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開祖伝
はしがき
(歌)
01 誕生
02 幼女の頃
03 子守奉公
04 出口家へ入籍
05 夫政五郎さん
06 八人の子宝
07 浮かれ節
08 病床の夫
09 紙屑買い
10 身だしなみ
11 政五郎さんの帰幽
12 重なる災厄
13 霊夢
14 帰神の発端
15 開祖の自己審神
16 算盤師の占い
17 世人の誤解
18 お筆先の発端
19 お筆先の内容
20 出牢後の宣伝
21 贈られた土塊
22 聖師綾部へ
23 厳瑞二霊
24 冠島開き
25 沓島開き
26 鞍馬山参り
27 元伊勢お水の御用
28 出雲大社お火の御用
29 弥仙山お籠もり
30 沓島における平和祈願
31 二つの性格
32 水洗礼
33 恭倹
34 御日常
35 昇天
36 祈りとまこと
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開祖伝
> 34 御日常
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三四 御日常
インフォメーション
題名:
34 御日常
著者:
愛善苑宣教部・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100600c34
001
開祖様は前述のように極貧の家庭に育ちながら、
002
そのような御様子は少しも見えない気高い方でした。
003
粗服ではありましたが、
004
いつもさっぱりした着付をされて、
005
人は、
006
開祖様はいつも絹の肌着を着ておられる、
007
などと見まちがうほどでした。
008
時折申されるには、
009
010
「女はいつも薄化粧ぐらいしておるのが良い」
011
とおもらしになりましたが、
012
御自身ではなさいませんでした。
013
もっとも色の白い、
014
キメの細かいお肌のきれいな方であったからでもありましょうが、
015
身だしなみのことなどよくお話でした。
016
日常召し上がるものはまことに少食で、
017
大きな塗椀に二口か三口くらいの御飯にお湯をかけたりして、
018
ゆっくりとおとりになり、
019
せいぜい二杯くらいでした。
020
お好きなおかずは魚ならば鯉のみそ汁や甘煮にしたもの、
021
鮎は大変お喜びでした。
022
外の魚はほとんど召し上がりませんでした。
023
その外高野豆腐、
024
椎茸など、
025
野菜ものは何でもお上がりになり、
026
生湯葉はことの外お好きでした。
027
蔬菜
(
そさい
)
[
※
野菜
]
をつくるのがお好きで、
028
暇あるごとに畑に出てお世話をされ、
029
南瓜を作ることなどは非常にお上手で、
030
人がびっくりするほどの収穫をあげられました。
031
よくお見うけしたのは、
032
夕方になると縁先にうずくまられ宵の明星に見入って、
033
時のたつのも忘れたようにしていられることでした。
034
星について面白い話しがあります。
035
お
竜
(
りょう
)
さんの新宅の普請が出来たので是非見に来ていただきたいと、
036
あまりいわれるので開祖様はお出かけになりましたが、
037
お帰りになってから、
038
039
「お竜の家で珍しいお星様を見て来た。
040
若い時分に見たことのある星を何十年振りに見た」
041
と繰り返し繰り返しさもなつかしげに申され、
042
新宅の造作などは何の御関心もない様子でした。
043
開祖様のおきらいなのはたちいふるまいの騒々しいことや、
044
鼻歌気分で仕事をするような人で、
045
ある時は「ここをどこと心得ておられるか」と御立腹の言葉を聞くのも珍しくはありませんでした。
046
従って身の行跡の定まらぬ人や、
047
偉そうな事をしたり、
048
いったりする事も大のおきらいでした。
049
ある人が来て、
050
051
「開祖様、
052
私はこの神苑の庭掃きでもなんでもよろしいから、
053
させて頂きたいものです」
054
といわれました。
055
そのとき開祖様は、
056
057
「それは結構なおぼしめしじゃ」
058
と申されましたが、
059
その人が帰ったあとで、
060
061
「ここはだれ彼なしに箒一本持つことのできぬ尊い所であるのに、
062
庭掃きでもとは何というもったいないことをいう人であろう。
063
なかなか見ぬいた上でなければ、
064
庭も掃いて貰うことのできぬ尊い所であるのに……」
065
とおもらしになりました。
066
謹厳な御性格と申しましても、
067
決して厳格一途ではなく実にやさしい慈愛そのもののお方でした。
068
こんな話しがあります。
069
二代様が七歳のころ、
070
福知山へ子守奉公に行かれることになりましたが、
071
生まれて始めて他人の家へ奉公に行く幼な子を、
072
わずか綾部から福知山へ三里余りの道を先方まで送り届けることができず、
073
途中の島ヶ坪まで送ってお別れすることになりました。
074
親子二人は島ヶ坪の茶店に休まれながら、
075
せんべい一枚買って食べることができません。
076
店先には、
077
二代様がまだ口にしたこともない飴玉が並べられてありました。
078
頑是無い二代様は今日迄の厳格なしつけにもかかわらず、
079
店の者の見ていない間にひょいとその飴玉を一つ摘ままれました。
080
開祖様は見るとはなしに気づかれましたが、
081
これから一人で奉公に出られるいじらしい娘の別れぎわに、
082
その場でしかることもならず、
083
苦しい胸をおさえて知らぬ風をよそおいながらそっと懐中から五厘銭一つ出して飴の箱の中に置いて茶店を出られました。
084
少し行ってから開祖様は、
085
086
「お澄や、
087
見ておったでよ、
088
五厘銭置いて来たが、
089
あんなことするなよ」
090
と優しく仰しゃいました。
091
生まれてはじめてのひとり旅を、
092
うしろ髪をひかれつつとぼとぼと歩まれる二代様のかれんな姿が見えなくなるまで、
093
開祖様は茶店の前に立って見送られました。
094
また、
095
らい病をわずらっている人と一緒に風呂に入ってお助けになったこともあります。
096
明治二十八、
097
九年ごろですが、
098
綾部の東南、
099
須知峠の近くの
台頭
(
だいと
)
という部落に、
100
らい病をわずらっている貧乏な老婆がありました。
101
四方与兵衛さんの導きで信仰に入り、
102
綾部へ始終お詣りに来ました。
103
開祖様はいつもお松の葉をせんじたお風呂をわかしてその老婆を入浴させられましたが、
104
病気で手が不自由なため、
105
開祖様は御自分も一緒に入って体を洗ってあげられました。
106
やがてその人は御神徳を頂いてすっかり直り、
107
ますます信仰をはげんで、
108
毎月のお祭り日毎には欠かさず参拝に来ていました。
109
あるお祭りの日に、
110
開祖様がその人を心待ちに待っていられたが、
111
姿が見えぬので気がかりになり、
112
家を出て見に行かれました。
113
途中で出会うかと思って行くうちに、
114
とうとうその人の家まで来てしまいました。
115
家の前には柴が一荷背負うように用意して置いてあり、
116
中へ入って見ると、
117
床の間の神様の前でその老婆は手を合わせたまま安らかに国替え
[
※
死んで霊界へ帰ること
]
していました。
118
家の前の柴は、
119
綾部へおまいりして神様にお供えしようと用意していたものでした。
120
「兵隊がかわいそうだ」「女工がかわいそうだ」といつも申されました。
121
朝早く工場の汽笛がなると、
122
「あれで女工が起きるのやで」と、
123
よく同情の言葉をもらされました。
124
煙草はお好きでしたが、
125
女が煙草を吸うのは見苦しいと言って辛抱していられました。
126
二代様の吸いかけをそっとお吸いになっているところを直日様が二度ほど御覧になったが、
127
恥しそうに言訳していられたそうです。
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