霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一八章 大挙(たいきよ)出発(しゆつぱつ)〔二〇二二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻 篇:第3篇 天地変遷 よみ(新仮名遣い):てんちへんせん
章:第18章 大挙出発 よみ(新仮名遣い):たいきょしゅっぱつ 通し章番号:2022
口述日:1934(昭和9)年07月30日(旧06月19日) 口述場所:関東別院南風閣 筆録者:白石恵子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
水上山の執政・巌ケ根は、高光山以西を視察するために派遣した四男の冬男、三男の秋男一行がいつまで待っても戻ってこないため、さらに自分の子を派遣して調査させようかと事を図っていた。
すると、東南の方に火炎山は轟然として爆発し、水上山まで振動が伝わってくるほどであった。
そのため、巌ケ根は意を決して長男・春男、次男・夏男に命じ、執政の水音、瀬音を補佐に数多の従者を引き連れさせて、調査に向かうこととした。
巌ケ根は出発に際して斎主となり、調査の旅の無事を祈念する祝詞を宣り上げた。
一同はそれぞれ出発の述懐歌を歌うと、木枯らしが吹きすさぶ野路を東南に向かって進んだ。それぞれ行軍歌を歌いながら進発し、茂みの森影で一夜を明かすことになった。
そのあたりは火炎山が陥落したために、猛獣や毒蛇が集まってきている場所であったため、辺りには怪しい鳴き声が響き、不快な空気が漂っていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3881 OBC :rm8018
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 386頁 修補版: 校定版:354頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 水上山(みなかみやま)の神館(かむやかた)の執政(しつせい)を勤(つと)むる巌(いは)ケ根(ね)は、002高光山(たかみつやま)以西(いせい)の国形(くにがた)を視察(しさつ)せしむべく、003第四男(だいよんなん)の冬男(ふゆを)を一人(ひとり)遣(つか)はしけるが、004数多(あまた)の月(つき)を閲(けみ)して何(なん)の消息(せうそく)もなきままに、005稍(やや)不安(ふあん)の念(ねん)を起(おこ)し、006水音(みなおと)、007瀬音(せおと)の重臣(ぢゆうしん)と共(とも)に、008鳩首(きうしゆ)謀議(ぼうぎ)の結果(けつくわ)、009第三男(だいさんなん)の秋男(あきを)に、010松(まつ)、011竹(たけ)、012梅(うめ)、013桜(さくら)の四柱(よはしら)の従者(じうしや)を従(したが)へ、014冬男(ふゆを)の在処(ありか)と国形(くにがた)の視察(しさつ)を兼(か)ねて出発(しゆつぱつ)を命(めい)じたりしが、015これまた弓弦(ゆづる)を離(はな)れし矢(や)の如(ごと)く、016行(い)つたまま何(なん)の消息(せうそく)もなく、017再(ふたた)び水上山(みなかみやま)の神館(かむやかた)は憂(うれ)ひに沈(しづ)み、018三度(みたび)御子(みこ)を派(は)して調査(てうさ)せしめむと事議(ことはか)る折(をり)しもあれ、019東南(とうなん)の方(かた)に当(あた)つて、020夜(よる)は火光(くわくわう)百(ひやく)里(り)の地上(ちじやう)を照(てら)したる火炎山(くわえんざん)は、021轟然(がうぜん)として爆発(ばくはつ)したる其(その)物音(ものおと)に、022水上山(みなかみやま)の館(やかた)まで地鳴(ぢなり)震動(しんどう)甚(はなは)だしく、023人心(じんしん)兢々(きやうきやう)たりける。
024 茲(ここ)に巌(いは)ケ根(ね)を初(はじ)め重臣(ぢゆうしん)等(たち)は、025二人(ふたり)の御子(みこ)の安否(あんぴ)を憂(うれ)ひ、026大挙(たいきよ)して其(その)消息(せうそく)を探(さぐ)るべく、027春男(はるを)、028夏男(なつを)を初(はじ)め、029水音(みなおと)、030瀬音(せおと)其(その)他(た)の供人(ともびと)を数多(あまた)引(ひ)き連(つ)れ、031第三回(だいさんくわい)目(め)の調査(てうさ)に向(むか)ふべく決定(けつてい)したり。
032 出発(しゆつぱつ)に臨(のぞ)み、033巌(いは)ケ根(ね)は斎主(さいしゆ)となり、034其(その)他(た)は後(しりへ)に従(したが)ひて、035天津(あまつ)神(かみ)を祀(まつ)りたる神殿(しんでん)に額(ぬか)づき、036種々(くさぐさ)の美味物(うましもの)を奉(たてまつ)り太祝詞言(ふとのりとごと)を宣(の)りける。037その祝詞(のりと)に言(い)ふ。
 
038『掛巻(かけまく)も綾(あや)に畏(かしこ)き、039高日(たかひ)の宮(みや)に鎮(しづ)まりいます主(ス)の大御神(おほみかみ)、040高鉾(たかほこ)の神(かみ)、041神鉾(かむほこ)の神(かみ)の三柱(みはしら)の大御前(おほみまへ)に、042水上山(みなかみやま)の館(やかた)の執政(しつせい)巌(いは)ケ根(ね)は、043ここに謹(つつ)しみ敬(ゐやま)ひ、044恐(かしこ)み恐(かしこ)みも願(ね)ぎ白(まを)さく。
045抑(そもそ)も此(これ)の葭原(よしはら)の神国(みくに)は、046御樋代(みひしろ)の神(かみ)朝霧(あさぎり)比女(ひめ)の神(かみ)の永久(とこしへ)に鎮(しづ)まりまして治(をさ)め給(たま)ふ神国(みくに)にして、047賤(いや)しき吾(われ)等(ら)も高光山(たかみつやま)を限(かぎ)りとして、048予讃(よさ)の国原(くにはら)を治(をさ)むべく、049御樋代(みひしろ)神(がみ)の神言(みこと)かかぶりて、050日(ひ)に夜(よ)に国(くに)安(やす)かれと心(こころ)を尽(つく)し身(み)を尽(つく)し、051国(くに)の政治(まつりごと)に仕(つか)へ奉(まつ)りける。
052予讃(よさ)の国土(くに)は地(つち)未(いま)だ稚(わか)く、053種々(くさぐさ)の物(もの)全(まつた)く調(ととの)はず浮脂(うきあぶら)の如(ごと)くあれば、054国形(くにがた)視(み)せしめむと第四(だいよん)の御子(みこ)冬男(ふゆを)を遣(つか)はしけるに、055数多(あまた)の月(つき)を閲(けみ)すと雖(いへど)も未(いま)だ復命(かへりごと)白(まを)さず、056若(も)しや若(も)し大御神(おほみかみ)の御心(みこころ)に叶(かな)はずて、057道(みち)の隈手(くまで)にさやる曲津(まがつ)神(かみ)有(あ)りて損(そこな)ひたるにやと、0571心(こころ)も心(こころ)ならず058各自(おのもおのも)の司(つかさ)等(たち)と事議(ことはか)り、059神前(みまへ)に願(ね)ぎ白(まを)して、060第三男(だいさんなん)の秋男(あきを)に、061松(まつ)、062竹(たけ)、063梅(うめ)、064桜(さくら)の四柱(よはしら)を添(そ)へ、065再(ふたた)び国形(くにがた)を視極(みきは)め、066冬男(ふゆを)の在処(ありか)を明(あき)らめむと、067過(す)ぐる日(ひ)此(この)館(やかた)を立(た)ち出(い)でけるに、068今(いま)におきて何(なん)の復命(かへりごと)もなさず、069司(つかさ)等(たち)は心(こころ)を悩(なや)め奉(まつ)る折(をり)もあれ、070予讃(よさ)の国(くに)の真秀良場(まほらば)に峙(そばだ)てる火炎山(くわえんざん)は、071天地(あめつち)をどよもして、072頂(いただき)より麓(ふもと)まで打(う)ち破(やぶ)れけるにや、073朝(あさ)な夕(ゆふ)なに望(のぞ)みてし其(その)影(かげ)も見(み)えず、074光(ひかり)も消(き)え失(う)せければ、075尋常(ただごと)ならじと思(おも)ひ奉(まつ)るが故(ゆゑ)に、076三度(みたび)茲(ここ)に事議(ことはか)りて、077二人(ふたり)の御子(みこ)が在処(ありか)を探(さが)し求(もと)め、078国形(くにがた)視(み)るべく、079春男(はるを)、080夏男(なつを)に水音(みなおと)、081瀬音(せおと)の司(つかさ)を従(したが)へさせ、082百神(ももがみ)たちを率(ひき)ゐて、083今日(けふ)の吉日(よきひ)の吉時(よきとき)に、084神国(みくに)の為(ため)に旅(たび)行(ゆ)かむとす。
085仰(あふ)ぎ願(ねが)はくば、086主(ス)の大御神(おほみかみ)、087𪫧怜(うまら)に委曲(つばら)に聞食(きこしめ)し給(たま)ひて、088今日(けふ)の出立(いでた)ちは道(みち)の隈手(くまで)も恙(つつが)なく、089喪(も)なく事(こと)なく、090最速(いとすみや)かに復命(かへりごと)白(まを)させ給(たま)へと、091海川(うみかは)山野(やまぬ)の種々(くさぐさ)の御幣帛(みてぐら)を百取(ももとり)の机(つくゑ)に横山(よこやま)の如(ごと)く置足(おきたら)はして献(たてまつ)るさまを、092平(たひら)けく安(やす)らけく聞食(きこしめ)せと、093鹿児自(かこじ)物(もの)膝折伏(ひざをりふ)せ、094宇自物(うじもの)頸根(うなね)突貫(つきぬ)きて、095恐(かしこ)み恐(かしこ)みも願(ね)ぎ奉(まつ)らくと白(まを)す。096惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)、097惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
 
098 斯(か)く奏上(そうじやう)終(をは)り、099恭(うやうや)しく礼拝(れいはい)し、100神殿(しんでん)を降(くだ)り、101再(ふたた)び一同(いちどう)は執政殿(しつせいでん)に集(あつま)り、102首途(かどで)を祝(しゆく)し且(かつ)事議(ことはか)りける。
103 巌(いは)ケ根(ね)は歌(うた)ふ。
104『二柱(ふたはしら)御子(みこ)は帰(かへ)らずなりにけり
105神(かみ)の御旨(みむね)に叶(かな)はざりしか。
106老(おい)の身(み)の力(ちから)と頼(たの)む二人(ふたり)の子(こ)の
107行方(ゆくへ)思(おも)へば心(こころ)さわぐも。
108音(おと)に聞(き)く水奔草(すゐほんさう)は行(ゆ)く道(みち)に
109茂(しげ)りて人(ひと)を損(そこな)ふとかや。
110水奔草(すゐほんさう)に当(あた)りて亡(う)せし水奔鬼(すゐほんき)の
111禍(わざはひ)なすと聞(き)くぞ忌々(ゆゆ)しき。
112一年(ひととせ)を過(す)ぐれど冬男(ふゆを)は帰(かへ)り来(こ)ず
113心(こころ)もとなきわが思(おも)ひかな。
114過(す)ぐる秋(あき)再(ふたた)び秋男(あきを)に言依(ことよ)さし
115国形(くにがた)視(み)るべく旅立(たびだ)たせけり。
116冬(ふゆ)近(ちか)み木枯(こがらし)吹(ふ)けどわが御子(みこ)の
117便(たよ)りのなきは憂(う)れたかりけり。
118松(まつ)、竹(たけ)、梅(うめ)、桜(さくら)の四柱(よはしら)添(そ)ひながら
119今(いま)に便(たよ)りのなきはいぶかし。
120火炎山(くわえんざん)爆発(ばくはつ)したるか天地(あめつち)は
121どよみて山(やま)の影(かげ)は失(う)せたり。
122火炎山(くわえんざん)変動(へんどう)見(み)るより一入(ひとしほ)に
123わが魂(たましひ)はなやましきかな。
124かくならば春男(はるを)、夏男(なつを)を始(はじ)めとし
125水音(みなおと)、瀬音(せおと)も行(ゆ)きて調(しら)べよ』
126 水音(みなおと)は歌(うた)ふ。
127『宜(うべ)ようべ巌根(いはね)の君(きみ)の御言葉(みことば)に
128如何(いか)で背(そむ)かむ急(いそ)ぎ旅(たび)行(ゆ)かむ。
129再(ふたた)びの使(つかひ)は復命(かへりごと)あらず
130心(こころ)もとなきこれの館(やかた)よ。
131水奔鬼(すゐほんき)の為(ため)に生命(いのち)を果敢(はか)なくも
132亡(う)せ給(たま)ひしか心(こころ)もとなし。
133葭草(よしぐさ)に混(まじ)りて茂(しげ)る水奔草(すゐほんさう)の
134禍(わざはひ)多(おほ)しと吾(われ)も聞(き)きつる。
135湿(しめ)り地(ぢ)に茂(しげ)れる葭草(よしぐさ)醜草(しこぐさ)の
136隙間(すきま)に棲(す)めるイヂチの害虫(がいちう)。
137草枕(くさまくら)旅(たび)行(ゆ)く人(ひと)の足(あし)噛(か)みて
138倒(たふ)すイヂチの多(おほ)しとぞ聞(き)く。
139兎(と)も角(かく)もかくてあるべき時(とき)ならず
140急(いそ)ぎ進(すす)まむ御後(みあと)たづねて』
141 瀬音(せおと)は歌(うた)ふ。
142『執政(しつせい)の君(きみ)よ暫(しば)しを待(ま)たせ給(たま)へ
143国形(くにがた)視(み)つつ御後(みあと)調(しら)べむ。
144何(なに)かしら心(こころ)落(お)ちゐぬ今日(けふ)の日(ひ)を
145神(かみ)に祈(いの)りて旅立(たびだ)ちせむかな。
146葭原(よしはら)の彼方(あなた)此方(こなた)の丘(をか)の辺(べ)に
147水奔鬼(すゐほんき)棲(す)むと伝(つた)へ聞(き)き居(を)り。
148如何(いか)ならむ艱(なや)み来(きた)るも此(この)度(たび)は
149神(かみ)の恵(めぐみ)に打(う)ち破(やぶ)り行(ゆ)かむ。
150わが行(ゆ)かば淋(さび)しかるべし巌(いは)ケ根(ね)よ
151神(かみ)に祈(いの)りて安(やす)く坐(ま)しませ』
152 春男(はるを)は歌(うた)ふ。
153『父上(ちちうへ)の御言(みこと)畏(かしこ)み出(い)で行(ゆ)かむ
154百(もも)の司(つかさ)をわれ伴(ともな)ひて。
155火炎山(くわえんざん)跡形(あとかた)もなく消(き)え失(う)せぬ
156予讃(よさ)の国原(くにはら)さやぎてあらむ。
157兎(と)に角(かく)に予讃(よさ)の国原(くにはら)治(をさ)むべき
158勤(つと)めを持(も)てる水上(みなかみ)の館(やかた)よ。
159御樋代(みひしろ)の神(かみ)の神言(みこと)に報(むく)ふべく
160如何(いか)なる悩(なや)みも凌(しの)ぎ進(すす)まむ。
161弟(おとうと)は水奔鬼(すゐほんき)または曲鬼(まがおに)に
162生命(いのち)を奪(うば)はれたるにあらずや。
163よしやよし弟(おとうと)の生命(いのち)あらずとも
164吾(われ)は進(すす)まむ高光(たかみつ)の山(やま)まで。
165高光(たかみつ)の山(やま)に進(すす)みて此(この)状(さま)を
166御樋代(みひしろ)神(がみ)に具(つぶさ)に伝(つた)へむ』
167 夏男(なつを)は歌(うた)ふ。
168『木枯(こがらし)の吹(ふ)き荒(すさ)ぶ野(の)を分(わ)けて行(ゆ)く
169吾(われ)等(ら)が旅(たび)に幸(さち)あれと祈(いの)る。
170父君(ちちぎみ)に別(わか)れを告(つ)げて出(い)でて行(ゆ)く
171われも神国(みくに)の為(ため)なればなり。
172葭原(よしはら)の国形(くにがた)視(み)つつ弟(おとうと)の
173行方(ゆくへ)を探(さが)す今日(けふ)の旅(たび)かな。
174水上山(みなかみやま)尾(を)の上(へ)の尾花(をばな)靡(なび)きつつ
175わが旅立(たびだ)ちを惜(を)しむがに見(み)ゆ。
176山萩(やまはぎ)も桔梗(ききやう)も散(ち)りて淋(さび)しげに
177尾花(をばな)は風(かぜ)に靡(なび)きけるかも。
178虫(むし)の音(ね)もかすかになりて野路(のぢ)を吹(ふ)く
179風(かぜ)は漸(やうや)く冷(ひ)え渡(わた)りけり。
180いざさらば神(かみ)の恵(めぐみ)に守(まも)られて
181立(た)ち出(い)で行(ゆ)かむこれの館(やかた)を』
182 巌(いは)ケ根(ね)は両眼(りやうがん)に涙(なみだ)を浮(うか)べながら歌(うた)ふ。
183『勇(いさ)ましや春男(はるを)、夏男(なつを)の旅立(たびだ)ちを
184国土(くに)の固(かた)めと思(おも)へば嬉(うれ)しき。
185水音(みなおと)や瀬音(せおと)の司(つかさ)春(はる)、夏(なつ)の
186二人(ふたり)を守(まも)り安(やす)く行(ゆ)きませ。
187木枯(こがらし)の風(かぜ)の冷(つめ)たき冬空(ふゆぞら)を
188分(わ)けて進(すす)ます君(きみ)ぞ雄々(をを)しき。
189水上(みなかみ)の館(やかた)に心(こころ)かけずして
190進(すす)ませ給(たま)へ司々(つかさつかさ)等(ら)』
191 水音(みなおと)は声(こゑ)を曇(くも)らせながら、
192『いざさらば君(きみ)に別(わか)れむ国(くに)の為(ため)
193曲津(まがつ)の荒(すさ)ぶ荒野(あらの)をさして』
194 瀬音(せおと)は歌(うた)ふ。
195『村肝(むらきも)の心(こころ)なやまし給(たま)ふまじ
196大丈夫(ますらを)吾(われ)等(ら)が行手(ゆくて)幸(さち)ならむ。
197御樋代(みひしろ)の神(かみ)の神言(みこと)に報(むく)いむと
198出(い)で行(ゆ)く道(みち)に曲津(まが)のあるべき』
199と歌(うた)ひ終(をは)り、200一行(いつかう)四(よ)人(にん)は数多(あまた)の供人(ともびと)と共(とも)に、201木枯(こがらし)吹(ふ)き荒(すさ)ぶ野路(のぢ)を、202東南(とうなん)に進路(しんろ)をとり勇(いさ)み進(すす)んで出(い)で行(ゆ)きぬ。
203 春男(はるを)は木枯(こがらし)荒(すさ)ぶ葭原(よしはら)を、204右(みぎ)に左(ひだり)に分(わ)けながら、205折々(をりをり)水上山(みなかみやま)の館(やかた)を振(ふ)りかへり振(ふ)りかへり行進歌(かうしんか)を歌(うた)ふ。
206『秋(あき)も漸(やうや)く暮(く)れ果(は)てて
207冬(ふゆ)の初(はじ)めとなりにけり
208水上山(みなかみやま)は屹然(きつぜん)と
209吾(わが)行(ゆ)く後(しりへ)に輝(かがや)けり
210恋(こひ)しき父(ちち)は如何(いか)にして
211いますか知(し)らず吾々(われわれ)の
212行(ゆ)く手(て)を案(あん)じわづらひつ
213天津(あまつ)御神(みかみ)の御(おん)前(まへ)に
214祈(いの)らせ給(たま)ふか尊(たふと)しや
215秋(あき)は漸(やうや)くつきはてぬ
216木枯(こがらし)寒(さむ)き冬(ふゆ)の日(ひ)を
217迎(むか)へて進(すす)む淋(さび)しさよ
218秋男(あきを)、冬男(ふゆを)の身(み)の上(うへ)を
219思(おも)へばなほも淋(さび)しけれ
220天(てん)に聳(そび)えて輝(かがや)きし
221火炎(くわえん)の山(やま)は影(かげ)もなく
222夜半(よは)を照(てら)せし大火光(だいくわくわう)
223今(いま)は全(まつた)く消(き)えはてぬ
224葭草(よしぐさ)醜草(しこぐさ)生(お)ひ茂(しげ)る
225野路(のぢ)行(ゆ)くわれは露(つゆ)をだも
226厭(いと)ふ心地(ここち)し出(い)でて行(ゆ)く
227ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
228わが旅立(たびだ)ちに幸(さち)あれや
229わが行(ゆ)く道(みち)に光(ひかり)あれ
230如何(いか)に悪魔(あくま)は猛(たけ)るとも
231毒虫(どくむし)しげくさやるとも
232神(かみ)の光(ひかり)を力(ちから)とし
233弛(たゆ)まず屈(くつ)せず進(すす)むべし
234父(ちち)の御言(みこと)をかがふりて
235国形(くにがた)視(み)むと出(い)でて行(ゆ)く
236高光山(たかみつやま)は嶮(さか)しくも
237葭原国(よしはらぐに)は広(ひろ)くとも
238月日(つきひ)重(かさ)ねて進(すす)みなば
239いと安(やす)からむ惟神(かむながら)
240神(かみ)のまにまに進(すす)むべし
241吾(われ)等(ら)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
242如何(いか)に恐(おそ)れむ大丈夫(ますらを)の
243弥猛心(やたけごころ)の一筋(ひとすぢ)に
244初心(しよしん)を貫(つらぬ)き大前(おほまへ)に
245復命(かへりごと)せむ此(この)旅路(たびぢ)
246守(まも)らせ給(たま)へ天津(あまつ)神(かみ)
247国津(くにつ)御神(みかみ)の御(おん)前(まへ)に
248畏(かしこ)み畏(かしこ)み願(ね)ぎ奉(まつ)る』
249 夏男(なつを)は歌(うた)ふ。
250『秋男(あきを)、冬男(ふゆを)は今(いま)何処(いづこ)
251一(いち)年(ねん)余(あま)りを経(へ)たる今日(けふ)
252何(なん)の便(たよ)りもなくばかり
253探(たづ)ね行(ゆ)く手(て)はぼんやりと
254所(ところ)定(さだ)めぬ淋(さび)しさよ
255冬(ふゆ)は漸(やうや)く来向(きむか)ひて
256百(もも)の木草(きぐさ)は紅葉(もみぢ)なし
257虫(むし)の音(ね)さへも細(ほそ)りけり
258葭(よし)の枯葉(かれは)は暗(くら)きまで
259大地(だいち)を包(つつ)み毒草(どくさう)の
260水奔草(すゐほんさう)は枯(か)れはてて
261根元(ねもと)に潜(ひそ)む毒虫(どくむし)は
262次第(しだい)々々(しだい)に殖(ふ)えて行(ゆ)く
263冬(ふゆ)の旅(たび)こそ淋(さび)しけれ
264神(かみ)の恵(めぐみ)のあらざれば
265如何(いか)で一歩(いつぽ)も進(すす)めむや
266守(まも)らせ給(たま)へ天地(あめつち)の
267神(かみ)よ御樋代(みひしろ)神(かみ)様(さま)よ
268神国(みくに)の為(ため)に進(すす)み行(ゆ)く
269われ等(ら)が道(みち)に隈(くま)もなく
270喪(も)なく進(すす)ませ給(たま)へかし
271ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
272恩頼(みたまのふゆ)を願(ね)ぎ奉(まつ)る』
273 水音(みなおと)は歌(うた)ふ。
274『冬(ふゆ)さり来(く)れば山川(やまかは)の
275水音(みなおと)さへも声(こゑ)潜(ひそ)め
276辺(あた)り淋(さび)しく木(こ)の葉(は)散(ち)り
277裸木(はだかぎ)諸所(しよしよ)に震(ふる)ふなり
278御空(みそら)の月(つき)も白々(しろじろ)と
279凍(こほ)るが如(ごと)き冬(ふゆ)の夜(よ)の
280霜(しも)踏(ふ)み分(わ)けて進(すす)み行(ゆ)く
281枯野(かれの)ケ原(はら)は物凄(ものすご)き
282火炎(くわえん)の山(やま)は消(き)え失(う)せて
283あやめも分(わ)かぬ夜(よる)の道(みち)
284最早(もはや)一歩(いつぽ)も進(すす)み得(え)ず
285幸(さいは)ひこれの森(もり)かげに
286一夜(いちや)の露(つゆ)の宿(やど)りして
287豊栄(とよさか)のぼる天津(あまつ)日(ひ)の
288光(ひか)りを力(ちから)に進(すす)むべし
289猛獣(まうじう)毒蛇(どくじや)のはびこれる
290これの原野(げんや)は殊更(ことさら)に
291危(あや)ふからむを方々(かたがた)よ
292御心(みこころ)如何(いか)にすくすくと
293応(こた)へを宣(の)らせ給(たま)へかし
294ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
295神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎ奉(まつ)る』
296 瀬音(せおと)は歌(うた)ふ。
297『水上(みなかみ)の山(やま)を立(た)ち出(い)で冬(ふゆ)の野(の)の
298繁樹(しげき)の森(もり)にたそがれにけり。
299火炎山(くわえんざん)光(ひか)りなければ止(や)むを得(え)じ
300此(この)森(もり)かげに一夜(いちや)を明(あか)さむ。
301何(なん)となくうら騒(さわ)がしき夕(ゆふべ)なり
302如何(いか)なる曲津(まが)の襲(おそ)ひ来(く)るにや。
303二柱(ふたはしら)御子(みこ)を探(たづ)ねて進(すす)み行(ゆ)く
304今日(けふ)は悲(かな)しき旅(たび)なりにけり。
305木枯(こがらし)の吹(ふ)き渡(わた)り行(ゆ)く音(おと)聞(き)けば
306冬(ふゆ)の心(こころ)の淋(さび)しかりけり。
307月舟(つきふね)は御空(みそら)にふるひ虫(むし)の音(ね)は
308草(くさ)の根(ね)に鳴(な)く冬(ふゆ)の夕暮(ゆふぐれ)。
309淋(さび)しきは冬(ふゆ)の夕(ゆふべ)の旅衣(たびごろも)
310袖(そで)に降(ふ)り来(く)る涙(なみだ)の雨(あめ)なり』
311 茲(ここ)に一行(いつかう)は茂(しげ)みの森蔭(もりかげ)に立(た)ち寄(よ)り、312淋(さび)しき木枯(こがらし)に吹(ふ)かれながら身(み)を一所(ひとところ)に集(あつ)め、313明日(あす)の旅立(たびだ)ちの事(こと)など心(こころ)の中(うち)に思(おも)ひ悩(なや)みながら、314漸(やうや)く寝(しん)に就(つ)きける。
315 此(この)辺(あた)りは火炎山(くわえんざん)の陥落(かんらく)により、316猛獣(まうじう)毒蛇(どくじや)の傷(きず)つけるもの数多(あまた)集(あつま)り来(きた)れる場所(ばしよ)なりければ、317夜(よ)もすがら嫌(いや)らしき呻吟声(うめきごゑ)と、318異様(いやう)の不快(ふくわい)なる空気(くうき)は漂(ただよ)ひにける。
319(昭和九・七・三〇 旧六・一九 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→