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開祖伝
はしがき
(歌)
01 誕生
02 幼女の頃
03 子守奉公
04 出口家へ入籍
05 夫政五郎さん
06 八人の子宝
07 浮かれ節
08 病床の夫
09 紙屑買い
10 身だしなみ
11 政五郎さんの帰幽
12 重なる災厄
13 霊夢
14 帰神の発端
15 開祖の自己審神
16 算盤師の占い
17 世人の誤解
18 お筆先の発端
19 お筆先の内容
20 出牢後の宣伝
21 贈られた土塊
22 聖師綾部へ
23 厳瑞二霊
24 冠島開き
25 沓島開き
26 鞍馬山参り
27 元伊勢お水の御用
28 出雲大社お火の御用
29 弥仙山お籠もり
30 沓島における平和祈願
31 二つの性格
32 水洗礼
33 恭倹
34 御日常
35 昇天
36 祈りとまこと
(メニューの右肩に*1が付いているものは、本文がまだテキスト化されていないもの。*2は内容がほぼ同じ他のテキストがあるもの。)
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一一 政五郎さんの帰幽
インフォメーション
題名:
11 政五郎さんの帰幽
著者:
愛善苑宣教部・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100600c11
001
明治二十年の正月元旦が過ぎて一ヶ月ばかり経った頃から、
002
政五郎さんの病状があらたまり、
003
手足に浮きがでてきましたので、
004
今度はとてもお助かりになるまいと考えておられますと、
005
御病人が
006
「お直や、
007
永う世話をしてくれたが、
008
私はもう助からぬかも知れんで、
009
この世の名残りにもう一杯酒を飲んで死にたい」
010
と云われました。
011
開祖様は、
012
013
「ええともええとも、
014
お酒はいますぐ買ってまいりますが、
015
死ぬなんてそんな縁起の悪いことを云わずしっかりして居て下さい。
016
欲しい物があったら何でも買って来てあげます」
017
と云って門口までお出かけになりました。
018
ところがこの日はあいにく開祖様のお手もとには、
019
びた一文のお金もなかったのです。
020
開祖様はそこらを見回されましたが、
021
売るような物はすでに売り尽してしまってお金に代えるような物は何一品もなかったのです。
022
このときヒョイと開祖様のお目に止まったのは、
023
外ならぬ御商売道具の古
秤
(
はかり
)
でした。
024
これを売っては早速明日からの商売にさしつかえるのですが、
025
今はそんなことを考えている場合ではありません。
026
その一本の古秤をたずさえて質屋へお出でになり、
027
これで三銭貸してくれるようにとお頼みになりました。
028
ところが「こんなものは質草にはならぬ」と断られました。
029
やむなく開祖様は紙屑買いの友達を訪ねて、
030
ようよう二銭のお金を借り、
031
それでお酒を買って政五郎さんにすすめたところ、
032
033
「ああうまい、
034
これでもう何も思い残すことはない」
035
と云って大変喜ばれました。
036
永らくわずらわれた政五郎さんも、
037
ついに旧暦二月七日
[
※
新三月一日
]
、
038
六十一才を一期として、
039
帰らぬ旅におもむかれました。
040
開祖様のお歎きは申すまでもなく、
041
なきがらに取りすがって、
042
同じ道に連れ立ちたいと泣き悲しまれました。
043
そして形ばかりの淋しいお葬式が出されました。
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