘧婆
(
おこりばば
)
アに
苦
(
くる
)
しめられてゐる
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て、
161
驚
(
おどろ
)
きながらバラバラと
婆
(
ばば
)
アを
取
(
と
)
りかこみ、
162
『はて
不思議
(
ふしぎ
)
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アによく
似
(
に
)
たる
163
ここにも
鬼
(
おに
)
が
現
(
あらは
)
れしぞや。
164
よく
見
(
み
)
れば
秋男
(
あきを
)
の
君
(
きみ
)
の
手
(
て
)
をつかみ
165
苦
(
くる
)
しめ
居
(
ゐ
)
るか
悪
(
あく
)
たれ
婆
(
ばば
)
ア
奴
(
め
)
』
166
秋男
(
あきを
)
は
細
(
ほそ
)
き
声
(
こゑ
)
にて
顔
(
かほ
)
をしかめながら、
167
『この
婆
(
ばば
)
に
苦
(
くる
)
しめられてゐるところ
168
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はわれを
救
(
すく
)
へよ』
169
松
(
まつ
)
は
応
(
こた
)
へて、
170
『
若君
(
わかぎみ
)
の
悩
(
なや
)
みを
見
(
み
)
つつ
如何
(
いか
)
にして
171
われ
等
(
ら
)
四人
(
よつたり
)
もだし
居
(
ゐ
)
るべき。
172
わが
力
(
ちから
)
あらむ
限
(
かぎ
)
りをこの
婆
(
ばば
)
の
173
頭上
(
づじやう
)
にくはへて
打
(
う
)
ち
据
(
す
)
ゑて
見
(
み
)
む。
174
竹
(
たけ
)
よ
梅
(
うめ
)
よ
桜
(
さくら
)
よ
来
(
きた
)
れ
此
(
こ
)
の
婆
(
ばば
)
を
175
只一息
(
ただひといき
)
に
打
(
う
)
ちなやまさむ』
176
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
一度
(
いちど
)
に
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
め、
177
婆
(
ばば
)
アの
面部
(
めんぶ
)
をめがけて
打
(
う
)
ち
据
(
す
)
ゆれば、
178
如何
(
いかが
)
はしけむ、
179
婆
(
ばば
)
アはビクともせず、
180
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
拳
(
こぶし
)
よりは
血潮
(
ちしほ
)
タラタラと
流
(
なが
)
れ
出
(
い
)
で、
181
痛
(
いた
)
き
事
(
こと
)
堪
(
た
)
へ
難
(
がた
)
し。
182
瘧婆
(
おこりばば
)
は
冷笑
(
れいせう
)
し、
183
『ギヤハハハハ、
184
この
方
(
はう
)
を
何方
(
どなた
)
様
(
さま
)
と
心得
(
こころえ
)
てゐるか。
185
岩
(
いは
)
より
固
(
かた
)
き
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
司
(
つかさ
)
、
186
この
川
(
かは
)
の
辺
(
べ
)
に
棲処
(
すみか
)
を
固
(
かた
)
め、
187
先
(
さき
)
に
廻
(
まは
)
つて
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
迷
(
まよ
)
ひ
来
(
く
)
るを
待
(
ま
)
つてゐた。
188
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
アや
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
一味
(
いちみ
)
の
者
(
もの
)
だよ。
189
もうかうなる
上
(
うへ
)
は
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ。
190
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
さねば
此
(
この
)
上
(
うへ
)
辛
(
つら
)
き
目
(
め
)
見
(
み
)
せてくれむ。
191
さあ
返答
(
へんたふ
)
はどうぢや。
192
イヒヒヒヒ、
193
てもさても
心地
(
ここち
)
よやな』
194
五
(
ご
)
人
(
にん
)
はここに
進退
(
しんたい
)
維谷
(
これきは
)
まり、
195
如何
(
いかが
)
はせむと
案
(
あん
)
じわづらふ
折
(
をり
)
もあれ、
196
忽
(
たちま
)
ち
空
(
そら
)
をどよもして
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
一炷
(
いつしゆ
)
の
火団
(
くわだん
)
、
197
轟然
(
がうぜん
)
たる
響
(
ひびき
)
とともにこの
川
(
かは
)
の
辺
(
べ
)
に
落下
(
らくか
)
したり。
198
この
出来事
(
できごと
)
に、
199
瘧婆
(
おこりばば
)
アの
影
(
かげ
)
は
雲霧
(
くもきり
)
と
消
(
き
)
えて
跡形
(
あとかた
)
もなく、
200
よくよく
見
(
み
)
れば、
201
依然
(
いぜん
)
として
火炎山
(
くわえんざん
)
の
麓
(
ふもと
)
の
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
が
造
(
つく
)
り
置
(
お
)
きたる
陥穽
(
おとしあな
)
の
底
(
そこ
)
に
主従
(
しうじう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
横
(
よこ
)
たはり
居
(
ゐ
)
たるなりけり。
202
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
203
『いぶかしや
悪魔
(
あくま
)
の
罠
(
わな
)
に
陥
(
おちい
)
りて
204
死
(
し
)
せしと
思
(
も
)
ひしは
過
(
あやまち
)
なりしよ。
205
身体
(
からたま
)
の
生命
(
いのち
)
ありせばこれよりは
206
この
陥穽
(
おとしあな
)
を
伝
(
つた
)
ひ
上
(
あが
)
らむ』
207
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
208
『
有難
(
ありがた
)
し
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
幸
(
さち
)
はひに
209
われは
罷
(
まか
)
らずありにけらしな。
210
常磐木
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
の
心
(
こころ
)
をはげまして
211
冬男
(
ふゆを
)
の
君
(
きみ
)
の
仇
(
あだ
)
を
酬
(
むく
)
はむ。
212
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
失
(
う
)
せしと
思
(
おも
)
ひしを
213
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに
生
(
い
)
きてありけり』
214
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
215
『
大丈夫
(
ますらを
)
われ
生
(
い
)
きてありけり
穴
(
あな
)
の
底
(
そこ
)
を
216
伝
(
つた
)
ひ
上
(
あが
)
りて
再
(
ふたた
)
び
活動
(
はたら
)
かむ。
217
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生
(
い
)
きの
生命
(
いのち
)
のある
限
(
かぎ
)
り
218
災
(
わざはひ
)
をなす
鬼
(
おに
)
をやらはむ。
219
飽
(
あ
)
くまでも
初心
(
しよしん
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
なさざれば
220
益荒
(
ますら
)
猛男
(
たけを
)
の
胸
(
むね
)
の
晴
(
は
)
るべき』
221
梅
(
うめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
222
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
蘇
(
よみがへ
)
りたる
嬉
(
うれ
)
しさに
223
われは
言葉
(
ことば
)
も
絶
(
た
)
え
果
(
は
)
てにけり』
224
桜
(
さくら
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
225
『
火炎山
(
くわえんざん
)
麓
(
ふもと
)
にすめる
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
226
たくみ
果敢
(
はか
)
なく
破
(
やぶ
)
れけるかな。
227
曲鬼
(
まがおに
)
は
闇
(
やみ
)
に
陥穽
(
かんせい
)
作
(
つく
)
り
居
(
ゐ
)
て
228
わが
一行
(
いつかう
)
をなやまさむとせり。
229
男
(
を
)
の
子
(
こ
)
われ
生
(
い
)
きの
生命
(
いのち
)
の
続
(
つづ
)
く
限
(
かぎ
)
り
230
神国
(
みくに
)
の
為
(
た
)
めに
曲
(
まが
)
亡
(
ほろ
)
ぼさむ』
231
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
232
『いざさらば
生言霊
(
いくことたま
)
を
宣
(
の
)
りながら
233
上
(
のぼ
)
りゆかなむこの
深穴
(
ふかあな
)
を。
234
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
235
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
236
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ』
237
と、
238
宣
(
の
)
り
終
(
をは
)
るや、
239
地底
(
ちてい
)
は
次第
(
しだい
)
にふくれ
上
(
あが
)
り、
240
以前
(
いぜん
)
の
樹蔭
(
じゆいん
)
にたちかへりける。
241
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
242
『
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みの
深
(
ふか
)
ければ
243
元津
(
もとつ
)
場所
(
ばしよ
)
に
生
(
い
)
きかへりたり。
244
これからは
五
(
ご
)
人
(
にん
)
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せつつ
245
曲
(
まが
)
の
砦
(
とりで
)
に
攻
(
せ
)
めて
上
(
のぼ
)
らむ』
246
(
昭和九・七・二八
旧六・一七
於関東別院南風閣
林弥生
謹録)
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